(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
相互に電気接続された電気負荷(3a)と電線(3b)とを有する負荷回路(3)と、電源(2)との間に設けられることで、前記負荷回路を過電流から保護するように構成された過電流保護装置(1)であって、
前記電源から前記電気負荷に通流する負荷電流の通流と遮断とを切換制御するスイッチング素子(11)と、
前記負荷電流を検出する電流検出部(12)と、
前記電流検出部によって検出された前記負荷電流の時間変化に基づいて、所定タイミングにて前記電線の熱特性を推定する特性推定部(15)と、
前記特性推定部によって推定された前記熱特性と、前記電流検出部によって検出された前記負荷電流とに基づいて、前記負荷回路を過電流から保護するために前記負荷電流を遮断する過電流保護信号を前記スイッチング素子に出力する制御部(10)と、
を備えた過電流保護装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると当該実施形態の理解が妨げられるおそれがあるため、当該実施形態の説明の後にまとめて記載する。
【0013】
(構成)
図1を参照すると、過電流保護装置1は、電源2と負荷回路3との間に設けられることで、負荷回路3を過電流から保護するように構成されている。負荷回路3は、相互に電気接続された電気負荷3aと電線3bとを有している。
【0014】
本実施形態においては、過電流保護装置1は、不図示の車両に搭載されている。具体的には、過電流保護装置1は、車載負荷である電気負荷3aの駆動を制御する車両負荷制御ECUに設けられている。ECUはElectronic Control Unitの略である。すなわち、過電流保護装置1は、電気負荷3aの駆動を制御する負荷駆動回路としての機能を有している。電気負荷3aの駆動を制御する車両負荷制御ECUを、以下単に「車両負荷制御ECU」と略称する。電線3bは、いわゆる車両用ワイヤハーネスであって、過電流保護装置1と電気負荷3aとの間を接続するように設けられている。
【0015】
過電流保護装置1は、制御部10と、スイッチング素子11と、電流検出部12と、電圧検出部13と、温度検出部14と、特性推定部15と、データ格納部16とを備えている。
【0016】
本実施形態においては、過電流保護装置1は、インテリジェントパワーデバイス、制御IC、および書き換え可能な不揮発性メモリを有している。これらは、車両負荷制御ECUに搭載されている。過電流保護装置1の全体の動作制御を行う制御部10は、インテリジェントパワーデバイスの動作を制御する制御ICにおける、機能上の構成として設けられている。
【0017】
具体的には、制御部10は、車両負荷制御ECUの外部から受信した指令信号等に基づいて、制御信号をスイッチング素子11に出力するようになっている。制御信号は、電気負荷3aに通流する負荷電流の通流と遮断とを切換制御するための信号である。また、制御部10は、過電流保護信号をスイッチング素子11に出力するようになっている。過電流保護信号は、制御信号が負荷電流を通流させる状態(すなわち“ON”状態)であっても、負荷回路3を過電流から保護するために、負荷電流を遮断する信号である。
【0018】
スイッチング素子11は、例えば、インテリジェントパワーデバイスの内部に設けられたパワー半導体素子であって、MOSFET等によって構成されている。MOSFETはMetal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistorの略である。すなわち、スイッチング素子11は、制御端子(すなわちゲート等)に入力された制御信号に対応して、電源2から電気負荷3aに通流する負荷電流の通流と遮断とを切換制御するように構成されている。また、スイッチング素子11は、制御端子に過電流保護信号が入力された場合に、負荷電流を遮断するように構成されている。
【0019】
電流検出部12は、負荷電流を検出するように設けられている。すなわち、電流検出部12は、負荷電流に対応する電気出力(例えば電圧)を出力するように構成されている。具体的には、例えば、電流検出部12は、スイッチング素子11における負荷電流の流入側端子と流出側端子間の電圧(すなわちドレイン−ソース間電圧等)に対応する出力を発生するように、インテリジェントパワーデバイスの内部に設けられ得る。あるいは、例えば、電流検出部12は、負荷電流の通流経路あるいは負荷電流を所定割合で分流する分流経路に介装された、電流検出用抵抗の両端電圧に対応する出力を発生するように構成され得る。
【0020】
