(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、低段側油抜き通路を高段側のアキュムレータの下流で、高段側圧縮機の吸入側に接続している。また、インタークーラや中間インジョクションの冷媒合流点については、特に考慮されていない。しかし、低段側の冷媒吐出部から高段側の冷媒吸入部にいたる冷媒配管においては、インタークーラや中間インジョクションの冷媒合流点のような圧力低下要素を設けた場合、冷媒配管に圧力の低下が生じる。したがって、油抜き通路の接続位置によって、油抜き通路を通過する冷媒、油量が変動し、冷媒回路に大きな影響を生じる。たとえば、インタークーラを用いたシステムでは、インタークーラをバイパスする冷媒が多くなると、冷媒冷却量が不足する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点の多段圧縮システムは、冷媒と油を利用するものである。多段圧縮システムは、低段圧縮機と、高段圧縮機と、冷媒配管と、圧力低下要素と、油排出管とを有する。低段圧縮機は、冷媒を圧縮する。高段圧縮機は、低段圧縮機で圧縮された冷媒をさらに圧縮する。冷媒配管は、低段圧縮機で圧縮され、吐出された冷媒を、高段圧縮機の吸入部分に導入する。圧力低下要素は、冷媒配管の途中に配置されている。油排出管は、低段圧縮機の油を排出する。油排出管は、低段圧縮機と、圧力低下要素よりも上流側の冷媒配管と、を接続する。
【0006】
第1観点の多段圧縮システムは、油排出管が低段圧縮機と、圧力低下要素よりも上流側の冷媒配管と、が接続されているので、油排出管が排出する油量が抑制され、低段圧縮機の油量が適量に制御できる。
【0007】
第2観点の多段圧縮システムは、第1観点のシステムであって、低段圧縮機は、圧縮部と、モータと、容器と、を有している。圧縮部は、ロータリー式である。圧縮部には、圧縮室が形成されている。圧縮室で、冷媒を圧縮する。モータは、圧縮部を駆動する。モータは、圧縮部よりも上に配置される。容器は、圧縮部とモータを収容する。油排出管は、容器の、モータより下、圧縮室よりも上に、接続されている。なお、低段圧縮機が高さの違う2以上の圧縮室を有するときは、ここで言う圧縮室は、最も下側の圧縮室を意味する。
【0008】
第2観点の多段圧縮システムは、油排出管が、容器の圧縮室より上、モータより下の位置に接続されているため、低段圧縮機の過剰の油を過不足なく、低段圧縮機から排出することができる。
【0009】
第3観点の多段圧縮システムは、第1観点又は第2観点のシステムであって、圧力低下要素は、インタークーラである。インタークーラは、低段圧縮機で吐出された冷媒を、高段圧縮機に吸入する前に冷却する。
【0010】
第3観点の多段圧縮システムは、油排出管が、低段圧縮機と、インタークーラよりも上流側の冷媒配管と、が接続されているので、油排出管が排出する油量が抑制され、低段圧縮機の油量が適量に制御できる。
【0011】
第4観点の多段圧縮システムは、第3観点のシステムであって、さらに、中間インジェクション通路の合流部分を有している。中間インジェクション通路の合流部分は、中間圧の冷媒を冷媒配管に注入する。中間インジェクション通路の合流部分は、インタークーラの上流側に、接続されている。油排出管は、合流部分と、インタークーラの間に接続されている。
【0012】
第4観点の多段圧縮システムは、油排出管は、合流部分とインタークーラの間に接続されているので、油排出管と、冷媒配管の圧力差が適度になり、油排出管が排出する油量が適度に制御され、低段圧縮機の油量が適量に制御できる。
【0013】
第5観点の多段圧縮システムは、第1観点または第2観点のシステムであって、さらに、インタークーラを有している。インタークーラは、冷媒配管の途中に接続される。インタークーラは、低段圧縮機で吐出された冷媒を、高段圧縮機に吸入する前に冷却する。圧力低下要素は、インタークーラの下流側部分である。
【0014】
第5観点の多段圧縮システムは、インタークーラの途中に油排出管が接続されている。油排出量が適切に制御され、低段圧縮機の油量が適量に制御できる。
【0015】
第6観点の多段圧縮システムは、第1観点または第2観点のシステムであって、圧力低下要素は、中間インジェクション通路の合流部分である。中間インジェクション通路は、中間圧の冷媒を冷媒配管に注入する。
【0016】
第6観点の多段圧縮システムは、中間インジェクション通路の合流部分よりも上流側の冷媒配管に、油排出管が接続されているので、冷媒配管の圧力の低下が小さく、油排出管から排出される油の排出量が抑制され、低段圧縮機の油量が適量に制御される。
