特許第6702415号(P6702415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702415
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】2−シアノアクリレート系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/04 20060101AFI20200525BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   C09J4/04
   C09J11/06
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-525129(P2018-525129)
(86)(22)【出願日】2017年6月23日
(86)【国際出願番号】JP2017023157
(87)【国際公開番号】WO2018003682
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2019年3月4日
(31)【優先権主張番号】特願2016-127826(P2016-127826)
(32)【優先日】2016年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 謙一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 裕史
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−167097(JP,A)
【文献】 特開昭58−089674(JP,A)
【文献】 特開2000−044891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−シアノアクリル酸エステル(a)と、
下記一般式(1)で示される硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)とを含有する
2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
−X=C=S (1)
(ここで、Xは、S、O、NまたはCの各原子を示し、Rは、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基及びアリール基からなる群より選択される少なくとも1種で、当該各基は置換基を含んでいてもよい。nは、XがS原子またはO原子のときn=0で、XがN原子のときn=1で、XがC原子のときn=2となる。Rが2個の場合には同じでも違っていてもよい。)
【請求項2】
前記硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)が、二硫化炭素、硫化カルボニル及びイソチオシアナート基を有する化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項3】
前記硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)が、イソチオシアナート基を有する化合物である請求項1に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項4】
前記硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)の含有量が、前記2−シアノアクリル酸エステル(a)100質量部に対して、0.0002〜3質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項5】
更に、下記一般式(2)で表されるオニウム塩(c)を含有させてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
(2)
(式中、Cは第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン及び第三級スルホニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種のオニウムカチオンである。Aは硫酸水素アニオン、亜硫酸水素アニオン、RSOで表されるスルホン酸アニオン(Rは、アルキル基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリール基、パーフルオロアリール基、アラルキル基若しくはハロゲン原子である)及び(RSOで表されるビス(置換スルホニル)イミドアニオン(Rは、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基若しくはハロゲン原子である)からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンである。)
【請求項6】
前記オニウム塩(c)のカチオンが、第四級アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン及び第三級スルホニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種のオニウムカチオンであり、アニオンが硫酸水素アニオン、パーフルオロアルカンスルホン酸アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン及びビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドアニオンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項5に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項7】
前記オニウム塩(c)の含有量が、前記2−シアノアクリル酸エステル(a)100質量部に対して、0.001〜2質量部である請求項5または6に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項8】
更に、包接能を有する化合物(d)を含有させてなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項9】
前記包接能を有する化合物(d)が、ポリアルキレンオキサイド類、クラウンエーテル類及びカリックスアレン類からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項8に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項10】
前記包接能を有する化合物(d)の含有量が、前記2−シアノアクリル酸エステル(a)100質量部に対して、0.001〜3質量部である請求項8または9に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−シアノアクリル酸エステルを主成分とする2−シアノアクリレート系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2−シアノアクリレート系接着剤組成物は、主成分である2−シアノアクリル酸エステルが有する特異なアニオン重合性により、被着体表面に付着する僅かな水分等の微弱なアニオンによって重合を開始し、各種材料を短時間で強固に接合することができる。そのため、所謂、瞬間接着剤として、工業用、医療用及び家庭用等の広範な分野において用いられている。しかし、2−シアノアクリレート系接着剤組成物の硬化はアニオン重合により進行するため、被着体が酸性を呈する木材や、酸化被膜を形成し易い金属の場合には、アニオン重合が阻害され、結果として接着速度が遅くなり、十分な接着強さを得ることはできないという問題がある。また、被着体が極性の低い熱可塑性エラストマー等の場合には、アニオン重合が抑制され、接着速度が遅くなるという問題がある。
