(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記第1サブスタックと第1の逆流防止機構との間に配置され、前記第1サブスタックから排出された前記燃料ガスに含まれる気体と液体を分離する第1の気液分離器(151)と、
  前記第2サブスタックと第2の逆流防止機構との間に配置され、前記第2サブスタックから排出された前記燃料ガスに含まれる気体と液体を分離する第2の気液分離器(152)と、
  前記第3サブスタックと第3の逆流防止機構との間に配置され、前記第3サブスタックから排出された前記燃料ガスに含まれる気体と液体を分離する第3の気液分離器(153)と、を備えた請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
  本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの構成を
図1に示す。この燃料電池システムは、燃料タンク101、供給遮断弁102、アノードガス供給路103、第1〜第3インジェクタ111〜113、燃料電池スタック12、第1〜第3インピーダンス測定部131〜133、第1〜第3貯留タンク151〜153、アノードガス排出路105、圧力センサ109、排出遮断弁104および循環路170を備えている。さらに、燃料電池システムは、第1〜第3貯留逆止弁141〜143、排出逆止弁161〜163、第1〜第3循環逆止弁181〜183、第1〜第3合流部191〜193および制御部200を備えている。第1〜第3インジェクタ111〜113は、燃料供給部に相当し、第1〜第3の排出逆止弁161〜163は、第1の逆流防止機構に相当し、第1〜第3循環逆止弁181〜183は、第2逆流防止機構に相当する。
 
【0015】
  本実施形態の燃料電池スタック12は、第1仕切り板12aおよび第2仕切り板12bにより第1〜第3分割スタック121〜123の3つのサブスタックに分割されている。第1〜第3分割スタック121〜123は、それぞれ複数のセル(図示せず)を積層したスタック構造を有している。セルは、水素と酸素とを電気化学反応させて発電する。
 
【0016】
  第1〜第3分割スタック121〜123は、水素を含む燃料ガスが流れるアノードガス流路121a〜123aを有している。各アノードガス流路121a〜123aには、それぞれ第1〜第3インジェクタ111〜113が接続されている。
 
【0017】
  また、第1〜第3インジェクタ111〜113は、アノードガス供給路103を介して燃料タンク101に接続されている。アノードガス供給路103は、燃料供給路に相当する。第1〜第3インジェクタ111〜113は、第1〜第3分割スタック121〜123に対して個別に配置されている。
 
【0018】
  なお、第1〜第3分割スタック121〜123は、酸素を含む酸化ガス(本実施形態では、空気)が流れる不図示のカソードガス流路を有している。カソードガス流路には、図示しないエアポンプが接続されており、このエアポンプにより酸化ガスとしての空気が供給される。なお、本実施形態では、酸化ガスが流れる流路については図示を省略してある。
 
【0019】
  第1〜第3分割スタック121〜123は、不図示の電解質膜と、電解質膜の両面に電極が形成された膜電極接合体を有している。膜電極接合体は、アノード電極と、カソード電極と、そのアノード電極と、カソード電極との間に挟持された電解質膜と、を備えている。そして、膜電極接合体は、アノード電極に供給される燃料ガスとしての水素ガスと、カソード電極に供給される酸化ガスとしての空気中の酸素との電気化学反応により、起電力を発生する。
 
【0020】
  燃料タンク101には、水素を含む燃料ガス(本実施形態では、水素ガス)が充填されている。この燃料タンク101には、アノードガス供給路103が接続されている。供給遮断弁102は、アノードガス供給路103に設けられ、後述する制御部200より入力される信号に応じて燃料タンク101からアノードガス供給路103に至る流路を開閉する。
 
【0021】
  アノードガス供給路103は、燃料タンク101から第1〜第3分割スタック121〜123に対して燃料ガスを導入する。アノードガス供給路103の一端側は、燃料タンク101と接続され、アノードガス供給路103の他端側は、第1〜第3分岐路103a〜103cに分岐して第1〜第3分割スタック121〜123と接続されている。
 
