(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アニオン剤は、前記第1アニオン性基を有する第1アニオン剤と、前記第2アニオン性基を有する第2アニオン剤と、を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を適宜参照しながら、本発明の電解コンデンサおよび電解コンデンサの製造方法の実施形態について説明する。
(電解コンデンサ)
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサは、陽極体、陽極体上に形成された誘電体層、誘導体層の少なくとも一部を覆う第1導電性高分子層、第1導電性高分子層の少なくとも一部を覆う第2導電性高分子層、および第1導電性高分子層と第2導電性高分子層との間に形成された中間層を含む。中間層は、カチオン性基を含むカチオン剤と、第1アニオン性基および第2アニオン性基を含むアニオン剤とを含み、第1アニオン性基は、第2アニオン性基よりも電子求引性が高い。中間層において、第1アニオン性基および第2アニオン性基の数の合計はカチオン性基の数よりも多い。
【0012】
第1導電性高分子層および第2導電性高分子層のそれぞれには、通常、導電性高分子とともに、アニオン性のドーパントが含まれ、このドーパントは第1導電性高分子層および第2導電性高分子層の表面に存在し易い。つまり、第1導電性高分子層および第2導電性高分子層はいずれも、表面がマイナスに帯電し易いため、第1導電性高分子層の表面に、第2導電性高分子層を形成し難い。本発明の実施形態によれば、カチオン剤を含む中間層を形成することで、第2導電性高分子層の成膜性および/または被覆性を高めることができる。また、アニオン剤を用いることで、誘電体層の被膜修復性を高めることができる。
【0013】
カチオン剤の効果を十分に得るためには、中間層を形成するための処理液中で、カチオン剤が十分に解離した状態とする必要がある。しかし、カチオン剤は溶解性が低い上、揮発性も高いため、中間層中のカチオン剤の含有量を高めることが難しい。一方、アニオン性基の数がカチオン性基の数よりも多くなるようにアニオン剤を共存させることで、安定的にカチオン剤の解離を促進することができる。ただし、アニオン剤のアニオン性基の電子求引性が過度に高いと、陽極体を構成する弁作用金属が腐食し易くなる。中間層を形成するための処理液がほぼ中性である場合、カチオン剤が揮発し易い。
【0014】
本発明の実施形態によれば、アニオン剤が、電子求引性が高い第1アニオン性基を含むことで、中間層を形成するための処理液におけるカチオン剤の解離性および溶解性を高めることができる。中間層において、第1アニオン性基および第2アニオン性基の数の合計をカチオン性基の数よりも多くすることで、カチオン剤の揮発を抑制することができる。よって、第1導電性高分子層上に効率よくカチオン性基を配置できるので第2導電性高分子層の成膜性および/または被覆性を高めることができ、ESRを低減できる。且つ、アニオン剤が、第1アニオン性基よりも電子求引性が低い第2アニオン性基を含むことで、陽極体を構成する弁作用金属の腐食を抑制でき、漏れ電流の増大を抑制できる。また、中間層において、第1アニオン性基および第2アニオン性基の数の合計をカチオン性基の数よりも多くすることで、誘電体層の被膜修復効果が高まり、耐電圧特性を向上することもできる。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。
図2は、
図1の実線αで囲まれた領域の拡大図である。
電解コンデンサ1は、コンデンサ素子11と、コンデンサ素子11を封止する樹脂外装体12と、樹脂外装体12の外部にそれぞれ露出する陽極端子13および陰極端子14と、を備えている。コンデンサ素子11は、箔状または板状の陽極体2(または陽極部)と、陽極体2の一端部側を覆う誘電体層3と、誘電体層3を覆う陰極部(または陰極部材)15とを含む。陽極端子13は、陽極体2と電気的に接続し、陰極端子14は、陰極部15と電気的に接続している。樹脂外装体12はほぼ直方体の外形を有しており、これにより、電解コンデンサ1もほぼ直方体の外形を有している。
【0016】
陽極体2と陰極部15とは、誘電体層3を介して対向している。陰極部15は、誘電体層3を覆う導電性高分子層4と、導電性高分子層4を覆う陰極層5とを有している。図示例の陰極層5は、2層構造であり、導電性高分子層4と接触するカーボン層5aと、カーボン層5aの表面を覆う銀ペースト層5bと、を有している。
【0017】
陰極部15から突出した陽極体2の他端部のうち、陰極部15側の領域には、陽極体2の表面を帯状に覆うように絶縁性の分離部16が形成され、陰極部15と陽極体2との接触が規制されている。陰極部15から突出した陽極体2の他端部は、陽極端子13の第1端部13aと、溶接などにより電気的に接続されている。一方、陰極部15の最外層に形成された陰極層5は、陰極端子14の第1端部14aと、導電性接着材17(例えば熱硬化性樹脂と金属粒子との混合物)を介して、電気的に接続されている。陽極端子13の第2端部13bおよび陰極端子14の第2端部14bは、それぞれ樹脂外装体12の異なる側面から引き出され、一方の主要平坦面(
図1では下面)まで露出状態で延在している。この平坦面における各端子の露出箇所は、電解コンデンサ1を搭載すべき基板(図示せず)との半田接続などに用いられる。
【0018】
誘電体層3は、陽極体2を構成する導電性材料の表面の一部に形成されている。具体的には、誘電体層3は、陽極体2を構成する導電性材料の表面を陽極酸化することにより形成することができる。従って、誘電体層3は、
図2に示すように、陽極体2の表面(よりより内側の表面の孔や窪みの内壁面を含む)に沿って形成されている。
【0019】
第1導電性高分子層4aは、誘電体層3を覆うように形成されており、第2導電性高分子層4bは、第1導電性高分子層4aを覆うように形成されている。そして、中間層4cは、第1導電性高分子層4aと第2導電性高分子層4bとの間に形成されている。図示例では、中間層4cは、第1導電性高分子層4aを覆うように形成されており、第2導電性高分子層4bは、中間層4cを覆うように形成されている。
【0020】
第1導電性高分子層4aは、必ずしも誘電体層3の全体(表面全体)を覆う必要はなく、誘電体層3の少なくとも一部を覆うように形成されていればよいが、できるだけ多くの領域を覆うように形成することが望ましい。同様に、第2導電性高分子層4bおよび中間層4cのそれぞれは、必ずしも第1導電性高分子層4aの全体(表面全体)を覆う必要はなく、第1導電性高分子層4aの少なくとも一部を覆うように形成されていればよいが、できるだけ多くの領域を覆うように形成することが望ましい。図示例では、第1導電性高分子層4a、第2導電性高分子層4bおよび中間層4cを導電性高分子層4として示したが、一般に、第1導電性高分子層4a、第2導電性高分子層4b、および導電性高分子層4などの導電性高分子を含む層を、固体電解質層と称する場合がある。
【0021】
誘電体層3は、陽極体2の表面に沿って形成されるため、誘電体層3の表面には、陽極体2の表面の形状に応じて、凹凸が形成されている。第1導電性高分子層4aは、このような誘電体層3の凹凸を埋没するように形成することが好ましい。
【0022】
以上の構成において、陽極体2は、コンデンサ素子11の陽極部材であり、第1導電性高分子層4a、第2導電性高分子層4b、および陰極層5は、コンデンサ素子11の陰極部材である。誘電体層3は、コンデンサ素子11の誘電体部材である。
【0023】
以下に、電解コンデンサの構成について、より詳細に説明する。
(陽極体)
陽極体としては、表面積の大きな導電性材料が使用できる。導電性材料としては、弁作用金属、弁作用金属を含む合金、および弁作用金属を含む化合物などが例示できる。これらの材料は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。弁作用金属としては、例えば、チタン、タンタル、アルミニウム、および/またはニオブが好ましく使用される。これらの金属は、その酸化物も含め、誘電率が高いため、陽極体の構成材料として適している。陽極体は、例えば、導電性材料で形成された基材(箔状または板状の基材など)の表面を粗面化したもの、および導電性材料の粒子の成形体またはその焼結体などが挙げられる。
