特許第6702496号(P6702496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6702496ラミネート紙、ラミネート紙用紙基材、紙容器およびラミネート紙の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6702496
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ラミネート紙、ラミネート紙用紙基材、紙容器およびラミネート紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 27/30 20060101AFI20200525BHJP
   D21H 17/06 20060101ALI20200525BHJP
   D21H 17/14 20060101ALI20200525BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20200525BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20200525BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   D21H27/30 C
   D21H27/30 B
   D21H17/06
   D21H17/14
   B32B27/00 H
   B32B27/10
   B65D65/40 D
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-235213(P2019-235213)
(22)【出願日】2019年12月25日
(62)【分割の表示】特願2019-89862(P2019-89862)の分割
【原出願日】2019年5月10日
【審査請求日】2019年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2019-7744(P2019-7744)
(32)【優先日】2019年1月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 啓史
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6638843(JP,B2)
【文献】 特開2011−073326(JP,A)
【文献】 特開平10−053683(JP,A)
【文献】 特開2010−042822(JP,A)
【文献】 特開2015−166886(JP,A)
【文献】 特開2018−008448(JP,A)
【文献】 特開平07−020604(JP,A)
【文献】 実開平06−027539(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0232180(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B−D21J
B32B1/00−43/00
B65D65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースパルプを主成分とする紙基材と、当該紙基材の少なくとも一方の面上に積層された熱可塑性樹脂層とを有する紙容器用ラミネート紙であって、
前記紙基材は、直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの少なくとも1種を含有し、
前記直鎖脂肪酸および前記直鎖アルコールの融点が80〜100℃であり、
前記紙基材中の前記直鎖脂肪酸および前記直鎖アルコールの含有量の合計が100〜2500ppmであることを特徴とする紙容器用ラミネート紙。
【請求項2】
前記直鎖脂肪酸の炭素数が24、26または28であり、前記直鎖アルコールの炭素数が26または28である請求項1に記載の紙容器用ラミネート紙。
【請求項3】
前記紙基材が前記直鎖脂肪酸および前記直鎖アルコールの両者を含有し、
前記直鎖脂肪酸の含有量に対する前記直鎖アルコールの含有量の比率が、3.0〜33.3%である請求項1または請求項2に記載の紙容器用ラミネート紙。
【請求項4】
カヤーニファイバーラボで測定される前記紙基材の離解原料の繊維粗度が0.020〜0.18mg/mである請求項1〜3のいずれか1項に記載の紙容器用ラミネート紙。
【請求項5】
坪量が150〜500g/mである請求項1〜4のいずれか1項に記載の紙容器用ラミネート紙。
【請求項6】
前記紙基材が多層紙である請求項1〜5のいずれか1項に記載の紙容器用ラミネート紙。
【請求項7】
セルロースパルプを主成分とする紙容器用ラミネート紙用紙基材であって、
直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの少なくとも1種を含有し、
前記直鎖脂肪酸および前記直鎖アルコールの融点が80〜100℃であり、
前記直鎖脂肪酸および前記直鎖アルコールの含有量の合計が100〜2500ppmであることを特徴とする紙容器用ラミネート紙用紙基材。
【請求項8】
多層紙である請求項7に記載の紙容器用ラミネート紙用紙基材。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の紙容器用ラミネート紙を用いた紙容器。
【請求項10】
液体用である請求項9に記載の紙容器。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の紙容器用ラミネート紙の製造方法であって、
セルロースパルプを主成分とする紙基材の抄紙工程と、
前記紙基材の少なくとも一方の面上に熱可塑性樹脂層を積層するラミネート工程とを有し、
前記抄紙工程および前記ラミネート工程の少なくともいずれかの工程で、前記紙基材に100℃以上に加熱された物を接触させることを特徴とする紙容器用ラミネート紙の製造方法。
【請求項12】
前記紙基材が多層紙であって、前記抄紙工程において、多層抄き用抄紙機を用いて前記紙基材を抄紙することを特徴とする請求項11に記載の紙容器用ラミネート紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート紙、ラミネート紙用紙基材、紙容器およびラミネート紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳パック等に利用される液体用紙容器では、パルプ繊維を主体とする紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂層をラミネートし、耐水性を付与させたラミネート紙が多く用いられている。この種の液体用紙容器は、使用後に紙基材と熱可塑性樹脂層とに分離し、紙分は古紙原料として、また熱可塑性樹脂層のうち比較的純度の高いものはRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)(固形燃料)や再生プラスチックの原料として回収利用されることがある。しかしながら、紙基材から熱可塑性樹脂層を剥離することは一般に容易ではないため、リサイクルの効率は必ずしも高くはなく、さらなる改善が求められていた。
