特許第6702283号(P6702283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702283
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】受光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/108 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
   H01L31/10 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-164143(P2017-164143)
(22)【出願日】2017年8月29日
(65)【公開番号】特開2019-41079(P2019-41079A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樹神 雅人
(72)【発明者】
【氏名】勝野 高志
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−124262(JP,A)
【文献】 特開2006−126369(JP,A)
【文献】 特表2008−524569(JP,A)
【文献】 特開2000−298218(JP,A)
【文献】 特開2016−188956(JP,A)
【文献】 特開2014−183194(JP,A)
【文献】 特開2001−189488(JP,A)
【文献】 特表2007−512712(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0202005(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/08−31/119
G02B 6/12−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子であって、
半導体基板に形成されている第1導電型の主導波路と、
外部から前記主導波路に光を導く副導波路と、
光を反射する金属で作られており、前記主導波路の長手方向の両端の夫々にオーミック接合されている第1電極と、
前記主導波路の途中にショットキー接合されている第2電極と、
を備えており、
前記主導波路と前記第1電極と前記第2電極が半導体素子を構成しており、
前記主導波路の長さが(nL)/2(ただし、Lは受光対象の光の波長、nは自然数)の長さを有しており、
前記第2電極は、前記主導波路の一端から{L/4+(mL)/2}(ただし、mは、0≦m<nの整数)の距離の位置に配置されている、受光素子。
【請求項2】
前記主導波路の両端の前記第1電極の夫々と接合されている部分に、不純物濃度が前記主導波路の中央部分よりも高くなっている高濃度第1導電型半導体領域が形成されており、
前記第1電極と前記第2電極と前記主導波路がダイオードを形成している、請求項1に記載の受光素子。
【請求項3】
前記主導波路の両端の前記第1電極の夫々と接合されている部分に、第2導電型半導体領域が形成されているとともに、一方の前記第2導電型半導体領域と前記第1導電型の領域との境界に、不純物濃度が前記第2導電型半導体領域よりも低い低濃度第2導電型半導体領域が形成されており、
前記主導波路の両端の前記第1電極と前記第2電極と前記主導波路がトランジスタを形成している、請求項に記載の受光素子。
【請求項4】
前記副導波路は、前記主導波路に鋭角的に連結している、請求項1から3のいずれか1項に記載の受光素子。
【請求項5】
前記副導波路は、前記主導波路と近接かつ離間しており、エバネッセント光により前記主導波路に光を入射させる、請求項1から3のいずれか1項に記載の受光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体基板で作られている受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板で作られている受光素子が知られている。特許文献1、2にそのような受光素子が例示されている。特許文献1、2に例示される受光素子は、半導体と金属とのショットキー接合部分の光起電力効果を利用している。
【0003】