【0017】
第7観点の多段圧縮システムは、第6観点のシステムであって、さらに、インタークーラを有している。インタークーラは、中間インジェクション通路の合流部分の上流側に、配置されている。インタークーラは、低段圧縮機で吐出された冷媒を、高段圧縮機に吸入する前に冷却する。油排出管は、インタークーラと合流部分との間に接続されている。
【0018】
第7観点の多段圧縮システムは、油排出管が、インタークーラと合流部分との間に接続されているため、油排出量が適切に制御され、低段圧縮機の油量が適量に制御できる。
【0019】
第8観点の多段圧縮システムは、第1観点〜第7観点のいずれかのシステムであって、冷媒は、二酸化炭素を主とする冷媒であり、油は、二酸化炭素と非相溶の油である。
【0020】
第8観点の多段圧縮システムは、冷媒と油が非相溶であるため、低段圧縮機の油たまりにおいて、冷媒と油が上下に分離しやすく、冷媒を主として、油排出管から排出しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
(1)冷凍装置1の冷媒回路
(1−1)冷凍装置1の冷媒回路全体
第1実施形態の冷凍装置1の冷媒回路構成を
図1に示す。本実施形態の冷凍装置1は、超臨界域で作動する冷媒である二酸化炭素を用い、二段圧縮式の冷凍サイクルを行う装置である。本実施形態の冷凍装置1は、冷暖房を行う空気調和装置、冷房専用の空気調和装置、冷温水器、冷蔵装置、冷凍貯蔵装置などに用いることができる。
【0023】
本実施形態の冷凍装置1は、多段圧縮システム20と、四方切換弁5と、熱源側熱交換器2と、ブリッジ回路3と、膨張機構8、9と、利用側熱交換器4と、エコノマイザ熱交換器7とを有している。
【0024】
多段圧縮システム20は、冷媒を圧縮する。ガス冷媒は、四方切換弁5、冷媒配管13を経由して、低段圧縮機21の入口の第1アキュムレータ22に導入される。冷媒は、低段圧縮機21、高段圧縮機23により圧縮され、配管18を経由して、四方切換弁5にいたる。
【0025】
四方切換弁5は、多段圧縮システム20よりの冷媒を、熱源側熱交換器2と利用側熱交換器4のいずれの方向に流すかを切り換える。たとえば、冷凍装置1が空気調和装置であり、冷房運転のときは、冷媒は、四方切換弁5から熱源側熱交換器2(凝縮器)に流れる。熱源側熱交換器2(凝縮器)を流れた冷媒は、ブリッジ回路3の逆止弁3a、配管11、逆止弁11eを経由して、レシーバ6に達する。レシーバ6より液冷媒は、引き続き配管11を流れ、膨張機構9で減圧され、ブリッジ回路3の逆止弁3cを経由して、利用側熱交換器4(蒸発器)へ向かう。利用側熱交換器4(蒸発器)で加熱された冷媒は、四方切換弁5を経由して、再び多段圧縮システム20で圧縮される。一方、暖房運転時は、冷媒は、四方切換弁5から利用側熱交換器4(凝縮器)、ブリッジ回路3の逆止弁3b、配管11、レシーバ6、膨張機構9、ブリッジ回路3の逆止弁3d、利用側熱交換器4(蒸発器)、四方切換弁5の順に流れる。
【0026】
エコノマイザ熱交換器7は、冷媒配管11の途中、レシーバ6と、膨張機構9の間に配置されている。配管11の分岐11aにて、一部の冷媒は分岐して、膨張機構8にて中間圧に減圧される。中間圧の冷媒は、エコノマイザ熱交換器7において、配管11を流れる高圧冷媒によって加熱され、中間インジェクション配管12を経由して、多段圧縮システム20の中間圧の合流部分15bにインジェクションされる。また、レシーバ6より冷媒のガス成分が配管19を経由して、中間インジェクション配管12に合流する。
【0027】
(1−2)多段圧縮システム20における冷媒および油の流れ
本実施形態の多段圧縮システム20は、
図1に示すように、第1アキュムレータ22と、低段圧縮機21と、インタークーラ26と、第2アキュムレータ24と、高段圧縮機23と、油分離器25と、オイルクーラ27と、減圧器31aとを備えている。
【0028】
本実施形態においては、低段圧縮機21で圧縮された冷媒を、さらに、高段圧縮機23で圧縮する。圧縮機21、23は、それぞれ、アキュムレータ22、24を備えている。アキュムレータ22、24は、圧縮機に入る前の冷媒を一度蓄えて、液冷媒が圧縮機に吸入されないようにする役割を担う。
【0029】
次に、本実施形態の多段圧縮システム20における冷媒、油の流れを、
図1を利用して説明する。
【0030】