【0003】
従来、これらの問題を解決するために、各種の添加剤が提案されている。例えば、特許文献1にはクラウンエーテル類を含有する接着剤組成物が開示されており、特許文献2にはポリアルキレンオキサイド類を含有する接着剤組成物が開示されている。また、特許文献3及び4には、カリックスアレン類を含有する接着剤組成物が開示されている。更に、特許文献5には、相間移動触媒を2−シアノアクリレート系組成物の硬化促進剤として使用することが記載されている。更に、特許文献6には2−置換ベンゾチアゾールが、特許文献7には構造要素として−N=C−S−S−を含有する有機化合物をそれぞれ含有する接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53−129231号公報
【特許文献2】特開昭63−128088号公報
【特許文献3】特開昭60−179482号公報
【特許文献4】特開2000−44891号公報
【特許文献5】英国特許出願公開第2228943号明細書
【特許文献6】特表2012−506470号公報
【特許文献7】特表2002−533554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4に開示される接着剤組成物は、各種被着体の接着速度を短縮することはできるものの、生産性の更なる向上が要求される中で、被着体が金属の場合や極性の低い熱可塑性エラストマーの場合の接着速度は満足できるものではなかった。また、特許文献5に具体的に記載された相間移動触媒を硬化促進剤として使用した場合でも、被着体が金属の場合や極性の低い熱可塑性エラストマーの接着速度は不十分であった。特許文献6及び7も被着体が金属の場合や極性の低い熱可塑性エラストマーの接着速度は不十分であり、かつ特許文献7は2液型またはプライマーとして使用しなければならないとの問題もあった。
【0006】
本発明は、前記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、金属及び極性が低い熱可塑性エラストマーに対し優れた接着速度を発現するとともに、貯蔵安定性も良好な接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物を2−シアノアクリル酸エステルに配合することにより、金属及び極性が低い熱可塑性エラストマーに対し優れた接着速度を発現するとともに、貯蔵安定性にも優れた接着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は以下のとおりである。
1.2−シアノアクリル酸エステル(a)と、下記一般式(1)で示される硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)とを含有する2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
−X=C=S (1)
(ここで、Xは、S、O、NまたはCの各原子を示し、Rは、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基及びアリール基からなる群より選択される少なくとも1種で、当該各基は置換基を含んでいてもよい。nは、XがS原子またはO原子のときn=0で、XがN原子のときn=1で、XがC原子のときn=2となる。Rが2個の場合には同じでも違っていてもよい。)
2.前記硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)が、二硫化炭素、硫化カルボニル及びイソチオシアナート基を有する化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物である前記1.に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
3.前記硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)が、イソチオシアナート基を有する化合物である前記1.に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
4.前記硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)の含有量が、前記2−シアノアクリル酸エステル(a)100質量部に対して、0.0002〜3質量部である前記1.〜3.のいずれかに記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
5.更に、下記一般式(2)で表されるオニウム塩(c)を含有させてなる前記1.〜4.のいずれかに記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
(2)
(式中、Cは第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン及び第三級スルホニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種のオニウムカチオンである。Aは硫酸水素アニオン、亜硫酸水素アニオン、RSOで表されるスルホン酸アニオン(Rは、アルキル基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリール基、パーフルオロアリール基、アラルキル基若しくはハロゲン原子である)及び(RSOで表されるビス(置換スルホニル)イミドアニオン(Rは、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基若しくはハロゲン原子である)からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンである。)
6.前記オニウム塩(c)のカチオンが、第四級アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン及び第三級スルホニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種のオニウムカチオンであり、アニオンが硫酸水素アニオン、パーフルオロアルカンスルホン酸アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン及びビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドアニオンからなる群より選択される少なくとも1種である前記5.に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
7.前記オニウム塩(c)の含有量が、前記2−シアノアクリル酸エステル(a)100質量部に対して、0.001〜2質量部である前記5.または6.に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
8.更に、包接能を有する化合物(d)を含有させてなる前記1.〜7.のいずれかに記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
9.前記包接能を有する化合物(d)が、ポリアルキレンオキサイド類、クラウンエーテル類及びカリックスアレン類からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である前記8.に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
