(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
繊維強化樹脂のプレス圧成形あるいは真空圧成形に用いる樹脂供給材料であって、連続多孔質体と熱硬化性樹脂からなり、下記式(I)で表される平均孔断面積比Pが1.1以上である樹脂供給材料。
P=AII/AI・・・(I)
AI:領域Iにおける平均孔断面積
AII:領域IIにおける平均孔断面積
領域I:連続多孔質体の両表面における表層から全体積の10%を占める領域
領域II:連続多孔質体の全領域
前記連続多孔質体が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、および金属繊維から選択される少なくとも1種の強化繊維からなる不織布である、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂供給材料。
繊維強化樹脂の成形に用いる樹脂供給材料であって、連続多孔質体と樹脂からなり、下記式(II)で表される、前記樹脂供給材料中の前記樹脂の質量含有率のバラつきMが0以上、0.1以下の範囲内になるものである、および/または、下記式(III)で表される、樹脂供給材料の比重のバラつきDが0以上、0.1以下の範囲内になるものである樹脂供給材料。
M=Mr/Ma・・・(II)
Ma:0.1cm3にそれぞれ切り出した樹脂供給材料から求めた樹脂の質量含有率の平均値
Mr:0.1cm3にそれぞれ切り出した樹脂供給材料から求めた樹脂の質量含有率の標準偏差
D=Dr/Da・・・(III)
Da:0.1cm3にそれぞれ切り出した樹脂供給材料の比重の平均値
Dr:0.1cm3にそれぞれ切り出した樹脂供給材料の比重の標準偏差
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1の態様〕
本発明は、連続多孔質体と熱硬化性樹脂からなる樹脂供給材料である。
図1に示すように、かかる樹脂供給材料1は、該樹脂供給材料1を基材2と積層してプリフォーム3を作製し、該プリフォーム
3を、例えば閉空間内で加熱加圧し、樹脂供給材料1から基材2に熱硬化性樹脂を供給することにより、繊維強化樹脂の成形を可能とする。
【0020】
ここで、プリフォームとは、樹脂供給材料1と基材2を積層し、一体化させた積層体のことを意味し、樹脂供給材料1を所定枚数積層し、一体化した積層体の最外層を基材2で挟み込んだサンドイッチ積層体や、樹脂供給材料1と基材2を交互に積層させた交互積層体、およびこれらの組み合わせが例示できる。あらかじめプリフォームを形成しておくことにより、繊維強化樹脂の製造工程において、迅速、かつより均一に熱硬化性樹脂を基材2に含浸させることができるようになるため好ましい。
【0021】
本発明の樹脂供給材料1を用いた繊維強化樹脂の製造方法では、ボイド混入をできる限り防ぎつつ樹脂供給材料1から基材2へ熱硬化性樹脂を供給する必要があるため、プレス圧成形や真空圧成形を用いることが望ましい。成形型は、剛体からなるクローズド型などの両面型であっても、片面型であっても構わない。後者の場合、プリフォーム3を可撓性のフィルムと剛体オープン型の間に設置することもできる(この場合、可撓性のフィルムと剛体オープン型の間が外部よりも減圧状態となるため、プリフォーム3が加圧された状態となる)。
【0022】
本発明の樹脂供給材料1は連続多孔質体と熱硬化性樹脂からなり、シート状であることが好適である。この場合、シート厚みは、樹脂供給性や力学特性の観点から0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましい。また、取り扱い性、成形性の観点から、シート厚みは、100mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましく、30mm以下がさらに好ましい。
【0023】
本発明の樹脂供給材料1の、下記式(I)で表される平均孔断面積比Pは、1.1以上がよく、1.3以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。Pが1.1未満の場合、樹脂供給材料1を運搬する際に樹脂が漏れたり、樹脂貯蔵量が小さくなったりする懸念がある。平均孔断面積比の導出法は後述する。
【0024】
P=AII/AI・・・(I)
AI:領域Iにおける平均孔断面積
AII:領域IIにおける平均孔断面積
領域I:
図2に示すような連続多孔質体4の両表面における表層4aから全体積の10%を占める領域(すなわち、連続多孔質体4の表層4aから厚みの10%の領域)
領域II:
図2に示すような連続多孔質体4の全領域(すなわち、領域Iの厚みを両表面における表層4aについてそれぞれ1としたとき、領域IIの厚みは10となるように構成される)
【0025】
次に、連続多孔質体4について説明する。樹脂供給材料1に使用される連続多孔質体4は、主に通気パスが外部と繋がっている空間(すなわち、連続的な空間)からなることを特徴とするが、本発明の目的を損なわない程度に通気パスのない閉空間を含んでいても良い。具体的には、全空間に対する閉空間の割合は、樹脂貯蔵性の観点から、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。全空間に対する閉空間の割合はJIS K7138(2006年)により求められる。
【0026】
本発明の樹脂供給材料1は、連続多孔質体4の表層部から樹脂が無加圧状態では漏れず、内部で大量の樹脂を貯蔵できるように、JIS R1655(2003年)に準拠した対数微分気孔体積−孔径分布において、連続多孔質体4は、0.5cm
3/g以上の対数微分気孔体積ピークを2つ以上有することが好ましい。
【0027】
本発明の樹脂供給材料1は、連続多孔質体4の表層部から樹脂が無加圧状態では漏れず、昇温、加圧時に流出するように、連続多孔質体4の領域Iにおける、0.5cm
3/g以上の対数微分気孔体積ピークの孔径は、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。さらに、連続多孔質体4の領域Iにおいて、気孔体積割合が90%以上となる孔径は、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。気孔体積割合はJIS R1655(2003年)に準拠した累積気孔体積−孔径分布から求められる。
【0028】
連続多孔質体4の空隙率は、樹脂供給性の観点から85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。空隙率の測定法は後述する。
【0029】
連続多孔質体4は、樹脂発泡体、強化繊維基材、あるいは、異なる材料の組み合わせでも良い。樹脂発泡体は軟質のものであれば良く、熱硬化性樹脂フォームでも熱可塑性樹脂フォームでもかまわない。強化繊維基材は、一方向基材や織物基材などに使用される連続繊維でもかまわないが、樹脂供給性の観点から不連続繊維が好ましい。束形状もしくは単繊維形状で分散し、繊維間に樹脂の含浸する空隙を有するウェブであることが好ましい。ウェブの形態や形状に制限はなく、例えば、炭素繊維が有機繊維、有機化合物や無機化合物と混合されていたり、炭素繊維同士が他の成分で目留めされていたり、炭素繊維が樹脂成分と接着されていたりしても良い。繊維が分散したウェブを容易に製造する観点から、乾式法や湿式法で得られる不織布形態で、炭素繊維が十分に開繊され、かつ単繊維同士が有機化合物からなるバインダーで接着された基材が好ましい形状として例示できる。
【0030】
繊維強化樹脂の成形に用いる連続多孔質体4と熱硬化性樹脂からなる樹脂供給材料1に用いるための、前記強化繊維基材は、強化繊維からなるウェブが、特定の繊維長で、かつ強固なネットワークを形成し、高強度、かつ後述するようにスプリングバック特性を有することができる。高強度、かつスプリングバック特性を有するウェブを、本発明の樹脂供給材料1を構成する連続多孔質体4として使用することで、樹脂供給性に優れ、かつ、高強度な繊維強化樹脂を得やすい(すなわち、繊維体積含有率を上げやすい)。ここで、スプリングバック力は、JIS K6400−2(硬さ及び圧縮たわみ A−1法、2012年)に準拠して、空隙率90%におけるウェブ圧縮応力(スプリングバック力)として定義できる。かかる強化繊維は、空隙率90%におけるウェブ圧縮応力が、5kPa以上であることが好ましく、50kPa以上であることがより好ましく、100kPa以上であることがさらに好ましい。
【0031】
強化繊維の種類としては炭素繊維が好ましいが、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維などでも良い。炭素繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が力学特性の向上、繊維強化樹脂の軽量化効果の観点から好ましく使用でき、これらは1種または2種以上を併用しても良い。中でも、得られる繊維強化樹脂の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。強化繊維の単繊維径は、0.5μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、4μm以上がさらに好ましい。また、強化繊維の単繊維径は、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。強化繊維のストランド強度は、3.0GPa以上が好ましく、4.0GPa以上がより好ましく、4.5GPa以上がさらに好ましい。強化繊維のストランド弾性率は、200GPa以上が好ましく、220GPa以上がより好ましく、240GPa以上がさらに好ましい。強化繊維のストランド強度あるいは弾性率がそれぞれ、3.0GPa未満あるいは200GPa未満の場合には、繊維強化樹脂としたときに、所望の特性が得られないことがある。
【0032】
樹脂供給材料1の繊維重量含有率Wfiは、0.5%以上が好ましく、1.0%以上がより好ましく、1.5%以上がさらに好ましい。繊維重量含有率Wfiが0.5%未満では、強化繊維に対して熱硬化性樹脂の量が多すぎて、樹脂を強化繊維に担持できなかったり、成形時に大量の樹脂が外部へフローしたりすることがある。また、本発明の樹脂供給材料1の、下記式(II)で表される(成形前の)繊維重量含有率Wfiは、30%以下であるとよく、22%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。繊維重量含有率Wfiが30%を超えると、基材2への樹脂含浸不良が生じ、ボイドの多い繊維強化樹脂となる可能性がある。なお、繊維重量含有率WfiはJIS K7075(1991年)に準拠して求められる。
【0033】
樹脂供給材料1の繊維重量含有率Wfiは、該樹脂供給材料1を含むプリフォームを研磨あるいはカットなどを行うことにより樹脂供給材料1のみを取り出し、JIS K7075(1991年)に準拠して求めることもできる。未硬化状態での測定が難しい場合は、無加圧で硬化したものを使用してもよい。
【0034】
Wfi=Wf1/(Wf1+Wr1)×100(%)・・・(II)
Wf1:成形前の樹脂供給材料内繊維重量(g)
Wr1:成形前の樹脂供給材料内樹脂重量(g)
【0035】
本発明の樹脂供給材料1の、下記式(III)で表される(成形前の)繊維体積含有率Vfiは、0.3%以上が好ましく、0.6%以上がより好ましく、1.0%以上がさらに好ましい。繊維体積含有率Vfiが0.3%未満では、強化繊維に対して熱硬化性樹脂の量が多すぎて、樹脂を強化繊維に担持できなかったり、成形時に大量の樹脂が外部へフローしたりすることがある。また、本発明の樹脂供給材料1の、下記式で表される(成形前の)繊維体積含有率Vfiは、20%以下であるとよく、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。繊維体積含有率Vfiが20%を超えると、基材2への樹脂含浸不良が生じ、ボイドの多い繊維強化樹脂となる可能性がある。なお、繊維体積含有率VfiはJIS K7075(1991年)に準拠して求められる。また、かかる繊維体積含有率Vfiの特定方法に代えて、厚さT1(単位:mm、実測値)と強化繊維の目付Faw(単位:g/m
2、カタログあるいは実測値)、強化繊維の密度ρ(単位:g/cm
3、カタログあるいは実測値)を用いて下記式により繊維体積含有率Vfiを求めてもよい。厚さT1は、顕微鏡により樹脂供給材料1の縦50mm、横50mmの範囲内における任意の10点の厚さ平均から求められる。なお、厚さ方向は、プリフォームに用いられる基材2との接触面に対する直交方向である。
【0036】
樹脂供給材料1の繊維体積含有率Vfiは、該樹脂供給材料1を含むプリフォームを研磨あるいはカットなどを行うことにより樹脂供給材料1のみを取り出し、JIS K7075(1991年)に準拠して求めることもできる。未硬化状態での測定が難しい場合は、無加圧で硬化したものを使用してもよい。
【0037】
Vfi=Vf1/Vp1×100(%)・・・(III)
Vf1:成形前の樹脂供給材料内繊維体積(mm
3)
Vp1:成形前の樹脂供給材料の体積(mm
3)
Vfi=Faw/ρ/T1/10(%)
Faw:強化繊維の目付(g/m
2)
ρ:強化繊維の密度(g/cm
3)
T1:樹脂供給材料の厚さ(mm)
【0038】
強化繊維の平均繊維長は、0.1mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上がさらに好ましい。また、強化繊維の平均繊維長は、100mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。平均繊維長の測定方法としては、例えば、強化繊維基材から直接強化繊維を摘出する方法や、プリプレグの樹脂のみを溶解する溶剤を用いて溶解させ、残った強化繊維を濾別して顕微鏡観察により測定する方法がある(溶解法)。樹脂を溶解する溶剤がない場合には、強化繊維が酸化減量しない温度範囲において樹脂のみを焼き飛ばし、強化繊維を分別して顕微鏡観察により測定する方法(焼き飛ばし法)などがある。測定は強化繊維を無作為に400本選び出し、その長さを1μm単位まで光学顕微鏡にて測定し、繊維長とその割合を測定することができる。なお、強化繊維基材から直接強化繊維を摘出する方法と、プリプレグから焼き飛ばし法や溶解法で強化繊維を摘出する方法とを比較した場合、条件を適切に選定することで、得られる結果に特別な差異を生じることはない。
【0039】
ここで、上記したスプリングバック特性を有するとは、以下の条件を満たすことである。すなわち、ウェブの初期厚みをt
0、ウェブを0.1MPaで加圧した状態の厚みをt
1、ウェブに荷重を印加した後に荷重を除去した状態の厚みをt
2とすると、条件:t
1<t
2≦t
0を満たすことである。ここで、厚み変化率R(=t
0/t
1)は、1.1以上であるとよく、1.3以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。1.1未満の場合、樹脂供給性と形状追随性が低下し、所望の形状の成形体が得られないことがある。また、厚み変化率Rは、10以下であるとよく、7以下が好ましく、4以下がより好ましい。t
0/t
1が10を超えると樹脂を含浸する際に樹脂供給材料1の取り扱い性が低下することがある。初期厚みおよび荷重を除去した状態の厚みの測定方法は特に制限されないが、例えば、マイクロメーターやノギス、三次元測定機、レーザー変位計、もしくは顕微鏡観察により測定することができる。ここで、顕微鏡観察は、ウェブを直接観察しても良いし、ウェブを熱硬化性樹脂により包埋し、断面を研磨後、観察しても良い。荷重を印加した時の厚みの測定方法は特に制限されないが、例えば、曲げ試験機もしくは圧縮試験機により強化繊維からなるウェブに荷重を印加し、変位を読み取ることで測定できる。
【0040】
ウェブのX−Y面(基材面内を意味し、本発明では基材面内のある軸(X軸)と直交する軸をY軸、基材厚さ方向(すなわち、基材面と垂直な方向)をZ軸とする)の繊維配向は等方性が好ましい。後述の測定法で測定される、X−Y面の繊維二次元配向角の平均値は、5度以上が好ましく、20度以上がより好ましく、30度以上がさらに好ましい。理想的な角度である45度に近づくほど好ましい。5度未満では、繊維強化樹脂の力学特性が方向によって大きく異なるため、樹脂供給材料1の積層方向を考慮する必要が出てくる場合がある。
【0041】
樹脂の担持性が向上するように、後述の測定法で測定される、ウェブのX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は、5度以上が好ましく、10度以上がより好ましく、20度以上がさらに好ましい。また、ウェブのX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は、85度以下が好ましく、80度以下がより好ましく、75度以下がさらに好ましい。5度未満や85度を超えると、繊維同士が密になり、樹脂担持性に劣る可能性がある。
【0042】
本発明で好ましく用いられる強化繊維からなるウェブの単位面積当たりの質量は、1g/m
