特許第6702477号(P6702477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ トーヨーケム株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702477
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】粘着剤および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/08 20060101AFI20200525BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20200525BHJP
   C09J 193/04 20060101ALI20200525BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20200525BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200525BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20200525BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20200525BHJP
【FI】
   C09J133/08
   C09J133/02
   C09J193/04
   C09J11/08
   C09J11/06
   C09J7/20
   C09J7/38
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-61271(P2019-61271)
(22)【出願日】2019年3月27日
(62)【分割の表示】特願2018-91960(P2018-91960)の分割
【原出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-94513(P2019-94513A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2019年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悠太郎
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−163746(JP,A)
【文献】 特開2000−169800(JP,A)
【文献】 特開2007−100041(JP,A)
【文献】 特開2011−105829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系共重合体と、ロジン系樹脂と、硬化剤とを含み、
前記アクリル系共重合体が、アクリル酸ブチル60〜98.5重量%と、カルボキシル基含有モノマー1〜9.9重量%と、モノマー(X)0.5〜20重量%とを含むモノマー混合物を溶液重合してなり、
前記モノマー(X)が、ホモポリマーのガラス転移温度が15℃以上、かつ25℃の水100mlに対する溶解度が1g未満であり、
前記ロジン系樹脂は、未変性ロジンを3官能以下のアルコールでエステル化してなるロジンエステル、または前記ロジンエステルを変性してなる変性ロジンエステルであり、
前記硬化剤は、エポキシ化合物、金属キレート、およびアジリジン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、粘着剤。
【請求項2】
前記硬化剤の含有量は、アクリル系共重合体100重量部に対して、0.01〜6重量部である、請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
前記ロジン系樹脂が軟化点40〜110℃のロジンエステルである、請求項1または2に記載の粘着剤。
【請求項4】
前記ロジン系樹脂の含有量は、アクリル系共重合体100重量部に対して、20〜60重量部である、請求項1〜3いずれか1項に記載の粘着剤。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の粘着剤から形成してなる粘着剤層。
【請求項6】
ゲル分率が25〜70重量%である、請求項5記載の粘着剤層。
【請求項7】
基材、および請求項1〜いずれか1項に記載の粘着剤から形成してなる粘着剤層を備えた、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック等への貼り付けに好適に使用できる粘着剤および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤から形成した粘着剤層を有する粘着シートは、取り扱いが容易であることからラベルや接着用途として幅広い分野で使用されている。例えば、粘着シートをプラスチック等の容器のラベルとして使用することは一般的であるが、当該プラスチック容器がポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン樹脂である場合、ポリオレフィン樹脂は、極性が低いため粘着シートを貼り付けたときの粘着力が低くラベルが剥がれやすいという問題があった。また、化粧品容器など意匠性が高いプラスチック容器は、ラベルとして使用する粘着シートにも透明性が求められる場合が多い。さらには、シャンプー容器など浴室などで使用される日用品のプラスチック容器に用いられる粘着シートには、高温高湿環境下に曝された場合でも粘着シートの透明性が維持できる耐白化性が求められていた。
【0003】