10.前記包接能を有する化合物(d)の含有量が、前記2−シアノアクリル酸エステル(a)100質量部に対して、0.001〜3質量部である前記8.または9.に記載の2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の2−シアノアクリレート系接着剤組成物は、2−シアノアクリル酸エステルと、硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物とを含有しているため、金属及び極性が低い熱可塑性エラストマーに対し優れた接着速度を発現するとともに、貯蔵安定性も良好である。
また、特定構造のオニウム塩を更に含有させると、金属及び極性が低い熱可塑性エラストマーに対する接着速度が更に大きくなる。また、前記オニウム塩のアニオンが、硫酸水素アニオン、パーフルオロアルカンスルホン酸アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン及びビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドアニオンからなる群より選択される少なくとも1種である場合には、より優れた接着速度を発現する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の2−シアノアクリレート系接着剤組成物(以下、単に「接着剤組成物」ともいう)について詳しく説明する。
本発明の接着剤組成物は、2−シアノアクリル酸エステル(a)と、一般式(1)で示される硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)とを含有する。
−X=C=S (1)
(ここで、Xは、S、O、NまたはCの各原子を示し、Rは、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基及びアリール基からなる群より選択される少なくとも1種で、当該各基は置換基を含んでいてもよい。nは、XがS原子またはO原子のときn=0で、XがN原子のときn=1で、XがC原子のときn=2となる。Rが2個の場合には同じでも違っていてもよい。)
【0011】
前記2−シアノアクリル酸エステル(a)としては、この種の接着剤組成物に一般に使用される2−シアノアクリル酸エステルを特に限定されることなく用いることができる。
この2−シアノアクリル酸エステルとしては、2−シアノアクリル酸のメチル、エチル、クロロエチル、n−プロピル、i−プロピル、アリル、プロパルギル、n−ブチル、i−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、テトラヒドロフルフリル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、2−オクチル、n−ノニル、オキソノニル、n−デシル、n−ドデシル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシイソプロピル、メトキシブチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシイソプロピル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、プロポキシプロピル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシイソプロピル、ブトキシブチル、2,2,2−トリフルオロエチル及びヘキサフルオロイソプロピル等のエステルが挙げられる。これらの2−シアノアクリル酸エステルは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの2−シアノアクリル酸エステルのうち、硬化性に優れることから、炭素数3以下のアルキル基を有する2−シアノアクリル酸エステルが好ましく、2−シアノアクリル酸エチルが更に好ましい。
【0012】
本発明の接着剤組成物は、硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)を含有する。この化合物は接着剤組成物の硬化促進剤として機能し、特に金属や熱可塑性エラストマー等の非極性の難接着材料に対する接着速度を向上させる化合物である。極性が低い熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、及び、オレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0013】
前記一般式(1)で示される硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)とは、1つ以上の硫黄原子を含むヘテロアレン構造を一分子中に1つ以上有する含硫黄化合物のことで、具体的には、二硫化炭素、硫化カルボニル、チオケテン化合物またはイソチオシアナート基を有する化合物が挙げられる。本発明の接着剤組成物では、硬化促進効果が大きいことから、硫化炭素、硫化カルボニル及びイソチオシアナート基を有する化合物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物が好ましく、取扱い易さ・安全性の点から、イソチオシアナート基を有する化合物が更に好ましい。
イソチオシアナート基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、フェニルイソチオシアナート、2−クロロフェニルイソチオシアナート、2−メチルフェニルイソチオシアナート、2−フルオロフェニルイソチオシアナート、3,4−ジフルオロフェニルイソチオシアナート、2,3,4−トリフルオロフェニルイソチオシアナート、シクロヘキシルイソチオシアナート、ベンジルイソチオシアナート、ブチルイソチオシアナート、アリルイソチオシアナート、4−(トリフルオロメチル)フェニルイソチオシアナート、3−フルオロフェニルイソチオシアナート、3−フルオロ−6−メチルフェニルイソチオシアナート、4−ヒドロキシフェニルイソチオシアナート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソチオシアナート、1,4−フェニレンジイソチオシアナート、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルイソチオシアナート、アセチルイソチオシアナート、1,3−フェニレンジイソチオシアナート等が挙げられる。
これらの中では、フェニルイソチオシアナート、ベンジルイソチオシアナート及びアリルイソチオシアナートが、硬化促進効果が大きく、かつ安全性が高いので好ましい。
【0014】
本発明の接着剤組成物における前記硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)の含有量は、2−シアノアクリル酸エステル(a)100質量部に対して、0.0002〜3質量部であることが好ましく、0.00025〜2.5質量部であることがより好ましく、0.0003〜2質量部であることが更に好ましい。前記含有量が0.0002質量部以上であると、硬化促進剤としての効果が十分に得られる。一方、3質量部以下であると、接着速度に優れる。
【0015】
本発明の接着剤組成物は、「硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)」と共に下記一般式(2)で示されるオニウム塩(c)を配合することが好ましい。
(2)
(式中、Cは第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン及び第三級スルホニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種のオニウムカチオンである。Aは硫酸水素アニオン、亜硫酸水素アニオン、RSOで表されるスルホン酸アニオン(Rは、アルキル基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリール基、パーフルオロアリール基、アラルキル基若しくはハロゲン原子である)及び(RSOで表されるビス(置換スルホニル)イミドアニオン(Rはアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基若しくはハロゲン原子である)からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンである。)