電圧検出部13は、電源2の出力電圧である電源電圧を検出するように設けられている。すなわち、電圧検出部13は、電源電圧に対応する電気出力(例えば電圧)を出力するように構成されている。具体的には、例えば、電圧検出部13は、電源電圧を所定割合で分圧した電圧に対応する出力を発生するように設けられ得る。
【0021】
温度検出部14は、過電流保護装置1または電線3bの周囲温度に対応する出力を発生するように設けられている。具体的には、温度検出部14は、インテリジェントパワーデバイスの温度に対応する出力を発生するように、インテリジェントパワーデバイスの内部に設けられ得る。
【0022】
本実施形態においては、特性推定部15は、制御ICにおける機能上の構成として設けられている。特性推定部15は、電流検出部12によって検出された負荷電流、電圧検出部13によって検出された電源電圧、および、温度検出部14によって検出された周囲温度に基づいて、電線3bの熱特性を推定するように構成されている。熱特性には、熱抵抗および熱容量が含まれる。
【0023】
具体的には、本実施形態においては、特性推定部15は、電流検出部12によって検出された負荷電流の時間変化と、電圧検出部13によって検出された電源電圧と、温度検出部14によって検出された周囲温度と、データ格納部16に格納された各種データとに基づいて、電線3bの熱特性を推定するようになっている。すなわち、制御部10は、特性推定部15によって推定された熱特性と電流検出部12によって検出された負荷電流とに基づいて電線3bの温度を推定し、推定した温度が所定の閾値温度を超えた場合に過電流保護信号を出力するようになっている。
【0024】
データ格納部16は、車両負荷制御ECU内の制御ICに内蔵、または、制御ICとは別に実装された書き換え可能な不揮発性メモリであって、フラッシュROM等によって構成されている。すなわち、データ格納部16は、電源投入中にデータを書き換え可能である一方で、電源遮断後はデータを保持する機能を有している。
【0025】
データ格納部16には、複数の種類の電線3bの熱特性に関連する情報が、種類毎に対応して格納されている。熱特性は、線種および線径により決まる値である。具体的には、熱特性は、主として、中心導体の材質および断面積、ならびに、中心導体の周囲を被覆する絶縁体層の材質および断面積により決まる値である。
【0026】
線種は、例えば、AVS、AVSS、CIVUS、AEX、等である。AVSは、中心導体の周囲を被覆する絶縁体層が塩化ビニルによって形成され、絶縁体層が薄肉タイプである、自動車用低圧電線を示す。AVSSは、AVSにおける絶縁体層が極薄肉タイプであることを示す。CIVUSは、自動車用低圧電線における、中心導体が圧縮導体であり、且つ、絶縁体層が超薄肉タイプの塩化ビニルであることを示す。AEXは、絶縁体層が架橋ポリエチレンである、自動車用低圧電線を示す。
【0027】
線径は、中心導体の計算断面積に基づく値であり、「サイズ」とも称される。すなわち、サイズ0.3sqは中心導体の計算断面積0.3817mm
2に対応し、サイズ0.5sqは中心導体の計算断面積0.5629mm
2に対応し、サイズ0.85sqは中心導体の計算断面積0.8846mm
2に対応する。
【0028】
図2および
図3は、ある特定の電線3bの線種、具体的にはAVSにおける、ある特定の周囲温度における複数のサイズのそれぞれに対応する許容電流特性を示す。
図3は、
図2における低電流側の部分を拡大したものである。
図4は、ある特定の電線3bの種類、具体的にはAVS0.3sqにおける、周囲温度の変化に対応する許容電流特性の変化を示す。
【0029】
「許容電流特性」とは、電線3bに通流する電流値と、その電流を通流し続けた際に電線3bが許容温度に達するまでの時間との関係であり、電線3bの熱特性から算出できる。電線3bの熱特性から算出できる情報は、電線3bの熱特性に関する情報と云い得る。「許容温度」は、電線3bが劣化しない温度、あるいは、電線3bが発煙または発火しない温度である。なお、許容電流特性は、現在市販されている電線3bのカタログ等において、「発煙特性」とも称されている。
【0030】
(動作概要)
以下、本実施形態の構成による動作の概要について、同構成により奏される作用効果とともに、各図面を参照しつつ説明する。
【0031】
制御部10は、受信した指令信号に基づいて、制御信号をスイッチング素子11に出力する。かかる制御信号は、スイッチング素子11における制御端子に入力される。これにより、スイッチング素子11にて、制御信号に対応したスイッチング動作が実行される。
【0032】
このように、制御部10は、受信した指令信号に対応して、スイッチング素子11のON/OFFを制御する。これにより、負荷電流が制御される。
【0033】
