特許第6702163号(P6702163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702163
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20200518BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20200518BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20200518BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20200518BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20200518BHJP
   B60L 53/00 20190101ALI20200518BHJP
   B60L 9/00 20190101ALI20200518BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   G08G1/09 H
   H02J7/00 X
   H02J7/02 F
   H02J7/00 P
   H02J13/00 301A
   H02J50/10
   B60L53/00
   B60L9/00
   B60L5/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-235692(P2016-235692)
(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公開番号】特開2018-92398(P2018-92398A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】弓削 勝忠
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/001788(WO,A1)
【文献】 特開2016−001432(JP,A)
【文献】 特開2015−228047(JP,A)
【文献】 特開2002−178864(JP,A)
【文献】 特開2012−055038(JP,A)
【文献】 特開2013−192285(JP,A)
【文献】 特開2008−124550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 1/16
H02J 7/00 − 7/02
H02J 13/00
H02J 50/10
B60L 5/00
B60L 9/00
B60L 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の近傍の所定の通信エリア内において、車両への給電が可能な給電レーンを走行する他車の車両情報を収集する他車情報収集部と、
車両への給電を行うことができない非給電レーンを走行する自車のバッテリ充電率の低下に伴う給電レーンへの車線変更意思を示す要救援信号を前記他車に対して送信する送信部と、
前記要救援信号を受け取った前記他車からの給電レーンを譲る意思を示す救援信号を受信する受信部と、
前記他車情報収集部によって収集した複数の他車の車両情報に基づいて、この複数の他車に前記要救援信号を送信する際の送信順位を決定する順位決定部と、
を備え、前記要救援信号の送信を、前記順位決定部で決定された送信順位が最上位の他車に行う車両制御装置。
【請求項2】
前記車両情報がバッテリ充電率であって、バッテリ充電率の高い他車が上位となるように前記送信順位が決定される請求項に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記他車に前記要救援信号を送信した後、所定時間内に、この他車から前記救援信号を受信できなかったときに救援意思がないと判断し、前記送信順位においてこの他車より後続の他車に対して、前記要救援信号の送信と前記救援意思の判断を前記送信順位に従って順番に行う請求項またはに記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記所定の通信エリア内のいずれの他車からも前記救援信号を受信できない場合に、前記所定の通信エリアの範囲を変更して、この変更された通信エリア内の他車の車両情報を改めて収集する請求項からのいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