本実施形態においては、蒸発器(利用側熱交換器4または熱源側熱交換器2)で加熱された低圧のガス冷媒は、冷媒配管13を経由して、第1アキュムレータ22に流れる。第1アキュムレータ22のガス冷媒は、吸入管14を経由して、低段圧縮機21へと流れる。低段圧縮機21で圧縮された冷媒は、吐出管15aより吐出され、中間圧冷媒配管151〜153を流れ、第2アキュムレータ24に達する。
【0031】
インタークーラ26は、中間圧冷媒配管151、152の間に配置されている。インタークーラ26は、中間圧の冷媒を、たとえば、室外の空気で冷却する熱交換器である。インタークーラ26は、熱源側熱交換器2と隣接して配置して、共通のファンで空気と熱交換しても良い。インタークーラ26は、中間圧の冷媒を冷却することにより、冷凍装置1の効率を高める。
【0032】
また、中間圧冷媒配管152の合流部分15bには、中間インジェクション配管12より、中間圧の冷媒がインジェクションされる。本実施形態においては、中間インジェクション配管12の配管152への合流部分15bは、インタークーラ26の下流側に配置される。中間インジェクションでインジェクションされる冷媒は、配管152を流れる冷媒よりも温度が低い。したがって、中間インジェクションは、配管152を流れる冷媒の温度を低下させ、冷凍装置1の効率を向上させる。
【0033】
本実施形態の多段圧縮システム20は、さらに、低段圧縮機21の過剰の油を排出する油排出管32を備えている。油排出管32は、低段圧縮機21と、中間圧の配管151を接続する。油排出管32は、低段圧縮機の油溜まりに溜まった過剰の油のみならず油溜まりに溜まった過剰の冷媒も排出する。油排出管32の中間圧冷媒配管151との接続部分は、インタークーラ26よりも上流部分である。
【0034】
配管153により第2アキュムレータ24に送られた冷媒は、吸入管16より、高段圧縮機23に導入される。冷媒は、高段圧縮機23において、圧縮されて、高圧となり、吐出管17に吐出される。
【0035】
吐出管17に吐出された冷媒は、油分離器25に流れる。油分離器25は、冷媒と油を分離する。分離された油は、油戻し管31を経由して、低段圧縮機21に戻される。
【0036】
本実施形態の多段圧縮システム20は、さらに、高段圧縮機の過剰の油を排出する油排出管33を備えている。油排出管33は、高段圧縮機23と、高段圧縮機23の吐出管17とを接続する。
【0037】
油戻し管31の途中には、減圧器31aが配置されている。減圧器31aは、油分離器25より排出された高圧の油の減圧をするためのものである。減圧器31aは、具体的には、たとえば、キャピラリーチューブが用いられる。
【0038】
油戻し管31の途中には、オイルクーラ27が配置されている。オイルクーラ27は、油戻し管31を流れる油を、たとえば、室外の空気で冷却する熱交換器である。オイルクーラ27は、油分離器25より排出された高温の油を冷却するためのものである。オイルクーラ27は、たとえば、熱源側熱交換器2の近傍に配置し、共通のファンで空気と熱交換しても良い。
【0039】
なお、本実施形態の油(冷凍機油)は、CO
2冷媒で用いられる冷凍機油であれば、特に限定されないが、CO
2冷媒と非相溶の油が特に適している。冷凍機油の例としては、PAG(ポリアルキレングリコール類)、POE(ポリオールエステル類)などがある。
【0040】
なお、本実施形態の冷凍装置1は2台の圧縮機で二段の圧縮を行っている。3台以上の圧縮機を用いて、二段以上の圧縮を行ってもよい。また、三段以上の圧縮を行っても良い。
【0041】
なお、本実施形態においては、油戻し管31は、油分離器25からの油を低段圧縮機21に戻している。油戻し管31は、高段圧縮機23から排出された油を直接低段圧縮機21に戻してもよい。
【0042】
(2)圧縮機と圧縮機に接続される配管、装置の構成
本実施形態の低段圧縮機21、高段圧縮機23は、ともに、2シリンダタイプ、かつ、揺動式のロータリー圧縮機である。圧縮機21、23はほとんど同一の構成なので、ここでは、低段圧縮機21を用いて、詳細に説明する。
【0043】
図2は、低段圧縮機21の縦断面図、
図3〜5は、
図2のそれぞれAA〜CCの位置での水平断面図である。ただし、
図4のBB断面図において、モータ40の部品は記載されていない。
【0044】
低段圧縮機21は、容器30と、圧縮部50と、モータ40と、クランクシャフト60と、ターミナル35と、を有している。
【0045】
(2−1)容器30