【0022】
  第1分岐路103aには、第1インジェクタ111と第1合流部191が設けられている。第1合流部191は、第1インジェクタ111より燃料ガス流れ下流側に配置されている。第1合流部191は、第1インジェクタ111より第1分割スタック121に供給される燃料ガスに後述する第1循環路170aからの燃料ガスを合流させる。
 
【0023】
  第2分岐路103bには、第2インジェクタ112と第2合流部192が設けられている。第2合流部192は、第2インジェクタ112より燃料ガス流れ下流側に配置されている。第2合流部192は、第2インジェクタ112より第2分割スタック122に供給される燃料ガスに後述する第2循環路170bからの燃料ガスを合流させる。
 
【0024】
  第3分岐路103cには、第3インジェクタ113と第3合流部193が設けられている。第3合流部193は、第3インジェクタ113より燃料ガス流れ下流側に配置されている。第3合流部193は、第3インジェクタ113より第3分割スタック123に供給される燃料ガスに後述する第3循環路170cからの燃料ガスを合流させる。
 
【0025】
  第1〜第3インジェクタ111〜113は、それぞれ制御部200より入力される信号に応じて第1〜第3分割スタック121〜123へ供給する燃料ガスを制御する。
。なお、制御部200は、第1〜第3インジェクタ111〜113を独立して制御することが可能となっている。
 
【0026】
  第1〜第3分割スタック121〜123には、各セルのインピーダンスを測定するためのインピーダンス測定部131〜133が設けられている。各インピーダンス測定部131〜133は、交流インピーダンス法を用いて燃料電池の各セルのインピーダンスを算出する。具体的には、各インピーダンス測定部131〜133は、第1〜第3分割スタック121〜123の各セルに低周波数の交流電圧を印加したときの応答電流を測定し、交流電圧と応答電流から各セルのインピーダンスを算出する。各インピーダンス測定部131〜133は、算出したインピーダンスを示す信号を制御部200へ出力する。
 
【0027】
  第1〜第3分割スタック121〜123における燃料ガス流れ下流側には、アノードガス排出路105が設けられている。アノードガス排出路105は、第1〜第3分割スタック121〜123から排出された燃料ガスを集合させて燃料ガスを排出する排出遮断弁104へと導く。
 
【0028】
  アノードガス排出路105の一端は、排出遮断弁104に接続され、アノードガス排出路105の他端は第1〜第3分岐路105a〜105cに分岐している。第1分岐路105aは、第1分割スタック121に接続され、第2分岐路105bは、第2分割スタック122に接続され、第3分岐路105cは、第3分割スタック123に接続されている。
 
【0029】
  第1分岐路105aには、第1貯留逆止弁141、第1貯留タンク151および排出逆止弁161が設けられている。第1貯留タンク151には第1貯留タンク151内に貯留した液体を外部へ排出する排水バルブ171が設けられている。
 
【0030】
  第1貯留逆止弁141は、第1貯留タンク151より燃料ガス流れ上流側に配置され、排水バルブ171が開口したときに排水バルブ171から第1分割スタック121の燃料ガス導出側へ逆流することを防止する。排出逆止弁161は、第1貯留タンク151より燃料ガス流れ下流側に配置され、燃料排出路105を通じて燃料ガスが第1分割スタック121の燃料ガス導出側へ逆流することを防止する。
 
【0031】
  第2分岐路105bには、第2貯留逆止弁142、第2貯留タンク152および排出逆止弁162が設けられている。第2貯留タンク152には第2貯留タンク152内に貯留した液体を外部へ排出する排水バルブ172が設けられている。
 
【0032】
  第2貯留逆止弁142は、第2貯留タンク152より燃料ガス流れ上流側に配置され、排水バルブ172が開口したときに排水バルブ172から第2分割スタック122の燃料ガス導出側へ逆流することを防止する。排出逆止弁162は、第2貯留タンク152より燃料ガス流れ下流側に配置され、燃料排出路105を通じて燃料ガスが第2分割スタック122の燃料ガス導出側へ逆流することを防止する。
 