【0024】
(誘電体層)
誘電体層は、陽極体表面の導電性材料を、化成処理などにより陽極酸化することで形成されるため、導電性材料(特に、弁作用金属)の酸化物を含む。例えば、弁作用金属としてタンタルを用いた場合の誘電体層はTa
2O
5を含み、弁作用金属としてアルミニウムを用いた場合の誘電体層はAl
2O
3を含む。尚、誘電体層はこれに限らず、誘電体として機能するものであれば良い。
陽極体が箔状または板状であり、その表面が粗面化されている場合、誘電体層は、
図2に示すように、陽極体2の表面の孔や窪み(ピット)の内壁面に沿って形成される。
【0025】
(第1導電性高分子層)
第1導電性高分子層は、誘電体層の少なくとも一部を覆うように形成されていればよく、誘電体層の表面全体を覆うように形成されていてもよい。
第1導電性高分子層は、第1導電性高分子を含む。第1導電性高分子層は、さらにドーパントを含む。ドーパントは、第1導電性高分子にドープされた状態で第1導電性高分子層に含まれていてもよい。また、ドーパントは、第1導電性高分子と結合した状態で第1導電性高分子層に含まれていてもよい。
【0026】
(第1導電性高分子)
第1導電性高分子としては、電解コンデンサに使用される公知のもの、例えば、π共役系導電性高分子などが使用できる。このような導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、および/またはポリチオフェンビニレンなどを基本骨格とする高分子が挙げられる。
【0027】
このような高分子には、単独重合体、二種以上のモノマーの共重合体、およびこれらの誘導体(置換基を有する置換体など)も含まれる。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などが含まれる。このような導電性高分子は、導電性が高く、ESR特性に優れている。
導電性高分子は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
導電性高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1000〜1,000,000である。
【0028】
(ドーパント)
ドーパントとしては、例えば、酸性基(またはアニオン性基)を有する低分子化合物(低分子系ドーパントとも言う)または高分子化合物(高分子系ドーパントとも言う)が使用される。高分子系ドーパントを用いると、より均質な第1導電性高分子層を形成することができる。ドーパントは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
低分子系ドーパントとしては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基(−O−P(=O)(−OH)
2)、および/またはホスホン酸基(−P(=O)(−OH)
2)などのアニオン性基を有する化合物(低分子化合物(モノマー化合物))を用いることができる。このような化合物としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、およびアントラセンなどの芳香環(C
6-14芳香環など)、または芳香環(C
6-14芳香環など)と脂肪族環との縮合環に、アニオン性基が結合した環状化合物を用いることができる。アニオン性基としては、スルホン酸基が好ましく、スルホン酸基とスルホン酸基以外のアニオン性基との組み合わせでもよい。環状化合物を構成する芳香環および/または脂肪族環は、アニオン性基以外の置換基(例えば、メチル基などのアルキル基、オキソ基(=O)など)を有していてもよい。このような化合物の具体例としては、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのアルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、およびアントラキノンスルホン酸などが挙げられる。
【0030】
高分子系ドーパントとしては、例えば、スルホン酸基、リン酸基(−O−P(=O)(−OH)
2)、および/またはホスホン酸基(−P(=O)(−OH)
2)などのアニオン性基を有する高分子化合物を用いることができる。アニオン性基のうち、スルホン酸基が好ましい。スルホン酸基を有する高分子系ドーパントとしては、スルホン酸基を有するモノマー(例えば、スルホン酸基を有するビニルモノマー、イソプレンスルホン酸などのスルホン酸基を有するジエンモノマー)の単独重合体または共重合体が例示できる。スルホン酸基を有するビニルモノマーとしては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸基を有する脂肪族ビニルモノマー、およびスチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有する芳香族ビニルモノマーなどが例示できる。これらのビニルモノマーは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。共重合体は、二種類以上のスルホン酸基を有するモノマーを用いた共重合体であってもよく、スルホン酸基を有するモノマーと他のモノマーとの共重合体であってもよい。高分子系ドーパントには、ポリエステルスルホン酸、および/またはフェノールスルホン酸ノボラック樹脂なども含まれる。
【0031】
なお、低分子系ドーパントおよび高分子系ドーパントにおいて、アニオン性基は、解離した状態でアニオンを生成することができる限り特に制限されず、上記のアニオン性基の塩、またはエステルなどであってもよい。
【0032】
高分子系ドーパントの重量平均分子量は、例えば、1,000〜1,000,000であり、好ましくは10,000〜500,000である。このような分子量を有する高分子系ドーパントを用いると、第1導電性高分子層をさらに均質化し易い。スルホン酸基を有するモノマーの単独重合体および共重合体では、重量平均分子量は、10,000〜500,000であることがより好ましい。ポリエステルスルホン酸およびフェノールスルホン酸ノボラック樹脂では、重量平均分子量は、5,000〜80,000であることがより好ましい。
【0033】
第1導電性高分子層に含まれるドーパントの量は、第1導電性高分子100質量部に対して、10〜1000質量部であることが好ましく、50〜200質量部であることがさらに好ましい。
【0034】
陽極体は、大きな表面積を有しており、外表面だけでなく、より内側の表面の孔や窪みの内壁面にも誘電体層が形成される。このような内壁面に形成された誘電体層上にも第1導電性高分子層を形成して、第1導電性高分子層による被覆率を高めることが好ましい。
【0035】
(中間層)
中間層は、第1導電性高分子層の少なくとも一部を覆うように形成されていればよく、第1導電性高分子層の表面全体を覆うように形成されていてもよい。第1導電性高分子層が形成されていない領域では、中間層が誘電体層と接触していてもよい(つまり、誘電体層の一部の領域において、中間層が誘電体層を覆うように形成されていてもよい)。
【0036】
(カチオン剤)
中間層は、カチオン性基を含むカチオン剤を含む。カチオン剤としては、解離した状態でカチオンを生成可能である限り特に限定されず、例えば、金属化合物(金属水酸化物などの無機塩基など)であってもよいが、有機化合物(有機塩基など)が好ましい。有機化合物であるカチオン剤のカチオン性基としては、アミノ基(第1級アミノ基、第2級アミノ基および第3級アミノ基など)、および第4級アンモニウム基が好ましい。このようなカチオン性基には、アミノ基の塩、および第4級アンモニウム基の塩なども含まれる。
【0037】
カチオン剤のうち、カチオン性基としてアミノ基を有するカチオン剤(アミン化合物など)が好ましい。アミン化合物としては、窒素原子に1〜3個の置換基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、および/またはアリール基など)を有するアミン(第1級〜第3級アミン)、窒素原子に1または2個のアルキル基を有してもよいジアミンなどが例示できる。
