(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジアミン単位とジカルボン酸単位からなるポリアミドであって、ジアミン単位の50モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来するポリアミドからなり、かつペレットのスキン部分における球晶密度が40000〜250000個/mm2であるポリアミドペレット。
圧縮比が2.0〜4.0である単軸押出成形機にて混練されて成形加工されるための高圧縮スクリュー成形用ポリアミドペレットである請求項10に記載のポリアミドペレット。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について実施形態を用いて説明する。
<第1のポリアミドペレット>
本発明の第1のポリアミドペレットは、ジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミドであって、ジアミン単位の50モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来するポリアミドからなるポリアミドペレットである。
【0016】
[ジアミン単位]
第1のポリアミドペレットにおいて、ポリアミド中のジアミン単位は、メタキシリレンジアミン由来の構成単位を50モル%以上含み、好ましくは60〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%含有する。
本発明では、メタキシリレンジアミン由来の構成単位が50モル%未満であると、第1のポリアミドペレットから得られる成形品のバリア性能を高めにくくなり、また、本発明のポリアミドに求める各種物性を得にくくなる。
【0017】
ポリアミドにおいて、メタキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−又は1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;パラキシリレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
メタキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、これらの中では、パラキシリレンジアミンを使用することが好ましい。パラキシリレンジアミンを使用する場合、ポリアミド中のジアミン単位は、パラキシリレンジアミン由来の構成単位を50モル%以下含み、好ましくは40モル%以下含有し、さらに好ましくは30モル%以下含有する。
【0018】
[ジカルボン酸単位]
第1のポリアミドペレットにおいて、ポリアミド中のジカルボン酸単位は、結晶性の観点から、脂肪族ジカルボン酸単位を好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上含む。脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸等の炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0019】
また、脂肪族ジカルボン酸は、炭素数6〜12のものがより好ましく、炭素数6〜10のものがさらに好ましく、特に、アジピン酸、セバシン酸又はこれらの混合物が好ましい。本発明では、アジピン酸を使用することで成形体のガスバリア性を良好にすることができる。また、セバシン酸を使用することで、吸水性が低く、寸法安定性に優れる成形体を得やすくなる。
【0020】
脂肪族ジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、イソフタル酸は、ポリアミドの製造時における重縮合反応を阻害することなく、バリア性能に優れるポリアミドを容易に得ることができるので好ましい。
本発明においては、ポリアミドとしては、全てのジアミン単位がメタキシリレンジアミン由来の構成単位からなり、全てのジカルボン酸単位が脂肪族ジカルボン酸単位からなるポリアミドが最も好ましい。
【0021】
[球晶密度]
本発明の第1のポリアミドペレットは、結晶状態にあるものであり、ペレット表面を構成するスキン部分において、微細な球晶が多数存在するとともに、その球晶が密に存在するものとなる。但し、本発明で示す球晶とは偏光顕微鏡などの従来の観察方法で確認されるものではなく、後述するようにイオンビームの照射によりイオンミリングした後、スキン部分を観察することにより観察される球晶に起因した模様のことを指す。そして、スキン部分の球晶密度は、後述する測定方法で測定すると、40000〜250000個/mm
2となる。このように、第1のポリアミドペレットでは、ペレットのスキン部分の球晶が密に存在する構造となるため、ポリアミドペレットがスキン部分で保護されて、熱履歴による色相の悪化を防ぎ、ペレットの色相を良好にできる。また、表面の結晶化度が高くなり、可塑化してもペレット同士が合着しにくくなる。そのため、単軸押出成形機等で、高い圧縮力で圧縮しつつ混練してもペレット同士が合着したりすることがなく、加工安定性を高めることができる。
一方、球晶密度が上記下限値未満となり、又は、イオンミリング後に球晶に起因する模様が十分に観察できない場合には、スキン部分において球晶が密に存在せず、或いはスキン部分において球晶が明確には存在しないこととなる。そのため、ポリアミドペレットは、スキン部分で十分に保護されず、ペレットの色相を良好にしにくくなる。
さらに、球晶密度が上記下限値未満となり、又は、イオンミリング後に球晶に起因する模様が十分に観察できない場合には、表面の結晶化度が低いものとなる。そのため、単軸押出成形機等で可塑化して混練すると、ペレット同士が合着する等の不具合が生じやすくなる。
また、球晶密度が上記上限値より大きくなると、後述する製造方法での製造が困難になる場合がある。
【0022】
第1のポリアミドペレットのスキン部分において、球晶密度は80000〜110000個/mm
2であることが好ましい。球晶密度をこのような範囲とすることで、ポリアミドペレットはスキン部分で良好に保護されて、その色相を良好にすることができ、第1のポリアミドペレットから得られる成形体の色相も良好にすることが可能になる。さらには、球晶密度をこのような範囲とすることで、第1のポリアミドペレットはさらに合着しにくくなり、加工安定性をさらに高めることが可能となる。
【0023】
第1のポリアミドペレットでは、通常、ペレットの内部を構成するコア部分においても、球晶が多数存在し、例えばイオンミリング後に観察すると、球晶が明瞭に多数見られる。ただし、コア部分において球晶は比較的疎に存在し、通常、第1のポリアミドペレットのコア部分の球晶密度は、スキン部分の球晶密度よりも小さくなる。具体的には、コア部分の球晶密度は10000〜40000個/mm
2であることが好ましく、15000〜40000個/mm
2であることがより好ましい。コア部の球晶密度が、上記範囲であると、スキン部分との熱的性質の差が小さくなり、成形品の物性等を安定させやすくなる。
なお、第1のポリアミドペレットにおいて、スキン部分とは、ペレットの軸方向に垂直な断面において、ペレット外周から60μmまでの部分のことをいい、コア部分とはペレット中心からペレット半径の70%以内の部分をいう。なお、ペレット径とは、ペレットの上記断面において最も長い径を意味し、ペレット半径とはペレット径の1/2の長さを意味する。
【0024】
ポリアミドの重合度の指標としてはいくつかあるが、相対粘度が一般的に使われるものである。第1のポリアミドペレットは、その相対粘度が、2.0〜4.2であることが好ましい。相対粘度が上記範囲のポリアミドは、後述する製造方法により容易に製造可能である。また、第1のポリアミドペレットから成形した成形体の機械強度及び成形性が良好となる。これら観点から相対粘度は、2.0〜3.6がより好ましい。
【0025】
また、第1のポリアミドペレットは、以下の式(1)の条件を満たすことが好ましい。
−110μeq/g≦([COOH]−[NH
2])≦110μeq/g (1)
(なお、式(1)中、[COOH]はポリアミドの末端カルボキシル基濃度(μeq/g)、[NH
2]はポリアミドの末端アミノ基濃度(μeq/g)を表す。)
このように、末端カルボキシル基濃度と、末端アミノ基濃度の差が小さいと、耐熱性が良好となり、色劣化が生じにくくなる。また、色劣化をより抑えるためには、([COOH]−[NH
2])は、−80〜80μeq/gであることがより好ましい。
【0026】
第1のポリアミドペレットは、融点ピークを1つのみ有するものである。第1のポリアミドペレットの融点は、特に限定されないが、好ましくは190〜290℃であり、より好ましくは210〜270℃である。
【0027】
第1のポリアミドペレットは、特に限定されないが、通常、そのストランド方向(軸方向)に沿う長さが1.0〜5.0mm程度であり、好ましくは1.0〜4.0mm程度であり、より好ましくは2.0〜4.0mm、さらに好ましくは2.0〜3.5mmである。また、第1のポリアミドペレットのペレット径は、通常1.0〜4.0mm程度となり、好ましくは2.0〜3.5mmである。ペレットの形状は、特に限定されないが、通常、後述するようにストランドを横断するように切断したものであり、円柱状、楕円柱状であることが好ましい。
【0028】
<第1のポリアミドペレットの製造方法>
次に、本発明における第1のポリアミドペレットの製造方法について説明する。
本発明における第1のポリアミドペレットの製造方法は、上記した第1のポリアミドペレットを得ることができる方法であれば特に限定されないが、ペレット化したポリアミドをさらに固相重合して得ることが好ましい。また、ペレット化したポリアミドは、例えば、ジアミンとジカルボン酸とを溶融重縮合することにより得られたペレットであることが好ましい。このように、溶融重縮合及び固相重合により、本発明のポリアミドペレットを製造する方法の一例を以下に説明する。
【0029】
本発明の一実施形態における第1のポリアミドペレットの製造方法は、ジアミンとジカルボン酸を重縮合して得られた溶融状態にあるポリアミドをストランド状に送り出す工程と、ストランド状に送り出されたポリアミドを水冷しつつ切断してペレット化し、その後、ペレット化したポリアミドを4秒以上さらに水冷する工程と、水冷後のペレット化したポリアミドをさらに固相重合してポリアミドペレットを得る工程とを備える方法である。