2以上が好ましく、10g/m
2以上がより好ましく、30g/m
2以上がさらに好ましい。単位面積あたりの質量が1g/m
2未満だと、樹脂の担持性が下がり、成形に必要な樹脂量をプールできない可能性がある。さらには、当該ウェブや樹脂供給材料1を製造する過程において、取り扱い性が悪く、作業性が低下することがある。
【0043】
本発明で好ましく用いられる強化繊維からなるウェブ内の繊維同士は、バインダーで接着されてなることが好ましい。このことにより、ウェブの取り扱い性や生産性、作業性が向上し、かつ、ウェブのネットワーク構造を保持することができる。バインダーとしては特に制限されないが、ポリビニルアルコール、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリアミドイミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体などの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステルなどの熱硬化性樹脂が好ましく使用される。得られる繊維強化樹脂の力学特性の観点から、エポキシ基、水酸基、アクリレート基、メタクリレート基、アミド基、カルボキシル基、カルボン酸、酸無水物基、アミノ基、イミン基から選択される少なくとも1つの官能基を有する樹脂が好ましく用いられる。これらのバインダーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用しても良い。バインダーの付着量は、0.01%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましく、1%以上がさらに好ましい。またバインダーの付着量は、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。バインダーの付着量が20%を超えると、乾燥工程に時間を要したり、樹脂含浸性が低くなったりしてしまうことがある。一方、バインダーの付着量が0.01%未満だと、本発明に強化繊維からなるウェブが用いられる場合、その形態維持が難しく取り扱い性が悪くなることがある。なお、バインダーの付着量の測定方法については、後述する。
【0044】
本発明の樹脂供給材料1に使用される熱硬化性樹脂について説明する。本発明に用いられる熱硬化性樹脂の含浸時の粘度は、1000Pa・s以下が好ましく、100Pa・s以下がより好ましく、10Pa・s以下がさらに好ましい。1000Pa・sを超える場合、後述する基材2に熱硬化性樹脂が十分含浸しないことにより、得られる繊維強化樹脂にボイドが発生する懸念がある。
【0045】
本発明に用いられる熱硬化性樹脂の種類としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ビスマレイミド樹脂などが好ましく用いられる。エポキシ樹脂単体の他、エポキシ樹脂と熱硬化性樹脂の共重合体、変性体および2種類以上ブレンドした樹脂なども用いることができる。
【0046】
樹脂供給材料1において、連続多孔質体4の単位質量あたりの熱硬化性樹脂の体積は、150cm
3/g以下であることが好ましく、120cm
3/g以下がより好ましく、100cm
3/g以下がさらに好ましい。また、樹脂供給材料1において、連続多孔質体4の単位質量あたりの熱硬化性樹脂の体積は、3cm
3/g以上であることが好ましく、10cm
3/g以上がより好ましく、20cm
3/g以上がさらに好ましい。150cm
3/gを超えると樹脂供給材料1を運搬時、樹脂が漏れる可能性がある。一方、3cm
3/g未満の場合、樹脂供給量が小さくなり、成形品内に未含浸部が生じる可能性がある。
【0047】
本発明のプリフォームに用いられる基材2は、強化繊維からなる繊維基材であり、強化繊維からなる織物基材、一方向基材、およびマット基材から選択される少なくとも1種であることが好ましい。具体的には、連続繊維からなる織物基布を単独または積層したもの、またはその織物基布をステッチ糸により縫合一体化したもの、あるいは立体織物や編組物などの繊維構造物、不連続繊維を不織布形態としたものなどが好ましく用いられる。なお、連続繊維とは、強化繊維を短繊維の状態に切断することなく、強化繊維束を連続した状態で引き揃えた強化繊維を意味する。本発明において基材2に用いられる強化繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えた長繊維、織物、トウおよびロービングなどの連続繊維の形態から適宜選択できる。基材2に用いられる一つの繊維束中のフィラメント数は、500以上が好ましく、1500以上がより好ましく、2500以上がさらに好ましい。また、一つの繊維束中のフィラメント数は、150000以下が好ましく、100000以下がより好ましく、70000以下がさらに好ましい。
【0048】
高力学特性の繊維強化樹脂を得る目的からは連続強化繊維で構成された織物基材や一方向基材を基材2に用いることが好ましいが、熱硬化性樹脂の含浸速度を速め、繊維強化樹脂の生産性を高める目的からは、不連続繊維で構成されたマット基材を基材2に用いることが好ましい。
【0049】
本発明の樹脂供給材料1を用いた繊維強化樹脂の製造方法として、例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、まず樹脂供給材料1と、シート状基材、布帛状基材、および多孔質基材から選択される少なくとも1種の基材2を含むプリフォーム3を作製し、金型上にセットする。高温の金型上で樹脂供給材料1を軟化後、加圧により基材2へ熱硬化性樹脂を供給する。加圧方法はプレス圧成形や真空圧成形が好ましい。樹脂供給時と硬化時の温度は同じであっても異なっていても良い。成形型は剛体からなるクローズド型などの両面型であっても、片面型であっても構わない。後者の場合、プリフォーム3を可撓性のフィルムと剛体オープン型の間に設置することもできる(この場合、上述のとおり、可撓性のフィルムと剛体オープン型の間が外部よりも減圧状態となるため、プリフォーム3が加圧された状態となる)。熱硬化性樹脂は、成形時の加熱により、また必要に応じて成形後に熱硬化性樹脂が硬化する温度にさらに加熱することにより、熱硬化性樹脂が硬化し、繊維強化樹脂が得られる。
【0050】
<X−Y面の繊維二次元配向角の平均値導出法>
X−Y面の繊維二次元配向角の平均値は、以下の手順I、IIで測定する。なお、上述のとおり、X軸、Y軸、Z軸は互いに直交しており、X−Y面は基材面内、Z軸は基材厚さ方向である。
【0051】
I.X−Y面で無作為に選択した強化繊維単繊維に対して交差している全ての強化繊維単繊維との二次元配向角の平均値を測定する。強化繊維単繊維に交差する強化繊維単繊維が多数の場合には、交差する強化繊維単繊維を無作為に20本選び測定した平均値を代用しても良い。
II.上記Iの測定を別の強化繊維単繊維に着目して合計5回繰り返し、その平均値を繊維二次元配向角の平均値として算出する。
【0052】
プリプレグから繊維二次元配向角の平均値を測定する方法には特に制限はないが、例えば、プリプレグの表面から強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、プリプレグ表面を研磨して繊維を露出させることで、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。また、プリプレグに透過光を利用して強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、プリプレグを薄くスライスすることで、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。さらに、プリプレグをX線CT透過観察して強化繊維の配向画像を撮影する方法も例示できる。X線透過性の高い強化繊維の場合には、強化繊維にトレーサ用の繊維を混合しておく、あるいは強化繊維にトレーサ用の薬剤を塗布しておくと、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。
【0053】
また、上記方法で測定が困難な場合には、強化繊維の構造を崩さないように樹脂を除去した後に強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。例えば、プリプレグを2枚のステンレス製メッシュに挟み、プリプレグが動かないようにネジなどで固定してから樹脂成分を焼き飛ばし、得られる強化繊維基材を光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察して測定することができる。
【0054】
<平均孔断面積および平均孔断面積比の導出法>
樹脂供給材料1の断面を顕微鏡で観察し、10mm
四方の領域における空隙部および樹脂部(連続多孔質体4の構成材以外の箇所)の全面積と連続多孔質体4の閉断面の数を求め、空隙部および樹脂部を合わせた全面積を連続多孔質体4の閉断面の数で割ることで1孔あたりの面積が導出される。未硬化状態での測定が難しい場合は、無加圧で硬化したもの、あるいは、連続多孔質体4の構造を崩さないように包埋用樹脂で硬化したものを使用してもよい。連続多孔質体4の両表面における表層から全体積の10%を占める領域Iにおいて、厚さ方向に5等分した各断面の1孔あたりの面積を測定し、その平均を領域Iにおける平均孔断面積AIとする。また、連続多孔質体4の全体積を占める領域IIにおいても、厚さ方向に5等分した各断面の1孔あたりの面積を測定し、その平均を領域IIにおける平均孔断面積AIIとする。平均孔断面積比PはAIとAIIの比より求める。
【0055】
<空隙率の導出法>
まず連続多孔質体4の見かけ密度ρ
a(g/cm
3)を次のようにして求める。すなわち、連続多孔質体4を例えば立方体や直方体などの形状に切り出し、定規やノギスなどを用いて各辺の大きさを測定し、該連続多孔質体4の体積を求め、これをV(cm
3)とする。また、切り出した連続多孔質体4の質量を測定し、これをW(g)とする。WをVで除すことにより見かけ密度ρ
aを求める。
【0056】
連続多孔質体4の空隙率F
V(%)は、前述の見かけ密度を求めた際に使用した体積V(cm
3)とW(g)を用い、さらに連続多孔質体4を形成する材料の比重S(g/cm
3)を用いて下記式(IV)により求める。
【0057】
F
V(%)=(W/S)/V×100・・・(IV)
【0058】
<X−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値導出法>
X−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は、以下の手順I、IIで測定する。
【0059】
I.X−Y面と直交する面で無作為に選択した強化繊維単繊維の繊維二次元配向角を測定する。繊維二次元配向角はZ軸に平行な場合を0度、Z軸に直角な場合を90度とする。よって繊維二次元配向角の範囲は0〜90度となる。
II.上記Iの測定を合計50本の強化繊維単繊維で実施し、その平均値をX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値として算出する。
【0060】
プリプレグから繊維傾斜角の平均値を測定する方法には特に制限はないが、例えば、プリプレグのY−Z面(Z−X面)から強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合プリプレグ断面を研磨して繊維を露出させることで、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。また、プリプレグに透過光を利用して強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、プリプレグを薄くスライスすることで、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。さらに、プリプレグをX線CT透過観察して強化繊維の配向画像を撮影する方法も例示できる。X線透過性の高い強化繊維の場合には、強化繊維にトレーサ用の繊維を混合しておく、あるいは強化繊維にトレーサ用の薬剤を塗布しておくと、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。
【0061】
<バインダーの付着量の測定方法>
炭素繊維を秤量(W
1)した後、50リットル/分の窒素気流中、温度450℃に設定した電気炉に15分間放置し、バインダーを完全に熱分解させる。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維を秤量(W
2)して、下記式(V)によりバインダー付着量を求める。
【0062】
バインダー付着量(%)=(W
1−W
2)/W
1×100 ・・・(V)
【0063】
〔実施例〕
参考例1(強化繊維(炭素繊維))
PANを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単繊維数12,000本の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
【0064】
単繊維径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8
引張強度:4600MPa
引張弾性率:220GPa
【0065】
参考例2(熱硬化性樹脂(b)(エポキシ樹脂))
“jER(登録商標)”630(三菱化学(株)製)を6質量部、“EPON(登録商標)”825(三菱化学(株)製)を19質量部、ジグリシジルアニリン(日本化薬(株)製)を15質量部、“カネエース(登録商標)”MX−416((株)カネカ製)を60質量部、硬化剤として“jERキュア(登録商標)”Wを31質量部、硬化促進剤としてDIC−TBC(DIC(株)製)を1質量部用いて、エポキシ樹脂を調製した。
【0066】
参考例3(炭素繊維ウェブ)
参考例1で得られた炭素繊維をカートリッジカッターで所定の長さにカットし、チョップド炭素繊維を得た。水と界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名)、ナカライ
テスク(株)製)からなる濃度0.1質量%の分散液を作製し、この分散液と上記チョップド炭素繊維とを用いて、抄紙基材の製造装置で抄紙基材を製造した。製造装置は、分散槽としての容器下部に開口コックを有する直径1000mmの円筒形状の容器、分散槽と抄紙槽とを接続する直線状の輸送部(傾斜角30度)を備えている。分散槽の上面の開口部には撹拌機が付属し、開口部からチョップド炭素繊維および分散液(分散媒体)を投入可能である。抄紙槽は、底部に幅500mmの抄紙面を有するメッシュコンベアを備える槽であり、炭素繊維基材(抄紙基材)を運搬可能なコンベアをメッシュコンベアに接続している。抄紙は分散液中の炭素繊維濃度を調整することで、単位面積当たりの質量を調整した。抄紙した炭素繊維基材にバインダーとしてポリビニルアルコール水溶液(クラレポバール、(株)クラレ製)を5質量%ほど付着させ、140℃の乾燥炉で1時間乾燥し、求める炭素繊維ウェブを得た。平均孔断面積は3800μm
2、空隙率は98%であった。
【0067】
JIS R1655(2003年)に準拠して孔径およびその体積割合を測定したところ、ピーク孔径は60μm、気孔体積割合が90%以上となる孔径は160μmであった。
【0068】
平均繊維長は5.8mm、X−Y面の繊維二次元配向角の平均値は47.3°、X−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は80.7°であった。
【0069】
参考例4(樹脂フィルム)
ポリプロピレン樹脂(住友化学(株)製、ノーブレン(登録商標)AH−561)をプレス成形し、樹脂フィルム200g/m
2を作製した。
【0070】
参考例5(樹脂含浸ウェブ)
参考例3で得られたウェブ100g/m
2の表層に、参考例4で得られた樹脂フィルム200g/m
2を配置し、220℃のプレス機上で樹脂を溶融した後、全体厚みが0.3mmとなるように加圧した。樹脂が溶融状態のまま、全体厚みが0.6mmとなるようにプレス面を移動し、室温まで冷却した。繊維体積含有率は10%、空隙率は50%、平均孔断面積は700μm
2であった。JIS R1655(2003年)に準拠して孔径およびその体積割合を測定したところ、ピーク孔径は30μm、気孔体積割合は90%となる孔径は40μm以下であった。
【0071】
参考例6(樹脂フォーム)
メラミンフォーム(BASF(株)製、タイプ:バソテクトUFグレード、空隙率:99%)の平均孔断面積は31000μm
2、ピーク孔径は100μm、気孔体積割合が90%となる孔径は220μm以下であった。
【0072】
参考例7(樹脂フォーム)
ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、品番:ECT、空隙率:98%)の平均孔断面積は126000μm
2、ピーク孔径は350μmであった。
【0073】
参考例8(樹脂フォーム)
