特許 6702225 インクジェット記録装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6702225

(24)【登録日】2020年5月11日

(45)【発行日】2020年5月27日

(54)【発明の名称】インクジェット記録装置

(51)【国際特許分類】

   B41J 2/175 20060101AFI20200518BHJP

【ＦＩ】

   B41J2/175 503

   B41J2/175 121

   B41J2/175 501

【請求項の数】5

【全頁数】12

(21)【出願番号】特願2017-30782(P2017-30782)

(22)【出願日】2017年2月22日

(65)【公開番号】特開2018-134794(P2018-134794A)

(43)【公開日】2018年8月30日

【審査請求日】2018年11月22日

(73)【特許権者】

【識別番号】000006150

【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100167302

【弁理士】

【氏名又は名称】種村 一幸

(74)【代理人】

【識別番号】100135817

【弁理士】

【氏名又は名称】華山 浩伸

(72)【発明者】

【氏名】辻 菊之助

【審査官】 亀田 宏之

(56)【参考文献】

【文献】 特開平１１−２５４７０２（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開平１０−００６５２１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 米国特許出願公開第２００５／０２５３９０６（ＵＳ，Ａ１）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｂ４１Ｊ ２／０１−２１５

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

インクを収容する第１収容部と、
前記第１収容部より上側に設けられ、前記第１収容部から供給されるインクを収容する第２収容部と、
前記第２収容部から供給されるインクが吐出される吐出口を有する吐出部と、
前記第２収容部における前記吐出口より下側であって前記吐出部から前記第２収容部へのインクの逆流を防止可能な前記第２収容部内のインクの水面の下限位置として予め定められた特定位置よりも上側に設けられる排出口を有し、前記第１収容部及び前記第２収容部を接続する第１供給路と、
前記第１供給路における前記第２収容部から前記第１収容部へのインクの流れを規制可能な規制部と、
前記第２収容部において前記排出口より下側に設けられる供給口を有し、前記第２収容部及び前記吐出部を接続する第２供給路と、
を備え、
前記第２収容部は、前記第１収容部からインクを供給される際に、前記第２収容部内のインクの水面より上側の空間と前記第２収容部外とが通気路で接続されているインクジェット記録装置。

【請求項2】

前記第１収容部から前記吐出部へ至るインクの供給経路が一つである、
請求項１に記載のインクジェット記録装置。

【請求項3】

前記第１供給路を介して前記第１収容部から前記第２収容部にインクを供給可能な供給部と、
前記第２収容部における前記特定位置より上側の検出位置でインクの有無を検出する検出部と、
前記検出部によって前記検出位置におけるインクの不存在が検出された場合に前記供給部を駆動させる制御部と、
を備える請求項１又は２に記載のインクジェット記録装置。

【請求項4】

前記検出位置は、前記排出口より上側の位置である、
請求項３に記載のインクジェット記録装置。

【請求項5】

前記制御部は、前記供給部の駆動開始時から予め定められた特定時間が経過しても前記検出部によって前記検出位置におけるインクの存在が検出されない場合に、前記規制部及び前記供給部のいずれか一方又は両方の異常を報知する、
請求項３又は４に記載のインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、インクジェット記録装置に関する。

【背景技術】

【0002】

インクジェット方式で画像を形成するインクジェット記録装置では、インクコンテナなどの第１収容部から記録ヘッドなどの吐出部へのインクの供給経路上に、サブインクタンクなどの第２収容部が設けられることがある（例えば、特許文献１参照）。例えば、この種のインクジェット記録装置では、第２収容部内のインクの水面の位置が吐出部におけるインクの吐出口より下側の予め定められた位置になるように、第１収容部から第２収容部へのインクの供給量が制御される。これにより、吐出部内におけるインクの水圧が調整されて、吐出口からのインクの漏出、及び吐出部から第２収容部へのインクの逆流が防止される。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２００９−１０１６６８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ところで、第２収容部が第１収容部より上側に設けられる場合に、第１収容部から第２収容部へのインクの供給経路上に設けられる第２収容部から第１収容部へのインクの流れを規制可能な逆流防止弁などの規制部が故障して、第２収容部から第１収容部へインクが逆流することがある。この場合に、第２収容部内のインクの水面が低下して、吐出部から第２収容部へインクが逆流することがある。