ショットキー接合を利用した受光素子の感度は、ショットキー接合部分が受ける光量が大きいほどよい。特許文献1の受光素子では、ショットキー接合部の裏側(光が入射する側の反対側)に光反射膜を設け、ショットキー接合部に入射した光が光反射膜で反射し、再度ショットキー接合部に照射されるようにしている。さらに特許文献1の受光素子では、ショットキー接合部と光反射膜の間の光路長を受光対象の光の波長の1/4とする。そうすると、ショットキー接合部が、入射光と反射光が重なって形成される定在波の腹の位置に相当することになる。定在波の腹の部分は光の強度が高く、その部位で光起電力効果を得るので光の計測感度が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−321333号公報
【特許文献2】特開平09−092872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書は、特許文献1の受光素子よりもさらに感度を高めた受光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する受光素子は、半導体基板に形成されている第1導電型の主導波路と、外部から主導波路に光を導く副導波路と、第1電極と、第2電極を備えている。第1電極は、光を反射する金属で作られており、主導波路の光路の両端の夫々にオーミック接合されている。第2電極は、主導波路の途中にショットキー接合されている。主導波路と第1電極と第2電極が半導体素子を構成している。また、主導波路の長さが(nL)/2(ただし、Lは受光対象の光の波長、nは自然数)の長さを有している。そして、第2電極は、主導波路の一端から{L/4+(mL)/2}(ただし、mは、0≦m<nの整数)の距離の位置に配置されている。
【0007】
本明細書が開示する受光素子によると、主導波路の両端で光が反射して定在波が形成される。光起電力効果を起こす第2電極は定在波の腹に位置する。それゆえ、受光の感度が高まる。特許文献1の受光素子では入射光を1回反射させて定在波を形成するのに対して、本明細書が開示する受光素子では主導波路の両端で光が反射し、定在波を形成する。それゆえ、本明細書が開示する受光素子では特許文献1に開示された受光素子よりも定在波における光の強度が高くなり、光の計測感度が向上する。
【0008】
主導波路と第1電極と第2電極が形成する半導体素子の具体例は、ダイオードとトランジスタである。ダイオードの場合、主導波路の両端の第1電極の夫々と接合されている部分に、不純物濃度が主導波路の中央部分よりも高くなっている高濃度第1導電型半導体領域を形成することで、第1電極と第2電極と主導波路がダイオードを構成する。
【0009】
トランジスタの場合は、主導波路の両端の第1電極の夫々と接合されている部分に、第2導電型半導体領域を形成する。そして、一方の第2導電型半導体領域と第1導電型の領域との境界に、不純物濃度が第2導電型半導体領域よりも低い低濃度第2導電型半導体領域を形成する。上記の通りにいくつかの半導体領域を形成することで、第1電極と第2電極と主導波路がトランジスタを構成する。
【0010】
副導波路の具体例としては、次の2つがある。一つは、主導波路と近接かつ離間しており、エバネッセント光で主導波路に光を導くタイプである。他の一つは、主導波路に鋭角的に連結しているタイプである。
【0011】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施例の受光素子の平面図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図である。
図3】第2実施例の受光素子の断面図である。
図4】第3実施例の受光素子の断面図である。
図5】第4実施例の受光素子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施例)図1図2を参照して第1実施例の受光素子2を説明する。図1は、受光素子2の平面図であり、図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。受光素子2は、シリコン基板3(半導体基板)に形成されている。受光素子全体は、絶縁体である酸化シリコン(SiO2)の層(上酸化シリコン層8と下酸化シリコン層9)で覆われている。それゆえ、図1では、受光素子2の各部を隠れ線(破線)で描いてある。
【0014】