【0030】
従来、メタキシリレン基含有ポリアミドの製造においては、溶融重縮合後の温度がそれほど高くない点、さらには装置的制約から、水冷時間は可能な限り短縮するのが一般的である。また、重縮合により得られたポリアミドを、ストランド状に抜き出して、ストランドのまま水冷する手法が知られている。
それに対して、本製造方法では、ポリアミドを、ペレット状に小片化された状態で水冷し、かつその水冷時間を上記のように4秒以上と長くすることで、ペレット表面を急激に低温にし、それにより、スキン部分のモルホロジーを特異なものとするものである。そのため、上記の方法でペレタイジング後水冷されたペレット化したポリアミドを、固相重合により結晶化すると、上記したようにスキン部分には明瞭に球晶が形成され、その球晶密度も高くなる。
また、ペレットのコア部分は、スキン部分に比べると冷却速度が若干遅くなるものの急冷されることに変わりはなく、コア部分のモルホルジーは、スキン部分とは多少の差があるものの特異なものになると推定される。そのため、上記の方法でペレット化したポリアミドを、固相重合により結晶化すると、コア部分に球晶が明瞭に形成され、その球晶密度を上記したように比較的高くすることが可能になる。
【0031】
以下、本製造方法についてより詳細に説明する。
本製造方法において、ジアミンとジカルボン酸の重縮合は、溶融重縮合法により行うことが好ましい。
溶融重縮合法の好適な例としては、ジアミンを溶融したジカルボン酸に直接加えて、重縮合するいわゆる直接重合法が挙げられる。より具体的には、反応槽中で溶融状態にあるジカルボン酸を攪拌しながら、ジアミンを連続的もしくは間欠的に添加し、縮合水を除去しながら重縮合するとともに、ジアミンを添加する間、生成するポリアミドの融点よりも下回らないように反応温度を上昇させる。また、ジアミン添加が終了した後も、生成するポリアミドの融点より下回らないように温度を制御しつつさらに反応を継続してもよい。以上の反応については、常圧、加圧どちらの条件で実施してもよい。その後、漸次減圧して常圧未満の圧力にしてさらに一定時間反応を継続してもよい。なお、本製造方法における反応温度の上限値は、通常、得られる非晶状態のポリアミドの融点+70℃程度以下に制御され、好ましくは得られる非晶状態のポリアミドの融点+20℃程度以下に制御される。
本製造方法において使用されるジアミン及びジカルボン酸は、上記したポリアミドを得られるものであればよく、例えば、使用される全ジアミンにおける各ジアミン(メタキシリレンジアミン等)の種類ごとの含有割合(モル%)は、上記したポリアミド中のジアミン単位における各ジアミン由来の種類ごとの構成単位の割合(モル%)と同様である。ジカルボン酸についても同様である。
【0032】
また、溶融重縮合法は、直接重合法に限定されず、ジカルボン酸と、ジアミンとからなるナイロン塩を、水の存在下、加圧下で加熱して行うナイロン塩法で行ってもよい。
さらには、重縮合反応は、ジアミン及びジカルボン酸からなるポリアミドのオリゴマーを押出機で溶融混練して反応させる反応押出法で行ってもよい。反応押出法は、十分に反応させるためには、反応押出に適したスクリューを用い、L/Dの比較的大きい2軸押出機を用いるのが好ましい。
【0033】
重縮合により得られた溶融状態にあるポリアミドは、例えば反応槽の底部に備えられたストランドダイからストランド状に抜き出す。なお、ポリアミドを抜き出すとき、反応槽内部は通常窒素等により加圧される。ここで、ストランドダイのダイ径は、得られるペレットのペレット径や断面積に応じて設定される。また、ストランドを抜き出すときのポリアミドの温度は、ポリアミドが溶融状態に保たれるように、そのポリアミドの融点以上であればよいが、融点以上、(融点+70℃)以下の温度であることが好ましく、融点以上、(融点+20℃)以下の温度であることがより好ましい。
【0034】
ストランド状に抜き出された溶融状態のポリアミドは、水冷されつつペレット化される。より具体的には、ストランド状に抜き出されたポリアミドは、水槽に浸漬され水中で冷却されながら、所定の引き取り速度で引き取られつつペレダイザーにおけるカッターにより、ストランドを横断するように切断される。ここで、ペレダイザーにおけるカッター引き取り速度は、特に限定されないが、例えば100〜300m/分、好ましくは120〜280m/分である。
ストランド状に抜き出された溶融状態のポリアミドは、着水してから直ちに切断されることが好ましく、具体的には好ましくは着水後2秒以内、より好ましくは着水後1秒以内に切断されてペレット化される。ポリアミドは、着水後直ちに切断されペレット化されると、小片化された状態で直ちに冷却されることとなり、急冷されやすくなる。
【0035】
上記のようにペレット化したポリアミドは、引き続き、水槽内を送られつつ水冷されてから離水され、水槽から取り出される。ここで、ペレット化された後、離水までの時間(以下、「ペレット水冷時間」ともいう)は、4秒以上であるが、5秒以上であることが好ましい。ペレット水冷時間が4秒未満となると、ポリアミドが十分に冷却されず、スキン部分の球晶密度を密にできないおそれがある。
また、ペレット水冷時間の上限は特に限定されないが、ポリアミドペレットを効率よく製造する観点から、通常30秒以下であり、10秒以下であることが好ましい。
また、水冷終了時(すなわち、離水した際)のペレット化したポリアミドの温度は、65℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることがさらに好ましい。また、水冷終了時のポリアミドの温度の下限値は、特に限定されないが、工程を効率化させるために、20℃以上が好ましく、30℃以上がさらに好ましく、35℃以上がさらに好ましい。
水槽から取り出されたペレット化したポリアミドは、自然乾燥されてもよいが、ドライヤーによる送風により、ペレット表面の水を強制的に除去してもよい。
また、水槽の温度は、例えば0〜50℃、好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜30℃である。
【0036】
以上の工程を経て得られたペレット化したポリアミド(以下、便宜上、“重縮合ポリアミドペレット”ともいう)は、通常、非晶状態となるとともに、後述する固相重合がされることにより結晶状態になる。なお、本明細書において非晶状態のポリアミドとは、結晶化度が25%未満のものをいい、結晶状態のポリアミドとは、結晶化度が25%以上のものをいう。結晶化度は、後述する実施例における測定方法に従って測定されたものである。
なお、本製造方法では、例えば、ペレダイザーにおける引き取り速度、ストランドダイのダイ径、ダイバルブ開度、又はポリアミドを反応槽から抜き出すときの反応槽内部の圧力のいずれか1つ以上を調整することで、ペレットの断面積及びペレットの径を適宜調整することが可能である。
【0037】
また、上記重縮合反応においては、ジカルボン酸成分とジアミン成分は、リン原子含有化合物存在下重縮合されてもよい。このように、リン原子含有化合物が存在することで、ポリアミドの重合性を良好にできるとともに、ポリアミドの着色を防止することができる。
リン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸等のホスフィン酸化合物;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸エチル等のジ亜リン酸化合物;ホスホン酸、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸リチウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸マグネシウム、ホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム等のホスホン酸化合物;亜ホスホン酸、亜ホスホン酸ナトリウム、亜ホスホン酸リチウム、亜ホスホン酸カリウム、亜ホスホン酸マグネシウム、亜ホスホン酸カルシウム、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル等の亜ホスホン酸化合物;亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等が挙げられる。
これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩が、重縮合反応を促進する効果が高くかつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましい。なお、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
【0038】
リン原子含有化合物は、得られるポリアミドペレット中に含有されるリン原子濃度換算で1〜350ppmとなるように配合されることが好ましく、1〜200ppmとなるように配合されることがより好ましく、さらに好ましくは1〜100ppm、よりさらに好ましくは1〜80ppm、最も好ましくは2〜80ppmである。1ppm以上であれば、適切な速度で重縮合反応が進むとともに、重縮合反応中に着色が生じにくい。350ppm以下であれば、得られるポリアミドがゲル化しにくく、また、リン原子含有化合物に起因すると考えられるフィッシュアイの成形品中への混入も低減でき、成形品の外観が良好となる。さらに、本発明においては、得られるポリアミドペレットは着色されにくく、100ppm又は80ppm以下程度の少量の配合量であっても、ポリアミドペレットの色相は悪化しにくい。
【0039】
重縮合反応は、リン原子含有化合物に加えてアルカリ金属化合物存在下で、行なわれてもよい。アルカリ金属化合物を配合することで、アミド化反応速度が調整され、リン原子含有化合物を加えたことによって発生するおそれがあるゲル化を防ぐことができる。