当該オニウム塩(c)の詳細な説明は、国際公開第2014/042082号に記載されている。
【0016】
前記オニウム塩のカチオンは、下記一般式(3)で表されるオニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン及び一般式(4)で表されるオニウムカチオンが挙げられる。
【0017】
【化1】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の非置換若しくは置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基またはアルキニル基である;あるいは、R〜Rの一部または全部が、Zで示される原子と一緒になって、非置換または置換の3〜10員環(ここで、該環はO、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい)を形成し、該環の形成に関与していないR〜Rは、前記で定義したとおりである;そしてZは、窒素原子またはリン原子を表す。なお、上記置換のアルキル基の具体例としては、例えば、アルコキシ基及びアルカノイル基が挙げられる。また、R〜Rの一部が環を形成する場合、通常、R〜Rのうちの2または3つが環を形成する。R〜Rの2つが環を形成する式(3)化合物の具体例としては、ピペリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン等が挙げられる。)
【0018】
【化2】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の非置換若しくは置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基またはアルキニル基である;あるいは、R〜Rの一部または全部が、硫黄原子と一緒になって、非置換または置換の3〜10員環(ここで、該環はO、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい)を形成し、該環の形成に関与していないR〜Rは、前記で定義したとおりである。なお、上記置換のアルキル基の具体例としては、例えば、アルコキシ基及びアルカノイル基が挙げられる。)
【0019】
前記一般式(3)で表されるオニウムカチオンの代表例としては、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0020】
第四級アンモニウムカチオンとしては、例えば、前記国際公開第2014/042082号で開示されたものが挙げられる。具体的には、テトラ−n−ブチルアンモニウム、トリメチルペンチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、ヘプチルトリメチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルノニルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、トリメチルウンデシルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、ジラウリルジメチルアンモニウム、ジメチルジスチリルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジパルミチルアンモニウム、エチルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ヘキシルジメチルオクチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムカチオン;ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム等の芳香族アルキル基置換アンモニウムカチオン;トリメチルフェニルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム等の芳香族置換アンモニウムカチオン;1−エチル−1−メチルピロリジニウム、1,1−ジエチルピロリジニウム、1,1−テトラメチレンピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム)、1−エチル−1−メチルピペリジニウム、1,1−ジエチルピペリジニウム、1−ブチル−1−メチルピペリジニウム)等の脂肪族環状アンモニウムカチオン等が挙げられ、この中でテトラ−n−ブチルアンモニウムが接着速度を上げる効果が大きく好ましい。
【0021】
また、第四級ホスホニウムカチオンの具体例としては、テトラメチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム等のカチオンを挙げることができる。
【0022】
イミダゾリウムカチオンとしては、例えば、前記国際公開第2014/042082号で開示されたものが挙げられる。具体的には、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−メチル−3−n−オクチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチル−2−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリウム、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−n−ブチル−2,3−メチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリウム、2−n−ヘプチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム等が挙げられる。
【0023】
ピリジニウムカチオンの具体例としては、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−n−プロピルピリジニウム、1−イソプロピルピリジニウム、1−n−ブチルピリジニウム、1−エチル−3−メチルピリジニウム、1−エチル−4−メチルピリジニウム、1−n−ブチル−3−メチルピリジニウム、1−n−ブチル−4−メチルピリジニウム、等のカチオンが挙げられ、この中で、1−エチル−3−メチルピリジニウム、1−エチル−4−メチルピリジニウム及び1−n−ブチル−4−メチルピリジニウムが接着速度を上げる効果が大きく好ましい。
【0024】
前記一般式(4)で表される第三級スルホニウムカチオンの具体例としては、トリメチルスルホニウム、トリエチルスルホニウム、トリプロピルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム等のカチオンが挙げられる。
【0025】
前記カチオンの中でも、対応するオニウム塩が2−シアノアクリル酸エステルへの溶解性に優れること、及び硬化促進能と接着剤組成物の貯蔵安定性のバランスの点から第四級アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオンまたは第三級スルホニウムカチオンが好ましく、第四級アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンまたはピリジニウムカチオンが更に好ましい。
【0026】
