(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水性再剥離型粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99.9重量%と、カルボキシル基含有モノマー0.1〜8重量%とを含むモノマー混合物の乳化重合物であるアクリル系重合体(A)、アルキレンオキサイド単位を18モル以上有する界面活性剤、および第一の可塑剤を含む。
本発明の水性再剥離型粘着剤は、塗工・乾燥することで形成した粘着剤層と基材を有する粘着シートとして使用することが好ましい。
本発明の水性再剥離型粘着剤は、被着体に長期貼り付けた後の粘着力の変化が少なく、再剥離性が良好であり、かつ極性が異なる多様な被着体に対して良好な再剥離性を有している。なお本発明で「シート」、「テープ」および「ラベル」は同義語である。また、モノマーは、エチレン性不飽和基含有単量体である。また、被着体とは、粘着シートを貼り付ける相手方をいう。
【0011】
本発明で用いるアクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99.9重量%と、カルボキシル基含有モノマー0.1〜8重量%とを含むモノマー混合物の乳化重合物である。なお、(メタ)アクリルは、アクリルおよびメタクリルであり、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートである。
【0012】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸iso−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸iso−ノニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの中でも、入手のしやすさや、モノマー混合物の乳化安定性等の面から(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルを使用するのがより好ましい。
【0013】
また(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の水素原子の一部を、アルコキシ基などによって置換した化合物も含む。係る化合物は、例えば(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独または2種類以上を併用できる。
【0014】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、モノマー混合物100重量%中、50〜99.9重量%含むことが好ましく、70〜99重量%がより好ましい。50〜99.9重量%含むことで粘着力と再剥離性を両立し易い。
【0015】
カルボキシル基含有モノマーは、カルボキシル基以外にも酸無水物基含有化合物を含む。
【0016】
カルボキシル基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、無水フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ブチル等が挙げられる。これらの中でもアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸の併用がより好ましい。前記併用により、乳化重合の際の重合安定性がより向上し、紙基材との密着性もより向上する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独または2種類以上を併用できる。
【0017】
カルボキシル基含有モノマーは、モノマー混合物100重量%中、0.1〜8重量%含むことが好ましく、0.8〜5.0重量%がより好ましい。0.1〜8重量%含むことで粘着力と再剥離性を両立し易い。
【0018】
アクリル系重合体(A)の合成に使用できる(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基含有モノマー以外の他のモノマーは、例えば、水酸基含有モノマー、自己架橋性モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、イミド基含有モノマー、その他ビニルモノマーが好ましい。
水酸基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
自己架橋性モノマーは、例えばフタル酸ジアリル、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルが挙げられる。
アミノ基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルが挙げられる。
アミド基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
イミド基含有モノマーは、例えばN−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドが挙げられる。
その他ビニルモノマーは、例えば酢酸ビニル、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリルが挙げられる。
なお、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールアジペートなどの公知の多官能(メタ)アクリル酸化合物は、その他ビニルモノマーに含まれる。
【0019】
前記モノマー混合物の中でも自己架橋性モノマーを含むことが好ましい。自己架橋性モノマーは、アクリル系共重合体(A)相互で自己架橋する。これにより水性再剥離型粘着剤の凝集力が向上し、再剥離性がさらに向上する。
【0020】
自己架橋性モノマーは、モノマー混合物100重量%中、0.01重量部以上2重量%未満が好ましく、0.1重量部以上1重量部以下がより好ましい。