そこで、特許文献1には、炭素数8個以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの占める割合が30重量%以上のアクリル系共重合体、及び粘着付与樹脂としてロジンまたはその誘導体と水添石油樹脂とを含む粘着剤が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、アクリル系共重合体100質量部と、重量平均分子量が1000以上30000未満のアクリル系共重合体1〜70質量部と、水素添加型粘着付与樹脂1〜50質量部とを含む粘着剤が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、65〜94.5重量%のアクリル酸エステルと、0.5〜5重量%の極性架橋性モノマーと、5〜30重量%の非極性モノマーの反応生成物とを含むコポリマー100部に対して、30〜70部の水素添加炭化水素粘着付与剤と、0.01〜3部の架橋剤とを含む粘着剤が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、炭素数が2〜14のアルキル基を有するアクリル系単量体20〜80重量%および芳香族基を有する単量体80〜20重量%を単量体単位として含有するアクリル系共重合体100重量部に対し、芳香族環またはその水添物を有してなり、かつ屈折率1.53〜1.75のタッキファイヤーを20〜150重量部を含む粘着剤が開示されている。
【0007】
また、特許文献5には、アクリル酸ブチル30〜70重量%と、アクリル酸2−エチルヘキシル10〜50重量%と、分子内にビシクロ環構造を有するラジカル重合性モノマー成分5〜30重量%とを含有するアクリル系共重合体100重量部と、粘着付与剤3〜60重量部とを含む粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−207151号公報
【特許文献2】特開2012−67279号公報
【特許文献3】特開2013−514445号公報
【特許文献4】特開2006−342258号公報
【特許文献5】特開2011−168727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の粘着剤は、アクリル系重合体との相溶性が悪い水添石油樹脂を含むので粘着剤の透明性が低い問題があった。
また、特許文献2の紫外線硬化型粘着剤は、粘着剤層と基材の密着性が低く、また、プラスチック容器を廃棄する際に、容器側に粘着剤層が残留しやすいため分別処理が難しく環境適性が低かった、また、硬化剤を使用していないため、粘着力等の物性調整が難しいという問題があった。
特許文献3の粘着剤は、水素添加炭化水素粘着付与剤を多量に配合しているため、アクリル系重合体との相溶性が悪く、透明性が低いという問題があった。
特許文献4の粘着剤は、透明性は良好であったものの、ポリオレフィンに対する粘着力が低いという問題があった。
特許文献5の粘着剤は、SUS等の極性が高い部材に対する粘着力は高いものの、極性が低いポリオレフィンに対する粘着力、および耐白化性が低い問題があった。
【0010】
本発明は、透明性、およびポリオレフィン樹脂に対する粘着力が良好であり、耐白化性が優れた粘着シートを形成できる粘着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の粘着剤は、アクリル系共重合体と、ロジン系樹脂と、硬化剤とを含み、前記アクリル系共重合体が、アクリル酸ブチル60〜98.5重量%と、カルボキシル基含有モノマー1〜9.9重量%と、モノマー(X)0.5〜20重量%とを含むモノマー混合物を溶液重合してなり、前記モノマー(X)が、ホモポリマーのガラス転移温度が15℃以上、かつ25℃の水100mlに対する溶解度が1g未満である。
【発明の効果】
【0012】
上記の本発明によれば、主モノマーのアクリル酸ブチルと、ガラス転移温度が高く水に溶解し難いモノマー(X)とを溶液重合したアクリル系共重合体、およびロジン系樹脂を含む粘着剤を塗工して形成した粘着剤層を備えた粘着シートは、透明性が高く、ポリオレフィンに対する粘着力が良好であることに加え、耐白化性が優れる効果が得られた。
【0013】
本発明により、本発明は、透明性、およびポリオレフィン樹脂に対する粘着力が良好であり、耐白化性が優れた粘着シートを形成できる粘着剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明について詳細に説明する前に用語を定義する。まず、シート、フィルムおよびテープは同義語である。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸およびメタクリル酸を含む。(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートを含む。モノマーはエチレン性不飽和二重結合含有単量体である。被着体は、粘着シートを貼り付ける相手方をいう。
【0015】
本発明の粘着剤は、アクリル系共重合体と、ロジン系樹脂と、硬化剤とを含む。前記アクリル系共重合体は、アクリル酸ブチル60〜98.5重量%と、カルボキシル基含有モノマー1〜9.9重量%と、モノマー(X)0.5〜20重量%とを含むモノマー混合物を溶液重合して得る。そして前記モノマー(X)は、ホモポリマーのガラス転移温度が15℃以上、かつ25℃の水100mlに対する溶解度が1g未満である性質を有する。
本発明の粘着剤は、粘着シートに加工して使用することが好ましい。
【0016】
一般に粘着剤の対ポリオレフィン粘着力を向上させるには、ロジン系樹脂を多量に配合することが知られている。しかし、ロジン系樹脂を多量に配合すると粘着剤が白濁してしまうので、透明フィルム基材の粘着シートには使用し難い問題があった。本発明では、モ
ノマー(X)を使用しモノマー混合物を溶液重合する。前記モノマー(X)は共重合性が低いので、モノマー(X)ユニットを多く含んだ共重合体が存在するため、ロジン系樹脂とアクリル系共重合体の相溶性を向上させていると推測している。そのため、本発明では、対ポリオレフィン粘着力と透明性を両立できた。
【0017】
本発明でアクリル系重合体は、アクリル酸ブチル60〜98.5重量%と、カルボキシル基含有モノマー1〜9.9重量%と、ホモポリマーのガラス転移温度が15℃以上、かつ25℃の水100mlに対する溶解度が1g未満であるモノマー(X)0.5〜20重量%とを必須モノマーとし、その他のモノマーを任意モノマーとしたモノマー混合物を溶液重合した共重合体である。
【0018】
アクリル酸ブチルは、モノマー混合物の主モノマーでありモノマー混合物100重量%中に60〜98.5重量%を使用することが必要であり、65〜90重量%がより好ましい。アクリル酸ブチルを主モノマーとしたことで粘着力と凝集力の両立が容易になる。
