特許第6702099号(P6702099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東紡績株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702099
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】ガラス繊維強化樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20200518BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20200518BHJP
   B29B 15/08 20060101ALI20200518BHJP
   C03C 13/00 20060101ALI20200518BHJP
   B29K 105/06 20060101ALN20200518BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K7/14
   B29B15/08
   C03C13/00
   B29K105:06
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-173212(P2016-173212)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2017-31414(P2017-31414A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2019年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 恒史
(72)【発明者】
【氏名】栗田 忠史
(72)【発明者】
【氏名】矢部 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】土金 あかね
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 雄哉
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−500939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00
C08K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維強化樹脂組成物の全量に対し10〜90質量%の範囲のガラス繊維と、90〜10質量%の範囲の樹脂とを含有するガラス繊維強化樹脂組成物であって、
該ガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し57.0〜60.0質量%の範囲のSiOと、17.5〜20.0質量%の範囲のAlと、8.5〜12.0質量%の範囲のMgOと、10.0〜13.0質量%の範囲のCaOと、0.5〜1.5質量%の範囲のBとを含み、かつ、SiO、Al、MgO及びCaOの合計量が98.0質量%以上であり、Alの含有率(質量%)に対するBの含有率(質量%)とCaOの含有率(質量%)との積の比((B(質量%)×CaO(質量%))/Al(質量%))が0.25〜0.75の範囲である組成を備えることを特徴とするガラス繊維強化樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載のガラス繊維強化樹脂組成物において、前記ガラス繊維は、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)が2.0〜10.0の範囲にあり、断面積を真円に換算したときの繊維径が3.0〜35.0μmの範囲にある扁平断面を備えることを特徴とするガラス繊維強化樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のガラス繊維強化樹脂組成物において、前記ガラス繊維は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、又は、これらの樹脂の混合物により被覆されていることを特徴とするガラス繊維強化樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のガラス繊維強化樹脂組成物からなることを特徴とする成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維強化樹脂組成物、及び、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス繊維は、樹脂組成物の強度を向上させるために種々の用途で広く用いられている。ガラス繊維としては、Eガラス組成(ガラス繊維の全量に対し52.0〜56.0質量%の範囲のSiOと、12.0〜16.0質量%の範囲のAlと、合計で20.0〜25.0質量%の範囲のMgO及びCaOと、5.0〜10.0質量%の範囲とBとを含む組成)を備えるガラス繊維(Eガラス繊維)が最も汎用的に用いられている。また、樹脂組成物及びその成形品に極めて高い強度を付与できるガラス繊維として、Sガラス組成(ガラス繊維の全量に対し64.0〜66.0質量%の範囲のSiOと、24.0〜26.0質量%の範囲のAlと、9.0〜11.0質量%の範囲のMgOとを含む組成)を備えるガラス繊維(Sガラス繊維)が知られている。ここで、Sガラス組成は、1000ポイズ温度(ガラス組成物の溶融物の粘度が1000ポイズ(100Pa・s)となる温度)及び液相温度(ガラス組成物の溶融物の温度を低下させたときに最初に結晶の析出が生じる温度)が高く、かつ、これら2つの温度の差で表現される作業温度範囲(ガラス繊維の製造の適した温度範囲)が狭く、Sガラス組成の製造は必ずしも容易ではないという問題点が知られた。
【0003】
