(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記精度基準として前記誤差範囲が基準値よりも広い低精度時間が第1の基準時間のうちの所定の第1の割合以上となった場合に、前記受信部による前記捕捉動作を再開させることを特徴とする請求項1記載の衛星電波受信装置。
前記制御部は、前記第1の基準時間内に現在位置の取得に失敗した回数の割合が前記第1の割合未満の第2の割合以上となった場合に前記受信部による前記捕捉動作を再開させることを特徴とする請求項2記載の衛星電波受信装置。
前記制御部は、前記測位精度に係る第1の誤差範囲と、前記予測位置と現在位置とのずれに応じた第2の誤差範囲とをそれぞれ算出し、前記第1の誤差範囲と前記第2の誤差範囲とに基づいて前記現在位置の誤差範囲を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の衛星電波受信装置。
前記制御部は、前記複数の測位衛星の現在位置に対する相対位置のばらつきを前記測距精度で各々重み付け演算することで前記第1の誤差範囲を算出することを特徴とする請求項6記載の衛星電波受信装置。
前記制御部は、過去の測位結果に基づいて自機の移動速度を算出し、前回の測位位置から当該移動速度で移動した場合の位置を新たな予測位置として求めることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の衛星電波受信装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態の電子時計1の機能構成を示すブロック図である。
【0012】
電子時計1は、マイコン40と、衛星電波受信処理部50及びアンテナA1と、操作受付部61と、表示部62と、ROM63(Read Only Memory)(本発明の記憶部の実施形態)と、電力供給部70などを備える。
【0013】
マイコン40は、電子時計1の制御動作、記憶動作及び日時の計数動作などに係る各種処理を行う。マイコン40は、ホスト制御部41と、発振回路45と、分周回路46と、計時回路47(計時部)などを備える。
【0014】
ホスト制御部41は、電子時計1の全体動作を統括制御する。ホスト制御部41は、CPU411(Central Processing Unit)と、RAM412(Random Access Memory)などを備える。
【0015】
CPU411は、各種演算処理を行って制御動作を行う。制御動作としては、通常の日時表示動作に加え、電子時計1が有する各種機能に応じた動作、例えば、アラーム報知機能、タイマ機能、ストップウォッチ機能が含まれ得る。また、CPU411は、衛星電波受信処理部50による測位動作や日時取得動作などの結果に応じた表示動作や報知動作などに係る制御処理を行う。
【0016】
RAM412は、CPU411に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。一時データには、現在位置などの設定された世界の地域における現在日時(地方時)を表示、利用する際のタイムゾーン設定や夏時間設定を含む地方時設定に係る情報などが含まれる。これらの地方時設定は、測位動作により得られた現在位置の情報に従って更新され得る。RAM412は、マイコン40に対して外付けされてもよい。このRAM412には、DRAMに加えて書き換え可能な不揮発性メモリが含まれていてもよい。
【0017】
発振回路45は、所定周波数、ここでは、例えば、32.768kHzの信号(クロック信号)を生成して出力する。クロック信号の生成には、例えば、水晶発振子などが用いられる。この水晶発振子は、マイコン40に対して外付けされてよい。この発振回路45から出力されるクロック信号の周波数には、電子時計1で定められた許容範囲内のオフセット誤差が含まれ得る。また、このクロック信号の周波数は、外部環境、主に温度によって変化する。
【0018】
分周回路46は、発振回路45から入力されたクロック信号を設定された分周比で分周した分周信号を出力する。分周比の設定は、CPU411により変更されてよい。
計時回路47は、分周回路46から入力された所定の周波数の信号(クロック信号と同一周波数であってもよい)を計数することで現在の日時(時刻及び日付)を計数、保持する。計時回路47による日時の計数精度は、発振回路45からのクロック信号の精度、すなわち、上述のオフセット誤差や変化の度合に依存し、正確な日時からの誤差を含み得る。CPU411は、衛星電波受信処理部50が取得した現在日時に基づいて、計数されている日時を修正することが可能である。
【0019】
衛星電波受信処理部50は、本発明の実施形態の衛星電波受信装置であり、米国のGPS(Global Positioning System)といった衛星測位システム(GNSS;Global Navigation Satellite System)に係る測位衛星からの送信電波を受信可能であり、受信したこれらの電波を処理する受信動作を行って現在日時や現在位置の情報を取得し、ホスト制御部41(CPU411)から要求された情報を所定のフォーマットでホスト制御部41に出力する。衛星電波受信処理部50は、受信部51と、モジュール制御部52(制御部)と、記憶部53などを備える。
【0020】
受信部51は、受信対象の測位衛星からの送信電波を受信、捕捉(検出)してその測位衛星の識別及び送信電波に含まれる信号(航法メッセージ)の位相を同定する捕捉処理を行い、また、捕捉した測位衛星の識別情報及び位相に基づいて当該測位衛星からの送信電波を追尾して継続的に信号を復調、取得する。
【0021】