【0003】
そこで、液体用紙容器の原料をリサイクルするための技術が開発されている。例えば特許文献1では、オレフィン系樹脂からなる最外層、紙基材層、接着調整層、接着樹脂層、バリア層、樹脂フィルム層、オレフィン系樹脂を含む最内層を有する積層体からなり、胴部のうち帯状分離体と胴部切目線との間の領域において少なくとも最外層および紙基材層をバリア層から剥離する液体用紙容器が開示されている。
【0004】
また特許文献2では、ゲーブルトップ型容器の頂部形成板の側端角部の紙層に紙間強化剤を含浸させ、紙を主体とする層とプラスチックを主体とする層とに剥離させるきっかけを作りやすくした構成の液体用紙容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−166796号公報
【特許文献2】特開2000−185729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の液体用紙容器は、紙基材層とバリア層の剥離が容易な液体用紙容器ではあるが、多数の層からなり、剥離性向上のために切り目加工が施されることから、耐久性等において改良の余地を有するものであった。また、特許文献2の液体用紙容器も、紙を主体とする層とプラスチックを主体とする層を剥離する際のきっかけとなる箇所を設けた液体用紙容器であるが、同きっかけとなる箇所は紙容器の一部分に過ぎず、紙容器のほとんどの部分の接着は強固なままであるため、リサイクル性等において改良の余地を有するものであった。
【0007】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、紙基材と熱可塑性樹脂層との剥離が容易であり、原料をリサイクルすることが容易なラミネート紙と、当該ラミネート紙用紙基材、当該ラミネート紙を用いた紙容器および当該ラミネート紙の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の直鎖脂肪酸または直鎖アルコールを所定量含有した紙基材について検討を進めた。その結果、特定の種類の直鎖脂肪酸または直鎖アルコールを所定量含有した紙基材は、製造時は熱可塑性樹脂層と強固に密着するが、その後当該成分が経時的に紙基材の表面付近にブリードして、紙基材と熱可塑性樹脂層との剥離が容易となることを見出した。本発明はこのような知見を基に完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、以下のような構成を有している。
【0009】
(1)セルロースパルプを主成分とする紙基材と、当該紙基材の少なくとも一方の面上に積層された熱可塑性樹脂層とを有する紙容器用ラミネート紙であって、前記紙基材は、直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの少なくとも1種を含有し、前記直鎖脂肪酸および前記直鎖アルコールの融点が80〜100℃であり、前記紙基材中の前記直鎖脂肪酸および前記直鎖アルコールの含有量の合計が100〜2500ppmであることを特徴とする紙容器用ラミネート紙。
【0010】
(2)前記直鎖脂肪酸の炭素数が24、26または28であり、前記直鎖アルコールの炭素数が26または28である前記(1)に記載の紙容器用ラミネート紙。
【0011】
(3)前記紙基材が前記直鎖脂肪酸および前記直鎖アルコールの両者を含有し、前記直鎖脂肪酸の含有量に対する前記直鎖アルコールの含有量の比率が、3.0〜33.3%である前記(1)または前記(2)に記載の紙容器用ラミネート紙。
【0012】
(4)カヤーニファイバーラボで測定される前記紙基材の離解原料の繊維粗度が0.020〜0.18mg/mである前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の紙容器用ラミネート紙。
【0013】
(5)坪量が150〜500g/mである前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の紙容器用ラミネート紙。
【0014】
(6)前記紙基材が多層紙である前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の紙容器用ラミネート紙。
【0015】
(7)セルロースパルプを主成分とする紙容器用ラミネート紙用紙基材であって、直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの少なくとも1種を含有し、前記直鎖脂肪酸および前記直鎖アルコールの融点が80〜100℃であり、前記直鎖脂肪酸および前記直鎖アルコールの含有量の合計が100〜2500ppmであることを特徴とする紙容器用ラミネート紙用紙基材。
【0016】
(8)多層紙である前記(7)に記載の紙容器用ラミネート紙用紙基材。
【0017】
(9)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の紙容器用ラミネート紙を用いた紙容器。
【0018】
(10)液体用である前記(9)に記載の紙容器。
【0019】
(11)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の紙容器用ラミネート紙の製造方法であって、セルロースパルプを主成分とする紙基材の抄紙工程と、前記紙基材の少なくとも一方の面上に熱可塑性樹脂層を積層するラミネート工程とを有し、前記抄紙工程および前記ラミネート工程の少なくともいずれかの工程で、前記紙基材に100℃以上に加熱された物を接触させることを特徴とする紙容器用ラミネート紙の製造方法。
【0020】
(12)前記紙基材が多層紙であって、前記抄紙工程において、多層抄き用抄紙機を用いて前記紙基材を抄紙することを特徴とする前記(11)に記載の紙容器用ラミネート紙の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明のラミネート紙および当該ラミネート紙を用いた紙容器は、紙基材と熱可塑性樹脂層との剥離が容易であり、原料をリサイクルすることが容易である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について以下説明する。ただし、本発明の実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