【0005】

本発明の目的は、吐出部から第２収容部へのインクの逆流を防止可能なインクジェット記録装置を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明の一の局面に係るインクジェット記録装置は、第１収容部と、第２収容部と、吐出部と、第１供給路と、規制部と、第２供給路とを備える。前記第１収容部は、インクを収容する。前記第２収容部は、前記第１収容部より上側に設けられ、前記第１収容部から供給されるインクを収容する。前記吐出部は、前記第２収容部から供給されるインクが吐出される吐出口を有する。前記第１供給路は、前記第２収容部における前記吐出口より下側であって前記吐出部から前記第２収容部へのインクの逆流を防止可能な前記第２収容部内のインクの水面の下限位置として予め定められた特定位置よりも上側に設けられる排出口を有し、前記第１収容部及び前記第２収容部を接続する。前記規制部は、前記第１供給路における前記第２収容部から前記第１収容部へのインクの流れを規制可能である。前記第２供給路は、前記第２収容部において前記排出口より下側に設けられる供給口を有し、前記第２収容部及び前記吐出部を接続する。

【発明の効果】

【0007】

本発明によれば、吐出部から第２収容部へのインクの逆流を防止可能なインクジェット記録装置が実現される。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】図１は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す図である。

【図2】図２は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の記録部の構成を示す図である。

【図3】図３は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置のインク供給部の構成を示す図である。

【図4】図４は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置で実行される供給制御処理の一例を示すフローチャートである。

【発明を実施するための形態】

【0009】

以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。

【0010】

［インクジェット記録装置１０の概略構成］
まず、図１〜図３を参照しつつ、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置１０の概略構成について説明する。ここで、図１はインクジェット記録装置１０の構成を示す断面模式図である。また、図２は記録部３の構成を示す平面図である。また、図３はインク供給部７の構成を示す模式図である。なお、説明の便宜上、インクジェット記録装置１０が使用可能な設置状態（図１に示される状態）で鉛直方向を上下方向Ｄ３と定義する。

【0011】

インクジェット記録装置１０は、インクジェット方式で画像を形成可能なプリンターである。なお、本発明は、インクジェット方式で画像を形成可能なファクシミリ装置、コピー機、及び複合機などのインクジェット記録装置に適用されてもよい。

【0012】

図１及び図３に示されるように、インクジェット記録装置１０は、給紙カセット１、給紙部２、記録部３、インクコンテナ部４、搬送ユニット５、排紙部６、インク供給部７、及び制御部８を備える。

【0013】

給紙カセット１には、インクジェット記録装置１０において印刷対象となるシートが収容される。例えば、給紙カセット１に収容されるシートは、紙、コート紙、ハガキ、封筒、及びＯＨＰシートなどのシート材料である。

【0014】

給紙部２は、給紙カセット１に収容されているシートを記録部３に供給する。図１に示されるように、給紙部２は、ピックアップローラー２１、搬送ローラー２２、搬送路２３、レジストローラー２４、手差しトレイ２５、及び給紙ローラー２６を備える。ピックアップローラー２１は、給紙カセット１からシートを１枚ずつ取り出す。搬送ローラー２２は、ピックアップローラー２１によって取り出されたシートをレジストローラー２４まで搬送する。搬送路２３は、給紙カセット１及び手差しトレイ２５から記録部３へ至るシートの移動通路である。レジストローラー２４は、所定の搬送タイミング（画像の書き出しタイミング）でシートを記録部３に搬送する。手差しトレイ２５及び給紙ローラー２６は、外部からシートを供給するために用いられる。

【0015】

記録部３は，給紙部２から供給されるシートに画像を記録する。図１に示されるように、記録部３は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に対応するラインヘッド３１、３２、３３、３４と、これらを支持するヘッドフレーム３５とを備える。ヘッドフレーム３５はインクジェット記録装置１０の筐体１１に支持されている。なお、記録部３の備えるラインヘッドの数は、１つであってもよく、４を除く複数であってもよい。