アルカリ金属化合物及び前述したリン原子含有化合物は、通常、ジカルボン酸成分とジアミン成分が反応する前に反応系に添加される。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシド等が好ましい。本発明で用いることのできるアルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、炭酸ナトリウム等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。なお、得られるポリアミドペレットにおけるリン原子含有化合物とアルカリ金属化合物の比率(モル比)は、重合速度制御の観点や、黄色度を低減する観点から、リン原子含有化合物/アルカリ金属化合物=1.0/0.05〜1.0/1.5の範囲が好ましく、より好ましくは、1.0/0.1〜1.0/1.2、更に好ましくは、1.0/0.2〜1.0/1.1である。
また、反応系には、ジアミン、ジカルボン酸、リン原子含有化合物、アルカリ金属化合物以外にも、分子量調整剤等のその他の添加剤や後述するその他のモノマー等がさらに添加されていてもよい。
【0040】
上記のようにペレット化したポリアミド(重縮合ポリアミドペレット)を固相重合する方法は、ポリアミドを結晶化させ、かつ分子量(相対粘度)を高める方法であれば特に限定されない。固相重合は、例えば、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置及びナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置等を用いて行われるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。これらの装置の中で回転ドラム式の加熱装置が、系内を密閉化でき、かつ着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
【0041】
また、固相重合の条件は、得られる第1のポリアミドペレットの融点より低い条件で行われれば限定されないが、例えば反応系の温度を漸次昇温させていき、130℃以上、かつ得られる第1のポリアミドペレットの融点よりも低い温度で1〜10時間程度、好ましくは1.5〜6時間程度反応させることが好ましい。また、固相重合においては、反応系を減圧下にすることが好ましく、好ましくは20kPa以下、より好ましくは10kPa以下程度で行う。
【0042】
以上のように、本発明では、スキン部分における球晶密度を大きいものとしたことで、得られる第1のポリアミドペレットの色相を良好にすることができる。そのため、第1のポリアミドペレットを原料として成形加工した際には、成形体の色相を良好なものとすることができる。
【0043】
<ポリアミド成形体>
本発明の第1のポリアミドペレットは、必要に応じて他の任意成分を混合したうえで、公知の成形方法により、所望の形状のポリアミド成形体に成形することが可能である。成形方法は、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、延伸、真空成形等が挙げられる。ポリアミド成形体としては、特に限定されないが、フィルム、シート、チューブ、ホース、パイプ、中空容器、ボトル、中空容器若しくはボトルのプリフォーム、繊維、各種形状の部品等種々の成形品が挙げられる。
また、本発明のポリアミド成形体は、他の樹脂材料から成形された成形体に積層又は接着等するように成形し、多層構造体、複合繊維、又はその他部品等の成形品を構成してもよい。多層構造体としては、多層フィルム、多層シート、多層チューブ、多層ホース、多層パイプ、多層容器、多層ボトル、又は多層容器若しくは多層ボトルのプリフォーム等が挙げられる。
【0044】
本発明において、上述した第1のポリアミドペレットは、単軸押出成形機等の所定の成形機により成形を行う場合には、その断面積を5〜13mm
2とする。第1のポリアミドペレットは、断面積が5mm
2未満となると、例えば単軸押出成形機においてペレットを混練する際に、ペレットがスクリューに巻きついたりする不具合が生じ、スキン部分の球晶密度を上記のように大きくしても、加工安定性を良好にすることができない。一方、断面積が13mm
2より大きくなると、ペレットを混練するための混練装置への負荷が大きくなり、例えば単軸押出成形機においてはその負荷に起因する振動が生じたりして、加工安定性が低下する。これら観点からポリアミドペレットの断面積は、好ましくは6〜12mm
2、より好ましくは6〜10mm
2である。
なお、ペレットの断面積は、ストランド方向(軸方向)に垂直な断面において、例えばノギスにて径(円以外の場合には、短径と長径)を測定し、ペレット断面が円、又は楕円形であるとみなして、面積を算出したものである。なお、長径とは、ペレットの上記断面において最も長い径を意味し、短径とはその断面において長径に垂直な径の長さをいう。
また、第1のポリアミドペレットは、単軸押出成形機等の所定の成形機により成形を行う場合、上記断面積を有し、かつそのストランド方向(軸方向)に沿う長さ(ペレット長さ)が1.5〜5.0mmであることが好ましい。第1のポリアミドペレットは、ペレット長さを1.5mm以上とすることで、ペレットを混練する際に、スクリューに巻きついたりすることを防止しやすくなる。また、5.0mm以下とすることで押出機へ作用する負荷を低減しやすくなる。これら観点から上記ペレットの長さは、より好ましくは2.0〜4.0mmである。
【0045】
このような特定のペレットサイズを有する第1のポリアミドペレットは、高圧縮スクリューを有する単軸押出成形機にて混練されて成形加工される高圧縮スクリュー成形用ポリアミドペレットとして使用されることが好ましい。第1のポリアミドペレットは、一定のペレットサイズを有し、かつスキン部分に微細な球晶が多数存在することで、混練時にペレット同士が合着したり、ペレットがスクリューに巻きついたりする不具合を防止し、さらには、単軸押出成形機への負荷が小さくなる。したがって、高圧縮スクリューを有する単軸押出成形機にてペレットを混練しても、加工性を良好にすることが可能になる。
高圧縮スクリューを有する単軸押出成形機としては、シリンダーにおける圧縮比(C/R)が2.0〜4.0のものが挙げられるが、後述する単軸押出成形機が代表的な具体例として挙げられる。
【0046】
[ポリアミド成形体の製造方法]
第1のポリアミドペレットを使用して、ポリアミド成形体を製造する方法としては、上記の特定のペレットサイズ(特定の断面積等)を有するポリアミドペレットを混練した後、成形加工してポリアミド成形体を得る方法が挙げられる。この方法においては、第1のポリアミドペレットを、内部に単軸のスクリューを有するシリンダーによって混練することが好ましい。本発明では、上記のように、スキン部分の球晶密度を一定範囲としたうえで、ペレットの断面積も上記の一定範囲とすると、単軸スクリューにより混練しても、加工安定性を優れたものとすることができる。
【0047】
以下、ポリアミド成形体を押出成形機により成形する本製造方法の一実施形態について
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態で使用される押出成形機を示す概略図である。
図1に示すように、押出成形機10は、単軸押出成形機であって、シリンダー20と、シリンダー20内部に設けられた単軸のスクリュー21と、ダイ(不図示)と、ダイをシリンダー20の先端に取り付けるためのアダプター13を備える。アダプター13は、シリンダー20から原料をダイに送るための連通部である。また、押出成形機10は、さらに、シリンダー20の上流側の端部に取り付けられるホッパー22と、スクリュー21を回転させるスクリュー駆動装置23とを備える。
【0048】
スクリュー21は、スクリュー軸の側面に螺旋状に形成されたねじ切り部25が形成されたものである。ねじ切り部25の外径Dは、シリンダーの内周面の内径よりも若干小さく、かつ一定に設定されている。
スクリュー21は、その基端部から先端部に向けて、供給部21Aと、供給部21Aに続く圧縮部21Bと、圧縮部21Bに続く計量部21Cとを有する。供給部21Aは、スクリューのねじ切り部25が施された、ねじの切り始めから溝深さ(高さ、又はねじ深さとも言う)が一定となっている範囲をいう。圧縮部21Bは、溝深さが徐々に浅くなる範囲をいう。計量部21Cは、スクリュー先端部の溝深さが浅く一定となっている範囲をいう。
【0049】
供給部、圧縮部、計量部の長さL1、L2、L3は、これらの合計を1としたとき、通常、それぞれ0.30〜0.55、0.10〜0.35、0.10〜0.40程度となるものである。また、供給部の長さL1が0.40〜0.55、圧縮部の長さL2が0.10〜0.30、計量部の長さL3が0.10〜0.40となることが好ましく、供給部の長さL1が0.45〜0.55、圧縮部の長さL2が0.10〜0.20、計量部の長さL3が0.20〜0.40となることがより好ましい。このように、供給部を比較的長くすることで、圧縮前に比較的長い時間ポリアミドペレットに予熱を加えることが可能になる。そのため、融点が比較的高いメタキシリレン基含有ポリアミドであっても、ポリアミドペレットを容易に可塑化することが可能になる。
【0050】
単軸押出成形機は、いわゆる高圧縮スクリュータイプのものが好ましく、圧縮比(C/R)は比較的高いことが好ましい。具体的には、シリンダー20における圧縮比(C/R)が2.0〜4.0であるものが好ましく、2.3〜3.5であることがより好ましい。なお、圧縮比(C/R)とは、供給部21Aの1ピッチ分の樹脂容量(体積)と計量部21Cの1ピッチ分の樹脂容量(体積)の比で表される。スクリューの圧縮比が上記の範囲となることで、ポリアミドペレットを高圧縮で剪断することになり、ペレットの可塑化及び混練が容易になる。また、このように高圧縮で可塑化しても、上記のようにポリアミドペレットのスキン部分の球晶密度が高いため、ペレット同士が合着する不具合が生じにくいものとなる。
【0051】
本発明のスクリュー有効長Lとスクリュー径Dの比(=L/D)は、好ましくは20〜35であり、より好ましくは23〜30である。比(L/D)が20以上であれば、ポリアミドペレットを十分に可塑化し、さらには溶融して混練することが可能になる。また、35以下であればスクリューを駆動させるモーター容量を経済的に問題とならない程度に抑えられる。
