特許第6702471号(P6702471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702471
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/54 20180101AFI20200525BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20200525BHJP
【FI】
   F24F11/54
   F24F11/70
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-37287(P2019-37287)
(22)【出願日】2019年3月1日
(65)【公開番号】特開2019-152426(P2019-152426A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2019年3月1日
(31)【優先権主張番号】特願2018-36611(P2018-36611)
(32)【優先日】2018年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】堂前 浩
(72)【発明者】
【氏名】東山 伸
(72)【発明者】
【氏名】相阪 泰之
(72)【発明者】
【氏名】井浦 努
(72)【発明者】
【氏名】植田 裕樹
【審査官】 五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−036533(JP,A)
【文献】 特開2008−157496(JP,A)
【文献】 特開2009−010929(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/114421(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103807976(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00−11/89
H04B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ回路(13)を含む室外機(2)と、前記室外機(2)と通信可能に接続された室内機(3)とを備え、前記室外機(2)と前記室内機(3)とは、複数のキャリア周波数を含む通信信号によって通信する空気調和システムであって、
前記室外機(2)と前記室内機(3)との間の通信における信号調整機構(153)を備え、
前記信号調整機構(153)は、
ノイズの周波数における信号成分を調整するか否かを示すスイッチ情報を有し、
前記スイッチ情報が前記信号成分を調整することに設定されている場合、通信に使用するキャリア周波数のうち、予め設定されたノイズの周波数成分の情報を含まないトーンマップに基づいて、前記通信信号の周波数範囲において所定の周波数幅内の信号が抑制されるように前記通信信号を生成し、
前記スイッチ情報が前記信号成分を調整しないことに設定されている場合、通信に使用するキャリア周波数の全ての情報を含むトーンマップに基づいて、前記通信信号を生成する
空気調和システム。
【請求項2】
前記信号調整機構(153)は、前記室外機(2)と前記室内機(3)との少なくとも一方に設けられる、請求項1に記載の空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空調システムは、室外機と複数の室内機とを空調通信線で接続していた。室外機は、圧縮機と、圧縮機を駆動させるインバータ回路とを含む。複数の室内機のそれぞれには、その室内機を制御するための制御回路が設けられている。例えば、インバータ回路のノイズが室外機と室内機との間の通信信号に影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4336142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、室外機や室内機の制御性の向上のため、空調通信線における通信速度を高めることが好ましい。しかし、上述のように通信速度を高めるとノイズの影響が大きくなるため、空調通信線における通信速度を高めることとノイズの影響を低減することとを両立することが困難であった。
【0005】