【0033】
  第3分岐路105cには、第3貯留逆止弁143、第3貯留タンク153および排出逆止弁163が設けられている。第3貯留タンク153には第3貯留タンク153内に貯留された液体を外部へ排出する排水バルブ171が設けられている。
 
【0034】
  第3貯留逆止弁143は、第3貯留タンク153より燃料ガス流れ上流側に配置され、排水バルブ173が開口したときに排水バルブ173から第3分割スタック123の燃料ガス導出側へ逆流することを防止する。排出逆止弁163は、第3貯留タンク153より燃料ガス流れ下流側に配置され、燃料排出路105を通じて燃料ガスが第3分割スタック123の燃料ガス導出側へ逆流することを防止する。
 
【0035】
  第1〜第3貯留タンク151〜153は、燃料ガスに含まれるガスと液体を分離する気液分離器に相当する。第1〜第3貯留タンク151〜153の底部には、分離された液体が貯まり、第1〜第3貯留タンク151〜153の上部には、分離されたガスが貯まる。第1〜第3貯留タンク151〜153の底部に貯まった液体は、第1〜第3貯留タンク151〜153に設けられた排水バルブ171〜173を介して外部に排出される。なお、第1〜第3分割スタック121〜123内の不純物は、第1〜第3貯留タンク151〜153に貯まった後、排水バルブ171〜173を介して外部に排出される。第1〜第3貯留タンク151〜153の上部に貯まったガスは、それぞれ第1〜第3排出逆止弁161〜163へ導入される。
 
【0036】
  アノードガス排出路105は、第1〜第3分割スタック121〜123から排出された燃料ガスを集合させて燃料ガスを排出する排出遮断弁104へと導く。アノードガス排出路105は、燃料排出路に相当する。アノードガス排出路105には、アノードガス排出路105の内部を流れる燃料ガスの圧力を検出する圧力センサ109が設けられている。圧力センサ109は、圧力検出部に相当する。圧力センサ109は、第1〜第3排出逆止弁161〜163より燃料ガス流れ下流側に配置されている。圧力センサ109は、燃料排出路105で集合した燃料ガスの圧力、すなわち、第1〜第3分割スタック121〜123から排出された燃料ガスの圧力を検出する圧力検出部である。圧力センサ109は、燃料ガスの圧力に応じた信号を制御部200へ出力する。
 
【0037】
  排出遮断弁104は、制御部200より入力される信号に応じて開弁または閉弁する。制御部200より入力される信号に応じて排出遮断弁104が開状態になると、この排出遮断弁104を通って循環路170内の燃料ガスや不純物が燃料電池システムの外部に排出される。
 
【0038】
  循環路170は、燃料排出路105により集合させられた燃料ガスを第1〜第3分割スタック121〜123の各燃料ガス導入口へと導く。循環路170は、第1〜第3循環路170a〜170cを有している。
 
【0039】
  循環路170aは、アノードガス排出路105と第1合流部191とを接続するものであり、アノードガス排出路105からの燃料ガスを第1合流部191を介して第1分割スタック121〜123に循環させる。
 
【0040】
  第2循環路170bは、アノードガス排出路105と第2合流部192とを接続するものであり、アノードガス排出路105からの燃料ガスを第2合流部192を介して第2分割スタック122に循環させる。
 
【0041】
  第3循環路170cは、アノードガス排出路105と第3合流部193とを接続するものであり、アノードガス排出路105からの燃料ガスを第3合流部193を介して第3分割スタック123に循環させる。
 
【0042】
  第1循環路170aには、逆止弁181が設けられている。逆止弁181は、第1インジェクタ111から噴射された燃料ガスが第1循環路170aを通ってアノードガス排出路105側へ流れるのを防止する。
 
【0043】
  第2循環路170bには、逆止弁182が設けられている。逆止弁182は、第2インジェクタ112から噴射された燃料ガスが第2循環路170bを通ってアノードガス排出路105側へ流れるのを防止する。
 