【0016】

ラインヘッド３１〜３４は、所謂ラインヘッド型の記録ヘッドである。即ち、インクジェット記録装置１０は、所謂ラインヘッド型のインクジェット記録装置である。ラインヘッド３１〜３４は、シートの搬送方向Ｄ１に垂直な幅方向Ｄ２（図２参照）に長尺である。具体的に、ラインヘッド３１〜３４各々は、幅方向Ｄ２において、給紙カセット１に収容可能なシートのうち最大サイズのシートの幅に対応する長さを有する。ラインヘッド３１〜３４各々は、シートの搬送方向Ｄ１に沿って所定間隔を隔てられて、ヘッドフレーム３５に固定されている。

【0017】

図２に示されるように、ラインヘッド３１〜３４各々は、複数の記録ヘッド３０を有する。記録ヘッド３０は、搬送ユニット５によって搬送されるシートへ向けてインクを吐出する。具体的に、記録ヘッド３０における搬送ユニット５によって搬送されるシートとの対向面３０Ａ（図１参照）には、吐出口３０１Ａ（図３参照）を有するインク吐出用の多数のノズル３０１が設けられている。また、記録ヘッド３０は、ノズル３０１各々に対応する加圧室３０２（図３参照）、前記加圧室各々に対応して設けられる圧電素子（不図示）、及び前記加圧室各々と連通する連通流路（不図示）を備える。前記圧電素子は、電圧の印加に応じてノズル３０１からインクを吐出させる。具体的に、前記圧電素子は、加圧室３０２に収容されているインクを加圧することで、ノズル３０１からインクを吐出させる。ここに、記録ヘッド３０が、本発明における吐出部の一例である。

【0018】

本実施形態では、ラインヘッド３１は、幅方向Ｄ２に沿って３つの記録ヘッド３０が千鳥状に配列されている。また、他のラインヘッド３２〜３４各々も、ラインヘッド３１と同様に、幅方向Ｄ２に沿って３つの記録ヘッド３０が千鳥状に配列されている。なお、図２には、記録部３を図１の上側から見た状態が示されている。

【0019】

インクコンテナ部４は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に対応するインクが収容されたインクコンテナ４１、４２、４３、４４を備える。インクコンテナ４１〜４４は、インク供給部７を介して同色のラインヘッド３１〜３４各々に接続されている。ここに、インクコンテナ４１〜４４の各々が、本発明における第１収容部の一例である。

【0020】

搬送ユニット５は、ラインヘッド３１〜３４の下方に配置されている。搬送ユニット５は、シートを記録ヘッド３０の対向面３０Ａに対向させつつ搬送する。図１に示されるように、搬送ユニット５は、シートが載置される用紙搬送ベルト５１、用紙搬送ベルト５１を張架する張架ローラー５２〜５４、及びこれらを支持する搬送フレーム５５を備える。なお、用紙搬送ベルト５１と対向面３０Ａとの間隙は、例えば、画像記録時のシートの表面と対向面３０Ａとの間隙が１ｍｍとなるように調整される。

【0021】

張架ローラー５２は、不図示のモーターの回転軸に連結されている。張架ローラー５２が、前記モーターの駆動により反時計回りに回転されると、用紙搬送ベルト５１がシートを搬送方向Ｄ１へ搬送可能な方向に回動する。これにより、給紙部２から供給されたシートは、用紙搬送ベルト５１の回動によって記録部３を経て排紙部６へ向けて搬送される。なお、搬送ユニット５には、シートを用紙搬送ベルト５１に吸着させるべく、用紙搬送ベルト５１に形成された多数の貫通孔から吸気を行う吸引ユニット（不図示）なども設けられている。また、張架ローラー５３の対向位置には、シートを用紙搬送ベルト５１に押しつけて搬送させるための圧ローラー５６が設けられている。

【0022】

排紙部６は、記録部３よりも搬送方向Ｄ１の下流側に設けられている。図１に示されるように、排紙部６は、乾燥装置６１、搬送路６２、排紙ローラー６３、及び排紙トレイ６４を備える。乾燥装置６１は、例えばシートに送風することにより、シートに付着したインクを乾燥させる。そして、乾燥装置６１によって乾燥されたシートは、搬送路６２に送り出されて、排紙ローラー６３によって排紙トレイ６４に排出される。