受光素子2は、主導波路4、副導波路12、第1電極6、第2電極7を備えている。主導波路4は、リンなどの不純物を含む低濃度n型半導体である。不純物濃度は、例えば、1×1014〜1×1017[cm−3]である。酸化シリコンとシリコンは屈折率が大きく異なるので、光は低濃度n型半導体である主導波路4に閉じ込められる。主導波路の幅(図中の座標系においてY軸方向の長さ)と高さ(Z軸方向の長さ)は、概ね0.05[μm]程度である。この程度の幅と高さを有する導波路は、細線導波路と称されており、よく知られているので詳しい説明は省略する。
【0015】
主導波路4の長さL1は、受光対象の光の波長Lに対して(nL/2)の長さに定められている。nは自然数であり、実施例の主導波路4の場合は、n=1である。即ち、主導波路4の長さL1は、L1=L/2である。主導波路4の長さL1を上記の通りに定める理由については後述する。なお、「受光対象の光」とは、「検知対象の光」、あるいは、「計測対象の光」と呼び換えてもよい。
【0016】
副導波路12は、主導波路4と同じく低濃度n型半導体で作られている副導波路本体12aと、非ドープ高抵抗のシリコンで作られている副導波路接続部12bで構成される。副導波路12の幅と高さは主導波路4の幅と高さと同じである。副導波路12も細線導波路である。なお、副導波路接続部12bは、pn分離としてもよい。
【0017】
副導波路接続部12bは、副導波路12の主導波路4との接続部に配置されている。副導波路接続部12bは、絶縁性を有しており、主導波路4と副導波路12の副導波路本体12aは絶縁されている。副導波路12の一端(主導波路4との接続端とは反対側の端)は、シリコン基板3の縁に達しており、その縁が受光口12cに相当する。副導波路12は、受光口12cの付近では、主導波路4の延設方向に対して直交する方向に延びているが、主導波路4との接続部分で直角に湾曲しており、主導波路4に鋭角に接続している。それゆえ、受光口12cから入射した光は、副導波路12に導かれて、主導波路4の側面へ、その主導波路4の長手方向に沿って入射する。
【0018】
主導波路4の長手方向(図中の座標系のX軸方向)の両端には、アルミニウム(Al)又は銀(Ag)で作られている第1電極6が配置されている。第1電極6は、主導波路4の端にオーミック接合している。アルミニウム(Al)又は銀(Ag)は、光を反射する。第1電極6は、主導波路4を進行する光を反射する反射鏡としても機能する。第1電極6の主導波路4との接合面は、主導波路4の長手方向(Y軸方向)に直交している。
【0019】
主導波路4の両端の夫々には、光を反射する第1電極6が配置されている。副導波路12に導かれて主導波路4へ入射した光は、両端の第1電極6で反射する。先に述べたように主導波路4の長さL1は、L/2(Lは受光対象の光の波長)であるので、主導波路4へ入射した光は、主導波路4の内部で1個の腹を有する定在波となる。定在波の腹の位置は、主導波路4の端から距離L/4の位置となる。なお、図2において、符号SWの曲線が、主導波路4に生じる定在波を模式的に表している。
【0020】
主導波路4の側面には、第2電極7が配置されている。第2電極7は、例えば金(Au)で作られており、主導波路4に対してショットキー接合されている。したがって、第2電極7では、主導波路4の内部の光の定在波により、光起電力効果が生じる。第2電極7は、主導波路4の一端から長さL2の位置に配置されている。ここで、長さL2は、{L/4+(mL)/2}に定められている。ここで、Lは、受光対象の光の波長(受光対象の光の波長域の中心波長)であり、mは、0≦m<nの整数である。実施例ではn=1であるから、m=0であり、第2電極7は、主導波路4の一端から長さL/4の位置に配置されている。この長さL2=L/4は、定在波の腹の位置に相当する。主導波路4の第2電極7の近傍で光起電力効果を生じるが、第2電極7の位置は光の定在波の腹に相当するため、主導波路4の内部で最も光の強度が高くなるので、最も大きな光起電力効果が期待できる。
【0021】
一方、主導波路4の両端の第1電極6と接している部分には、不純物濃度が主導波路4の中央部分よりも高くなっている高濃度n型領域5が形成されている。高濃度n型領域5が、第1電極6とオーミック接合している。高濃度n型領域5に注入される不純物は、主導波路4の中央部分に注入されている不純物と同じであってもよいし、異なる不純物であってもよい。異なる不純物の一例は、ヒ素(As)である。高濃度n型領域5の濃度は、例えば、1×1018〜1×1022[cm−3]である。
【0022】