近年、Eガラス繊維よりも高い強度を樹脂組成物に付与することができ、かつ、Sガラス繊維よりも製造性に優れたガラス繊維が求められており、本出願人は、ガラス繊維全量に対し、57.0〜63.0質量%の範囲のSiOと、19.0〜23.0質量%の範囲のAlと、10.0〜15.0質量%の範囲のMgOと、4.0〜11.0質量%の範囲のCaOとを含み、かつ、SiO、Al、MgO及びCaOの合計含有量が99.5質量%以上である組成を備えるガラス繊維を提案している(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1記載のガラス繊維を用いることで、Eガラス繊維を用いるよりも、樹脂組成物及びその成形品に高い引張強度、高い曲げ強度及び高い曲げ弾性率を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/155362号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品は、スマートフォンやノートパソコン等の電子機器の筐体に用いられることが増えている。前記スマートフォンやノートパソコン等は、持ち運ばれる機会が多く、それゆえ落下等の衝撃にさらされる機会も多いことから、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品には、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率に加えて、高い衝撃強さが求められている。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品は、衝撃強さについては、Eガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品と同等又はそれ以下であるという不都合がある。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、高い引張強度、高い曲げ強度、高い曲げ弾性率、及び、高い衝撃強さを兼ね備える成形品を実現可能なガラス繊維強化樹脂組成物及び該ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は、ガラス繊維強化樹脂組成物の全量に対し10〜90質量%の範囲のガラス繊維と、90〜10質量%の範囲の樹脂とを含有するガラス繊維強化樹脂組成物であって、該ガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し57.0〜60.0質量%の範囲のSiOと、17.5〜20.0質量%の範囲のAlと、8.5〜12.0質量%の範囲のMgOと、10.0〜13.0質量%の範囲のCaOと、0.5〜1.5質量%の範囲のBとを含み、かつ、SiO、Al、MgO及びCaOの合計量が98.0質量%以上であり、Alの含有率(質量%)に対するBの含有率(質量%)とCaOの含有率(質量%)との積の比((B(質量%)×CaO(質量%))/Al(質量%))が0.25〜0.75の範囲である組成を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は、前記組成を備えるガラス繊維を含有することで、高い引張強度、高い曲げ強度、高い曲げ弾性率、及び、高い衝撃強さを兼ね備えた成形品を実現することができる。
【0011】
本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は、該ガラス繊維強化樹脂組成物の全量に対しガラス繊維の含有量が10質量%未満又は樹脂の含有量が90質量%を超えるときには、該ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品において十分な引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率及び衝撃強さを得ることができない。一方、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は、該ガラス繊維強化樹脂組成物の全量に対しガラス繊維の含有量が90質量%を超えるか又は樹脂の含有量が10質量%未満であるときには、該ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の製造が困難となる。
【0012】
本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は、射出成形により成形品を形成する場合には、成形品の強度と、成形品の製造容易性とを両立するという観点から、20〜70質量%の範囲のガラス繊維と、80〜30質量%の範囲の樹脂とを含有することが好ましく、25〜60質量%の範囲のガラス繊維と、75〜40質量%の範囲の樹脂とを含有することがより好ましく、30〜50質量%の範囲のガラス繊維と、70〜50質量%の範囲の樹脂とを含有することがさらに好ましい。
【0013】
本発明のガラス繊維強化樹脂組成物に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維の全量に対するSiOの含有量が57.0質量%未満であると、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率を十分に向上させることができない。一方、前記ガラス繊維において、ガラス繊維の全量に対するSiOの含有量が60.0質量%を超えると1000ポイズ温度及び液相温度が高くなり、ガラス繊維の製造が困難になる。
【0014】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するSiOの含有量は、58.2〜59.8質量%の範囲とすることが好ましく、58.4〜59.7質量%の範囲とすることがより好ましく、58.6〜59.6質量%の範囲とすることがさらに好ましく、58.8〜59.5質量%の範囲とすることが特に好ましく、58.9〜59.4質量%の範囲とすることが最も好ましい。前記ガラス繊維において、SiOの含有量がこのような範囲となることで、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の高い引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率と、ガラス繊維の製造容易性とを両立させることができる。
【0015】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するAlの含有量が17.5質量%未満であると、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率を十分に向上させることができない。一方、ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するAlの含有量が、20.0質量%を超えると液相温度が高くなるため作業温度範囲が狭くなってガラス繊維の製造が困難になり、また、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の衝撃強さを十分に向上させることができない。
【0016】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するAlの含有量は、18.0〜19.5質量%の範囲とすることが好ましく、18.2〜19.3質量%の範囲とすることがより好ましく、18.3〜19.1質量%の範囲とすることがさらに好ましく、18.4〜18.9質量%の範囲とすることが特に好ましい。前記ガラス繊維においては、Alの含有量がこのような範囲となることで、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の高い引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率及び衝撃強さと、ガラス繊維の製造容易性とを両立させることができる。