【0023】

制御部８は、不図示のＣＰＵ、ＲＯＭ、及びＲＡＭなどの制御機器を備える。前記ＣＰＵは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ＲＯＭは、前記ＣＰＵに各種の処理を実行させるための制御プログラムなどの情報が予め記憶される不揮発性の記憶装置である。前記ＲＯＭには、前記ＣＰＵに後述の供給制御処理（図４のフローチャート参照）を実行させるための供給制御プログラムが予め記憶されている。前記ＲＡＭは、前記ＣＰＵが実行する各種の処理の一時記憶メモリー（作業領域）として使用される揮発性の記憶装置である。制御部８では、前記ＣＰＵにより前記ＲＯＭに予め記憶された各種の制御プログラムが実行される。これにより、インクジェット記録装置１０が制御部８により統括的に制御される。

【0024】

インク供給部７は、インクコンテナ部４に収容されているインクを記録部３のラインヘッド３１〜３４各々に供給する。図３に示されるように、インク供給部７は、第１供給路７１、供給部７２、サブインクタンク７３、及び第２供給路７４を備える。インク供給部７は、インクコンテナ４１〜４４の各々に対応して設けられる。なお、図３には、インクコンテナ４１に対応するインク供給部７が示されている。

【0025】

第１供給路７１は、インクコンテナ４１及びサブインクタンク７３を接続するインクの移動通路である。図３に示されるように、第１供給路７１は、第１チューブ７１１、及び第２チューブ７１２を有する。第１チューブ７１１は、インクコンテナ４１及び供給部７２を接続する。第２チューブ７１２は、供給部７２及びサブインクタンク７３を接続する。例えば、第１チューブ７１１、及び第２チューブ７１２は樹脂製である。

【0026】

供給部７２は、第１供給路７１を介してインクコンテナ４１からサブインクタンク７３にインクを供給可能である。例えば、供給部７２は、図３に示されるように、シリンダー７２１、ピストン７２２、第１規制部７２３、及び第２規制部７２４を有する。第１規制部７２３は、第１チューブ７１１におけるシリンダー７２１からインクコンテナ４１へのインクの流れを規制可能である。第２規制部７２４は、第２チューブ７１２におけるサブインクタンク７３からシリンダー７２１へのインクの流れを規制可能である。例えば、第１規制部７２３、及び第２規制部７２４は、インクの流れる方向を、インクコンテナ４１からサブインクタンク７３へ向かう供給方向Ｄ４（図３参照）に規制可能な逆流防止弁である。供給部７２では、ピストン７２２がシリンダー７２１内を往復動されることで、インクコンテナ４１に収容されているインクがシリンダー７２１内に汲み上げられて、サブインクタンク７３に供給される。なお、供給部７２は、回転部材の回転によってインクに推進力を付与するものであってもよい。また、第１規制部７２３、及び第２規制部７２４は、制御部８によって開閉動作が制御される電磁弁であってもよい。また、第１規制部７２３、及び第２規制部７２４は、供給部７２とは別に設けられる構成要素であってもよい。ここで、第１規制部７２３、及び第２規制部７２４が、本発明における規制部の一例である。

【0027】

サブインクタンク７３は、インクコンテナ４１から供給部７２によって供給されるインクを収容する。サブインクタンク７３に収容されるインクは、記録ヘッド３０に供給される。図３に示されるように、サブインクタンク７３は、インクコンテナ４１より上下方向Ｄ３における上側に設けられる。この場合、インクコンテナ４１に収容されるインクの水面Ｆ１（図３参照）及びサブインクタンク７３に収容されるインクの水面Ｆ２（図３参照）の高低差により、第１供給路７１内のインクには供給方向Ｄ４とは逆方向に流れようとする力が働く。しかし、第１規制部７２３、及び第２規制部７２４により、第１供給路７１内のインクの流れる方向が供給方向Ｄ４に規制されるため、サブインクタンク７３からインクコンテナ４１へのインクの逆流は防止される。ここに、サブインクタンク７３が、本発明における第２収容部の一例である。