電流検出部12は、負荷電流を検出する。制御部10は、電線3bの熱特性と、電流検出部12によって検出された負荷電流と、温度検出部14によって検出された周囲温度とに基づいて、電線3bの温度を推定する。制御部10は、推定した電線3bの温度が所定の閾値温度を超えた場合に、過電流保護信号を出力することで負荷電流を遮断する。このような過電流保護動作は、基本的には、従来技術と同様である。
【0034】
電線3bの熱特性は、電線3bの種類に応じて異なり得る。この点、本実施形態の構成においては、特性推定部15は、電流検出部12によって検出された負荷電流に基づいて、電線3bの熱特性を推定する。すなわち、特性推定部15は、電流検出部12によって検出された負荷電流の時間変化と、データ格納部16に格納された熱特性とに基づいて、電線3bの種類を推定する。また、特性推定部15は、推定した電線3bの種類に対応する熱特性を、電線3bの熱特性として推定する。
【0035】
具体的には、本実施形態においては、特性推定部15は、熱特性を、複数の線種および線径についてデータ格納部16から読み出す。また、特性推定部15は、データ格納部16から読み出した複数の熱特性の各々に基づいて、
図5に示されているように、対応する線種および線径の許容電流特性を算出する。なお、
図5においては、図示および説明の煩雑化を避けるため、算出した多数の許容電流特性のうち、負荷電流の時間変化を示す曲線に最も近接する2つのみを図示しているものとする。負荷電流の時間変化を示す曲線を、以下「負荷電流曲線」と略称する。
【0036】
負荷電流は、電源電圧および周囲温度の影響を受ける。このため、特性推定部15における推定に際しては、電源電圧および周囲温度の影響を考慮した電流値を用いる必要がある。このため、本実施形態においては、特性推定部15は、電流検出部12によって検出された負荷電流を電源電圧および周囲温度によって補正した値に基づいて、負荷電流曲線を取得する。なお、特性のばらつきおよび経年変化の影響も想定され得る。そこで、電流検出部12によって検出された負荷電流には、所定の係数が乗算されてもよい。
【0037】
また、特性推定部15は、電流検出部12によって検出した負荷電流に基づく負荷電流曲線と、算出した複数の許容電流特性とを対比することで、電線3bの種類を推定する。具体的には、特性推定部15は、複数の許容電流特性のうち、負荷電流曲線よりも常時高電流側に位置し、且つ負荷電流曲線に最も近接するものを特定する。さらに、特性推定部15は、特定した許容電流特性に対応する線種および線径を、電線3bの種類と推定する。
【0038】
図5に示した具体例においては、負荷電流曲線に最も近接する2つの許容電流特性のうち、AVS0.3sqの許容電流特性は、通電時間が10秒と100秒との間の区間で負荷電流曲線と交差し、交点よりも長時間側では許容電流特性が負荷電流曲線よりも低電流側となる。一方、AVS0.5sqの許容電流特性は、すべての通電時間において、負荷電流曲線と交差せず、負荷電流曲線よりも常時高電流側に位置する。そこで、この場合、特性推定部15は、電線3bの種類をAVS0.5sqと推定する。
【0039】
特性推定部15は、このようにして推定した電線3bの種類に対応する熱特性を、電線3bの熱特性と推定する。
図5に示した上記の具体例においては、特性推定部15は、電線3bの熱特性を、AVS0.5sqの熱特性と同一の値と推定する。制御部10は、推定された熱特性に基づいて、過電流保護制御を実行する。
【0040】
図6は、過電流保護装置1における、電線3bの熱特性の推定処理の一例を示す。なお、図面及び明細書中の以下の説明において、「ステップ」を単に「S」と略記する。
【0041】
過電流保護装置1は、
図6に示された特性推定処理を、所定タイミングにて実行する。例えば、特性推定処理は、車両の出荷検査時に、外部からの操作により強制的に実行される。また、特性推定処理は、定期的に実行されてもよいし、特定の条件成立時、例えば、車両のイグニッションスイッチがONされた時点で実行されてもよい。
【0042】
上記の説明から明らかなように、特性推定処理に際しては、負荷回路3に負荷電流が所定時間通流する。このため、特性推定処理の最中においても、過電流による電線3bの過熱が発生する可能性は否定できない。そこで、特性推定処理が完了する前に、電線3bの熱特性を一旦仮決めすることで、特性推定処理の最中にて過電流保護制御を並行して実行する必要がある。
【0043】
そこで、特性推定処理が開始されると、まず、S601にて、過電流保護装置1は、今回の特性推定処理の実行が初回であるか否かを判定する。すなわち、S601にて、過電流保護装置1は、今回の特性推定処理の実行前に、特性推定処理が実行されたことがあるか否かを判定する。
【0044】