容器30は、モータ40の回転軸RAを中心軸として、略円筒状の形状である。容器の内部は機密性が保たれており、運転時に、低段圧縮機21においては中間圧、高段圧縮機23においては高圧の圧力が保持される。容器30の内部の下部は、油(潤滑油)を貯留するための油溜まり(図示せず)となっている。
【0046】
容器30は、内部に、モータ40と、クランクシャフト60と、圧縮部50とを収容している。容器30の上部には、ターミナル35が配置されている。また、容器30には、冷媒の吸入管14a、14bおよび吐出管15aと、油戻し管31と、油排出管32とが接続されている。
【0047】
(2−2)モータ40
モータ40は、ブラシレスDCモータである。モータ40は、クランクシャフト60を、回転軸RAを中心に回転する動力を発生する。モータ40は、容器30の内部の空間内で、上部の空間の下、圧縮部50の上に配置されている。モータ40は、ステータ41およびロータ42を有する。ステータ41は、容器30の内壁に固定されている。ロータ42は、ステータ41と磁気的な相互作用をすることによって回転する。
【0048】
ステータ41は、ステータコア46と、インシュレータ47とを有する。ステータコア46は、鋼製である。インシュレータ47は、樹脂製である。インシュレータ47は、ステータコア46の上下に配置され、巻線が巻かれている。
【0049】
(2−3)クランクシャフト60
クランクシャフト60は、モータ40の動力を圧縮部50に伝達する。クランクシャフト60は、主軸部61、第1偏心部62a、第2偏心部62bを有する。
【0050】
主軸部61は、回転軸RAと同心である部位である。主軸部61は、ロータ42に固定されている。
【0051】
第1偏心部62aおよび第2偏心部62bは、回転軸RAに対して偏心している。第1偏心部62aの形状および第2偏心部62bの形状は、回転軸RAを基準として互いに対称である。
【0052】
クランクシャフト60の下端には、オイルチューブ69が設けられている。オイルチューブ69は、油溜まりから油(潤滑油)をくみ上げる。くみ上げられた潤滑油は、クランクシャフト60の内部の油通路を上昇し、圧縮部50の摺動箇所に供給される。
【0053】
(2−4)圧縮部50
圧縮部50は、2シリンダ型の圧縮機構である。圧縮部50は、第1シリンダ51、第1ピストン56、第2シリンダ52、第2ピストン66、フロントヘッド53、ミドルプレート54、リアヘッド55、フロントマフラ58a、58bを有する。
【0054】
圧縮部50には、第1圧縮室71、第2圧縮室72が形成されている。第1、第2圧縮室は、冷媒が供給され、圧縮される空間である。
【0055】
なお、第1実施形態の多段圧縮システム20においては、圧縮機21、23はともに2シリンダタイプの圧縮機である。両方ともあるいは一方の圧縮機は、1シリンダタイプの圧縮機であってもよい。
【0056】
(2−4−1)第1圧縮室71と、第1圧縮室71で圧縮される冷媒の流れ
第1圧縮室71は、
図2または5に示すように、第1シリンダ51と、第1ピストン56と、フロントヘッド53と、ミドルプレート54とによって囲まれた空間である。
【0057】
第1シリンダ51には、
図5に示すように、吸入孔14e、吐出凹部59、ブッシュ収容穴57a、ブレード移動穴57bが設けられている。第1シリンダ51は、クランクシャフト60の主軸61および第1偏心部62aと、第1ピストン56とを収容する。吸入孔14eは、第1圧縮室71と吸入管14aの内部とを連通させる。ブッシュ収容穴57aには、1対のブッシュ56cが収容される。
【0058】
第1ピストン56は、円環部56aとブレード56bを有する。円環部56aにはクランクシャフト60の第1偏心部62aが嵌め込まれる。ブレード56bは、1対のブッシュ56cに挟まれている。第1ピストン56は、第1圧縮室71を2つに分割する。1つは、吸入孔14eに連通する低圧室71aである。もう1つは、吐出凹部59に連通する高圧室71bである。
図5において、円環部56aは時計回りに公転し、高圧室71bの容積は小さくなり、高圧室71bの冷媒は圧縮される。円環部56aの公転に際し、ブレード56bの先端は、ブレード移動穴57bの側とブッシュ収容穴57aの側を往復する。
【0059】
フロントヘッド53は、
図2に示すように、環状部材53aによって、容器30の内側に固定されている。
【0060】
フロントヘッド53には、フロントマフラ58a、58bが固定されている。フロントマフラは、冷媒が吐出される際の騒音を低減する。
【0061】