次に、前記オニウム塩のアニオンは、硫酸水素アニオン、亜硫酸水素アニオン、RSOで表されるスルホン酸アニオン(Rは、アルキル基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリール基、パーフルオロアリール基、アラルキル基若しくはハロゲン原子である)、または(RSON−で表されるビス(置換スルホニル)イミドアニオンである(Rは、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基若しくはハロゲン原子である)。R及びRのアルキル基の炭素数は1〜15が好ましい。
【0027】
前記RSOで表されるスルホン酸アニオンの具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ヘプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、10−カンファースルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸、フッ化スルホン酸、塩化スルホン酸、臭化スルホン酸等のアニオンが挙げられる。また、炭素数1〜10のパーフルオロアルキルスルホン酸アニオンとしては、パーフルオロオクタンスルホン酸アニオン等が挙げられる。パーフルオロアルキル基の炭素数は、対応するオニウム塩の2−シアノアクリル酸エステルに対する溶解性の点から1〜8が好ましい。
【0028】
また、前記(RSOで表されるビス(置換スルホニル)イミドアニオンの具体例としては、ビス(メタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(エタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(プロパンスルホニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオン等が挙げられる。
【0029】
これらのアニオンの中でも、金属及び熱可塑性エラストマーに対して優れた接着速度を発現し、接着剤組成物の貯蔵安定性に優れることから、硫酸水素アニオン、パーフルオロアルカンスルホン酸アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン及びビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドアニオンが好ましい。
【0030】
本発明に用いられるオニウム塩は、前記カチオンとアニオンの組合せであれば特に限定されない。オニウム塩の具体例としては、テトラエチルアンモニウム硫酸水素塩、テトラ−n−ブチルアンモニウム硫酸水素塩、メチルトリ−n−オクチルアンモニウム硫酸水素塩、アミルトリエチルアンモニウム硫酸水素塩、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム硫酸水素塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−メチル−3−n−オクチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム硫酸水素塩、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリウム硫酸水素塩、1,3−ジメチル−2−n−ペンチルイミダゾリウム硫酸水素塩、2−n−ヘプチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−エチル−1−メチルピペリジニウム硫酸水素塩、1−ブチル−1−メチルピペリジニウム硫酸水素塩、1−エチル−1−メチルピロリジニウム硫酸水素塩、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム硫酸水素塩、1−メチル−1−プロピルピロリジニウム硫酸水素塩、1−エチルピリジニウム硫酸水素塩、1−エチル−3−メチルピリジニウム硫酸水素塩、1−ブチル−3−メチルピリジニウム硫酸水素塩、1−エチル−4−メチルピリジニウム硫酸水素塩、1−ブチルピリジニウム硫酸水素塩、1−ブチル−4−メチルピリジニウム硫酸水素塩、テトラメチルホスホニウム硫酸水素塩、トリエチルメチルホスホニウム硫酸水素塩、テトラエチルホスホニウム硫酸水素塩、
【0031】
テトラ−n−ブチルアンモニウムメタンスルホネート、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−エチル−1−メチルピペリジニウムメタンスルホネート、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムメタンスルホネート、1−エチル−1−メチルピロリジニウムメタンスルホネート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムメタンスルホネート、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムメタンスルホネート、1−エチルピリジニウムメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルピリジニウムメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムメタンスルホネート、テトラエチルホスホニウムメタンスルホネート、テトラエチルホスホニウムメタンスルホネート、テトラ−n−ブチルアンモニウムp−トルエンスルホネート、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムp−トルエンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムp−トルエンスルホネート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムp−トルエンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムp−トルエンスルホネート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムp−トルエンスルホネート、1−エチル−1−メチルピペリジニウムp−トルエンスルホネート、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムp−トルエンスルホネート、1−エチル−1−メチルピロリジニウムp−トルエンスルホネート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムp−トルエンスルホネート、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムp−トルエンスルホネート、1−エチルピリジニウムp−トルエンスルホネート、1−エチル−3−メチルピリジニウムp−トルエンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムp−トルエンスルホネート、テトラエチルホスホニウムp−トルエンスルホネート、テトラエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、テトラ−n−ブチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、メチルトリ−n−ブチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、アミルトリエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ベンジルトリブチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジデシルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジラウリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ヘキシルジメチルオクチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ドデシル(フェロセニルメチル)ジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0032】