なお、スクリュー有効長Lとは、スクリューのねじ切り部(ねじ切り始めからねじ切りの最終端まで)の長さをいい、長さL1、L2、L3の総和と等しい。
スクリュー径Dは、本発明のポリアミドペレットを混練できれば特に限定されず、20〜120mm程度であることが一般的であるが、20〜90mm程度のものを使用することが好ましい。
スクリュー形状は、特に限定されないが、吐出量の観点から、フルフライトスクリューが好ましく、シングルフライトでもダブルフライトであってもよい。
【0052】
シリンダー20には、スクリュー21の基端部からスクリュー先端部に向けて、例えば、順にヒーター31、32、33が設けられる。ヒーター31、32、33は、それぞれスクリューの供給部21A、圧縮部21B、計量部21Cに対応する部分のシリンダーを加熱し、その温度(シリンダー温度)を調整する。なお、ヒーター31、32、33それぞれは、供給部21A、圧縮部21B,計量部21Cに対応するシリンダーの全体を所定の温度に加熱するものであってもよいが、それぞれ供給部21A、圧縮部21B、計量部21Cに対応するシリンダーの大半の部分(例えば、80%以上の部分)を所定の温度に加熱するものであればよい。また、アダプター13を取り巻くようにヒーター34が設けられ、アダプター13(連通部)はヒーター34によって所定の温度に加熱されることが好ましい。さらに、不図示のダイにもヒーターが設けられ、ダイは、そのヒーターによって所定の温度に加熱されることが好ましい。なお、以下では、ヒーター31、32、33それぞれによって加熱されるスクリュー21それぞれの温度を温度C1,C2、C3とする。また、アダプター13に設けられたヒーター34によって加熱されるアダプターの温度を温度Hとするとともに、ダイに設けられたヒーターによって加熱されるダイ温度を温度Dとする。
【0053】
シリンダー20は、特に限定されないが、ヒーター31によって、供給部21Aに対応する部分(すなわち、温度C1)が、ポリアミドペレットの融点未満に加熱されることが好ましく、ポリアミドペレットの融点未満で、かつ(ポリアミドペレットの融点−40℃)以上に加熱されることがより好ましい。また、供給部21Aよりも下流側の温度(すなわち、シリンダーの温度C2、C3、連通部の温度H,ダイの温度D)は、ポリアミドペレットの融点以上に調整されることが好ましく、ポリアミドペレットの融点以上で、かつ(ポリアミドペレットの融点+40℃)以下に調整されることがより好ましい。以上の温度設定とすることで、ポリアミドペレットに対する熱履歴を抑えつつ、供給部21Aでペレットに十分に余熱を与え、かつ圧縮部21B及び計量部21Cでペレットを溶融し、ダイから溶融したポリアミドを安定的に押し出しできるようになる。
【0054】
押出成形機10は、ホッパー22からスクリュー21の基端側に投入された供給原料を、スクリュー21によって移動させながら可塑化しさらには溶融しつつ混練し、混練した原料を、シリンダー先端にある排出口11Aから排出する。供給原料は、上記したポリアミドペレット単体からなるものであってもよいが、ポリアミドペレットにその他樹脂材料、添加剤等をブレンドしたものであってもよい。その他の樹脂材料は、ペレットの形態で投入してもよいし、粉体等その他の形態で投入してもよい。添加剤は、予めその他の樹脂原料からなるペレットに配合されているものであってもよいし、粉体等の形態でホッパー22から投入してもよい。
スクリュー21の排出口11Aから排出された供給原料は、アダプター13内の導入路35を介してダイに導入され、ダイから押出されて、所定の形状の成形体に成形される。
ダイは、公知のダイを使用することが可能であり、成形体の形状に応じて適宜選択される。具体的なダイの例としては、ストレートダイ、クロスヘッドダイ、Tダイ等が挙げられる。
また、ポリアミドペレットが、他の樹脂材料とともに、多層構造体等を成形する場合、押出成形機は、ポリアミドペレットを混練するためのシリンダーに加えて、他の樹脂材料を混練するためのシリンダーを備えてもよい。これら複数のシリンダーは、多層構造体を形成するために複数の流路を備えたダイ(例えば、多層ダイ)に接続され、そのダイにおいて各シリンダーから供給されたポリアミド、その他の樹脂材料により多層構造体が成形される。
【0055】
なお、ポリアミド成形体の製造方法は、上記の方法に限定されず、例えば、単軸スクリューを有するシリンダーを備える射出成形機を用いてもよい。この場合には、シリンダーの先端には、連通部(例えば、ノズル)を介して、ダイの代わりにキャビティが取り付けられる。射出成形機においては、シリンダー内部で混練された原料が連通部を介してキャビティに供給され、キャビティにおいて所望の形状のポリアミド成形体に加工される。その他の構成については、押出成形機において製造される場合と同様であるのでその説明は省略する。
【0056】
また、射出成形により得られるポリアミド成形体も、上記した各種の成形体とすることができ、例えば他の樹脂材料とともに多層構造体を構成してもよい。射出成形によって成形される多層構造体としては、代表的には、ポリアミドペレットから成形されるポリアミド層と、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂から成形されるポリエステル層とを積層した多層容器、多層ボトル又はこれらのプリフォームが挙げられ、例えば、内側からポリエステル層/ポリアミド層/ポリエステル層からなる3層構造の容器、ボトル、若しくはこれらのプリフォーム;内側からポリエステル層/ポリアミド層/ポリエステル層/ポリアミド層/ポリエステル層からなる5層構造の容器、ボトル、若しくはこれらのプリフォーム等が挙げられる。なお、射出成形により多層構造体を成形する場合、キャビティには通常シリンダーが複数接続される。
【0057】
以上のように、本発明では、スキン部分における球晶密度を大きくしたうえで、第1のポリアミドペレットの断面積を一定の大きさとしたため、例えば単軸スクリューを有するシリンダーによって高い圧縮力で可塑化し混練しても、ペレットが合着したり、スクリューに巻き付いたりすることが防止される。そのため、成形機の種類にかかわらず、高い加工安定性で成形体を成形することが可能になる。
【0058】
<第2のポリアミドペレット>
以上説明した第1のポリアミドペレットは、スキン部分に所定の結晶状態が見られるポリアミドペレットであったが、以下で説明する第2のポリアミドペレットは、スキン部分及びコア部分における針降下温度に特徴があるものである。なお、後述するように、第2のポリアミドペレットは、通常、非晶状態にあり、第2のポリアミドペレットを固相重合することで第1のポリアミドペレットを得ることができるものであるが、第1のポリアミドペレットの製造方法は、これに限定されるわけではない。
以下、第2のポリアミドペレットについて、詳細に説明する。
第2のポリアミドペレットは、ジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミドであって、ジアミン単位の50モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸単位の70モル%以上がアジピン酸に由来するポリアミドからなる。
第2のポリアミドペレットは、通常、非晶状態にあるものである。また、非晶状態にあるポリアミドは、例えば固相重合することで結晶化するものであり、固相重合することで結晶化度は通常25%よりも大きくなる。
【0059】
[ジアミン単位]
第2のポリアミドペレットにおいて、ポリアミド中のジアミン単位は、メタキシリレンジアミン由来の構成単位を50モル%以上含み、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%含有する。第2のポリアミドペレットでは、メタキシリレンジアミン由来の構成単位が50モル%未満であると、ポリアミドペレットから得られる成形品のバリア性能を高めにくくなり、また、強度や弾性率等の各種物性を所望のものにしにくくなる。
【0060】
ポリアミドにおいて、メタキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−又は1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;パラキシリレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
メタキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、これらの中では、パラキシリレンジアミンを使用することが好ましい。パラキシリレンジアミンを使用する場合、ポリアミド中のジアミン単位は、パラキシリレンジアミン由来の構成単位を50モル%以下含み、好ましくは35モル%以下含有し、さらに好ましくは10モル%以下含有する。
【0061】
[ジカルボン酸単位]
第2のポリアミドペレットにおけるポリアミド中のジカルボン酸単位は、アジピン酸由来の構成単位を70モル%以上含むものであり、好ましくは75〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含有する。アジピン酸由来の構成単位が70モル%未満であると、ポリアミドのバリア性能を高めにくくなり、また、強度や弾性率等の各種物性を所望のものにしにくくなる。
ポリアミドにおけるジカルボン酸単位は、アジピン酸由来の構成単位のみからなってもよいが、アジピン酸以外のジカルボン酸由来の構成単位を含有してもよい。
ポリアミドにおいて、アジピン酸以外のジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸等の炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、イソフタル酸は、重縮合反応を阻害することなく、バリア性能に優れるポリアミドを容易に得ることができるので好ましい。
第2のポリアミドペレットにおいて、ポリアミドとしては、全てのジアミン単位がメタキシリレンジアミン由来の構成単位からなり、全てのジカルボン酸単位がアジピン酸由来の構成単位からなるポリメタキシリレンアジパミドが最も好ましい。
【0062】
[針降下温度]