本発明は、高速な通信に対するノイズの影響を低減可能とした空気調和システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点に係る空気調和システムは、インバータ回路(13)を含む室外機(2)と、前記室外機(2)と通信可能に接続された室内機(3)とを備える空気調和システムであって、前記室外機(2)と前記室内機(3)との間の通信における信号調整機構(22,23,42,43,153)を備える。なお、信号調整機構は、通信信号において、所望の周波数帯のレベルを調整する、又は通信に使用する周波数を調整するものである。
【0007】
第1の観点の空気調和システムによれば、通信信号の周波数成分においてインバータ回路に応じた周波数の信号成分のレベルを調整する、又は所定の周波数帯を使用しないように通信信号を調整することで、ノイズの影響を低減し、高速に通信可能となる。
【0008】
第2の観点に係る空気調和システムは、前記信号調整機構は、所定の周波数幅に含まれる信号レベルを調整する。
第2の観点の空気調和システムによれば、レベルを調整する周波数幅を設定により、高い周波数の信号成分で高速な通信が可能となる。
【0009】
第3の観点に係る空気調和システムは、前記信号調整機構は、所定の周波数幅を含まない通信信号を生成する。
第3の観点の空気調和システムによれば、混入するノイズに応じて所定の周波数幅を設定することで、ノイズが含まれる周波数帯を含まない通信信号により、ノイズの影響がなく高速な通信が可能となる。
【0010】
第4の観点に係る空気調和システムは、前記信号調整機構は、所定の周波数幅で有効となる。なお、信号調整機構の有効は、通信信号のレベルを調整することであり、信号調整機構の無効は通信信号のレベルを調整しないことである。
【0011】
第4の観点の空気調和システムによれば、調整する信号成分の周波数帯域を所定の周波数幅に制限することで、信号波形の歪み(変形)を抑制して、高速な通信が可能となる。
第5の観点に係る空気調和システムは、前記信号調整機構が有効となる周波数幅の中心周波数が可変可能である。
【0012】
第5の観点の空気調和システムによれば、通信経路の状態(室外機(2)の状態)に応じた信号調整が可能となる。
第6の観点に係る空気調和システムは、前記信号調整機構の有効と無効とを切り替える切替機構(153,160)を有する。
【0013】
第6の観点の空気調和システムによれば、設置状態(通信距離、ノイズレベル)に応じて信号調整機構の有効と無効とを切り替えることで、通信品質(信号波形)の低下を抑制できる。
【0014】
第7の観点に係る空気調和システムは、前記信号調整機構は、前記室外機(2)と前記室内機(3)との少なくとも一方に設けられる。
第8の観点に係る空気調和システムは、前記信号調整機構は、空調信号線(6)との間に接続されたノイズカットトランス(23,43)を備える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一実施形態の空気調和システムの概略図。
図2】第一実施形態の室外機及び室内機の概略ブロック図。
図3】室外機と室内機におけるノイズ混入の説明図。
図4】通信信号の波形図。
図5】ノイズを含む通信信号の波形図。
図6】高速通信における通信信号の周波数成分を示す説明図。
図7】通信信号とノイズの周波数成分を示す説明図。
図8】第二実施形態の空気調和システム(室外機及び室内機)の概略ブロック図。
図9】第二実施形態の通信回路のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る空調システムについて説明する。なお、本発明は、以下に記載する例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0017】
(第一実施形態)
以下、第一実施形態を説明する。
図1に示すように、空気調和システム1は、屋外に設置される室外機2と、屋内に設置される室内機3とを有している。図1には、5台の室内機3が示されている。この空気調和システム1は、例えば、オフィスビルやテナントビル等の建物に設置されるものである。室外機2は、冷媒配管5を介して各室内機3と接続されている。また、室外機2は、空調通信線6を介して各室内機3と接続されている。また、本実施形態の空気調和システム1は、空調通信線6を介して室外機2に接続されたシステム管理装置4を有している。システム管理装置4は、例えば、ビル等の建物を管理するユーザからの指令を受け付け、複数の室内機3を集中管理する。
【0018】