本実施形態のラミネート紙は、セルロースパルプを主成分とする紙基材と、当該紙基材の少なくとも一方の面上に積層された熱可塑性樹脂層とを有する。以下、ラミネート紙を構成する各素材について説明する。
【0024】
[紙基材]
紙基材はセルロースパルプを主成分とする。ここで主成分とは、紙基材を構成する成分のうち50質量%以上を占める成分をいう。セルロースパルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ等を挙げることができる。木材パルプとしては、例えば、針葉樹材の晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、広葉樹材の晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)等の木材系パルプ、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプが挙げられる。非木材パルプでは、麻やバガス、綿等が挙げられる。これらのパルプは、1種単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。紙基材を構成するパルプとしては、品質やコストの面から、LKPであるアカシア材やユーカリ材等の木材系パルプが適している。なお、原料パルプはバージンパルプに限定されない。
【0025】
カヤーニファイバーラボで測定される紙基材の離解原料の繊維粗度は、0.020〜0.18mg/mであることが好ましい。紙基材の離解方法は、JISP8220−1:2012 に準拠して行う。一般に、繊維粗度が小さい方が繊維が細く、紙基材中に繊維が密に充填されるため、直鎖脂肪酸や直鎖アルコールのブリーディングが均一となるほか、紙基材の表面平滑性が向上することでラミネートの均一な接着性が向上して好ましい。また、紙基材の表面平滑性が向上することで紙基材表面への印刷適性が向上するとともに、ラミネート後の表面平滑性も向上することから、ラミネート表面への印刷適性も向上する。しかし、繊維粗度が0.020mg/m未満になると、紙の厚みが出にくくなる。また、紙基材を構成する繊維の投影長さ加重平均繊維長は0.40〜2.00mmであることが好ましい。繊維の平均繊維長は、JIS P8226:2006に準拠して測定される。
【0026】
紙基材は、単層構成の紙であってもよいし、2以上の層からなる多層構成の紙(多層紙)であってもよい。多層紙の場合、層の数は2以上6以下であることが好ましく、3以上5以下であることがさらに好ましい。多層紙では各層の原料配合や坪量、抄造条件等を任意に調整することができ、層間には層間接着を強化する澱粉や紙力増強剤などを含有させてもよい。このような操作により直鎖脂肪酸や直鎖アルコールのブリーディングを調節できるほか、地合や平滑度を向上させ、表面性を向上させることができる。
【0027】
(直鎖脂肪酸および直鎖アルコール)
紙基材は、直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの少なくとも1種を含有する。直鎖脂肪酸とは、直鎖状のアルキル基を有する1価のカルボン酸のことである。また、直鎖アルコールとは、直鎖状のアルキル基を有する1価のアルコールのことである。
【0028】
セルロースパルプは一般に、直鎖脂肪酸や直鎖アルコールを含有している。植物内においては、一般に、炭素数が2の酢酸を出発物質として直鎖脂肪酸や直鎖アルコールが合成されている。そのため、合成された脂肪酸やアルコールの炭素数は偶数となる。
【0029】
本発明者は、直鎖脂肪酸や直鎖アルコールを含有する紙基材と熱可塑性樹脂層とからなるラミネート紙の剥離挙動を検討した。その結果、紙基材中に融点が80〜100℃である直鎖脂肪酸または直鎖アルコールが存在すると、ラミネート紙製造後の時間の経過とともに、当該直鎖脂肪酸または直鎖アルコールが紙基材の表面付近にブリーディングする(表面に遊離する)ことを見出した。さらに当該直鎖脂肪酸または直鎖アルコールは、紙基材の表面付近にブリーディングした後、熱可塑性樹脂層との界面に侵入してくる。その結果、紙基材と熱可塑性樹脂層とのラミネート後、ある程度の時間が経過すると、紙基材と熱可塑性樹脂層との剥離が容易となることを見出した。
【0030】
本実施形態において、直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの融点は80〜100℃である。直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの融点が前記温度範囲内にあると、紙基材の製造時に用いられる100℃以上に加熱されたドライヤー等の装置、あるいはラミネート工程で100℃以上に加熱溶融された熱可塑性樹脂の熱で溶けるため、紙基材内に均一に分布させることができる。また、当該直鎖脂肪酸および直鎖アルコールは、経時的にブリーディングするため、紙基材と熱可塑性樹脂層との剥離が容易となる。融点が80〜100℃である直鎖脂肪酸とは、例えば、炭素数22のベヘン酸(融点80℃)、炭素数24のリグノセリン酸(融点84℃)、炭素数26のヘキサコサン酸(融点88℃)、炭素数28のオクタコサン酸(融点91℃)、炭素数30のトリアコンタン酸(融点94℃)である。一方、融点が80〜100℃である直鎖アルコールとは、例えば、炭素数26のヘキサコサノール(融点80℃)、炭素数28のオクタコサノール(融点83℃)、炭素数30のトリアコンタノール(融点86℃)である。ここで、個々の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの融点は、DSC法によって求められる。
【0031】
直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの融点が低過ぎると、ドライヤーやラミネート工程でブリーディングが過度に促進されるため、ラミネートの接着不良が生じ易くなる。一方、融点が高過ぎると、ドライヤー等の熱で融解しないため、紙基材内において直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの分布が均一化されず、当該成分同士が集合化して固まるため、異物化し易くなる。
【0032】