第1圧縮室71で圧縮された冷媒は、吐出凹部59を経由して、フロントマフラ58aとフロントヘッド53との間の第1フロントマフラ空間58eに吐き出される。冷媒は、さらに、2つのフロントマフラ58a、58bの間の第2フロントマフラ空間58fに移動した後で、フロントマフラ58bに設けられた吐出穴58c、58d(
図4参照)より、モータ40の下の空間に吹出される。
【0062】
圧縮され、フロントマフラ58aの吐出穴58c、58dより吹出された冷媒は、モータ40の隙間より、容器30の上部空間に移動し、吐出管15aより吹出され、高段圧縮機23へと向かう。
【0063】
(2−4−2)第2圧縮室72と、第2圧縮室72で圧縮される冷媒の流れ
第2圧縮室72は、第2シリンダ52と、第2ピストン66と、リアヘッド55と、ミドルプレート54とによって囲まれた空間である。
【0064】
第2圧縮室72にて圧縮される冷媒の流れも、ほぼ第1圧縮室71にて圧縮される冷媒の流れと同様なので、詳細な説明は省略する。ただし、第2圧縮室72で圧縮された冷媒の場合は、いったん、リアヘッド55に設けられたリアマフラ空間55aに送られた後で、さらに、フロントマフラ58a、58bによるフロントマフラ空間58e、58fに送られるところが、異なる。
【0065】
なお、第1実施形態の多段圧縮システム20においては、圧縮機21のロータリー式圧縮部は、円環部56aとブレード56bとが一体となった、第1ピストン56を用いている。ロータリー式圧縮部は、ブレードの代わりにベーンを用い、ベーンとピストンが別体となったものを用いてもよい。
【0066】
(2−5)圧縮機と、油戻し管31と油排出管32の接続位置について
油戻し管31は、
図2に示すように、モータ40の下で、圧縮部50の上の空間に、内部流路が連通するように、容器30に接続されている。油戻し管31から、容器30の内部に吹出された油は、モータ40のインシュレータ47に衝突した後で、フロントマフラ58bや、フロントヘッド53を固定する環状部材53aの上に落ち、さらに、容器30内部下部の油溜まりに合流する。
【0067】
油戻し管31を、第2圧縮室72よりも上の空間に接続するのが好ましい。油戻し管31を第2圧縮室72よりも下の空間に接続すると、油溜まりの油面よりも下になる可能性が高くなり、そうなると、フォーミングを生じるので好ましくない。
【0068】
また、油戻し管31は、容器30のより上部に接続しても良い。たとえば、モータ40のステータ41のコアカットの部分に接続されていても良い。ただし、油溜まりになるべく近い低部に接続される方が、より早く、摺動部(圧縮室71、72付近)に油を供給することにつながり、好ましい。
【0069】
また、油戻し管31の内径は、たとえば、10mm以上12mm以下である。
【0070】
油排出管32は、
図2に示すように、モータ40の下で、圧縮部50の上の空間に、内部流路が連通するように、容器30に接続されている。
【0071】
油排出管32の容器30への接続位置が圧縮室72よりも低くなると、油が過剰に油溜まりより失われるおそれがある。また、モータ40よりも高い位置になると、吐出管15aと差が小さくなり、油排出管32を別途設ける意義が損なわれる。
【0072】
また、本実施形態では、
図2に示すように、油排出管32の容器30への取り付け高さ位置は、油戻し管31の容器30への取り付け高さ位置と同等である。これによって、油溜まりの油面の高さ調整が容易になる。
【0073】
また、
図4に示すように、油排出管32の平面的な容器30への取り付け位置は、モータ40の回転軸RAに対して、フロントマフラ58bの吐出穴58c、58dの反対の位置である。ここで、反対の位置とは、油排出管32の接続位置から回転軸RAに対して左右に90°ずつの合計180°以外の180°の範囲との意味である。なお、
図4では、吐出穴58cの一部が反対の位置ではないが、ここでは、吐出穴58c、58dの面積の半分以上が反対側との意味である。
【0074】
本実施形態では、油排出管32の容器30への接続位置が、フロントマフラ58bの吐出穴58c、58dの位置から離れているので、フロントマフラ58bの吐出穴58c、58dから吐出した冷媒を、直接油排出管32によって、低段圧縮機21より排出するのを低減できる。
【0075】
油排出管32の内径は、油戻し管31の内径と同等である。吐出管15aの内径よりも細いものを用いる。より具体的には、油排出管32の内径は、たとえば、10mm以上12mm以下である。
【0076】