今回の特性推定処理の実行が初回ではない場合(すなわちS601=NO)、今回の特性推定処理の実行前に、特性推定処理が実行されたことがあることになる。すなわち、過電流保護装置1は、過去に、電線3bの熱特性を推定したことがある。そこで、この場合、過電流保護装置1は、処理をS602に進行させる。S602にて、過電流保護装置1は、前回の特性推定処理の実行時に推定された熱特性を、仮の熱特性として設定する。
【0045】
一方、今回の特性推定処理の実行が初回である場合(すなわちS601=YES)、熱特性推定の前回値は存在しない。具体的には、例えば、車両の出荷検査時が、この場合に該当する。そこで、この場合、過電流保護装置1は、処理をS603に進行させる。S603にて、過電流保護装置1は、所定の初期値を、仮の熱特性として設定する。この初期値としては、例えば、データ格納部16に格納されている熱特性のうち、最も耐熱性が低いものに対応する熱特性が用いられ得る。
【0046】
S602またはS603にて仮の熱特性が設定された後、過電流保護装置1は、処理をS604に進行させる。S604にて、過電流保護装置1は、周囲温度Taおよび電源電圧Vを取得する。次に、S605にて、過電流保護装置1は、負荷電流の通電を開始する。
【0047】
負荷電流の通電が開始すると、S606にて、過電流保護装置1は、負荷電流値を検出する。検出した負荷電流値は、負荷電流曲線の取得のため、負荷電流の通電開始からの経過時間と対応付けられつつ、制御部10内のメモリまたはデータ格納部16に逐次格納される。
【0048】
次に、S607にて、過電流保護装置1は、S606にて検出した最新の負荷電流値と、S602またはS603にて設定された仮の熱特性とに基づいて、電線3bの推定温度Teを算出する。続いて、S608にて、過電流保護装置1は、S607にて算出された推定温度Teが所定の閾値温度Te_th以下であるか否かを判定する。S607における推定温度Teの算出処理、および、S608における判定処理は、熱特性が仮決めされた値であること以外は、従来の過電流保護制御と同様である。
【0049】
推定温度Teが閾値温度Te_thを超えた場合(すなわちS608=NO)、過電流保護装置1は、処理をS609に進行させた後、特性推定処理を終了する。S609にて、過電流保護装置1は、負荷電流の通電を遮断する。すなわち、制御部10は、過電流保護信号を出力する。
【0050】
推定温度Teが閾値温度Te_th以下である場合(すなわちS608=YES)、過電流保護装置1は、処理をS610に進行させる。S610にて、過電流保護装置1は、負荷電流が定常化したか否かを判定する。
【0051】
具体的には、S610にて、過電流保護装置1は、単位時間(例えば1秒)あたりの負荷電流の変化量が所定値未満となった時点から所定時間経過したか否かを判定する。この所定時間は、負荷電流曲線が、
図5に示されているような複数の許容電流特性との対比により電線3bの種類を推定することが可能な程度に取得されるために、充分な時間に設定される。すなわち、例えば、この所定時間は、1〜2秒程度に設定され得る。
【0052】
負荷電流が定常化していない場合(すなわちS610=NO)、過電流保護装置1は、処理をS606に戻す。これにより、負荷電流が定常化するまで、負荷電流値の検出および格納が、繰り返し実行される。これに対し、負荷電流が定常化した場合(すなわちS610=YES)、過電流保護装置1は、S611〜S614の処理を実行した後、特性推定処理を終了する。
【0053】
S611にて、過電流保護装置1は、負荷電流の通電開始からの経過時間と対応付けられつつ格納された負荷電流値に基づいて、負荷電流曲線を取得する。本実施形態においては、負荷電流曲線の取得に際し、格納された負荷電流値は、S604にて取得した電源電圧Vおよび周囲温度Taから想定される最大の電流値に補正される。なお、必要に応じて、特性のばらつきおよび経年変化の影響を考慮した所定の係数も乗算され得る。S612にて、過電流保護装置1は、熱特性を、データ格納部16から複数読み出す。
【0054】
S613にて、過電流保護装置1は、取得した負荷電流曲線と、読み出した複数の熱特性とに基づいて、電線3bの種類を特定する。S614にて、過電流保護装置1は、特定した種類に対応した熱特性を、電線3bの熱特性と推定し、過電流保護制御用の熱特性として設定する。すなわち、過電流保護制御用の熱特性が、上記の仮決めされた値から更新される。
【0055】
上記の通り、本実施形態の構成においては、過電流保護動作に用いられる電線3bの熱特性は、電流検出部12によって検出された負荷電流に基づいて、特性推定部15により推定されたものである。すなわち、過電流保護装置1を電源2および負荷回路3に電気接続した車載状態にて実際に負荷電流を通流させることで、特性推定部15により、電線3bの熱特性が自動的に設定される。