また、紙基材中の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの含有量(質量)の合計は、100〜2500ppmであり、150〜2400ppmであることが好ましい。ここで、直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの含有量の合計とは、融点が80〜100℃である直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの含有量の合計である。ここで、直鎖脂肪酸とは、融点が80〜100℃である直鎖脂肪酸の1種類のみからなっていてもよいし、融点が80〜100℃である複数種類の直鎖脂肪酸を含有する混合物であってもよい。同様に、直鎖アルコールとは、融点が80〜100℃である直鎖アルコールの1種類のみからなっていてもよいし、融点が80〜100℃である複数種類の直鎖アルコールを含有する混合物であってもよい。直鎖脂肪酸または直鎖アルコールの含有量は、後記する方法で定量することができる。尚、紙基材は、本発明の効果に支障を与えない範囲内であれば、融点が80〜100℃から外れる直鎖脂肪酸または直鎖アルコールを含有していてもよい。
【0033】
直鎖脂肪酸と直鎖アルコールの含有量の合計が少な過ぎると、ブリーディングによって紙基材と熱可塑性樹脂層との剥離が容易となる効果が出にくい。一方、直鎖脂肪酸と直鎖アルコールの含有量の合計が多過ぎると、脂肪酸塩(カルシウム塩など)の形で製造装置内に蓄積して、紙基材に汚れが生じるおそれがある。また、紙基材中に直鎖脂肪酸と直鎖アルコールの含有量の合計が多過ぎると、これら化合物が紙基材中あるいは紙基材表面に凝集異物となって析出し、紙基材の表面平滑性が低下するおそれがある。凝集異物が析出すると、ラミネート接着の均一性も低下するため、ラミネート表面の平滑性も低下する。
【0034】
紙基材中の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの融点が前記温度範囲内にあり、また前記含有量で存在すると、ラミネート紙の製造時には、紙基材と熱可塑性樹脂層との接着性に問題はない。しかし、ラミネート紙の製造後、紙容器として使用され、商品寿命が終了した頃に、直鎖脂肪酸または直鎖アルコールが紙基材の表面付近にブリーディングしてきて、紙基材と熱可塑性樹脂層との剥離が容易となるように制御することができる。
【0035】
融点が80〜100℃である直鎖脂肪酸は、炭素数が24、26または28であることが好ましい。また、融点が80〜100℃である直鎖アルコールは、炭素数が24、26または28であることが好ましい。炭素数が24、26または28である直鎖脂肪酸とは、炭素数24、26および28からなる群より選択される炭素数の1価の直鎖脂肪酸のことである。また、炭素数が24、26または28である直鎖アルコールとは、炭素数24、26および28からなる群より選択される炭素数の1価の直鎖アルコールのことである。
【0036】
紙基材の原料となるセルロースパルプに含まれる直鎖脂肪酸または直鎖アルコールの量は、パルプ原料となる木材チップを蒸解し繊維を回収する工程、洗浄する工程、漂白する工程、漂白後の洗浄工程、抄紙する工程、塗工する工程のいずれか、または複数の工程において調整することができる。例えば漂白後の洗浄工程におけるアルカリ添加や、マイクロタルク等の吸油性粒子やピッチコントロール剤等の分散剤添加により、紙基材の原料となるセルロースパルプに含まれる直鎖脂肪酸または直鎖アルコールの量を調整することができる。
【0037】
また、セルロースパルプの原料となる樹種の中には、炭素数が24、26または28である直鎖脂肪酸または直鎖アルコールを多く含有する樹種が存在する。例えば、アカシアなどである。そのため、これらの直鎖脂肪酸または直鎖アルコールを多く含有する樹種のパルプを紙基材の原料として適当量用いることによって、紙基材中の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの含有量を上記の所定量とすることができる。
【0038】
直鎖脂肪酸の含有量に対する直鎖アルコールの含有量の比率は、3.0〜33.3%であることが好ましく、4.0〜30.0%であることがより好ましい。直鎖脂肪酸が多過ぎると、カルシウム塩等の形で製造装置内に蓄積して、紙基材の汚れにつながるおそれがある。一方、直鎖脂肪酸が少な過ぎると界面活性作用が不足して、ブリーディングが十分ではなくなるおそれがある。
【0039】
紙基材に直鎖脂肪酸および直鎖アルコールを含有させる方法は特に限定されず、例えば以下のような方法がある。これらの中では、(1)の方法が、従来の製造プロセスを変える必要がないため、好ましい。
(1)上記の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールを多く含有する樹種のパルプを紙基材の原料として用いる方法。
(2)パルプの製造工程または紙基材の抄紙工程のいずれかの工程で直鎖脂肪酸および直鎖アルコール、またはそれら成分を含む薬剤を所定量添加する方法。
(3)紙基材の抄紙後に直鎖脂肪酸および直鎖アルコール、またはそれら成分を含む薬剤を所定量含浸させる方法。
【0040】
紙基材を抄紙する際に、各種内添助剤を必要に応じて適宜選択して使用することが可能である。内添助剤の例としては、サイズ剤、歩留まり向上剤、ろ水度向上剤、嵩高剤、紙力向上剤、カチオン化澱粉などの各種澱粉類、硫酸バンド、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、pH調整剤、ピッチコントロール剤、防腐剤、スライムコントロール剤等が挙げられる。また、紙基材を抄紙する際には、填料を配合しても良い。填料は製紙分野で一般に使用されている填料が使用可能であり、特に限定されない。例えば、填料としてタルク等の無機鉱物を用いることで、紙基材中に含まれる直鎖脂肪酸または直鎖アルコールを適度に吸着させ、ブリーディングを調整することができる。
【0041】
紙基材の坪量は、特に限定されるものではないが、150〜500g/mとすることが好ましい。150g/m以下であると、紙容器に成型した際に剛性が不足するおそれがある。また500g/m2以上であると、薬品、原料を多量に使用するためコスト高となるおそれがある。
【0042】