他車からの前記救援信号を受信して、非給電レーンから給電レーンへの車線変更を自動的に行う車線変更制御部
をさらに備えた請求項1からのいずれか1項に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バッテリの電力で走行する車両が、非給電レーンを走行中にバッテリ充電率が不足した際に、給電レーンを走行する他車に、給電レーンを譲ってもらうための車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の外部(路面上や側壁等)に設けられた給電ユニットから電力を受電して、この電力で車両を走行するとともに、車両に搭載されたバッテリを充電する技術の開発が進められている。この給電ユニットは、設置コストの関係上、複数の走行レーンのうち一部の走行レーンのみに設けられることが多いと想定される。給電ユニットが設けられた走行レーン(以下において、給電レーンと称する。)においては、この給電ユニットから車両の走行に必要な電力が供給されるとともに、車両に搭載されたバッテリを充電することができる。その一方で、給電ユニットが設けられていない走行レーン(以下において、非給電レーンと称する。)においては、車両に搭載されたバッテリから供給された電力によって車両を走行するため、バッテリの充電率は低下する。
【0003】
バッテリの充電効率を規定値以上に保つため、特許文献1に係る走行支援システムにおいては、給電レーンが設置された区間を走行する車両間の通信によって、バッテリの充電効率、走行位置および車速に関する情報を車両データとしてやり取りし、その車両データの中から、充電効率が規定値以上となる走行位置および車速を抽出して、抽出した車両データを走行支援情報として車両に通知している。この走行支援情報を利用して走行することにより、車両の充電効率の向上を図っている(特許文献1の段落0051〜0057、図7など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−228047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既述の通り、非給電レーンを走行し続けるとバッテリ充電率が低下するため、所定のバッテリ充電率を維持するために、非給電レーンから給電レーンに車線変更が必要となる場合がある。ところが、給電レーンが混雑または渋滞しているときのように、給電レーンへの車線変更が難しいときがある。このとき、非給電レーンを走行し続けると、特に電気自動車のように発電機構を搭載していない車両においては、バッテリからの給電ができなくなり、走行不能の状態に陥る虞がある。
【0006】
特許文献1に示す構成においては、自車と他車との間の情報伝達が一方通行である。すなわち、他車は自車のバッテリ充電率が低下しているのを知ることはできるが、自車に対して給電レーンを譲る意思があるかどうか伝達するための手段がない。この意思伝達の不足のために、非給電レーンから給電レーンへのスムーズな車線変更が難しいという問題がある。
【0007】
そこで、この発明は、非給電レーンを走行中にバッテリ充電率が不足した際に、給電レーンを走行する他車に、速やかに給電レーンを譲ってもらうことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明においては、自車の近傍の所定の通信エリア内において、車両への給電が可能な給電レーンを走行する他車の車両情報を収集する他車情報収集部と、車両への給電を行うことができない非給電レーンを走行する自車のバッテリ充電率の低下に伴う給電レーンへの車線変更意思を示す要救援信号を前記他車に対して送信する送信部と、前記要救援信号を受け取った前記他車からの給電レーンを譲る意思を示す救援信号を受信する受信部と、を備えた車両制御装置を構成した。
【0009】
前記構成においては、前記他車情報収集部によって収集した複数の他車の車両情報に基づいて、この複数の他車に前記要救援信号を送信する際の送信順位を決定する順位決定部
をさらに備え、前記要救援信号の送信を、前記順位決定部で決定された送信順位が最上位の他車に行うのが好ましい。
【0010】
順位決定部を備えた構成においては、前記車両情報がバッテリ充電率であって、バッテリ充電率の高い他車が上位となるように前記送信順位が決定されるようにするのが好ましい。
【0011】
順位決定部を備えた構成においては、前記他車に前記要救援信号を送信した後、所定時間内に、この他車から前記救援信号を受信できなかったときに救援意思がないと判断し、前記送信順位においてこの他車より後続の他車に対して、前記要救援信号の送信と前記救援意思の判断を前記送信順位に従って順番に行うことができる。