また、
図5に示すように、油排出管32と油戻し管31の平面的な位置関係を見れば、油排出管32の容器30への接続位置は、油戻し管31の容器30への接続位置から、モータ40の回転方向(
図5の矢印の方向)に90°以上離れた位置である。好ましくは、180°以上はなれた位置である。本実施形態では、この角度は、θであらわされている。シータは、270°以上である。また、θは、330°以下にはすべきである。
【0077】
本実施形態では、油排出管32と油戻し管31の位置が十分離されているため、油戻し管31で低段圧縮機21の容器30内に導入した油がそのまま油排出管32により、容器30外に排出されるのを低減し、低段圧縮機21の均油を容易に実現することができる。
【0078】
なお、第1実施形態の多段圧縮システム20においては、油戻し管31の容器30への接続位置の高さは、油排出管32の容器30への接続位置の高さと同等であった。油戻し管31の容器30への接続位置の高さは、油排出管32の容器30への接続位置の高さよりも高くてもよい。
【0079】
(2−6)アキュムレータ22
本実施形態の多段圧縮システム20においては、低段圧縮機21の上流に第1アキュムレータ22が、高段圧縮機23の上流に第2アキュムレータ24が配置されている。アキュムレータ22、24は、流れてきた冷媒を一度蓄えて、液冷媒が圧縮機に流れるのを防止し、圧縮機の液圧縮を防止する。第1アキュムレータ22と第2アキュムレータ24の構成はほとんど同じなので、第1アキュムレータ22について、
図2を用いて説明する。
【0080】
蒸発器で加熱された低圧のガス冷媒が、四方切換弁5を経由して、冷媒配管13を流れ、アキュムレータ22に導入される。ガス冷媒は、圧縮機21の吸入管14a、14bより、第1、第2圧縮室71、72に導入される。アキュムレータの内部下方には、液冷媒、油が溜まる。吸入管14a、14bには、アキュムレータ内部の下方において、小さな穴14c、14dが形成されている。穴14c、14dの径は、たとえば、1mm〜2mmである。油は、液冷媒とともに、少量ずつ穴14c、14dを経由して、ガス冷媒に合流して、圧縮室へ送られる。
【0081】
(3)特徴
(3−1)
本実施形態の多段圧縮システム20は、低段圧縮機21と、高段圧縮機23と、中間圧冷媒配管151〜153、16と、圧力低下要素と、油排出管32とを有するシステムである。中間圧冷媒配管151〜153、16は、低段圧縮機21で圧縮され、吐出された冷媒を、高段圧縮機23の吸入部分に導入する。圧力低下要素は、冷媒配管151〜153の途中に配置されている。圧力低下要素は、中間圧冷媒配管を流れる冷媒の圧力を低下させる。油排出管32は、低段圧縮機21の過剰の油または液冷媒を排出する。油排出管32は、低段圧縮機21と、圧力低下要素よりも上流側の中間圧冷媒配管151と、を接続する。
【0082】
本実施形態においては、圧力低下要素は、インタークーラ26、または、中間インジェクション通路の合流部分15b、またはその両方である。インタークーラ26は、冷媒自体の温度と圧力を低下させる。中間インジェクション通路の合流部分15bにおいては、中間インジェクション配管12を流れる比較的低温、低圧の冷媒が、中間圧冷媒配管152を流れる冷媒に合流するため、中間圧冷媒配管152を流れる冷媒の圧力が低下する。
【0083】
本実施形態の多段圧縮システム20は、中間圧冷媒配管の、圧力低下要素よりも上流部分に、油排出管32が接続されている。中間圧冷媒配管151と、油排出管32において、冷媒または油の圧力を比較すると、油排出管32は、圧縮部50で圧縮された比較的高圧の冷媒、油が吐出されているのに対して、中間圧冷媒配管151には、容器30内で若干減圧された後の冷媒が吐出管15aより吐出された冷媒であるという差異がある。言い換えると、中間圧冷媒配管151の圧力低下要素より上流部の圧力と油排出管32の圧力は、油排出管32の圧力の方が若干高い。したがって、油排出管32から、冷媒や油が排出されるのである。
【0084】
とは言っても、中間圧冷媒配管151の圧力低下要素より上流部の圧力と油排出管32の圧力の差は小さい。そこで、油排出管32より吐出される冷媒や油の量は過度にならず抑制されている。特に、油排出管32を、中間圧冷媒配管152、153の圧力低下要素より下流部に接続する場合に比べて、冷媒または油排出量は少ない。したがって、油排出管32を、圧力低下要素よりも上流側の中間圧冷媒配管151に接続することにより、低段圧縮機21の油量を適正に制御できる。