紙基材の少なくとも一方の面上に、水溶性高分子の層や、顔料及び接着剤を主成分とする塗工層を設けてもよい。これらの層は単独、または2種以上を組み合わせて使用することができる。水溶性高分子層や塗工層を設けることによって、直鎖脂肪酸や直鎖アルコールのブリーディングの程度を調整することが可能となる。水溶性高分子としては特に限定されないが、加工適性の観点から、ポリビニルアルコール(PVA)、澱粉類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレンイミン類等が好ましい。塗工層に用いることのできる顔料は、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルク、若しくは重質炭酸カルシウムなどの精製した天然鉱物顔料、軽質炭酸カルシウム、若しくは炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、焼成カオリン、中空有機顔料、密実有機顔料、プラスチックピグメント、バインダーピグメント、プラスチックビーズ、又はマイクロカプセル等があるが、これらに限定されるものではない。水溶性高分子層や、塗工層の形成方法については特に制限されず、ブレードコーター、ロッドコーター等を用いることができる。
【0043】
(抄紙)
紙基材は、抄紙工程で抄紙して製造される。紙基材の抄紙方法および抄紙機の型式としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、ギャップフォーマー、オントップフォーマー、サクセスフォーマー等の公知の抄紙方法および抄紙機を用いることができ、限定されない。特に、多層紙を抄紙する時は、多層抄き用抄紙機を用いることが好ましい。また、抄紙時のpHは酸性領域(酸性抄紙)、疑似中性領域(疑似中性抄紙)、中性領域(中性抄紙)、アルカリ性領域(アルカリ性抄紙)のいずれであってもよく、限定されない。
【0044】
[熱可塑性樹脂層]
熱可塑性樹脂層は、紙基材上に熱可塑性樹脂層をラミネートすることによって形成される。熱可塑性樹脂は、用途に応じて、結晶性樹脂と非結晶性樹脂のいずれの熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(LDPE、MDPE、HDPE、LLDPE等)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、PET、PBT等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸、PHB、PBS、PBAT、PCL、PHBH等の生分解性樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)等が挙げられる。
【0045】
熱可塑性樹脂層は、単一の樹脂の単層で形成してもよいし、複数の樹脂を混合して単層で形成してもよいし、同種や異種の樹脂からなる複数の層として形成してもよい。
【0046】
熱可塑性樹脂層の厚さは、特に限定されないが、通常は、10〜50μm程度の厚さである。
【0047】
[ラミネート紙]
ラミネート紙は、紙基材と、当該紙基材の少なくとも一方の面上に積層された熱可塑性樹脂層とからなる。熱可塑性樹脂層は、紙基材の片面だけに積層されていてもよいし、紙基材の両面に積層されていてもよい。ラミネート紙は、紙基材の少なくとも一方の面上に熱可塑性樹脂層を積層するラミネート工程で積層されて製造される。
【0048】
熱可塑性樹脂層を紙基材上にラミネートする方法としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、熱ラミネート法、共押出ラミネート等の各種公知の方法を適宜使用することができる。
【0049】
ラミネート時には、必要に応じて、紙基材または熱可塑性樹脂層に対してコロナ処理やオゾン処理等の酸化処理を施してもよい。これらの処理を行うことによって、紙基材または熱可塑性樹脂層の表面に極性基が生成し、接着性を向上させることができる。これら処理は紙基材または熱可塑性樹脂層のいずれか一方に行ってもよく、両方に行ってもよい。またこれら処理回数は1度であってもよいし、複数回を繰り返してもよい。
【0050】
ラミネート紙の製造時において、抄紙工程およびラミネート工程の少なくともいずれかの工程で、紙基材に100℃以上に加熱された物を接触させる。紙基材に100℃以上に加熱された物を接触させることによって、紙基材の内部に含有されている直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが溶けて、それらを紙基材内に均一に分布させることができる。100℃以上に加熱された物は、例えばドライヤー、加熱ロール、加熱シリンダーロール、押出機、赤外線ヒーター等の装置であっても、ラミネート時の熱可塑性樹脂であってもよく、特に限定されない。また、加熱された物と接触させる方法も、直接的に接触させてもよいし、カンバス、空気等を通じて間接的に接触させてもよい。これらの処理回数は1回であってもよいし、複数回繰り返してもよい。
【0051】
紙基材と熱可塑性樹脂層とからなるラミネート紙は、坪量が150〜500g/mであることが好ましく、200〜400g/mであることがより好ましい。坪量が小さ過ぎると、ラミネート紙の製造時に熱が伝わり過ぎるため、直鎖脂肪酸や直鎖アルコールが製造時に過剰にブリーディングしてしまうおそれがある。一方、坪量が大き過ぎると、ラミネート紙の製造時に熱が伝わり難いため、直鎖脂肪酸や直鎖アルコールが製造時に均一に分散することができず、ブリーディングが均一に起こらず、剥離しにくくなるおそれがある。
【0052】
紙基材と熱可塑性樹脂層とからなるラミネート紙は、厚さが200〜750μmであることが好ましい。また、紙基材と熱可塑性樹脂層とからなるラミネート紙は、密度が0.50〜1.30g/cmであることが好ましく、0.60〜1.20g/cmであることがさらに好ましい。
【0053】
本実施形態のラミネート紙は、ラミネート紙の製造時から容器として使用する時までは、十分なラミネートの接着性を有している。しかし、容器を使用後に回収し、再利用する頃には、接着性が低下して、紙基材と熱可塑性樹脂層とが剥離し易くなるため、紙基材のパルプを容易にリサイクルすることができる。
【0054】
一般に、ラミネート紙をパルプ繊維が主体の紙基材と熱可塑性樹脂層とに分離するリサイクル工程において、ラミネート紙はパルパーに投入され離解が行われる。本実施形態のラミネート紙では、紙基材と熱可塑性樹脂層とが剥離し易くなるため、原料を容易に分離することができ、回収リサイクルすることができる。
【0055】
ラミネート紙の層構成としては、紙基材と熱可塑性樹脂層とからなる2層構成または3層構成のラミネート紙が基本であるが、それ以外に、用途に応じて、種々の多様な層構成を形成することができる。例えば、紙基材と熱可塑性樹脂層とからなるラミネート紙上にさらに同種または異種の熱可塑性樹脂層を設けたり、熱可塑性樹脂層と熱可塑性樹脂層の間に熱可塑性樹脂層以外の層を設けたり、紙基材と熱可塑性樹脂層の間に熱可塑性樹脂層以外の層を設けることもできる。熱可塑性樹脂層以外の層としては、上記の水溶性高分子層(PVA等)や、顔料及び接着剤を主成分とする塗工層、アルミニウム箔(Al箔)、印刷層等がある。