【0019】
カルボキシル基含有モノマーは、硬化剤との架橋反応の架橋点として機能し、モノマー混合物100重量%中に1〜9.9重量%を使用することが必要であり、1〜9重量%がより好ましく、2〜8重量%がさらに好ましい。カルボキシル基含有モノマーを1〜9.9重量%使用することで、所望の架橋密度が得やすく、さらにアクリル系共重合体とロジン系樹脂との相溶性が確保できる。
【0020】
カルボキシル基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、p−カルボキシベンジルアクリル酸エステル、エチレンオキサイド変性(エチレンオキサイド付加モル数:(2〜18)フタル酸アクリル酸エステル、コハク酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、アクリル酸β−カルボキシエチル、イタコン酸等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0021】
モノマー(X)は、ホモポリマーのガラス転移温度(以下、Tgともいう)が15℃以上、かつ25℃の水100mlに対する溶解度が1g未満の性質を有する。本発明で25℃の水100mlに対して1g未満が溶解する性質とは、25℃の環境下で水100mLにモノマーを混合し1時間攪拌した後に、水とモノマーが分離せずに均一な状態を保持できる最大量が1g未満であり、モノマーが水に溶解し難い指標を意味する。モノマーが極性の高い水に溶解しないことは、モノマーの極性が低いことを意味する。一般的にモノマーの極性を示す指標として、溶解度パラメーター(以下、SP値ともいう)を用いる場合が多いが、モノマーの分子骨格から算出されるSP値よりも、モノマーの水に対する溶解度を指標とした場合の方が、本発明の課題解決に寄与するモノマーを選択することができる。
また、モノマー(X)は、アクリル系共重合体のTgを高めて被着体との密着性を向上させながら、アクリル系共重合体とロジン系樹脂との相溶性を確保する機能を有する。また、モノマー(X)の性質を換言すると、主としてメタクリロイル基または嵩高い構造を有するともいえる。モノマー(X)は、モノマー混合物中0.5〜20重量%が必要であり、2〜18重量%がより好ましい。0.5〜20重量%の範囲で使用することで密着性がより向上する。
また、モノマー(X)のホモポリマーのTgは15℃以上がひつようである。Tgが15℃以上になることで密着性がより向上する。
なお、モノマー(X)のTgの上限値は、本発明の課題を解決できれば良いので特に限定しないが、200℃程度である。
【0022】
モノマー(X)は、例えば、メタクリル酸エチル(Tg:65℃)、メタクリル酸プロピル(Tg:35℃)、メタクリル酸イソプロピル(Tg:81℃)、メタクリル酸ブチ
ル(Tg:20℃)、メタクリル酸イソブチル(Tg:53℃)、アクリル酸t−ブチル(Tg:73℃)、およびメタクリル酸t−ブチル(Tg:118℃)等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
メタクリル酸フェノキシエチル(Tg:54℃)、メタクリル酸ベンジル(Tg:54℃)、アクリル酸シクロヘキシル(Tg:19℃)、メタクリル酸シクロヘキシル(Tg:83℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg:97℃)、およびメタクリル酸イソボルニル(Tg:180℃)等の芳香環または脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル;
スチレン(Tg:100℃)、およびα−メチルスチレン(Tg:168℃)などのビニルモノマー等が挙げられる。なお、これらモノマーのTgは、ホモポリマーのTgである。
【0023】
本発明でその他のモノマーは、アクリル酸ブチル、カルボキシル基含有モノマー、およびモノマー(X)以外のモノマーである。
その他のモノマーは、粘着剤の透明性や粘着力を損なわないモノマーであれば良い。具体的には、例えば水酸基含有モノマー、アミド結合含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、およびアミノ基含有モノマー等の反応性官能基を有するモノマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、芳香環含有モノマー、アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマーおよびその他ビニルモノマー等が挙げられる。
【0024】
水酸基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステルなどのグリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
これらの中でも、ホモポリマーのガラス転移温度が15℃以上であるメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(Tg:71℃)、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル(Tg:26℃)、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリル酸エステル(Tg:18℃)、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド(Tg:98℃)等は、ポリオレフィンに対する粘着力がより向上する場合があるため好ましい。
【0025】
水酸基含有モノマーは、モノマー混合物100重量%中、1〜20重量%を含むことが好ましく、水酸基含有モノマーとモノマー(X)との合計量が20重量%以下になるように含むことがより好ましい。水酸基含有モノマーを適量使用することで粘着力と透明性をより高度に両立できる。
【0026】