ウレタンフォーム((株)イノアックコーポレーション製、品番:MF−13、空隙率:97%)の平均孔断面積は502000μm
2、ピーク孔径は900μmであった。
【0074】
以下の実施例、比較例において樹脂漏れの判断基準は、樹脂供給材料を持ち上げた際にエポキシ樹脂が1分間に0.5ml以上落下した場合を樹脂漏れあり、それ以外の場合を樹脂漏れなしとした。また、成形性の判断基準は、成形品表層の樹脂未含浸部分が30%以上存在する場合を成形不可(×)とし、それ以外の場合を成形可(○)とした。
【0075】
(実施例1)
参考例8で得られた樹脂フォーム(目付:150g/m
2、大きさ:13.8×13.8cm
2)に参考例2で得られたエポキシ樹脂(1500g/m
2)を含浸させた。その後、周囲を参考例3で得られたウェブ(炭素繊維の目付:100g/m
2)で覆い樹脂供給材料を作製した。連続多孔質体は、参考例8で得られた樹脂フォームと参考例3で得られたウェブからなり、全体厚さに対する、参考例3で得られたウェブの厚さ比率が55%(すなわち、
図2,3に示すように、両表面における表層4aから10%の厚みの部分が領域I、残りの部分(厚みの35%部分)が領域IIに属する)であった。連続多孔質体の対数微分気孔体積−孔径分布をJIS R1655(2003年)に準拠して求めたところ、参考例8で得られた樹脂フォームと参考例3で得られたウェブ由来と思われる、0.5cm
3/g以上の対数微分気孔体積ピークが2つ見られた。得られた樹脂供給材料を運搬する際、樹脂漏れはなかった。得られた樹脂供給材料を樹脂包埋し、連続多孔質体の表層から全体積の10%を占める領域I(参考例3で得られたウェブ)における平均孔断面積AIを測定したところ3800μm
2であった。また、連続多孔質体の全体積を占める領域II(参考例3で得られたウェブと参考例8で得られた樹脂フォーム)における平均孔断面積AIIは352000μm
2となり、AII/AIは92.6であった。なお、連続多孔質体の単位質量あたりの熱硬化性樹脂の体積は5cm
3/g、空隙率は97%、JIS K7138(2006年)に準拠した、連続多孔質体の全空間に対する閉空間の割合は5%未満であった。
【0076】
(実施例2)
実施例1で作製した樹脂供給材料とドライ織物(東レ(株)製クロス、品番:CO6343B、平織、炭素繊維目付198g/m
2)を使用して、平板を作製した。成形工程は下記の通りである。
【0077】
(1)樹脂供給材料(大きさ:13.8×13.8cm
2)の表と裏に、ドライ織物を2層ずつ配置する。
(2)(1)の積層体をプレス機でゼロ圧、70℃で10分ほど予熱する。
(3)1MPaで加圧する。
(4)3℃/分で150℃まで昇温後、40分間ホールドし硬化する。
【0078】
ドライ織物の表面まで樹脂が含浸し、良外観の成形品が得られた。
【0079】
(実施例3)
参考例3で得られたウェブ(炭素繊維の目付:100g/m
2、大きさ:13.8×13.8cm
2)に参考例2で得られたエポキシ樹脂(1500g/m
2)を含浸させた。その後、周囲を参考例5で得られた樹脂含浸ウェブ(炭素繊維の目付:100g/m
2)で覆い樹脂供給材料を作製した。連続多孔質体は、参考例3で得られたウェブと参考例5で得られた樹脂含浸ウェブからなり、全体厚さに対する、参考例5で得られた樹脂含浸ウェブの厚さ比率が29%(すなわち、
図2,3に示すように、両表面における表層4aから10%の厚みの部分が領域I、残りの部分(厚みの9%部分)が領域IIに属する)であった。連続多孔質体の対数微分気孔体積−孔径分布をJIS R1655(2003年)に準拠して求めたところ、参考例3で得られたウェブと参考例5で得られた樹脂含浸ウェブ由来と思われる、0.5cm
3/g以上の対数微分気孔体積ピークが2つ見られた。得られた樹脂供給材料を運搬する際、樹脂漏れはなかった。得られた樹脂供給材料を樹脂包埋し、連続多孔質体の表層から全体積の10%を占める領域I(参考例5で得られたウェブ)における平均孔断面積AIを測定したところ700μm
2であった。また連続多孔質体の全体積を占める領域II(参考例3で得られたウェブと参考例5で得られた樹脂含浸ウェブ)における平均孔断面積AIIは2500μm
2となり、AII/AIは3.6であった。なお、連続多孔質体の単位質量あたりの熱硬化性樹脂の体積は3.1cm
3/g、空隙率は90%、JIS K7138(2006年)に準拠した、連続多孔質体の全空間に対する閉空間の割合は5%未満であった。
【0080】
(実施例4)
実施例2で作製した樹脂供給材料とドライ織物(東レ(株)製クロス、品番:CO6343B、平織、炭素繊維目付198g/m
2)を使用して、平板を作製した。成形工程は下記の通りである。
【0081】
(1)樹脂供給材料(大きさ:13.8×13.8cm
2)の表と裏に、ドライ織物を2層ずつ配置する。
(2)(1)の積層体をプレス機でゼロ圧、70℃で10分ほど予熱する。
(3)1MPaで加圧する。
(4)3℃/分で150℃まで昇温後、40分間ホールドし硬化する。
【0082】
ドライ織物の表面まで樹脂が含浸し、良外観の成形品が得られた。
【0083】
(実施例5)
参考例7で得られた樹脂フォーム(目付:90g/m
2、大きさ:13.8×13.8cm
2)に参考例2で得られたエポキシ樹脂(1500g/m
2)を含浸させた。その後、周囲を参考例6で得られた樹脂フォーム(目付:32g/m
2)で覆い樹脂供給材料を作製した。連続多孔質体は、参考例7で得られた樹脂フォームと参考例6で得られた樹脂フォームからなり、全体厚さに対する、参考例6で得られた樹脂フォームの厚さ比率が51%(すなわち、
図3に示すように、両表面における表層から10%の厚みの部分が領域I、残りの部分(厚みの31%部分)が領域IIに属する)であった。連続多孔質体の対数微分気孔体積−孔径分布をJIS R1655(2003年)に準拠して求めたところ、参考例7で得られた樹脂フォームと参考例6で得られた樹脂フォーム由来と思われる、0.5cm
3/g以上の対数微分気孔体積ピークが2つ見られた。得られた樹脂供給材料を運搬する際、樹脂漏れはなかった。得られた樹脂供給材料を樹脂包埋し、連続多孔質体の表層から全体積の10%を占める領域I(参考例6で得られた樹脂フォーム)における平均孔断面積AIを測定したところ31000μm
2であった。また、連続多孔質体の全体積を占める領域II(参考例7で得られた樹脂フォームと参考例6で得られた樹脂フォーム)における平均孔断面積AIIは107000μm
2となり、AII/AIは3.5であった。なお、連続多孔質体の単位質量あたりの熱硬化性樹脂の体積は10.2cm
3/g、空隙率は98%で、JIS K7138(2006年)に準拠した、連続多孔質体の全空間に対する閉空間の割合は5%未満であった。
【0084】
(実施例6)
実施例5で作製した樹脂供給材料とドライ織物(東レ(株)製クロス、品番:CO6343B、平織、炭素繊維目付198g/m
2)を使用して、平板を作製した。成形工程は下記の通りである。
【0085】
(1)樹脂供給材料(大きさ:13.8×13.8cm
2)の表と裏に、ドライ織物を2層ずつ配置する。
(2)(1)の積層体をプレス機でゼロ圧、70℃で10分ほど予熱する。
(3)1MPaで加圧する。
(4)3℃/分で150℃まで昇温後、40分間ホールドし硬化する。
【0086】
ドライ織物の表面まで樹脂が含浸し、良外観の成形品が得られた。
【0087】
(実施例7)
参考例8で得られた樹脂フォーム(目付:150g/m
2、大きさ:13.8×13.8cm
2)に参考例2で得られたエポキシ樹脂(1500g/m
2)を含浸させた。その後、周囲を参考例6で得られた樹脂フォーム(目付:32g/m
2)で覆い樹脂供給材料を作製した。連続多孔質体は、参考例8で得られた樹脂フォームと参考例6で得られた樹脂フォームからなり、全体厚さに対する、参考例6で得られた樹脂フォームの厚さ比率が48%(すなわち、
図2,3に示すように、両表面における表層4aから10%の厚みの部分が領域I、残りの部分(厚みの28%部分)が領域IIに属する)であった。連続多孔質体の対数微分気孔体積−孔径分布をJIS R1655(2003年)に準拠して求めたところ、参考例8で得られた樹脂フォームと参考例6で得られた樹脂フォーム由来と思われる、0.5cm
3/g以上の対数微分気孔体積ピークが2つ見られた。得られた樹脂供給材料を運搬する際、樹脂漏れはなかった。得られた樹脂供給材料を樹脂包埋し、連続多孔質体の表層から全体積の10%を占める領域I(参考例6で得られた樹脂フォーム)における平均孔断面積AIを測定したところ31000μm
2であった。また、連続多孔質体の全体積を占める領域II(参考例8で得られた樹脂フォームと参考例6で得られた樹脂フォーム)における平均孔断面積AIIは408000μm
2となり、AII/AIは13.1であった。なお、連続多孔質体の単位質量あたりの熱硬化性樹脂の体積は6.9cm
3/g、空隙率は98%、JIS K7138(2006年)に準拠した、連続多孔質体の全空間に対する閉空間の割合は5%未満であった。
【0088】
(実施例8)
実施例7で作製した樹脂供給材料とドライ織物(東レ(株)製クロス、品番:CO6343B、平織、炭素繊維目付198g/m
2)を使用して、平板を作製した。成形工程は下記の通りである。
【0089】
(1)樹脂供給材料(大きさ:13.8×13.8cm
2)の表と裏に、ドライ織物を2層ずつ配置する。
(2)(1)の積層体をプレス機でゼロ圧、70℃で10分ほど予熱する。
(3)1MPaで加圧する。
(4)3℃/分で150℃まで昇温後、40分間ホールドし硬化する。
【0090】
ドライ織物の表面まで樹脂が含浸し、良外観の成形品が得られた。
【0091】
(比較例1)
参考例7の樹脂フォーム(目付:90g/m
2、大きさ:13.8×13.8cm
2)に参考例2で得られたエポキシ樹脂(1500g/m
2)を含浸させて樹脂供給材料を作製した。得られた樹脂供給材料を運搬する際、樹脂漏れが発生した。得られた樹脂供給材料の平均孔断面積は、領域Iで121000μm
2、領域IIで118000μm
2となり、AII/AIは0.98であった。
【0092】
(比較例2)
参考例8の樹脂フォーム(目付:150g/m
2、大きさ:13.8×13.8cm
2)に参考例2で得られたエポキシ樹脂(1500g/m
2)を含浸させて樹脂供給材料を作製した。得られた樹脂供給材料を運搬する際、樹脂漏れが発生した。得られた樹脂供給材料の平均孔断面積は、領域Iで490000μm
2、領域IIで486000μm
2となり、AII/AIは0.99であった。
【0093】
(比較例3)
参考例3のウェブ(炭素繊維の目付:100g/m
2、大きさ:13.8×13.8cm
2)に参考例2で得られたエポキシ樹脂(300g/m
2)を含浸させて樹脂供給材料を作製した。得られた樹脂供給材料の、参考例3のウェブの単位質量あたりの熱硬化性樹脂の体積は2.5cm
3/gであった。
【0094】
(比較例4)
比較例3で作製した樹脂供給材料とドライ織物(東レ(株)製クロス、品番:CO6343B、平織、炭素繊維目付198g/m
2)を使用して、平板を作製した。成形工程は下記の通りである。
【0095】
(1)樹脂供給材料(大きさ:13.8×13.8cm
2)の表と裏に、ドライ織物を2層ずつ配置する。
(2)(1)の積層体をプレス機でゼロ圧、70℃で10分ほど予熱する。
(3)1MPaで加圧する。
(4)3℃/分で150℃まで昇温後、40分間ホールドし硬化する。
【0096】
成形品表層の樹脂未含浸部分が50%以上あり、成形不可であった。
【0098】
〔第2の態様〕
本発明の樹脂供給材料は、連続多孔質体と樹脂からなる樹脂供給材料である。かかる樹脂供給材料は、該樹脂供給材料を基材と積層してプリフォームを作製し、該プリフォームを、例えば金型内で加熱、加圧し、樹脂供給材料から基材に樹脂を供給することにより、繊維強化樹脂を製造することを可能とする。すなわち、樹脂が、繊維強化樹脂のマトリックス樹脂となる。
【0099】
本発明の樹脂供給材料を用いた繊維強化樹脂の製造方法では、ボイドの混入をできる限り防ぎつつ樹脂供給材料から基材へ樹脂を供給できることが好ましいため、プレス圧成形法や真空圧成形法を用いることが好ましい。用いる金型は、剛体からなるクローズド型などの両面型であっても、片面型であっても構わない。後者の場合、プリフォームを可撓性のフィルムと剛体オープン型の間に設置することもできる(この場合、可撓性のフィルムと剛体オープン型の間が外部よりも減圧状態となるため、プリフォームが加圧された状態となる)。
【0100】
本発明の樹脂供給材料は連続多孔質体と樹脂からなり、シート状であることが好ましい。シート厚みは、樹脂供給性や力学特性の観点から0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましく、2mm以上がとりわけ好ましい。一般的に厚みの小さい樹脂供給材料ほど得られる繊維強化樹脂のソリが大きくなる傾向があるが、本発明の樹脂供給材料を用いることにより、かかる範囲内で厚みが小さくともソリの少ない繊維強化樹脂を得ることが出来る。また、取扱い性、成形性の観点から、シート厚みは、100mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましく、30mm以下がさらに好ましい。一般的に厚みの大きい樹脂供給材料ほど得られる繊維強化樹脂のヒケが大きくなる傾向があるが、本発明の樹脂供給材料を用いることにより、かかる範囲内で厚みが大きくともヒケの少ない繊維強化樹脂を得ることが出来る。
【0101】
本発明の樹脂供給材料は、下記式(I)で表される、樹脂供給材料中の樹脂の質量含有率のバラつきMが0以上、0.1以下の範囲内であること、または、下記式(II)で表される、樹脂供給材料の比重のバラつき
Dが0以上、0.1以下の範囲内であることが必要であり、いずれの要件も満たすことが好ましい。かかる要件について以下に説明する。
【0102】
本発明の樹脂供給材料は、第1の形態では、下記式(I)で表される、樹脂供給材料中の樹脂の質量含有率のバラつきMが、0以上、0.1以下の範囲内であることが必要であり、0以上、0.05以下の範囲内にあることが好ましい。樹脂供給材料中の樹脂の質量含有率のバラつきMが0.1よりも大きい場合は、繊維強化樹脂の製造工程において基材への樹脂の供給量にバラつきを生じさせたり、得られる繊維強化樹脂中において、連続多孔質体と樹脂の質量割合にバラつきを生じさせ、繊維強化樹脂にヒケやソリといった外観不良を発生させたりする要因となる。
【0103】
樹脂供給材料中の樹脂の質量含有率のバラつきMは、下記式(I)により求められる。
【0104】
M=Mr/Ma・・・(I)
Ma:0.1cm
3にそれぞれ切り出した樹脂供給材料から求めた樹脂の質量含有率の平均値
Mr:0.1cm
3にそれぞれ切り出した樹脂供給材料から求めた樹脂の質量含有率の標準偏差
【0105】
ここで、樹脂供給材料に用いる樹脂が室温で固体の場合は、これを粉砕しないよう注意して切り出せば良く、樹脂が室温で液体の場合は、凍結条件下で切り出せば良い。凍結条件としては、示差走査熱量測定(DSC)によって求めた樹脂の融点より10℃以上低い温度雰囲気が例示できる。融点が検出出来ない場合はガラス転移点を代用して求める方法が例示できる。
【0106】
樹脂供給材料中の樹脂の質量含有率は、前記条件で切り出した0.1cm
3サイズのサンプルにおいて樹脂のみを除去する前後の質量差から求めることができる。樹脂供給材料から樹脂のみを除去する方法としては、樹脂供給材料を加熱条件下に置いて樹脂を焼き飛ばす方法や、連続多孔質体は溶解せずに、樹脂を溶解させる溶剤中に浸漬させる方法が例示できる。
【0107】
また、ここでの平均値は算術平均によって求めた値であり、樹脂供給材料の任意の箇所から切り出した20個のサンプルを用いて求めることができる。標準偏差は前記算術平均に用いたものと同じサンプルでの測定結果から求めることができる。
【0108】
本発明の樹脂供給材料は、第2の形態では、下記式(II)で表される、樹脂供給材料の比重のバラつきDが、0以上、0.1以下の範囲内であることが必要であり、0以上、0.05以下の範囲内にあることが好ましい。樹脂供給材料の比重のバラつきDが0.1よりも大きい場合は、繊維強化樹脂の製造工程において基材への樹脂の供給量にバラつきを生じさせたり、得られる繊維強化樹脂中において、連続多孔質体と樹脂の質量割合にバラつきを生じさせ、繊維強化樹脂にヒケやソリといった外観不良を発生させたりする要因となる。
【0109】
樹脂供給材料の比重のバラつきDは、下記式(II)により求められる。
【0110】
D=Dr/Da・・・(II)
Da:0.1cm
3にそれぞれ切り出した樹脂供給材料の比重の平均値
Dr:0.1cm
3にそれぞれ切り出した樹脂供給材料の比重の標準偏差
【0111】
ここで、樹脂供給材料に用いる樹脂が室温で固体の場合は、これを粉砕しないよう注意して切り出せば良く、樹脂が室温で液体の場合は、凍結条件下で切り出せば良い。凍結条件としては、示差走査熱量測定(DSC)によって求めた樹脂の融点より10℃以上低い温度雰囲気が例示できる。融点が検出出来ない場合はガラス転移点を代用して求める方法が例示できる。