【0044】
  第3循環路170cには、逆止弁183が設けられている。逆止弁183は、第3インジェクタ113から噴射された燃料ガスが第3循環路170cを通ってアノードガス排出路105側へ流れるのを防止する。
 
【0045】
  制御部200は、CPU201およびメモリ202を有するコンピュータとして構成されている。制御部200は、メモリ202に記憶されたプログラムに従って各種処理を実施する。
 
【0046】
  制御部200は、第1〜第3分割スタック121〜123の各セルのインピーダンスに基づいて第1〜第3分割スタック121〜123内の含水量を推定し、この推定した含水量に基づいて各分割スタック121〜123が排水不良であるか否かを判定する。具体的には、高周波数の交流信号を印加した際のインピーダンスが所定値よりも大きい場合に、燃料電池内部の含水量が適正量よりも多いフラッディング状態と判定する。
 
【0047】
  また、制御部200は、第1〜第3分割スタック121〜123の各セルのインピーダンスに基づいて第1〜第3分割スタックにおける各燃料ガス中の分圧値(本実施形態では、水素分圧値)を推定する。なお、第1〜第3分割スタック121〜123の各セルのインピーダンスと燃料ガス中の水素分圧値は相関関係を有する。第1〜第3分割スタック121〜123の各セルのインピーダンスが高いほど燃料ガス中の水素分圧値は低くなる。
 
【0048】
  本燃料電池システムの制御部200は、通信線を介して接続された不図示の車両ECUからの要求に応じて第1の処理と第2の処理と、を繰り返し実行する。第1の処理は、第1〜第3インジェクタ111〜113の制御状態を燃料ガスの供給量の多い第1制御状態に設定する処理であり、第2の処理は、第1〜第3インジェクタ111〜113の制御状態を燃料ガスの供給量を行うことなく第1〜第3貯留タンク151〜153に貯留された燃料ガスを循環路170を通過させて第1〜第3分割スタック121〜123に循環させる処理である。制御部200は、さらに、定期的に排出遮断弁104を開状態にしてアノードガス排出路105内を流れる排ガスを大気中に放出する。
 
【0049】
  第1制御状態では、第1〜第3インジェクタ111〜113のいずれか1つから燃料ガスが供給される。例えば、供給遮断弁102を開弁して第1インジェクタ111から第1分割スタック121に燃料ガスが供給される。ここで、排出遮断弁104は閉状態となっているものとする。
 
【0050】
  このとき、
図2中の矢印に示すように、燃料タンク101から供給遮断弁102、アノードガス供給路103、第1インジェクタ111を介して第1分割スタック121に燃料ガスが供給される。第1分割スタック121に供給された燃料ガスは、第1貯留逆止弁141を通って第1貯留タンク151に流入する。この第1貯留タンク151に流入した燃料ガスは、タンク内にて液体とガスに分離され、燃料ガスに含まれる液体は第1貯留タンク151の底部に貯まり、燃料ガスに含まれるガスはアノードガス排出路105の第1分岐路105aに流入する。
 
【0051】
  ここで、排出遮断弁104は閉状態となっている。このため、アノードガス排出路105の第1分岐路105aに流入した燃料ガスは、第2循環路170bおよび第2合流部192を通って第2分割スタック122に導入されるとともに第3循環路170cおよび第3合流部193を通って第3分割スタック123に導入される。
 
【0052】
  なお、アノードガス排出路105の第1分岐路105aに流入した燃料ガスは、第1循環路170aおよび第1合流部192を通って第1分割スタック121に導入されることはない。これは、第1循環路170aを流れる燃料ガスは、インジェクタ111から第1合流部192を通って第1分割スタック121に導入される燃料ガスの圧力よりも低いためである。
 
【0053】
  ここで、第1分割スタック121には、この第1分割スタック121に流れる燃料ガスだけでなく、第2分割スタック122に流れる燃料ガスと第3分割スタック123に流れる燃料ガスが流れる。すなわち、第1分割スタック121には、自身に流れる燃料ガスの3倍の流量の燃料ガスが流れるため、排水性を向上することができる。
 