【0017】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するMgOの含有量が8.5質量%未満であると、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率を十分に向上させることができない。一方、前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するMgOの含有量が12.0質量%を超えると液相温度が高くなるため作業温度範囲が狭くなってガラス繊維の製造が困難になる。
【0018】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するMgOの含有量は、8.8〜11.5質量%の範囲とすることが好ましく、9.0〜11.0質量%の範囲とすることがより好ましく、9.2〜10.5質量%の範囲とすることがさらに好ましく、9.3〜10.2質量%の範囲とすることが特に好ましく、9.4〜9.9質量%の範囲とすることが最も好ましい。前記ガラス繊維においては、MgOの含有量がこのような範囲となることで、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の高い引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強さと、ガラス繊維の製造容易性とを両立させることができる。
【0019】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するCaOの含有量が10.0質量%未満であると液相温度が高くなるため作業温度範囲が狭くなってガラス繊維の製造が困難になり、また、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の衝撃強さを十分に向上させることができない。一方、前記ガラス繊維おいて、ガラス繊維全量に対するCaOの含有量が13.0質量%を超えると、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率を十分に向上させることができない。
【0020】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するCaOの含有量は、10.3〜12.5質量%の範囲とすることが好ましく、10.5〜12.3質量%の範囲とすることがより好ましく、10.7〜12.1質量%の範囲とすることがさらに好ましく、10.9〜11.9質量%の範囲とすることが特に好ましく、11.1〜11.8質量%の範囲とすることが最も好ましい。前記ガラス繊維においては、CaOの含有量がこのような範囲となることで、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の高い引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強さと、ガラス繊維の製造容易性とを両立させることができる。
【0021】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するBの含有量が0.5質量%未満であると、ガラス繊維を製造する際にガラス繊維の切断が生じ易くなり、製造効率が低下する。一方。前記ガラス繊維において。ガラス繊維全量に対するBの含有量が1.5質量%超であると、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率を十分に向上させることができない。
【0022】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するBの含有量は、0.5〜1.2質量%の範囲とすることが好ましく、0.5〜1.0質量%の範囲とすることがより好ましい。前記ガラス繊維においては、Bの含有量がこのような範囲となることで、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の高い引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率と、優れたガラス繊維の製造効率性とを両立させることができる。
【0023】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するSiO、Al、MgO及びCaOの合計量が、98.0質量%未満であると、他の不純物成分の含有量が相対的に多くなる。この結果、作業温度範囲が狭くなってガラス繊維の製造が困難になり、あるいは、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度、曲げ強度曲げ弾性率、及び衝撃強さを十分に向上させることができない。
【0024】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するSiO、Al、MgO及びCaOの合計量は、98.0質量%以上99.5質量%未満であることが好ましく、98.5質量%以上99.0質量%未満であることがより好ましい。前記ガラス繊維において、SiO、Al、MgO及びCaOの合計量をこのような範囲にすることにより、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の高い引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強さと、ガラス繊維の製造容易性とを両立させることができる。
【0025】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物に含まれるガラス繊維において、Alの含有率(質量%)に対するCaOの含有率(質量%)の比(CaO(質量%)/Al(質量%))が0.50〜0.72の範囲であり、かつ、Alの含有率(質量%)に対するBの含有率(質量%)とCaOの含有率(質量%)との積の比((B(質量%)×CaO(質量%))/Al(質量%))が0.22〜1.00の範囲であることが好ましく、CaO(質量%)/Al(質量%)が0.55〜0.67の範囲であり、かつ、(B(質量%)×CaO(質量%))/Al(質量%)が0.25〜0.75の範囲であることがより好ましく、CaO(質量%)/Al(質量%)が0.57〜0.65の範囲であり、かつ、(B(質量%)×CaO(質量%))/Al(質量%)が0.27〜0.65の範囲であることがさらに好ましい。このようにすることにより、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の高い引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強さと、優れたガラス繊維の製造効率性とを両立させることができる。