低濃度n型半導体の主導波路4、主導波路4の端に設けられた高濃度n型領域5、高濃度n型領域5にオーミック接合している第1電極6、主導波路4の途中にショットキー接合している第2電極7は、ダイオード10を構成する。このダイオード10は、第1電極6がカソード電極に相当し、第2電極7がアノード電極に相当する。
【0023】
受光素子2の光計測原理を簡単に説明する。受光素子2では、第1電極6を正極とし第2電極7を負極として電圧が印加される。主導波路4に光が入射していない状態では、第1電極6がカソード電極に相当し、第2電極7がアノード電極に相当するので電流は流れない。主導波路4に光が入射すると、第2電極7(アノード電極)で光起電力効果が生じ、主導波路4から第2電極7へ向けて電流が流れ得る状態となる。第1電極6には正電位の電圧が加わっているので、光起電力効果が起きると、第1電極6(カソード電極)から第2電極7(アノード電極)に向けて電流が流れるようになる。電流の大きさは、光起電力効果の大きさと正の相関を有する。それゆえ、第1電極6から第2電極7へ向けて流れる電流の大きさを計測することによって(あるいは、第1電極6と第2電極7の間の電圧を計測することによって)、受光した光の強さを特定することができる。
【0024】
先に述べたように、光起電力効果を生じる第2電極7の位置は定在波の腹に相当するため、第2電極7の位置において、受光した光の強度が最も大きくなる。それゆえ、受光素子2は、光の計測感度が高い。特に、主導波路4に入射した光は、主導波路4の両端で反射して定在波を形成する。光路の両端で反射した光による定在波の光の強度は、光路の一端のみで反射した光による定在波の光の強度よりも強くなる。それゆえ、受光素子2は光の計測感度が高い。
【0025】
なお、第2電極7として金(Au)を用いた場合、金(Au)からみたシリコン(主導波路4の構成物質)の障壁高さは0.7[eV]であるため、受光素子2は、波長1770[nm]より短波長側の光が検知可能である。すなわち、赤外線の波長域が700〜1000[nm]であるので、受光素子2は、赤外光、及び、赤外光よりも短波長の光を検知可能である。なお、計測対象の光の波長域を定めたら、その波長域の中心波長Lに基づいて、主導波路4の長さL1と、主導波路4の端から第2電極7までの距離L2が定められる。
【0026】
(第2実施例)図3に、第2実施例の受光素子2aの断面図を示す。受光素子2aは、主導波路4aの長さL1と第2電極7a−7cの数が第1実施例の受光素子2と異なる。受光素子2aのその他の構成は、第1実施例の受光素子2の構成と同じであるので説明は省略する。
【0027】
先に述べたように、主導波路4aの長さは、受光対象の光の波長Lに対して(nL/2)であればよい(nは自然数)。第2実施例の受光素子2aの場合、n=3であり、主導波路4aの長さL1は、L1=(3L)/2である。このとき、主導波路4aに導かれた光は、3個の振動の腹を有する定在波となる。図3の符号SWが、主導波路4aに生じる定在波を模式的に表している。
【0028】
受光素子2aは、3個の第2電極7a−7cを備えている。第2電極7aは、主導波路4aの図の左端から距離L2=L/4の位置に配置されている。第2電極7bは、距離L2=(3L)/4の位置に配置されている。第2電極7cは、距離L2=(5L)/4の位置に配置されている。3個の第2電極7a−7cは、いずれも、主導波路4aに生じる定在波の腹に位置するように配置されている。図示は省略しているが、3個の第2電極7a−7cは導体のワイヤで接続されており、電気的には1個の第2電極を構成する。
【0029】
n型半導体で作られた主導波路4a、主導波路4aの両端に設けられた高濃度n型領域5、高濃度n型領域5にオーミック接合している第1電極6、主導波路4aの側面にショットキー接合している第2電極7a−7cは、ダイオード10aを構成する。図示は省略しているが、第1電極6を正極、第2電極7a−7cを負極として電圧が印加される。
【0030】
主導波路4aに光が入射していない状態では、第1電極6から第2電極7a−7cに向けて電流は流れない。副導波路12(図1参照)を通じて主導波路4aに光が入射すると、第2電極7a−7cで光起電力効果が生じ、第1電極6から第2電極7a−7cに向けて電流が流れる。電流の量は主導波路4aに入射した光量に依存する。受光素子2aは、第1電極6から第2電極7a−7cに向けて流れる電流の値、あるいは、第1電極6と第2電極7a−7cの間の電圧から、入射した光の量を特定することができる。
【0031】