【0054】
  また、第2制御状態では、第1〜第3インジェクタ111〜113からの燃料ガスの供給は行われず、第1〜第3分割スタック121〜123内部の燃料ガスは発電により消費される。このため、第1〜第3分割スタック121〜123内部の燃料ガスの圧力は低下する。
 
【0055】
  このとき、
図3中の矢印に示すように、第1〜第3貯留タンク151〜153から排出された燃料ガスは、アノードガス排出路105、循環路170a〜170cを通り、第1〜第3分割スタック121〜123へ流入する。
 
【0056】
  ここで、制御部200による第1〜第3インジェクタ111〜113の制御状態を第1制御状態に設定する際の処理について説明する。
図4は、この処理のフローチャートである。制御部200は、第1〜第3インジェクタ111〜113の制御状態を第1制御状態に設定する際に、
図4に示す処理を実施する。なお、各図面のフローチャートにおける各制御ステップは、制御部200が有する各種の機能実現手段を構成している。
 
【0057】
  まず、循環路170内の燃料ガスの圧力が予め設定された下限圧力(所定圧力)より大きいか否かを判定する(S100)。循環路170内の燃料ガスの圧力は、圧力センサ109により検出された圧力を用いることができる。
 
【0058】
  ここで、循環路170内の燃料ガスの圧力が予め設定された下限圧力(所定圧力)以下の場合、S100の判定はNOとなり、次に、第1〜第3分割スタック121〜123のうち1つでも排水不良があるか否かを判定する(S102)。具体的には、第1〜第3分割スタック121〜123の各セルのインピーダンスに基づいて第1〜第3分割スタック121〜123内の含水量を推定し、この推定した含水量に基づいて各分割スタック121〜123のうち1つでも排水不良が生じているものがあるか否かを判定する。なお、高周波数の交流信号を印加した際のインピーダンスと各分割スタック121〜123内の含水量は相関関係を有する。具体的には、高周波数の交流信号を印加した際のインピーダンスが大きいほど、各分割スタック121〜123内の含水量は多くなる。ここでは、第1〜第3分割スタック121〜123のうち、高周波数の交流信号を印加した際のインピーダンスが所定値よりも大きいものがある場合、排水不良が生じているものがあると判定する。
 
【0059】
  ここで、各分割スタック121〜123のうち少なくとも1つに排水不良が生じているものがあると判定された場合、S102の判定はYESとなり、次に、含水量の最も多い分割スタックにインジェクタから燃料ガスを供給するようインジェクタを制御する(S104)。具体的には、排出遮断弁104を閉口させるとともに、第1〜第3分割スタック121〜123のうちの含水量の最も多い分割スタックに燃料ガスを供給させ、第1〜第3分割スタックのうちの残りの分割スタックへの燃料ガスの供給を停止させるようインジェクタを制御する。例えば、第1分割スタック121内の含水量が最も多い場合、第1インジェクタ111から第1分割スタック121に燃料ガスを供給するようインジェクタ111を制御する。
 
【0060】
  なお、このように第1インジェクタ111から第1分割スタック121に燃料ガスが供給されると、
図2中の矢印に示したように、第1分割スタック121に供給された燃料ガスは、第1分割スタック121からアノードガス排出路105へ流出する。そして、循環路170bおよび第2合流部192を通って第2分割スタック122に流入するとともに、循環路170cおよび第3合流部193を通って第3分割スタック123に流入する。
 
【0061】
  なお、第2分割スタック122に供給された燃料ガスは、第2貯留逆止弁142を通って第2貯留タンク152に流入する。そして、この第2貯留タンク152にて液体とガスに分離される。
 
【0062】
  また、第3分割スタック123に供給された燃料ガスは、第3貯留逆止弁143を通って第3貯留タンク153に流入する。そして、この第3貯留タンク153にて液体とガスに分離される。
 
