(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、一実施の形態に係るコンデンサに用いられるコンデンサ素子の一例を示している。
図1は、コンデンサ素子の一部を開いた状態例(展開状態)を示している。このコンデンサ素子2はたとえば、電気二重層コンデンサまたは電解コンデンサのいずれの素子であってもよい。このコンデンサ素子2には一例として陽極箔4、陰極箔6、およびセパレータ8−1、8−2が備えられている。
【0023】
陽極箔4および陰極箔6にはたとえば、アルミニウム箔が用いられ、陽極箔4にはエッチング処理の後、化成処理によって誘電体酸化皮膜が形成されている。
【0024】
セパレータ8−1、8−2はたとえば、クラフト系繊維不織布やヘンプ系繊維不織布などの電解紙であり、陽極箔4と陰極箔6との間の絶縁機能を備えている。セパレータ8−1はエンボス加工部10−1を備え、セパレータ8−2はエンボス加工部10−2を備えている。このエンボス加工部10−1、10−2は本開示の低絶縁部の一例であり、セパレータ8−1、8−2にエンボス加工が行われ、エンボス加工前と比較してセパレータ8−1、8−2の絶縁機能が低くなる。この低絶縁部により、過電圧Vsに対する耐電圧が低い脆弱部が形成される。なお、この脆弱部においても、コンデンサに要求される耐電圧性能を満足する耐電圧特性を有することはいうまでもない。このエンボス加工はたとえば、凹凸が付されたローラをセパレータ8−1、8−2の一方の表面に押し当て、圧縮差で、セパレータ8−1、8−2に凹凸を形成する。
【0025】
コンデンサ素子2はたとえば、積層された陽極箔4、陰極箔6およびセパレータ8−1、8−2の巻回素子であればよい。巻回素子では、セパレータ8−1およびセパレータ8−2を介して陽極箔4および陰極箔6が重ねられる。
【0026】
陽極箔4には陽極リード端子12、陰極箔6には陰極リード端子14が接続されている。これら陽極リード端子12および陰極リード端子14により電源回路などの外部回路にコンデンサ素子2が接続される。
【0028】
図2は、エンボス加工部の形成範囲の一例を示している。
図2は展開状態のセパレータ8−1、8−2の一例を示し、左端はコンデンサ素子2の中心側に配置され、右端はコンデンサ素子2の終端側、つまり外縁側に配置されるものとする。
【0029】
このような展開状態のセパレータ8−1、8−2において、セパレータの平面部分を内側部16と外側部18に区分すれば、エンボス加工部10−1、10−2は内側部16に備えられる。エンボス加工部10−1、10−2は、この内側部16の全範囲に配置してもよく、内側部16の一部に配置してもよい。
【0030】
上側の外側部18の高さをH1、内側部16の高さをH2、下側の外側部18の高さをH3とすれば、高さH1、H2、H3の割合はたとえば5:90:5に設定される。また中心側の外側部18の長さをL1、内側部16の長さをL2、終端側の外側部18の長さをL3とすれば、L1、L2、L3の割合は、コンデンサ素子2の状態、つまり巻回されている状態でコンデンサ素子2の中心から直径方向にたとえば5:85:10に設定される。つまりエンボス加工部10−1、10−2は、たとえばコンデンサ素子2の高さ方向の中央部の90%の範囲内(上端を0〔%〕、下端を100〔%〕として、5〜95〔%〕の範囲内)であり、かつコンデンサ素子2の中心から直径方向に5〜90%の範囲内(中心を0〔%〕、終端を100〔%〕として、5〜90〔%〕の範囲内)に配置される。このエンボス加工部10−1、10−2の配置範囲は、コンデンサの仕様に応じて決定してもよく、たとえば衝撃の規模が大きくなる大型のコンデンサでは、外側部18を拡大させて、内側部16を縮小すればよく、小型のコンデンサであれば、外側部18を縮小させて、内側部16を拡大してもよい。
【0031】
図3のAは、エンボス加工部の断面形状の一例を示し、
図3のBは、このエンボス加工部の密度を示している。
【0032】
セパレータ8−1、8−2の凹部20は、エンボス加工においてローラで強く圧縮された領域であり、圧縮によりセパレータ8−1、8−2が薄くなるとともに、周囲の電解紙を引き込み、