アミド結合含有モノマーは、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系化合物;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、およびアクリロイルモルホリン等の複素環含有化合物等が挙げられる。
【0027】
エポキシ基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、および(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル
等が挙げられる。
【0028】
アミノ基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、および(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステル等が挙げられる。
【0029】
アミド結合含有モノマー、エポキシ基含有モノマーおよびアミノ基含有モノマーは、モノマー混合物100重量%中、それぞれ0.1〜1重量部を含むことが好ましい。
【0030】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、例えば(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、および(メタ)アクリル酸イソオクタデシル等が挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、モノマー混合物100重量%中、0.1〜20重量部を含むことが好ましい。
【0032】
芳香環含有モノマーは、例えばアクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、および(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド変性ノニルフェノール等が挙げられる。
【0033】
芳香環含有モノマーは、モノマー混合物100重量%中、0.1〜10重量部を含むことが好ましい。
【0034】
アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマーは、例えばアクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、およびフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0035】
アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマーは、モノマー混合物100重量%中、0.1〜10重量部を含むことが好ましい。
【0036】
その他ビニルモノマーは、酢酸ビニル、およびアクリロニトリルなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0037】
その他ビニルモノマーは、モノマー混合物100重量%中、0.1〜10重量部を含むことが好ましい。
【0038】
アクリル系共重合体は、モノマー混合物に重合開始剤を加え、溶液重合することで得る。前記溶液重合に使用する溶剤は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、およびイソプロパノール等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
溶剤は単独また2種類以上を併用できる。
【0039】
前記溶液重合は、モノマー混合物100重量部に対して重合開始剤を0.001〜1重量部程度加えて重合を行うことが好ましい。通常、重合は、窒素気流下で、50℃〜90℃程度の温度で6時間〜20時間行うことができる。また、重合の際、連鎖移動剤を使用して共重合体の重量平均分子量を適宜調整することができる。
【0040】
本発明においてアクリル系共重合体の重量平均分子量(以下、Mwという)は、30万〜180万が好ましく、40万〜150万がより好ましく、50万〜130万がさらに好ましい。Mwを30万〜180万の範囲にすることで、粘着物性と塗工性の両立が容易になる。なお、本発明でMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0041】
前記連鎖移動剤は、例えばn−ドデシルメルカプタン、メルカプトイソブチルアルコール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、グリシジルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、四塩化炭素、クロロホルム、およびハイドロキノン等が挙げられる。
連鎖移動剤は、モノマー混合物100重量部に対して0.01〜1重量部程度を使用できる。
【0042】
前記重合開始剤は、アゾ系化合物および有機過酸化物が一般的である。
【0043】
アゾ系化合物は、例えば2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル
)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチ
ルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、および2,2'−アゾビス(2−(2−
イミダゾリン−2−イル)プロパン)等が挙げられる。
【0044】
有機過酸化物は、例えば過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
重合開始剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0045】
本発明において硬化剤は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、金属キレート、およびアミン化合物からなる群より選択される1種以上が好ましく、エポキシ化合物、金属キレート、およびアジリジン化合物がより好ましい。
【0046】
エポキシ化合物は、例えばビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、およびN,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0047】