モジュール制御部52は、CPUとRAMなどを備え、衛星電波受信処理部50の動作に係る各種制御を行う。モジュール制御部52は、ホスト制御部41からの指示に従って適切なタイミングで測位衛星からの電波受信を受信部51により行わせ、受信した電波から必要な情報を取得、演算する各種処理により測位を行って、現在日時や電子時計1(自機)の現在位置を取得する。モジュール制御部52は、各種演算処理を行う構成として専用のハードウェア回路を有していてもよい。測位結果の出力は、例えば、NMEA−0183などの共通フォーマットに従ってなされてもよいし、電子時計1に独自のフォーマットであってもよい。また、ハードウェア回路が出力した所定のフォーマットのデータをCPUが適宜加工して処理し、また、出力してもよい。RAMは、モジュール制御部52の制御チップ(基板)上に設けられるが、制御チップに対して外付けされてもよい。モジュール制御部52は、現在日時及び現在位置の取得時に、各測位衛星からの電波のSNR(シグナルノイズ比、ここではC/N比と同義)、各測位衛星の位置及びDOP、並びに現在位置の移動速度を算出可能である。
【0022】
記憶部53には、各種設定データや受信情報などの受信制御情報531と、衛星電波受信処理部50においてモジュール制御部52が実行する制御に係るプログラムなどが記憶される。設定データとしては、例えば、各測位衛星の航法メッセージのフォーマットデータなどが含まれる。また、受信情報としては、例えば、取得されている各測位衛星の予測軌道情報(アルマナック)や精密軌道情報(エフェメリス)などが含まれる。記憶部53は、不揮発性メモリなどであり、モジュール制御部52の制御チップ(基板)に対して外付けされてもよい。
【0023】
操作受付部61は、ユーザ操作などの外部からの入力操作を受け付ける。操作受付部61は、押しボタンスイッチやりゅうずなどを備え、押しボタンスイッチの押下動作や、りゅうずの引き出し、回転及び押し戻しの各動作に応じた操作信号をホスト制御部41(CPU411)に出力する。あるいは、操作受付部61は、タッチセンサなどを有していてもよい。
【0024】
表示部62は、ホスト制御部41の制御に基づいて各種情報の表示を行う。表示部62は、表示ドライバ622と、表示画面621などを備える。表示画面621は、例えば、セグメント方式若しくはドットマトリクス方式又はこれらの組み合わせによる液晶表示画面(LCD)などによりデジタル表示を行う。あるいは、表示部62として、表示画面621によるデジタル表示に代えて、指針及びこれを回転動作させるステッピングモータなどによる表示が可能な構成を有していてもよい。表示ドライバ622は、CPU411からの制御信号に基づいて、表示画面621に表示を行わせるための駆動信号を表示画面621に出力する。表示部62により表示可能な内容には、少なくとも計時回路47により計数される日時に応じた日時情報(特に、現在日時)が含まれ、また、アラーム報知機能、タイマ機能やストップウォッチ機能に係る設定日時、設定時間や計測時間などが含まれる。また、測位動作に応じて得られた現在位置に係る情報や地方時設定などが表示可能とされ得る。
【0025】
ROM63は、ホスト制御部41やモジュール制御部52が制御動作を実行するためのプログラム631や初期設定データなどを格納する。ROM63としては、マスクROMに加えて又は代えてデータの書き換え更新が可能なフラッシュメモリなどの不揮発性メモリを有していてもよい。ROM63は、ホスト制御部41及びモジュール制御部52のいずれからも読み書きアクセスが可能に設けられており、スロットなどの取り付け部に対して着脱可能であってもよい。
プログラム631には、現在日時の取得や測位動作に係る制御プログラムが含まれる。また、ROM63には、衛星電波受信処理部50による電波受信強度と当該電波受信強度に応じた測距精度、すなわち、測位衛星と電子時計1(自機)との間の距離の測定精度との対応関係を示す測距精度/SNR換算データ632が
格納されている。この測距精度/SNR換算データ632は、複数のSNRに対して各々測距精度の値が対応付けられたテーブルデータであってもよいし、SNRから測距精度を算出する計算式(近似式を含む)であってもよい。測距精度/SNR換算データ632は、衛星電波受信処理部50の記憶部53に記憶されていてもよい。
【0026】
電力供給部70は、電子時計1のマイコン40や衛星電波受信処理部50などの各部に所定の駆動電圧でバッテリ71から電力供給を行う。ここでは、衛星電波受信処理部50への電力供給有無は、ホスト制御部41の制御によりマイコン40への電力供給とは別に制御され得る。バッテリ71としては、ここでは、着脱可能な乾電池や充電池などが用いられるが、ソーラパネルと充電部(蓄電部)などを備えていてもよい。
【0027】
次に、本実施形態の電子時計1における測位動作について説明する。
電子時計1では、衛星電波受信処理部50が複数(4機以上)の測位衛星からの電波を受信して取得された航法メッセージとそのタイミングに基づいて測位演算を行う。電子時計1において継続的に繰り返し測位動作を行う場合には、毎秒1回ずつ測位結果を取得する。また、電子時計1では、測位演算の際に、測位結果の精度、すなわち、現在位置の誤差範囲を算出する。そして、誤差範囲が所定の基準範囲より広い(精度が低い)場合には、捕捉動作を再度行ってより多くの測位衛星からの電波から取得される航法メッセージを測位演算に用いることができるように試みる。
【0028】
測位演算は、周知のように、4機以上の測位衛星から受信される航法メッセージ中に含まれる精密軌道情報(エフェメリス)に基づく各機の現在位置と、各測位衛星からの受信タイミングの差(擬似距離)とを用いて、電子時計1の現在位置3成分と現在日時の合計4つの未知数を求める。この演算は、所定の初期値から数値的に収束させていく反復計算(逐次近似)、例えば、ニュートン・ラフソン法(ニュートン法)により行われる。
【0029】