【0026】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物に含まれるガラス繊維は、前記の成分に加えて、NaO及びKOを含んでいてもよい。NaO及びKOは、通常、ガラスの粘度を下げて溶けやすくするために加えられるが、ガラス繊維の強度や耐薬品性が低下するため、ガラス繊維全量に対するNaO及びKOの合計量は、0.05〜1.0質量%の範囲とすることが好ましい。
【0027】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物に含まれるガラス繊維は、Feを含んでいてもよい。Feは、通常、ガラス原料中の不純物として存在するが、溶融ガラス中の輻射熱の吸収やガラス繊維の着色に影響するため、ガラス繊維全量に対するFeの含有量は0.05〜1.0質量%の範囲とすることが好ましい。
【0028】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物に含まれるガラス繊維において、NaO、KO及びFeを含む場合、ガラス繊維全量に対するNaO、KO及びFeの合計量は、0.1〜2.0質量%の範囲とすることが好ましく、0.1〜0.5質量%の範囲とすることがより好ましい。
【0029】
なお、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物に含まれるガラス繊維において、前述した各成分の含有率の測定は、軽元素であるBについてはICP発光分光分析装置を用いて、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うことができる。
【0030】
測定方法としては、初めに、ガラス繊維強化樹脂組成物又はガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品を、例えば、300〜650℃のマッフル炉で0.5〜24時間程度加熱する等して、有機物を分解する。次に、残ったガラス繊維を白金ルツボに入れ、電気炉中で1550℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、粉砕し粉末化する。軽元素であるBについてはガラス粉末をアルカリ溶融分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素はガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有率を求めることができる。
【0031】
本発明において、ガラス繊維強化樹脂組成物に含まれるガラス繊維は、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)が2.0〜10.0の範囲にあり、断面積を真円に換算したときの繊維径(以下、換算繊維径ということもある)が3.0〜35.0μmの範囲にある扁平断面を備えることが好ましい。ガラス繊維強化樹脂組成物に含まれるガラス繊維がこのような断面を備える場合、ガラス繊維が円形断面を備える場合と比較して、組成以外は同一の条件でEガラス繊維を用いた際ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強さを基準とした、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強さの向上率が極めて高くなる。
【0032】
前記ガラス繊維において、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)は、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の高い引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強さと、ガラス繊維の製造容易性との両立との観点から、2.2〜6.0の範囲であることが好ましく、3.2〜4.5の範囲であることがより好ましい。なお、ガラス繊維が複数本のガラスフィラメントが集束されて形成される場合、ガラス繊維の断面形状は、ガラス繊維を形成するガラスフィラメントの断面形状を意味する。
【0033】
また、前記ガラス繊維において、換算繊維径は、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の高い引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強さと、ガラス繊維又はガラス繊維強化樹脂組成物を製造する際の製造容易性との両立の観点から、6.0〜20μmの範囲であることが好ましく、6.5〜16.0μmであることがより好ましい。なお、ガラス繊維が複数本のガラスフィラメントが集束されて形成される場合、ガラス繊維の繊維径は、ガラス繊維を形成するガラスフィラメントの繊維径を意味する。
【0034】
また、前記ガラス繊維において、扁平断面の形状としては、ガラス繊維強化樹脂組成物から成形品を製造する際の流動性に優れることから、繭形、楕円形又は長円形(長方形の両端に半円状の形状を付けたもの、あるいはそれに類似した形状をいう)が好ましく、長円形がより好ましい。
【0035】
本発明において、ガラス繊維強化樹脂組成物に含まれるガラス繊維は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、又は、これらの樹脂の混合物で被覆されることが好ましい。前記ガラス繊維がこれらにより被覆されることで、ガラス繊維と樹脂との接着性が高まり、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の高い引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強さが実現される。なお、前記ガラス繊維が、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、又は、これらの樹脂の混合物で被覆されていれば、前記ガラス繊維は、これらの樹脂に加えて、これらの樹脂以外の成分で被覆されていてもよい。
【0036】
前記ガラス繊維において、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、又は、これらの樹脂の混合物は、これらに被覆されていない状態のガラス繊維の質量を基準として、0.1〜1.0質量%の割合でガラス繊維を被覆することが好ましい。前記ガラス繊維は、この範囲でウレタン樹脂、エポキシ樹脂、又は、これらの樹脂の混合物により被覆されることで、ガラス繊維と樹脂との接着性を確実に高めることができる。
