(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
(1)冷凍装置1の冷媒回路
(1−1)冷凍装置1の冷媒回路全体
第1実施形態の冷凍装置1の冷媒回路構成を
図1に示す。本実施形態の冷凍装置1は、超臨界域で作動する冷媒である二酸化炭素を用い、二段圧縮式の冷凍サイクルを行う装置である。本実施形態の冷凍装置1は、冷暖房を行う空気調和装置、冷房専用の空気調和装置、冷温水器、冷蔵装置、冷凍貯蔵装置などに用いることができる。
【0018】
本実施形態の冷凍装置1は、多段圧縮システム20と、四方切換弁5と、熱源側熱交換器2と、ブリッジ回路3と、膨張機構8、9と、利用側熱交換器4と、エコノマイザ熱交換器7とを有している。
【0019】
多段圧縮システム20は、冷媒を圧縮する。ガス冷媒は、四方切換弁5、冷媒配管13を経由して、低段圧縮機21の入口の第1アキュムレータ22に導入される。冷媒は、低段圧縮機21、高段圧縮機23により圧縮され、配管18を経由して、四方切換弁5にいたる。
【0020】
四方切換弁5は、多段圧縮システム20よりの冷媒を、熱源側熱交換器2と利用側熱交換器4のいずれの方向に流すかを切り換える。たとえば、冷凍装置1が空気調和装置であり、冷房運転のときは、冷媒は、四方切換弁5から熱源側熱交換器2(凝縮器)に流れる。熱源側熱交換器2(凝縮器)を流れた冷媒は、ブリッジ回路3の逆止弁3a、配管11、逆止弁11eを経由して、レシーバ6に達する。レシーバ6より液冷媒は、引き続き配管11を流れ、膨張機構9で減圧され、ブリッジ回路3の逆止弁3cを経由して、利用側熱交換器4(蒸発器)へ向かう。利用側熱交換器4(蒸発器)で加熱された冷媒は、四方切換弁5を経由して、再び多段圧縮システム20で圧縮される。一方、暖房運転時は、冷媒は、四方切換弁5から利用側熱交換器4(凝縮器)、ブリッジ回路3の逆止弁3b、配管11、レシーバ6、膨張機構9、ブリッジ回路3の逆止弁3d、利用側熱交換器4(蒸発器)、四方切換弁5の順に流れる。
【0021】
エコノマイザ熱交換器7は、冷媒配管11の途中、レシーバ6と、膨張機構9の間に配置されている。配管11の分岐11aにて、一部の冷媒は分岐して、膨張機構8にて中間圧に減圧される。中間圧の冷媒は、エコノマイザ熱交換器7において、配管11を流れる高圧冷媒によって加熱され、中間インジェクション配管12を経由して、多段圧縮システム20の中間圧の合流部分15bにインジェクションされる。また、レシーバ6より冷媒のガス成分が配管19を経由して、中間インジェクション配管12に合流する。
【0022】
(1−2)多段圧縮システム20における冷媒および油の流れ
本実施形態の多段圧縮システム20は、
図1に示すように、第1アキュムレータ22と、低段圧縮機21と、インタークーラ26と、第2アキュムレータ24と、高段圧縮機23と、油分離器25と、オイルクーラ27と、減圧器31aとを備えている。
【0023】
本実施形態においては、低段圧縮機21で圧縮された冷媒を、さらに、高段圧縮機23で圧縮する。圧縮機21、23は、それぞれ、アキュムレータ22、24を備えている。アキュムレータ22、24は、圧縮機に入る前の冷媒を一度蓄えて、液冷媒が圧縮機に吸入されないようにする役割を担う。
【0024】
次に、本実施形態の多段圧縮システム20における冷媒、油の流れを、
図1を利用して説明する。
【0025】
本実施形態においては、蒸発器(利用側熱交換器4または熱源側熱交換器2)で加熱された低圧のガス冷媒は、冷媒配管13を経由して、第1アキュムレータ22に流れる。第1アキュムレータ22のガス冷媒は、吸入管14を経由して、低段圧縮機21へと流れる。低段圧縮機21で圧縮された冷媒は、吐出管15aより吐出され、中間圧冷媒配管15を流れ、第2アキュムレータ24に達する。
【0026】