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−メチル−3−n−オクチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,3−ジメチル−2−n−ペンチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,3−ジメチル−2−n−ヘプチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−1−メチルピペリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−4−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−4−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0033】
テトラエチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、メチルトリ−n−ブチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、アミルトリエチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ベンジルトリブチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ジデシルジメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ジラウリルジメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ヘキシルジメチルオクチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ドデシルトリメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ドデシル(フェロセニルメチル)ジメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−3−n−オクチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジメチル−2−n−ペンチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジメチル−2−n−ヘプチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−1−メチルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−1−メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−4−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、4−メチル−1−オクチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリエチルスルホニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、テトラエチルホスホニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、
【0034】
テトラエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0035】
この中で、テトラ−n−ブチルアンモニウム硫酸水素塩、メチルトリ−n−オクチルアンモニウム硫酸水素塩、アミルトリエチルアンモニウム硫酸水素塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸水素塩、1−エチル−1−メチルピペリジニウム硫酸水素塩、1−エチル−1−メチルピロリジニウム硫酸水素塩、1−ブチル−3−メチルピリジニウム硫酸水素塩、1−ブチル−4−メチルピリジニウム硫酸水素塩、テトラ−n−ブチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ベンジルトリブチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジデシルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジラウリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ヘキシルジメチルオクチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−1−メチルピペリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−4−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、テトラ−n−ブチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ベンジルトリブチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ジデシルジメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ジラウリルジメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ヘキシルジメチルオクチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ドデシルトリメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−1−メチルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−1−メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチル−4−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリエチルスルホニウムビス(フルオロスルホニル)イミドが接着速度を上げる効果が大きく好ましい。
【0036】
本発明のオニウム塩は、公知の方法により製造することができる。例えば、Hiroyuki OhnoらのJ.Am.Chem.Soc.,2005,27,2398−2399、またはPeter WasserscheidらのGreen Chemistry,2002,4,134−138に記載のように、対応するオニウムハライドから製造することができる。
【0037】
本発明の接着剤組成物における前記オニウム塩(c)の含有量は、2−シアノアクリル酸エステル(a)100質量部に対して、0.001〜2質量部であることが好ましく、0.002〜1.5質量部であることがより好ましく、0.003〜1質量部であることが更に好ましい。前記含有量が0.001質量部以上であると、硬化促進剤としての効果が十分に得られる。一方、2質量部以下であると、接着剤組成物の貯蔵安定性に優れる。
【0038】