【0038】
アミンやジアミンが有するアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、tert−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルなどのC
1-16アルキル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状および分岐状のいずれであってもよい。アンモニウムカチオンが有するアルキル基のうち、少なくとも1つは、C
4-16アルキル基(もしくは、C
6-12アルキル基、またはC
6-10アルキル基)を有することが好ましい。アミンおよびジアミンにおいて、残りのアルキル基は、C
1-10アルキル基(もしくは、C
1-6アルキル基、またはC
1-4アルキル基)であってもよい。
【0039】
シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどのC
4-10シクロアルキル基(またはC
5-8シクロアルキル基)が例示できる。アリール基としては、フェニル、ナフチルなどのC
6-14アリール基が例示できる。
アルキル基、シクロアルキル基およびアリール基のそれぞれは、ヒドロキシル基および/またはアルコキシ基(メトキシ、エトキシなどのC
1-6アルコキシ基またはC
1-4アルコキシ基など)などの置換基を有してもよい。
【0040】
上記のジアミンとしては、ジアミノアルカン、ジアミノシクロアルカン(ジアミノシクロヘキサンなどのジアミノC
5-8シクロアルカンなど)、ジアミノアレーン(ジアミノベンゼン、ジアミノナフタレンなどのジアミノC
6-14アレーンなど)などが例示できる。これらのジアミンは、アルカン、シクロアルカン、またはアレーン部位に、ヒドロキシル基および/またはアルコキシ基(メトキシ、エトキシなどのC
1-6アルコキシ基またはC
1-4アルコキシ基など)などの置換基を有してもよい。
【0041】
ジアミノアルカンとしては、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカンなどのジアミノC
2-14アルカンまたはジアミノC
4-12アルカン)などが例示できる。これらのジアミンの個々の窒素原子は、1または2個のアルキル基を有してもよい。アルキル基としては、例えば、上記で例示したアルキル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状および分岐状のいずれであってもよく、ヒドロキシル基および/またはアルコキシ基(メトキシ、エトキシなどのC
1-6アルコキシ基またはC
1-4アルコキシ基など)などの置換基を有してもよい。
【0042】
アミンとして、第1級アミンおよび/または第3級アミンを用いてもよい。第3級アミンとしては、N,N−ジC
1-10アルキル−N−C
4-16アルキルアミン、N,N−ジC
4-16アルキル−N−C
1-10アルキルアミン、トリC
4-16アルキルアミンなどが例示できる。
中間層は、一種のカチオン剤を含んでもよく、二種以上のカチオン剤を組み合わせて含んでもよい。
【0043】
中間層は、カチオン剤を、アミン化合物、アミン化合物に対応するカチオン、第4級アンモニウム化合物、および/またはカチオンの塩のいずれの形態で含んでもよい。例えば、中間層において、カチオン剤は、アニオン剤と塩を形成していてもよい。
【0044】
(アニオン剤)
アニオン剤としては、解離した状態でアニオンを生成可能な有機化合物が好ましい。アニオン剤が有するアニオン性基としては、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ホウ酸基、カルボキシル基、およびヒドロキシル基などが挙げられる。アニオン性基は、解離した状態でアニオンを生成可能である限り特に制限されず、これらの基の塩などであってもよい。アニオン剤は、第1アニオン性基と、第1アニオン性基よりも電子求引性が低い第2アニオン性基とを含むことが重要である。上記のようなアニオン性基の中から、電子求引性の異なる第1アニオン性基と第2アニオン性基とを適宜選択してもよい。
【0045】
中間層または中間層を形成するための処理液において、アニオン剤のアニオン性基は、上記のアニオン性基、上記のアニオン性基に対応するアニオン、および/またはアニオンの塩などのいずれの形態で含まれていてもよい。従って、例えば、スルホン酸基には、遊離のスルホン酸基(−SO
3H)の他、スルホン酸アニオン(−SO
3-)、およびスルホン酸塩なども含まれる。リン酸基には、遊離のリン酸基(−OP(=O)(OH)
2)の他、リン酸アニオン(−OPO
3H
-、−OPO
32-)、およびリン酸塩なども含まれる。ホスホン酸基には、遊離のホスホン酸基(−P(=O)(OH)
2)の他、ホスホン酸アニオン(−PO
3H
-、−PO
32-)、およびホスホン酸塩も含まれる。カルボキシル基には、遊離のカルボキシル基(−COOH)の他、カルボキシラートアニオン(−COO
-)、およびカルボン酸塩なども含まれる。
【0046】
上記のアニオン性基のうち、第1アニオン性基としては、例えば、スルホン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基(特に、スルホン酸基)が好ましい。ただし、中間層または中間層を形成するための処理液に含まれるアニオン性基のうち、電子求引性が最も高い一種のアニオン性基を第1アニオン性基とする。
【0047】
第2アニオン性基としては、リン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基およびヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。ただし、第2アニオン性基は、第1アニオン性基よりも電子求引性が低い。中間層または中間層を形成するための処理液は、一種の第2アニオン性基を含んでもよく、二種以上の第2アニオン性基を含んでもよい。ヒドロキシル基は、アルコール性ヒドロキシル基であってもよいが、電子求引性がより高い観点からはフェノール性ヒドロキシル基であることが好ましい。
【0048】
アニオン剤は、第1アニオン性基を有する第1アニオン剤と、第2アニオン性基を有する第2アニオン剤とを含んでもよい。また、アニオン剤は、第1アニオン性基と第2アニオン性基とを有する第3アニオン剤を含んでもよい。
【0049】
(第1アニオン剤および第2アニオン剤)
第1アニオン剤および第2アニオン剤のそれぞれは、脂肪族化合物、脂環族化合物、および芳香族化合物のいずれであってもよい。脂肪族化合物は、アニオン性基と、このアニオン性基が結合した脂肪族部位(メタン、エタンなどのアルカン部位(C
1-6アルカン部
位など)など)とを有する。脂環族化合物は、アニオン性基と、このアニオン性基が結合した脂環族部位(シクロペンタン、シクロヘキサンなどのシクロアルカン部位(C
5-8シ
クロアルカン部位)など)とを有する。芳香族化合物は、アニオン性基と、このアニオン性基が結合した芳香族部位(ベンゼン、ナフタレンなどのアレーン部位(C
6-14アレーン部位など)など)とを有する。脂肪族部位、脂環族部位および芳香族部位のそれぞれは、必要に応じて、ハロゲン原子(フッ素元素、塩素原子など)、アルキル基(メチル、エチルなどのC
1-4アルキル基など)、アルケニル基(ビニル基などのC
2-6アルケニル基など)などの置換基を有してもよい。脂環族部位および芳香族部位(特に、芳香族部位)を有する第1アニオン剤および/または第2アニオン剤を用いると、第1導電性高分子層および/または第2導電性高分子層との親和性が高くなるため、第2導電性高分子層を形成する際に、成膜性および/または被覆性をさらに高めることができる。
【0050】
第1アニオン剤(または第2アニオン剤)は、第1アニオン性基(または第2アニオン性基)を1つ有してもよく、2つ以上(例えば、2つ、3つまたは4つ)有してもよい。第2アニオン剤は、一種の第2アニオン性基を含んでもよく、二種以上の第2アニオン性基を含んでもよい。第2アニオン剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0051】