【0028】

図３に示されるように、サブインクタンク７３は、通気路７３１、及び検出部７３２を有する。通気路７３１は、サブインクタンク７３内のインクの水面Ｆ２より上側の空間をサブインクタンク７３外に接続する。例えば、通気路７３１は、図３に示されるように、サブインクタンク７３の上部に形成される。通気路７３１により、サブインクタンク７３内におけるインクの収容量の増減に関わらず、水面Ｆ２より上側の空間の気圧が一定（大気圧）に維持される。検出部７３２は、サブインクタンク７３における予め定められた検出位置Ｐ１（図３参照）でインクの有無を検出する。例えば、検出部７３２は、インクの水面Ｆ２を検出可能な液面センサーである。検出部７３２は、検出位置Ｐ１におけるインクの有無に応じた電気信号を制御部８に出力する。

【0029】

第２供給路７４は、サブインクタンク７３及び記録ヘッド３０を接続するインクの移動通路である。図３に示されるように、第２供給路７４は、第３チューブ７４１を有する。第３チューブ７４１は、サブインクタンク７３及び記録ヘッド３０を接続する。例えば、第３チューブ７４１は樹脂製である。

【0030】

インクジェット記録装置１０では、図３に示されるように、記録ヘッド３０における吐出口３０１Ａが検出位置Ｐ１より上下方向Ｄ３の上側に配置される。また、インクジェット記録装置１０では、吐出口３０１Ａと検出位置Ｐ１との間において、上下方向Ｄ３に予め定められた距離Ｌ１が設けられる。ここで、距離Ｌ１は、記録ヘッド３０内におけるインクの水圧を、吐出口３０１Ａからのインクの漏出、及び記録ヘッド３０からサブインクタンク７３へのインクの逆流を防止可能な水圧（負圧）に設定可能な距離である。例えば、距離Ｌ１は、吐出口３０１Ａにおけるインクの表面張力、記録ヘッド３０の内部で発生する毛細管現象、第２供給路７４及び記録ヘッド３０内における流路抵抗等に基づいて設定される。

【0031】

そして、インクジェット記録装置１０では、サブインクタンク７３内のインクの水面Ｆ２の位置が、検出位置Ｐ１から予め定められた特定範囲内に収まるように、インクコンテナ４１からサブインクタンク７３へのインクの供給量が制御される。

【0032】

具体的に、制御部８は、検出部７３２によって検出位置Ｐ１におけるインクの不存在が検出された場合に、供給部７２を駆動させる。例えば、制御部８は、供給部７２の駆動開始時から前記特定範囲に対応する予め定められた特定時間が経過するまでの間、供給部７２を駆動させる。

【0033】

これにより、サブインクタンク７３におけるインクの水面Ｆ２の位置は、検出位置Ｐ１から前記特定範囲内に維持される。そのため、サブインクタンク７３におけるインクの水面Ｆ２と吐出口３０１Ａとの間の上下方向Ｄ３における距離Ｘ（図３参照）が、距離Ｌ１から前記特定範囲内に維持される。従って、印刷によるインクの消費に関わらず、記録ヘッド３０内におけるインクの水圧が、吐出口３０１Ａからのインクの漏出、及び記録ヘッド３０からサブインクタンク７３へのインクの逆流を防止可能な水圧に調整される。また、記録ヘッド３０内におけるインクの水圧が一定範囲内の負圧に調整されることで、ノズル３０１からのインクの吐出に応じて、吐出されたインクの量と同量のインクがサブインクタンク７３から記録ヘッド３０に供給される。

【0034】

ところで、サブインクタンク７３がインクコンテナ４１より上側に設けられる場合に、第１規制部７２３、及び第２規制部７２４が故障して、サブインクタンク７３からインクコンテナ４１へインクが逆流することがある。この場合に、サブインクタンク７３のインクの水面Ｆ２が低下して、インクの水面Ｆ２と吐出口３０１Ａとの間の距離Ｘが広がり、記録ヘッド３０からサブインクタンク７３へインクが逆流することがある。

【0035】

これに対し、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置１０では、以下に説明するように、記録ヘッド３０からサブインクタンク７３へのインクの逆流を防止することが可能である。

【0036】

具体的に、インクジェット記録装置１０では、サブインクタンク７３において、インクコンテナ４１から供給されるインクが排出される第２チューブ７１２の端部７１２Ａと、記録ヘッド３０へ供給されるインクが吸い上げられる第３チューブ７４１の端部７４１Ａとが、予め定められた位置関係となるように配置されている。ここに、第２チューブ７１２の端部７１２Ａが、本発明における排出口の一例である。また、第３チューブ７４１の端部７４１Ａが、本発明における供給口の一例である。