インタークーラ26は、中間圧冷媒配管15の途中に配置されている。インタークーラ26は、中間圧の冷媒を、たとえば、室外の空気で冷却する熱交換器である。インタークーラ26は、熱源側熱交換器2と隣接して配置して、共通のファンで空気と熱交換しても良い。インタークーラ26は、中間圧の冷媒を冷却することにより、冷凍装置1の効率を高める。
【0027】
また、中間圧冷媒配管15の合流部分15bには、中間インジェクション配管12より、中間圧の冷媒がインジェクションされる。本実施形態においては、中間インジェクション配管12の配管15への合流部分15bは、インタークーラ26の下流側に配置される。中間インジェクションでインジェクションされる冷媒は、配管15を流れる冷媒よりも温度が低い。したがって、中間インジェクションは、配管15を流れる冷媒の温度を低下させ、冷凍装置1の効率を向上させる。
【0028】
本実施形態の多段圧縮システム20は、さらに、低段圧縮機の過剰の油を排出する油排出管32を備えている。油排出管32は、低段圧縮機21と、中間圧の配管15を接続する。油排出管32は、低段圧縮機の油溜まり30aに溜まった過剰の油のみならず油溜まり30aに溜まった過剰の冷媒も排出する。油排出管32の中間圧冷媒配管15との接続部分は、インタークーラ26、および、中間インジェクションの合流部分15bよりも下流部分である。
【0029】
配管15により第2アキュムレータ24に送られた冷媒は、吸入管16より、高段圧縮機23に導入される。冷媒は、高段圧縮機23において、圧縮されて、高圧となり、吐出管17に吐出される。
【0030】
吐出管17に吐出された冷媒は、油分離器25に流れる。油分離器25は、冷媒と油を分離する。分離された油は、油戻し管31を経由して、低段圧縮機21に戻される。
【0031】
本実施形態の多段圧縮システム20は、さらに、高段圧縮機の過剰の油を排出する油排出管33を備えている。油排出管33は、高段圧縮機23と、高段圧縮機23の吐出管17とを接続する。
【0032】
油戻し管31の途中には、減圧器31aが配置されている。減圧器31aは、油分離器25より排出された高圧の油の減圧をするためのものである。減圧器31aは、具体的には、たとえば、キャピラリーチューブが用いられる。
【0033】
油戻し管31の途中には、オイルクーラ27が配置されている。オイルクーラ27は、油戻し管31を流れる油を、たとえば、室外の空気で冷却する熱交換器である。オイルクーラ27は、油分離器25より排出された高温の油を冷却するためのものである。オイルクーラ27は、たとえば、熱源側熱交換器2の近傍に配置し、共通のファンで空気と熱交換しても良い。オイルクーラ27は、たとえば、熱源側熱交換器2の下に配置してもよい。
【0034】
なお、本実施形態の油(冷凍機油)は、CO
2冷媒で用いられる冷凍機油であれば、特に限定されないが、CO2冷媒と非相溶の油が特に適している。冷凍機油の例としては、PAG(ポリアルキレングリコール類)、POE(ポリオールエステル類)などがある。
【0035】
なお、本実施形態の冷凍装置1は2台の圧縮機で二段の圧縮を行っている。3台以上の圧縮機を用いて、二段以上の圧縮を行ってもよい。また、三段以上の圧縮を行っても良い。
【0036】
(2)圧縮機と圧縮機に接続される配管、装置の構成
本実施形態の低段圧縮機21、高段圧縮機23は、ともに、2シリンダタイプ、かつ、揺動式のロータリー圧縮機である。圧縮機21、23はほとんど同一の構成なので、ここでは、低段圧縮機21を用いて、詳細に説明する。
【0037】
図2は、低段圧縮機21の縦断面図、
図3〜5は、
図2のそれぞれAA〜CCの位置での水平断面図である。ただし、
図4のBB断面図において、モータ40の部分は記載されていない。
【0038】
低段圧縮機21は、容器30と、圧縮部50と、モータ40と、クランクシャフト60と、ターミナル35と、を有している。
【0039】
(2−1)容器30