アニオン性基としてスルホン酸基を有するアニオン剤としては、例えば、脂肪族スルホン酸(メタンスルホン酸などのC
1-6アルカンスルホン酸など)、脂環族スルホン酸(シクロヘキサンスルホン酸などのC
5-8シクロアルカンスルホン酸など)、および芳香族スルホン酸(ベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸などのC
6-14アレーンスルホン酸など)などが挙げられる。
【0052】
アニオン性基としてカルボキシル基を有するアニオン剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸(プロパン酸、ブタン酸、ヘキサン酸などのC
2-10アルカンカルボン酸、ヘキサン二酸などのC
4-12アルカンジカルボン酸など)、脂環族カルボン酸(カルボキシシクロヘキサンなどのカルボキシC
5-8シクロアルカン、シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボキシC
5-8シクロアルカンなど)、芳香族カルボン酸(安息香酸などのカルボキシC
6-14アレーン、サリチル酸などのカルボキシヒドロキシC
6-14アレーン、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などのジカルボキシC
6-14アレーンなど)などが挙げられる。
【0053】
アニオン性基としてホスホン酸基を有するアニオン剤としては、例えば、ビニルホスホン酸などの脂肪族ホスホン酸、フェニルホスホン酸などの芳香族ホスホン酸などが挙げられる。
アニオン性基としてリン酸基を有するアニオン剤としては、例えば、アシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシエチルメタクリレートなどのカルボン酸のアシッドホスホオキシポリオキシアルキレングリコールモノアクリレート(アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(P(=O)(OH)
2−(O−CH
2CH
2)
n−O−C(=O)−CR=CH
2)(nは2〜10の整数であり、Rは水素原子またはメチル基である)など)などが挙げられる。なお、アシッドホスホオキシエチルなどのアシッドホスホオキシアルキル基は、リン酸基を有するアルキル基である。また、アクリレートおよびメタクリレートを(メタ)アクリレートと総称する。
【0054】
第1アニオン剤は、第1アニオン性基としてスルホン酸基を有することが好ましい。耐電圧を高めたり、および/または漏れ電流をさらに抑制したりする観点からは、第2アニオン剤は、リン酸基およびホスホン酸基からなる群より選択される少なくとも一種を第2アニオン性基として含むことが好ましい。
第1アニオン剤および第2アニオン剤を用いることにより、第1アニオン性基と第2アニオン性基との比率を適宜調整し易くなる。
【0055】
(第3アニオン剤)
第1アニオン性基と第2アニオン性基との双方を有する第3アニオン剤には、例えば、低分子化合物(モノマー化合物)、および高分子化合物(重合体)が含まれる。第3アニオン剤は、一種の第2アニオン性基を含んでもよく、二種以上の第2アニオン性基を含んでもよい。
【0056】
モノマー化合物は、脂肪族化合物、脂環族化合物、および芳香族化合物のいずれであってもよい。脂肪族化合物は、脂肪族部位と、脂肪族部位に結合した第1アニオン性基および第2アニオン性基とを有し、脂環族化合物は、脂環族部位と、脂環族部位に結合した第1アニオン性基および第2アニオン性基とを有する。芳香族化合物は、芳香族部位と、芳香族部位に結合した第1アニオン性基および第2アニオン性基とを有する。脂肪族部位、脂環族部位および芳香族部位のそれぞれは、第1アニオン剤および第2アニオン剤について例示したものから適宜選択できる。第3アニオン剤において、第1アニオン性基および第2アニオン性基のそれぞれの個数は、1つであってもよく、2つ以上(例えば、2つ、3つまたは4つ)であってもよい。
【0057】
第1アニオン性基としてのスルホン酸基と、第2アニオン性基としてのカルボキシル基とを有する第3アニオン剤のうち、モノマー化合物としては、例えば、スルホコハク酸などの脂肪族化合物、スルホ安息香酸、スルホサリチル酸、ジスルホサリチル酸、スルホフタル酸、スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、ナフトールスルホン酸などの芳香族化合物が挙げられる。モノマー化合物は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いてもよい。モノマー化合物は、第1アニオン性基としてスルホン酸基を含むことが好ましい。耐電圧を高めたり、漏れ電流をさらに抑制したりする観点からは、モノマー化合物は、リン酸基およびホスホン酸基からなる群より選択される少なくとも一種を第2アニオン性基として含むことが好ましい。
【0058】
重合体(高分子化合物)としては、第1アニオン性基を有するモノマーユニットと、第2アニオン性基を有するモノマーユニットとの共重合体(c1)、および第1アニオン性基および第2アニオン性基を有するモノマーユニットを含む重合体(c2)などが例示できる。高分子化合物は、第1アニオン性基を有するモノマーユニットを一種または二種以上含んでもよい。高分子化合物は、第2アニオン性基を有するモノマーユニットを一種または二種以上含んでもよい。高分子化合物は、第1アニオン性基および第2アニオン性基を有するモノマーユニットを一種または二種以上含んでもよい。モノマーユニットにおいて、第1アニオン性基および第2アニオン性基のそれぞれの個数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。高分子化合物は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
第1アニオン性基および/または第2アニオン性基を有するモノマーユニットの骨格となるモノマーユニットとしては、例えば、エチレン、プロピレンなどの脂肪族ビニルモノマーユニット、スチレンなどの芳香族ビニルモノマーユニット、ブタジエン、イソプレンなどのジエンモノマーユニットなどが挙げられる。
【0060】
重合体(c2)としては、単独重合体および共重合体が挙げられる。重合体(c2)の共重合体は、第1アニオン性基および第2アニオン性基を有するモノマーユニットに加え、第1アニオン性基を有するモノマーユニット、第2アニオン性基を有するモノマーユニット、および/または他の共重合性モノマーユニットを含んでもよい。また、共重合体(c1)は、さらに他の共重合性モノマーユニットを含んでもよい。
【0061】
これらの共重合体において、他の共重合性モノマーとしては、例えば、第1アニオン性基を有するモノマー、第2アニオン性基を有するモノマー、エチレン、プロピレンなどの脂肪族ビニルモノマー、スチレンなどの芳香族ビニルモノマー、ブタジエン、イソプレンなどのジエンモノマーなどが挙げられる。他の共重合性モノマーは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0062】
例えば、第1アニオン性基としてスルホン酸基を有するモノマーとしては、スルホン酸基を有するビニルモノマー、イソプレンスルホン酸などのスルホン酸基を有するジエンモノマーが例示できる。スルホン酸基を有するビニルモノマーとしては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸などのスルホン酸基を有する脂肪族ビニルモノマー、およびスチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有する芳香族ビニルモノマーなどが例示できる。スルホン酸基を有するモノマーは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0063】