【0112】
樹脂供給材料の比重は、前記条件で切り出した0.1cm
3サイズのサンプルにおいてJIS K7112(1999年)のA法(水中置換法)に準拠し測定することができる。前記した比重の測定方法を用いることができない場合、0.1cm
3サイズに厳密に切り出したサンプルの質量(単位:g)を0.1cm
3の体積で除した値を用いて計算した値で代用することができる。
【0113】
また、ここでの平均値は算術平均によって求めた値であり、樹脂供給材料の任意の箇所から切り出した20個のサンプルを用いて求めることができる。標準偏差は前記算術平均に用いたものと同じサンプルでの測定結果から求めることができる。
【0114】
本発明の樹脂供給材料は、第1の形態と第2の形態の両方の要件を具備することにより、より優れた効果を奏するようになる。
【0115】
次に、連続多孔質体について説明する。本発明において、連続多孔質体とは、内包する空孔が一定以上の割合で互いに連結した多孔質体のことを指し、かかる割合としては、内包する空孔の体積を100体積%とした際に、多孔質体の外周まで到達している空孔の割合が、30〜100体積%の範囲であるものが例示できる。かかる空孔の体積は、X線CT透過観察により、連続多孔質体を撮影する方法によって求めることができる。連続多孔質体の具体例としては、樹脂発泡体や、布帛などが挙げられるが、樹脂供給材料の取り扱い性と、樹脂の担持量のバランスの観点から、強化繊維によって得られる布帛を用いることが好ましい。
【0116】
次に、強化繊維について説明する。連続多孔質体として、強化繊維によって得られる布帛を用いた場合、使用される強化繊維は、一方向基材や織物基材などに使用される連続繊維でもかまわないが、樹脂供給性の観点から不連続繊維が好ましい。不連続繊維としては束形状もしくは単繊維形状が例示できるが、単繊維形状で分散し、繊維間により均一な空隙を有するウェブであることが好ましい。ウェブの形態や形状に制限はなく、例えば、複数の強化繊維が混合されていたり、強化繊維同士が他の成分で目留めされていたり、強化繊維が樹脂成分と接着されていたりしても良い。強化繊維が分散したウェブを容易に製造する観点から、乾式法や湿式法で得られる不織布形態で、強化繊維が十分に開繊され、かつ単繊維同士が有機化合物からなるバインダーで接着された基材が好ましい形状として例示できる。
【0117】
繊維強化樹脂の製造の観点からは、連続多孔質体は、前記強化繊維からなるウェブが、特定の繊維長で、かつ強固なネットワークを形成し、高強度、かつ後述するようにスプリングバック力を有することが好ましい。高強度、かつスプリングバック力を有するウェブを、本発明の樹脂供給材料を構成する連続多孔質体として使用することで、樹脂供給性に優れ、かつ、後述する、連続多孔質体を含むコア層の比重のバラつきD’が制御しやすくなるため好ましい。ここで、スプリングバック力は、JIS K6400−2(硬さ及び圧縮たわみ A−1法、2012年)に準拠して、空隙率90%におけるウェブ圧縮応力(スプリングバック力)として定義できる。かかる連続多孔質体については、空隙率90%におけるウェブ圧縮応力は5kPa以上が好ましく、50kPa以上がより好ましく、100kPa以上がさらに好ましい。
【0118】
強化繊維の種類としては炭素繊維が好ましいが、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維などでも良い。炭素繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が力学特性の向上、繊維強化樹脂の軽量化効果の観点から好ましく使用でき、これらは1種または2種以上を併用しても良い。中でも、得られる繊維強化樹脂の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。強化繊維の単繊維径は、0.5μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、4μm以上がさらに好ましい。また、強化繊維の単繊維径は、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。強化繊維のストランド強度は、3GPa以上が好ましく、4GPa以上がより好ましく、4.5GPa以上がさらに好ましい。強化繊維のストランド弾性率は、200GPa以上が好ましく、220GPa以上がより好ましく、240GPa以上がさらに好ましい。強化繊維のストランド強度あるいは弾性率がそれぞれ、3GPa未満あるいは200GPa未満の場合には、繊維強化樹脂としたときに、所望の特性が得られないことがある。
【0119】
強化繊維の平均繊維長は、0.1mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上がさらに好ましい。また、強化繊維の平均繊維長は、100mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。平均繊維長の測定方法としては、例えば、連続多孔質体から直接強化繊維を摘出して顕微鏡観察により測定する方法や、樹脂供給材料中の樹脂のみを溶解する溶剤を用いて溶解させ、残った強化繊維を濾別して顕微鏡観察により測定する方法(溶解法)がある。樹脂を溶解する溶剤がない場合には、強化繊維が酸化減量しない温度範囲において樹脂のみを焼き飛ばし、強化繊維を分別して顕微鏡観察により測定する方法(焼き飛ばし法)などがある。測定は強化繊維を無作為に400本選び出し、その長さを1μm単位まで光学顕微鏡にて測定し、繊維長とその割合を測定することができる。なお、連続多孔質体から直接強化繊維を摘出する方法と、樹脂供給材料から焼き飛ばし法や溶解法で強化繊維を摘出する方法とを比較した場合、条件を適切に選定することで、得られる結果に特別な差異を生じることはない。
【0120】
ウェブのX−Y面(基材面内を意味し、本発明では基材面内のある軸(X軸)と直交する軸をY軸、基材厚さ方向(すなわち、基材面と垂直な方向)をZ軸とする。)の繊維配向は等方性が高いことが好ましい。後述の測定法で測定される、X−Y面の繊維二次元配向角の平均値は、5度以上が好ましく、20度以上がより好ましく、30度以上がさらに好ましい。理想的な角度である45度に近づくほど好ましい。5度未満では、繊維配向の特定方向への偏りが大きく、力学特性が方向によって大きく異なるため、樹脂供給材料の積層構成を考慮する必要が生じる場合がある。
【0121】
樹脂の担持性が向上するように、後述の測定法で測定される、ウェブのX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は、5度以上が好ましく、10度以上がより好ましく、20度以上がさらに好ましい。また、ウェブのX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は、85度以下が好ましく、80度以下がより好ましく、75度以下がさらに好ましい。ウェブのX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値が5度未満や85度を超えると、繊維同士の間隔が密になり、樹脂担持性を低下させる場合がある。
【0122】
本発明において、連続多孔質体として用いられる強化繊維からなるウェブの単位面積当たりの質量は、1g/m
2以上が好ましく、10g/m
2以上がより好ましく、30g/m
2以上がさらに好ましい。単位面積あたりの質量が1g/m
2未満だと、樹脂の担持性が下がり、繊維強化樹脂の製造に必要な樹脂量を担持できない可能性がある。さらには、当該ウェブや樹脂供給材料を製造する過程において、取り扱い性が悪く、作業性が低下することがある。
【0123】
本発明において、連続多孔質体として用いられる強化繊維からなるウェブを構成する強化繊維同士は、バインダーで接着されてなることが好ましい。このことにより、ウェブの取り扱い性や生産性、作業性が向上し、かつ、ウェブのネットワーク構造を保持することができる。バインダーとしては特に制限されないが、ポリビニルアルコール、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリアミドイミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体などの熱可塑性樹脂や、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステルなどの熱硬化性樹脂が好ましく使用される。また、得られる繊維強化樹脂の力学特性の観点から、エポキシ基、水酸基、アクリレート基、メタクリレート基、アミド基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、イミノ基から選択される少なくとも1つの官能基を有する樹脂が好ましく用いられる。これらのバインダーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用しても良い。バインダーの付着量は、バインダーが付着した強化繊維の質量に対し、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。また、バインダーの付着量は、バインダーが付着した強化繊維の質量に対し、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。バインダーの付着量が20質量%を超えると、樹脂の含浸性が低くなる場合がある。一方、バインダーの付着量が0.01質量%未満だと、強化繊維からなるウェブの形態維持が難しく、取扱い性が悪くなる場合がある。なお、バインダーの付着量の測定方法については、後述する。
【0124】
次に、樹脂について説明する。本発明に用いられる樹脂の連続多孔質体への含浸時の粘度は、1000Pa・s以下が好ましく、100Pa・s以下がより好ましく、10Pa・s以下がさらに好ましい。かかる粘度が1000Pa・sを超える場合、後述する基材に樹脂を十分に含浸させることができず、前記樹脂供給材料中の樹脂の質量含有率のバラつきMや前記樹脂供給材料の比重のバラつきDが制御できない場合がある。
【0125】
本発明に用いられる樹脂の種類としては、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹が例示できる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、およびビスマレイミド樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。これらの熱硬化性樹脂の中でも、樹脂供給材料の経時安定性と得られる繊維強化樹脂の力学特性のバランスからエポキシ樹脂がとりわけ好ましい。エポキシ樹脂は単体での使用の他、エポキシ樹脂を主成分とした熱硬化性樹脂との共重合体、変性体および2種類以上ブレンドした樹脂なども用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホンから選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂、またはこれらいずれかの樹脂の前駆体である環状のオリゴマーが好ましく用いられる。
【0126】
本発明のプリフォームは、前記した樹脂供給材料と基材を含む。
【0127】
本発明において、プリフォームに用いられる基材は、強化繊維からなる繊維基材であり、強化繊維からなる織物基材、一方向基材、マット基材が好ましい。高力学特性の繊維強化樹脂を得る目的からは、連続強化繊維で構成された織物基材や一方向基材を基材に用いることが好ましいが、樹脂の含浸速度を速め、繊維強化樹脂の生産性を高める目的からは、不連続繊維で構成されたマット基材を基材に用いることが好ましい。
【0128】
本発明において基材に用いられる強化繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えた長繊維、織物、トウおよびロービングなどの連続繊維の形態から適宜選択できる。通常、基材はマトリックス樹脂を含んでいない状態、すなわちドライな状態である。
【0129】
本発明において、基材を構成する連続強化繊維および不連続繊維としては、連続多孔質体に使用される強化繊維で例示したものと同種のものを好ましく用いることが出来る。
【0130】
また、本発明における基材は、樹脂供給材料とともに、プリフォームを形成するために用いられる。ここで、プリフォームとは、樹脂供給材料と基材を積層し、一体化させた積層体のことを意味し、樹脂供給材料を所定枚数積層し、一体化した積層体の最外層を基材で挟み込んだサンドイッチ積層体や、樹脂供給材料と基材を交互に積層させた交互積層体、およびこれらの組み合わせが例示できる。あらかじめプリフォームを形成しておくことにより、繊維強化樹脂の製造工程において、迅速、かつより均一に樹脂を基材に含浸させることができるようになるため好ましい。
【0131】
本発明の樹脂供給材料を用いた繊維強化樹脂の製造方法として、例えば、前記したプリフォームを、金型で加熱と加圧を行い、成形する方法が挙げられる。すなわち、まず樹脂供給材料と、基材を含むプリフォームを作製し、金型にセットする。金型によって加熱することで樹脂供給材料を軟化後、加圧により基材に樹脂を供給、含浸させる。加圧方法はプレス圧成形法や真空圧成形法が例示でき、得られる繊維強化樹脂の生産性と外観品位の観点からプレス圧成形法が好ましい。プレス圧成形法を用いた繊維強化樹脂の製造方法の場合、成形型は剛体からなるクローズド型の両面型が好ましく、かかる要件を備えた金属製の金型を用いることが好ましい。樹脂が熱硬化性樹脂の場合には、成形時の加熱により、また必要に応じて成形後に熱硬化性樹脂が硬化する温度にさらに加熱することにより、熱硬化性樹脂が硬化し、繊維強化樹脂が得られる。樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、成形時の加熱により溶融した樹脂を冷まして固化させることで、繊維強化樹脂が得られる。
【0132】
本発明において、繊維強化樹脂の製造方法における金型の表面温度の範囲は、50℃以上、450℃以下が好ましい。樹脂が熱硬化性樹脂の場合、樹脂供給時と硬化時の温度は同じであっても異なっていても良いが、繊維強化樹脂の生産性の観点からは、樹脂供給時と硬化時の温度が同じであること、すなわち樹脂の基材への供給と硬化を同時に行うことが好ましい。樹脂が熱硬化性樹脂の場合、樹脂の供給と硬化のバランスを制御する観点から、金型の表面温度の範囲は、50℃以上、200℃以下がより好ましく、80℃以上、180℃以下がさらに好ましく、100℃以上、160℃以下が特に好ましい。
【0133】
また、樹脂が熱可塑性樹脂の場合、樹脂供給時の温度は樹脂の融点より10℃以上高いことが好ましい。かかる温度は樹脂の種類にもよるが、金型の表面温度の範囲が、150℃以上、450℃以下が好ましく、150℃以上、300℃以下がより好ましい。また樹脂供給後、繊維強化樹脂を取り出す前に、金型の表面温度を樹脂の融点より10℃以上低くすることが好ましく、30℃以上低くすることがより好ましく、50℃以上低くすることがさらに好ましい。
【0134】
本発明において、繊維強化樹脂の製造方法における金型による加圧は、0.01MPa以上、20MPa以下が好ましく、0.01MPa以上、10MPa以下がより好ましく、0.01MPa以上、5MPa以下がさらに好ましい。0.01MPaよりも圧力が低いと樹脂の基材への供給が不十分になる場合がある。10MPaよりも圧力が高いと一度供給した樹脂を基材から過剰に流し出してしまい、繊維強化樹脂のソリやヒケといった外観不良の発生率を増加させてしまう場合がある。
【0135】
本発明において、繊維強化樹脂は、樹脂供給材料と基材を含むプリフォームを形成し、これを加熱、加圧成形することにより製造できる。
図4,5に示すように、加熱、加圧によって樹脂供給材料が担持していた樹脂の一部が基材に供給されるため、得られる繊維強化樹脂11は、連続多孔質体を含むコア層12と基材を含むスキン層13から構成されることになる。なお、ここでの連続多孔質体を含むコア層とは、担持していた樹脂の一部を基材に供給した後の連続多孔質体のことを指し、基材を含むスキン層とは、樹脂が含浸した基材のことを指す。
【0136】
本発明において、上記のようにして得られた繊維強化樹脂は、下記式(III)で表される、連続多孔質体を含むコア層の比重のバラつきD’が、0以上、0.1以下の範囲内にあることが好ましく、0以上、0.05以下の範囲内にあることがより好ましい。連続多孔質体を含むコア層の比重のバラつきD’が0.1よりも大きい場合は、繊維強化樹脂にヒケやソリといった外観不良を発生させる要因となる。
【0137】
連続多孔質体を含むコア層の比重のバラつきD’は、下記式(III)により求められる。
【0138】
D’=D’r/D’a・・・(III)
D’a:0.1cm
3にそれぞれ切り出した連続多孔質体を含むコア層の比重の平均値
D’r:0.1cm
3にそれぞれ切り出した連続多孔質体を含むコア層の比重の標準偏差
【0139】
ここで、0.1cm
3サイズのサンプルは、繊維強化樹脂からこれを粉砕しないよう注意して切り出せば良い。