アジリジン化合物は、例えばN,N’−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジ
リジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、およびトリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン等が挙げられる。
【0048】
金属キレートは、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物等が挙げられる。
【0049】
イソシアネート化合物は、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ならびにそのビュレット体、ならびにそのイソシアヌレート体、ならびに前記ジイソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、およびポリイソプレンポリオール等のうちのいずれかのポリオールとのアダクト体などの分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物;
トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネート、ならびにヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体等の分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物;等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が、粘着物性を容易に調整できるため好ましい。なお、イソシアネート基の個数は平均個数である。
【0050】
アミン化合物は、例えばヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラミン、イソホロンジアミン、アミノ樹脂、およびメチレン樹脂等が挙げられる。
硬化剤は単独または2種以上を併用できる。
【0051】
硬化剤は、アクリル系共重合体100重量部に対して、0.01〜6重量部を含むことが好ましい。0.01〜6重量部を含むと粘着剤層の凝集力と粘着力のバランスを取ることが容易になる。
【0052】
本発明の粘着剤は、さらにロジン系樹脂を含むことが必要である。粘着剤がロジン系樹脂を含むとポリオレフィンに対する粘着力がより向上する。
【0053】
ロジン系樹脂は、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンの未変性ロジンをアルコールなどでエステル化したロジンエステルや、未変性ロジンを変性した不均化ロジン、重合ロジン、水添ロジンなどの変性ロジン、これら変性ロジンをさらにアルコールなどでエステル化した不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル、水添ロジンエステルなどの変性ロジンエステル、未変性ロジンにフェノールを付加したロジンフェノール等が好ましい
。これらの中でも粘着力および透明性がより向上するためロジンエステル、および変性ロジンエステルが好ましい。なお、ロジンエステルおよび変性ロジンエステルには、エステル化に用いたアルコールなどの水酸基の一部が未反応で残存している場合もある。エステル化に用いるアルコールは、メタノールなどの単官能アルコール、エチレングリコールなどの2官能アルコール、グリセリンなどの3官能アルコール、およびペンタエリスリトールなどの4官能アルコールが挙げられるが、アクリル系共重合体との相溶性を考慮すると3官能以下のアルコールが好ましい。
ロジン系樹脂は、単独または2種以上を併用できる。
【0054】
ロジン系樹脂の軟化点は、40〜110℃が好ましい。軟化点を40〜110℃にすると粘着力および透明性を両立することが容易となる。
【0055】
ロジン系樹脂は、アクリル系共重合体100重量部に対して、10〜60重量部配合することが好ましく、20〜50重量部がより好ましい。
【0056】
本発明の粘着剤は、課題が解決できる範囲であれば他の粘着付与樹脂を含んでも良い。例えば、テルペン樹脂、脂環族炭化水素樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(油性フェノール樹脂)等が好ましい。他の粘着付与樹脂は、単独または2種以上を併用できる。
【0057】
前記他の粘着付与樹脂は、アクリル系共重合体100重量部に対して、15重量部以下を配合することが好ましく、特に脂環族炭化水素樹脂、および脂肪族石油樹脂は、それぞれ5重量部以下配合することが好ましい。
【0058】
本発明の粘着剤は、本発明の課題解決ができる範囲で、任意成分として各種樹脂、硬化触媒、シランカップリング剤、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤および帯電防止剤等を配合しても良い。
【0059】
本発明の粘着剤は、化粧品、日用品、食品などのポリオレフィン樹脂等のプラスチック容器へのの貼り付け用粘着剤として好適であるほか、一般ラベル・シール、粘着性光学フィルム、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、粘着性付与剤、粘着剤、積層構造体用粘着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート粘着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、又、各種樹脂添加剤およびその原料等としても非常に有用に使用できる。
【0060】
本発明の粘着シートは、基材、および本発明の粘着剤から形成した粘着剤層を備えていることが好ましい。また別の態様として、芯材の両面に粘着剤層を有する両面粘着シート、または基材および芯材を有さず粘着剤層のみで構成されたキャスト粘着シートも好ましい。前記粘着剤層は、粘着剤を基材上に塗工し、乾燥することで形成できる。または、粘着剤を剥離性シート上に塗工し、乾燥して粘着剤層を形成した後、基材を貼り合わせることで形成できる。なお粘着剤層の基材と接しない面に剥離性シートを貼り合わせることはいうまでもない。