第2実施例の受光素子2aでは、内部に3個の腹を有する定在波が生じるように主導波路4aの長さが定められており、夫々の腹の位置に3個の第2電極7a−7cが配置されている。定在波の腹の位置は、定在波の光が最も強くなる箇所である。定在波の3か所の腹の夫々に対して第2電極7a−7cを配置しているので、受光素子2aは光の計測感度がより一層高い。
【0032】
なお、第2実施例の受光素子2aにおいて、第2電極の数は、腹の数と同数の3個であることが望ましいが、第2電極の数は、2個であってもよいし、1個のみであってもよい。
【0033】
主導波路の長さL1は、(nL/2)を満足する長さであればよい。ここで、Lは受光対象の光の波長であり、nは自然数である。第2電極を配置する位置(主導波路の端からの距離L2)は、L2={L/4+(mL)/2}を満足する長さであればよい。ここで、mは、0≦m<nを満足する整数である。主導波路に生じる定在波の全ての腹の位置に第2電極が備えられていることが望ましいが、少なくとも1箇所の腹の位置に第2電極が備えられていればよい。
【0034】
(第3実施例)第4に、第3実施例の受光素子2bの断面図を示す。第3実施例の受光素子2bは、主導波路14、第1電極16a、16b、第2電極17がバイポーラ型トランジスタ10bを構成している。受光素子2bもシリコン基板3に形成されている。主導波路14、第1電極16a、16b、第2電極17は、上酸化シリコン層18と下酸化シリコン層19で囲まれている。
【0035】
主導波路14は、低濃度n型の半導体で作られている。ただし、主導波路14の一部は、異なる半導体物質で構成されている。主導波路14のn型低濃度の領域(低濃度領域14a)に含有されている不純物は、例えばリン(P)であり、その濃度は、例えば、1×1014〜1×1017[cm−3]である。このn型の低濃度領域14aが、トランジスタのベースに相当する。以下では、低濃度領域14aをベース領域14aと称する場合がある。
【0036】
受光素子2bは、副導波路も備えているが、副導波路は、第1実施例の受光素子2の副導波路12と同じであり、主導波路14に鋭角に接続している。受光素子2bの副導波路については説明を省略する。
【0037】
主導波路14の両端には第1電極16a、16bが配置されている。第1電極16a、16bは、金(Au)などの金属で作られており、主導波路14にオーミック接合している。第1電極16a、16bは、主導波路14に入射した光を反射する反射鏡としても機能する。主導波路14の一方の端には、p型の不純物を高濃度に含むエミッタ領域15aが形成されており、他方の端には、p型の不純物を高濃度に含むコレクタ領域15bが形成されている。一対の第1電極16aはエミッタ領域15aとオーミック接合しており、他方の第1電極16bはコレクタ領域15bとオーミック接合している。エミッタ領域15aとコレクタ領域15bに含有されている不純物は、例えばボロン(B)であり、その濃度は、例えば、1×1018〜1×1022[cm−3]である。
【0038】
主導波路14のベース領域14aとコレクタ領域15bの間に、p型の不純物をコレクタ領域15bよりも低濃度に含むドリフト領域21が設けられている。p型の不純物の例は例えばボロン(B)であり、その濃度は、例えば、1×1014〜1×1018[cm−3]である。なお、ドリフト領域21の有無は任意であり、コレクタ電圧を低く設定する場合は、ドリフト領域21は無くてもよい。
【0039】
主導波路14のベース領域14aに第2電極17がショットキー接合されている。
【0040】
主導波路14の長さL1は、L1=(nL)/2を満たす長さに定められている。ここで、Lは受光対象の光の波長であり、nは自然数である。第2電極17の主導波路14の端からの距離L2は、L2={L/4+(mL)/2}を満たす長さに定められている。ここで、mは、0≦m<nを満たす整数である。受光素子2bの場合、n=1、m=0である。即ち、主導波路14の長さL1はL1=L/2であり、主導波路14の端から第2電極17までの距離L2は、L2=L/4である。主導波路14の長さL1と第2電極17の位置(距離L2)は、第1実施例の受光素子2の主導波路4と同じである。ゆえに、主導波路14に光が入射すると、第2電極17の近傍で光起電力効果が生じる。
【0041】