例えば、第2アニオン性基としてカルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、カルボキシスチレンなどが挙げられる。カルボキシル基を有するモノマーは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
第2アニオン性基としてヒドロキシル基を有するモノマーとしては、ビニルフェノール、ヒドロキシビニルトルエンなどのヒドロキシル基を有する芳香族ビニルモノマーなどが例示できる。ヒドロキシル基を有するモノマーは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0064】
第1アニオン性基としてのスルホン酸基と、第2アニオン性基としてのカルボキシル基とを有するモノマーとしては、ビニルスルホ安息香酸などのスルホン酸基とカルボキシル基とを有する芳香族ビニルモノマーなどが例示できる。このようなモノマーは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。第1アニオン性基としてのリン酸基と、第2アニオン性基としてのカルボキシル基とを有するモノマーとしては、例えば、2−(ジヒドロキシホスフィニルオキシ)アクリル酸などが挙げられる。第2アニオン性基としてのホスホン酸基と、第2アニオン性基としてのカルボキシル基とを有するモノマーとしては、例えば、ホスホノアクリル酸、および/または2−メチル−3−ホスホノアクリル酸などが挙げられる。
【0065】
高分子化合物は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
高分子化合物において、第1アニオン性基は、スルホン酸基であることが好ましい。第2アニオン性基は、カルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含んでもよい。この場合、カチオン剤の解離および溶解性を確保しながらも、陽極体の腐食を抑制する効果を高めることができる。よって、漏れ電流をより効果的に抑制できる。第2アニオン性基は、リン酸基および/またはホスホン酸基を含んでもよい。この場合、耐電圧特性を高めることができる。
【0066】
第3アニオン剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。高分子化合物と、モノマー化合物とを組み合わせてもよい。第3アニオン剤は、必要に応じて、第1アニオン剤および/または第2アニオン剤と組み合わせて用いてもよい。
【0067】
中間層(または中間層を形成するための処理液)において、第1アニオン性基および第2アニオン性基の数の合計を、カチオン性基の数よりも多くすることで、カチオン剤の揮発を抑制することができる。第1アニオン性基および第2アニオン性基の数の合計は、カチオン性基の数の1倍より大きく、例えば、1.1倍以上または1.2倍以上であってもよい。第1アニオン性基および第2アニオン性基の数の合計は、カチオン性基の数の、例えば、10倍以下、5倍以下、または3倍以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。第1アニオン性基および第2アニオン性基の数の合計は、カチオン性基の数の、1倍より大きく5倍以下、1倍より大きく3倍以下、1.1〜5倍、または1.1〜3倍であってもよい。第1アニオン性基および第2アニオン性基の数の合計とカチオン性基の数との関係がこのような範囲である場合、第2導電性高分子層の成膜性および/または被覆性、ならびに耐電圧特性をさらに高めることができる。
【0068】
第1アニオン性基および/または第2アニオン性基の数のカチオン性基の数に対する比は、使用するアニオン剤の1分子当たりの第1アニオン性基および/または第2アニオン性基の数、カチオン剤の1分子当たりのカチオン性基の数、アニオン剤およびカチオン剤のモル比などから算出できる。本発明の実施形態では、カチオン性基の揮発を抑制できるため、中間層におけるカチオン性基の数に対する第1アニオン性基および/または第2アニオン性基の数の比は、中間層を形成するための処理液における比とほとんど同じである。
【0069】
中間層(または中間層を形成するための処理液)において、第2アニオン性基の数は、第1アニオン性基の数の、例えば、0.5倍以上であり、0.8倍以上または1倍以上であってもよい。カチオン剤の解離性および溶解性を確保しながらも、陽極体の腐食を抑制する効果をさらに高めることができる観点から、第1アニオン性基の数よりも多いことが好ましい。第2アニオン性基の数は、第1アニオン性基の数より大きく、例えば、1.2倍以上、1.5倍以上、または2倍以上であってもよい。第2アニオン性基の数は、第1アニオン性基の数の、例えば、10倍以下、好ましくは6倍以下、さらに好ましくは4倍以下であり、3倍以下または2.5倍以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。第2アニオン性基の数は、第1アニオン性基の数の、例えば、0.5〜10倍、0.8〜6倍であってもよく、1倍より大きく10倍以下、1.5〜6倍、1.5〜4倍、1.5〜3倍、または1.8〜3倍であってもよい。第2アニオン性基の数と第1アニオン性基の数との関係がこのような範囲である場合、カチオン剤の解離性および溶解性と、陽極体の腐食を抑制する効果とのバランスを取り易くなる。
【0070】
なお、中間層(または中間層を形成するための処理液)における第1アニオン性基の数および第2アニオン性基の数とは、第1〜第3アニオン剤に由来するものに限らず、それぞれ、中間層(または中間層を形成するための処理液)に含まれる全ての第1アニオン性基の数および全ての第2アニオン性基の数を意味する。
【0071】
第1アニオン性基の数に対する第2アニオン性基の数の比は、使用するアニオン剤の1分子当たりの第1アニオン性基および/または第2アニオン性基の数、複数のアニオン剤を用いる場合には、これらのモル比などから算出できる。中間層における第1アニオン性基の数に対する第2アニオン性基の数の比は、中間層を形成するための処理液における比とほぼ同じである。
【0072】
(第2導電性高分子層)
第2導電性高分子層は、第1導電性高分子層の少なくとも一部を覆うように形成されていればよく、第1導電性高分子層の表面全体を覆うように形成されていてもよい。第2導電性高分子層は、第1導電性高分子層の表面の少なくとも一部の領域では、中間層を介して、第1導電性高分子層を覆うように形成されているが、中間層を介さずに、第1導電性高分子層の表面に直接形成されている領域があってもよい。また、第1導電性高分子層および中間層が形成されていない領域では、第2導電性高分子層が誘電体層と接触していてもよい(つまり、第2導電性高分子層が誘電体層を覆うように形成されていてもよい)。
【0073】
第2導電性高分子層は、第2導電性高分子を含む。第2導電性高分子層は、さらにドーパントを含んでもよい。ドーパントは、第2導電性高分子にドープされた状態で第2導電性高分子層に含まれていてもよい。また、ドーパントは、第2導電性高分子と結合した状態で第2導電性高分子層に含まれていてもよい。
【0074】
(第2導電性高分子)
第2導電性高分子としては、電解コンデンサに使用される公知のものが使用でき、具体的には、第1導電性高分子について例示した導電性高分子から適宜選択することができる。第2導電性高分子の重量平均分子量も、第1導電性高分子について例示した範囲から適宜選択できる。第1導電性高分子と、第2導電性高分子とは、同じものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
【0075】
第2導電性高分子層は、さらにドーパントを含む。ドーパントとしては、電解コンデンサで使用される公知のものが使用でき、具体的には、第1導電性高分子層について例示したものから適宜選択することができる。ドーパントは、第1導電性高分子層と、第2導電性高分子層とで、同じものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
【0076】