第2のポリアミドペレットは、ペレットのスキン部分の針降下温度が78〜92℃となり、さらに、ペレットのコア部分の針降下温度よりも高くその温度差が0.1〜2.5℃となるものである。
すなわち、第2のポリアミドペレットは、スキン部分とコア部分の針降下温度の温度差を小さくしつつ、スキン部分の針降下温度を、通常のナイロンMXD6より高くしたものである。これにより、第2のポリアミドペレットは、コア部分とスキン部分の熱的性質の差を小さくしつつ、スキン部分で保護されて酸素吸収が抑制されると推定され、色相の悪化を防ぐことができる。そのため、例えば、第2のポリアミドペレットを、減圧、加熱下で固相重合することで結晶化したポリアミドペレットや、加熱成形した成形品は、ペレット内部に吸着する酸素を低減することにより酸化劣化を防げると推定され、色相を良好に保つことが可能になる。
【0063】
なお、第2のポリアミドペレットにおいて、スキン部分とは、ペレットの軸方向に垂直な断面において、ペレット外周からペレット径の2%までの部分のことをいい、コア部分とはペレット中心からペレット半径の70%以内の部分をいう。なお、ペレット径とは、ペレットの上記断面において最も長い径を意味し、ペレット半径とはペレット径の1/2の長さを意味する。
なお、針降下温度は、
図2に示すように、支持体110に接着剤により固定したペレット112を、ミクロトームによって、軸方向(ペレット化前のストランドの流れ方向に等しい)に垂直に平滑に切り出し、露出したペレット112の断面の平滑面112Aに対して、サーマルプローブを用いて局所熱分析で測定して得たものである。針降下温度は、具体的には、
図3に示すように、試料112の平滑面112Aに接触したプローブ114が、試料112が加熱膨張することにより上昇し、軟化により下降に転じる温度をいう。なお、針降下温度の詳細な測定方法は後述するとおりである。
【0064】
第2のポリアミドペレットは、スキン部分の針降下温度が78℃未満であると、ペレットがスキン部分により十分に保護されず、第2のポリアミドペレットから得られる成形体、及び固相重合ペレットの色相を十分に良好にできないおそれがある。また、上記したポリアミドの組成において、針降下温度を92℃より高くすることは難しい。以上の観点から、スキン部分の針降下温度は、80〜91℃であることが好ましく、83〜90℃であることがより好ましい。
【0065】
針降下温度が78℃以上であるポリアミドペレットのスキン部分は、そのモルホロジーが従来のものとは異なり特異な状態となり、その特異なモルホロジーを有するスキン部分がペレットを保護すると推定される。具体的には、ミクロトームによりペレットを軸方向に垂直に切り出し、ペレット内部の断面を露出させて得たサンプルの露出断面を所定条件でイオンミリング処理すると、モルホロジーに基づき凹凸が形成されるが、スキン部分の凹凸は、コア部分の凹凸よりも密に形成される。このように特異なモルホロジーは結晶状態となっても維持され、例えば第2のポリアミドペレットを固相重合することで結晶化したペレット(すなわち、第1のポリアミドペレット)では、スキン部分の球晶密度が、コア部分の球晶密度よりも大きくなる。
また、スキン部分の上記特徴により、第2のポリアミドペレットの表面は削れにくくなる。そのため、ペレット移送中にペレット表面が削れて、配管に付着するスネークスキン(フロス)などが形成されにくくなり、製品へのスネークスキンに由来するコンタミを低減できるため、工業的に有利である。
【0066】
第2のポリアミドペレットにおいて、コア部分の針降下温度と、スキン部分の針降下温度の温度差は、上記のように0.1〜2.5℃となるものであるが、より好ましくは0.2〜2℃、更に好ましくは0.2〜1.5℃である。温度差が2.5℃より大きくなると、コア部分とスキン部分の熱的性質の差が大きくなり、成形品の物性等が不安定になるおそれがある。また、上記温度差が0.1℃未満のペレットは、製造することが困難である。
【0067】
[ペレットの染色度]
第2のポリアミドペレットは、0.1mol/Lヨウ素ヨウ化カリウム溶液により染色したペレットを観察したとき、G≦90(sRGB値)に染色されたペレットの割合(染色度)が50%未満となることが好ましい。上記したように、第2のポリアミドペレットのスキン部分は、モルホロジーが従来のものとは異なり、あたかも保護層のような状態となるものであるが、その保護効果は染色度により規定することが可能である。染色度は、小さいほどペレット表面の保護効果が大きいことを示す。
第2のポリアミドペレットの染色度が50%未満となることで、スキン部分が保護層として十分に機能し、ペレットの酸素吸収を適切に防ぐことが可能になる。そのため、第2のポリアミドペレットから得られる成形品、固相重合等により結晶化したペレット等の色相をより良好なものとすることが可能になる。また、これら観点から、染色度は、20%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。なお、染色度の具体的な測定方法は、後述するとおりである。
【0068】
ポリアミドの重合度の指標としてはいくつかあるが、相対粘度が一般的に使われるものである。第2のポリアミドペレットは、その相対粘度が、1.8〜2.4であることが好ましい。相対粘度がこのような範囲のポリアミドは、溶融重縮合法により容易に製造可能である。また、ポリアミドペレットをそのまま成形品の製造に使用しても、その機械強度及び成形性が比較的良好となる。これら観点から相対粘度は、1.9〜2.3がより好ましい。
【0069】
また、第2のポリアミドペレットは、以下の式(1)の条件を満たすことが好ましい。
−110μeq/g≦([COOH]−[NH
2])≦110μeq/g (1)
(なお、式(1)中、[COOH]はポリアミドの末端カルボキシル基濃度(μeq/g)、[NH
2]はポリアミドの末端アミノ基濃度(μeq/g)を表す。)
このように、末端カルボキシル基濃度と、末端アミノ基濃度の差が小さいと、耐熱性が良好となり、色劣化が生じにくくなる。また、色劣化をより抑えるためには、([COOH]−[NH
2])は、−80〜80μeq/gであることがより好ましい。
【0070】
第2のポリアミドペレットは、通常、非晶状態にある一方で、融点を測定すると融点ピークを有し、結晶性を有するものとなる。そのため、第2のポリアミドペレットを固相重合すると結晶状態となる。第2のポリアミドペレットは、融点ピークを1つのみ有するものであって、その融点は、特に限定されないが、好ましくは200〜270℃であり、より好ましくは210〜260℃である。
【0071】
第2のポリアミドペレットは、特に限定されないが、通常、そのストランド方向(軸方向)に沿う長さが1.0〜4.0mm程度であり、好ましくは2.0〜3.5mmである。また、ポリアミドペレットのペレット径は、通常1.0〜4.0mm程度となり、好ましくは2.0〜3.5mmである。ペレットの形状は、特に限定されないが、通常、後述するようにストランドを横断するように切断したものであり、円柱状、楕円柱状であることが好ましい。
【0072】
<第2のポリアミドペレットの製造方法>
次に、第2のポリアミドペレットの製造方法について説明する。第2のポリアミドペレットの製造方法は、第2のポリアミドペレットを得ることができる方法であれば特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
本発明の一実施形態における第2のポリアミドペレットの製造方法は、上記ジアミンとジカルボン酸を重縮合して得た溶融状態にあるポリアミドを、ストランド状に送り出す工程と、ストランド状に送り出されたポリアミドを水冷しつつ切断してペレット化し、その後、ペレット化したポリアミドを4秒以上さらに水冷する工程とを備えるものである。
従来、MXD6ナイロンの製造においては、溶融重縮合後の温度がそれほど高くない点、さらには装置的制約から、水冷時間は可能な限り短縮するのが一般的である。また、重縮合により得られたポリアミドは、ストランド状に抜き出して、ストランドのまま水冷する手法が知られている。
それに対して、本製造方法では、ポリアミドを、ペレット状に小片化した状態で水冷し、かつその水冷時間を上記のように4秒以上と長くすることで、ペレット表面を急激に低温にし、それにより、スキン部分のモルホロジーを上記のように特異なものとして、スキン部分における針降下温度を高くし、かつ染色度を低くしたものである。
また、ポリアミドペレットのコア部分は、スキン部分に比べると冷却速度が若干遅くなるものの急冷されることに変わりはなく、スキン部分とモルホルジーに多少の差がありつつも、針降下温度がスキン部分と近接した値になる。そのため、コア部分の針降下温度は、スキン部分の針降下温度よりも低くなるが、その温度差は上記のように小さくなる。
なお、本製造方法において、ジアミンとジカルボン酸の重縮合は、溶融重縮合法により行うことが好ましい。
【0073】
第2のポリアミドペレットは、より詳細には、固相重合を省略する以外は、第1のポリアミドペレットを製造する方法と同様の方法で製造することが可能である。すなわち、上記で詳細に説明した第1のポリアミドペレットの製造方法において、重縮合ポリアミドペレットを製造する工程まで実施することで、第2のポリアミドペレットを製造することができる。
【0074】
上記製造方法で製造された固相重合後の第1のポリアミドペレットは、スキン部分及びコア部分のモルホロジーが特異なものとなり、それゆえ、スキン部分及びコア部分の球晶密度が特異なものとなる。
同様に、第2のポリアミドペレットは、上記製造方法で製造されることで、固相重合前でも、スキン部分及びコア部分のモルホロジーは特異なものとなる。そのため、ジアミン単位の50モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸単位の70モル%以上がアジピン酸に由来するポリアミドからなる第2のポリアミドペレットにおいて、スキン及びコア部分の針降下温度が上記したように一定の範囲のものとなる。このような第2のポリアミドペレットは、固相重合し、又は成形加工すると、その固相重合後のポリアミドペレットや成形体の色相を良好にすることが可能である。
【0075】