前記硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)が、接着剤組成物の貯蔵安定性に悪影響を与えず、金属及び熱可塑性エラストマー等の極性が低い難接着材料に対し優れた接着速度を発現する理由は明らかでないが、次のように推測される。すなわち、この硫黄化合物は求電子性を有するため貯蔵時のアニオン重合を抑制し、むしろ接着剤組成物の安定性を向上させる。同時に当該構造は、ゴムの加硫剤、加硫促進剤、あるいはこれらと類似の構造を有しているためゴム類に対し親和性が良く、併せて不対電子を有するヘテロ元素で構成されているため金属との親和性も高く、被着体表面のわずかな更に被着体表面に付着したわずかな塩等と相互作用することにより、重合開始剤となり得るアニオンを遊離させるものと考えられる。
【0039】
一方、本発明の接着剤組成物では、前記硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)に前記オニウム塩(c)を併用すると、接着剤組成物の貯蔵安定性に悪影響を及ぼすことなく、更に金属及び熱可塑性エラストマーに対する接着速度を向上させることができる。
その理由は明らかではないが、両成分共被着体表面に付着したわずかな塩等と相互作用することにより、重合開始剤となり得るアニオンを遊離させる量が増加するものと考えられる。
【0040】
本発明の接着剤組成物には、前硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)及びオニウム塩(c)以外の硬化促進剤として、従来の包接能を有する化合物(d)を更に配合することが好ましい。本発明における包接能を有する化合物(d)は、通常の硬化促進機能と共に、接着剤組成物の経時的な酸分の上昇を抑制する働きがあり、接着剤組成物の貯蔵安定性を向上させ、初期性能を維持することができるという効果も有する。
前記包接能を有する化合物(d)としては、ポリアルキレンオキサイド類、クラウンエーテル類、シラクラウンエーテル類、カリックスアレン類、シクロデキストリン類及びピロガロール系環状化合物類等が挙げられる。
【0041】
前記ポリアルキレンオキサイド類とは、ポリアルキレンオキサイド及びその誘導体であって、例えば、特公昭60−37836号公報、特公平1−43790号公報、特開昭63−128088号公報、特開平3−167279号公報、米国特許第4386193号明細書、米国特許第4424327号明細書等で開示されているものが挙げられる。具体的には、(1)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレンオキサイド、(2)ポリエチレングリコールモノアルキルエステル、ポリエチレングリコールジアルキルエステル、ポリプロピレングリコールジアルキルエステル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル等のポリアルキレンオキサイドの誘導体等が挙げられる。
【0042】
また、クラウンエーテル類としては、例えば、特公昭55−2238号公報、特開平3−167279号公報等で開示されているものが挙げられる。具体的には、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ベンゾ−12−クラウン−4、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、トリベンゾ−18−クラウン−6、asym−ジベンゾ−22−クラウン−6、ジベンゾ−14−クラウン−4、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、シクロヘキシル−12−クラウン−4、1,2−デカリル−15−クラウン−5、1,2−ナフト−15−クラウン−5、3,4,5−ナフチル−16−クラウン−5、1,2−メチルベンゾ−18−クラウン−6、1,2−tert−ブチル−18−クラウン−6、1,2−ビニルベンゾ−15−クラウン−5等が挙げられる。
【0043】
シラクラウンエーテル類としては、例えば、特開昭60−168775号公報等で開示されているものが挙げられる。具体的には、ジメチルシラ−11−クラウン−4、ジメチルシラ−14−クラウン−5、ジメチルシラ−17−クラウン−6等が挙げられる。
【0044】
また、カリックスアレン類としては、例えば、特開昭60−179482号公報、特開昭62−235379号公報、特開昭63−88152号公報等で開示されているものが挙げられる。具体的には、5,11,17,23,29,35−ヘキサ−tert−ブチル−37,38,39,40,41,42−ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42−ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42−ヘキサ−(2−オキソ−2−エトキシ)−エトキシカリックス〔6〕アレン、25,26,27,28−テトラ−(2−オキソ−2−エトキシ)−エトキシカリックス〔4〕アレン、4−tert−ブチルカリックス〔4〕アレン−O,O’,O’’,O’’’−四酢酸テトラエチル等が挙げられる。
【0045】
シクロデキストリン類としては、例えば、特表平5−505835号公報等で開示されているものが挙げられる。具体的には、α−、β−またはγ−シクロデキストリン等が挙げられる。
ピロガロール系環状化合物類としては、特開2000−191600号公報等で開示されている化合物が挙げられる。具体的には、3,4,5,10,11,12,17,18,19,24,25,26−ドデカエトキシカルボメトキシ−C−1、C−8、C−15、C−22−テトラメチル[14]−メタシクロファン等が挙げられる。
【0046】
包接能を有する化合物(d)は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリアルキレンオキサイド類、クラウンエーテル類及びカリックスアレン類からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が、接着剤組成物において金属及び熱可塑性エラストマーに対する優れた接着速度を発現し、また、接着剤組成物の貯蔵安定性を向上効果が大きいことから好ましい。
【0047】
本発明の接着剤組成物における包接能を有する化合物(d)の含有量は、2−シアノアクリル酸エステル(a)100質量部に対して、10〜30,000ppmであることが好ましく、50〜20,000ppmであることがより好ましく、100〜10,000ppmであることが更に好ましい。前記含有量が10〜30,000ppmの範囲内であれば、接着剤組成物の貯蔵安定性を損なうことなく、各種被着体に対する接着速度を向上させることができる。
【0048】
本発明の接着剤組成物には、前記各種硬化促進剤の他に、従来、2−シアノアクリル酸エステルを含有する接着剤組成物に配合して用いられている安定剤、可塑剤、増粘剤、粒子、着色剤、香料、溶剤または強度向上剤等を、目的に応じて、接着剤組成物の硬化性及び接着強度等を損なわない範囲で適量配合することができる。
【0049】
安定剤としては、(1)二酸化硫黄及びメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、三弗化ホウ素メタノール及び三弗化ホウ素ジエチルエーテル等の三弗化ホウ素錯体、HBF、並びにトリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤、(2)ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、カテコール及びピロガロール等のラジカル重合禁止剤等が挙げられる。これらの安定剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