第2導電性高分子層に含まれるドーパントの量は、第2導電性高分子100質量部に対して、10〜1000質量部であることが好ましく、50〜200質量部であることがさらに好ましい。
【0077】
第2導電性高分子層の平均厚みは、例えば、5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。平均厚みがこのような範囲である場合、第2導電性高分子層の強度をさらに高めることができる。
【0078】
第1導電性高分子層の平均厚みに対する第2導電性高分子層の平均厚みの比は、例えば、5倍以上、好ましくは10倍以上である。平均厚みの比がこのような範囲である場合、強度を高めることができる。
【0079】
上記実施形態では、コンデンサ素子が第1導電性高分子層と第2導電性高分子層との2層の導電性高分子層を有する場合について説明したが、コンデンサ素子は、3層以上の導電性高分子層を有するものであってもよい。この場合、第1導電性高分子層と、第2導電性高分子層との間に、1層または2層以上の導電性高分子層を形成することができる。
【0080】
第1導電性高分子層および第2導電性高分子層のそれぞれは、必要に応じて、さらに、公知の添加剤、および/または導電性高分子以外の公知の導電性材料(例えば、二酸化マンガンなどの導電性無機材料;および/またはTCNQ錯塩など)を含んでもよい。
なお、誘電体層と第1導電性高分子層との間には、密着性を高める層などを介在させてもよい。
【0081】
(電解コンデンサの製造方法)
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの製造方法は、陽極体を準備する第1工程と、陽極体上に誘電体層を形成する第2工程と、誘電体層が形成された陽極体を、第1導電性高分子を含む第1処理液で処理する第3工程と、第1処理液で処理された陽極体を、カチオン性基を含むカチオン剤と、第1アニオン性基および第2アニオン性基を含むアニオン剤とを含む第2処理液で処理する第4工程と、第2処理液で処理された陽極体を、第2導電性高分子を含む第3処理液で処理する第5工程と、を含む。そして、第1アニオン性基は、第2アニオン性基よりも電子求引性が高く、第1アニオン性基および第2アニオン性基の数の合計は、カチオン性基の数よりも多い。
以下に、各工程についてより詳細に説明する。
【0082】
(第1工程)
第1工程では、陽極体の種類に応じて、公知の方法により陽極体を形成する。
陽極体は、例えば、導電性材料で形成された箔状または板状の基材の表面を粗面化することにより準備することができる。粗面化は、基材表面に凹凸を形成できればよく、例えば、基材表面をエッチング(例えば、電解エッチング)することにより行ってもよく、蒸着などの気相法を利用して、基材表面に導電性材料の粒子を堆積させることにより行ってもよい。
【0083】
(第2工程)
第2工程では、陽極体上に誘電体層を形成する。誘電体層は、陽極体の表面を陽極酸化することにより形成される。陽極酸化は、公知の方法、例えば、化成処理などにより行うことができる。化成処理は、例えば、陽極体を化成液中に浸漬することにより、陽極体の表面(より内側の表面の孔や窪みの内壁面)まで化成液を含浸させ、陽極体をアノードとして、化成液中に浸漬したカソードとの間に電圧を印加することにより行うことができる。化成液としては、例えば、リン酸水溶液、リン酸アンモニウム水溶液、またはアジピン酸アンモニウム水溶液などを用いることが好ましい。
【0084】
(第3工程)
第3工程では、例えば、誘電体層が形成された陽極体を第1処理液に浸漬させたり、または誘電体層が形成された陽極体に第1処理液を注液したりする。浸漬や注液により誘電体層が形成された陽極体の表面(誘電体層が形成された、より内側の表面の孔や窪みの内壁面)まで第1処理液を含浸させる。第1処理液を含浸させた後、陽極体は、必要に応じて、乾燥してもよい。乾燥の際、必要に応じて、陽極体を加熱してもよい。第3工程により、誘電体層が形成された陽極体の表面に第1導電性高分子(およびドーパント)を付着させることができる。
【0085】
第1導電性高分子(およびドーパント)は、誘電体層が形成された陽極体の表面に、被膜状に付着して、第1導電性高分子層を形成してもよい。第1導電性高分子層は、誘電体層が形成された陽極体を、第1処理液と接触させ、乾燥させることで形成される被膜(またはコーティング膜)であってもよい。第1処理液は、特に制限されず、例えば、各種塗布法(例えば、浸漬法(ディップコート法)、スプレーコート法など)に限らず、印刷法、もしくはこれらの組み合わせなどを利用して、誘電体層が形成された陽極体の表面に接触させてもよい。
【0086】
第1導電性高分子を含む第1処理液としては、例えば、溶媒と、この溶媒に溶解した第1導電性高分子とを含む溶液、または、分散媒と、この分散媒に分散した第1導電性高分子の分散質(または分散相)とを含む分散液が挙げられる。第1処理液として、このような溶液または分散液を用いる場合、第1導電性高分子層を容易に形成することができ、品質が安定した第1導電性高分子層が得られ易い。中でも、分散液を用いることが好ましい。分散液中の分散質の形態は、特に制限されず、繊維であってもよいが、粒子(または粉末)であることが好ましい。分散液中の分散質粒子の平均粒径は、5〜100nmであることが好ましい。平均粒径は、例えば、動的光散乱法による粒径分布から求めることができる。
【0087】
第1処理液に含まれる溶媒または分散媒としては、水、有機媒体、およびこれらの混合物が例示できる。有機媒体としては、例えば、炭素数1〜5の脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノールなどの脂肪族モノオール;エチレングリコール、グリセリンなどの脂肪族ポリオールなど);アセトンなどの脂肪族ケトン;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド;および/またはジメチルスルホキシドなどのスルホキシドなどが挙げられる。
また、第1処理液は、必要に応じて、前述の第1導電性高分子層の構成成分のうち、第1導電性高分子以外の成分(例えば、ドーパントなど)を含むことができる。
【0088】
また、第3工程では、誘電体層が形成された陽極体に、第1導電性高分子の原料を含む第1処理液を含浸させ、重合(化学重合、または電解重合など)させることにより、重合膜を形成することで、第1導電性高分子を付着させてもよい。第1導電性高分子の原料としては、第1導電性高分子の前駆体、例えば、第1導電性高分子を構成するモノマー、および/またはモノマーがいくつか連なったオリゴマーなどが例示できる。
【0089】
重合膜の形成には、第1導電性高分子の原料を重合させるために酸化剤が使用される。酸化剤は、第1処理液に添加してもよい。また、酸化剤は、誘電体層が形成された陽極体を第1処理液に浸漬する前又は後に、陽極体に塗布してもよい。このような酸化剤としては、スルホン酸金属塩が例示できる。スルホン酸金属塩は、酸化剤としての機能に加え、ドーパントとしての機能も有する。スルホン酸金属塩のスルホン酸を構成する部分としては、例えば、アルキルスルホン酸、および/または芳香族スルホン酸(ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸など)などが挙げられる。金属塩を構成する金属部分としては、鉄(III)、銅(II)、クロム(IV)、および/または亜鉛(II)などが例示できる。
【0090】
重合膜の形成に使用される第1処理液は、溶媒を含むことができる。溶媒としては、上記の被膜(コーティング膜)の形成に使用される第1処理液について例示した溶媒から適宜選択できる。
重合膜の形成に使用される第1処理液も、必要に応じて、上述の第1導電性高分子層の構成成分のうち、第1導電性高分子(の原料)以外の成分(例えば、ドーパントなど)を含むことができる。
【0091】
(第4工程)
第4工程は、例えば、カチオン剤とアニオン剤とを含む第2処理液を、第1処理液で処理された陽極体に接触させることにより行うことができる。第2処理液と接触させた後、陽極体は、必要に応じて、乾燥してもよい。乾燥の際、必要に応じて、陽極体を加熱してもよい。
【0092】