本発明の第2のポリアミドペレットは、必要に応じて他の任意成分を混合したうえで、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、延伸、真空成形等の公知の成形方法により、所望の形状の成形体に成形することが可能である。なお、成形体の具体例としては、上述したように、第1のポリアミドペレットから成形される成形体と同様のものが挙げられる。
また、本発明の第2のポリアミドペレットは、さらに固相重合することで、高分子量化及び結晶化したペレットとしてもよい。高分子量化及び結晶化したペレットも、上記と同様に、各種成形方法で各種成形品に成形可能である。
【0076】
以上のように第2のポリアミドペレットは、スキン部分とコア部分の針降下温度の温度差を小さくしつつ、スキン部分における針降下温度を高くすることで、コア部分とスキン部分の熱的性質の差を小さくしつつ、スキン部分のモルホロジーを特異な形態とすることができる。そのため、ペレット表面でペレットが保護され、熱履歴を加えても色相が悪化しない、非晶状態のポリアミドペレットを提供する。したがって、本発明の第2のポリアミドペレットから得られる固相重合ペレットや成形品の色相を良好なものにすることができる。
【0077】
なお、本発明の第1および第2のポリアミドペレットそれぞれにおいて、ポリアミドは、ジアミン単位及びジカルボン酸単位以外にも、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、ω−エナントラクタム等のラクタム類、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、9−アミノノナン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸等のその他のモノマー成分由来の単位を、性能を損なわない範囲で含有していてもよい。ただし、ジアミン単位及びジカルボン酸単位は、ポリアミドにおいて主成分となり、これらの合計量は、特に限定されないが、通常、全構成単位の80モル%以上程度、好ましくは90モル%以上である。
また、本発明の第1および第2のポリアミドペレットそれぞれには、その性能を損なわない範囲で、ポリアミド以外の他の任意成分が適宜含有されてもよい。ただし、ポリアミドは、ペレットにおける主成分となり、その含有量は、ペレット全体に対して、特に限定されないが、通常、80質量%以上程度、好ましくは90質量%以上である。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、本実施例において各種測定は以下の方法により行った。また、以下に示す圧力は特に断りがない限り絶対圧力とする。
【0079】
(1)球晶密度
第1のポリアミドペレットを、ミクロトームにて軸方向に垂直に切り出し、ペレットの軸方向における中心の断面を平滑面として露出させたブロック状の試料を、10wt%リン・タングステン酸水溶液に入れて80℃、8時間染色した。その後、イオンミリング装置(商品名:IM4000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧2.5kV、放電電圧1.5kV、加工時間6min、照射角度30度、偏心量1.5mmの条件でイオンビームを平滑面に照射して試料表面にモルホロジー由来のダメージ模様を形成させ、走査型電子顕微鏡(商品名.SU8020、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて倍率1000倍で表面観察を行った。得られた画像から結晶由来のダメージ模様を判断し、スキン部分、コア部分それぞれの任意の50μm四方の球晶の数を数えることを3回繰り返し、スキン部分、コア部分それぞれの球晶の密度を測定した。なお、以上の測定においては、ダメージ模様により形成された筋によって外周が70%以上囲まれた部分を1つの球晶とカウントとした。
(2)[COOH]−[NH
2]
ポリアミドペレット0.3〜0.5gを精秤し、ベンジルアルコール30mlに窒素気流下、160〜180℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、窒素気流下で所定温度まで冷却し、撹拌しつつメタノールを10ml加え、0.01モル/l水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して末端カルボキシル基濃度([COOH])を測定した。なお、第1のポリアミドペレット(すなわち、結晶化したポリアミドペレット)については、上記所定温度は80℃とするとともに、第2のポリアミドペレット(すなわち、重縮合ポリアミドペレット)については、上記所定温度は50℃とした。
ポリアミドペレット0.3〜0.5gを精秤し、フェノール/エタノール混合溶液(混合容積比4:1)30mlに室温で撹拌溶解した。完全に溶解したあと撹拌しつつ0.01モル/l塩酸水溶液で中和滴定して、末端アミノ基濃度([NH
2])を求めた。測定したこれら末端カルボキシル基濃度及び末端アミノ基濃度から[COOH]−[NH
2]を算出した。
(3)相対粘度
試料0.2gを精秤し、96質量%硫酸20mlに20〜30℃で撹拌し、完全に溶解させ、溶液を調製した。その後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に当該溶液5mlを取り、25℃の恒温槽中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96質量%硫酸そのものの落下時間(t
0)も同様に測定した。t及びt
0から次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t
0
(4)融点(Tm)
示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC−60)を用い、昇温速度10℃/分で窒素気流下にDSC測定(示差走査熱量測定)を行い、融点(Tm)を求めた。(5)黄色度YI
日本電色工業(株)製ZE−2000を用いて、JIS K7373に基づいてペレットの状態で測定した。
(6)結晶化度
示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC−60)により、窒素雰囲気、昇温速度10℃/分の条件にて測定して、測定融解熱量ΔHとポリマーの完全結晶体の融解熱量ΔHmの比率から以下の式により算出した。
結晶化度 = ΔH/ΔHm ×100 [%]
【0080】
(7)針降下温度
測定装置としてアナシス社製のVESTA Nano−TA、プローブとしてプローブ先端径が30nmのものを用いて、サーマルプローブ式nano−TAにより針降下温度の測定を以下のようにして行った。
第2のポリアミドペレット(重縮合ポリアミドペレット)をエポキシブロックに固定し、ミクロトームにより切り出し、ペレットの軸方向における中心において、軸方向(ペレット化前のストランドの流れ方向と同じ)に対して垂直な断面を平滑面として露出させ測定試料とした。測定は、100℃/minで昇温し、試料の平滑面に接触させたプローブの変位が上昇から下降に向かう温度を針降下温度とした。コア部分の針降下温度の測定はペレットの平滑面の中心からペレット半径の70%以内の範囲で、スキン部分の針降下温度の測定はペレット外周からペレット径の2%以内の範囲で、任意に6点行い、その相加平均値をそれぞれの針降下温度とした。
(8)ペレットの染色度
第2のポリアミドペレット(重縮合ポリアミドペレット)5gを0.1mol/Lヨウ素ヨウ化カリウム溶液(ヨウ素:0.5g、ヨウ化カリウム:1.0g、水:100mlで調整)に浸し、23℃で12時間静置して、ポリアミドペレットを染色し、染色したポリアミドペレットを水で洗浄した後、室温(23℃)にて乾燥させた。得られた染色ペレットを白色板(XYZ表色系でX=90、Y=94、Z=111)の上に並べ、LED光源(CCS製 PTU-3024)の下,CCDカメラ(Sony製 XCL−U1000C)でペレットを撮影した。このとき、ペレットが光源を反射せず、さらには、白色板単体を撮影した場合のsRGB値が140≦R≦150、175≦G≦190、135≦B≦150となるようにカメラの感度を調節した。以上の条件で染色ペレットを撮影し、G≦90となるペレットの割合を求めた。
(9)第2のポリアミドペレットに対するイオンミリング観察条件
第2のポリアミドペレット(重縮合ポリアミドペレット)をミクロトームにて軸方向に垂直に切り出し、ペレット内部の断面を平滑面として露出させたブロック状の試料を、10wt%リン・タングステン酸水溶液に入れて80℃、8時間染色した。その後、イオンミリング装置(商品名:IM4000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧2.5kV、放電電圧1.5kV、加工時間6min、照射角度30度、偏心量1.5mmの条件でイオンビームを平滑面に照射して試料表面にモルホロジー由来のダメージ模様を形成させ、走査型電子顕微鏡(商品名.SU8020、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて倍率1000倍で表面観察を行った。
【0081】
実施例1
温調されたオイルが流通する分縮器、全縮器、窒素ガス導入管、反応槽全面をオイルが流通するジャケットで覆われ、ジアミン滴下用のタンク及びポンプを備えた500リットルステンレス製回分式反応装置を用いて、次のようにポリアミドを合成した。
アジピン酸(純度99.85wt%)150.0kg(1024.9mol)を仕込み、十分窒素置換した後、圧力0.1MPaで撹拌しながらアジピン酸を190℃まで加熱した。温度到達後、次亜リン酸ナトリウム一水和物8.6g(ポリアミド中のリン原子濃度として5ppm)を添加し、メタキシリレンジアミン(純度99.99wt%)138.8kg(1018.7mol)を、反応装置内の圧力を0.1MPaに維持しながら110分かけて滴下した。ジアミンの滴下終了時の温度が240℃になるように加熱を調整し、分縮器出口側蒸気温度を101〜104℃に制御し、留出する蒸気は全縮器を通して凝縮させ、系外に放出した。ジアミン滴下終了後、撹拌しながら圧力0.1MPaで20分間保持した後、さらに80kPaまで減圧してさらに20分間撹拌保持した。ジアミン滴下終了から減圧終了までに反応液温を256℃まで昇温した。