測位結果の精度算出では、電波が受信された複数の測位衛星の位置関係、受信された電波の各受信状態、及び電子時計1(自機)の運動状態(移動状況)に応じて求められる予測位置に対する取得された現在位置のずれをそれぞれ考慮して、以下の2通りの精度の算出方法で誤差範囲を算出して、より適切な値を定める。適切な値としては、ここでは、単純に大きいほう(精度の悪いほう)に定めることとして、想定され得る最大誤差範囲をカバーする。
【0030】
図2は、本実施形態の電子時計1における第1の精度算出方法について説明する図である。
第1の精度算出方法では、測位衛星からの電波の受信状態に基づいて第1の誤差範囲が求められる。
【0031】
電波受信が可能な測位衛星は、仰角φ(現在位置から測位衛星への線分の水平面Eに対する角度。水平面Eに垂直な鉛直方向をx
3方向とする)及び方位角λ(ここでは、上記線分の水平面E内成分の北極方向Nとの角度。北極方向をx
1方向、水平面E内でx
1方向に直交する方向をx
2方向とする)を用いて現在位置に対する相対方向が特定される。このとき、現在位置の3成分及び時間成分を精度よく得るには、電波が受信される複数の測位衛星が適切に分散した位置関係であることが好ましい。すなわち、複数の測位衛星が現在位置に対して一方向に偏在している場合には、測位精度が低下する。
【0032】
通常、測位精度の評価に用いられるDOPは、各測位衛星s
i(i=1〜n;nは測位に用いられる測位衛星の機数)の現在位置からの方向3成分(x
ij;j=1〜3)及び時間成分(x
i4;ここでは、x
i4=1)からなるn行4列行列A(x)について、D=A
T・A、すなわち、jk成分がD
jk=Σ
(i=1〜n)(x
ij・x
ik)で表される4行4列の行列Dの逆行列D
−1=Uの対角成分を用いて表される。すなわち、DOPは、各測位衛星s
iの配置にのみ依存して定まる。方向3成分は、(x
i1、x
i2、x
i3)=(cosλ
i・cosφ
i、sinλ
i・cosφ
i、sinφ
i)により長さ1で求められ、水平方向に係るHDOPは行列Uの対角成分u
iiにより(|u
11|+|u
22|)
1/2となり、鉛直方向に係るVDOPは(|u
33|)
1/2となり、位置座標に係るPDOPは(Σ
(i=1〜3)|u
ii|)
1/2となる。これらDOPの各値は、最良の状態で1程度となり、値が大きくなるほど精度が低下する。
【0033】
しかしながら、実際には、DOPを小さくする測位衛星の配置では、現在位置から見た複数の測位衛星の間で角度差が大きくなり、その結果、仰角φ
iが小さいものが含まれるのが通常である。一方で、仰角φ
iが小さいほど電波受信強度が低下しやすい。本実施形態の電子時計1では、第1の精度算出方法として、各測位衛星の配置(現在位置に対する相対位置)と、当該測位衛星からの電波受信強度にそれぞれ応じた前記測距精度との組み合わせに基づいて、各相対位置のばらつきに対して更にそれぞれSNRに基づく重み付けを行った精度計算を行う。
【0034】
図3は、測位衛星から受信される電波のSNRと、このSNRで受信される測位衛星の測距精度との関係の例を示す図である。
【0035】
SNR
[dBHz]が低下すると擬似距離の同定精度(測距精度ei[km])が悪化(値が増加)し、すなわち、測位により求められる位置に見込まれる最大ずれ量が増加する。ここでは、実線(a)に示すように、SNRが上昇するにつれて指数関数に従って測距精度eiが改善(値が減少)するものとされている。このような関係は、実測値(検査値)などに基づいて得られたテーブルデータ又は計算式が予め製品出荷前にROM63に測距精度/SNR換算データ632として記憶保持される。測距精度/SNR換算データ632がテーブルデータの場合、当該テーブルに含まれるSNRの値の中間値に対応する測距精度eiは、適宜線形補間されて求められればよい。計算式の場合には、必要な精度が維持される限りで近似式であってよく、例えば、破線(b)に示すように、複数の直線の組み合わせで容易に表現、算出され得る。
【0036】
上述のように、測位は複数の測位衛星からの電波受信により行われるので、各測位衛星のSNR、すなわち、測距精度e
iの組み合わせによって最終的に測位結果に含まれ得る最大ずれ量が変化する。ここでは、行列Dの各成分D
jk=Σ
(i=1〜n)(x
ij・x
ik)の各要素(x
ij・x
ik)に対し、測位衛星s
iごとにそれぞれSNRに対応する測距精度e
iを用いてe
i−2の重み付けを行う。すなわち、対角成分w
ii=e
i−2となるn行n列の重み付け行列W(非対角成分は全て「0」)を用いて、D=A
T・W・A(各成分D
jk=Σ
(i=1〜n)(x
ij・w
ii・x
ik))の逆行列D
−1=Uにより受信強度で重み付けされた測位精度値を第1のずれ見積もり量Δx(第1の誤差範囲)として算出する。上述のように、最良の状態でのDOPは、ほぼ1となるので、得られる第1のずれ見積もり量Δxは、測距精度e
iの二乗の平方根、すなわち、測距精度e
iと同じオーダーの値となる。あるいは、第1のずれ見積もり量Δxは、適宜所定の係数倍されてもよい。
【0037】
第1の精度算出方法で得られる第1のずれ見積もり量Δxは、このように受信強度及び測位衛星の配置に応じて直接求められる値とすることができる。
【0038】
図4は、本実施形態の電子時計1における第2の精度算出方法について説明する図である。
第2の精度算出方法では、予測位置と現在位置とのずれに応じて第2の誤差範囲が求められる。
【0039】
複数回(少なくとも2回)の位置情報が取得されると、これらの位置の変化に応じて電子時計1(自機)の移動速度が算出可能となる。大きな加速度が生じていない場合には、直近の位置(測位位置)からこの移動速度で移動した場合の次の測位時の位置が予測される。この予測された位置(予測位置)と次の測位位置とを比較することで、測位結果のずれが得られる。求められる予測速度vf(t)は、ここでは、直近(過去)の二回の測位により求められた測位位置pm(t−1)、pm(t−2)(測位結果)の差分を当該二回の測位の時間差Δtで除した一回前の計測速度vm(t−1)と等しいと仮定し、すなわち、vf(t)=vm(t−1)=(pm(t−1)−pm(t−2))/Δtにより得られる。