【0037】

より具体的に、インクジェット記録装置１０では、記録ヘッド３０からサブインクタンク７３へのインクの逆流を防止可能な距離Ｘの最大値である距離Ｌ２（図３参照）が予め取得されている。換言すると、インクジェット記録装置１０では、距離Ｘが距離Ｌ２を超えた場合に、記録ヘッド３０からサブインクタンク７３へのインクの逆流が開始する。なお、距離Ｌ２は、吐出口３０１Ａにおけるインクの表面張力、記録ヘッド３０の内部で発生する毛細管現象、第２供給路７４及び記録ヘッド３０内における流路抵抗等に基づいて算出されてもよく、インクジェット記録装置１０を用いて実測されてもよい。

【0038】

そして、インクジェット記録装置１０では、第２チューブ７１２の端部７１２Ａが、サブインクタンク７３において、吐出口３０１Ａから上下方向Ｄ３の下方へ距離Ｌ２だけ離れた特定位置Ｐ２（図３参照）よりも上側に設けられている。そのため、インクジェット記録装置１０では、サブインクタンク７３からインクコンテナ４１へインクが逆流したとしても、インクの水面Ｆ２の低下が第２チューブ７１２の端部７１２Ａの位置までに制限されて、インクの水面Ｆ２が特定位置Ｐ２まで低下することはない。これにより、インクの水面Ｆ２が特定位置Ｐ２より下方へ低下することによる記録ヘッド３０からサブインクタンク７３へのインクの逆流が防止される。

【0039】

また、インクジェット記録装置１０では、第３チューブ７４１の端部７４１Ａが、サブインクタンク７３において、第２チューブ７１２の端部７１２Ａより下側の位置に設けられている。そのため、インクジェット記録装置１０では、サブインクタンク７３からインクコンテナ４１へインクが逆流したとしても、インクの水面Ｆ２が第３チューブ７４１の端部７４１Ａまで低下することはない。これにより、第３チューブ７４１の端部７４１Ａがインクの水面Ｆ２から離れることによる記録ヘッド３０からサブインクタンク７３へのインクの逆流が防止される。

【0040】

ここで、インクジェット記録装置１０では、図３に示されるように、検出位置Ｐ１が、特定位置Ｐ２より上側であって、且つ第２チューブ７１２の端部７１２Ａより上側の位置に設定されている。即ち、第２チューブ７１２の端部７１２Ａは、検出位置Ｐ１よりも下側に設けられている。これにより、第２チューブ７１２の端部７１２Ａが検出位置Ｐ１よりも上側に設けられる構成と比較して、端部７１２Ａから排出されるインクが水面Ｆ２に落ちる際の衝撃により水面Ｆ２が波打って、検出部７３２の検出精度が低下することがない。なお、第２チューブ７１２の端部７１２Ａは、検出位置Ｐ１よりも上側に設けられてもよい。例えば、第２チューブ７１２の端部７１２Ａは、サブインクタンク７３内のインクの収容空間における上面に設けられてもよい。

【0041】

また、制御部８は、供給部７２の駆動開始時から前記特定時間が経過しても検出部７３２によって検出位置Ｐ１におけるインクの存在が検出されない場合に、供給部７２の異常を報知する。例えば、制御部８は、不図示の操作表示部に供給部７２が異常である旨のメッセージを表示させる。これにより、ユーザーによるメンテナンスの依頼等の対処行動を促すことが可能である。なお、第１規制部７２３、及び第２規制部７２４が、供給部７２とは別に設けられる構成要素である場合に、制御部８は、第１規制部７２３、及び第２規制部７２４、並びに供給部７２のいずれか一方の異常を報知してもよく、両方の異常を報知してもよい。

【0042】

［供給制御処理］
以下、図４を参照しつつ、インクジェット記録装置１０において制御部８により実行される供給制御処理の手順の一例について説明する。ここで、ステップＳ１１、Ｓ１２・・・は、制御部８により実行される処理手順（ステップ）の番号を表している。なお、制御部８は、インクジェット記録装置１０の電源投入時、又は一部の機能が停止するスリープ状態から通常動作状態への復帰時に、前記供給制御処理を実行する。また、制御部８は、個々のインク供給部７ごとに前記供給制御処理を実行する。以下、インクコンテナ４１に対応するインク供給部７について実行される前記供給制御処理について説明する。