【0140】
連続多孔質体を含むコア層の比重は、前記条件で切り出した0.1cm
3サイズのサンプルにおいてJIS K7112(1999年)のA法(水中置換法)に準拠し測定することができる。
【0141】
また、ここでの平均値は算術平均によって求めた値であり、連続多孔質体を含むコア層の任意の箇所から切り出した20個のサンプルを用いて求めることができる。標準偏差は前記算術平均に用いたものと同じサンプルでの測定結果から求めることができる。
【0142】
本発明において、樹脂供給材料を100質量%とした際に、樹脂供給材料が担持する樹脂の質量含有率は、30質量%以上、99.5質量%以下の範囲であることが好ましく、30質量%以上、95質量%以下の範囲であることがより好ましく、60質量%以上、95質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。かかる範囲内とすることで、樹脂供給材料の取り扱い性と樹脂の高い担持量、さらに樹脂の基材への供給量の均一性が両立できるため好ましい。
【0143】
本発明において、プリフォームを構成する樹脂供給材料を100質量部とした際の、基材の含有量は、0.1質量部以上、300質量部以下の範囲であることが好ましく、20質量部以上、100質量部以下の範囲であることがより好ましく、20質量部以上、80質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。かかる範囲内とすることで、樹脂の基材への供給量の均一性が制御でき、繊維強化樹脂のソリやヒケといった外観不良の発生率を低減させることができるため好ましい。
【0144】
<X−Y面の繊維二次元配向角の平均値導出法>
X−Y面の繊維二次元配向角の平均値は、以下の手順I−1、I−2で測定する。なお、上述のとおり、X軸、Y軸、Z軸は互いに直交しており、X−Y面は基材面内、Z軸は基材厚さ方向である。
【0145】
I−1.X−Y面で無作為に選択した強化繊維単繊維に対して交差している全ての強化繊維単繊維との二次元配向角の平均値を測定する。強化繊維単繊維に交差する強化繊維単繊維が多数の場合には、交差する強化繊維単繊維を無作為に20本選び測定した平均値を代用しても良い。
I−2.上記手順I−1の測定を別の強化繊維単繊維に着目して合計5回繰り返し、その平均値を繊維二次元配向角の平均値として算出する。
【0146】
樹脂供給材料から繊維二次元配向角の平均値を測定する方法には特に制限はないが、例えば、樹脂供給材料の表面から強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、樹脂供給材料表面を研磨して繊維を露出させることで、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。また、樹脂供給材料に透過光を利用して強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、樹脂供給材料を薄くスライスすることで、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。さらに、樹脂供給材料をX線CT透過観察して強化繊維の配向画像を撮影する方法も例示できる。X線透過性の高い強化繊維の場合には、強化繊維にトレーサ用の繊維を混合しておく、あるいは強化繊維にトレーサ用の薬剤を塗布しておくと、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。
【0147】
また、上記方法で測定が困難な場合には、強化繊維の構造を崩さないように樹脂を除去した後に強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。例えば、樹脂供給材料を2枚のステンレス製メッシュに挟み、樹脂供給材料が動かないようにネジなどで固定してから樹脂成分を焼き飛ばし、得られる強化繊維基材を光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察して測定することができる。
【0148】
<X−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値導出法>
X−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は、以下の手順II−1、II−2で測定する。
【0149】
II−1.X−Y面と直交する面で無作為に選択した強化繊維単繊維の繊維二次元配向角を測定する。繊維二次元配向角はZ軸に平行な場合を0度、Z軸に直角な場合を90度とする。よって繊維二次元配向角の範囲は0〜90度となる。
II−2.上記II−1の測定を合計50本の強化繊維単繊維で実施し、その平均値をX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値として算出する。
【0150】
樹脂供給材料から繊維傾斜角の平均値を測定する方法には特に制限はないが、例えば、樹脂供給材料のY−Z面(Z−X面)から強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、樹脂供給材料の断面を研磨して繊維を露出させることで、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。また、樹脂供給材料に透過光を利用して強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、樹脂供給材料を薄くスライスすることで、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。さらに、樹脂供給材料をX線CT透過観察して強化繊維の配向画像を撮影する方法も例示できる。X線透過性の高い強化繊維の場合には、強化繊維にトレーサ用の繊維を混合しておく、あるいは強化繊維にトレーサ用の薬剤を塗布しておくと、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。
【0151】
<バインダーの付着量の測定方法>
バインダーが付着した強化繊維を秤量(W
1)した後、50リットル/分の窒素気流中、温度450℃に設定した電気炉に15分間放置し、バインダーを完全に熱分解させる。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の強化繊維を秤量(W
2)して、次式によりバインダー付着量を求める。
【0152】
バインダー付着量(質量%)=(W
1−W
2)/W
1×100
【0153】
〔実施例〕
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。まず、本発明に使用した測定方法を下記する。
【0154】
(1)樹脂供給材料の質量含有率のバラつきの評価
樹脂供給材料中の樹脂の質量含有率のバラつきMは、下記式(I)により求められる。
【0155】
M=Mr/Ma・・・(I)
Ma:0.1cm
3にそれぞれ切り出した樹脂供給材料から求めた樹脂の質量含有率の平均値
Mr:0.1cm
3にそれぞれ切り出した樹脂供給材料から求めた樹脂の質量含有率の標準偏差
【0156】
0.1cm
3サイズにそれぞれ切り出した樹脂供給材料中の樹脂の質量含有率は、下記方法によって求めることが出来る。
【0157】
サンプルを秤量(Ws)した後、空気雰囲気下で、温度500℃に設定した電気炉に30分間放置し、樹脂を熱分解させる。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、30分間冷却した後の樹脂を熱分解させたサンプルを秤量(Wb)して、次式により樹脂の質量含有率(質量%)を求める。
【0158】
樹脂の質量含有率(質量%)=(Ws−Wb)/Ws×100
【0159】
また、ここでの平均値は算術平均によって求めた値であり、樹脂供給材料の任意の箇所から切り出した20個のサンプルを用いて求めることができる。標準偏差は前記算術平均に用いたものと同じサンプルでの測定結果から求めることができる。
【0160】
(2)樹脂供給材料の比重のバラつきの評価
樹脂供給材料の比重のバラつきDは、下記式(II)により求められる。
【0161】
D=Dr/Da・・・(II)
Da:0.1cm
3にそれぞれ切り出した樹脂供給材料の比重の平均値
Dr:0.1cm
3にそれぞれ切り出した樹脂供給材料の比重の標準偏差
【0162】
0.1cm
3にそれぞれ切り出した樹脂供給材料の比重は、JIS K7112(1999年)のA法(水中置換法)に準拠し測定することができる。また、ここでの平均値は算術平均によって求めた値であり、樹脂供給材料の任意の箇所から切り出した20個のサンプルを用いて求めることができる。標準偏差は前記算術平均に用いたものと同じサンプルでの測定結果から求めることができる。
【0163】
(3)連続多孔質体の比重のバラつきの評価
連続多孔質体を含むコア層の比重のバラつきD’は、下記式(III)により求められる。
【0164】
D’=D’r/D’a・・・(III)
D’a:0.1cm
3にそれぞれ切り出した連続多孔質体を含むコア層の比重の平均値
D’r:0.1cm
3にそれぞれ切り出した連続多孔質体を含むコア層の比重の標準偏差
【0165】
0.1cm
3にそれぞれ切り出した連続多孔質体を含むコア層の比重は、JIS K7112(1999年)のA法(水中置換法)に準拠し測定することができる。また、ここでの平均値は算術平均によって求めた値であり、連続多孔質体を含むコア層の任意の箇所から切り出した20個のサンプルを用いて求めることができる。標準偏差は前記算術平均に用いたものと同じサンプルでの測定結果から求めることができる。
【0166】
(4)繊維強化樹脂のソリの評価
本発明において、ソリとは、金型と接触する2つの表面が互いに平行となるように繊維強化樹脂からなる平板を製造したにもかかわらず、金型からの脱型後に得られる繊維強化樹脂の表面が、真っ直ぐな平面とはならず屈曲を有した板が得られる現象のことを指す。本発明におけるソリの評価方法を、繊維強化樹脂の厚み方向断面の模式図である
図6を用いて説明する。金型を用いて、長さ10cm×幅10cmの平板形状に成形した繊維強化樹脂11を真っ直ぐな平面を表面に有する定盤14の上に載せる。この際、繊維強化樹脂11の一部が定盤14から浮き上がる場合、繊維強化樹脂11が下に凸となる向きに載せることで、繊維強化樹脂11と定盤14の接触点Pが繊維強化樹脂11の中央付近となるようにする。この際の繊維強化樹脂11の4つの頂点と定盤14との最短距離(ΔD1,ΔD2)をそれぞれ計測し、その算術平均値を求める。繊維強化樹脂のソリの評価は、下記基準に従い3段階で評価し、goodを合格とした。
【0167】
good:繊維強化樹脂の頂点と定盤の距離の平均値が2mm以内である(ソリが小さい)
fair:繊維強化樹脂の頂点と定盤の距離の平均値が2mmより大きく、4mm以内である(ソリが大きい)
bad:繊維強化樹脂の頂点と定盤の距離の平均値が4mmより大きい(ソリが非常に大きい)
【0168】
(5)繊維強化樹脂のヒケの評価
本発明において、ヒケとは、金型と接触する2つの表面が互いに平行になるように繊維強化樹脂からなる平板を製造したにもかかわらず、金型からの脱型後に得られる繊維強化樹脂の表面が、真っ直ぐな平面とはならず部位によって厚みが異なる板が得られる現象のことを指す。本発明におけるヒケの評価方法を、繊維強化樹脂の厚み方向断面の模式図である
図7を用いて説明する。金型を用いて、長さ10cm×幅10cmの平板形状に成形した繊維強化樹脂11の4つの頂点の厚みTH2,TH3を測定し、その算術平均値(Tave)を求める。さらに、前記4つの頂点の対角線の交点の厚みTH1(Tc)を測定する。さらに次式により、繊維強化樹脂の厚みの変化率を求める。
【0169】
厚みの変化率(%)=(Tave−Tc)/Tave×100
【0170】
繊維強化樹脂のヒケの評価は、下記基準に従い3段階で評価し、goodを合格とした。
【0171】
good:厚みの変化率が10%以内である(ヒケが小さい)
fair:厚みの変化率が10%より大きく、20%以内である(ヒケが大きい)
bad:厚みの変化率が20%より大きい(ヒケが非常に大きい)
【0172】
(参考例1)
PANを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単繊維数12,000本の炭素繊維束を得た。この炭素繊維束の特性は次に示す通りであった。
【0173】
単繊維径:7μm
比重:1.8
引張強度:4600MPa
引張弾性率:220GPa
【0174】
(参考例2)
“jER(登録商標)”1007(三菱化学(株)製)を40質量部、“jER(登録商標)”630(三菱化学(株)製)を20質量部、“エピクロン(登録商標)”830(DIC(株)製)を40質量部、硬化剤としてDICY7(三菱化学(株)製)を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99(保土谷化学工業(株)製)を2質量部用いて、エポキシ樹脂epoxy−1を調製した。
【0175】
さらに、ここで得られたエポキシ樹脂epoxy−1を、リバースロールコーターを使用し離型紙上に塗布し、単位面積当たりの質量がそれぞれ50、200、250、400、750g/m
2であるエポキシ樹脂フィルムを作製した。
【0176】
(参考例3)
参考例1で得られた炭素繊維をカートリッジカッターで所定の長さにカットし、チョップド炭素繊維を得た。水と界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名)、ナカライ
テスク(株)製)からなる濃度0.1質量%の分散液を作製し、この分散液と上記チョップド炭素繊維とを用いて、抄紙基材の製造装置で抄紙基材を製造した。製造装置は、分散槽としての容器下部に開口コックを有する直径1000mmの円筒形状の容器、分散槽と抄紙槽とを接続する直線状の輸送部(傾斜角30度)を備えている。分散槽の上面の開口部には撹拌機が付属し、開口部からチョップド炭素繊維および分散液(分散媒体)を投入可能である。抄紙槽は、底部に幅500mmの抄紙面を有するメッシュコンベアを備える槽であり、炭素繊維基材(抄紙基材)を運搬可能なコンベアをメッシュコンベアに接続している。抄紙は分散液中の炭素繊維濃度を調整することで、単位面積当たりの質量を調整した。抄紙した炭素繊維基材にバインダーとしてポリビニルアルコール水溶液(クラレポバール、(株)クラレ製)を5質量%ほど付着させ、140℃の乾燥炉で1時間乾燥し、求める炭素繊維ウェブを得た。単位面積当たりの質量は100g/m
2、平均繊維長は5.8mm、X−Y面の繊維二次元配向角の平均値は47.3°、X−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は80.7°、炭素繊維ウェブの圧縮応力(スプリングバック力)は200kPaであった。ここで得られた炭素繊維ウェブをweb−1とした。
【0177】
(参考例4)
分散液中の炭素繊維濃度を調整して、単位面積当たりの質量が200g/m
2となるように変更した以外は、参考例3と同様にして炭素繊維ウェブを得た。得られた炭素繊維ウェブは、平均繊維長は5.8mm、X−Y面の繊維二次元配向角の平均値は46.8°、X−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は78.1°、炭素繊維ウェブの圧縮応力(スプリングバック力)は200kPaであった。ここで得られた炭素繊維ウェブをweb−2とした。
【0178】
(参考例5)
炭素繊維織物(“トレカ(登録商標)”クロス、品番:CO6343B、平織、目付198g/m
2、東レ(株)製)を用意し、炭素繊維織物fabric−1とした。
【0179】
(参考例6)
参考例1で得られた炭素繊維束をカートリッジカッターで25mm長にカットし、得られたチョップドストランドを単位面積当たりの質量が200g/m
2となるように堆積させることでチョップドストランドマットを得た。これを炭素繊維ウェブweb−3とした。
【0180】
(実施例1)
参考例3で得られた炭素繊維ウェブweb−1に参考例2で調製したエポキシ樹脂epoxy−1を含浸させ樹脂供給材料を作製した。含浸工程は下記の通りである。
【0181】
まず、炭素繊維ウェブ(長さ10cm×幅10cm)の表と裏に、単位面積当たりの質量が750g/m
2であるエポキシ樹脂フィルム(長さ10cm×幅10cm)を1枚ずつ配置した積層体を製造した。
【0182】
ここで得られた積層体をプレス圧成形法により、圧力0.1MPa、金型表面温度70℃で90分間加熱、加圧し、樹脂を連続多孔質体に含浸させることにより樹脂供給材料を得た。得られた樹脂供給材料の評価結果を表2に記載する。
【0183】
次いで、前記工程で得られた樹脂供給材料と基材として参考例5で用意した炭素繊維織物fabric−1を使用して、プリフォームを作製し、これを加熱、加圧することにより繊維強化樹脂からなる平板を作製した。成形工程は下記の通りである。
【0184】