なお、空気調和システムの構成は適宜変更できる。例えば、室外機2に対して1台以上の室内機3を接続した構成とすることができる。また、複数の室外機2を有する構成とすることができる。また、複数の室外機2を有し、各室外機2に1台以上の室内機3を接続した構成とすることができる。また、システム管理装置4は省略されてもよい。
【0019】
空気調和システム1では、室外機2や室内機3の制御性の向上が求められる。例えば、設定温度の変更や室温等の温度変化に対して、室外機2と室内機3とをきめ細かく制御することが要求される。このため、空気調和システムは、室外機2と室内機3との間の通信において、高速通信を行うように構成される。
【0020】
図2に示すように、室外機2は、制御部11、圧縮機12、ファン14、圧縮機インバータ13、ファンインバータ15、熱交換器、各種の弁、等を有している。
圧縮機12は、例えばスクロール型式やスクリュー型式等の容積式圧縮機であり、冷媒を吸入して冷媒を圧縮した後、吐出する。圧縮機12は、駆動源としてのモータを含む。圧縮機インバータ13は、圧縮機12のモータを駆動するためのスイッチング素子を含む。スイッチング素子は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。制御部11は、所定のキャリア周波数(例えば、6kHz)にてスイッチング素子をオンオフ制御し、このスイッチング素子のオンオフにより、圧縮機12が駆動される。
【0021】
ファン14は、室外機2内に流入して室外熱交換器を通過した後に室外機2外に流出する空気流を生成する送風機である。ファン14は、駆動源としてのモータを含む。ファンインバータ15は、ファン14のモータを駆動するためのスイッチング素子を含む。スイッチング素子は、例えばIGBTである。制御部11は、ファンインバータ15のスイッチング素子をオンオフ制御し、このスイッチング素子のオンオフにより、ファン14が駆動される。
【0022】
制御部11は、例えば、マイクロコンピュータ等が実装された制御基板として構成される。この制御部11は、通信回路21、カップリングコンデンサ22、ノイズカットトランス23を有している。通信回路21は、室内機3の通信回路41と通信するものであり、カップリングコンデンサ22とノイズカットトランス23とを介して空調通信線6に接続されている。
【0023】
通信回路21は、運転データを送信するための通信信号を、カップリングコンデンサ22及びノイズカットトランス23を介して空調通信線6に出力する。通信回路21は、例えば直交周波数分割多重方式(OFDM方式)により通信のための信号を生成する。また、通信回路21は、空調通信線6からノイズカットトランス23及びカップリングコンデンサ22を介して入力する通信信号により運転データを受信する。「運転データ」は、例えば、リモコン等から送出された運転・停止の指令、温度センサによる温度情報、等を含む。制御部11は、このような運転データに基づいて、圧縮機12の運転周波数、各種の弁の開閉や切替、等を制御する。
【0024】
室内機3は、制御部31、ファン32、ファンインバータ33、熱交換器、膨張弁、等を有している。ファン32は、室内機3内に流入して熱交換器を通過した後に室内機3外に流出する空気流を生成する送風機である。ファン32は駆動源としてのモータを含む。ファンインバータ33は、ファン32のモータを駆動するためのスイッチング素子を含む。スイッチング素子は、例えばIGBTである。制御部31は、ファンインバータ33のスイッチング素子をオンオフ制御し、ファン32の回転数を調整し、生成する空気流の流量を制御する。
【0025】
制御部31は、例えば、マイクロコンピュータ等が実装された制御基板として構成される。この制御部31は、通信回路41、カップリングコンデンサ42、ノイズカットトランス43を有している。通信回路41は、室外機2の通信回路21と通信するものであり、カップリングコンデンサ42とノイズカットトランス43とを介して空調通信線6に接続されている。通信回路41は、運転データを送信するための通信信号を、カップリングコンデンサ42及びノイズカットトランス43を介して空調通信線6に出力する。また、通信回路41は、空調通信線6からノイズカットトランス43及びカップリングコンデンサ42を介して入力する通信信号により運転データを受信する。
【0026】
上述したように、室外機2の通信回路21は、カップリングコンデンサ22及びノイズカットトランス23を介して空調通信線6に接続されている。カップリングコンデンサ22及びノイズカットトランス23は、通信信号に重畳するノイズに応じて設定される。
【0027】
ここで、ノイズの発生及び重畳について説明する。