【0021】
アクリル系重合体(A)は、乳化重合物であり分子量が非常に大きいため、通常重量平均分子量を測定することができない。
【0022】
アクリル系重合体(A)のガラス転移温度は、−80〜0℃が好ましく、−70〜−20℃がより好ましい。
【0023】
アクリル系重合体(A)は、モノマー混合物を乳化重合して合成できる。乳化重合には、通常界面活性剤を使用する。本発明で用いる界面活性剤は、アルキレンオキサイド単位を18モル以上有する界面活性剤を使用する。
アルキレンオキサイド単位が18モル以上の界面活性剤を使用すると、極性が高いポリ塩化ビニルに対して、粘着シートを貼付して長期間経過した後の粘着力の経時上昇を抑制できるため、良好な再剥離性が得られる。
アルキレンオキサイド単位を18モル以上有する界面活性剤のアルキレンオキサイド単位は、特に上限値はなく、乳化重合に適用できる範囲であれば良く限定されない。この点、一般に市販されている界面活性剤は、100モル程度が上限値である。そのため強いて挙げれば上限値は100モルである。したがって、界面活性剤のアルキレンオキサイド単位は18〜100モルが好ましく、40〜100モルがより好ましく、50〜70がさらに好ましい。なお、ここで示すアルキレンオキサイド単位の数は平均値である。なお、アルキレンオキサイド単位は、エチレンオキキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。これらの中でもアクリル系重合体(A)の重合安定性、機械安定性の面でエチレンオキサイドが好ましい。
【0024】
アルキレンオキサイド単位を18モル以上有する界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(エチレンオキサイド単位は18モル以上)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩(エチレンオキサイド単位は18モル以上)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム(エチレンオキサイド単位は18モル以上)等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(エチレンオキサイド単位は18モル以上)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位の合計が18モル以上)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(エチレンオキサイド単位は18モル以上)等が挙げられる。
【0025】
アルキレンオキサイド単位を18モル以上有する界面活性剤は、モノマー混合物100重量部に対して、0.5〜5重量部が好ましく、0.8〜2重量部がより好ましい。
【0026】
乳化重合にはアルキレンオキサイド単位を18モル以上有する界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用できる。他の界面活性剤は、アニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、エチレン性不飽和結合を有する反応性界面活性剤であっても良い。
【0027】
アニオン系界面活性剤は、例えばステアリン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0028】
ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン高級脂肪酸エステル、オレイン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル等が挙げられる。他の界面活性剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0029】
他の界面活性剤の中でも、良好な重合安定性が得られるアニオン系界面活性剤が好ましく、その中でもポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩がより好ましい。
【0030】
他の界面活性剤は、モノマー混合物100重量部に対して、0.5〜3重量部使用することが好ましい。前記範囲で使用すると重合安定性がより向上する。
【0031】
乳化重合に使用する重合開始剤は、水溶性重合開始剤を適宜選択して使用できる。
水溶性開始剤は、過酸化物、アゾ化合物が好ましい。
過酸化物は、例えばアルキルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メタンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−イソブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
アゾ化合物は、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2’−アゾビス(2−メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレート、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕−プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕等が挙げられる。
【0032】
また、水溶性重合開始剤に還元剤を併用することで、重合速度を速めること、あるいは低い反応温度で重合ができる。
前記還元剤は、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ブドウ糖、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元性の化合物が挙げられる。