【0085】
また、圧力低下要素がインタークーラ26である場合、インタークーラ26の上流に油排出管32が接続されると、インタークーラ26は、油排出管32より流入した油を含む冷媒を冷却する。結果的に、高段圧縮機23に流入する冷媒の温度を低下させ、高段圧縮機の過熱保護の効果がある。
【0086】
(3−2)
本実施形態の多段圧縮システム20においては、油排出管32は、圧縮室72よりも上、モータ40よりも下の前記容器30に接続されている。なお、本実施形態においては、低段圧縮機21は2シリンダタイプの圧縮機であり、圧縮室は、第1圧縮室71と第2圧縮室72の2つがある。このような場合に圧縮室と言う場合には、第2圧縮室72を指すこととする。
【0087】
本実施形態の多段圧縮システム20は、油排出管32が、容器30の圧縮室72より上、モータ40より下の位置に接続されているため、低段圧縮機21の過剰の油を過不足なく、低段圧縮機から排出することができる。このため、低段圧縮機の油量の制御をより迅速に行うことができる。
【0088】
また、本実施形態の多段圧縮システム20においては、
図2に示すように、吐出管15aの容器30内の端部は、容器30内のモータ40の上の空間に配置されている。このように、吐出管15aと、油排出管32の配置が異なることにより、両者の内部の圧力差が形成される。
【0089】
(3−3)
本実施形態の多段圧縮システム20は、冷媒は、二酸化炭素を主とする冷媒であり、油は、二酸化炭素と非相溶の油である。二酸化炭素と非相溶の油の例としては、PAG(ポリアルキレングリコール類)、POE(ポリオールエステル類)である。
【0090】
このような非相溶な油と、二酸化炭素冷媒との混合液では、冷凍装置1を通常の温度条件(−20℃以上)で運転するとき、比重の関係で、油が下で、冷媒が上になる。
【0091】
そうすると、低段圧縮機21の油溜まりにおいて、液冷媒が上方に集まりやすく、油排出管32での余分な液冷媒の排出が容易になる。
【0092】
(3−4)
本実施形態の多段圧縮システム20は、さらに、油戻し管31を有している。油戻し管31は、高段圧縮機23で排出された油を、低段圧縮機21に戻す。
【0093】
本実施形態の多段圧縮システム20は、油排出管32と油戻し管31とを両方とも有しているため、低段圧縮機21の油量の制御を円滑に行うことができる。
【0094】
(4)変形例
(4−1)変形例1A
第1実施形態の多段圧縮システム20において、油排出管32は、中間圧冷媒配管151上のインタークーラ26の上流に接続されていた。変形例1Aにおいては、油排出管32は、中間圧冷媒配管152上の、インタークーラ26と中間インジェクション通路の合流部分15bとの間に接続されている。合流部分において、油排出管32と中間圧冷媒配管の圧力差は、変形例1Aの場合、第1実施形態の場合よりも大きくなる。よって、変形例1Aの場合は、第1実施形態の場合よりも、油排出量は増大する。したがって、変形例1Aは、第1実施形態よりも低段圧縮機の油量を少なめに制御する。その他の構成と特徴は、第1実施形態と同様である。
【0095】
(4−2)変形例1B
第1実施形態の多段圧縮システム20において、油排出管32は、中間圧冷媒配管151上のインタークーラ26の上流に接続されていた。変形例1Bにおいては、油排出管32は、インタークーラ26の途中に接続されている。接続部分において、油排出管32とインタークーラ26の途中の配管との圧力差は、油排出管32とインタークーラ26の上流の配管151との圧力差より大きい。よって、変形例1Bの場合は、第1実施形態の場合よりも、油排出量は増大する。ただし、変形例1Aの場合よりは、少ない。したがって、変形例1Bは、第1実施形態よりも低段圧縮機の油量を少なめに制御する。その他の構成と特徴は、第1実施形態と同様である。
【0096】
(4−3)変形例1C
第1実施形態の多段圧縮システム20は、低段圧縮機21の吐出管15aに繋がる中間圧冷媒配管の上流側にインタークーラ26、下流側に中間インジェクション通路の合流部分15bを備えていた。変形例1Cの多段圧縮システム20においては、中間圧冷媒配管にインタークーラ26を備えているのみで、中間インジェクション通路の合流部分15bは備えていない。変形例1Cは、エコノマイザ熱交換器7を備えていない。その他の構成は、第1実施形態と同様である。油排出管32は、第1実施形態と同様に、中間圧冷媒配管151上のインタークーラ26の上流に接続されている。
【0097】