図3は、比較例の空気調和システム201を構成する室外機202及び室内機203を示す。なお、図2に示す実施形態の室外機2及び室内機3と同じ構成については同じ符号を付して説明する。
【0028】
この比較例の室外機202は、制御部211,圧縮機12、圧縮機インバータ13、ファン14、ファンインバータ15を有している。制御部211は、通信回路21、カップリングコンデンサ22を有し、通信回路21はカップリングコンデンサ22を介して空調通信線6に接続されている。
【0029】
室内機203は、制御部231、ファン32、ファンインバータ33を有している。制御部231は、通信回路41、カップリングコンデンサ42を有し、通信回路41はカップリングコンデンサ42を介して空調通信線6に接続されている。
【0030】
室外機202は、圧縮機12を駆動する圧縮機インバータ13を有している。圧縮機インバータ13は、圧縮機12を駆動するためのスイッチング素子を含み、スイッチング素子のオンオフにより、圧縮機12が駆動される。このスイッチング素子のオンオフに応じたノイズが発生する。図3には、スイッチング素子のオンオフが、破線の丸で囲んだオンオフ波形にて示されている。これらスイッチング素子のオンオフに基づくノイズ(コモンモードノイズ)Nxが、寄生容量251を介して空調通信線6に混入し、空調通信線6により伝達される通信信号に重畳する。
【0031】
図4は、通信信号Saの波形の一例を示し、図5はノイズNxが重畳した通信信号Saの波形の一例を示す。空気調和システムにおいて、データを符号化して送受信するベースバンド伝送を用いた場合、図5に示すように、圧縮機インバータ13のスイッチングノイズの影響によるリンギングが、通信信号SaにノイズNxとして重畳される。
【0032】
図3に示すように、室外機202にて発生したノイズNxは、空調通信線6を伝達される通信信号Sxに重畳する。通信回路21と空調通信線6との間に接続されたカップリングコンデンサ22は、高周波数成分を通す特性である。したがって、ノイズNxを含む通信信号Sxが室外機2の通信回路21に受信される。このように混入するノイズNxは、その周波数やレベルによって、通信信号Sxの波形を変化させ、通信異常を生じさせる要因となる。室内機203では、室外機202と同様に、ノイズを含む通信信号がカップリングコンデンサ42を介して通信回路41に受信され、その受信信号に含まれるノイズによって、通信異常を生じさせる要因となる。
【0033】
図7に示すように、本実施形態の空気調和システムの室外機2と室内機3との間で送受信される通信信号は、通信信号S1は、所定の変調方式により、周波数f1から周波数f2までの周波数成分を含む。変調方式としては、例えば直交周波数分割多重方式(OFDM方式)を用いる。周波数f1は、例えば2MHzであり、周波数f2は例えば30MHzである。なお、周波数f2は30MHz以上であってもよい。そして、圧縮機12の駆動により発生するノイズNxは、周波数f1より高い周波数f3から周波数f4までの範囲の周波数成分を含む。本願発明者等は、空気調和システム1において、圧縮機12を所定のキャリア周波数(例えば6kHz)で駆動した場合、その圧縮機12により発生するノイズNxは、5MHz付近の周波数成分を含むことを見いだした。また、本願発明者等は、このように発生するノイズが、所定の周波数幅(例えば、3MHz)の周波数成分を含み、空気調和システム1の状態(設置状態、運転状態)に応じて、所定の周波数幅の中心周波数が変化することを見いだした。ノイズの周波数成分は、設置の一例では、周波数f3が3MHz、周波数f4が6MHzであり、他の設置例では周波数f3が5MHz、周波数f4が8MHzであった。つまり、ノイズの周波数成分は、3MHzの周波数幅で構成に応じて変化し、その下限値は例えば3MHzであり、上限値は10MHzである。なお、ノイズが含まれる周波数成分の幅、つまりノイズの周波数帯は、機器によって異なる場合がある。本願発明者等は、周波数帯が1〜5MHzとなることを見いだした。また、本願発明者等は、ノイズの発生源は、上述の圧縮機インバータ13に限られず、例えばファンインバータ15でも通信に影響するノイズが発生する場合があることを見いだした。そして、ファンインバータ15の駆動により生じるノイズの周波数帯は、15〜20MHzとなることを見いだした。
【0034】
(作用)
本実施形態の空気調和システム1は、室外機2と、室外機2に冷媒配管5と空調通信線6を介して接続された室内機3とを有している。
【0035】