前記還元剤は、モノマー混合物100重量部に対して、0.01〜2重量部使用することが好ましい。
【0033】
本発明では乳化重合の際、必要に応じてpHを調整するため、緩衝剤を使用できる。
緩衝剤としては、pH緩衝作用を有するものであれば特に制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、蟻酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。
【0034】
緩衝剤は、モノマー混合物100重量部に対して、0.01〜5重量部使用することが好ましく、0.05〜3重量部がより好ましい。
【0035】
乳化重合は、公知の手法を利用できるところ、本発明では、まず、モノマー混合物を予め乳化し、その乳化物を重合する方法(プレ乳化法という)が好ましい。次に前記乳化物は、その全量を予め反応容器中に仕込んでから重合できる。または前記乳化物の一部を反応容器中に仕込み、残量を分割添加あるいは滴下しながら重合できる。または前記乳化物の全量を分割添加あるいは滴下しながら重合できる。
【0036】
乳化重合の際、連鎖移動剤を使用してアクリル系重合体(A)の分子量を適宜調整できる。連鎖移動剤は、例えばメルカプタン系化合物、チオグリコール系化合物、βメルカプトプロピオン酸などのチオール系化合物等が挙げられる。
【0037】
連鎖移動剤は、モノマー混合物100重量部に対して、0.01〜0.15重量部使用することが好ましく、0.3〜0.1重量部がより好ましい。
【0038】
本発明の水性再剥離型粘着剤は、第一の可塑剤を含むことが必要であり。さらに第二の可塑剤を含むことが好ましい。水性再剥離型粘着剤は、可塑剤を含むことで粘着剤の弾性が低下し、ポリオレフィンや塩化ビニルといった極性の異なるプラスチックに対して良好な再剥離性が得られる。また、水性再剥離型粘着剤が第一の可塑剤と第二の可塑剤を含むと、ダンボールに対する良好な再剥離性という新たな効果が得られる。
【0039】
第一の可塑剤および第二の可塑剤(以下、総称して可塑剤ということがある)は、リン酸エステル、脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール等から適宜選択できる。なお、リン酸エステルは、モノマーを乳化可能で界面活性剤として使用できる化合物以外の化合物である。
【0040】
リン酸エステルは、例えばエチルヘキシルジフェニルフォスフェート、エチルヘキシルアシッドフォスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)フォスフェート、イソデシルアシッドフォスフェート、トリデシルホスファイト、トリイソデシルアシッドフォスフェート、オレイルアシッドフォスフェート等が挙げられる。
脂肪酸エステルは、例えばクエン酸トリブチルアセテート、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチル、アジピン酸トリオクチル、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。これらの中でもクエン酸トリブチルアセテート、トリメリット酸トリオクチル、アジピン酸トリオクチルが好ましい。
ポリアルキレングリコールは、例えばポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリ(オキシエチレンオキシプロピレン)グリコールモノエーテル、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックポリマー等が挙げられる。これらの中でもポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルが好ましい。
【0041】
本発明で用いる第一の可塑剤と第二の可塑剤は、そのいずれか一方が、リン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステルを含むことで凝集力および再剥離性がより高いレベルに向上する。その理由としてリン酸エステルは、アクリル系重合体(A)との相溶し難い傾向があるため、粘着剤層の表面に移行しやすい。前記移行は、高温雰囲気で促進されるため、粘着シートを被着体に貼付した後、高温雰囲気で経時した場合、粘着剤層の凝集力を低下させず、さらに粘着剤層と被着体とを過剰に密着させないことから粘着力と再剥離性を高いレベルで両立できる。前記両立は、ポリ塩化ビニルへの貼付で特に効果的である。
【0042】
リン酸エステルは、炭素数が8〜14のアルキル基を有することが好ましい。また、リン酸エステルは、上記の通り界面活性剤ではないため、アルキレンオキサイド構造を有さず、かつアルキル基が分岐構造を有する化合物であることがより好ましい。前記分岐構造を有するとリン酸エステルは、再剥離性がさらに向上する。このようなリン酸エステルは、既に例示した中でイソデシルアシッドフォスフェート、イソトリデシルアシッドフォスフェートである。
【0043】
第一の可塑剤は、アクリル系重合体(A)100重量部に対して0.2〜10重量部配合することが好ましく、0.2〜6重量部配合することがより好ましく、0.5〜3.5重量部がさらに好ましい。0.2〜10重量部使用することで凝集力および再剥離性を高いレベルで両立しやすくなる。
【0044】
第二の可塑剤は、アクリル系重合体(A)100重量部に対して0.2〜10重量部配合することが好ましく、1.0〜6.0重量部がより好ましい。0.2〜10重量部使用することで、ダンボールのように破断し易く、再剥離性が得難い被着体に対しても良好な再剥離性が得易くなる。
【0045】
可塑剤の分子量は、100〜6000が好ましく、100〜3000がより好ましい。分子量が100〜6000であることで再剥離性がさらに向上する。
【0046】