【0056】
具体的なラミネート紙の層構成の例としては、紙基材/LDPE、紙基材/塗工層/LDPE、LDPE/紙基材/LDPE、LDPE/紙基材/塗工層/LDPE、LDPE/PVA/紙基材/PVA/LDPE、LDPE/紙基材/LDPE/PET/LDPE、LDPE/紙基材/LDPE/Al箔/LDPE等があるが、これらに限定されない。
【0057】
[紙容器]
本実施形態のラミネート紙を用いて種々の紙容器を製造することができる。紙容器を製造する方法は、公知の方法を適宜選択して用いることができる。
【0058】
[液体用紙容器]
本実施形態のラミネート紙を用いて種々の液体用紙容器を製造することができる。液体用紙容器を製造する方法は、公知の方法を適宜選択して用いることができる。
【0059】
熱可塑性樹脂層が内側となるように紙容器を製造することによって、内容物の液体は、熱可塑性樹脂層によって保持されるため、紙基材側に液体が浸透して、紙基材が変色したり、劣化したりするのを抑制することができる。
【0060】
PE等の熱可塑性樹脂層を紙基材の外側および内側の両面に設けたラミネート紙を、水の沸点及び熱可塑性樹脂の融点を超える温度で加熱処理して、当該熱可塑性樹脂層を紙基材が含有する水分等によって発泡させると、断熱性を有した紙容器とすることができる。断熱性を有する紙容器は、例えば、加熱した液体・固体等や冷却された液体・固体等を内容物とする断熱性紙容器として使用することができる。
【0061】
本実施形態のラミネート紙は、牛乳パック等の液体用紙容器、紙コップ、発泡カップ、アイスカップ、断熱カップ、コーヒー容器、アセプティック容器、包装容器等の紙容器のほか、包装資材、断熱資材等の各種用途に用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明の効果を詳細に説明する。実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0063】
実施例および比較例に用いた材料は以下のとおりである。
(1)パルプ
LBKP:アカシアパルプ、ユーカリパルプ
NBKP:ダグラスファー、ラジアータパイン、スギ
(2)熱可塑性樹脂
PE:日本ポリエチレン社製LDPE、品番LC522
【0064】
以下に、紙基材およびラミネート紙について実施した測定方法を示す。なお特別な記載が無い限り、測定はJIS P8111:1998に記載の温度23℃±1℃、湿度50±2%の環境で行った。
【0065】
(1)繊維形態は、JIS P8226:2006に従い、投影長さ加重平均繊維長と粗度を測定した。測定には繊維長測定装置 (メッツォオートメーション社製、カヤーニファイバーラボVer4.0)を用いた。
(2)坪量:JIS P8124:2011に準じて測定した。
(3)厚さ:JIS P8118:2014に従い、100kPa±10kPaの圧力を試験片の円形領域(200mm)に加えた際の厚さを測定した。
(4)密度:JIS P8118:2014に従い測定した。なお厚さは、100kPa±10kPaの圧力を試験片の円形領域(200mm)に加えた際の厚さを測定した。
(5)水分:JIS P8127:2010に従い測定した。
【0066】
直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの含有量の測定は以下のように行った。
紙基材30mm×30mmを切り出し、精量した。切り出した試験片を厚さ方向に層剥離した後、その全量を10mm×10mmの小断片に分割した。分割した試験片の全てをガラス容器に入れ、濃塩酸(12規定)0.1ml、及びクロロホルム2ml加え、30分間超音波処理を行った。このとき得られた抽出液をメンブレンフィルタ(ポア径0.2μm)で濾過した。上記濾液を用いて高速液体クロマトグラフィーにより分析を行った。溶離液としてメタノール:トリフルオロ酢酸を0.1%含んだアセトン=50:50を用い、流量1ml/分とした。使用カラムはウォーターズ社製X Bridge C18, 250mm×4.6mm I.Dで、温度は30℃とし、濾液を2μl注入した。検出器は荷電化粒子検出器を用いて、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸を検出し、それぞれについて下記の計算式により試料中濃度を求め、合計を算出した。各成分のピーク面積値は、ベーズラインと各ピークで囲まれた部分であるが、部分的に重複するピークについてはJIS K 0124の垂線法によりピーク分離し求めた。
計算式:試料中濃度(ppm)={標品濃度÷標品ピーク面積値}×試料ピーク面積値×2(ml)÷{(試料質量(mg)÷1000)}
【0067】
[実施例1]
(紙基材)
パルプ原料としてLBKP100部(アカシア材80%、ユーカリ材20%)を、ダブルディスクレファイナーを使用して叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100部に対して、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉0.60部(固形分換算)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30部(固形分換算)、硫酸バンドを0.20部(固形分換算)、湿潤紙力剤として、ポリアミド・アミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を0.10質量部(固形分換算)を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて5層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間にバレイショ澱粉を3.0質量部(固形分換算)吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の表面にサイズプレスで酸化澱粉を1.0g/m(固形分換算)塗布し、坪量274g/mの紙基材を得た。得られた紙基材には、表1に記載の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが含まれていた。
【0068】
(熱可塑性樹脂層)
得られた紙基材の外内両面に対し、熱可塑性樹脂としてLDPE(LC522)をラミネートした。熱可塑性樹脂層のラミネートは押し出しラミネート法により、ラミネート温度を330℃、ラミネート速度を200m/分の条件で行った。熱可塑性樹脂層の厚さ、質量は表1に記載の通りとし、ラミネート紙を得た。
【0069】
(紙容器)