【0040】
このように求められた予測速度vf(t)を用いて予測位置pf(t)=pm(t−1)+vf(t)・Δtが得られる。この予測位置pf(t)と測位位置pm(t)とのずれ量が第2のずれ見積もり量Δp=|pf(t)−pm(t)|(第2の誤差範囲)となる。
【0041】
なお、前回の測位位置pm(t−1)をそのまま用いて予測位置pf(t)を求めるのではなく、測位位置pm(t−1)と前回の予測位置pf(t−1)とを用いてよりもっともらしい推定位置pe(t−1)を得て、予測位置pf(t)=pe(t−1)+vf(t)・Δtを得てもよい。推定位置pe(t−1)は、適宜な方法、例えば、カルマンフィルタなどを用いて得ることができる。カルマンフィルタを用いない場合であっても、推定位置pe(t)は、当該カルマンフィルタにおける誤差の共分散行列と同様に、予測位置と測位位置とのずれ量に基づく両者の適度な重み付けにより求められるものとすることができる。
【0042】
また、予測位置pf(t)を算出する際に、速度の差分に基づいて加速度を考慮してもよい。また、測位衛星との位置関係に基づいて当該測位衛星からの距離方向の移動速度がドップラー効果による周波数変化として計測可能な場合には、この周波数変化に基づいて速度を求めてもよい。また、直近2回(加速度を含む場合には3回)の測位位置だけではなく、それ以前の位置の履歴に基づいて移動傾向などを統計処理してもよい。
このような第2の精度算出方法としては、速度やその履歴に応じて予測される現在位置と実際の測位位置とのずれやその影響を考慮したものとすることができる。
【0043】
本実施形態の電子時計1では、第1のずれ見積もり量Δxと第2のずれ見積もり量Δpとを更に比較し、大きいほうの値を推定誤差範囲ε(現在位置の誤差範囲)とする。そして、この推定誤差範囲εが所定の基準値Rthよりも大きい(広い)か否かを判別し、判別結果に応じて測位結果の良否、すなわち、位置精度がOK/NGであると判断する。所定の基準値Rthは、固定値(例えば、20m)であってもよいが、位置情報の出力対象のアプリケーションや当該アプリケーションにおける設定に応じて可変に定められ得る。設定は、操作受付部61により受け付けられる所定の入力操作や、実行中のアプリケーションプログラムからの設定要求などにより変更可能とされる。
【0044】
継続的に繰り返し測位動作が行われる場合、初期捕捉動作が完了して測位に十分な測位衛星からの電波が捕捉されると、衛星電波受信処理部50では、捕捉動作を停止して、捕捉済みの電波の追尾を続けることで測位動作を継続する。捕捉動作の停止中に測位精度が低下して所定の精度基準を満たさなくなった場合には、捕捉動作を再開して捕捉されている測位衛星からの電波の数を増加させる。なお、捕捉されている測位衛星からの電波については、再開された捕捉動作において捕捉対象とされる必要はない。
【0045】
図5は、本実施形態の電子時計1で実行される測位制御処理のモジュール制御部52による制御手順を示すフローチャートである。
【0046】
この測位制御処理は、ホスト制御部41からの測位命令の入力に応じて開始される。
測位制御処理が開始されると、モジュール制御部52は、受信部51を起動させて測位衛星からの電波受信を開始させる(ステップS101)。
【0047】
モジュール制御部52は、受信部51により測位衛星からの電波の捕捉動作を開始させ、捕捉された電波を順次追尾させる。また、モジュール制御部52は、捕捉された測位衛星からの電波の数が測位に必要な4衛星以上となり次第測位演算を開始する(ステップS102)。
【0048】
モジュール制御部52は、4衛星以上の電波が捕捉されて開始された測位演算により最初の現在位置
の測位結果が取得されたか否かを判別する(ステップS103)。すなわち、モジュール制御部52は、上述のように逐次近似による現在位置の算出位置が適切に収束したか否かを判別する。現在位置が取得されたと判別された場合には(ステップS103で“YES”)、モジュール制御部52の処理は、ステップS121に移行する。現在位置が取得されていないと判別された場合には(ステップS103で“NO”)、モジュール制御部52は、捕捉動作の開始から30秒が経過したか否かを判別する(ステップS104)。経過していないと判別された場合には
(ステップS104で“NO”)、モジュール制御部52は、処理をステップS103に戻す。
【0049】
捕捉動作の開始から30秒が経過したと判別された場合には(ステップS104で“YES”)、モジュール制御部52は、受信部51による捕捉動作を停止させる(ステップS105)。モジュール制御部52は、受信部51に捕捉済みの測位衛星の追尾動作を続けさせ、取得された航法メッセージに基づく測位演算により最初の現在位置が取得されたか否かを判別する(ステップS106)。取得されたと判別された場合には(ステップS106で“YES”)、モジュール制御部52の処理は、ステップS125に移行する。現在位置が取得されていないと判別された場合には(ステップS106で“NO”)、モジュール制御部52は、捕捉動作を停止させてから25秒が経過したか否かを判別する(ステップS107)。
【0050】
25秒が経過していないと判別された場合には(ステップS107で“NO”)、モジュール制御部52の処理は、ステップS106に戻る。25秒経過したと判別された場合には(ステップS107で“YES”)、モジュール制御部52は、受信部51に捕捉動作を再開させる(ステップS108)。モジュール制御部52は、測位演算により最初の現在位置が取得されたか否かを判別する(ステップS109)。取得されたと判別された場合には(ステップS109で“YES”)、モジュール制御部52の処理は、ステップS121に移行する。