容器30は、モータ40の回転軸RAを中心軸として、略円筒状の形状である。容器の内部は機密性が保たれており、運転時に、低段圧縮機21においては中間圧、高段圧縮機23においては高圧の圧力が保持される。容器30の内部の下部は、油(潤滑油)を貯留するための油溜まり30aとなっている。なお、
図2では、油溜まり30aの液面を仮に記載しているが、油溜まり30aの液面の高さは一定ではなく、圧縮機の運転中、増減する。
【0040】
容器30は、内部に、モータ40と、クランクシャフト60と、圧縮部50とを収容している。容器30の上部には、ターミナル35が配置されている。また、容器30には、冷媒の吸入管14a、14bおよび吐出管15aと、油戻し管31と、油排出管32とが接続されている。
【0041】
(2−2)モータ40
モータ40は、ブラシレスDCモータである。モータ40は、クランクシャフト60を、回転軸RAを中心に回転する動力を発生する。モータ40は、容器30の内部の空間内で、上部の空間の下、圧縮部50の上に配置されている。モータ40は、ステータ41およびロータ42を有する。ステータ41は、容器30の内壁に固定されている。ロータ42は、ステータ41と磁気的な相互作用をすることによって回転する。
【0042】
ステータ41は、ステータコア46と、インシュレータ47とを有する。ステータコア46は、鋼製である。インシュレータ47は、樹脂製である。インシュレータ47は、ステータコア46の上下に配置され、巻線が巻かれている。
【0043】
(2−3)クランクシャフト60
クランクシャフト60は、モータ40の動力を圧縮部50に伝達する。クランクシャフト60は、主軸部61、第1偏心部62a、第2偏心部62bを有する。
【0044】
主軸部61は、回転軸RAと同心である部位である。主軸部61は、ロータ42に固定されている。
【0045】
第1偏心部62aおよび第2偏心部62bは、回転軸RAに対して偏心している。第1偏心部62aの形状および第2偏心部62bの形状は、回転軸RAを基準として互いに対称である。
【0046】
クランクシャフト60の下端には、オイルチューブ69が設けられている。オイルチューブ69は、油溜まり30aから油(潤滑油)をくみ上げる。くみ上げられた潤滑油は、クランクシャフト60の内部の油通路を上昇し、圧縮部50の摺動箇所に供給される。
【0047】
(2−4)圧縮部50
圧縮部50は、2シリンダ型の圧縮機構である。圧縮部50は、第1シリンダ51、第1ピストン56、第2シリンダ52、第2ピストン66、フロントヘッド53、ミドルプレート54、リアヘッド55、フロントマフラ58a、58bを有する。
【0048】
圧縮部50には、第1圧縮室71、第2圧縮室72が形成されている。第1、第2圧縮室は、冷媒が供給され、圧縮される空間である。
【0049】
(2−4−1)第1圧縮室71と、第1圧縮室71で圧縮される冷媒の流れ
第1圧縮室71は、
図2または5に示すように、第1シリンダ51と、第1ピストン56と、フロントヘッド53と、ミドルプレート54とによって囲まれた空間である。
【0050】
第1シリンダ51には、
図5に示すように、吸入孔14e、吐出凹部59、ブッシュ収容穴57a、ブレード移動穴57bが設けられている。第1シリンダ51は、クランクシャフト60の主軸61および第1偏心部62aと、第1ピストン56とを収容する。吸入孔14eは、第1圧縮室71と吸入管14aの内部とを連通させる。ブッシュ収容穴57aには、1対のブッシュ56cが収容される。
【0051】
第1ピストン56は、円環部56aとブレード56bを有する。第1ピストン56は、揺動ピストンである。円環部56aにはクランクシャフト60の第1偏心部62aが嵌め込まれる。ブレード56bは、1対のブッシュ56cに挟まれている。第1ピストン56は、第1圧縮室71を2つに分割する。1つは、吸入孔14eに連通する低圧室71aである。もう1つは、吐出凹部59に連通する高圧室71bである。