樹脂供給材料(長さ10cm×幅10cm)の表と裏に、基材を1枚ずつ積層したプリフォームを作製し、得られたプリフォームをプレス圧成形法により、圧力1MPa、金型表面温度150℃で40分加熱、加圧することにより繊維強化樹脂からなる平板を製造した。得られた繊維強化樹脂の評価結果を表2に記載する。
【0185】
(実施例2)
樹脂として、参考例2で調製した単位面積当たりの質量が750g/m
2であるエポキシ樹脂フィルムに代えて、単位面積当たりの質量が400g/m
2であるエポキシ樹脂フィルムを用いた以外は実施例1と同様に樹脂供給材料と繊維強化樹脂の製造と評価を行った。各プロセス条件および評価結果を表2に記載する。
【0186】
(実施例3)
樹脂として、参考例2で調製した単位面積当たりの質量が750g/m
2であるエポキシ樹脂フィルムに代えて、単位面積当たりの質量が250g/m
2であるエポキシ樹脂フィルムを用いた以外は実施例1と同様に樹脂供給材料と繊維強化樹脂の製造と評価を行った。各プロセス条件および評価結果を表2に記載する。
【0187】
(実施例4)
炭素繊維ウェブの表と裏に、エポキシ樹脂フィルムを1枚ずつ配置することに代えて、4枚の炭素繊維ウェブと5枚のエポキシ樹脂フィルムを交互に配置することで樹脂供給材料を製造し、さらに、樹脂供給材料の表と裏に、基材を1枚ずつ積層することに代えて、樹脂供給材料の表と裏に、基材を5枚ずつ積層することでプリフォームを製造した以外は、実施例1と同様に樹脂供給材料と繊維強化樹脂の製造と評価を行った。各プロセス条件および評価結果を表2に記載する。
【0188】
(実施例5)
連続多孔質体を参考例3で調製した炭素繊維ウェブweb−1から参考例4で調製した炭素繊維ウェブweb−2に代えて、さらに、樹脂として、参考例2で調製した単位面積当たりの質量が750g/m
2であるエポキシ樹脂フィルムに代えて、単位面積当たりの質量が200g/m
2であるエポキシ樹脂フィルムを用いた以外は実施例1と同様に樹脂供給材料と繊維強化樹脂の製造と評価を行った。各プロセス条件および評価結果を表2に記載する。
【0189】
(比較例1)
連続多孔質体を用いずに、樹脂供給材料の代わりに単位面積当たりの質量が200g/m
2であるエポキシ樹脂フィルムを2枚重ねたものを用いた以外は実施例5と同様に繊維強化樹脂の製造を試みたところ、加熱、加圧した際に大部分の樹脂が金型外に流出してしまい、基材への樹脂の含浸が十分に行えなかった。各プロセス条件および評価結果を表2に記載する。
【0190】
(比較例2)
web−2に代えて、参考例6で調製した炭素繊維ウェブweb−3を用いた以外は実施例5と同様に樹脂供給材料と繊維強化樹脂の製造と評価を行った。各プロセス条件および評価結果を表2に記載する。
【0191】
(比較例3)
プレス圧成形法により樹脂供給材料を製造する際の圧力を、0.1MPaから2.5MPaに変えた以外は、実施例1と同様に樹脂供給材料と繊維強化樹脂の製造と評価を行った。各プロセス条件および評価結果を表2に記載する。
【0192】
(比較例4)
連続多孔質体を参考例3で調製した炭素繊維ウェブweb−1から参考例4で調製した炭素繊維ウェブweb−2に代えて、樹脂として、参考例2で調製した単位面積当たりの質量が750g/m
2であるエポキシ樹脂フィルムに代えて、単位面積当たりの質量が50g/m
2であるエポキシ樹脂フィルムを用い、炭素繊維ウェブの表と裏に、エポキシ樹脂フィルムを1枚ずつ配置することに代えて、2枚の炭素繊維ウェブと3枚のエポキシ樹脂フィルムを交互に配置することで樹脂供給材料を製造し、プレス圧成形法により樹脂供給材料を製造する際の加熱時間を、90分間から1分間に変えた以外は、実施例1と同様に樹脂供給材料と繊維強化樹脂の製造と評価を行った。各プロセス条件および評価結果を表2に記載する。
【0194】
表2に記載の実施例および比較例から以下のことが明らかである。
【0195】
実施例1〜5と比較例1〜4の比較から、連続多孔質体と樹脂からなる樹脂供給材料中の樹脂の質量含有率のバラつきMを0以上、0.1以下の範囲内に制御することで、得られる繊維強化樹脂のソリやヒケといった外観不良が大きく低減できることが明らかである。
【0196】
実施例1〜5と比較例1〜4の比較から、連続多孔質体と樹脂からなる樹脂供給材料の比重のバラつきDを0以上、0.1以下の範囲内に制御することで、得られる繊維強化樹脂のソリやヒケといった外観不良が大きく低減できることが明らかである。
【0197】
実施例1〜5と比較例2〜4の比較から、繊維強化樹脂中の連続多孔質体を含むコア層の比重のバラつきD’を0以上、0.1以下の範囲内に制御することで、得られる繊維強化樹脂のソリやヒケといった外観不良が大きく低減できることが明らかである。
【0198】
実施例1〜4の比較から、樹脂供給材料中の樹脂の質量含有率のバラつきMを0以上、0.1以下の範囲内に制御すること、または、樹脂供給材料の比重のバラつきDを0以上、0.1以下の範囲内に制御することで樹脂供給材料の厚みが変化しても、外観品位に優れる繊維強化樹脂が得られることが明らかである。
【0199】
〔第3の態様〕
本発明の樹脂供給材料は、連続多孔質体と樹脂からなる樹脂供給材料である。かかる樹脂供給材料は、該樹脂供給材料を基材と積層してプリフォームを作製し、該プリフォームを、例えば金型内で加熱、加圧し、樹脂供給材料から基材に樹脂を供給することにより、繊維強化樹脂を製造することを可能とする。すなわち、樹脂が、繊維強化樹脂のマトリックス樹脂となる。
【0200】
本発明の樹脂供給材料を用いた繊維強化樹脂の製造方法では、ボイドの混入をできる限り防ぎつつ樹脂供給材料から基材へ樹脂を供給できることが好ましいため、プレス圧成形法や真空圧成形法を用いることが好ましい。用いる金型は、剛体からなるクローズド型などの両面型であっても、片面型であっても構わない。後者の場合、プリフォームを可撓性のフィルムと剛体オープン型の間に設置することもできる(この場合、可撓性のフィルムと剛体オープン型の間が外部よりも減圧状態となるため、プリフォームが加圧された状態となる)。
【0201】
本発明の樹脂供給材料は連続多孔質体と樹脂からなり、シート状であることが好ましい。シート厚みは、樹脂供給性や力学特性の観点から0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましく、2mm以上がとりわけ好ましい。一般的に厚みの小さい樹脂供給材料ほどプリフォームと金型表面との間に隙間が生じやすく、得られる繊維強化樹脂の表面粗さのムラが大きくなる傾向があるが、本発明の樹脂供給材料を用いることにより、かかる範囲内で厚みが小さくとも表面粗さのムラの少ない繊維強化樹脂を得ることが出来る。また、取扱い性、成形性の観点から、シート厚みは、100mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましく、30mm以下がさらに好ましい。一般的に厚みの大きい樹脂供給材料ほど得られる繊維強化樹脂のヒケが大きくなる傾向があるが、本発明の樹脂供給材料を用いることにより、かかる範囲内で厚みが大きくともヒケの少ない繊維強化樹脂を得ることが出来る。
【0202】
本発明の樹脂供給材料は、下記式(I)で表される、樹脂供給材料の厚みの変化率Tが、1より大きく、6以下の範囲内であることが必要であり、2以上、6以下の範囲内にあることが好ましい。樹脂供給材料中の厚みの変化率Tが1以下の場合は、繊維強化樹脂の製造工程においてプリフォームと金型表面との間に隙間が生じやすく、繊維強化樹脂に表面粗さのムラやヒケといった外観不良を発生させる要因となる。樹脂供給材料中の厚みの変化率Tが6より大きい場合にも、プリフォームと金型表面との間に隙間が生じやすくなり、繊維強化樹脂に表面粗さのムラのような外観不良を発生させる要因となる。
【0203】
樹脂供給材料の厚みの変化率Tは、下記式(I)により求められる。
【0204】
T=Trt/Tri・・・(I)
Tri:繊維強化樹脂を得るために樹脂を供給した直後の樹脂供給材料の厚みの平均値
Trt:得られる繊維強化樹脂中に残存する樹脂供給材料の厚みの平均値
【0205】
ここで、樹脂供給材料の厚みは、それぞれの状態の材料を切り出して、その厚み方向の断面を光学顕微鏡で観察することによって求めることができる。繊維強化樹脂を得るために樹脂を供給した直後の樹脂供給材料のサンプルは、樹脂供給材料中の樹脂の一部を基材に含浸させる工程を終えた状態のまま、厚みが変化しないよう、冷却し取り出したサンプルの断面観察によって求めることが出来る。繊維強化樹脂中に残存する樹脂供給材料の厚みは、繊維強化樹脂の断面観察によって求めることが出来る。
【0206】
樹脂が室温で固体の場合は、これを粉砕しないよう注意して切り出せば良く、樹脂が室温で液体の場合は、凍結条件下で切り出せば良い。凍結条件としては、示差走査熱量測定(DSC)によって求めた樹脂の融点より10℃以上低い温度雰囲気が例示できる。融点が検出出来ない場合はガラス転移点を代用して求める方法が例示できる。
【0207】
また、ここでの平均値は算術平均によって求めた値であり、樹脂供給材料の任意の20箇所の厚みの測定結果を用いて求めることができる。
【0208】
本発明において、下記式(II)で表される、繊維強化樹脂を得るために樹脂を供給した直後の樹脂供給材料の厚みのバラつきTbが、0以上、0.1以下の範囲内にあることが好ましく、0以上、0.05以下の範囲内にあることがより好ましい。樹脂を供給した直後の樹脂供給材料の厚みのバラつきTbが0.1よりも大きい場合は、繊維強化樹脂に表面粗さのムラやヒケといった外観不良を発生させる要因となる。
【0209】
樹脂を供給した直後の樹脂供給材料の厚みのバラつきTbは、下記式(II)により求められる。
【0210】
Tb=Tris/Tri・・・(II)
Tris:繊維強化樹脂を得るために樹脂を供給した直後の樹脂供給材料の厚みの標準偏差
【0211】
ここで、Triは、前記式(I)で用いたものと同様の測定結果から算出された算術平均値であり、TrisはTriの算出に用いたものと同じ測定結果から求めた標準偏差である。
【0212】
本発明において、下記式(III)で表される、得られる繊維強化樹脂中に残存する樹脂供給材料の厚みのバラつきTcが、0以上、0.1以下の範囲内にあることが好ましく、0以上、0.05以下の範囲内にあることがより好ましい。得られる繊維強化樹脂中に残存する樹脂供給材料の厚みのバラつきTcが0.1よりも大きい場合は、繊維強化樹脂に表面粗さのムラやヒケといった外観不良を発生させる要因となる。
【0213】
得られる繊維強化樹脂中に残存する樹脂供給材料の厚みのバラつきTcは、下記式(III)により求められる。
【0214】
Tc=Trts/Trt・・・(III)
Trts:得られる繊維強化樹脂中に残存する樹脂供給材料の厚みの標準偏差
【0215】
ここで、Trtは、前記式(I)で用いたものと同様の測定結果から算出された算術平均値であり、TrtsはTrtの算出に用いたものと同じ測定結果から求めた標準偏差である。
【0216】
次に、連続多孔質体について説明する。本発明において、連続多孔質体とは、内包する空孔が一定以上の割合で互いに連結した多孔質体のことを指し、かかる割合としては、内包する空孔の体積を100体積%とした際に、多孔質体の外周まで到達している空孔の割合が、30〜100体積%の範囲であるものが例示できる。かかる空孔の体積は、X線CT透過観察により、連続多孔質体を撮影する方法によって求めることができる。連続多孔質体の具体例としては、樹脂発泡体や、布帛などが挙げられるが、樹脂供給材料の取り扱い性と、樹脂の担持量のバランスの観点から、強化繊維によって得られる布帛を用いることが好ましい。
【0217】
次に、強化繊維について説明する。連続多孔質体として、強化繊維によって得られる布帛を用いた場合、使用される強化繊維は、一方向基材や織物基材などに使用される連続繊維でもかまわないが、樹脂供給性の観点から不連続繊維が好ましい。不連続繊維としては束形状もしくは単繊維形状が例示できるが、単繊維形状で分散し、繊維間により均一な空隙を有するウェブであることが好ましい。ウェブの形態や形状に制限はなく、例えば、複数の強化繊維が混合されていたり、強化繊維同士が他の成分で目留めされていたり、強化繊維が樹脂成分と接着されていたりしても良い。強化繊維が分散したウェブを容易に製造する観点から、乾式法や湿式法で得られる不織布形態で、強化繊維が十分に開繊され、かつ単繊維同士が有機化合物からなるバインダーで接着された基材が好ましい形状として例示できる。
【0218】
繊維強化樹脂の製造の観点からは、連続多孔質体は、前記強化繊維からなるウェブが、特定の繊維長で、かつ強固なネットワークを形成し、高強度、かつ後述するようにスプリングバック力を有することが好ましい。高強度、かつスプリングバック力を有するウェブを、本発明の樹脂供給材料を構成する連続多孔質体として使用することで、樹脂供給性に優れ、かつ、前述した、樹脂供給材料の厚みの変化率Tや、後述する、基材の厚みの変化率T’が制御しやすくなるため好ましい。ここで、スプリングバック力は、JIS K6400−2(硬さ及び圧縮たわみ A−1法、2012年)に準拠して、空隙率90%におけるウェブ圧縮応力(スプリングバック力)として定義できる。かかる連続多孔質体については、空隙率90%におけるウェブ圧縮応力が、5kPa以上であることが好ましく、50kPa以上であることがより好ましく、100kPa以上であることがさらに好ましい。
【0219】
本発明において、連続多孔質体は、繊維強化樹脂の製造条件における厚みの復元率が、70%以上、150%以下の範囲内であることが好ましく、80%以上、110%以下の範囲内であることがより好ましい。ここでの繊維強化樹脂の製造条件における厚みの復元率とは、連続多孔質体の厚み(T
1)と、該連続多孔質体を繊維強化樹脂の製造工程と同じ条件で、加熱と加圧を行い、次いで加圧のみを除去した際の厚み(T
2)から、次式により求めることができる。
【0220】
連続多孔質体の厚みの復元率(%)=T
2/T
1×100
【0221】
連続多孔質体の繊維強化樹脂の製造条件における厚みの復元率をかかる範囲内に制御した場合、基材への樹脂の供給量の均一性を高めたり、得られる繊維強化樹脂の外観品位を向上させたりすることが可能となるため好ましい。
【0222】
強化繊維の種類としては炭素繊維が好ましいが、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維などでも良い。炭素繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が力学特性の向上、繊維強化樹脂の軽量化効果の観点から好ましく使用でき、これらは1種または2種以上を併用しても良い。中でも、得られる繊維強化樹脂の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。強化繊維の単繊維径は0.5μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、4μm以上がさらに好ましい。また、強化繊維の単繊維径は20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。強化繊維のストランド強度は3GPa以上が好ましく、4GPa以上がより好ましく、4.5GPa以上がさらに好ましい。強化繊維のストランド弾性率は200GPa以上が好ましく、220GPa以上がより好ましく、240GPa以上がさらに好ましい。強化繊維のストランド強度あるいは弾性率がそれぞれ、3GPa未満あるいは200GPa未満の場合には、繊維強化樹脂としたときに、所望の特性が得られないことがある。
【0223】
強化繊維の平均繊維長は、0.1mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上がさらに好ましい。また、強化繊維の平均繊維長は、100mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。平均繊維長の測定方法としては、例えば、連続多孔質体から直接強化繊維を摘出して顕微鏡観察により測定する方法や、樹脂供給材料中の樹脂のみを溶解する溶剤を用いて溶解させ、残った強化繊維を濾別して顕微鏡観察により測定する方法(溶解法)がある。樹脂を溶解する溶剤がない場合には、強化繊維が酸化減量しない温度範囲において樹脂のみを焼き飛ばし、強化繊維を分別して顕微鏡観察により測定する方法(焼き飛ばし法)などがある。測定は強化繊維を無作為に400本選び出し、その長さを1μm単位まで光学顕微鏡にて測定し、繊維長とその割合を測定することができる。なお、連続多孔質体から直接強化繊維を摘出する方法と、樹脂供給材料から焼き飛ばし法や溶解法で強化繊維を摘出する方法とを比較した場合、条件を適切に選定することで、得られる結果に特別な差異を生じることはない。
【0224】
ウェブのX−Y面(基材面内を意味し、本発明では基材面内のある軸(X軸)と直交する軸をY軸、基材厚さ方向(すなわち、基材面と垂直な方向)をZ軸とする)の繊維配向は等方性が高いことが好ましい。後述の測定法で測定される、X−Y面の繊維二次元配向角の平均値は、5度以上が好ましく、20度以上がより好ましく、30度以上がさらに好ましい。理想的な角度である45度に近づくほど好ましい。5度未満では、繊維配向の特定方向へ偏りが大きく、力学特性が方向によって大きく異なるため、樹脂供給材料の積層構成を考慮する必要が生じる場合がある。