本発明の水性再剥離型粘着剤は、任意成分として架橋剤を配合できる。本発明の水性再剥離型粘着剤は、架橋剤を配合しなくとも良好な再剥離性を有しているが、再剥離性をさらに向上させるため架橋剤を配合できる。架橋剤は、チタンキレート化合物、アルミキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、酸化亜鉛等の金属架橋剤、アジリジン系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、ヒドラジド系化合物等が好ましい。
【0047】
本発明の水性再剥離型粘着剤は、さらに任意成分としてレベリング剤、防腐剤、消泡剤、増粘剤、顔料分散体などの添加剤を配合できる。
【0048】
水性再剥離型粘着剤の製造方法は、アルキレンオキサイド単位を18モル以上有する界面活性剤、および第一の可塑剤(ただし、界面活性剤を除く)の存在下に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)50〜99.9重量%、カルボキシル基含有モノマー(a2)0.1〜5重量%を含むモノマー混合物を乳化重合させてアクリル系重合体(A)を得る工程を含むことが好ましい。次いで、さらに任意成分を配合することが好ましい。以上、第一の製造方法。
【0049】
または、アクリル系重合体(A)を合成した後、第一の可塑剤を配合し、次いで任意成分を配合する方法。以上、第二の製造方法。
または第一の可塑剤と第二の可塑剤の存在下にアクリル系重合体(A)を合成し、次いで任意成分を配合する方法。以上、第三の製造方法。
【0050】
これらの方法の中でも第一の製造方法および第三の製造方法は、粘着シートの再剥離性をより向上できるため好ましい。また第一の製造方法および第三の製造方法は、可塑剤とモノマーを配合し、プレエマルジョンを作製した後、乳化重合を行うことが好ましい。
【0051】
本発明の粘着シートは、基材と、水性再剥離型粘着剤を含む粘着剤層とを備えている。粘着シートの製造方法は、例えば(1)剥離性シートに水性再剥離型粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、さらに基材を貼り付ける方法。また(2)基材に水性再剥離型粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、粘着剤層に剥離性シートを貼り付ける方法が好ましい。
【0052】
前記塗工は、例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等公知の方法が挙げられる。塗工の際、通常乾燥を行う。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法等が使用できる。乾燥温度は通常60〜180℃程度が好ましい。
【0053】
粘着剤層の厚さは、一般的に5μm〜100μm程度であり、10μm〜50μmが好ましい。
【0054】
基材は、紙、プラスチック、ゴム、発泡体、繊維、不織布、ガラス、金属、木材等が挙げられる。これらの中でも紙、プラスチックが好ましく、紙がより好ましい。
基材は、単一素材または積層体であっても良い。
また、前記基材は、裏面(粘着剤層を直接貼り合わせた面の反対面)に剥離処理、または帯電防止処理をすることができる。また前記基材は、公知のアンカー剤で塗工処理してもよい
【0055】
基材の厚さは、一般的に10m〜200μm程度であり、20μm〜80μmが好ましい。
【0056】
剥離性シートは、上質紙等の紙またはプラスチックフィルムに剥離剤をコーティングしてなる公知の剥離紙または剥離フィルムを用いることができ、剥離性シートの厚みは、通常10μm〜200μmである
【0057】
本発明の粘着シートが適用できる被着体は、例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、他のプラスチック、金属(ステンレス等)、ゴム、木材、ダンボール、ガラス、塗料の塗装面等幅広く挙げられる。
【0058】
また本発明の粘着シートの用途は、例えば製品に出荷時に用いる物流ラベル、バーコード等を印字したラベル、マスキングテープ、プロテクトフィルム用途などの各種被着体に対し貼着し、各分野・各用途において所定の目的を果たした後に、被着体から剥離し得ることが要求される再剥離用途のほか、永久貼付用途にも使用することができる。
【実施例】
【0059】
次に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。以下の説明において、部は重量部、%は重量%である。
【0060】
(実施例1)
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、アクリル酸2−エチルヘキシル95.9部、カルボキシル基含有モノマーとして、アクリル酸1.0部及びメタクリル酸3.0部、その他単量体として、アセトアセトキシメタクリルアミド0.1部、第一の可塑剤として、イソデシルアシッドフォスフェート2.0部、連鎖移動剤として、チオグリコール酸オクチル0.06部を添加し溶解した。さらに界面活性剤として、エチレンオキサイドの付加モル数が18であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の25%水溶液6.0部を加え、さらに脱イオン水28.8部を加えて攪拌し乳化物を得た。これを滴下ロートに入れた。別途、撹拌機、冷却管、温度計および上記滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、脱イオン水を50.5部、上記乳化物のうちの1.0部を仕込み、フラスコ内部を窒素ガスで置換し、撹拌しながら内温を78℃まで加熱した。その後10%過硫酸アンモニウム水溶液を3.0部添加した。10分後、上記滴下ロートから上記乳化物の残分の滴下を開始した。内温を78℃に保持したまま、上記乳化物を180分かけて滴下した後に、さらに撹拌しながら内温を78℃に保持したまま1時間反応を継続した。その後、t−ブチルハイドロパーオキサイドの10%水溶液1.0部、アスコルビン酸ナトリウムの10%水溶液1.0部を添加し、さらに1時間反応を継続した。その後冷却し、30℃で25%アンモニア水を添加して中和することでアクリル系重合体を含む不揮発分濃度55%、pH7.5のエマルションを得た。得られたエマルション中のアクリル系重合体100部に対し、消泡剤、防腐剤、レベリング剤、増粘剤を適量添加し、水性再剥離型粘着剤を得た。得られた水性再剥離型粘着剤を乾燥後の厚さが18μmになるようにコンマコーターを使用して剥離性シート上に塗工し、100℃の乾燥オーブンで75秒間乾燥した後、市販の上質紙を貼り合わせて粘着シートを得た。後述する試験方法で性能を評価し、その結果を表2に示した。