【0051】
最初の現在位置が取得されていないと判別された場合には(ステップS109で“NO”)、モジュール制御部52は、捕捉動作の再開から5秒が経過したか否かを判別する(ステップS110)。経過していないと判別された場合には(ステップS110で“NO”)、モジュール制御部52の処理は、ステップS109に戻る。5秒が経過したと判別された場合には(ステップS110で“YES”)、モジュール制御部52は、受信動作の開始から3分が経過したか否かを判別する(ステップS111)。経過していないと判別された場合には(ステップS111で“NO”)、モジュール制御部52の処理は、ステップS10
5に戻る。
【0052】
受信動作の開始から3分が経過したと判別された場合には(ステップS111で“YES”)、モジュール制御部52は、受信部51による電波の受信動作を停止させ(ステップS131)、それから、測位制御処理を終了する。
【0053】
ステップS103、S109のいずれかの判別処理で最初の現在位置が取得されたと判別されてステップS121の処理に移行すると、モジュール制御部52は、4秒(4回)以上続けて測位結果の取得に失敗しているか否かを判別する(ステップS121)。失敗していると判別された場合には(ステップS121で“YES”)、モジュール制御部52の処理は、ステップS103に移行する。
【0054】
4秒以上続けて測位結果の取得に失敗していない、すなわち、直近の測位に成功したか、失敗回数が3回以下であると判別された場合には(ステップS121で“NO”)、モジュール制御部52は、測位終了命令が取得されたか否かを判別する(ステップS122)。測位終了命令は、ホスト制御部41により操作受付部61への所定の入力操作が検出された場合や、電力供給部70からの供給電圧が所定の基準値を下回ってバッテリ切れが近いと判断される場合などにホスト制御部41から入力される。取得されたと判別された場合には(ステップS122で“YES”)、モジュール制御部52の処理は、ステップS131に移行する。
【0055】
測位終了命令が取得されていないと判別された場合には(ステップS122で“NO”)、モジュール制御部52は、現在実行中の捕捉動作の開始から8秒が経過したか否かを判別する(ステップS123)。経過していないと判別された場合には(ステップS123で“NO”)、モジュール制御部52の処理は、ステップS121に戻る。捕捉動作の開始から8秒が経過した(捕捉動作の停止に係る所定の条件)と判別された場合には(ステップS123で“YES”)、モジュール制御部52は、受信部51に捕捉動作を停止させる(ステップS124)。ステップS123、S124の処理が、本実施形態の測位制御方法における捕捉停止ステップ(プログラムにおける捕捉停止手段)を構成する。それから、モジュール制御部52の処理は、ステップS125に移行する。
【0056】
ステップS125の処理に移行すると、モジュール制御部52は、測位終了命令が取得されたか否かを判別する(ステップS125)。取得されたと判別された場合には(ステップS125で“YES”)、モジュール制御部52の処理は、ステップS131に移行する。測位終了命令が取得されていないと判別された場合には(ステップS125で“NO”)、モジュール制御部52は、位置精度判定処理を呼び出して実行する(ステップS126)。モジュール制御部52は、位置精度判定処理による判定結果で位置精度がOKであったか否かを判別する(ステップS127)。OKであると判別された場合には(ステップS127で“YES”)、モジュール制御部52の処理は、ステップS125に戻る。OKではない、すなわち、NGであると判別された場合には(ステップS127で“NO”)、モジュール制御部52は、受信部51により捕捉動作を再開させる(ステップS128)。ステップS126〜S128の処理が、本実施形態の測位制御方法における捕捉再開ステップ(プログラムにおける捕捉再開手段)を構成する。それから、モジュール制御部52の処理は、ステップS121に戻る。
【0057】
図6は、測位制御処理で呼び出される位置精度判定処理の制御手順を示すフローチャートである。
【0058】
位置精度判定処理が呼び出されると、モジュール制御部52は、測位演算を行い(測位演算ステップ、測位演算手段)、その結果とともに第1のずれ見積もり量Δxと第2のずれ見積もり量Δpとを算出する(ステップS141)。モジュール制御部52は、第1のずれ見積もり量Δxと第2のずれ見積もり量Δpのうち大きい方を推定誤差範囲εとして設定する(ステップS142)。
【0059】
モジュール制御部52は、推定誤差範囲εが所定の基準値Rth以上であるか否かを判別する(ステップS143)。基準値以上ではない(未満である)と判別された場合には(ステップS143で“NO”)、モジュール制御部52の処理は、ステップS154に移行する。基準値以上であると判別された場合には(ステップS143で“YES”)、モジュール制御部52は、カウント値cに1を加算する(ステップS144)。
【0060】
モジュール制御部52は、カウント値cが52以上であるか、又は15秒(15回)以上現在位置の取得に失敗したか否かを判別する(ステップS145)。52以上ではなく(52未満である)かつ15秒以上現在位置の取得に失敗していないと判別された場合には(ステップS145で“NO”)、モジュール制御部52の処理は、ステップS154に移行する。カウント値cが52以上である(捕捉動作の再開に係る所定の精度基準)か又は15秒以上現在位置の取得に失敗したと判別された場合には(ステップS145で“YES”)、モジュール制御部52は、カウント値cを「0」に初期化し(ステップS146)、位置精度をNGであると判定して(ステップS147)、位置精度判定処理を終了し、処理を測位制御処理に戻す。
【0061】