図2に示すように、室外機2の制御部11は、通信回路21と空調通信線6との間にカップリングコンデンサ22とノイズカットトランス23とを有している。カップリングコンデンサ22は、通信信号に含まれる周波数成分のうち、高い周波数成分を通過させる。ノイズカットトランス23は、低い周波数成分を通過させる。
【0036】
ノイズカットトランス23の周波数特性は、コイルの巻き方やコアの材質によって調整できる。これにより、通信信号の周波数成分のうち、ノイズに対応する範囲の周波数成分を調整できる。例えば、上述の圧縮機インバータ13によって生じるノイズに対応する場合、この調整する周波数成分の幅は、例えば、1MHz〜5MHzであることが好ましい。なお、調整する周波数成分は、所定範囲(例えば、3〜10MHz)で、その所定範囲の周波数が室外機2にて発生するノイズに応じて設定されることが好ましく、その場合の下限値は例えば3MHzとすることが好ましく、また上限値は例えば10MHzとすることが好ましい。このように、カップリングコンデンサ22とノイズカットトランス23とを用い、空調通信線6から受信する通信信号S1に重畳するノイズNxに対応する周波数帯(f3〜f4)のレベルを調整することで、通信異常の発生を抑制できる。
【0037】
図6は、カップリングコンデンサ22とノイズカットトランス23を通過した通信信号S1の周波数成分を示す。通信信号S1は、周波数f1から周波数f3までの周波数成分と、周波数f4から周波数f2までの周波数成分を含み、図7に示す周波数f3から周波数f4までの周波数成分が調整されている。つまり、カップリングコンデンサ22とノイズカットトランス23は、通信信号S1の所定の周波数成分を調整する信号調整機構を構成する。この信号調整機構によって、通信信号S1における所定周波数成分の信号レベルを調整することにより、ノイズNxの混入による通信異常の発生を抑制できる。
【0038】
図2に示すように、室内機3の制御部31は、通信回路41と空調通信線6との間にカップリングコンデンサ42とノイズカットトランス43とを有している。カップリングコンデンサ42は、通信信号に含まれる周波数成分のうち、高い周波数成分を通過させる。ノイズカットトランス43は、低い周波数成分を通過させる。従って、室外機2の場合と同様に、室内機3において、カップリングコンデンサ42とノイズカットトランス43の周波数特性を調整することにより、室外機2にて発生したノイズに対応する周波数成分のレベルを抑圧できる。カップリングコンデンサ42とノイズカットトランス43は、通信信号S1の所定の周波数成分を調整する信号調整機構を構成する。このため、室内機3において、通信異常の発生を抑制できる。
【0039】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1−1)室外機2の制御部11は、通信回路21と空調通信線6との間にカップリングコンデンサ22とノイズカットトランス23とを有している。カップリングコンデンサ22とノイズカットトランス23は、通信信号S1の所定の周波数成分を調整する信号調整機構を構成する。このように、ノイズカットトランス23を用いて所定の周波数帯のレベルを調整することで、その周波数帯において空調通信線6から受信する通信信号S1に重畳するノイズNxの影響を受け難くなり、通信異常の発生を抑制できる。
【0040】
(1−2)ノイズNxの周波数成分に応じて、調整する周波数成分の範囲が狭いほど、通信信号S1は元のパルス波形に近い波形にて通信回路21に受信される。このため、室外機2において、品質のよい通信信号S1を得ることができ、通信異常の発生を抑制できる。
【0041】
(1−3)室内機3において、カップリングコンデンサ42とノイズカットトランス43の周波数特性を調整することにより、室外機2にて発生したノイズに対応する周波数成分を調整できる。カップリングコンデンサ42とノイズカットトランス43は、通信信号S1の所定の周波数成分を調整する信号調整機構を構成する。このため、室内機3において、通信異常の発生を抑制できる。
【0042】
(第二実施形態)
以下、第二実施形態を説明する。
なお、本実施形態において、上述の第一実施形態と同じ構成部材については同じ符号を付し、その説明の一部又は全てを省略する。
【0043】
図8に示すように、空気調和システム101は、室外機102と室内機103とを有し、室外機102と室内機103は空調通信線6を介して互いに通信可能に接続されている。なお、図8では、1台の室外機102と1台の室内機103とが示されているが、上述の第一実施形態と同様に、複数台の室内機103が接続されてもよい。また、複数台の室外機102と複数台の室内機103とが接続されてもよい。また、図1に示すシステム管理装置4が接続されてもよい。