図3のBに示すようにセパレータ8−1、8−2の密度が増加する。
【0033】
これに対し、セパレータ8−1、8−2の凸部22では、電解紙の一部が凹部20に移動し、
図3のBに示すように密度が低下する。凸部22の密度がエンボス加工前よりも低くなるので、セパレータ8−1、8−2の絶縁機能が低下する。この凹部20および凸部22によりセパレータ8−1、8−2に疎密が形成される。
【0034】
セパレータ8−1、8−2の坪量は密度と同様に、電解紙の引き込みにより凹部20で上昇し、逆に凸部22で低下する。つまり、凸部22の坪量がエンボス加工前よりも低くなるので、セパレータ8−1、8−2の絶縁機能が低下することになる。
【0035】
陽極箔4と陰極箔6の間にはセパレータ8−1により絶縁抵抗が形成される。エンボス加工部10−1の凸部22の絶縁抵抗をR1、凹部20の絶縁抵抗をR2、セパレータ8−1の外側部18の絶縁抵抗をR3とすると、密度および坪量が低い凸部22の絶縁抵抗R1が最も小さくなる。絶縁抵抗はR1<R3<R2の順となる。このため、コンデンサに定格電圧を超える過電圧Vsを印加すると、最も絶縁抵抗が小さい凸部22でショートが発生する。セパレータ8−2も同様に、最も絶縁抵抗が小さい凸部22でショートが発生する。つまり、エンボス加工部10−1、10−2の形成によりセパレータ8−1、8−2が低絶縁部を備えることで、陽極箔4と陰極箔6のショートをエンボス加工部10−1、10−2が備えられるコンデンサ素子2の内側部16に誘導することができる。エンボス加工部10−1、10−2は外側部18に包囲されているので、ショートによる衝撃が外側部18により緩和される。つまり、コンデンサ素子2からケースに向かう衝撃がコンデンサ素子の外側部18により吸収される。さらに、凸部22の絶縁抵抗R1は外側部18の絶縁抵抗R3よりも小さいので、エンボス加工をしていないコンデンサ素子よりも早い段階でショートが発生する。このためコンデンサ素子2の移動エネルギの高まりを抑制できる。
【0036】
このようなコンデンサ素子2はコンデンサのケースに収納され、封口板などの封口体でケースを封口する。このようなコンデンサにおいて、ケースや封口板にかかるショートによる衝撃が小さくなり、ショートの発生による被害がコンデンサ内に封じ込められ、ケースおよび封口板の破壊が回避される。
【0038】
この製造工程は、本発明のコンデンサの製造方法の一例である。
【0039】
コンデンサの製造工程には陽極箔4の形成工程、陰極箔6の形成工程、エンボス加工したセパレータ8−1、8−2の形成工程、コンデンサ素子2の形成工程、コンデンサ素子2の端子接続工程およびコンデンサ素子2の封入工程が含まれる。
【0040】
陽極箔4の形成工程では、既述の陽極箔4をたとえば、アルミニウム箔を用いて形成すればよい。既述したように、アルミニウム箔にエッチング処理を施し、その表面にたとえば、化成処理により誘電体酸化皮膜を形成すればよい。また、陽極リード端子12を陽極箔4に接続すればよい。
【0041】
陰極箔6の形成工程では、既述の陰極箔6をたとえば、アルミニウム箔を用いて形成すればよい。また、陰極リード端子14を陰極箔6に接続すればよい。
【0042】
エンボス加工したセパレータ8−1、8−2の形成工程では、セパレータ8−1の内側部16の一部または全範囲に既述のエンボス加工を行い、エンボス加工部10−1を形成すればよい。エンボス加工はたとえば、電解紙が巻き付けられたロールから電解紙を引き出し、この電解紙を陽極箔4および陰極箔6に重ねるまでの間の搬送過程において所定のタイミングで凹凸が付されたローラを電解紙に押し当てて形成すればよい。エンボス加工は、電解紙をセパレータ8−1の大きさに切断する前に行ってもよく、切断後に行ってもよい。セパレータ8−2はセパレータ8−1と同様にエンボス加工を行い、エンボス加工部10−2を形成すればよい。
【0043】
コンデンサ素子2の形成工程ではたとえば、箔間にセパレータ8−1およびセパレータ8−2を介して陽極箔4および陰極箔6が重ねられ、巻回してコンデンサ素子2を形成すればよい。
【0044】