ステップS143、S145の判別処理からステップS154の処理に移行すると、モジュール制御部52は、捕捉動作の停止から所定時間(第1の基準時間)ごとのタイミング、例えば、2分(120秒)ごとのタイミングであるか否かを判別する(ステップS154)。所定時間ごとのタイミングであると判別された場合には(ステップS154で“YES”)、モジュール制御部52は、カウント値cを「0」に初期化する(ステップS155)。それから、モジュール制御部52は、位置精度をOKであると判定して(ステップS156)、位置精度判定処理を終了し、処理を測位制御処理に戻す。所定時間ごとのタイミングではないと判別された場合には(ステップS154で“NO”)、モジュール制御部52の処理は、ステップS156に移行する。
すなわち、本実施形態の電子時計1では、精度基準として、第1の基準時間である2分間に52秒以上(第1の割合が52/120)、推定誤差範囲εの値が基準値Rth以上となる低精度時間が生じた場合と、15回以上(第2の割合が15/120)現在位置の取得に失敗した場合(失敗した回数の割合は、失敗回数を第1の基準時間(120秒)における測位動作回数、すなわち、120回で除した値)に、捕捉動作が再開される。なお、これら52秒や15回といった基準時間や基準回数は、適宜変更可能である。また、2分間における任意のタイミングではなく、例えば、15回連続して現在位置の取得に失敗した場合などに限ってもよい。
【0062】
以上のように、本実施形態の衛星電波受信処理部50は、測位衛星からの電波を捕捉して受信する受信部51と、受信部51により受信された電波に基づいて測位を行い自機の現在位置を取得するモジュール制御部52と、を備える。モジュール制御部52は、測位に必要な数(4機)の測位衛星からの電波が捕捉されている場合に、捕捉動作の開始から8秒経過後(所定の条件)に受信部51による新たな測位衛星からの電波の捕捉動作を停止させ、捕捉動作の停止中に、取得された現在位置の推定誤差範囲εが基準値Rthより大きい時間が120秒当たり52秒以上となった場合には、所定の精度基準を満たさないとして、受信部51に捕捉動作を再開させる。
このように、一律に捕捉されている捕捉衛星の数で追加捕捉の必要性を判断するのではなく、また、受信状態によらずに定期的に捕捉動作を行うのでもなく、測位精度に応じて捕捉動作を再開することで、必要な精度を維持しつつ必要最小限の捕捉動作の実施とすることができるので、必要以上に電力消費を増大させずに効率的に測位動作を行うことができる。したがって、衛星電波受信処理部50では、精度のよい測位動作を効率的に継続させることができる。
【0063】
また、モジュール制御部52は、精度基準として推定誤差範囲εが基準値Rthよりも大きい低精度時間が第1の基準時間(例えば2分間)のうちの所定の第1の割合(52/120)以上となった場合に、受信部51による捕捉動作を再開させる。
このように、所定時間内の回数を計数することで、移動中などにおける短時間の精度低下といったものに対して毎回対応して捕捉動作を開始せず、また一方で、現在の受信状態とは関係の薄い長時間前の受信状態を考慮しないので、必要以上に捕捉動作の回数を多くせず、電力消費を増大させない。また、2分間の各秒における評価を単純に基準値に対する大小のみで判断して加算するのみであるので、継続的に多くのデータを記憶しておく必要がなく、処理が容易である。
【0064】
また、モジュール制御部52は、第1の基準時間(2分間)内に現在位置の取得に失敗した回数の割合が第1の割合(52/120)未満の第2の割合(ここでは、15/120)以上となった場合に受信部51による捕捉動作を再開させる。
このように、測位自体に失敗する状況となった場合には、精度が低下した場合よりも速やかに捕捉動作を再開させて、現在位置を取得可能とさせ、測位をより安定して継続させることができる。
【0065】
また、モジュール制御部52電波が受信された複数の測位衛星の各位置に対して電波の各受信状態をそれぞれ組み合わせて得られる第1のずれ見積もり量Δxと、電子時計1(衛星電波受信処理部50)の移動状況に応じて求められる予測位置pfに対する取得された現在位置pmのずれΔpとをそれぞれ考慮して、現在位置の推定誤差範囲εを算出する。
このように、推定誤差範囲εの算出において、測位衛星の配位(DOP)などだけでなく、個々の電波受信強度を考慮し、さらに、予測位置を用いた多面的な評価を行うことで、より適切に安定して大きなずれを生じさせにくい測位を継続させることができる。
【0066】
また、モジュール制御部52は、測位精度に係る第1のずれ見積もり量Δxと、予測位置pfと現在位置pmとのずれに応じた第2のずれ見積もり量Δpとをそれぞれ算出し、第1のずれ見積もり量Δxと第2のずれ見積もり量Δpとに基づいて現在位置の推定誤差範囲εを算出する。このように、複数の誤差要因を考慮し、特に、上述のように適切に受信強度による誤差に対する影響を考慮することで、誤差範囲としてより適切な数値を得ることができる。
【0067】
また、モジュール制御部52は、第1のずれ見積もり量Δx及び第2のずれ見積もり量Δpのうち大きいほうを現在位置の推定誤差範囲εとする。このような簡単な処理で最大の誤差を容易に想定し得るので、ずれを過小評価せずに、精度維持に必要な場合には的確に捕捉動作を再開させることができる。
【0068】
また、測位衛星からの電波受信強度と当該電波受信強度に応じた当該測位衛星の測距精度e
iとの対応関係を記憶するROM63(又は記憶部53)を備え、モジュール制御部52は、現在位置の算出に用いられた複数の測位衛星の現在位置に対する相対位置xと、当該複数の測位衛星からの電波受信強度にそれぞれ応じた測距精度e
iとの組み合わせに基づいて、第1のずれ見積もり量Δxを算出する。
このようにDOPに準じて測位衛星の配置に基づく第1のずれ見積もり量Δxの算出に測距精度eiを組み込むことで、各測位衛星の配置だけでなく、当該複数の測位衛星からの電波受信強度の影響を各々適切に考慮して位置精度を見積もることができる。したがって、より正確に現在位置の精度を評価して捕捉動作の再開要否を判断することができる。