【0225】
樹脂の担持性が向上するように、後述の測定法で測定される、ウェブのX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は、5度以上が好ましく、10度以上がより好ましく、20度以上がさらに好ましい。また、ウェブのX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は、85度以下が好ましく、80度以下がより好ましく、75度以下がさらに好ましい。ウェブのX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値が5度未満や85度を超えると、繊維同士の間隔が密になり、樹脂担持性を低下させる場合がある。
【0226】
本発明において、連続多孔質体として用いられる強化繊維からなるウェブの単位面積当たりの質量は、1g/m
2以上が好ましく、10g/m
2以上がより好ましく、30g/m
2以上がさらに好ましい。単位面積あたりの質量が1g/m
2未満だと、樹脂の担持性が下がり、繊維強化樹脂の製造に必要な樹脂量を担持できない可能性がある。さらには、当該ウェブや樹脂供給材料を製造する過程において、取り扱い性が悪く、作業性が低下することがある。
【0227】
本発明において、連続多孔質体として用いられる強化繊維からなるウェブを構成する強化繊維同士は、バインダーで接着されてなることが好ましい。このことにより、ウェブの取り扱い性や生産性、作業性が向上し、かつ、ウェブのネットワーク構造を保持することができる。バインダーとしては特に制限されないが、ポリビニルアルコール、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリアミドイミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体などの熱可塑性樹脂や、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステルなどの熱硬化性樹脂が好ましく使用される。また、得られる繊維強化樹脂の力学特性の観点から、エポキシ基、水酸基、アクリレート基、メタクリレート基、アミド基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、イミノ基から選択される少なくとも1つの官能基を有する樹脂が好ましく用いられる。これらのバインダーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用しても良い。バインダーの付着量は、バインダーが付着した強化繊維の質量に対し、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。またバインダーの付着量は、バインダーが付着した強化繊維の質量に対し、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。バインダーの付着量が20質量%を超えると、樹脂の含浸性が低くなる場合がある。一方、バインダーの付着量が0.01質量%未満だと、強化繊維からなるウェブの形態維持が難しく、取扱い性が悪くなる場合がある。なお、バインダーの付着量の測定方法については、後述する。
【0228】
次に、樹脂について説明する。本発明に用いられる樹脂の連続多孔質体への含浸時の粘度は、1000Pa・s以下が好ましく、100Pa・s以下がより好ましく、10Pa・s以下がさらに好ましい。かかる粘度が1000Pa・sを超える場合、後述する基材に樹脂を十分に含浸させることができず、前述した、樹脂供給材料の厚みの変化率Tや、後述する、基材の厚みの変化率T’が制御できない場合がある。
【0229】
本発明に用いられる樹脂の種類としては、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹が例示できる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、およびビスマレイミド樹脂から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。これらの熱硬化性樹脂の中でも、樹脂供給材料の経時安定性と得られる繊維強化樹脂の力学特性のバランスからエポキシ樹脂がとりわけ好ましい。エポキシ樹脂は単体での使用の他、エポキシ樹脂を主成分とした熱硬化性樹脂との共重合体、変性体および2種類以上ブレンドした樹脂なども用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホンから選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂、またはこれらいずれかの樹脂の前駆体である環状のオリゴマーが好ましく用いられる。
【0230】
本発明のプリフォームは、前記した樹脂供給材料と基材を含む。
【0231】
本発明において、プリフォームに用いられる基材は、強化繊維からなる繊維基材であり、強化繊維からなる織物基材、一方向基材、マット基材が好ましい。高力学特性の繊維強化樹脂を得る目的からは、連続強化繊維で構成された織物基材や一方向基材を基材に用いることが好ましいが、樹脂の含浸速度を速め、繊維強化樹脂の生産性を高める目的からは、不連続繊維で構成されたマット基材を基材に用いることが好ましい。
【0232】
本発明において基材に用いられる強化繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えた長繊維、織物、トウおよびロービングなどの連続繊維の形態から適宜選択できる。通常、基材はマトリックス樹脂を含んでいない状態、すなわちドライな状態である。
【0233】
本発明において、基材を構成する連続強化繊維および不連続繊維としては、連続多孔質体に使用される強化繊維で例示したものと同種のものを好ましく用いることが出来る。
【0234】
また、本発明における基材は、樹脂供給材料とともに、プリフォームを形成するために用いられる。ここで、プリフォームとは、樹脂供給材料と基材を積層し、一体化させた積層体のことを意味し、樹脂供給材料を所定枚数積層、一体化した積層体の最外層を基材で挟み込んだサンドイッチ積層体や、樹脂供給材料と基材を交互に積層させた交互積層体、およびこれらの組み合わせが例示できる。あらかじめプリフォームを形成しておくことにより、繊維強化樹脂の製造工程において、迅速、かつより均一に樹脂を基材に含浸させることができるようになるため好ましい。
【0235】
本発明の樹脂供給材料を用いた繊維強化樹脂の製造方法として、例えば、前記したプリフォームを、金型で加熱と加圧を行い、成形する方法が挙げられる。すなわち、まず樹脂供給材料と、基材を含むプリフォームを作製し、金型にセットする。金型によって加熱することで樹脂供給材料を軟化後、加圧により基材に樹脂を供給、含浸させる。加圧方法はプレス圧成形法や真空圧成形法が例示でき、得られる繊維強化樹脂の生産性と外観品位の観点からプレス圧成形法が好ましい。プレス圧成形法を用いた繊維強化樹脂の製造方法の場合、成形型は剛体からなるクローズド型の両面型が好ましく、かかる要件を備えた金属製の金型を用いることが好ましい。樹脂が熱硬化性樹脂の場合には、成形時の加熱により、熱硬化性樹脂が硬化し、繊維強化樹脂が得られる。樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、成形時の加熱により溶融した樹脂を冷まして固化させることで、繊維強化樹脂が得られる。
【0236】
本発明において、繊維強化樹脂の製造方法における金型の表面温度の範囲は、50℃以上、450℃以下が好ましい。樹脂が熱硬化性樹脂の場合、繊維強化樹脂の外観品位の向上の観点からは、樹脂を基材に含浸させることを目的とした第1の工程と、樹脂を硬化させることを目的とした第2の工程に分けることが好ましい。このような場合、第1の工程の金型の表面温度の範囲は、50℃以上、100℃以下がより好ましく、60℃以上、80℃以下がさらに好ましい。さらに第2の工程の金型の表面温度の範囲は、100℃以上、200℃以下がより好ましく、120℃以上、160℃以下がさらに好ましい。第1の工程と第2の工程の金型の表面温度のそれぞれをかかる範囲内に制御することにより、樹脂を基材に選択的に含浸させることが可能となり、得られる維強化樹脂の外観品位を向上できるため好ましい。
【0237】
また、樹脂が熱可塑性樹脂の場合、樹脂供給時の温度は樹脂の融点より10℃以上高いことが好ましい。かかる温度は樹脂の種類にもよるが、金型の表面温度の範囲が、150℃以上、450℃以下が好ましく、150℃以上、300℃以下がより好ましい。また樹脂供給後、繊維強化樹脂を取り出す前に、金型の表面温度を樹脂の融点より10℃以上低くすることが好ましく、30℃以上低くすることがより好ましく、50℃以上低くすることがさらに好ましい。
【0238】
本発明において、繊維強化樹脂の製造方法における金型による加圧は、0.01MPa以上、20MPa以下が好ましい。樹脂が熱硬化性樹脂の場合、繊維強化樹脂の外観品位の向上の観点からは、樹脂を基材に含浸させることを目的とした第1の工程と、樹脂を硬化させることを目的とした第2の工程に分けることが好ましい。このような場合、第1の工程の金型による加圧の範囲は、0.01MPa以上、5MPa以下がより好ましく、0.01MPa以上、0.5MPa以下がさらに好ましい。さらに第2の工程の金型による加圧の範囲は、0.01MPa以上、20MPa以下がより好ましく、0.01MPa以上、5MPa以下がさらに好ましい。また、第2の工程では、所定の厚みを有するスペーサーも合わせて加圧を行うことで、得られる繊維強化樹脂の厚みを調節することも好ましい。第1の工程と第2の工程の金型による圧力のそれぞれをかかる範囲内に制御することにより、得られる維強化樹脂の外観品位を向上できるため好ましい。
【0239】
また、樹脂が熱可塑性樹脂の場合、繊維強化樹脂の外観品位の向上の観点からは、金型による加圧力は、樹脂供給時と、繊維強化樹脂を取り出す前に金型の表面温度を下げる工程のいずれの際も同じであることが好ましい。
【0240】
本発明において、繊維強化樹脂は、樹脂供給材料と基材を含むプリフォームを形成し、これを加熱、加圧成形することにより製造できる。
図4,5に示すように、加熱、加圧によって樹脂供給材料が担持していた樹脂の一部が基材に供給されるため、得られる繊維強化樹脂11は、連続多孔質体を含むコア層12と基材を含むスキン層13から構成されることになる。なお、ここでの連続多孔質体を含むコア層とは、担持していた樹脂の一部を基材に供給した後の連続多孔質体のことを指し、基材を含むスキン層とは、樹脂が含浸した基材のことを指す。
【0241】
本発明のプリフォームは、下記式(IV)で表される、基材の厚みの変化率T’が、0.5以上、1.5以下の範囲内にあることが好ましく、0.85以上、1.05以下の範囲内にあることがより好ましい。基材の厚みの変化率T’が0.5よりも小さい場合は、前記基材を含むスキン層内の樹脂が不足し、基材の一部が剥き出しになることによって、繊維強化樹脂に表面粗さのムラのような外観不良を発生させる要因となる。基材の厚みの変化率T’が1.5よりも大きい場合は、前記基材を含むスキン層が空孔を多く含むようになり、得られる繊維強化樹脂に表面粗さのムラのような外観不良を発生させる要因となる。
【0242】
基材の厚みの変化率T’は、下記式(IV)により求められる。
【0243】
T’=T’rt/T’ri・・・(IV)
T’ri:樹脂が供給された直後の基材の厚みの平均値
T’rt:得られる繊維強化樹脂中に残存する基材の厚みの平均値
【0244】
ここで、基材の厚みは、それぞれの状態の材料を切り出して、その厚み方向の断面を光学顕微鏡で観察することによって求めることができる。樹脂を供給した直後の基材のサンプルは、樹脂供給材料中の樹脂の一部を基材に含浸させる工程を終えた状態のまま、厚みが変化しないよう、冷却し取り出したサンプルの断面観察によって求めることが出来る。繊維強化樹脂中に残存する基材の厚みは、繊維強化樹脂の断面観察によって求めることが出来る。
【0245】
樹脂が室温で固体の場合は、これを粉砕しないよう注意して切り出せば良く、樹脂が室温で液体の場合は、凍結条件下で切り出せば良い。凍結条件としては、示差走査熱量測定(DSC)によって求めた樹脂の融点より10℃以上低い温度雰囲気が例示できる。融点が検出出来ない場合はガラス転移点を代用して求める方法が例示できる。
【0246】
また、ここでの平均値は算術平均によって求めた値であり、基材の任意の20箇所の厚みの測定結果を用いて求めることができる。
【0247】
本発明の樹脂供給材料において、樹脂供給材料を100質量%とした際に、樹脂供給材料が担持する樹脂の質量含有率は、30質量%以上、99.5質量%以下の範囲であることが好ましく、30質量%以上、95質量%以下の範囲であることがより好ましく、60質量%以上、95質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。かかる範囲内とすることで、樹脂供給材料の取り扱い性と樹脂の高い担持量、さらに樹脂の基材への供給量の均一性が両立できるため好ましい。
【0248】
本発明のプリフォームにおいて、プリフォームを構成する樹脂供給材料を100質量部とした際の、基材の含有量は、0.1質量部以上、300質量部以下の範囲であることが好ましく、20質量部以上、100質量部以下の範囲であることがより好ましく、20質量部以上、80質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。かかる範囲内とすることで、樹脂の基材への供給量の均一性が制御でき、繊維強化樹脂の表面粗さのムラやヒケといった外観不良の発生率を低減させることができるため好ましい。
【0249】
<X−Y面の繊維二次元配向角の平均値導出法>
X−Y面の繊維二次元配向角の平均値は、以下の手順I−1、I−2で測定する。なお、上述のとおり、X軸、Y軸、Z軸は互いに直交しており、X−Y面は基材面内、Z軸は基材厚さ方向である。
【0250】
I−1.X−Y面で無作為に選択した強化繊維単繊維に対して交差している全ての強化繊維単繊維との二次元配向角の平均値を測定する。強化繊維単繊維に交差する強化繊維単繊維が多数の場合には、交差する強化繊維単繊維を無作為に20本選び測定した平均値を代用しても良い。
I−2.上記手順I−1の測定を別の強化繊維単繊維に着目して合計5回繰り返し、その平均値を繊維二次元配向角の平均値として算出する。
【0251】
樹脂供給材料から繊維二次元配向角の平均値を測定する方法には特に制限はないが、例えば、樹脂供給材料の表面から強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、樹脂供給材料表面を研磨して繊維を露出させることで、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。また、樹脂供給材料に透過光を利用して強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、樹脂供給材料を薄くスライスすることで、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。さらに、樹脂供給材料をX線CT透過観察して強化繊維の配向画像を撮影する方法も例示できる。X線透過性の高い強化繊維の場合には、強化繊維にトレーサ用の繊維を混合しておく、あるいは強化繊維にトレーサ用の薬剤を塗布しておくと、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。
【0252】
また、上記方法で測定が困難な場合には、強化繊維の構造を崩さないように樹脂を除去した後に強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。例えば、樹脂供給材料を2枚のステンレス製メッシュに挟み、樹脂供給材料が動かないようにネジなどで固定してから樹脂成分を焼き飛ばし、得られる強化繊維基材を光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察して測定することができる。
【0253】
<X−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値導出法>
X−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は、以下の手順II−1、II−2で測定する。
【0254】
II−1.X−Y面と直交する面で無作為に選択した強化繊維単繊維の繊維二次元配向角を測定する。繊維二次元配向角はZ軸に平行な場合を0度、Z軸に直角な場合を90度とする。よって繊維二次元配向角の範囲は0〜90度となる。
II−2.上記II−1の測定を合計50本の強化繊維単繊維で実施し、その平均値をX−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値として算出する。