コンデンサ素子2の端子接続工程では、コンデンサ素子2の陽極リード端子12に陽極端子、コンデンサ素子2の陰極リード端子14に陰極端子を接続する。陽極端子、陰極端子は、封口板に予め取り付けられているものとする。封口板には、コンデンサ内で発生するガスを外部に排出する圧力弁が取り付けられていてもよい。
【0045】
そして、封入工程では予め作成したケースにコンデンサ素子2を収納し、ケースを封口板で封口する。この封口では、ケースの開口端部をカーリング処理により、封口板を固定する。これによりコンデンサが完成する。
【0047】
この一実施の形態に係るコンデンサによれば、次のような効果が得られる。
【0048】
(1) コンデンサは定格電圧を超える過電圧Vsが端子間に作用したとき、コンデンサ素子2の外側部18でのショートを防止できるので、安全性が高められ、信頼性を向上させることができる。
【0049】
(2) 陽極端子と陰極端子との間に定格電圧を超える過電圧Vsが加わり、陽極箔4および陰極箔6との間に過電流が流れる場合に、ショート位置をコンデンサ素子2の内側部16に誘導し、ショートによる衝撃をコンデンサ素子2の内側部16で優先的に発生させることで、外側部18で緩和させることができる。この結果、ケースや封口板の破損を抑制することができる。
【0050】
(3) エンボス加工部10−1、10−2がないコンデンサに比べて電気の蓄積が少ない段階でショートする。このため、陽極箔4および陰極箔6との間に流れる過電流の量が小さくなり、衝撃を抑制することができる。
【0051】
(4) コンデンサ素子2の移動エネルギの高まりを抑制できるので、コンデンサ素子2の封口板への激突や、ケースや封口板の破壊を防止でき、コンデンサ素子2がケース外へ飛び出すのを防止できる。
【0053】
(1) 上記実施の形態では、エンボス加工部10−1、10−2をコンデンサ素子2の高さ方向の中央部の90%の範囲内であり、かつコンデンサ素子2の中心から直径方向に5〜90%の範囲内に配置したが、エンボス加工部10−1、10−2の配置範囲は、コンデンサ素子2の内部側にさらに限定するのが好ましい。たとえば、高さH1、H2、H3の割合が15:70:15に設定され、エンボス加工部10−1、10−2がコンデンサ素子2の高さ方向の中央部の70%の範囲内であるのが好ましく、L1、L2、L3の割合がコンデンサ素子2の中心から直径方向に5:60:35に設定され、エンボス加工部10−1、10−2がコンデンサ素子2の中心から直径方向に5〜65%の範囲内であるのが好ましい。エンボス加工部10−1、10−2の配置範囲がコンデンサ素子2の内部側にさらに限定されるので、ショート位置をさらにコンデンサ素子2の内部側に誘導することができる。
【0054】
(2) 上記実施の形態では2つのセパレータ8−1、8−2のそれぞれにエンボス加工を行ったが、何れか1つのセパレータがエンボス加工部を備えていてもよい。また、セパレータ8−1のエンボス加工部10−1がセパレータ8−2のエンボス加工部10−2とは異なる位置に配置されていてもよい。
【0055】
(3) 上記実施の形態ではセパレータ8−1、8−2の片側面にエンボス加工を行ったが、両面にエンボス加工を行ってもよい。片側面にエンボス加工を行う場合には、反対面側のエンボス加工と同期をとる必要がない。両面にエンボス加工を行う場合には、それぞれの面に形成される凹部同士を対向させ、凸部同士を対向させることでセパレータ8−1、8−2の疎密差を大きくすることができる。
【0056】
(4) 上記実施の形態ではセパレータ8−1、8−2にエンボス加工を行い、エンボス加工部10−1、10−2を備えることで密度および坪量の低い低密度、低坪量部を形成した低絶縁部としたが、たとえばフルーティング加工による溝加工を施したフルーティング加工部、またはセパレータ8−1、8−2表面を切除することで低絶縁部とした切除部を備えてもよい。フルーティング加工部または表面を切除した切除部によってもセパレータ8−1、8−2の密度または坪量を低下させることができ、絶縁機能を低下させることができる。
【0057】
(5) 上記実施の形態では陽極箔4と陰極箔6との間にセパレータ8−1、8−2にエンボス加工を施すことで、低絶縁部を備えたが、電極間に2枚以上のセパレータを挿入させ、その1枚に貫通穴を形成したことで、相対的に周囲よりも低絶縁部を形成してもよい。