図5において、円環部56aは時計回りに公転し、高圧室71bの容積は小さくなり、高圧室71bの冷媒は圧縮される。円環部56aの公転に際し、ブレード56bの先端は、ブレード移動穴57bの側とブッシュ収容穴57aの側を往復する。
【0052】
フロントヘッド53は、
図2に示すように、環状部材53aによって、容器30の内側に固定されている。
【0053】
フロントヘッド53には、フロントマフラ58a、58bが固定されている。フロントマフラは、冷媒が吐出される際の騒音を低減する。
【0054】
第1圧縮室71で圧縮された冷媒は、吐出凹部59を経由して、フロントマフラ58aとフロントヘッド53との間の第1フロントマフラ空間58eに吐き出される。冷媒は、さらに、2つのフロントマフラ58a、58bの間の第2フロントマフラ空間58fに移動した後で、フロントマフラ58bに設けられた吐出穴58c、58d(
図4参照)より、モータ40の下の空間に吹出される。
【0055】
圧縮され、フロントマフラ58aの吐出穴58c、58dより吹出された冷媒は、モータ40の隙間より、容器30の上部空間に移動し、吐出管15aより吹出され、高段圧縮機23へと向かう。
【0056】
なお、第1実施形態の多段圧縮システム20においては、圧縮機21、23はともに2シリンダタイプの圧縮機である。両方ともあるいは一方の圧縮機は、1シリンダタイプの圧縮機であってもよい。
【0057】
(2−4−2)第2圧縮室72と、第2圧縮室72で圧縮される冷媒の流れ
第2圧縮室72は、第2シリンダ52と、第2ピストン66と、リアヘッド55と、ミドルプレート54とによって囲まれた空間である。
【0058】
第2圧縮室72にて圧縮される冷媒の流れも、ほぼ第1圧縮室71にて圧縮される冷媒の流れと同様なので、詳細な説明は省略する。ただし、第2圧縮室72で圧縮された冷媒の場合は、いったん、リアヘッド55に設けられたリアマフラ空間55aに送られた後で、さらに、フロントマフラ58a、58bによるフロントマフラ空間58e、58fに送られるところが、異なる。
【0059】
(2−5)圧縮機と、油戻し管31と油排出管32の接続位置について
油戻し管31は、
図2に示すように、モータ40の下で、圧縮部50の上の空間に、内部流路が連通するように、容器30に接続されている。モータ40の下とは、モータ40の横の空間(コアカットなど)を含む。ただし、モータ40の下で、圧縮部50の上の空間がより好ましい。油戻し管31は、容器30の側面にほぼ垂直に、油がほぼ水平に流れるように、容器30に接続されている。油戻し管31の容器30内部への油導入部分の角度は水平から上下15°以内の角度になるように配置されている。
【0060】
油戻し管31から、容器30の内部に吹出された油は、モータ40のインシュレータ47に衝突した後で、フロントマフラ58bや、フロントヘッド53を固定する環状部材53aの上に落ち、さらに、容器30内部下部の油溜まり30aに合流する。言い換えると、インシュレータ47は、油戻し管31を流れて容器30内部に導入された油を衝突させて容器30下部の油溜まり30a側に向ける油ガイドの役割を果たしている。インシュレータ47の油ガイド部分は、上下に伸びる板状部材である。油戻し管31から、容器30の内部に吹出された油の全てが、油ガイドに衝突しなくても良い。一部であってもよい。全てであってもよい。
【0061】
油ガイドは、容器30内において、油戻し管31の出口に対向して配置されている。油戻し管31の出口とは、容器30の内部で、容器30と油戻し管31の接続部分を意味している。油ガイドは、容器30の内周から、容器30の水平断面の内径Dの25%以内に配置されている。比較的容器30の側壁の近くに油ガイドを配置することにより、油の向きの制御性が良好となる。
【0062】
油戻し管31を、第2圧縮室72よりも上の空間に接続するのが好ましい。油戻し管31を第2圧縮室72よりも下の空間に接続すると、油溜まり30aの油面よりも下になる可能性が高くなり、そうなると、フォーミングを生じるので好ましくない。