【0063】
  ここで、第1分割スタック121には、自身の分割スタック121に流れる燃料ガスだけでなく、後に第2分割スタック122に流れる燃料ガスと第3分割スタック123に流れる燃料ガスが流れる。すなわち、第1分割スタック121には、自身に流れる燃料ガスの3倍の流量の燃料ガスが流れる。そして第1分割スタック121に流れた燃料ガスに含まれる電気化学反応に伴って生じた水蒸気等の不純物が第1貯留タンク151の底部に貯まる。この第1貯留タンク151の底部に貯まった液体は制御部200より入力される信号に応じて排水バルブ171が開状態になると排水バルブ171を通って第1貯留タンク151の外部に排出される。なお、第2貯留タンク152の底部に貯まった液体および第3貯留タンク153の底部に貯まった液体についても同様に、制御部200より入力される信号に応じて排水バルブ172、173を開状態にすることで第2、第3貯留タンク152、153の外部に排出することができる。
 
【0064】
  また、第1〜第3分割スタック121〜123のうち1つも排水不良が生じている分割スタックがない場合、S102の判定はNOとなり、インピーダンス測定部131〜133により測定されたインピーダンスに基づいて第1〜第3分割スタック121〜123のうち最も燃料ガス中の水素分圧値の低い分割スタックに燃料ガスを供給し、残りの分割スタックへの燃料ガスの供給を停止させるよう第1〜第3インジェクタ111〜113を制御し、S100へ戻る。
 
【0065】
  上記したように本燃料電池システムは、酸化ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて発電する第1〜第3分割スタック(121〜123)と、燃料タンク(101)から第1〜第3分割スタックに対して各燃料ガスを導入する燃料供給路(103)を備えている。また、第1〜第3分割スタックへの燃料ガスの供給を制御する燃料供給部(111〜113)と、第1〜第3分割スタックから排出された燃料ガスを集合させて燃料ガスを排出する排出遮断弁(104)へと導く燃料排出路(105)を備えている。また、燃料排出路を通じて燃料ガスが第1分割スタックの燃料ガス導出側へ逆流することを防止する第1の逆流防止機構(161)と、燃料排出路を通じて燃料ガスが第2分割スタックの燃料ガス導出側へ逆流することを防止する第2の逆流防止機構(162)と、燃料排出路を通じて燃料ガスが第3分割スタックの燃料ガス導出側へ逆流することを防止する第3の逆流防止機構(163)と、を備えている。また、燃料排出路により集合させられた燃料ガスを第1〜第3分割スタックの各燃料ガス導入口へと導く循環路(170a〜170c)を備えている。さらに、排出遮断弁を閉口させるとともに、第1〜第3分割スタックのうちの1つ分割スタックに燃料ガスを供給させ、第1〜第3分割スタックのうちの残りの分割スタックへの燃料ガスの供給を停止させるよう燃料供給部を制御する制御部(200)を備えている。
 
【0066】
  このような構成によれば、第1〜第3分割スタックのうちの1つの分割スタックに燃料ガスが供給されると、この分割スタックから排出された燃料ガスは循環路を通って残りの分割スタックに並列的に導入される。したがって、燃料ガス供給部から最初に燃料ガスが供給された分割スタックには、この分割スタックに供給されるべき燃料ガスに加えて、残りの分割スタックの供給される燃料ガスも流れることになり、分割スタック内の不純物の排出性を向上することができる、また、第1〜第3分割スタックのうちの1つの分割スタックに燃料ガスが供給されると、この分割スタックから排出された燃料ガスは、循環路を通って残りの分割スタックに並列的に導入される、このため、残りの分割スタックに直列的に導入される場合と比較して、各分割スタック速やかに燃料ガスを供給することができ、燃料ガスを供給してから速やかに発電することができる。
 