以下では、エミッタ領域15aに接合している第1電極16aをエミッタ電極16aと称することがあり、コレクタ領域15bに接合している第1電極16bをコレクタ電極16bと称する場合がある。受光素子2bでは、コレクタ電極16bを負極、エミッタ電極16aを正極として電圧が印加される。主導波路14に光が入射しない状態では、コレクタ電極16bとエミッタ電極16aの間に電流は流れない。主導波路14に光が入射すると、第2電極17で光起電力効果が生じ(電子が励起し)、n型のベース領域14aに電子が注入される。その結果、エミッタ領域15aとコレクタ領域15bが導通し、エミッタ電極16aからコレクタ電極16bへ電流が流れる。電流の量は主導波路14に入射した光量に依存する。受光素子2bは、エミッタ電極16aからコレクタ電極16bに向けて流れる電流の値、あるいは、エミッタ電極16aとコレクタ電極16bの間の電圧から、入射した光の量を特定することができる。
【0042】
第3実施例の受光素子2bでも、第2電極17は、主導波路14に生じる定在波の腹に相当する位置に配置されている。それゆえ、入射した光の強度の高い部分で光起電力効果が生じるので、受光素子2bは光の計測感度が高い。特に主導波路14の両端で反射した光により形成される定在波の腹であるので、その強度は、1回の反射で形成される定在波の強度よりも高い。
【0043】
(第4実施例)図5に第4実施例の受光素子2cの平面図を示す。受光素子2cの主導波路4、第1電極6、第2電極7、高濃度n型領域5は、第1実施例の受光素子2と同じである。即ち、受光素子2cの主導波路4、第1電極6、第2電極7、高濃度n型領域5は、ダイオード10を構成する。第4実施例の受光素子2cは、副導波路22が受光素子2の副導波路12と相違する。
【0044】
副導波路22は、主導波路4と平行に延びている直線路22aと、直線路22aに接する円形路22bで構成される。直線路22aの一端が受光口22cであり、この受光口22cから光が入射する。入射した光は、直線路22aから円形路22bに入り、円形路22bを周回する。円形路22bは、矢印Aが示す箇所で、主導波路4と近接かつ離間している。円形路22bと主導波路4は、上酸化シリコン層8が隔てている。円形路22bと主導波路4の離間距離は、概ね光の1波長程度である。副導波路22と上酸化シリコン層8は屈折率が大きく異なっており、主導波路4と上酸化シリコン層8も屈折率が大きく異なっている。円形路22b(副導波路22)と主導波路4とそれらを隔てる上酸化シリコン層8は、円形路22bが主導波路4に近接かつ離間している箇所(図中の矢印Aが示す箇所)で、エバネッセント場を生じさせる条件を満たしている。それゆえ、円形路22bを光が通ると、上酸化シリコン層8を通じて円形路22bから主導波路4へエバネッセント光が生じる。即ち、副導波路22に入射した光は主導波路4に導かれる。
【0045】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例の受光素子はいずれも、主導波路がn型の半導体で形成されている。本明細書が開示する技術は、主導波路をp型の半導体で形成してもよい。その場合、主導波路の両端に、主導波路の中央部分よりも高濃度のp型領域を形成する。このとき、第1電極と第2電極と主導波路がダイオードを構成する。また、p型の主導波路の両端にn型の領域(コレクタ領域とエミッタ領域)を設けるとともに、主導波路の中央部分のp型領域(ベース領域)とコレクタ領域との間にn型のドリフト領域を設ける。この構成により、第1電極(主導波路の両端のエミッタ電極とコレクタ電極)と第2電極と主導波路(ベース領域とコレクタ領域とエミッタ領域を含む)がトランジスタを構成する。
【0046】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0047】
2、2a、2b、2c:受光素子
3:シリコン基板
4:主導波路
4a:主導波路
5:高濃度n型領域
6:第1電極
7、7a、7b、7c:第2電極
8:上酸化シリコン層
9:下酸化シリコン層
10、10a:ダイオード
10b:バイポーラ型トランジスタ
12:副導波路
12a:副導波路本体
12b:副導波路接続部
12c:受光口
14:主導波路
14a:ベース領域(低濃度領域)
15a:エミッタ領域
15b:コレクタ領域
16a:エミッタ電極(第1電極)
16b:コレクタ電極(第1電極)
17:第2電極
18:上酸化シリコン層
19:下酸化シリコン層
21:ドリフト領域
22:副導波路
22a:直線路
22b:円形路
22c:受光口
図1
図2
図3
図4
図5