第2処理液は、カチオン剤およびアニオン剤に加え、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、水、有機溶媒、およびこれらの混合物が例示できる。有機溶媒としては、例えば、炭素数1〜5の脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノールなどの脂肪族モノオール;エチレングリコール、グリセリンなどの脂肪族ポリオールなど);アセトンなどの脂肪族ケトン;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド;および/またはジメチルスルホキシドなどのスルホキシドなどが挙げられる。
【0093】
溶媒は、少なくとも水を含むことが好ましい。溶媒全体に占める有機溶媒の割合は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下または5質量%以下であることがさらに好ましい。第2処理液に含まれる有機溶媒濃度は、溶媒全体の質量に対して5質量%以下とする事が好ましい。有機溶媒の割合がこのような範囲である場合、有機溶媒の揮発による製造過程での経時的な濃度変化を抑制できる。有機溶媒の除去に伴うカチオン剤の揮発、および有機溶媒の残存に伴うESRの増大を抑制し易くなる。また、溶媒に水より高い沸点の有機溶媒を含む場合、有機溶媒の割合を上記の範囲とすることにより、有機溶媒の除去に伴うカチオン剤の揮発、および有機溶媒の残存に伴うESRの増大を抑制する効果が高まる。
【0094】
カチオン性基の数に対する第1アニオン性基および第2アニオン性基の数の合計の比は、アニオン剤およびカチオン剤の種類、アニオン剤およびカチオン剤の組成、および/または第2処理液中におけるアニオン剤とカチオン剤とのモル比を調節することにより調節できる。第2アニオン性基の数に対する第1アニオン性基の数の比も、アニオン剤の組成を調節することにより調節できる。
【0095】
第4工程において、カチオン剤およびアニオン剤は、誘電体層の表面に付着した第1導電性高分子(およびドーパント)を覆うように付着することが好ましく、被膜状に付着して、中間層を形成してもよい。
【0096】
(第5工程)
第5工程は、第2処理液で処理された陽極体を用い、第1処理液に代えて、第2導電性高分子(必要に応じて、ドーパント)を含む第3処理液を用いる以外は、第3工程と同様のまたは類似の手順で行うことができる。第3処理液としては、第1導電性高分子に代えて、第2導電性高分子を含む以外は、第1処理液と同様のものを使用することができる。
【0097】
(陰極層を形成する工程)
電解コンデンサの製造方法は、さらに陰極層を形成する工程(第6工程)を含むことができる。
第6工程では、第5工程で得られた陽極体の(好ましくは第2導電性高分子層の)表面に、カーボン層と銀ペースト層とを順次積層することにより陰極層が形成される。
【0098】
カーボン層は、カーボン(例えば、黒鉛などの導電性炭素材料)の水分散液中に第2導電性高分子層が形成された誘電体層を有する陽極体を浸漬したり、またはカーボンペーストを第2導電性高分子層の表面に塗布したりすることにより形成することができる。カーボンペーストは、黒鉛などの導電性炭素材料を含む組成物である。カーボン層の厚さは、例えば、1〜20μmである。
【0099】
銀ペーストは、銀粒子と樹脂(バインダ樹脂)とを含む組成物である。樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることもできるが、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。銀ペースト層の厚さは、例えば、50〜100μmである。
なお、陰極層の構成は、これに限られず、集電機能を有する構成であればよい。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない
【0101】
(実施例1)
下記の要領で、
図1に示す電解コンデンサ1を作製し、その特性を評価した。
(1)陽極体2を準備する工程(第1工程)
基材としてのアルミニウム箔(厚み:100μm)の両方の表面をエッチングにより粗面化することで、陽極体2を作製した。
【0102】
(2)誘電体層3を形成する工程(第2工程)
陽極体2の一端部側の部分(分離部から一端部までの部分)を、化成液に浸漬し、70Vの直流電圧を、20分間印加して、酸化アルミニウムを含む誘電体層3を形成した。
【0103】
(3)第1導電性高分子層4aを形成する工程(第3工程)
攪拌下で、ポリスチレンスルホン酸(重量平均分子量:75,000)の水溶液に、3,4−エチレンジオキシチオフェンモノマーを添加し、次いで、酸化剤(硫酸鉄(III)および過硫酸ナトリウム)を添加して、化学酸化重合を行った。得られた重合液を、イオン交換装置によりろ過して不純物を除去することにより、第1導電性高分子としてのポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)と、ドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸(PSS)とを含む溶液を得た。
【0104】
得られた溶液に、純水を加えて、高圧ホモジナイザーでホモジナイズし、さらにフィルターでろ過することにより分散液状の第1処理液を調製した。
上記(2)で得られた誘電体層3が形成された陽極体2を、第1処理液に浸漬した後、第1処理液から取り出し、さらに120℃で10〜30分の乾燥を行った。第1処理液への浸漬と、乾燥とをさらに1回ずつ繰り返すことで、誘電体層3の表面を覆うように第1導電性高分子層4aを形成した。第1導電性高分子層4aの平均厚みを走査型電子顕微鏡(SEM)により測定したところ、約1μmであった。
【0105】
(4)中間層4cを形成する工程(第4工程)
純水に、N,N−ジメチルオクチルアミン(カチオン剤)と、スルホフタル酸(アニオン剤)とを溶解させて、第2処理液を調製した。第2処理液中のカチオン剤の濃度は、0.05mol/L、アニオン剤の濃度は、0.025mol/Lとした。第1アニオン性基であるスルホン酸基と、第2アニオン性基であるカルボキシル基との数の合計は、カチオン性基である3級アミノ基の数に対して、1.5倍であった。また、第1アニオン性基の数に対する第2アニオン性基の数の比は、2倍であった。
【0106】
上記(3)で処理された陽極体2を第2処理液に浸漬した後、取り出し、さらに100℃で3分乾燥させることにより、第1導電性高分子層4aの表面を覆うように、中間層4cを形成した。なお、中間層において、カチオン性基の数に対する、第1アニオン性基および第2アニオン性基の数の合計の比、ならびに第1アニオン性基と第2アニオン性基との比は、第2処理液中におけるそれぞれの比とほぼ同じである。
【0107】
(5)第2導電性高分子層4bを形成する工程(第5工程)
上記(3)で用いた第1処理液と同様の組成の第3処理液を用いた。上記(4)で処理された陽極体2を、第3処理液に浸漬した後、取り出し、さらに120℃で10〜30分の乾燥を行った。第3処理液への浸漬と乾燥とを交互にさらに2回ずつ繰り返すことで、中間層4cの表面を覆うように第2導電性高分子層4bを形成した。第2導電性高分子層4bの平均厚みを、第1導電性高分子層4aの場合と同様にして測定したところ、約30μmであった。このようにして、第1導電性高分子層4a、中間層4
c、および第2導電性高分子層4bを、誘電体層3の表面を覆うように形成した。
【0108】
(6)陰極層5の形成工程(第6工程)
上記(5)で得られた陽極体2を、黒鉛粒子を水に分散した分散液に浸漬し、分散液から取り出し後、乾燥することにより、少なくとも第2導電性高分子層4bの表面にカーボン層5aを形成した。乾燥は、130〜180℃で10〜30分間行った。
次いで、カーボン層5aの表面に、銀粒子とバインダ樹脂(エポキシ樹脂)とを含む銀ペーストを塗布し、150〜200℃で10〜60分間加熱することでバインダ樹脂を硬化させ、銀ペースト層5bを形成した。こうして、カーボン層5aと銀ペースト層5bとで構成される陰極層5を形成した。
上記のようにして、コンデンサ素子11を作製した。