【0067】
  また、逆流防止機構は、第1逆流防止機構であり、第1〜第3分割スタックに対して個別に配置され、第1〜第3の燃料ガス供給部から第1〜第3分割スタックに燃料ガスを供給する流路に循環路からの燃料ガスを合流させる第1〜第3合流部191〜193と、循環路に配置され、第1〜第3合流部から循環路側への燃料ガスの流入を防止する第2逆流防止機構181〜183と、を備えている。
 
【0068】
  このような構成によれば、循環路に、第1〜第3合流部から循環路側への燃料ガスの流入を防止する第2逆流防止機構181〜183が備えられているので、第1〜第3合流部から循環路側へ燃料ガスが逆流するのを防止することができる。
 
【0069】
  また、第1分割スタック121と第1の逆流防止機構161との間に配置され、第1分割スタック121から排出された燃料ガスに含まれる気体と液体を分離する第1の気液分離器151を備えている。また、第2分割スタック122と第2の逆流防止機構162との間に配置され、第2分割スタックから排出された燃料ガスに含まれる気体と液体を分離する第2の気液分離器152を備えている。さらに、第3分割スタック123と第3の逆流防止機構163との間に配置され、第3分割スタックから排出された燃料ガスに含まれる気体と液体を分離する第3の気液分離器153と、を備えている。
 
【0070】
  このような構成によれば、第1〜第3分割スタック121〜123から排出された燃料ガスに含まれる生成水等の不純物を第1の気液分離器151〜153に貯留させて回収することができる。
 
【0071】
  また、第1〜第3分割スタックのインピーダンスを測定するインピーダンス測定部131〜133を備えている。制御部200は、インピーダンス測定部により測定されたインピーダンスに基づいて第1〜第3分割スタックのうち1つでも排水不良が生じている分割スタックがあるか否かを判定する排水性不良判定部S102を備えている。制御部200は、さらに、排水性不良判定部により第1〜第3分割スタックのうち1つでも排水不良が生じている分割スタックがあると判定された場合、最も排水不良となっている分割スタックに燃料ガスを供給するよう燃料ガス供給部を制御する燃料供給制御部S104を備えている。
 
【0072】
  これによれば、第1〜第3分割スタックのうち1つでも排水不良が生じている分割スタックがあると判定された場合、最も排水不良となっている分割スタックに燃料ガスを供給するよう燃料ガス供給部が制御されるので、最も排水不良となっている分割スタックの排水性を向上することができる。
また、制御部200は、排水性不良判定部S102により第1〜第3分割スタックのうち1つも排水不良が生じている分割スタックがないと判定された場合、インピーダンス測定部S102により測定されたインピーダンスに基づいて第1〜第3分割スタックのうち最も燃料ガス中の水素分圧値の低い分割スタックに燃料ガスを供給し、残りの分割スタックへの燃料ガスの供給を停止させるようインジェクタ111〜113を制御する第2燃料供給制御部S106を備えている。
 
【0073】
  これによれば、第1〜第3分割スタックのうち最も燃料ガス中の水素分圧値の低い分割スタックの排水性を向上することができる。
 
【0074】
  また、燃料排出路105で集合した燃料ガスの圧力を検出する圧力検出部109を備え、制御部200は、圧力検出部109により検出された燃料ガスの圧力が所定値より大きいか否かを判定する圧力判定部S100を備え、燃料供給制御部S104は、圧力判定部により圧力検出部により検出された燃料ガスの圧力が所定値未満であると判定され、かつ、排水性不良判定部により第1〜第3分割スタックのうち1つでも排水不良が生じているサブスタックがあると判定された場合、最も排水不良となっているサブスタックに燃料ガスを供給し、残り分割スタックへの燃料ガスの供給を停止させるよう燃料ガス供給部を制御する。
 
【0075】
  このように、燃料ガスの圧力が所定値未満であると判定され、かつ、排水性不良判定部により第1〜第3分割スタックのうち1つでも排水不良が生じているサブスタックがあると判定された場合に、最も排水不良となっているサブスタックに燃料ガスを供給することもできる。
 