【0056】
このように、かかる構成によれば、過電流保護装置1は、熱特性をあらかじめ車載前に設定しておかなくても、単に車載状態として起動するだけで、適切な過電流保護動作を自律的に行うことができる。したがって、かかる構成によれば、多種多様な負荷回路3に対応させることが可能な、汎用的な過電流保護装置1を提供することができる。
【0057】
(変形例)
本開示は、上記実施形態に記載された具体的例示に限定されるものではない。即ち、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態と異なる部分についてのみ説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一又は均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾又は特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0058】
本開示は、上記実施形態に記載された具体例に限定されない。例えば、過電流保護装置1のうちの全部または一部は、CPU、ROM、RAM、および書き換え可能な不揮発性メモリ等を備えた車載マイクロコンピュータとして構成されていてもよい。あるいは、過電流保護装置1のうちの全部または一部は、ゲートアレイ等のASICとして構成されていてもよい。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。
【0059】
電圧検出部13は、省略され得る。この場合、特性推定部15は、電流検出部12によって検出された負荷電流の時間変化と、周囲温度Taとに基づいて、電線3bの種類すなわち熱特性を推定するようになっていてもよい。具体的には、例えば、特性推定部15は、電源電圧が最悪条件(例えば電源2の公称電圧の1.2倍程度)であると仮定して、電線3bの種類すなわち熱特性を推定するようになっていてもよい。
【0060】
温度検出部14は、インテリジェントパワーデバイスの外部に設けられていてもよい。具体的には、例えば、温度検出部14は、車両負荷制御ECU内の基板上であって、インテリジェントパワーデバイスとは異なる位置に実装されていてもよい。あるいは、温度検出部14は、車両負荷制御ECUの外部に設けられていてもよい。すなわち、例えば、外気温センサ、吸気温センサ、等の出力が、温度検出部14の出力として代用され得る。
【0061】
温度検出部14は、省略され得る。この場合、特性推定部15は、電流検出部12によって検出された負荷電流の時間変化と、電源電圧Vとに基づいて、電線3bの種類すなわち熱特性を推定するようになっていてもよい。具体的には、例えば、特性推定部15は、周囲温度が最悪条件(例えば100℃)であると仮定して、電線3bの種類すなわち熱特性を推定するようになっていてもよい。
【0062】
上記実施形態においては、電線3bの種類を推定してから、かかる推定結果に基づいて、電線3bの熱特性が推定されていた。しかしながら、かかる表現は、本開示の開示内容を平易に説明するためになされたものである。したがって、本開示は、かかる態様に限定されない。
【0063】
すなわち、電線3bの種類を表すデータ(例えばAVS0.3sq等)それ自体は、必須ではない。換言すれば、電線3bの種類そのものの推定は、必須ではない。要するに、複数の電線3bにおける熱特性に関する情報が、データ格納部16に格納されていればよい。
【0064】
データ格納部16に格納される、複数の電線3bにおける熱特性に関する情報は、熱特性値に限定されない。具体的には、例えば、複数の電線3bにおける許容電流特性も、データ格納部16に格納され得る。すなわち、データ格納部16には、複数の種類の電線3bについて、通流可能な電流値と通流時間とに関する情報が格納され得る。この場合、データ格納部16には、例えば、複数の種類の電線3bについて、熱特性と許容電流特性との双方が格納され得る。
【0065】
制御部10および特性推定部15は、インテリジェントパワーデバイスの内部に設けられた制御ロジックとして実現され得る。
【0066】
データ格納部16は、車両負荷制御ECUの外部に設けられたデータベースであってもよい。
【0067】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に本開示が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本開示が限定されることはない。
【0068】
変形例も、上記の例示に限定されない。また、複数の変形例が、互いに組み合わされ得る。さらに、上記実施形態の全部又は一部と、変形例の全部又は一部とが、互いに組み合わされ得る。