【0063】
また、油戻し管31は、容器30のより上部に接続しても良い。たとえば、モータ40のステータ41のコアカットの部分に接続されていても良い。ただし、油溜まり30aになるべく近い低部に接続される方が、より早く、摺動部(圧縮室71、72付近)に油を供給することにつながり、好ましい。
【0064】
また、油戻し管31の内径は、たとえば、10mm以上12mm以下である。
【0065】
油排出管32は、
図2に示すように、モータ40の下で、圧縮部50の上の空間に、内部流路が連通するように、容器30に接続されている。
【0066】
油排出管32の容器30への接続位置が圧縮室72よりも低くなると、油が過剰に油溜まり30aより失われるおそれがある。また、モータ40よりも高い位置になると、吐出管15aと差が小さくなり、油排出管32を設ける意義が失われる。
【0067】
また、本実施形態では、
図2に示すように、油排出管32の容器30への取り付け高さ位置は、油戻し管31の容器30への取り付け高さ位置と同等である。これによって、油溜まり30aの油面の高さ調整が容易になる。
【0068】
また、
図4に示すように、油排出管32の平面的な容器30への取り付け位置は、モータ40の回転軸RAに対して、フロントマフラ58bの吐出穴58c、58dの反対の位置である。ここで、反対の位置とは、油排出管32の接続位置から回転軸RAに対して左右に90°ずつの合計180°以外の180°の範囲との意味である。なお、
図4では、吐出穴58cの一部が反対の位置ではないが、ここでは、吐出穴58c、58dの面積の半分以上が反対側との意味である。
【0069】
本実施形態では、油排出管32の容器30への接続位置が、フロントマフラ58bの吐出穴58c、58dの位置から離れているので、フロントマフラ58bの吐出穴58c、58dから吐出した冷媒を、直接油排出管32によって、低段圧縮機21より排出するのを低減できる。
【0070】
油排出管32の内径は、油戻し管31の内径と同等である。吐出管15aの内径よりも細いものを用いる。より具体的には、油排出管32の内径は、たとえば、10mm以上12mm以下である。
【0071】
また、
図5に示すように、油排出管32と油戻し管31の平面的な位置関係を見れば、油排出管32の容器30への接続位置は、油戻し管31の容器30への接続位置から、モータ40の回転方向(
図5の矢印の方向)に90°以上離れた位置である。好ましくは、180°以上はなれた位置である。本実施形態では、この角度は、θであらわされている。シータは、270°以上である。また、θは、330°以下にはすべきである。
【0072】
本実施形態では、油排出管32と油戻し管31の位置が十分離されているため、油戻し管31で低段圧縮機21の容器30内に導入した油がそのまま油排出管32により、容器30外に排出されるのを低減し、低段圧縮機21の均油を容易に実現することができる。
【0073】
なお、第1実施形態の多段圧縮システム20においては、油戻し管31の容器30への接続位置の高さは、油排出管32の容器30への接続位置の高さと同等であった。油戻し管31の容器30への接続位置の高さは、油排出管32の容器30への接続位置の高さよりも高くてもよい。
【0074】
(2−6)アキュムレータ22
本実施形態の多段圧縮システム20においては、低段圧縮機21の上流に第1アキュムレータ22が、高段圧縮機23の上流に第2アキュムレータ24が配置されている。アキュムレータ22、24は、流れてきた冷媒を一度蓄えて、液冷媒が圧縮機に流れるのを防止し、圧縮機の液圧縮を防止する。第1アキュムレータ22と第2アキュムレータ24の構成はほとんど同じなので、第1アキュムレータ22について、
図2を用いて説明する。
【0075】