【0037】
本発明の成形品は、前述した本発明のガラス繊維強化樹脂組成物からなる。より具体的には、本発明の成形品は、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物を、射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、中空成形法、発泡成形法(超臨界流体も含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法、スタンピング成形法、インフュージョン法、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、レジントランスファーモールディング法、シートモールディングコンパウンド法、バルクモールディングコンパウンド法、プルトルージョン法、フィラメントワインディング法等の公知の成形法で成形して得られるものである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0039】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、ガラス繊維強化樹脂組成物の全量に対し10〜90質量%の範囲のガラス繊維と、10〜90質量%の範囲の樹脂とを含有し、該ガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し57.0〜60.0質量%の範囲のSiOと、17.5〜20.0質量%の範囲のAlと、8.5〜12.0質量%の範囲のMgOと、10.0〜13.0質量%の範囲のCaOと、0.5〜1.5質量%の範囲のBとを含み、かつ、SiO、Al、MgO及びCaOの合計量が98.0質量%以上であり、Alの含有率(質量%)に対するBの含有率(質量%)とCaOの含有率(質量%)との積の比((B(質量%)×CaO(質量%))/Al(質量%))が0.25〜0.75の範囲である組成を備える。
【0040】
前記ガラス繊維が、前述の範囲の組成を備えることで、ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の高い引張強度、高い曲げ強度、高い曲げ弾性率、及び、高い衝撃強さが実現される。
【0041】
前記ガラス繊維は、以下の方法で製造される。初めに、前述の組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融炉に供給し、例えば、1450〜1550℃の範囲の温度で溶融する。次に、溶融された溶融ガラスを所定の温度に制御されたブッシングのノズルチップから吐出し、高速で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却し、固化することによりガラス繊維を形成する。ここで、通常、ガラス繊維は、1本のノズルチップから引きだされたガラスフィラメントが複数本集束された状態で形成される。また、通常、ガラス繊維は円形の断面を有する。
【0042】
前記ノズルチップは、例えば、扁平形状等の異形断面を備えるガラス繊維を製造する場合には、ブッシング底面のノズルプレートに、短径に対する長径の比(長径/短径)が2.0〜10.0の範囲にあり、開口径が長径1.0〜10.0mm、短径0.5〜2.0mmである開口部(オリフィス孔)及び、開口部を通過した溶融ガラスを急冷するための切欠部や突起部といった冷却手段を備えるものを用いることができる。
【0043】
前記ガラス繊維は、複数本のガラスフィラメントが集束されることで、100〜10000tex(g/km)の範囲の重量を備える。
【0044】
前記ガラス繊維は、その形成過程において、フィラメントの集束性の向上、ガラス繊維と樹脂との接着性の向上等を目的として、その表面を有機物で被覆される。このような有機物としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、又は、これらの樹脂の混合物を好ましく用いることができ、これらの樹脂に加えて、シランカップリング剤、皮膜形成剤、潤滑剤等を含む樹脂組成物を用いることができる。このような樹脂組成物は、樹脂組成物に被覆されていない状態のガラス繊維の質量を基準として、0.1〜2.0質量%の割合で、ガラス繊維を被覆する。なお、有機物によるガラス繊維の被覆は、例えば、ガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて樹脂溶液又は樹脂組成物溶液をガラス繊維に付与し、その後、樹脂溶液又は樹脂組成物溶液の付与されたガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。
【0045】
前記樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いることができるが、高い引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強さが求められる用途が多いことから、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0046】
前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリサルフォン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、高い引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強さが求められる用途が多いことから、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、又はポリカーボネート樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂がより好ましい。
【0047】
また、前記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、ポリイソシアヌレート樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができる。
【0048】
前記熱可塑性樹脂又は前記熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、前記ガラス繊維及び前記樹脂以外の成分を含むことができる。このような成分としては、前記ガラス繊維以外のガラス繊維(例えば、Eガラス繊維、Sガラス繊維)、ガラス繊維以外の強化繊維(例えば、炭素繊維、金属繊維)、ガラス繊維以外の充填剤(例えば、ガラスパウダー、タルク、マイカ)、難燃剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、流動性改良剤、アンチブロッキング剤、潤滑剤、核剤、抗菌剤、顔料等を挙げることができる。また、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は、ガラス繊維強化樹脂組成物の全量に対し、これらの成分を合計で0〜40質量%の範囲で含有することができる。