【0061】
(実施例2)
実施例1の界面活性剤をエチレンオキサイドの付加モル数が40であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩に変更した以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0062】
(実施例3)
実施例1の界面活性剤をエチレンオキサイドの付加モル数が60であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩に変更した以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0063】
(実施例4)
実施例1の界面活性剤をエチレンオキサイドの付加モル数が100であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩に変更した以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0064】
(実施例5)
実施例3のアクリル系共重合体の合成に使用したモノマーをアクリル酸2−エチルヘキシル98.0部、アクリル酸1.0部及びメタクリル酸3.0部に変更した以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0065】
(実施例6)
実施例3のアクリル系共重合体の合成に使用したモノマーをアクリル酸2−エチルヘキシル94.7部、アクリル酸1.0部及びメタクリル酸3.0部、メタクリル酸アセトアセトキシエチル1.3部に変更した以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0066】
(実施例7)
実施例3のアクリル系共重合体の合成に使用したモノマーをアクリル酸2−エチルヘキシル95.5部、アクリル酸1.0部及びメタクリル酸3.0部、フタル酸ジアリル0.5部に変更した以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0067】
(実施例8)
実施例3のアクリル系共重合体の合成に使用したモノマーをアクリル酸2−エチルヘキシル98.4部、アクリル酸0.4部及びメタクリル酸0.3部、メタクリル酸アセトアセトキシエチル0.1部に変更した以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0068】
(実施例9)
実施例3のアクリル系共重合体の合成に使用したモノマーをアクリル酸2−エチルヘキシル97.4部、アクリル酸1.0部及びメタクリル酸5.0部、メタクリル酸アセトアセトキシエチル0.1部に変更した以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0069】
(実施例10)
実施例3のイソトリデシルアシッドフォスフェートを0.2部に変更した以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0070】
(実施例11)
実施例3のイソトリデシルアシッドフォスフェートを6.0部に変更した以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0071】
(実施例12)
実施例3の水性再剥離型粘着剤に第二の可塑剤としてクエン酸トリブチルアセテート0.5部を加えた以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0072】
(実施例13)
実施例3の水性再剥離型粘着剤に第二の可塑剤としてクエン酸トリブチルアセテート5部加えた以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0073】
(実施例14)
実施例3の水性再剥離型粘着剤に第二の可塑剤としてクエン酸トリブチルアセテート7部加えた以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0074】
(実施例15)
実施例3のイソトリデシルアシッドフォスフェートをブチルアシッドフォスフェートに変更した以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0075】
(実施例16)
実施例3の水性再剥離型粘着剤に第二の可塑剤としてポリプロピレングリコール(数平均分子量400)を5.0部加えた以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0076】
(実施例17)
実施例1の界面活性剤をエチレンオキサイドの付加モル数が60であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の25%水溶液2.0部、エチレンオキサイドの付加モル数が8であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の25%水溶液4.0部に変更した以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0077】
(実施例18)