【0044】
室外機102は、制御部111、圧縮機12、ファン14、圧縮機インバータ13、ファンインバータ15、熱交換器、各種の弁、等を有している。
制御部111は、例えば、マイクロコンピュータ等が実装された制御基板として構成される。制御部111は、通信回路121、カップリングコンデンサ22を有している。通信回路121は、室内機103の通信回路141と通信するものであり、カップリングコンデンサ22を介して空調通信線6に接続されている。
【0045】
室内機103は、制御部131、ファン32、ファンインバータ33、熱交換器、膨張弁、等を有している。
制御部131は、例えば、マイクロコンピュータ等が実装された制御基板として構成される。この制御部131は、通信回路141、カップリングコンデンサ42を有している。通信回路141は、室外機102の通信回路121と通信するものであり、カップリングコンデンサ42を介して空調通信線6に接続されている。
【0046】
図9は、本実施形態の室外機102の通信回路121のブロック図を示す。なお、室内機103の通信回路141は、室外機102の通信回路121と同様に構成される。
通信回路121は、通信制御部151、誤り訂正符号化部152、トーンマップ生成部153、逆ウェーブレット変換部154、送信部155、受信部156、ウェーブレット変換部157、伝送路推定イコライザ158、誤り訂正部159を有している。通信制御部151は、例えばMAC(Media Access Control)部である。送信部155は、例えばデジタルアナログ変換器(DAC)と増幅器(AMP)を含み、受信部156は、例えば増幅器(PGA)とアナログデジタル変換器(ADC)を含む。
【0047】
運転データは、通信制御部151、誤り訂正符号化部152、トーンマップ生成部153、逆ウェーブレット変換部154、送信部155によって通信信号に変換されて図8に示す空調通信線6に出力される。空調通信線6により伝達された通信信号は、受信部156、ウェーブレット変換部157、伝送路推定イコライザ158、誤り訂正部159、通信制御部151を介して運転データとして受信される。
【0048】
トーンマップ生成部153は、メモリ160に格納された生成情報に基づいて、所定のキャリア周波数(キャリア番号)のトーンマップを生成する。キャリア周波数は、例えば、2MHz〜30MHzである。メモリ160には、生成情報として、室外機102にて発生するノイズの周波数と、生成の要否を示すスイッチ情報が格納される。ノイズの周波数は、上記第一実施形態で説明したノイズに含まれる周波数成分の周波数f3,f4である。スイッチ情報は、ノイズの周波数における信号成分を調整するか否かを示す情報(フラグ)である。フラグが設定されている(例えば「1」)の場合、トーンマップ生成部153は、通信に使用するキャリア周波数のうち、設定されたノイズの周波数成分(周波数f3から周波数f4)の情報を含まないトーンマップを生成する。一方、フラグが設定されていない(例えば「0」)の場合、トーンマップ生成部153は、キャリア周波数の全ての情報を含むトーンマップを生成する。
【0049】
ノイズの周波数成分を含まないトーンマップを用いることで、その周波数成分を含まない送信信号を生成することができる。このため、ノイズが混入しても、送信信号に影響しないため、通信異常の発生を抑制できる。
【0050】
本実施形態では、空気調和システム101の状態に応じて、フラグの設定・非設定を行うことで、ノイズの周波数成分を含むトーンマップと、ノイズの周波数成分を含まないトーンマップとを切り替えることができる。室外機102の設置状態や空調通信線6の敷設状態により、ノイズの発生や、ノイズの混入が異なる。高速な通信において、全てのキャリア周波数を使用することが好ましい。従って、ノイズの状態に応じてフラグを非設定とすることで、品質のよい送信信号を生成して高速通信を行うことができる。また、フラグを設定することで、ノイズの影響を低減した送信信号を生成して高速通信を行うことができる。
【0051】
第一実施形態で説明したように、室外機102にて発生したノイズNxは、空調通信線6を介して室内機103に伝達される通信信号に重畳する。室内機103では、室外機102と同様に、ノイズを含む通信信号が通信回路141に受信され、その受信信号に含まれるノイズによって、通信異常が生じる場合がある。
【0052】