【0012】
順位決定部を備えた構成においては、前記所定の通信エリア内のいずれの他車からも前記救援信号を受信できない場合に、前記所定の通信エリアの範囲を変更して、この変更された通信エリア内の他車の車両情報を改めて収集することができる。
【0013】
前記各構成においては、他車からの前記救援信号を受信して、非給電レーンから給電レーンへの車線変更を自動的に行う車線変更制御部をさらに備えた構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る車両制御装置は、他車の車両情報を収集した上で自車から要救援信号を送信する一方で、この要救援信号を受けた他車からの給電レーンを譲る意思を示す救援信号を受信する、相互通行の通信を行うようにしたので、自車側において他車側の譲る意思の有無を容易に確認することができる。このため、他車側の意思に基づいて、非給電レーンから給電レーンへの車線変更を速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明に係る車両制御装置の構成を示す概略図
図2】給電ユニットから車両への給電の態様を示す概略図であり、(a)(b)は無線方式、(c)は有線方式
図3図1に示す車両制御装置による制御フローの一例を示すフローチャート
図4】車両間の通信エリアの一例を示す図
図5図4に示す通信エリア内のネットワークを模式的に示す図
図6】車両間で共有される車両情報の内容の一例を示す図
図7】自動運転の一例を示す図であって、(a)は自車の車線変更前、(b)は自車の車線変更後
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係る車両制御装置の一実施形態を図1に示す。この車両制御装置は、バッテリ10の電力によって車両1(図2参照)の駆動モータを駆動する電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車などの車両に搭載される。この車両制御装置は、他車情報収集部11、送信部12、および、受信部13を主要な構成要素としている。他車情報収集部11、送信部12、および、受信部13は、車両全体の制御を行なう電子制御ユニット14と接続されており、この電子制御ユニット14を介して信号伝達が行なわれる。
【0017】
車両1には、受電ユニット15が搭載されている。この車両1が、給電ユニットFが設置された給電レーンLSを走行すると、給電ユニットFから受電ユニット15に電力が供給され、車両1に搭載されたバッテリ10が充電されるとともに、その電力で車両1に搭載されたモータ(図示せず)を駆動することができる。例えば、図2(a)〜(c)に示す道路においては、給電ユニットFは、複数の走行レーンのうち、車両1の走行方向に向かって最も左側の走行レーンにのみ設けられており、右側2本の走行レーンは、給電ユニットFが設けられていない非給電レーンLNである。
【0018】
受電ユニット15には、コイル式の受信アンテナ(図示せず)が搭載されている。図2(a)(b)に示す無線方式の給電ユニットFには、受電ユニット15と対向するように、コイル状の送信アンテナA1、A2が設置されている。車両1が給電ユニットFの傍を通過すると、受電ユニット15(受信アンテナ)側に誘導電流が生じ、給電ユニットFから受電ユニット15に電力が送られる。給電ユニットFと受電ユニット15との間の電力のやり取りを無線で行う代わりに、図2(c)に示す有線方式を採用することもできる。この有線方式においては、給電ユニットFと受電ユニット15との間に、導体からなる送電アームLや送電線が設けられており、この送電アームLなどを介して、給電ユニットFから受電ユニット15に電力が送られる。
【0019】
なお、図2(a)〜(c)に記載した車両1内における受電ユニット15の位置は例示であって、給電ユニットFに設けられた送信アンテナA1、A2や送電アームLなどの位置に対応して、適宜変更することができる。
【0020】
他車情報収集部11は、自車の近傍の所定の通信エリアC内においてネットワークを形成し、車両1への給電が可能な給電レーンLSを走行する他車との間で車車間通信を行う機能を有する。ここでいう車車間通信とは、ネットワークを形成した他車との間で、車両情報(例えば、バッテリ充電率、車種(電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車など)、走行レーンの種類(給電レーンLSまたは非給電レーンLN)、目的地までの残距離、車速など)をやり取りして共有することをいう。