得られたラミネート紙の表面にオフセット印刷を施したのち、必要箇所に罫線を設け、所定の形状に打ち抜き、ブランク材を得た。次に、フレームシールによりブランク材の一部の樹脂材料を溶融し、胴部を貼り合わせて、筒状のスリーブを得た。続いて、この筒状スリーブを液体充填機に供給し、充填機上でボトム部を形成した後、トップ部をシールし、ゲーブルトップ型紙容器を得た。
【0070】
[実施例2]
パルプ原料としてLBKP100部(アカシア材70%、ユーカリ材30%)を、ダブルディスクレファイナーを使用して叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100部に対して、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉0.60部(固形分換算)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30部(固形分換算)、硫酸バンドを0.20部(固形分換算)、湿潤紙力剤として、ポリアミド・アミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を0.10質量部(固形分換算)を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて5層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間にバレイショ澱粉を3.0質量部(固形分換算)吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の表面にサイズプレスで酸化澱粉を1.0g/m(固形分換算)塗布し、坪量476g/mの紙基材を得た。得られた紙基材には、表1に記載の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが含まれていた。
得られた紙基材に、厚さ、質量を表1に記載の条件となるよう熱可塑性樹脂層をラミネートした以外は実施例1と同様にして、ゲーブルトップ型紙容器を得た。
【0071】
[実施例3]
パルプ原料としてLBKP80部(アカシア材60%、ユーカリ材40%)、NBKP20部(ダグラスファー50%、ラジアータパイン30%、スギ20%)を、それぞれダブルディスクレファイナーを使用して叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100部に対して、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉0.60部(固形分換算)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30部(固形分換算)、硫酸バンドを0.20部(固形分換算)、湿潤紙力剤として、ポリアミド・アミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を0.10質量部(固形分換算)を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて5層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間にバレイショ澱粉を3.0質量部(固形分換算)吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の表面にサイズプレスで酸化澱粉を3.0g/m(固形分換算)塗布し、坪量152g/mの紙基材を得た。得られた紙基材には、表1に記載の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが含まれていた。
得られた紙基材に、厚さ、質量を表1に記載の条件となるよう熱可塑性樹脂層をラミネートした以外は実施例1と同様にして、ゲーブルトップ型紙容器を得た。
【0072】
[実施例4]
パルプ原料としてLBKP80部(アカシア材40%、ユーカリ材60%)、NBKP20部(ダグラスファー50%、ラジアータパイン30%、スギ20%)を、それぞれダブルディスクレファイナーを使用して叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100部に対して、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉0.60部(固形分換算)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30部(固形分換算)、硫酸バンドを0.20部(固形分換算)、湿潤紙力剤として、ポリアミド・アミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を0.10質量部(固形分換算)を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて5層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間にバレイショ澱粉を4.0質量部(固形分換算)吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の表面にサイズプレスで酸化澱粉を3.0g/m(固形分換算)塗布し、坪量370g/mの紙基材を得た。得られた紙基材には、表1に記載の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが含まれていた。
得られた紙基材に、厚さ、質量を表1に記載の条件となるよう熱可塑性樹脂層をラミネートした以外は実施例1と同様にして、ゲーブルトップ型紙容器を得た。
【0073】
[実施例5]
パルプ原料としてLBKP50部(アカシア材50%、ユーカリ材50%)、NBKP50部(ダグラスファー50%、ラジアータパイン30%、スギ20%)を、それぞれダブルディスクレファイナーを使用して叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100部に対して、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉0.60部(固形分換算)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30部(固形分換算)、硫酸バンドを0.20部(固形分換算)、湿潤紙力剤として、ポリアミド・アミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を0.10質量部(固形分換算)を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて5層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間にバレイショ澱粉を4.0質量部(固形分換算)吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の表面にサイズプレスで酸化澱粉を3.0g/m(固形分換算)塗布し、坪量226g/mの紙基材を得た。得られた紙基材には、表1に記載の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが含まれていた。