【0082】
反応終了後、撹拌を停止し、窒素で反応装置内を0.30MPa(ゲージ圧力)に加圧してポリマーを装置ボトムのストランドダイ(ダイ径:8mm)からダイバルブ開度60%にて、256℃でストランド状に抜き出した。抜き出したストランドは、水温25℃の水槽に着水させ、着水から0.8秒後に、水槽中でウォータースライダー型のペレタイザーによって切断してペレット化した。その後、ペレット化したポリアミドを、水槽中で引き続き冷却しながら水槽中を送り、切断から5.9秒後に離水させ、非晶状態のペレット化したポリアミドを得た。得られたペレットは長さ3mm、ペレット径3mm、冷却終了後のペレットの温度は40℃であった。また、ペレタイザーにおけるカッターの引き取り速度は200m/minであった。
なお、水槽から取り出されたペレットは、直ちに一時保管容器に保管されるが、その保管容器内の多数のペレットにシーズ熱電対を差込んで測定した温度を、水冷終了後のペレット温度とした。水冷終了後のペレット温度の測定方法は、以下の実施例、比較例でも同様である。
【0083】
得られた非晶状態のペレット化したポリアミド(重縮合ポリアミドペレット)は、結晶化度18%、YI=−3、([COOH]−[NH
2])=46μeq/g、相対粘度2.1、融点(Tm)239℃、スキン部分の針降下温度85.5℃、コア部分の針降下温度84.8℃であり、0.1mol/Lヨウ素ヨウ化カリウム溶液で染色した際にG≦90に染色されたペレットの割合(染色度)は1%であった。
また、得られた重縮合ポリアミドペレットに対してイオンミリングして観察を行うと、ペレット外周表面から約30μmの位置まで凹凸が密に形成されるとともに、その位置より中心側(コア部分)では凹凸が疎に形成されており、ポリアミドペレットのスキン部分のモルホロジーは特異な状態となっていた。
【0084】
次に、重縮合ポリアミドペレットを常温(23℃)空気中で6時間放置して空冷した後、固相重合を実施した。固相重合は、250Lのステンレス製タンブラーに非晶状態のペレット化したポリアミドを150kg投入し、原料投入後タンブラー内を1.0kPa以下に保持しつつ、3時間で130℃まで昇温し、更に3時間を要して195℃まで昇温した後、冷却することで行った。固相重合により得られたポリアミドペレット(第1のポリアミドペレット)の評価結果を表1に示す。
上記の球晶密度の測定方法に従って、ポリアミドペレットの薄片試料にイオンビームを照射した後の観察画像を
図4,5に示す。
図4はスキン部分の写真、
図5はコア部分の写真である。
【0085】
実施例2
温調されたオイルが流通する分縮器、全縮器、窒素ガス導入管、反応槽全面をオイルが流通するジャケットで覆われ、ジアミン滴下用のタンク及びポンプを備えた500リットルステンレス製回分式反応装置を用いて、次のようにポリアミドを合成した。
アジピン酸(純度99.85wt%)150.0kg(1024.9mol)を仕込み、十分窒素置換した後、圧力0.4MPaで撹拌しながらアジピン酸を190℃まで加熱した。温度到達後、次亜リン酸ナトリウム一水和物8.6gを添加し、メタキシリレンジアミン(純度99.99wt%)138.8kg(1018.8mol)を、反応装置内の圧力を0.4MPaに維持しながら110分かけて滴下した。ジアミンの滴下終了時の温度が240℃になるように加熱を調整し、分縮器出口側蒸気温度を101〜104℃に制御し、留出する蒸気は全縮器を通して凝縮させ、系外に放出した。ジアミン滴下終了後、撹拌しながら圧力0.4MPaで20分間保持した後、0.01MPa/分の速度で30分かけて常圧まで落圧し、さらに80kPaまで減圧してさらに20分間撹拌保持した。ジアミン滴下終了から減圧終了までに反応液温を256℃まで昇温した。
反応終了後、撹拌を停止し、窒素で反応装置内を0.30MPa(ゲージ圧力)に加圧してポリマーを装置ボトムのストランドダイ(ダイ径:8mm)からダイバルブ開度60%にて、256℃でストランド状に抜き出した。抜き出したストランドは、水温25℃の水槽に着水させ、着水から0.7秒後に、水槽中でウォータースライダー型のペレタイザーによって切断してペレット化した。その後、ペレット化したポリアミドは、水槽中で引き続き冷却しながら水槽中を送り、切断から5.0秒後に離水させ、非晶状態のペレット化したポリアミドを得た。得られたペレットは長さ3mm、ペレット径3mm、水冷終了後のペレットの温度は45℃であった。また、ペレタイザーにおけるカッターの引き取り速度は200m/minであった。
得られた非晶状態のペレット化したポリアミド(重縮合ポリアミドペレット)は、結晶化度19%、YI=−2、([COOH]−[NH
2])=49μeq/g、相対粘度2.1、融点(Tm)239℃、スキン部分の針降下始温度が86.3℃、コア部分の針降下温度が85.2℃であり、0.1mol/Lヨウ素ヨウ化カリウム溶液で染色した際にG≦90に染色されたペレットの割合(染色度)は15%であった。
また、得られた重縮合ポリアミドペレットに対してイオンミリング観察を行うと、ペレット表面から30μmの位置まで凹凸が密に形成されるとともに、その位置より中心側では凹凸が疎に形成されており、ポリアミドペレットのスキン部分のモルホロジーは特異な状態となっていた。
得られた重縮合ポリアミドペレットを常温(23℃)空気中で6時間放置して空冷した後、実施例1と同様の条件で固相重合を実施した。固相重合により得られたポリアミドペレットの評価結果を表1に示す。
【0086】
実施例3
温調されたオイルが流通する分縮器、全縮器、窒素ガス導入管、反応槽全面をオイルが流通するジャケットで覆われ、ジアミン滴下用のタンク及びポンプを備えた500リットルステンレス製回分式反応装置を用いて、次のようにポリアミドを合成した。
アジピン酸(純度99.85wt%)150.0kg(1024.9mol)を仕込み、十分窒素置換した後、圧力0.4MPaで撹拌しながらアジピン酸を190℃まで加熱した。温度到達後、次亜リン酸ナトリウム一水和物8.6gを添加し、メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミン混合物(モル比:80/20)(純度99.99wt%)138.8kg(1018.7mol)を、反応装置内の圧力を0.4MPaに維持しながら110分かけて滴下した。ジアミンの滴下終了時の温度が258℃になるように加熱を調整し、分縮器出口側蒸気温度を143〜147℃に制御し、留出する蒸気は全縮器を通して凝縮させ、系外に放出した。ジアミン滴下終了後、撹拌しながら圧力0.4MPaで20分間保持した後、0.01MPa/分の速度で30分かけて常圧まで落圧し、さらに80kPaまで減圧してさらに20分間撹拌保持した。ジアミン滴下終了から減圧終了までに反応液温を260℃まで昇温した。
反応終了後、撹拌を停止し、窒素で反応装置内を0.30MPa(ゲージ圧力)に加圧してポリマーを装置ボトムのストランドダイ(ダイ径:8mm)からダイバルブ開度60%にて、260℃でストランド状に抜き出した。抜き出したストランドは、水温25℃の水槽に着水させ、着水から0.8秒後に、水槽中でウォータースライダー型のペレタイザーによって切断してペレット化した。その後、ペレット化したポリアミドを、水槽中で引き続き冷却しながら水槽中を送り、切断から5.9秒後に離水させ、非晶状態のペレット化したポリアミドを得た。得られたペレットは長さ3mm、ペレット径3m、水冷終了後のペレットの温度は50℃であった。また、ペレタイザーにおけるカッターの引き取り速度は200m/minであった。
得られた非晶状態のペレット化したポリアミド(重縮合ポリアミドペレット)は、結晶化度20%、YI=−1、([COOH]−[NH
2])=43μeq/g、相対粘度2.1、融点(Tm)253℃、スキン部分の針降下温度87.2℃、コア部分の針降下温度85.8℃であり、0.1mol/Lヨウ素ヨウ化カリウム溶液で染色した際にG≦90に染色されたペレットの割合(染色度)は45%であった。
また、得られた重縮合ポリアミドペレットに対してイオンミリング観察を行うと、ペレット表面から30μmの位置まで凹凸が密に形成されるとともに、その位置より中心側では凹凸が疎に形成されており、ポリアミドペレットのスキン部分のモルホロジーは特異な状態となっていた。
得られた重縮合ポリアミドペレットを常温(23℃)空気中で6時間放置して冷却した後、実施例1と同様の条件で固相重合を実施した。固相重合により得られたポリアミドペレットの評価結果を表1に示す。
【0087】
比較例1
実施例1と同様の条件で反応させてポリアミドを合成した。
反応終了後、撹拌を停止し、窒素で反応装置内を0.30MPa(ゲージ圧力)に加圧してポリマーを装置ボトムのストランドダイ(ダイ径:8mm)からダイバルブ開度60%にて、256℃でストランド状に抜き出した。抜き出したストランドは、水温25℃の水槽に着水させ、着水から0.8秒後に、水槽中でウォータースライダー型のペレタイザーによって切断してペレット化した。その後、ペレット化したポリアミドを、水槽中で引き続き冷却しながら水槽中を送り、切断から2.8秒後に離水させ、非晶状態のペレット化したポリアミドを得た。得られたペレットは長さ3mm、ペレット径3mm、水冷終了後のペレットの温度は70℃であった。また、ペレタイザーにおけるカッターの引き取り速度は200m/minであった。
得られた非晶状態のペレット化したポリアミド(重縮合ポリアミドペレット)は結晶化度18%、YI=−2、([COOH]−[NH
2])=45μeq/g、相対粘度2.1、融点(Tm)239℃、スキン部分の針降下温度76.8℃、コア部分の針降下温度73.8℃であり、0.1mol/Lヨウ素ヨウ化カリウム溶液で染色した際にG≦90に染色されたペレットの割合(染色度)は60%であった。
また、得られた重縮合ポリアミドペレットに対してイオンミリング観察を行うと、ペレット表面付近では凹凸が僅かに密に形成されていたが、凹凸の密となる部分は表面から10μm程度であり、その他部分では凹凸が疎に形成されていた。
次に、重縮合ポリアミドペレットを常温(23℃)空気中で6時間放置して冷却した後、実施例1と同様の条件で固相重合を実施した。固相重合により得られたポリアミドペレットの評価結果を表1に示す。