【0061】
前記粘着剤を塗工する際に、溶液重合で説明した溶剤を添加して粘度を調整することが
できる。
【0062】
前記基材は、例えばセロハン、プラスチック、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス、および木材等が好ましい。基材の形状は、板状およびフィルム状を選択できるが、取り扱いが容易であるフィルム状が好ましい。基材は、単独または2種以上の積層体を使用できる。
【0063】
前記プラスチックは、例えばポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリノルボルネン、ポリアリレート、ポリアクリル、ポリフェニレンサルファイドム、ポリスチレン、ポリアミド、およびポリイミド;等が挙げられる。
【0064】
粘着剤の塗工方法は、特に制限は無く、例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、およびスピンコーター等が挙げられる。塗工に際して乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥装置は、特に制限は無く、例えば熱風乾燥機、赤外線ヒーターおよび減圧法等が挙げられる。乾燥温度は、通常60〜160℃程度である。
【0065】
粘着剤層の厚さは、0.1〜300μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。0.1〜300μmの範囲にあることで粘着物性を適切な範囲に調整できる。
【0066】
本発明の粘着シートの粘着剤層は、そのゲル分率が25〜70重量%であることが好ましく、30〜65重量%がより好ましい。ゲル分率が25〜70重量%であることで、密着性、凝集力をより高いレベルで両立できる。なお、本発明でゲル分率は、所定の大きさの粘着シートをSUSメッシュ(目開き:0.077mm、線径:0.05mm)に貼り付けた後、酢酸エチルに浸漬し、50℃で24時間抽出した後、100℃で30分乾燥後、下記数式(1)で算出した数値である。
数式(1) ゲル分率(重量%)=(G2/G1)×100
G1:酢酸エチルで抽出する前の粘着剤層の重量
G2:酢酸エチルで抽出・乾燥した後の粘着剤層の重量
【0067】
本発明の粘着シートは、ポリオレフィンを始めとするプラスチック、ガラス、ダンボール、および金属等といった高極性から低極性まで被着体を選ばずに様々な用途で使用できる。具体的には、化粧品容器、シャンプー等のトイレタリー容器、医薬品容器、食品容器、飲料容器等のプラスチック容器、各種容器用ガラス瓶、窓ガラス、ディスプレイ用ガラス、梱包用ダンボール、および各種容器用途の金属缶等が挙げられる。
【実施例】
【0068】
次に本発明の実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、「部」とは「重量部」、「%」とは「重量%」をそれぞれ意味するものとする。
【0069】
[アクリル系重合体の合成]
(合成例1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル84部、アクリル酸4部、メタクリル酸ブチル12部、酢酸エチル70部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル
(以下「AIBN」と記述する。)0.015部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、AIBN 0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル130部を加え、重量平均分子量104万のアクリル系共重合体溶液を得た。
【0070】
(合成例2)
反応容器に窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル88部、アクリル酸4部、メタクリル酸ブチル8部、酢酸エチル150部、AIBN 0.03部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、AIBN 0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル50部を加え、重量平均分子量72万のアクリル系共重合体溶液を得た。
【0071】
(合成例2〜18)
モノマーの種類及び配合量を表1の記載に従った他は、合成例2と同様に行うことで合成例2〜18の重合体を得た。
【0072】
得られた共重合体溶液について、溶液の外観、重量平均分子量を以下の方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
【0073】
<溶液外観>
得られたアクリル系共重合体溶液の外観を目視で評価した。
【0074】
<重量平均分子量の測定>
重量平均分子量の測定はGPCを用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
装置名 : 島津製作所製、LC−GPCシステム「Prominence」
カラム : 東ソー社製GMHXL 4本、東ソー(株)製HXL-H 1本を直列に連
結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/min
カラム温度 : 40℃
【0075】
【表1】
【0076】
表1の略号を以下に記載する。
BA : アクリル酸ブチル
AA : アクリル酸
BMA : メタクリル酸ブチル
CHMA : メタクリル酸シクロヘキシル
IBXA : アクリル酸イソボルニル
ST : スチレン
2EHA : アクリル酸2−エチルヘキシル
MMA : メタクリル酸メチル
HEA : アクリル酸2−ヒドロキシエチル
HEMA : メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
CHDMMA : シクロヘキサンジメタノールモノアクリル酸エステル
【0077】