【0043】

＜ステップＳ１１＞
まず、ステップＳ１１において、制御部８は、検出部７３２によって検出位置Ｐ１におけるインクの不存在が検出されたか否かを判断する。

【0044】

ここで、制御部８は、検出位置Ｐ１におけるインクの不存在が検出されたと判断すると（Ｓ１１のＹｅｓ側）、処理をステップＳ１２に移行させる。また、検出位置Ｐ１におけるインクの不存在が検出されていなければ（Ｓ１１のＮｏ側）、制御部８は、ステップＳ１１で検出位置Ｐ１におけるインクの不存在の検出を待ち受ける。

【0045】

＜ステップＳ１２＞
ステップＳ１２において、制御部８は、供給部７２の駆動を開始させる。

【0046】

＜ステップＳ１３＞
ステップＳ１３において、制御部８は、ステップＳ１２における供給部７２の駆動開始時から前記特定時間が経過したか否かを判断する。

【0047】

ここで、制御部８は、供給部７２の駆動開始時から前記特定時間が経過したと判断すると（Ｓ１３のＹｅｓ側）、処理をステップＳ１３１に移行させる。また、供給部７２の駆動開始時から前記特定時間が経過していなければ（Ｓ１３のＮｏ側）、制御部８は、処理をステップＳ１４に移行させる。

【0048】

＜ステップＳ１４＞
ステップＳ１４において、制御部８は、検出部７３２によって検出位置Ｐ１におけるインクの存在が検出されたか否かを判断する。

【0049】

ここで、制御部８は、検出位置Ｐ１におけるインクの存在が検出されたと判断すると（Ｓ１４のＹｅｓ側）、処理をステップＳ１５に移行させる。また、検出位置Ｐ１におけるインクの存在が検出されていなければ（Ｓ１４のＮｏ側）、制御部８は、処理をステップＳ１３に移行させて、前記特定時間が経過するまでの間、検出位置Ｐ１におけるインクの存在の検出を待ち受ける。

【0050】

＜ステップＳ１５＞
ステップＳ１５において、制御部８は、供給部７２の駆動を停止させる。そして、制御部８は、処理をステップＳ１１に移行させて、検出部７３２によって検出位置Ｐ１におけるインクの不存在が検出される度に、ステップＳ１２〜ステップＳ１５の処理を実行する。

【0051】

＜ステップＳ１３１＞
一方、ステップＳ１３において供給部７２の駆動開始時から前記特定時間が経過したと判断された場合、制御部８は、ステップＳ１３１の処理を実行する。ステップＳ１３１において、制御部８は、供給部７２の駆動を停止させる。

【0052】

＜ステップＳ１３２＞
ステップＳ１３２において、制御部８は、供給部７２の異常を報知する。例えば、制御部８は、前記操作表示部に供給部７２が異常である旨の前記メッセージを表示させる。なお、前記供給制御処理において、ステップＳ１３２の処理は省略されてもよい。

【0053】

このように、インクジェット記録装置１０では、第２チューブ７１２の端部７１２Ａが、特定位置Ｐ２よりも上側に設けられている。また、第３チューブ７４１の端部７４１Ａが、第２チューブ７１２の端部７１２Ａより下側に設けられている。これにより、第１規制部７２３、及び第２規制部７２４が故障した場合であっても、記録ヘッド３０からサブインクタンク７３へのインクの逆流を防止することが可能である。

【符号の説明】

【0054】

１ 給紙カセット
２ 給紙部
３ 記録部
４ インクコンテナ部
５ 搬送ユニット
６ 排紙部
７ インク供給部
８ 制御部
１０ インクジェット記録装置
３０ 記録ヘッド
４１〜４４ インクコンテナ
７１ 第１供給路
７２ 供給部
７３ サブインクタンク
７４ 第２供給路
３０１ ノズル
３０２ 加圧室
７１１ 第１チューブ
７１２ 第２チューブ
７２３ 第１規制部
７２４ 第２規制部
７３１ 通気路
７３２ 検出部
７４１ 第３チューブ

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】