【0021】
所定の通信エリアCの範囲は、自車が他車に給電レーンLSを譲ってもらって、非給電レーンLNから給電レーンLSに車線変更を行う可能性がある範囲とすることができ、例えば、自車の前後それぞれ100mの範囲とすることができる。ここでいう車両情報とは、他車のバッテリ充電率のことを指すが、バッテリ充電率の他に、他車の車種(電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車など)、走行レーンの種類(給電レーンLSまたは非給電レーンLN)、目的地までの残距離、車速など他の情報をさらに採用することもできる。他車情報収集部11における送受信は、送信部12および受信部13の有する送受信機能によって行うことができる。
【0022】
自車のバッテリ充電率が低いほど、または、車速が大きいほど通信エリアCの範囲を広くして、より多くの他車との間でネットワークを形成するのが好ましい。このようなときは、速やかに給電レーンLSに車線変更を行う必要があり、多くの他車と車両情報をやり取りすることによって、給電レーンLSへの車線変更の機会を高めることができるためである。
【0023】
送信部12は、車両1への給電を行うことができない非給電レーンLNを走行する自車のバッテリ充電率の低下に伴う給電レーンLSへの車線変更意思を示す要救援信号を他車に対して送信する機能を有する。この要救援信号は、自車のバッテリ充電率が、予め定めた所定の充電率を下回り、かつ、そのとき自車が非給電レーンLNを走行しているときに自動的に送信され、自車が給電レーンLSを走行しているときには、バッテリ充電率が前記所定の充電率を下回っているときでも送信されない。なお、自車の運転席近傍に要救援信号の送信ボタンを設け、ドライバがこの送信ボタンを押すことによって、要救援信号を手動で送信するようにしてもよい。
【0024】
受信部13は、前記要救援信号を受け取った他車からの給電レーンLSを譲る意思を示す救援信号を受信する機能を有する。この救援信号は、要救援信号を受け取った他車のドライバが、例えば、その他車の運転席近傍に設けられた応答ボタンを押すことによって他車側から発信される。他車が自動運転制御されているときには、車車間通信でやり取りされた車両情報を総合的に判断した上で、他車側から自動的に発信させることもできる。救援信号の発信とともに、例えば、救援信号を発信した他車のコンビネーションランプを所定のパターンで点滅させることによって、自車が、その他車を容易に発見することができ、給電レーンLSにスムーズに車線変更を行うことができる。
【0025】
電子制御ユニット14には、さらに、順位決定部16、車線変更制御部17、駆動部18、および、充電率検知部19が接続されている。
【0026】
順位決定部16は、他車情報収集部11によって収集した複数の他車の車両情報に基づいて、この複数の他車に要救援信号を送信する際の送信順位を決定する機能を有する。この順位決定部16によって決定された送信順位に従って、前記複数の他車に対して、要救援信号が順番に送信される。この他車の車両情報として、バッテリ充電率を採用し、バッテリ充電率の高い他車を送信順位の上位とするのが好ましい。
【0027】
他車が自車に給電レーンLSを譲る行為においては、他車がその前後の車間を詰めることによって、自車が給電レーンLSに車線変更するための車間を提供する場合(第1パターン)と、他車が非給電レーンに車線変更することによって、自車が給電レーンに車線変更するための車間を提供する場合(第2パターン)の2パターンが想定される。第1パターンは、給電レーンLSが比較的空いている(ただし、自車が給電レーンLSに車線変更するのに十分な車間はない)場合、第2パターンは、給電レーンLSが混雑している(他車が前後の車間を詰めることができない)場合に主に適用される。
【0028】
第1パターンにおいては、他車は給電レーンLSを走行し続けることができるが、第2パターンにおいては、他車は非給電レーンLNに車線変更しなければならないため、この他車に搭載されたバッテリからの給電によって走行しなければならない。他車のバッテリ充電率が高ければ、余裕をもって非給電レーンLNに車線変更することができるため、スムーズに自車に給電レーンLSを譲ることができる。
【0029】