【0058】
(6) 上記実施の形態では、複数枚のセパレータ8−1、8−2を用いたが、1枚のみを陽極箔4および陰極箔6の間に介在させる構造としてもよい。
【0059】
上記実施の形態では陽極箔4と陰極箔6との間にセパレータ8−1、8−2を介在させて巻回する形態のコンデンサに適用したが、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて積層させる形態のコンデンサにも適用することができる。
【実施例1】
【0060】
実施例1に係るコンデンサのコンデンサ素子2では、セパレータ8−1、8−2にクラフト系繊維不織布を使用する。セパレータ8−1、8−2はコンデンサ素子2の高さ方向において、
図4のAに示すように中央部の20〔%〕の範囲であって、
図4のBに示すコンデンサ素子2の平面図で加工域34として示している範囲、具体的にはコンデンサ素子2の中心から直径方向において5〜65〔%〕の範囲にエンボス加工部10−1、10−2を備えている。このようなコンデンサ素子2を備えるコンデンサにあっては、過電流が流れる場合にコンデンサ素子2の内側に形成された低絶縁部であるエンボス加工部10−1、10−2に電流が流れることで、コンデンサ素子2の内側でショートを優先的に発生させ、ショートによる衝撃を周囲の陽極箔4、陰極箔6およびセパレータ8−1、8−2によってコンデンサ素子2内に閉じ込めることができる。
【実施例2】
【0061】
実施例2に係るコンデンサのコンデンサ素子2では、セパレータ8−1、8−2にヘンプ系繊維不織布を使用し、実施例1と同様の位置にエンボス加工部10−1、10−2を配置する。このようなコンデンサ素子2を備えるコンデンサであっても、発生した過電流がエンボス加工部10−1、10−2に流れ、コンデンサ素子2の内側でショートを優先的に発生させるので、ショートによる衝撃を周囲の陽極箔4、陰極箔6およびセパレータ8−1、8−2によってコンデンサ素子2内に閉じ込めることができる。
【実施例3】
【0062】
実施例3に係るコンデンサのコンデンサ素子2では、セパレータ8−1、8−2にクラフト系繊維不織布を使用する。セパレータ8−1、8−2はコンデンサ素子2の高さ方向において、
図5のAに示すように中央部の70〔%〕の範囲であって、
図5のBに示すコンデンサ素子2の平面図で加工域36として示している範囲、具体的にはコンデンサ素子2の中心から直径方向において、5〜25〔%〕(約5〜30〔%〕)の範囲にエンボス加工部10−1、10−2を備えている。このようなコンデンサ素子2を備えるコンデンサであっても、発生した過電流がエンボス加工部10−1、10−2に流れ、コンデンサ素子2の内側でショートを優先的に発生させるので、ショートによる衝撃を周囲の陽極箔4、陰極箔6およびセパレータ8−1、8−2によってコンデンサ素子2内に閉じ込めることができる。
【実施例4】
【0063】
実施例4に係るコンデンサのコンデンサ素子2では、セパレータ8−1、8−2にヘンプ系繊維不織布を使用し、実施例3と同様の位置にエンボス加工部10−1、10−2を配置する。このような構成によっても、実施例1ないし3と同様の効果が得られる。
【実施例5】
【0064】
<コンデンサの製造処理について>
【0065】
次に、セパレータの加工処理を含むコンデンサの製造処理についての実施例を示す。
【0066】
この実施例に示すコンデンサ素子2の製造処理では、予めセパレータ8−1として利用する電解紙の所定位置にエンボス加工部10−1の加工処理を行う。この加工処理は、たとえば、セパレータとして利用する電解紙などの表面部分にエンボス加工を行う治具を押し当てて行う。エンボス加工されたセパレータは、たとえばコンデンサ素子2の製造まで巻回状態で保管されればよい。
【0067】
エンボス加工部10−1は、セパレータの平面部分の内側部16内に所定の幅XHおよび長さで形成される。たとえば、陽極箔4や陰極箔6の箔長方向に沿って、所定の長さで断続的にエンボス加工部10−1を形成する場合、断続的に形成されたエンボス加工部10−1の一つの長さは、一つのコンデンサ素子2で用いられる長さL2とする。エンボス加工部10−1同士の間は、中心側の外側部18の長さL1と、終端部の外側部18の長さL3を合わせた長さとする。このようにすることで、巻回状態のセパレータを連続して巻回位置まで配給でき、コンデンサ素子2を連続的に効率よく製造することができる。