【0069】
また、モジュール制御部52は、複数の測位衛星の現在位置に対する相対位置のばらつきを測距精度e
iで各々重み付け演算することで第1のずれ見積もり量Δxを算出する。このように、各測位衛星のSNRに応じた測距精度を各々反映して第1のずれ見積もり量Δxを求めるので、より適切に誤差範囲を定量的に示す数値を得ることができる。
【0070】
また、モジュール制御部52は、過去の測位結果に基づいて電子時計1(衛星電波受信処理部50)の移動速度を算出し、前回の測位位置から当該移動速度で移動した場合の位置を新たな予測位置pfとして求める。これにより、より適切にSNRに応じて推定誤差範囲εを定量的に評価して捕捉動作の再開要否を判断することができる。
【0071】
また、本実施形態の電子時計1は、上述の衛星電波受信処理部50(ROM63を含み得る)と、日時を計数する計時回路47と、計時回路47が計数する日時を表示可能な表示部62と、を備える。
このように、電子時計1において、上述のように捕捉動作の再開要否を測位結果の精度に基づいて判断することで、特にユーザの移動に伴う現在位置の変化が想定される携帯型の電子時計において、捕捉動作の過多を抑制しつつ必要な精度が継続して得られるように捕捉動作の再開要否を判断することができる。これにより、電力消費の増大を抑えつつより効果的に安定した測位精度が維持可能となり、現在位置の誤同定による地方時設定の誤りなどを防ぐことができる。
【0072】
また、本実施形態の測位制御方法は、受信部51により受信された電波に基づいて測位を行い電子時計1(衛星電波受信処理部50)の現在位置を取得する測位演算ステップ、測位に必要な数の測位衛星からの電波が捕捉されている場合に、捕捉動作の開始から8秒経過後(所定の条件)で受信部51による新たな測位衛星からの電波の捕捉動作を停止させる捕捉停止ステップ、捕捉動作の停止中に、取得された現在位置の誤差範囲が所定の精度基準を満たさない場合には、受信部51に前記捕捉動作を再開させる捕捉再開ステップを含む。
このように、測位精度に応じて捕捉動作の再開要否を判断することで、必要な精度を維持しつつ必要最小限の捕捉動作の実施とすることができるので、必要以上に電力消費を増大させずに効率的に測位動作を行うことができる。したがって、衛星電波受信処理部50では、精度のよい測位動作を効率的に継続させることができる。
【0073】
また、上述の測位制御方法に係るプログラム631をコンピュータにインストールして実行させることで、容易にCPU(モジュール制御部52)に測位精度に係る判定処理を行わせ、必要な精度を維持できるように柔軟に捕捉動作の再開要否を判断することができる。これにより、より安定して精度のよい現在位置データを継続的に得ることができる。
【0074】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、所定の精度基準として第1のずれ見積もり量Δx及び第2のずれ見積もり量Δpのうち大きいほうを推定誤差範囲εとして測位精度(誤差範囲)を表す指標としたが、いずれか一方であってもよいし、運動状態などによって使い分けられてもよい。また、第1のずれ見積もり量Δx及び第2のずれ見積もり量Δp以外の値、例えば従来のDOP値や、NMEA−0183のGSTメッセージフォーマット(Pseudorange Noise Statistics)における誤差範囲(Error ellipse)のうち長軸方向の値や、当該誤差範囲に従って得られる緯度誤差の標準偏差と経度誤差の標準偏差のうちの大きいほうの値などが用いられてもよい。また、第2のずれ見積もり量Δpに係る予測位置の見積もり方法が異なっていてもよく、この見積もりの際に第1のずれ見積もり量Δxに係る測位衛星の配位や受信強度が考慮されてもよい。反対に、第1のずれ見積もり量Δxの算出時に、予測位置とのずれに伴う重み付けを加えてもよいし、また、各測位衛星からの電波の受信強度に応じた重み付けの代わりに3軸方向へのオフセット値を設定して、各軸方向について各々誤差範囲を算出することとしてもよい。
【0075】
また、両方が用いられる場合であっても、単純に大きい方に設定するのではなく、平均値などが用いられてもよいし、電子時計1(衛星電波受信処理部50)の運動状態、特に加速度変化などに応じて重み付け平均された値が用いられてもよい。また、加速度変化については、測位の結果だけではなく、別個に備える加速度センサの計測値を参照したりしてもよい。
【0076】
また、捕捉の停止に係る条件は、単純な時間制限ではなく、これについても推定誤差範囲εなどに基づいて定められてもよい。またこの場合には、捕捉された測位衛星の数に基づいて捕捉動作の停止が判断されてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態では、精度基準として、第1の基準時間(
例えば、2分)単位で任意の52秒間又は連続する52秒間測位精度が低い場合に捕捉動作を再開させることとしたが、単純に測位精度が低かった回数を積算して所定回数を超えた場合などであってもよい。また回数による評価ではなく、第1の基準時間ごとに当該第1の基準時間内で得られた推定誤差範囲εの平均値や、直近の第1の基準時間の推定誤差範囲εの移動平均の値が基準値Rthと比較されて捕捉動作の再開の要否が判断されてもよい。
【0078】