蒸発器で加熱された低圧のガス冷媒が、四方切換弁5を経由して、冷媒配管13を流れ、アキュムレータ22に導入される。ガス冷媒は、圧縮機21の吸入管14a、14bより、第1、第2圧縮室71、72に導入される。アキュムレータの内部下方には、液冷媒、油が溜まる。吸入管14a、14bには、アキュムレータ内部の下方において、小さな穴14c、14dが形成されている。穴14c、14dの径は、たとえば、1mm〜2mmである。油は、液冷媒とともに、少量ずつ穴14c、14dを経由して、ガス冷媒に合流して、圧縮室へ送られる。
【0076】
(3)特徴
(3−1)
本実施形態の多段圧縮システム20は、低段圧縮機21と、高段圧縮機23と、油戻し管31とを有する。油戻し管31は、高段圧縮機で排出された油を、低段圧縮機21に戻す。低段圧縮機21は、圧縮部50と、モータ40と、容器30と、油ガイドとを有している。容器は、圧縮部50と、モータ40と、油ガイドとを収容している。油ガイドは、容器30内において、油戻し管31の出口に対向して配置されている。油ガイドは、油戻し管31を流れて容器30内部に導入された油を衝突させて容器30下部の油溜まり30a側に向ける。
【0077】
本実施形態においては、油ガイドは、モータ40の一部であるインシュレータ47が果たしている。
【0078】
本実施形態の多段圧縮システム20は、油ガイドを有しているため、油をより直接的に油溜まり30aに供給することができる。したがって、迅速に低段圧縮機21内の油量を増やすことができる。
【0079】
これに対して、油戻し管31の容器30への接続位置を、圧縮部50の下など、油溜まり30aの液面よりも低い位置にすると、フォーミング現象を起こす可能性があり、好ましくない。
【0080】
また、直接的に油溜まりに油を供給するため、従来吸入管に油を供給していた場合に比べて、迅速に油量を増加させることができる。さらに、このような、圧縮機への吸入冷媒に高温、高圧の油を混合していた場合に比べて、直接的に油溜まりに油を供給するため、圧力、温度のロスを低減することができる。
【0081】
(3−2)
本実施形態の多段圧縮システム20は、油戻し管の容器内部への油導入部分の角度は水平から上下15°以内の角度になるように配置されている。
【0082】
本実施形態の多段圧縮システム20は、油戻し管の容器内部への油導入部分の角度は水平から近いので、油ガイドに油を衝突させて、油の向きを変えて、油溜まりに油を供給しやすい。
【0083】
(3−3)
本実施形態の多段圧縮システム20は、油ガイドは、容器30の内周から、容器30の水平断面の内径Dの25%以内に配置されている。
【0084】
本実施形態の多段圧縮システム20は、容器の内面の近傍に油ガイドが配置されているため、油戻し管31から導入された油を短距離で油ガイドに衝突させることができ、油の方向を制御しやすい。
【0085】
(4)変形例
(4−1)変形例1A
第1実施形態では、油戻し管31より低段圧縮機21内部に導入された油の向きを変える油ガイドは、モータ40のインシュレータ47であった。変形例1Aにおいては、油ガイドは、モータ40のステータ41のステータコア46の外面である。変形例1Aにおいては、油戻し管31は、容器30の側壁のうち、ステータコア46の高さに接続されている。
図3に示すように、容器30とステータコア46の間には隙間であるコアカット部46aが形成されている。変形例1Aにおいては、油戻し管31は、容器30の側壁のコアカット部46aに対向する部分に接続されている。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0086】
変形例1Aの多段圧縮システムは、ステータ41の外面が油ガイドの役割を果たし、油戻し管31からの油を、油溜まり30aに、迅速に供給することができる。ただし、第1実施形態に比べると、油溜まりとの上下の距離が長くなり、油供給の時間は少し長くなる。
【0087】
(4−2)変形例1B