【0068】
コンデンサ素子2の巻回処理では、陽極箔4、エンボス加工されたセパレータ8−1、陰極箔6、セパレータ8−2を積層状態で巻回していく。
【0069】
なお、セパレータ8−2は、エンボス加工部を備えない場合を示したが、これに限らない。セパレータ8−2の平面部分にエンボス加工部10−2を形成してもよい。
【0070】
斯かる構成によれば、セパレータ8−1に対するエンボス加工部10−1の形成位置を予め確認できるので、コンデンサ素子2の品質精度を高めることができる。
【実施例6】
【0071】
この実施例では、コンデンサ素子2の巻回処理と同時にセパレータ8−1に対してエンボス加工部10−1の形成処理を行っている。コンデンサ素子2の巻回装置には、セパレータ8−1の配置経路上にたとえばローラー状の治具が備えられている。この治具は、コンデンサ素子2の巻回処理の実行時に、連続的または任意のタイミングでセパレータ8−1に接触してエンボス加工部10−1を形成する。この治具の接触タイミングによって、エンボス加工部10−1の形成数や形成長さが決まる。
【0072】
また、セパレータ8−1の表面に対するエンボス加工部10−1の幅は、治具の幅と、このセパレータ8−1の表面に対する接触位置で決まる。
【0073】
斯かる構成によれば、巻回処理とエンボス加工とを同時に行えるので、作業手順の増加を防止でき、製造処理の迅速化が図れる。
【実施例7】
【0074】
この実施例では、複数のセパレータを組み合わせて単一のセパレータを形成する場合を示している。これにより任意の位置にエンボス加工部10−1を配置させることができる。
【0075】
コンデンサ素子2の製造処理において、まず、セパレータ8−1の所定の高さ位置に長さ方向に帯状のエンボス加工部10−1を形成する。このセパレータ8−1は、本開示の第1のセパレータの一例である。このエンボス加工部10−1の加工処理は、実施例5に示す方法と同等に行えばよい。なお、この実施例に示すコンデンサの製造方法では、コンデンサ素子2の巻回処理において陽極箔4および陰極箔6の平面に対するセパレータ8の低絶縁部の配置位置が設定されるため、セパレータ8−1は、エンボス加工部10−1の位置を電解紙の終端部側から形成してもよい。
【0076】
コンデンサ素子2の巻回処理では、たとえば
図6に示すように、コンデンサ素子2の巻回装置に対して、陽極箔4、エンボス加工部を備えないセパレータ8−3、エンボス加工部10−1が形成されたセパレータ8−1、陰極箔6、セパレータ8−2が設置される。セパレータ8−3は、陽極箔4または陰極箔6の箔面に対向する表面が平面状または平面状に近い状態である、本開示の第1のセパレータの一例である。このセパレータ8−3は、セパレータ8−1と組み合わせて単一のセパレータを形成する。
【0077】
巻回処理装置において、セパレータ8−1とセパレータ8−3は隣接または近接した位置に配置されるのが望ましい。また、セパレータの配置経路上において、セパレータ8−1と8−3とを接続位置において近接させてもよい。
【0078】
コンデンサ素子2の製造工程では、たとえば
図6のAに示すように、製造装置の巻回部分に、陽極箔4、セパレータ8−3、陰極箔6、セパレータ8−2が接続されている。このときセパレータ8−1の端部32は、図示しない切断手段またはセパレータの支持手段によって所定の配置経路上に留められている。
【0079】
コンデンサ素子2は、たとえば巻回開始から所定のタイミングになるまでセパレータ8−3が巻回される。コンデンサ素子2の巻回処理では、たとえば
図6のBに示すように、所定のタイミングになると、セパレータ8−3を切断する。そして巻回されたコンデンサ素子2側のセパレータ8−3の端部33にセパレータ8−1の端部32を接続させて連続的に配置する。ここからセパレータ8−1を巻回することで、コンデンサ素子2に低絶縁部であるエンボス加工部10−1が形成される。セパレータ8−1とセパレータ8−3の接続には、たとえば接着テープなどの接着材が用いられる。ここで連続的とは、セパレータ8−1とセパレータ8−2が重なっていても重なっていなくてもよく、間欠することなく連続して配置されていればよい。なお、ショートしないことを条件とすることはいうまでもない。