【0076】
  ところで、本実施形態では、1つの分割スタックに1つの燃料ガス供給部から燃料ガスを供給すると、この分割スタックから排出された燃料ガスは循環路を通って残りの分割スタックに分配される。例えば、第1分割スタック121に1つの燃料ガス供給部から燃料ガスを供給すると、この第1分割スタック121から排出された燃料ガスは循環路170を通って第2〜第3分割スタック122〜123に流入する。
 
【0077】
  これに対し、第1分割スタック121、第2分割スタック122、第3分割スタック123の順に直列的に燃料ガスが流れるように構成することも考えられる。しかし、このように第1〜第3分割スタックに直列的に燃料ガスが流れるように構成した場合、各分割スタックを流れる燃料ガスの流動抵抗が大きくなるので、燃料ガスの供給速度が遅くなり、速やかに発電することができなくなってしまう。
 
【0078】
  本実施形態では、1つの分割スタックに1つの燃料ガス供給部から燃料ガスを供給すると、この分割スタックから排出された燃料ガスは循環路170を通って残りの分割スタックに分配されるよう構成されているので、燃料ガスの供給速度が速く、より速やかに発電することができる。
 
【0079】
  (他の実施形態)
  (1)上記実施形態では、第1〜第3分割スタック121〜123を備えた構成を示したが、4つ以上の分割スタックを備えた構成としてもよい。この場合、例えば、4つの分割スタックのうち最も排水不良が生じている1つの分割スタックに燃料ガスを供給させ、残りの分割スタックへの燃料ガスの供給を停止させるようインジェクタ111〜113を制御するよう構成すればよい。また、3つ以上の燃料電池スタックを備えた構成としてもよい。
 
【0080】
  (2)上記実施形態では、第1〜第3インジェクタ111〜113を用いて第1〜第3分割スタック121〜123に燃料ガスを供給しているが、第1〜第3インジェクタ111〜113以外の部材を用いて第1〜第3分割スタック121〜123に燃料ガスを供給することもできる。
 
【0081】
  (3)上記実施形態では、逆止弁141〜143、161〜163、191〜193を用いて逆流防止機構を構成したが、逆止弁以外の部材を用いて逆流防止機構を構成してもよい。
 
【0082】
  (4)上記実施形態では、複数の分割スタックのうち1つでも排水不良が生じている分割スタックがあると判定された場合、最も排水不良となっている分割スタックに燃料ガスを供給するよう燃料ガス供給部を制御するようにした。
 
【0083】
  これに対し、燃料排出路105で集合された燃料ガスの圧力が所定値未満で、かつ、燃料ガスの圧力が所定値未満の場合に、最も排水不良となっている分割スタックに燃料ガスを供給するよう燃料ガス供給部を制御するようにしてもよい。
 
【0084】
  (5)上記実施形態では、燃料ガスの圧力が所定値未満で、かつ、第1〜第3分割スタックのうち1つも排水不良が生じている分割スタックがないと判定された場合、S106にて、第1〜第3分割スタックのうち最も燃料ガスの濃度の低い分割スタックに燃料ガスを供給するよう燃料ガス供給部を制御するようにした。これに対し、燃料ガスの圧力が所定値未満の場合に、第1〜第3分割スタックのうち最も燃料ガスの濃度の低い分割スタックに燃料ガスを供給するよう燃料ガス供給部を制御するようにしてもよい。
 
【0085】
  (6)上記実施形態では、第1〜第3分割スタック121〜123のうち1つも排水不良が生じている分割スタックがないと判定された場合、インピーダンス測定部131〜133により測定されたインピーダンスに基づいて第1〜第3分割スタックのうち最も燃料ガス中の水素分圧値の低い分割スタックに燃料ガスを供給し、残りの分割スタックへの燃料ガスの供給を停止させるようインジェクタ111〜113を制御した。
これに対し、第1〜第3分割スタック121〜123のうち1つも排水不良が生じている分割スタックがないと判定された場合、第1〜第3分割スタック121〜123に同量の燃料ガスを供給するようインジェクタ111〜113を制御してもよい。
 
【0086】
  なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。