【0050】
本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は、例えば、複数本のガラスフィラメントが集束されて形成され、1〜25mmの長さに切断されたガラス繊維(チョップドストランド)を、樹脂と混練することで得ることができる。得られたガラス繊維強化樹脂組成物は、ノズルからの押出し、所定長(例えば、1〜50mm)に切断することにより、ペレットの形状に加工することができる。または、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は、複数本のガラスフィラメントが集束されて形成され、連続的に巻き取られたガラス繊維(ロービング)に、溶融した熱可塑性樹脂を含侵させてから、冷却することで、ロービングの周囲に熱可塑性樹脂を保持させることで得ることができる。得られたガラス繊維強化樹脂組成物は、所定長(例えば、1〜50mm)に切断することにより、ペレットの形状に加工することができる。なお、後者の例示において、ガラス繊維強化樹脂組成物中のガラス繊維の繊維長は、ペレットの長さ(所定の切断長)と実質的に等しくなる。
【0051】
本発明のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品は、例えば、前述のようにして得られたペレットを前述の公知の成形方法により成形品に加工することで得ることができる。
【0052】
本発明のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品において、ガラス繊維が前述の扁平断面を備える場合、成形品中のガラス繊維の数平均繊維長は、例えば、250〜400μmの範囲であり、265〜350μmの範囲であることが好ましい。ガラス繊維強化樹脂組成物中において、前記ガラス繊維が、前記範囲の平均繊維長を備えることで、該ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の高い引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強さが実現される。
【0053】
ここで、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品中のガラス繊維の数平均繊維長が前述の範囲である場合に、250μm以上の繊維長をもつガラス繊維の割合が、40.0質量%以上であることが好ましく、45.0質量%以上であることがより好ましく、48.0質量%以上であることがさらに好ましい。本発明のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品中において、ガラス繊維の繊維長がこのように分布することで、該ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の高い引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強さが実現される。
【0054】
本発明のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品中のガラス繊維の数平均繊維長の測定方法としては、初めに、該ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品を、例えば、300〜650℃のマッフル炉で0.5〜24時間程度加熱する等して、有機物を分解する。次に、残ったガラス繊維をガラスシャーレに移し、アセトンを用いてシャーレの表面に分散させる。次に、表面に分散した、500本以上のガラス繊維について実体顕微鏡を用いて繊維長を測定し、数平均繊維長を算出する。
【0055】
本発明のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の用途としては、例えば、電子機器筐体、電子部品、車両外装部材、車両内装部材、車両エンジン周り部材、高圧タンク等を挙げることができる。引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強さを高い水準で兼ね備えることが求められることから、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の用途としては、スマートフォン、タブレット、ノートパソコン、携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機等の携帯電子機器筐体が好ましい。
【0056】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例】
【0057】
[ガラス組成]
表1に示す4種類のガラス組成を用いた。ここで、組成1及び組成2は本発明のガラス繊維強化樹脂組成物に用いるガラス繊維のガラス組成であり、組成3はAl、CaO及びBが本発明のガラス繊維強化樹脂組成物に用いるガラス繊維のガラス組成の範囲から外れており、組成4はEガラス組成に相当する。
【0058】
なお、各ガラス組成の繊維弾性率は、接触、摩擦等による傷、劣化等のない1本のガラスフィラメントを、中央に直径50mmの穴の開いた所定の台紙に接着して試験片とし、該試験片を前記引張試験機のつかみ具にセットし、台紙の端部を切除した後、クロスヘッド速度5mm/分で引張試験を行い、初期の強度変動値とそれに対応する伸び率から算出した。測定中に糸抜けが生じた試験片は除外し、n=15の平均値を繊維弾性率の測定値とした。
【0059】
【表1】
【0060】
[樹脂]
ポリアミド樹脂(表中、PAを表記する)として、UBE NYLON 1015B(商品名、宇部興産株式会社製)を用いた。
【0061】
ポリカーボネート樹脂(表中、PCとして表記する)として、パンライト L−1250Y(商品名、帝人株式会社製)を用いた。
【0062】
[引張強度]
ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度は、ISO527に準拠して測定した。
【0063】
[曲げ強度]
ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の曲げ強度は、ISO178に準拠して測定した。
【0064】
[曲げ弾性率]
ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の曲げ強度は、ISO178に準拠して測定した。
【0065】
[シャルピー衝撃強さ]
ガラス繊維強化樹脂組成物からなるシャルピー衝撃強さは、ISO179に準拠して測定した。
【0066】
〔実施例1−2、比較例1−2〕
表2に示すとおり、前記組成1〜4をそれぞれ備える円形断面を有するガラス繊維と、ポリアミド樹脂とからなるガラス繊維強化樹脂組成物について、ガラス繊維が前記組成1を備える場合を実施例1、前記組成2を備える場合を実施例2、前記組成3を備える場合を比較例1、前記組成4を備える場合を比較例2として、該ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率及びシャルピー衝撃強さを評価した。
【0067】
なお、表中、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率及びシャルピー衝撃強さ欄の角括弧中の数値は、組成4(Eガラス組成)を用いた場合を100とした際の相対値を意味する。
【0068】
【表2】
【0069】
表2に示されるとおり、本発明に規定されるガラス組成を備える実施例1及び実施例2のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品は、Eガラス組成を備える比較例2のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品と比較して、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び、シャルピー衝撃強さの全てが高い値となっている。
【0070】
一方、Al、CaO及びBが本発明に規定されるガラス組成の範囲から外れている比較例1のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品は、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率は、実施例1、2及び比較例2よりも高いが、シャルピー衝撃強さが、比較例2よりも劣っている。
【0071】
〔実施例3−4、比較例3−4〕
表3に示すとおり、前記組成1〜4をそれぞれ備える長円形断面を有するガラス繊維と、ポリアミド樹脂とからなるガラス繊維強化樹脂組成物について、ガラス繊維が前記組成1を備える場合を実施例3、前記組成2を備える場合を実施例4、前記組成3を備える場合を比較例3、前記組成4を備える場合を比較例4として、該ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率及びシャルピー衝撃強さを評価した。
【0072】
なお、表中、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率及びシャルピー衝撃強さ欄の角括弧中の数値は、組成4(Eガラス組成)を用いた場合を100とした際の相対値を意味する。
【0073】
【表3】
【0074】
表3に示されるとおり、本発明に規定されるガラス組成を備える実施例3及び実施例4のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品は、Eガラス組成を備える比較例4のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品と比較して、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び、シャルピー衝撃強さの全てが高い値となっている。また、表2及び表3の比較より、ガラス繊維の断面形状が扁平断面(長円形)である場合、Eガラス組成を備えるガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品を基準とした、引張強度等の向上率が極めて高くなっている。
【0075】
一方、Al、CaO及びBが本発明に規定されるガラス組成の範囲から外れている比較例3のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品は、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率は、比較例4よりも高いが、シャルピー衝撃強さが、比較例4と同等である。
【0076】
また、表2及び表3の比較より、ガラス繊維の断面形状が円形である場合には、組成1又は2のガラス組成を備えるガラス繊維を組むガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品は、組成3のガラス組成を含むガラス組成を備えるガラス繊維を組むガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品よりも、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率が若干劣るが、ガラス繊維の断面形状が扁平断面(長円形)である場合には、逆にこれらの値が優れている。
【0077】
〔実施例5、比較例5−6〕
表4に示すとおり、前記組成2〜4をそれぞれ備える長円形断面を有するガラス繊維と、ポリカーボネート樹脂とからなるガラス繊維強化樹脂組成物について、ガラス繊維が前記組成2を備える場合を実施例5、前記組成3を備える場合を比較例5、前記組成4を備える場合を比較例6として、該ガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率及びシャルピー衝撃強さを評価した。
【0078】
なお、表中、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率及びシャルピー衝撃強さ欄の角括弧中の数値は、組成4(Eガラス組成)を用いた場合の引張強度等を100とした際の相対値を意味する。
【0079】
【表4】
【0080】
表4に示されるとおり、本発明に規定されるガラス組成を備える実施例2のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品は、Eガラス組成を備える比較例6のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品と比較して、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、及び、シャルピー衝撃強さの全てが高い値となっている。
【0081】
一方、Al、CaO及びBが本発明に規定されるガラス組成の範囲から外れている比較例5のガラス繊維強化樹脂組成物からなる成形品は、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率は、比較例6よりも高いが、シャルピー衝撃強さが、比較例6よりも劣っている。