【0080】
そして、セパレータ8−1の接続が完了すると、コンデンサ素子2の巻回を再開し、次の設定されたタイミングまで巻回処理が実行される。
【0081】
所定のタイミングに達すると、セパレータ8−1を切断する。そして、巻回されたコンデンサ素子2側のセパレータ8−1の端部32にセパレータ8−3の端部33を接続させ、
図6のCに示すように、巻回処理を再開する。このときの接続は、既述のように接着テープなどが用いられる。
【0082】
このコンデンサ素子2の巻回処理では、たとえば設定された陽極箔4や陰極箔6の巻回長さに基づき巻回処理が終了に近づくとエンボス加工部を備えないセパレータ8−3を巻回させる。すなわち、セパレータの終端側であって、コンデンサ素子2の外周側にエンボス加工部が配置されないようにしている。またセパレータ8−1、8−3を切り替える順序は、上記の説明の場合に限らない。エンボス加工部10−1をコンデンサ素子2の巻芯側に形成するために、先にセパレータ8−1から巻回し、次にセパレータ8−3に切り替えてもよい。
【0083】
このように、2種類のセパレータ8−1、8−3を交互に組み合わせることで、
図7に示すように、任意の位置にエンボス加工部10−1を配置させたコンデンサ素子2を形成することができる。セパレータ8−1の端部32とセパレータ8−3の端部33との接続では、たとえばエンボス加工部10−1の配置長さLaよりもセパレータ8−1の長さLbをとることで、セパレータ同士に重なり部40を設けている。この重なり部40は、セパレータ8−1とセパレータ8−3との接続部分であって、本開示の接続部の一例である。この重なり部40の長さLcは、任意に設定すればよく、たとえばコンデンサ素子2の大きさや加工時の張力の大きさ、またはコンデンサの使用環境、容量、耐電圧などによって設定してもよい。
【0084】
セパレータ8−1とセパレータ8−3との接続には、たとえば重なり部40を覆うように接着テープなどの接着材を貼付すればよい。この接着テープは、たとえばポリフェニンサルファイド(PPS)やポリプロピレン(PP)などの材質のものを使用すればよい。また、接着材は、テープ以外のものを使用してもよい。この場合、コンデンサに使用する電解液などへの影響を考慮して接着材の種類を選択すればよい。
【0085】
斯かる構成によれば、既存のコンデンサ素子の巻回装置に対し
、セパレータの配置ラインを追加することで実現でき、利便性が高い。また、任意にエンボス加工部10−1の形成長さを設定できるので、製造装置において、多種類のコンデンサの製造に対応することが可能となる。また、セパレータ同士の重なり部40を設けることで、接続強度が保てるので、エンボス加工部以外での破断などを防止できる。
【0086】
<過電圧印加実験>
【0087】
セパレータ8−1、8−2として、クラフト系繊維不織布またはヘンプ系繊維不織布を使用してエンボス加工位置を変えたコンデンサを作成し、各コンデンサの過電圧印加実験を行う。実験には、既述の実施例1〜4のコンデンサと、以下に示す比較例1〜3に係るコンデンサを用いる。
【0088】
<比較例1>
【0089】
比較例1では、セパレータ8−1、8−2の何れにもエンボス加工を行わずにコンデンサを形成する。
【0090】
<比較例2>
【0091】
比較例2に係るコンデンサのコンデンサ素子102では、セパレータ108−1、108−2にクラフト系繊維不織布を使用する。セパレータ108−1、108−2はコンデンサ素子102の高さ方向において、
図8のAに示すように中央部の20〔%〕の範囲であって、
図8のBに示すコンデンサ素子102の平面図で加工域134として示している範囲、具体的にはコンデンサ素子102の中心から直径方向において、91〜100〔%〕の範囲にエンボス加工部110−1、110−2を備えている。
【0092】
<比較例3>
【0093】