順位決定部16で決定された送信順位に基づいて他車に要救援信号を送信した後、所定時間内に、この他車から救援信号を受信できなかったときは、救援意思がないものと判断することができる。このときは、送信順位が一つ下位の他車に要救援信号を送信する。他車から救援信号を受信できるまで、救援意思の有無の判断を繰り返す。この所定時間は、自車の車両情報に基づいて適宜決定することができる。例えば、自車のバッテリ充電率が低いときや車速が大きいときなどは、その時間を短くするのが好ましい。このようにすれば、他車が給電レーンLSを譲ってくれるかどうかの判断を速やかに行うことができ、給電レーンLSへの車線変更の機会を高めることができる。
【0030】
前記所定の通信エリアC内において、いずれの他車からも救援信号を受信できない場合は、この所定の通信エリアCの範囲を変更して、他車情報収集部11によって、この変更された通信エリアC内の他車の車両情報を改めて収集する。
【0031】
車線変更制御部17は、他車からの救援信号を受信して、非給電レーンLNから給電レーンLSへの車線変更を自動的に行うように、電子制御ユニット14と連携して、駆動部18(ステアリング装置、アクセル、ブレーキなど)に対して制御信号を送る機能を有する。この駆動部18には、受電ユニット15またはバッテリ10から電力が供給される。受電ユニット15で受電した電力の一部は、バッテリ10に充電される。バッテリ10の充電率は、充電率検知部19によって検知される。検知されたバッテリ充電率に関する情報は、電子制御ユニット14に送られる。
【0032】
なお、図1においては、他車情報収集部11、送信部12、受信部13、順位決定部16、および、車線変更制御部17と、電子制御ユニット14とを別部材として図示したが、電子制御ユニット14が、他車情報収集部11などの機能を含んだ構成としてもよい。
【0033】
この車両制御装置による制御フローの一例を示すフローチャートを図3に示す。
【0034】
この制御フローでは、まず、自車が給電レーンLS外を走行しているかどうか判断される(ステップS10)。給電レーンLSを走行しているときは(ステップS10のNO側)、この判断が継続して行われる。その一方で、自車が給電レーンLS外(非給電レーンLN)を走行しているときは、(ステップS10のYES側)、バッテリ充電率が閾値以下(例えば、15%以下)かどうか判断される(ステップS11)。
【0035】
この閾値は、自車の車両情報に基づいて適宜変更することもできる。例えば、ナビゲーションシステムで設定した自車の目的地までの残距離が長い場合は、閾値を高めにするのが好ましい。このようにすれば、目的地までの間に何らかの状況によりバッテリ充電率が低下して、走行不能の状態になるのを防止することができる。バッテリ充電率が閾値よりも高いときは(ステップS11のNO側)、他車に給電レーンLSを譲ってもらう必要性が低いため、この判断が継続して行われる(ステップS11)。その一方で、バッテリ充電率が閾値以下のときは(ステップS11のYES側)、給電レーンLSが混雑中かどうか判断される(ステップS12)。給電レーンLSの混雑状況は、例えば、車両情報コミュニケーションシステムから得られる道路混雑情報、給電ユニットFの負荷情報、車載カメラからの映像、車車間通信などから得ることができる。
【0036】
給電レーンLSが混雑していないときは(ステップS12のNO側)、自車のドライバが自らの運転操作によって給電レーンLSに車線変更すればよく、車両制御装置による制御を必要としないので、ドライバに対して、バッテリ充電率が低下しているため、給電レーンLSに車線変更するように警告を行った上で(ステップS13)、リターン処理によってこの制御フローを抜ける(ステップS14)。その一方で、給電レーンLSが混雑しているときは(ステップS12のYES側)、車車間通信による他車の車両情報の取得を行う(ステップS15)。
【0037】
例えば、図4に示す範囲においてネットワーク(通信エリアC)を構成した場合、給電レーンLSを走行する他車(車両A、B、C)と、非給電レーンLNを走行する自車(車両D)との間で、図5に示すように、車両情報がやり取りされる。この車両情報のやり取りによって、図6に示すように、各車両の間で、バッテリ充電率、走行レーン情報などが共有される。なお、図4に示した通信エリアCの範囲は例示であって、この通信エリアCの範囲を拡げることによって、さらに多くの他車との間でネットワークを構成することもできる。
【0038】
他車の車両情報を取得したら、その車両情報に基づいて、他車に対する要救援信号の送信順位を決定する(ステップS16)。例えば、他車N台についての車両情報を取得した場合、1〜N位までの順位付けを行う。この順位付けは、取得した車両情報のうち、どの情報に基づいて決定してもよいが、他車のバッテリ充電率に基づいて決定するのが好ましい。他車が自車に給電レーンLSを譲る際には、この他車が給電レーンLSから非給電レーンLNに車線変更をする場合があり、この場合、この他車のバッテリ充電率に大きな影響を与えることがある。バッテリ充電率が高い他車の順位を上位に位置付けることによって、仮にこの他車が車線変更によって給電レーンLSを譲る場合であっても、この他車の走行に与える影響を極力小さくすることができる。