また、測位精度が低下した場合と現在位置の取得に失敗した場合とで、捕捉動作の再開に係る基準を変更しなくてもよい。現在位置の取得の失敗は、推定誤差範囲εが無限大と同等と判断されてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態では、電子時計1が備える衛星電波受信処理部50による測位制御動作を例に挙げて説明したが、衛星電波受信処理部50は、電子時計1に設けられているものに限られない。他の電子機器に設けられるものであってもよく、また、これら電子機器に搭載される衛星電波受信用のモジュール単体であってもよい。また、受信対象の測位衛星は特に限定されるものではなく、複数の全地球測位システムに係る測位衛星やこれらを補完する地域測位衛星などからの受信電波が混在していてもよい。
【0080】
また、以上の説明では、現在日時情報の取得時における本発明の衛星電波受信制御に係るプログラム631を記憶するコンピュータ読み取り可能な媒体としてフラッシュメモリなどの不揮発性メモリやマスクROMなどからなるROM63を例に挙げて説明したが、これらに限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な
記録媒体として、HDD(Hard Disk Drive)、CD−ROMやDVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した構成、制御手順や表示例などの具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0082】
[付記]
<請求項1>
測位衛星からの電波を捕捉して受信する受信部と、
前記受信部により受信された電波に基づいて測位を行い自機の現在位置を取得する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
測位に必要な数の測位衛星からの電波が捕捉されている場合に、所定の条件で前記受信部による新たな測位衛星からの電波の捕捉動作を停止させ、
前記捕捉動作の停止中に、取得された現在位置の誤差範囲が所定の精度基準を満たさない場合には、前記受信部に前記捕捉動作を再開させる
ことを特徴とする衛星電波受信装置。
<請求項2>
前記制御部は、前記精度基準として前記誤差範囲が基準値よりも広い低精度時間が第1の基準時間のうちの所定の第1の割合以上となった場合に、前記受信部による前記捕捉動作を再開させることを特徴とする請求項1記載の衛星電波受信装置。
<請求項3>
前記制御部は、前記第1の基準時間内に現在位置の取得に失敗した回数の割合が前記第1の割合未満の第2の割合以上となった場合に前記受信部による前記捕捉動作を再開させることを特徴とする請求項2記載の衛星電波受信装置。
<請求項4>
前記制御部は、電波が受信された複数の測位衛星の各位置に対して電波の各受信状態をそれぞれ組み合わせて得られる測位精度と、自機の移動状況に応じて求められる予測位置に対する取得された現在位置のずれとをそれぞれ考慮して、前記現在位置の誤差範囲を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の衛星電波受信装置。
<請求項5>
前記制御部は、前記測位精度に係る第1の誤差範囲と、前記予測位置と現在位置とのずれに応じた第2の誤差範囲とをそれぞれ算出し、前記第1の誤差範囲と前記第2の誤差範囲とに基づいて前記現在位置の誤差範囲を算出することを特徴とする請求項4記載の衛星電波受信装置。
<請求項6>
前記制御部は、前記第1の誤差範囲及び前記第2の誤差範囲のうち大きいほうを前記現在位置の誤差範囲とすることを特徴とする請求項5記載の衛星電波受信装置。
<請求項7>
前記測位衛星からの電波受信強度と当該電波受信強度に応じた当該測位衛星の測距精度との対応関係を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、現在位置の算出に用いられた複数の測位衛星の現在位置に対する相対位置と、当該複数の測位衛星からの電波受信強度にそれぞれ応じた前記測距精度との組み合わせに基づいて、前記第1の誤差範囲を算出する
ことを特徴とする請求項5又は6記載の衛星電波受信装置。
<請求項8>
前記制御部は、前記複数の測位衛星の現在位置に対する相対位置のばらつきを前記測距精度で各々重み付け演算することで前記第1の誤差範囲を算出することを特徴とする請求項7記載の衛星電波受信装置。
<請求項9>
前記制御部は、過去の測位結果に基づいて自機の移動速度を算出し、前回の測位位置から当該移動速度で移動した場合の位置を新たな予測位置として求めることを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項に記載の衛星電波受信装置。
<請求項10>
請求項1〜9のいずれか一項に記載の衛星電波受信装置と、
日時を計数する計時部と、
前記計時部が計数する日時を表示可能な表示部と、
を備えることを特徴とする電子時計。
<請求項11>
測位衛星からの電波を捕捉して受信する受信部を備える衛星電波受信装置の測位制御方法であって、
前記受信部により受信された電波に基づいて測位を行い自機の現在位置を取得する測位演算ステップ、
測位に必要な数の測位衛星からの電波が捕捉されている場合に、所定の条件で前記受信部による新たな測位衛星からの電波の捕捉動作を停止させる捕捉停止ステップ、
前記捕捉動作の停止中に、取得された現在位置の誤差範囲が所定の精度基準を満たさない場合には、前記受信部に前記捕捉動作を再開させる捕捉再開ステップ
を含むことを特徴とする測位制御方法。
<請求項12>
測位衛星からの電波を捕捉して受信する受信部を備える衛星電波受信装置のコンピュータを、
前記受信部により受信された電波に基づいて測位を行い自機の現在位置を取得する測位演算手段、
測位に必要な数の測位衛星からの電波が捕捉されている場合に、所定の条件で前記受信部による新たな測位衛星からの電波の捕捉動作を停止させる捕捉停止手段、
前記捕捉動作の停止中に、取得された現在位置の誤差範囲が所定の精度基準を満たさない場合には、前記受信部に前記捕捉動作を再開させる捕捉再開手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。