第1実施形態においては、油戻し管31は、油分離器25からの油を低段圧縮機21に戻している。変形例1Bにおいては、油戻し管31は、高段圧縮機23から排出された油を直接低段圧縮機21に戻している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0088】
変形例1Bの多段圧縮システム20も、第1実施形態の多段圧縮システム20と同様の特徴を有する。ただし、変形例1Bの場合、高段圧縮機23から排出された過剰の冷媒と油が混じるので、第1実施形態の油分離器25を経由する場合に比べて、油戻し管31を流れる油に混じる冷媒の量が増えることになる。
【0089】
また、高段圧縮機23から排出された油に、油分離器25より分離された油を加えて、低段圧縮機21の容器30に戻しても良い。
【0090】
(4−3)変形例1C
変形例1Cの多段圧縮システムは、第1実施形態の多段圧縮システム20の構成に加えて、低段圧縮機21の油溜まり30aの油量を計測する液面計と、油戻し管31の途中に、油戻し管31を流れる油の流量を制御する制御弁と、をさらに備える。そして、液面計で計測された液面のデータを下に、液面が所定値よりも高いときは、制御弁の流量を絞り、液面が所定値よりも低いときは、制御弁の流量を多くする制御を行う。
【0091】
変形例1Cの多段圧縮システムは、液面計と制御弁を備え、油戻し管31を用いて低段圧縮機21の油量をフィードバック制御することができる。変形例1Cの多段圧縮システム20は、第1実施形態の多段圧縮システム20と同様の特徴を有している。
【0092】
<第2実施形態>
(5)第2実施形態の低段圧縮機21の油ガイド
第1実施形態においては、油戻し管31を流れて容器30内部に導入された油を衝突させて容器30下部の油溜まり30a側に向ける油ガイドは、モータ40のインシュレータ47の一部であった。第2実施形態においては、
図6に示すように、インシュレータの一部は、下方に延長されている。インシュレータ47と、このインシュレータの延長部分47aが油ガイドとしての役割を果たす。延長部分は、上下に伸びる板状部材である。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0093】
第2実施形態においては、このように、インシュレータの一部が延長された延長部分47aが油ガイドとして機能しているので、より多くの油戻し管からの油を衝突させて、油溜まりの方向に向けることができる。
【0094】
第2実施形態の変形例としては、インシュレータの延長部分47aを用いる代わりに、全く別の部品を油ガイドとして、容器30内部に配置しても良い。ただし、この場合は、部品点数が増加するのと、新たな油ガイドを油の通路に固定する必要が生じる。
【0095】
<第3実施形態>
(6)第3実施形態の低段圧縮機21の油ガイド
第1、第2実施形態では、油ガイドは、モータ40の一部品、または、一部品を延長したものであった。第3実施形態においては、
図7に示すように、油戻し管31の容器30内部への延長部分31pが油ガイドとしての役割を果たす。延長部分31pは、油戻し管31と一体であってもよいし、別体の物を接続しても良い。その他の第3実施形態の構成は、第1実施形態と同様である。第3実施形態の油ガイドも、第1実施形態の油ガイドと同様の作用効果を示す。
【0096】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【課題】複数台の多段圧縮機を用いた冷凍装置においては、それぞれの圧縮機において、冷凍機油を適量に保つ必要性があった。高段側の圧縮機で吐出された油を、低段側の圧縮機の冷媒吸入側に戻した場合に、熱ロス、圧力ロスが発生し、システムの効率が低下する課題があった。
【解決手段】多段圧縮システム20は、低段圧縮機21と、高段圧縮機23と、油戻し管31とを有する。低段圧縮機21は、圧縮部50と、モータ40と、容器30と、油ガイド47、47a、31pを有している。油ガイド47、47a、31pは、容器30内において、油戻し管31の出口に対向して配置されている。