また、可塑剤としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソトリデシル、フタル酸ジペンタデシル、テレフタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジイソノニル、トルイル酸デシル、ショウノウ酸ビス(2−エチルヘキシル)、2−エチルヘキシルシクロヘキシルカルボキシレート、フマル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、カプロン酸トリグリセライド、安息香酸2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、2−シアノアクリル酸エステルとの相溶性が良く、かつ可塑化効率が高いという点から、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、安息香酸2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエートが好ましい。これらの可塑剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとの共重合体、メタクリル酸メチルとその他のメタクリル酸エステルとの共重合体、アクリルゴム、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル−2−シアノアクリル酸エステル及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの増粘剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。なお、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0053】
本発明の接着剤組成物の評価は次のとおり行った。
(1)接着速度
JIS K 6861「α−シアノアクリレート系接着剤の試験方法」に準じて、23℃、60%RH環境下で接着速度を測定した。使用した試験片は次のとおりである。
・アルミニウム:日本テストパネル社製、アルミニウム試験片(材質:A1050P)
・鉄:日本テストパネル社製、鉄試験片(材質S10C)
・スチレン系熱可塑性エラストマー:リケンテクノス社製、商品名「アクティマー A E−2060S」
(2)粘度
E型粘度計を用い、25℃、100rpmの条件下にて測定した。
(3)貯蔵安定性
60℃環境下で2週間保管し、初期及び保管後の接着速度及び粘度を比較して評価した。保管は、接着剤組成物1.5gを2gポリエチレン容器に密封して行った。
【0054】
実施例1
2−シアノアクリル酸エチルに、二酸化硫黄を20ppm、ハイドロキノンを1,000ppm(2−シアノアクリル酸エチルを100質量部とする)配合し、これにフェニルイソチオシアナート(試薬)を10ppm配合して、室温(15℃〜30℃)で30分間撹拌、混合して接着剤組成物を製造した。得られた接着剤組成物を用いて、アルミニウム、鉄及び熱可塑性エラストマーに対する接着速度、粘度、並びに貯蔵安定性を評価した。結果は表1のとおりである。
【0055】
実施例2〜12
接着剤組成物に配合する硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)の種類と量を表1のように代えた以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物を製造して評価した。結果は表1のとおりである。
【0056】
比較例1〜3
硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)の代わりに包接能を有する化合物(d)のみを配合またはこれら硬化促進剤を配合しない以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物を製造して評価した。結果は表1のとおりである。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例13
2−シアノアクリル酸エチルに、二酸化硫黄を20ppm、ハイドロキノンを1,000ppm(2−シアノアクリル酸エチルを100質量部とする)配合し、これにフェニルイソチオシアナート(試薬)を10ppm、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート(試薬)を500ppm配合して、室温(15℃〜30℃)で30分間撹拌、混合して接着剤組成物を製造した。得られた接着剤組成物を用いて、アルミニウム、鉄及び熱可塑性エラストマーに対する接着速度、粘度、並びに貯蔵安定性を評価した。結果は表2のとおりである。
【0059】
実施例14〜20
接着剤組成物に配合する硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)並びに他の硬化促進剤(オニウム塩(c)または包接能を有する化合物(d))を表2のように代えた以外は、実施例13と同様にして接着剤組成物を製造して評価した。結果は表2のとおりである。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例21
2−シアノアクリル酸エチルに、二酸化硫黄を20ppm、ハイドロキノンを1,000ppm(2−シアノアクリル酸エチルを100質量部とする)配合し、これにフェニルイソチオシアナート(試薬)を10ppm、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート(試薬)を500ppm、15−クラウン−5 2,500ppmを配合して、室温(15℃〜30℃)で30分間撹拌、混合して接着剤組成物を製造した。得られた接着剤組成物を用いて、アルミニウム、鉄及び熱可塑性エラストマーに対する接着速度、粘度及び貯蔵安定性を評価した。結果は表3のとおりである。
【0062】
実施例22〜27
接着剤組成物に配合する硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)、オニウム塩(c)及び包接能を有する化合物(d)を表3のように代えた以外は、実施例21と同様にして接着剤組成物を製造して評価した。結果は表3のとおりである。
【0063】
【表3】
【0064】
表1の結果によれば、実施例1〜12の接着剤組成物は、従来の硬化促進剤を配合した接着剤組成物(比較例1、2)及び硬化促進剤を加えない接着剤組成物(比較例3)に比べ、特に熱可塑性エラストマーに対して優れた接着速度を発現する。また、60℃×2週間後の粘度変化も各比較例に比べて少なく、貯蔵安定性にも優れていることがわかる。
表2の結果によれば、実施例13〜20の接着剤組成物は、硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)のみを配合した接着剤組成物または従来の硬化促進剤を配合した接着剤組成物に比べ、鉄及び熱可塑性エラストマーに対して優れた接着速度を発現することがわかる(実施例13、14または16と実施例1、実施例15と実施例2、実施例19と実施例5、実施例19と比較例1、実施例20と比較例2)。
表3の結果によれば、実施例21〜27の接着剤組成物は、全体的に各種材料に対して優れた接着速度を筆減するが、特に、硫黄原子を含むヘテロアレン構造を有する化合物(b)のみを配合した接着剤組成物またはオニウム塩化合物(c)若しくは包接能を有する化合物(d)を配合した接着剤組成物に比べ、60℃×2週間後の接着速度も速くまた粘度変化も少なく、貯蔵安定性に優れていることがわかる(実施例21と実施例1または実施例13)。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、2−シアノアクリル酸エステルを含有し、所謂、瞬間接着剤として一般家庭用、医療分野等の他、各種産業界等の広範な製品、技術分野において利用することができる。特に、自動車部品、電気・電子部品、各種履物の接着に有用である。表1〜3の結果によれば、特に熱可塑性エラストマーに対して優れた接着速度を発現し、また、貯蔵安定性にも優れているものである。