例えば、オフィスビル等の建物に設置される空気調和システム101は、室外機102と室内機103との冷媒配管5が長く、それに伴い空調通信線6も長くなる。室外機102と室内機103との間における空調通信線6の長さが長くなるほど、通信信号に含まれる高周波成分が減少し、通信信号のS/N比が低下する。
【0053】
空調通信線6に接続された複数の室内機103において、室外機102から各室内機103までの空調通信線6の長さや各室内機103の設置状態により、各室内機103に対するノイズの影響が異なる場合がある。このため、各室内機103において、フラグにより、通信に使用する周波数成分の調整のオン・オフを容易に設定できる。
【0054】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(2−1)空気調和システム101の状態に応じて、フラグの設定・非設定を行うことで、ノイズの周波数成分を含むトーンマップと、ノイズの周波数成分を含まないトーンマップとを切り替えることができる。室外機102の設置状態や空調通信線6の敷設状態により、ノイズの発生や、ノイズの混入が異なる。高速な通信において、全てのキャリア周波数を使用することが好ましい。従って、ノイズの状態に応じてフラグを非設定とすることで、品質のよい送信信号を生成して高速通信を行うことができる。また、フラグを設定することで、ノイズの影響を低減した送信信号を生成して高速通信を行うことができる。
【0055】
(2−2)空調通信線6に接続された複数の室内機103において、室外機102から各室内機103までの空調通信線6の長さや各室内機103の設置状態により、各室内機103に対するノイズの影響が異なる場合がある。このため、各室内機103において、フラグにより、通信に使用する周波数成分の調整のオン・オフを容易に設定できる。
【0056】
(その他の実施形態)
尚、上記各実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・第二実施形態において、通信に使用する周波数成分を調整できればよく、例えばOFDM方式等の変調方式を用いて通信信号を生成してもよい。
【0057】
・第二実施形態において、メモリ160に周波数f3を格納し、その周波数f3に所定値(例えば3MHz)を加算した値を算出し、周波数f3から算出した値までを、トーンマップ生成部153にて情報を生成しないようにしてもよい。逆に、メモリ160に周波数f4を格納し、その周波数f4から所定値(例えば3MHz)を減算した値を算出し、算出した値から周波数f4までを、トーンマップ生成部153にて情報を生成しないようにしてもよい。
【0058】
また、メモリ160に、調整する周波数帯の中心周波数を格納し、その中心周波数から所定の周波数幅にて信号レベルを調整するようにしてもよい。また、中心周波数と調整する周波数幅とをメモリ160に格納して信号レベルを調整するようにしてもよい。
【0059】
・第二実施形態において、ノイズを受信するように構成し、そのノイズのレベルとしきい値とを比較し、ノイズのレベルに応じてフラグの設定・非設定を行うようにしてもよい。
【0060】
・第一実施形態において、例えば、ノイズカットトランス23,43をバイパスする経路と、その経路中のスイッチとを備え、スイッチを設置時にオンオフすることによって通信に使用する周波数成分の調整の有効と無効とを切り替えるようにしてもよい。また、稼働中に指令信号やノイズのレベル判定の結果に基づいてスイッチをオンオフするようにしてもよい。
【0061】
・上述した空気調和システム1,101では、室外機2,102と室内機3,103との間で空調通信線6を介して通信を行うため、室外機と室内機の少なくとも一方でノイズに対応する周波数帯の信号レベルの調整を行うようにしてもよい。
【0062】
・以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の主旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0063】
2,102 室外機
3,103 室内機
13 圧縮機インバータ
11,31,111,131 制御部
21,41,121,141 通信回路
22,42 カップリングコンデンサ
23,43…ノイズカットトランス(信号調整機構)
153 トーンマップ生成部(信号調整機構、切替機構)
160 メモリ(切替機構)
S1、Sx 通信信号
Nx ノイズ
図1
図2
図3
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図9