【0109】
(7)電解コンデンサの組み立て
上記(6)で得られたコンデンサ素子11の陰極層5と、陰極端子14の一端部(第1端部)14aとを導電性接着剤17で接合した。コンデンサ素子11から突出した陽極体2の他端部と、陽極端子13の一端部(第1端部)13aとをレーザ溶接により接合した。
次いで、トランスファモールド法により、コンデンサ素子11の周囲に、絶縁性樹脂で形成された樹脂外装体12を形成した。このとき、陽極端子13の他端部(第2端部)13bと、陰極端子14の他端部(第2端部)14bとは、樹脂外装体12から引き出した状態とした。
このようにして、電解コンデンサ1(A1)を完成させた。上記と同様にして、電解コンデンサ1を合計250個作製した。
【0110】
(8)評価
電解コンデンサを用いて、下記の評価を行った。
(a)ESR
電解コンデンサからランダムに120個選び、4端子測定用のLCRメータを用いて、電解コンデンサの周波数100kHzにおけるESR値(mΩ)を測定し、平均値を求めた。
【0111】
(b)漏れ電流
電解コンデンサに1kΩの抵抗を直列につなぎ、直流電源にて25Vの定格電圧を1分間印加した後の漏れ電流(μA)を測定し、250個の電解コンデンサの平均値を求めた。
【0112】
(実施例2〜6および比較例1)
第4工程において、第2処理液(または中間層)のカチオン性基の数に対する第1アニオン性基および第2アニオン性基の数の合計の比が表1に示す値となるように、第2処理液中のアニオン剤の濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして、電解コンデンサ(A2〜A6、およびB1)を作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
【0113】
(実施例7)
スルホフタル酸に代えて、スルホサリチル酸を用いる以外は、実施例1と同様にして、電解コンデンサ(A7)を作製し、評価を行った。
(比較例2)
スルホフタル酸に代えて、スルホサリチル酸を用いる以外は、比較例1と同様にして、電解コンデンサ(B2)を作製し、評価を行った。
【0114】
表1に、実施例1〜7および比較例1〜2の評価結果を示す。なお、A1〜A7は実施例の電解コンデンサであり、B1〜B2は比較例の電解コンデンサである。
【0115】
【表1】
【0116】
表1に示すように、中間層におけるアニオン性基の数(第1アニオン性基および第2アニオン性基の数の合計)がカチオン性基の数よりも少ない比較例1では、ESR値が大きく、漏れ電流が大きくなった。アニオン剤として、スルホサリチル酸を用いた比較例2では、比較例1よりもESR値がさらに大きくなり、漏れ電流が著しく増加した。
それに対し、アニオン性基の数がカチオン性基の数よりも多い実施例では、比較例1および2に比べて、ESR値および漏れ電流の値は格段に低減された。これらの結果は、実施例では、第2処理液からのカチオン剤の揮発が抑制され、第2導電性高分子層の成膜性および/または被覆性が向上したことによるものと考えられる。
【0117】
(実施例8)
スルホフタル酸に代えて、ベンゼンスルホン酸(第1アニオン剤)およびフタル酸(第2アニオン剤)を用い、第2処理液中のアニオン剤の濃度を、第1アニオン剤0.025mol/Lおよび第2アニオン剤0.025mol/Lに変更した以外は、実施例1と同様にして、電解コンデンサ(A8)を作製し、評価を行った。
【0118】
(実施例9)
スルホフタル酸に代えて、ベンゼンスルホン酸(第1アニオン剤)およびサリチル酸(第2アニオン剤)を用い、第2処理液中のアニオン剤の濃度を、第1アニオン剤0.025mol/Lおよび第2アニオン剤0.025mol/Lに変更した以外は、実施例1と同様にして、電解コンデンサ(A9)を作製し、評価を行った。
【0119】
(比較例3)
第2処理液中のアニオン剤の濃度を、第2処理液のカチオン性基の数に対するアニオン性基の数の比が0.60となるように、第2処理液中の第1および第2アニオン剤の濃度を変更した以外は、実施例8と同様にして、電解コンデンサ(B3)を作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
表2に、実施例8〜9および比較例3の評価結果を示す。
【0120】
【表2】
【0121】
表2に示すように、アニオン剤として、第1アニオン性基(スルホン酸基)を有する第1アニオン剤と、第2アニオン性基(カルボキシル基、またはカルボキシル基およびヒドロキシル基)を有する第2アニオン剤とを用いた場合にも、実施例1と同様に、ESR値および漏れ電流の値が大きく低減された(電解コンデンサA8およびA9)。一方、第1アニオン剤および第2アニオン剤を用いる場合でも、アニオン性基の数がカチオン性基の数よりも少ない電解コンデンサB3では、ESR値および漏れ電流値ともに実施例に比べて大きく増加した。
【0122】
(実施例10〜12)
スルホフタル酸に代えて、ベンゼンスルホン酸(第1アニオン剤)および表3に示す第
2アニオン剤を用いる以外は、実施例1と同様にして、電解コンデンサ(A10〜A12)を作製し、評価を行った。
【0123】
(比較例4)
第2処理液中のアニオン剤の濃度を、第2処理液のカチオン性基の数に対するアニオン性基の数の比が0.60となるように、第2処理液中の第1および第2アニオン剤の濃度を変更した以外は、実施例10と同様にして、電解コンデンサ(B4)を作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
【0124】
(比較例5)
第2処理液中のアニオン剤の濃度を、第2処理液のカチオン性基の数に対するアニオン性基の数の比が0.60となるように、第2処理液中の第1および第2アニオン剤の濃度を変更した以外は、実施例11と同様にして、電解コンデンサ(B5)を作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
表3に、実施例10〜12および比較例4〜5の評価結果を示す。なお、アシッドホスホオキシエチルアクリレートは、P(=O)(OH)
2−O−CH
2CH
2−O−C(=O
)−CH=CH
2で表され、アシッドホスホオキシエチルメタクリレートは、P(=O)
(OH)
2−O−CH
2CH
2−O−C(=O)−C(CH
3)=CH
2で表される。
【0125】
【表3】
【0126】
表3に示すように、アニオン剤として、第1アニオン性基(スルホン酸基)を有する第1アニオン剤と、第2アニオン性基(リン酸基)を有する第2アニオン剤とを用いた場合にも、実施例1と同様に、ESR値の値が大きく低減された(電解コンデンサA10〜A12)。これらの実施例では、漏れ電流の抑制効果が特に顕著であり、漏れ電流は、第2アニオン性基としてカルボキシル基を用いた実施例1や実施例8の1/2〜1/10にまで低減されている。
【0127】
一方、実施例10や実施例11と同じ第1アニオン剤および第2アニオン剤を用いる場合でも、アニオン性基の数がカチオン性基の数よりも少ない電解コンデンサB4およびB5では、ESR値および漏れ電流値ともに実施例に比べて大きく増加した。
【0128】
(実施例13〜20および比較例6)
表4に示す第2アニオン剤を用い、第2処理液中の第1アニオン剤および第2アニオン剤のそれぞれの濃度を、表4に示す値となるように変更した以外は、実施例10と同様にして、電解コンデンサ(A13)〜(A20)および(B6)を作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
表4に、実施例13〜20および比較例6の評価結果を示す。なお、表4には、実施例10の評価結果も合わせて示した。
【0129】
【表4】
【0130】
表4に示すように、第1アニオン性基の数に対する第2アニオン性基の数の比を変更した場合にも、実施例10と同様に、ESR値が低減され、漏れ電流の抑制効果も優れていた(実施例13〜20)。それに対して、第1アニオン性基の数に対する第2アニオン性基の数の比が実施例と同程度であっても、カチオン性基の数よりもアニオン性基の数が少ない比較例6では、ESRが大きくなり、漏れ電流が顕著に増加した。