【0039】
例えば、自車と他車との間で、図6に示す車両情報を共有している場合、バッテリ充電率の大小に基づく送信順位は、車両Bが1位、車両Aが2位、車両Cが3位となる。このように、他車の車両情報としてバッテリ充電率を採用する代わりに、他の車両情報(車両の種類など)に基づいて順位付けを行ったり、バッテリ充電率と他の車両情報を総合的に組み合わせて順位付けを行ったりすることもできる。
【0040】
要救援信号の送信順位が決定したら、順位カウンタに1を代入し(ステップS17)、送信順位が1位の他車(ここでは車両B)に対して、送信部12から要救援信号を送信する(ステップS18)。その他車に要救援信号を送信したら、その他車に給電レーンLSを譲る意思があるかどうか判断される(ステップS19)。受信部13によって、その他車からの救援信号を受信できたら(ステップS19のYES側)、その他車に給電レーンLSを譲ってもらい、車車間通信を終了した上で(ステップS20)、リターン処理によってこの制御フローを抜ける(ステップS14)。
【0041】
自車および他車ともに自動運転装置を搭載しているときは、図7に示すように、他車の給電レーンLSから非給電レーンLNへの車線変更と、自車の非給電レーンLNから給電レーンLSへの車線変更をスムーズに行うことが可能である。なお、給電レーンLSが比較的空いている(ただし、自車が給電レーンLSに車線変更するのに十分な車間はない)場合は、他車が前後の車間を詰めることによって、自車が給電レーンLSに車線変更するための車間を提供することもできる。
【0042】
その一方で、この他車に要救援信号を送信した後、所定時間内に、この他車から救援信号を受信できなかったときは(ステップS19のNO側)、救援意思がないと判断することができる。このときは、現在の送信順位iと、車車間通信で車両情報をやり取りした他車の台数Nとの大小を比較する(ステップS21)。送信順位iが他車の台数Nに達していないときは(ステップS21のNO側)、順位カウンタの数値を1だけ増分して(ステップS22)、送信順位が2位の他車(ここでは車両A)に対して、要救援信号を送信する(ステップS18)。
【0043】
同様の制御フローを、他車からの救援信号を受信できるまで繰り返す。送信順位iが他車の台数Nに到達しても救援信号を受信できないときは(ステップS21のYES側)、車車間通信の通信エリアCを拡大して(ステップS23)、車車間通信による他車の車両情報の取得を改めて行う(ステップS15)。他車の車両情報を取得したら、その車両情報に基づいて、他車に対する要救援信号の送信順位iを改めて決定する(ステップS16)。なお、車車間通信の通信エリアCを拡大して車両情報を取得する際に、初回の車車間通信において既に通信を行ったのと同一の他車については、送信順位iの順位付けを行わないのが好ましい。この他車については、再度要救援信号を送信しても、救援信号を発する可能性が低く、順位付けに組み込む必要性が低いためである。
【0044】
上記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、非給電レーンLNを走行中にバッテリ充電率が不足した際に、給電レーンLSを走行する他車に、速やかに給電レーンLSを譲ってもらう、というこの発明の課題を解決し得る限りにおいて、車両制御装置の構成要素を適宜追加したり変更したりすることができる。
【0045】
なお、上記の制御フローにおいて他車に送信された要救援信号は、他車に対する強制力を何ら有しないため、バッテリ充電率が上記の所定の充電率(他車に対して要救援信号を送信する基準となる充電率)以下となる前に、できるだけ早めに給電レーンLSに車線変更する、または、最寄りの給電設備に立ち寄るように、音声などでドライバに促すようにするのがより好ましい。
【符号の説明】
【0046】
1 車両
10 バッテリ
11 他車情報収集部
12 送信部
13 受信部
14 電子制御ユニット
15 受電ユニット
16 順位決定部
17 車線変更制御部
18 駆動部
19 充電率検知部
F 給電ユニット
C 通信エリア
LS 給電レーン
LN 非給電レーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7