【0255】
樹脂供給材料から繊維傾斜角の平均値を測定する方法には特に制限はないが、例えば、樹脂供給材料のY−Z面(Z−X面)から強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、樹脂供給材料の断面を研磨して繊維を露出させることで、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。また、樹脂供給材料に透過光を利用して強化繊維の配向を観察する方法が例示できる。この場合、樹脂供給材料を薄くスライスすることで、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。さらに、樹脂供給材料をX線CT透過観察して強化繊維の配向画像を撮影する方法も例示できる。X線透過性の高い強化繊維の場合には、強化繊維にトレーサ用の繊維を混合しておく、あるいは強化繊維にトレーサ用の薬剤を塗布しておくと、より強化繊維を観察しやすくなるため好ましい。
【0256】
<バインダーの付着量の測定方法>
バインダーが付着した強化繊維を秤量(W
1)した後、50リットル/分の窒素気流中、温度450℃に設定した電気炉に15分間放置し、バインダーを完全に熱分解させる。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の強化繊維を秤量(W
2)して、次式によりバインダー付着量を求める。
【0257】
バインダー付着量(質量%)=(W
1−W
2)/W
1×100
【0258】
〔実施例〕
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。まず、本発明に使用した測定方法を下記する。
【0259】
(1)樹脂供給材料の厚みの変化率の評価
樹脂供給材料の厚みの変化率Tは、下記式(I)により求められる。
【0260】
T=Trt/Tri・・・(I)
Tri:繊維強化樹脂を得るために樹脂を供給した直後の樹脂供給材料の厚みの平均値
Trt:得られる繊維強化樹脂中に残存する樹脂供給材料の厚みの平均値
【0261】
樹脂を供給した直後の樹脂供給材料の厚みを測定するためのサンプルとしては、各実施例、比較例における、樹脂を基材に含浸させる第1の工程によって得られた、中間体を用いることができる。
【0262】
得られる繊維強化樹脂中に残存する樹脂供給材料の厚みを測定するためのサンプルとしては、各実施例、比較例において得られる繊維強化樹脂を用いることができる。
【0263】
各サンプルの切断面を光学顕微鏡によって50倍に拡大し、その厚みを0.1mm単位まで読み取ることで、樹脂供給材料の厚みを測定した。
【0264】
また、ここでの平均値は算術平均によって求めた値であり、樹脂供給材料の任意の20箇所の厚みの測定結果を用いて求めることができる。
【0265】
(2)樹脂を供給した直後の樹脂供給材料の厚みのバラつきの評価
樹脂を供給した直後の樹脂供給材料の厚みのバラつきTbは、下記式(II)で表される。
【0266】
Tb=Tris/Tri・・・(II)
Tris:繊維強化樹脂を得るために樹脂を供給した直後の樹脂供給材料の厚みの標準偏差
【0267】
ここで、Triは、前記評価方法(1)における式(I)で用いたものと同様の測定結果から算出された算術平均値であり、TrisはTriの算出に用いたものと同じ測定結果から求めた標準偏差である。
【0268】
(3)繊維強化樹脂中に残存する樹脂供給材料の厚みのバラつきの評価
得られる繊維強化樹脂中に残存する樹脂供給材料の厚みのバラつきTcは、下記式(III)により求められる。
【0269】
Tc=Trts/Trt・・・(III)
Trts:得られる繊維強化樹脂中に残存する樹脂供給材料の厚みの標準偏差
【0270】
ここで、Trtは、前記評価方法(1)における式(I)で用いたものと同様の測定結果から算出された算術平均値であり、TrtsはTrtの算出に用いたものと同じ測定結果から求めた標準偏差である。
【0271】
(4)基材の厚みの変化率の評価
基材の厚みの変化率T’は、下記式(IV)により求められる。
【0272】
T’=T’rt/T’ri・・・(IV)
T’ri:樹脂が供給された直後の基材の厚みの平均値
T’rt:得られる繊維強化樹脂中に残存する基材の厚みの平均値
【0273】
樹脂が供給された直後の基材の厚みを測定するためのサンプルとしては、各実施例、比較例における、樹脂を基材に含浸させる第1の工程によって得られた、中間体を用いることができる。
【0274】
得られる繊維強化樹脂中に残存する基材の厚みを測定するためのサンプルとしては、各実施例、比較例において得られる繊維強化樹脂を用いることができる。
【0275】
各サンプルの切断面を光学顕微鏡によって50倍に拡大し、その厚みを0.1mm単位まで読み取ることで、基材の厚みを測定した。
【0276】
また、ここでの平均値は算術平均によって求めた値であり、基材の任意の20箇所の厚みの測定結果を用いて求めることができる。
【0277】
(5)繊維強化樹脂の表面粗さのムラの評価
本発明において、表面粗さのムラとは、繊維強化樹脂の外観表面において、表面粗さが極端に異なる部位が点在する現象を指す。本発明における、表面粗さのムラの評価方法を、繊維強化樹脂の模式図である
図8を用いて説明する。まず、#800で鏡面加工を施した金型を用いて、長さ10cm×幅10cmの平板形状に成形した繊維強化樹脂11の外観表面を間隔が1cm×1cmの格子線22a,22bによって分け、それぞれの格子に対して、JISB0601(2013)に準拠し算術平均表面粗さ(Ra)を求める。さらに、各格子のRaの算術平均値を求め、該算術平均値±30%以内のRaを有する格子23と、該算術平均値±30%よりも大きいRaを有する格子24に分ける。
【0278】
繊維強化樹脂の表面粗さのムラの評価は、下記基準に従い3段階で評価し、goodを合格とした。
【0279】
good:各格子のRaの算術平均値±30%よりも大きいRaを有する格子が0個以上、1個以下である(表面粗さのムラが小さい)
fair:各格子のRaの算術平均値±30%よりも大きいRaを有する格子が2個以上、4個以下である(表面粗さのムラが大きい)
bad:各格子のRaの算術平均値±30%よりも大きいRaを有する格子が5個以上である(表面粗さのムラが非常に大きい)
【0280】
(6)繊維強化樹脂のヒケの評価
本発明において、ヒケとは、金型と接触する2つの表面が互いに平行になるように繊維強化樹脂からなる平板を製造したにもかかわらず、金型からの脱型後に得られる繊維強化樹脂の表面が、真っ直ぐな平面とはならず部位によって厚みが異なる板が得られる現象のことを指す。本発明におけるヒケの評価方法を、繊維強化樹脂の厚み方向断面の模式図である
図7を用いて説明する。金型を用いて、長さ10cm×幅10cmの平板形状に成形した繊維強化樹脂11の4つの頂点の厚みTH2,TH3を測定し、その算術平均値(Tave)を求める。さらに、前記4つの頂点の対角線の交点の厚みTH1(Tc)を測定する。さらに次式により、繊維強化樹脂のヒケ率を求める。
【0281】
繊維強化樹脂のヒケ率(%)=(Tave−Tc)/Tave×100
【0282】
繊維強化樹脂のヒケの評価は、下記基準に従い3段階で評価し、goodを合格とした。
【0283】
good:繊維強化樹脂のヒケ率が10%以内である(ヒケが小さい)
fair:繊維強化樹脂のヒケ率が10%より大きく、20%以内である。(ヒケが大きい)
bad:繊維強化樹脂のヒケ率が20%より大きい。(ヒケが非常に大きい)
【0284】
(7)樹脂供給材料または繊維強化樹脂の厚みの測定
本発明において、得られた樹脂供給材料または繊維強化樹脂の厚みは、ノギスを用いて同一サンプルを測定した厚みの平均値である。ここでの平均値は算術平均によって求めた値であり、樹脂供給材料または繊維強化樹脂の任意の20箇所の厚みの測定結果を用いて求めることができる。
【0285】
(参考例1)
PANを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単繊維数12,000本の炭素繊維束を得た。この炭素繊維束の特性は次に示す通りであった。
【0286】
単繊維径:7μm
比重:1.8
引張強度:4600MPa
引張弾性率:220GPa
【0287】
(参考例2)
“jER(登録商標)”1007(三菱化学(株)製)を40質量部、“jER(登録商標)”630を20質量部、“エピクロン(登録商標)”830(DIC(株)製)を40質量部、硬化剤としてDICY7(三菱化学(株)製)を全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素基が0.9当量となる量、硬化促進剤としてDCMU99(保土谷化学工業(株)製)を2質量部用いて、エポキシ樹脂epoxy−1を調製した。
【0288】
さらに、ここで得られたエポキシ樹脂epoxy−1を、リバースロールコーターを使用し離型紙上に塗布し、単位面積当たりの質量が375g/m
2であるエポキシ樹脂フィルムを作製した。
【0289】
(参考例3)
参考例1で得られた炭素繊維をカートリッジカッターで所定の長さにカットし、チョップド炭素繊維を得た。水と界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名)、ナカライ
テスク(株)製)からなる濃度0.1質量%の分散液を作製し、この分散液と上記チョップド炭素繊維とを用いて、抄紙基材の製造装置で抄紙基材を製造した。製造装置は、分散槽としての容器下部に開口コックを有する直径1000mmの円筒形状の容器、分散槽と抄紙槽とを接続する直線状の輸送部(傾斜角30度)を備えている。分散槽の上面の開口部には撹拌機が付属し、開口部からチョップド炭素繊維および分散液(分散媒体)を投入可能である。抄紙槽は、底部に幅500mmの抄紙面を有するメッシュコンベアを備える槽であり、炭素繊維基材(抄紙基材)を運搬可能なコンベアをメッシュコンベアに接続している。抄紙は分散液中の炭素繊維濃度を調整することで、単位面積当たりの質量を調整した。抄紙した炭素繊維基材にバインダーとしてポリビニルアルコール水溶液(クラレポバール、(株)クラレ製)を5質量%ほど付着させ、140℃の乾燥炉で1時間乾燥し、求める炭素繊維ウェブを得た。単位面積当たりの質量は100g/m
2、平均繊維長は5.8mm、X−Y面の繊維二次元配向角の平均値は47.3°、X−Y面と直交する面の繊維二次元配向角の平均値は80.7°、炭素繊維ウェブの圧縮応力(スプリングバック力)は200kPaであった。ここで得られた炭素繊維ウェブを連続多孔質体web−1とした。
【0290】
得られた連続多孔質体web−1を、金型の表面温度70℃、加圧圧力1MPaの条件で測定した、連続多孔質体の厚みの復元率は、98%であった。さらに、金型の表面温度150℃、加圧圧力0.1MPaの条件で測定した連続多孔質体の厚みの復元率は、99%であった。
【0291】
(参考例4)
参考例1で得られた炭素繊維束をカートリッジカッターで25mm長にカットし、得られたチョップドストランドを単位面積当たりの質量が100g/m
2となるように堆積させることでチョップドストランドマットを得た。これを連続多孔質体web−2とした。
【0292】
得られた連続多孔質体web−2を、金型の表面温度70℃、加圧圧力1MPaの条件で測定した、連続多孔質体の厚みの復元率は、48%であった。さらに、金型の表面温度150℃、加圧圧力0.1MPaの条件で測定した連続多孔質体の厚みの復元率は、65%であった。
【0293】
(参考例5)
炭素繊維織物(“トレカ(登録商標)”クロス、品番:CO6343B、平織、目付198g/m
2、東レ(株)製)を用意し、fabric−1とした。
【0294】
(参考例6)
ポリプロピレン(“プライムポリプロ(登録商標)”J704UG、(株)プライムポリマー製)を用い、ポリプロピレン不織布(目付100g/m
2、厚さ0.58mm)を作製し、これを連続多孔質体web−3とした。
【0295】
得られた連続多孔質体web−3を、金型の表面温度70℃、加圧圧力1MPaの条件で測定した、連続多孔質体の厚みの復元率は、60%であった。さらに、金型の表面温度150℃、加圧圧力0.1MPaの条件で測定した連続多孔質体の厚みの復元率は、12%であった。
【0296】
(実施例1)
参考例3で得られた連続多孔質体web−1に参考例2で調製したエポキシ樹脂epoxy−1を含浸させ樹脂供給材料を作製した。含浸工程は下記の通りである。
【0297】
まず、連続多孔質体(長さ10cm×幅10cm)3枚とエポキシ樹脂フィルム(長さ10cm×幅10cm)4枚を交互に積層した積層体を製造した。
【0298】
ここで得られた積層体をプレス圧成形法により、圧力0.1MPa、金型表面温度70℃で90分間加熱、加圧し、樹脂を連続多孔質体に含浸させることにより樹脂供給材料を得た。得られた樹脂供給材料の評価結果を表3に記載する。
【0299】
次いで、前記工程で得られた樹脂供給材料と基材として参考例5で用意した炭素繊維織物fabric−1を使用して、プリフォームを作製し、これを加熱、加圧することにより繊維強化樹脂からなる平板を作製した。成形工程は下記の通りである。
【0300】
樹脂供給材料(長さ10cm×幅10cm)の表と裏に、基材を1枚ずつ積層したプリフォームを作製し、得られたプリフォームを第1の工程として、プレス圧成形法により、圧力1MPa、金型表面温度70℃で10分間、加熱、加圧することにより樹脂を基材に含浸させた中間体を製造した。さらに、ここで得られた中間体を、第2の工程として、#800で鏡面加工を施した金型で、プレス圧成形法により、圧力0.1MPa、金型表面温度150℃で40分間、スペーサー厚み2mmの条件で加熱、加圧することにより繊維強化樹脂からなる平板を製造した。得られた繊維強化樹脂の評価結果を表3に記載する。
【0301】
(実施例2)
第2の工程におけるスペーサー厚みを4mmに変えることで、樹脂供給材料の厚みの変化率Tを2.6に変えた以外は実施例1と同様に樹脂供給材料と繊維強化樹脂の製造と評価を行った。各プロセス条件および評価結果を表3に記載する。
【0302】
(実施例3)
第2の工程におけるスペーサー厚みを8mmに変えることで、樹脂供給材料の厚みの変化率Tを5.4に変えた以外は実施例1と同様に樹脂供給材料と繊維強化樹脂の製造と評価を行った。各プロセス条件および評価結果を表3に記載する。
【0303】
(比較例1)
第2の工程におけるスペーサー厚みを10mmに変えることで、樹脂供給材料の厚みの変化率Tを6.8に変えた以外は実施例1と同様に樹脂供給材料と繊維強化樹脂の製造と評価を行った。各プロセス条件および評価結果を表3に記載する。
【0304】
(比較例2)
第2の工程におけるスペーサー厚みを1mmに変えることで、樹脂供給材料の厚みの変化率Tを0.5に変えた以外は実施例1と同様に樹脂供給材料と繊維強化樹脂の製造と評価を行った。各プロセス条件および評価結果を表3に記載する。
【0305】
(比較例3)
連続多孔質体として、連続多孔質体web−1に代えて連続多孔質体web−2を用いることにより、樹脂供給材料の厚みの変化率Tを0.8に変えた以外は実施例1と同様に樹脂供給材料と繊維強化樹脂の製造と評価を行った。各プロセス条件および評価結果を表3に記載する。
【0306】
(比較例4)
連続多孔質体として、連続多孔質体web−1に代えて連続多孔質体web−2を用いることにより、樹脂供給材料の厚みの変化率Tを0.6に変えた以外は比較例2と同様に樹脂供給材料と繊維強化樹脂の製造と評価を行った。各プロセス条件および評価結果を表3に記載する。
【0307】
(比較例5)
連続多孔質体として、連続多孔質体web−1に代えて連続多孔質体web−3を用いることにより、樹脂供給材料の厚みの変化率Tを0.9に変えた以外は実施例1と同様に樹脂供給材料と繊維強化樹脂の製造と評価を行った。各プロセス条件および評価結果を表3に記載する。
【0309】
表3に記載の実施例および比較例から以下のことが明らかである。
【0310】
実施例1〜3と比較例1〜5の比較から、樹脂供給材料の厚みの変化率Tを1より大きく、6以下の範囲内に制御することで、得られる繊維強化樹脂の表面粗さのムラやヒケといった外観不良が大きく低減できることが明らかである。
【0311】
実施例1と比較例3,5の比較から、基材に樹脂を供給した直後の樹脂供給材料の厚みのバラつきTbを0以上、0.1以下の範囲内に制御することで、得られる繊維強化樹脂の表面粗さのムラやヒケといった外観不良が大きく低減できることが明らかである。
【0312】
実施例1と比較例3、5の比較から、得られる繊維強化樹脂中に残存する樹脂供給材料の厚みのバラつきTcを0以上、0.1以下の範囲内に制御することで、得られる繊維強化樹脂の表面粗さのムラやヒケといった外観不良が大きく低減できることが明らかである。
【0313】
実施例1と比較例5の比較から、基材の厚みの変化率T’を0.5以上、1.5以下の範囲内に制御することで、得られる繊維強化樹脂の表面粗さのムラやヒケといった外観不良が大きく低減できることが明らかである。