また、変形例1Cとは逆に、多段圧縮システム20は、中間圧冷媒配管に中間インジェクション通路の合流部分15bを備えているのみで、インタークーラ26は備えていない場合も本開示は有効である。
【0098】
(4−4)変形例1D
第1実施形態の多段圧縮システム20は中間インジェクション配管の上流部分に、レシーバ6およびエコノマイザ熱交換器7を配していた。変形例1Dの多段圧縮システム20においては、中間インジェクション配管12の上流部分に、レシーバ6を備えているのみで、エコノマイザ熱交換器7は備えていない。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0099】
変形例1Dの多段圧縮システム20も、第1実施形態の多段圧縮システム20と同様の特徴(3−1)〜(3−4)を有する。
【0100】
また、変形例1Dとは逆に、多段圧縮システム20は、中間インジェクション配管12の上流部分に、エコノマイザ熱交換器7を備えているのみで、レシーバ6は備えていない場合も本開示は有効である。
【0101】
(4−5)変形例1E
第1実施形態の多段圧縮システム20は、低段圧縮機21の吐出管15aに繋がる中間圧冷媒配管151〜153の上流側にインタークーラ26、下流側に中間インジェクション通路の合流部分15bを備えていた。変形例1Eの多段圧縮システム20は、
図6に示すように、中間圧冷媒配管154〜156の上流側に中間インジェクション通路の合流部分15b、下流側にインタークーラ26を備えている。油排出管32は、中間圧冷媒配管154上の中間インジェクション通路の合流部分15bの上流に接続されている。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0102】
変形例1Eの多段圧縮システム20も、第1実施形態の多段圧縮システム20と同様の特徴(3−1)〜(3−4)を有する。
【0103】
(4−6)変形例1F
変形例1Fの多段圧縮システム20は、変形例1Eと同様に、
図6に示すように、中間圧冷媒配管154〜156の上流側に中間インジェクション通路の合流部分15b、下流側にインタークーラ26を備えている。変形例1Eでは、油排出管32は、中間圧冷媒配管154上の中間インジェクション通路の合流部分15bの上流に接続されている。変形例1Fでは、油排出管32は、中間圧冷媒配管155上の中間インジェクション通路の合流部分15bと、インタークーラ26との間に接続されている。その他の構成は、変形例1Eと同じである。
【0104】
接続部分において、油排出管32と、合流部分15bとインタークーラ26との間の中間圧冷媒配管155との圧力差は、油排出管32と、合流部分15bの上流の配管154との圧力差より大きい。よって、変形例1Fの場合は、変形例1Eの場合よりも、油排出量は増大する。したがって、変形例1Fは、変形例1Eよりも低段圧縮機の油量を少なめに制御する。
【0105】
(4−7)変形例1G
変形例1Gの多段圧縮システム20は、変形例1Eと同様に、
図6に示すように、中間圧冷媒配管154〜156の上流側に中間インジェクション通路の合流部分15b、下流側にインタークーラ26を備えている。変形例1Eでは、油排出管32は、中間圧冷媒配管154上の中間インジェクション通路の合流部分15bの上流に接続されている。変形例1Gでは、油排出管32は、インタークーラ26の冷媒流路の途中に接続されている。その他の構成は、変形例1Eと同じである。
【0106】
接続部分において、油排出管32と、インタークーラ26の冷媒流路の途中との圧力差は、油排出管32と、合流部分15bの上流の配管154との圧力差より大きい。よって、変形例1Gの場合は、変形例1Eの場合よりも、油排出量は増大する。したがって、変形例1Gは、変形例1Eよりも低段圧縮機の油量を少なめに制御する。
【0107】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【解決手段】多段圧縮システム20は、低段圧縮機21と、高段圧縮機23と、冷媒配管151〜156、16と、圧力低下要素26、15bと、油排出管32とを有する。冷媒配管151〜156、16は、低段圧縮機21で圧縮され、吐出された冷媒を、高段圧縮機23の吸入部分に導入する。圧力低下要素26、15bは、中間圧冷媒配管151〜156の途中に配置されている。油排出管32は、低段圧縮機21の油を排出する。油排出管32は、低段圧縮機21と、圧力低下要素26、15bよりも上流側の冷媒配管と、を接続する。