(実施例1)
合成例1で得られた共重合体溶液中の共重合体100部に対して、硬化剤としてエポキシ化合物であるTETRAD−X(三菱ガス化学社製) 0.03部(不揮発分換算)、粘着付与剤としてロジン系樹脂であるA−75(荒川化学社製)を35部配合し、更に溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分を30%に調整して粘着剤を得た。
前記粘着剤を、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)上に、乾燥後の厚さが25μmになるようにコンマコーターで塗工を行い、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、厚さ50μmの基材(ポリエチレンテレフタレート製、以下、PETシートという)を貼り合せ、温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成することで「剥離性シート/粘着剤層/PETシート」という構成の粘着シートを得た。
【0078】
(実施例2〜18、比較例1〜12)
原料を表2、3の配合に従って変更した以外は実施例1と同様に行うことで実施例2〜
18および比較例1〜12粘着シートを得た。
ただし、実施例5、9、および15は参考例である。
【0079】
得られた粘着シートを以下の方法で評価した。結果を表2および表3に示す。
【0080】
(1)粘着力
得られた粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。23℃、相対湿度50%雰囲気下、前記粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層をポリプロピレン(PP)板に貼り付け、2kgロールで1往復圧着した24時間放置した後に引張試験機を用いて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験において粘着力を測定し、下記の評価基準に基づいて評価を行った。(JIS Z0237:2000に準拠)
◎:「粘着力が16N以上であり、非常に良好。」
○:「粘着力が13N以上16N未満であり、良好。」
×:「粘着力が13N未満であり、実用不可。」
上記同様にステンレス(SUS)板に対して粘着力を測定し、下記の評価基準に基づいて評価を行った。
◎:「粘着力が18N以上であり、非常に良好。」
○:「粘着力が15N以上18N未満であり、良好。」
×:「粘着力が15N未満であり、実用不可。」
【0081】
(2)保持力
得られた粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。前記粘着シート
から剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を研磨した幅30mm・縦150mmのステンレス板の下端部幅25mm・横25mmの部分に貼着し、2kgロールで1往復圧着した後、80℃雰囲気で粘着シートの下端部に1kgの荷重をかけ、7万秒放置することで保持力を測定した(JIS Z0237:2000に準拠)。評価は、粘着シート貼付面上端部が元の位置から下にずれた長さを測定した。
評価基準
○:「ずれた長さが0.5mm未満である。良好。」
×:「ずれた長さが0.5mm以上である。実用不可。」
【0082】
(3)透明性
得られた粘着シートの粘着剤層の透明性を目視で評価した。粘着剤層の外観に関しては、下記 の3段階の評価基準に基づいて評価を行った。
○:「透明で良好である」
×:「粘着剤層は白化しており、実用不可である」
【0083】
(4)耐白化性
得られた粘着シートを幅25mm・縦50mmの大きさに準備した。次いで23℃、相対湿度 50%雰囲気下、前記粘着シートから剥離性シートを剥がしてガラス板に貼り付け、2kgロー ルで1往復圧着し、「ガラス/粘着剤層/PETシート」の積層体を得た。この積層体を24時 間放置した後、60℃相対湿度95%の雰囲気下で10日間放置した。その後、取り出した直後 の積層体の透明性を目視にて評価した。外観に関しては、下記の3段階の評価基準に基づいて評 価を行った。
○:「透明で良好である」
×:「粘着剤層は白化しており、実用不可」
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
表2および表3の略号を以下に記載する。
TETRAD−X : N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン
(三菱ガス化学社製)
Alキレート : アルミニウムトリスアセチルアセトネート
アジリジン化合物 : 2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(
1−アジリジニル)プロピオネート]
TDI/TMP : トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
A−75 : スーパーエステルA−75(不均化ロジンのグリセリン及びジエチレングリコールエステル、軟化点75℃、荒川化学社製)
PH : ハリタックPH(水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、軟化点97℃、ハリマ化成社製)
PCJ : ハリタックPCJ(重合ロジンのペンタエリスリトールエステル、軟化点123℃、ハリマ化成社製)
T−130 : YSポリスターT−130(ポリテルペン樹脂、軟化点130℃、ヤスハラケミカル社製)
P−100 : アルコンP−100(脂環族炭化水素樹脂、軟化点100℃、荒川化学社製)
【0087】
表2の実施例1〜18に示すように本発明の粘着剤は、ポリオレフィン樹脂であるPPに対する粘着力、保持力、透明性、耐白化性に優れていることが分かる。これに対し、表3の比較例1〜12では、いずれかの項目が不良となっており、実用上問題があったり、実用不可であることがわかる。
【0088】
本発明の粘着剤は、透明性が良好で、ポリオレフィン樹脂に対して良好な粘着力を有しているために、特に透明ラベル用粘着剤として特に有用である。