上記の球晶密度の測定方法に従って、ポリアミドペレットの薄片試料にイオンビームを照射した後のスキン部分の観察画像を
図6に示す。
【0088】
比較例2
実施例3と同様の条件で反応させてポリアミドを合成した。
反応終了後、撹拌を停止し、窒素で反応装置内を0.30MPa(ゲージ圧力)に加圧してポリマーを装置ボトムのストランドダイ(ダイ径:8mm)からダイバルブ開度60%にて、260℃でストランド状に抜き出した。抜き出したストランドは、水温25℃の水槽に着水させ、着水から0.8秒後に、水槽中でウォータースライダー型のペレタイザーによって切断してペレット化した。その後、ペレット化したポリアミドを、水槽中で引き続き冷却しながら水槽中を送り、切断から2.8秒後に離水させ、非晶状態のペレット化したポリアミドを得た。得られたペレットは長さ3mm、ペレット径3mm、水冷終了後のペレットの温度は75℃であった。ペレタイザーにおけるカッターの引き取り速度は200m/minであった。
得られた非晶状態のペレット化したポリアミド(重縮合ポリアミドペレット)は結晶化度17%、YI=−1であり、([COOH]−[NH
2])=44μeq/g、相対粘度2.1、融点(Tm)253℃、スキン部分の針降下温度77.8℃、コア部分の針降下温度75.3℃であり、0.1mol/Lヨウ素ヨウ化カリウム溶液で染色した際にG≦90に染色されたペレットの割合(染色度)は70%であった。
また、得られた重縮合ポリアミドペレットに対してイオンミリング観察を行うと、ペレット表面付近では凹凸が僅かに密に形成されていたが、凹凸の密となる部分は表面から10μm程度であり、その他部分では凹凸が疎に形成されていた。
得られた非晶状態のペレット化したポリアミドを常温(23℃)空気中で6時間放置して冷却した後、実施例1と同様の条件で固相重合を実施した。固相重合により得られたポリアミドペレットの各種性状を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
実施例1〜3では、スキン部分の球晶密度が大きく、球晶が密に存在しているため、ペレットはスキン部分で保護され、得られるポリアミドペレットの黄色度YIを良好にすることができた。一方、比較例1、2では、イオンミリング後に観察すると、スキン部分及びコア部分のいずれにおいても、球晶に基づく模様が不明瞭であり、球晶密度を測定することが困難であった。したがって、スキン部分の球晶が明確に形成されず、また存在しても密に存在しないと考えられ、ペレットはスキン部分で十分に保護されなかった。そのため、得られたポリアミドペレットの黄色度YIは実施例に比べて悪化した。
また、実施例1〜3では、固相重合前の重縮合ポリアミドペレットのスキン部分とコア部分の針降下温度の差を小さくしつつ、スキン部分の針降下温度が高くなった。そのため、固相重合後のポリアミドペレットの黄色度YIも良好になった。一方で、比較例1、2では、ペレットのスキン部分の針降下温度が低かったため、固相重合後のペレットの黄色度YIは実施例に比べて悪くなった。
【0091】
実施例4
[二軸押出成形機によるポリアミド成形体の製造]
スクリュー径が30mmからなる二軸押出機を用意し、先端にTダイを取り付けた。この二軸押出機成形機において各温度C1/C2/C3/C4/H/Dを230℃/270℃/270℃/270℃/270℃/270℃に設定した。なお、C1〜C4は、シリンダーの温度を供給部側から順に示したものである。この二軸押出機のホッパーに実施例1の固相重合により得られたポリアミドペレットを投入し、スクリュー回転数100rpmでシリンダー内にてポリアミドペレットを可塑化混練して、Tダイにより厚み0.05mm、幅250mmのフィルム形状のポリアミド成形体を60分間押し出し、その際のモーター負荷振れ幅を測定することで加工性を評価した。
【0092】
[第1の単軸押出成形機によるポリアミド成形体の製造]
スクリュー径Dが25mmのフルフライトスクリューからなるスクリューを有し、L/Dが24、圧縮比(C/R)が3.0、L1/L2/L3が0.50/0.12/0.38で、先端にTダイを取り付けた単軸押出成形機(第1の単軸押出成形機)を用意し、この単軸押出成形機において各温度C1/C2/C3/H/Dを230℃/260℃/265℃/265℃/260℃に設定した。この単軸押出成形機のホッパーに、実施例1の固相重合により得られたポリアミドペレット(第1のポリアミドペレット)を投入し、スクリュー回転数50rpmでシリンダー内にてポリアミドペレットを可塑化混練して、Tダイにより厚み0.05mm、幅200mmのフィルム形状のポリアミド成形体を60分間押し出し、その際のモーター負荷振れ幅を測定することで加工性を評価した。
【0093】
[第2の単軸押出成形機によるポリアミド成形体の製造]
スクリュー径Dが40mmのフルフライトスクリューからなるスクリューを有し、L/Dが26、圧縮比(C/R)が3.2、L1/L2/L3が0.50/0.12/0.38で、先端にTダイを取り付けた単軸押出成形機(第2の単軸押出成形機)を用意し、この単軸押出成形機において各温度C1/C2/C3/H/Dを250℃/260℃/265℃/265℃/260℃に設定した。この単軸押出成形機のホッパーに、実施例1の固相重合により得られたポリアミドペレット(第1のポリアミドペレット)を投入し、スクリュー回転数60rpmでシリンダー内にてポリアミドペレットを可塑化混練して、Tダイにより厚み0.1mm、幅400mmのフィルム形状のポリアミド成形体を60分間押し出し、その際のモーター負荷振れ幅を測定することで加工性を評価した。
【0094】
実施例5
ポリアミドペレットを製造する際、ポリマー抜き出し時の窒素加圧を0.35MPa(ゲージ圧力)とし、ダイバルブ開度を70%とした以外は、実施例1と同様にポリアミドを製造した。得られた固相重合後のポリアミドペレットを用いて、実施例4と同様に、二軸押出成形機、第1の単軸押出成形機、及び第2の単軸押出成形機によってポリアミド成形体を製造し、その加工性を評価した。
【0095】
実施例6
ポリアミドペレットを製造する際、ポリマー抜き出し時の窒素加圧を0.40MPa(ゲージ圧力)とし、ダイバルブ開度を80%とした以外は、実施例1と同様にポリアミドを製造した。得られた固相重合後のポリアミドペレットを用いて、実施例4と同様に、二軸押出成形機、第1の単軸押出成形機、及び第2の単軸押出成形機によってポリアミド成形体を製造し、その加工性を評価した。
【0096】
実施例7
実施例2の固相重合により得られたポリアミドペレットを使用して、実施例4と同様に、二軸押出成形機、第1の単軸押出成形機、及び第2の単軸押出成形機によりポリアミド成形体を製造し、その加工性を評価した。
【0097】
実施例8
実施例3の固相重合により得られたポリアミドペレットを使用して、第1の単軸押出成形機の温度C1/C2/C3/H/Dを230℃/275℃/280℃/280℃/275℃に設定し、第2の単軸押出成形機の温度C1/C2/C3/H/Dを250℃/275℃/280℃/280℃/275℃に設定した以外は実施例4と同様に、二軸押出成形機、第1の単軸押出成形機、及び第2の単軸押出成形機を用いてポリアミド成形体を製造し、その加工性を評価した。
【0098】
実施例9
ポリアミドペレットを製造する際、ポリマー抜き出し時の窒素加圧を0.25MPa(ゲージ圧力)とし、ダイバルブ開度を30%とした以外は、実施例1と同様に、ポリアミドペレットを製造した。得られた固相重合後のポリアミドペレットを使用して、二軸押出成形機、第1の単軸押出成形機、及び第2の単軸押出成形機によりポリアミド成形体を製造し、その加工性を評価した。
【0099】
実施例10
ポリアミドペレットを製造する際、ポリマー抜き出し時の窒素加圧を0.50MPa(ゲージ圧力)とし、ダイバルブ開度を100%とした以外は、実施例1と同様に、ポリアミドペレットを製造した。得られた固相重合後のポリアミドペレットを使用して、二軸押出成形機、第1の単軸押出成形機、及び第2の単軸押出成形機によりポリアミド成形体を製造し、その加工性を評価した。
【0100】
比較例3
比較例1の固相重合により得られたポリアミドペレットを使用して、実施例4と同様に、二軸押出成形機、第1の単軸押出成形機、及び第2の単軸押出成形機によりポリアミド成形体を製造した。
【0101】
比較例4
比較例2の固相重合により得られたポリアミドペレットを使用して、実施例8と同様に、二軸押出成形機、第1の単軸押出成形機、及び第2の単軸押出成形機によりポリアミド成形体を製造した。
【0102】
【表2】
【0103】
以上の結果から明らかなように、実施例4〜10では、スキン部分の球晶密度が大きく、球晶が密に存在しているため、ペレットはスキン部分で保護され、得られるポリアミドペレットの黄色度YIを良好にすることができた。さらに、実施例4〜10では、二軸押出成形機により成形すると加工性は良好であった。
また、実施例4〜8では、スキン部分の球晶を密に存在させるとともに、ペレットの断面積を一定の大きさにしたポリアミドペレットを用いることで、単軸押出成形機により成形体を成形した場合も、低いモーター負荷で安定した押出成形を実現できた。なお、実施例4〜8では、サイズが大きい第2の単軸押出成形機を使用した場合、モーター負荷が大きくなったが、そのサイズの成形機では実用上問題ないレベルであった。
それに対して、実施例9では、スキン部分において球晶が密に存在するが、ペレット断面積が小さいため、単軸押出形成機を使用した場合、ペレットがスクリューに巻き付いて、押出成形ができなくなった。また、実施例10でも、スキン部分において球晶が密に存在するが、ペレットの断面積が大きいため、単軸押出形成機を使用した場合、モーター負荷が大きくなり、安定した押出成形を実現できなかった。
さらに、比較例3、4では、イオンミリングにより観察しても、スキン部分及びコア部分のいずれにおいても、球晶に基づく模様が十分に確認できず、球晶密度を測定できなかったが、このようなポリアミドペレットは、球晶が明確に形成されず、また存在しても密に存在しないものである。比較例3、4では、このように球晶が密に存在しないため、ペレットが十分に保護されず、単軸押出形成機を使用した場合、ペレット同士が合着して押出成形ができなくなった。さらに、比較例3、4では、得られるポリアミドペレットの黄色度YIを良好にすることができなかった。