実施例1の界面活性剤をエチレンオキサイドの付加モル数が60であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の25%水溶液12.0部に変更した以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0078】
(比較例1)
実施例3のアクリル系共重合体の合成に使用したモノマーをアクリル酸2−エチルヘキシル90.9部、アクリル酸2.0部及びメタクリル酸7.0部、メタクリル酸アセトアセトキシエチル0.1部に変更し、第二の可塑剤としてクエン酸トリブチルアセテートを5.0部加えた以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0079】
(比較例2)
実施例3の界面活性剤をエチレンオキサイドの付加モル数が8であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩に変更し、第二の可塑剤としてクエン酸トリブチルアセテートを5.0部加えた以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0080】
(比較例3)
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、アクリル酸2−エチルヘキシル95.9部、カルボキシル基含有モノマーとして、アクリル酸1.0部及びメタクリル酸3.0部、その他モノマーとして、アセトアセトキシメタクリルアミド0.1部、連鎖移動剤として、チオグリコール酸オクチル0.06部を添加し溶解した。さらに界面活性剤として、エチレンオキサイドの付加モル数が60であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の25%水溶液6.0部を加え、さらに脱イオン水28.8部を加えて攪拌し乳化物を得た以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0081】
(比較例4)
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、アクリル酸2−エチルヘキシル89.9部、カルボキシル基含有モノマーとして、アクリル酸2.0部及びメタクリル酸8.0部、その他モノマーとして、アセトアセトキシメタクリルアミド0.1部、連鎖移動剤として、チオグリコール酸オクチル0.06部を添加し溶解した。さらに界面活性剤として、エチレンオキサイドの付加モル数が60であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の25%水溶液6.0部を加え、さらに脱イオン水28.8部を加えて攪拌し乳化物を得た以外は同様に行い、水性再剥離型粘着剤および粘着シートを作成した。
【0082】
【表1】
【0083】
上記実施例および比較例の説明で最初に記載した界面活性剤を表1では第一の界面活性剤、同じく二番目に記載した界面活性剤を表1では第二の界面活性剤とする。また、表1の配合量は、原料を不揮発分で換算した重量を記載する。
表1の記号は下記の通りである。
・モノマー
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
AAEM:メタクリル酸アセトアセトキシエチル
DAP:フタル酸ジアリル
【0084】
・界面活性剤
AO付加モル数はアルキレンオキサイド付加モル数を意味する。
・可塑剤
BP:ブチルアシッドホスフェート
IDP:イソデシルアシッドホスフェート
TMS:クエン酸トリブチルアセテート(式量402)
PPG400:ポリプロピレングリコール(数平均分子量400)
【0085】
[試験方法]
(1)粘着力
得られた粘着シートを23℃・50%RH環境下にて長さ100mm×幅25mmの大きさに準備し試料とした。次いで、試料の剥離性シートを剥がし、表面を研磨したステンレス鋼板(以下、SUSという)に貼付け、2kgロールを1往復して、圧着直後の粘着力を測定した。別途圧着後に試料を40℃雰囲気下で7日間放置した後、さらに23℃50%RH雰囲気下で1時間放置した後に粘着力を測定した。なお粘着力の測定は剥離速度:300mm/分、剥離角180゜で行った。
被着体のステンレス鋼板をポリプロピレン板(以下、PPという)、ポリ塩化ビニル板、ダンボールにそれぞれ変えた以外は上記同様に行い粘着力を測定した。
【0086】
(2)粘着力変化率
粘着力変化率は以下の式(1)から算出し、100から110%を◎、111から120%を〇、121〜130%を△、131%以上を×とした。
(粘着力変化率%)=
[(貼り付け経時7日後の粘着力)/(圧着直後の粘着力)]×100・・・式(1)
◎:粘着力の上昇がほどんどない。優れている。
〇:粘着力の上昇がわずかにみられる。良好。
△:粘着力の上昇が少しみられる。実用上問題ない
×:粘着力の上昇が大きく、実用不可。
【0087】
(3)再剥離性(被着体汚染)
(1)の試験終了後の被着体(SUS、PP、ポリ塩化ビニル、ダンボール)に粘着剤層由来の汚染があるかどうかを確認した。表3の結果は下記の記号で示した。
◎:汚染の付着が無い。優れている。
〇:わずかに汚染が付着していた。良好。
△:少量の汚染がみられた。実用上問題ない
×:汚染の付着が多い。実用不可。
【0088】
(4)再剥離性(基材の状態)
(1)の試験中の基材の状態を示した。表3の結果は下記の記号で示した。
〇:基材に異常はなく、きれいに剥がすことができた。実用上問題ない。
×:粘着力が高く、剥離途中で紙やぶれが発生した。実用不可。
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
表2、表3の結果から本発明の水性再剥離型粘着剤である実施例1〜18は貼り付け経時後の粘着力変化が少なく、いずれの被着体に対しても同様に良好な再剥離性を示すものであった。一方比較例1〜3においては各被着体での経時での粘着力変化、再剥離性のいずれかが不良であり、すべての特性を満足できなかった。