比較例3に係るコンデンサのコンデンサ素子102では、セパレータ108−1、108−2にクラフト系繊維不織布を使用する。セパレータ108−1、108−2はコンデンサ素子102の高さ方向において、
図9のAに示すように上部の10〔%〕の範囲であって、
図9のBに示すコンデンサ素子102の平面図で加工域136として示している範囲、具体的にはコンデンサ素子102の中心から直径方向において、5〜25〔%〕の範囲のセパレータ108−1、108−2にエンボス加工部110−1、110−2を備えている。
【0094】
<比較例4>
【0095】
比較例4に係るコンデンサのコンデンサ素子102では、セパレータ108−1、108−2にクラフト系繊維不織布を使用する。セパレータ108−1、108−2はコンデンサ素子の高さ方向において、中央部の20〔%〕の範囲であって、かつ、コンデンサ素子102の中心から直径方向において、0〜4〔%〕の範囲にエンボス加工部110−1、110−2を備えている。
【0096】
<実験に使用するコンデンサの仕様>
【0097】
実験には、以下に示す仕様の実施例1〜4のコンデンサおよび比較例1〜4のコンデンサを使用する。
定格電圧: 400〔V〕
静電容量: 5600〔μF〕
寸法: 直径Φ…76.2〔mm〕、長さL…130〔mm〕
その他: 封口板に圧力弁を設置。
【0098】
<実験方法>
【0099】
各コンデンサに780〔V〕の過電圧を印加し、陽極箔4と陰極箔6の間をショートさせ、圧力弁の動作および、ケースまたは封口板の少なくともいずれかの破損を評価する。
【0100】
<実験結果>
【0101】
実施例1〜4のコンデンサでは、いずれも圧力弁が動作したが、ケースまたは封口板の破損は確認されなかった。また、いずれのコンデンサ素子2においても、ショートはエンボス加工部10−1、10−2で発生していた。
【0102】
比較例1のコンデンサでは、実験した5個のコンデンサのうち、4個のコンデンサでケースまたは封口板の破損が発生した。また、ショートの発生箇所は特定範囲に限定されず、コンデンサ素子102によって異なるものであった。
【0103】
比較例2のコンデンサでは、コンデンサ素子102の外周部でショートが発生したが、ショートによる衝撃を吸収するコンデンサ素子102の外側部が存在しないため、衝撃がケースに向かい、全てのコンデンサでケースまたは封口
板が破損した。
【0104】
比較例3のコンデンサでは、コンデンサ素子102の上端部でショートが発生したが、ショートによる衝撃を吸収するコンデンサ素子102の外側部が存在しないため、衝撃がケースおよび封口板に向かい、全てのコンデンサでケースもしくは封口板が破損した。
【0105】
比較例4のコンデンサでは、コンデンサ素子102の中心側でショートが発生した。コンデンサ素子102の中心部には、コンデンサ素子102の巻回に用いた巻軸を引き抜いたことによって形成された空間がある。この空間の近くでショートが発生するため、ショートによる衝撃はコンデンサ素子102
の中心部の空間を通して、封口板およびケースの底面に向かい、コンデンサのケースもしくは封口板が破損した。
【0106】
評価結果は以下の表1の通りである。
【0107】
【表1】
【0108】
既述の実施の形態、実施例および比較例においては、セパレータ8−1、8−2として、クラフト系繊維不織布またはヘンプ系繊維不織布を用いたがこれに限らず、マニラ紙、セルロース紙等の天然繊維を主体に使用したものや、合成繊維を主体に使用したもの、また、ガラス、合成高分子の繊維を使用したものでもよい。
【0109】
〔他の実施の形態〕
【0110】
セパレータ8−1とセパレータ8−3の接続には、たとえば接着テープなどの接着材が用いる例を示したが、これに限らない。超音波接続やコールドウェル
ドなどの接着テープなどの接着剤を用いらない手法にて、セパレータ8−1とセパレータ8−
3を連続的に配置するようにしてもよい。
【0111】
以上述べたように、本発明の好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、請求の範囲に記載され、又は明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。