得られた紙基材に、厚さ、質量を表1に記載の条件となるよう熱可塑性樹脂層をラミネートした以外は実施例1と同様にして、ゲーブルトップ型紙容器を得た。
【0074】
[実施例6]
パルプ原料としてLBKP50部(アカシア材50%、ユーカリ材50%)、NBKP50部(ダグラスファー50%、ラジアータパイン30%、スギ20%)を、それぞれダブルディスクレファイナーを使用して叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100部に対して、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉0.60部(固形分換算)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30部(固形分換算)、硫酸バンドを0.20部(固形分換算)、湿潤紙力剤として、ポリアミド・アミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を0.10質量部(固形分換算)を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて5層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間にバレイショ澱粉を4.0質量部(固形分換算)吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の表面にサイズプレスで酸化澱粉を4.0g/m(固形分換算)塗布し、坪量374g/mの紙基材を得た。得られた紙基材には、表1に記載の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが含まれていた。
得られた紙基材に、厚さ、質量を表1に記載の条件となるよう熱可塑性樹脂層をラミネートした以外は実施例1と同様にして、ゲーブルトップ型紙容器を得た。
【0075】
[実施例7]
パルプ原料としてLBKP10部(アカシア材30%、ユーカリ材70%)、NBKP90部(ダグラスファー50%、ラジアータパイン30%、スギ20%)を、それぞれダブルディスクレファイナーを使用して叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100部に対して、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉0.60部(固形分換算)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30部(固形分換算)、硫酸バンドを0.20部(固形分換算)、湿潤紙力剤として、ポリアミド・アミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を0.10質量部(固形分換算)を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて5層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間にバレイショ澱粉を3.0質量部(固形分換算)吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の表面にサイズプレスで酸化澱粉を2.3g/m(固形分換算)塗布し、坪量424g/mの紙基材を得た。得られた紙基材には、表1に記載の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが含まれていた。
得られた紙基材に、厚さ、質量を表1に記載の条件となるよう熱可塑性樹脂層をラミネートした以外は実施例1と同様にして、ゲーブルトップ型紙容器を得た。
【0076】
[実施例8]
パルプ原料としてLBKP10部(アカシア材20%、ユーカリ材80%)、NBKP90部(ダグラスファー50%、ラジアータパイン30%、スギ20%)を、それぞれダブルディスクレファイナーを使用して叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100部に対して、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉0.60部(固形分換算)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30部(固形分換算)、硫酸バンドを0.20部(固形分換算)、湿潤紙力剤として、ポリアミド・アミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を0.10質量部(固形分換算)を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて5層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間にバレイショ澱粉を3.0質量部(固形分換算)吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の表面にサイズプレスで酸化澱粉を2.3g/m(固形分換算)塗布し、坪量453g/mの紙基材を得た。得られた紙基材には、表1に記載の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが含まれていた。
得られた紙基材に、厚さ、質量を表1に記載の条件となるよう熱可塑性樹脂層をラミネートした以外は実施例1と同様にして、ゲーブルトップ型紙容器を得た。
【0077】
[比較例1]
パルプ原料としてLBKP80部(アカシア材100%)、NBKP20部(ダグラスファー50%、ラジアータパイン30%、スギ20%)を、それぞれダブルディスクレファイナーを使用して叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100部に対して、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉0.60部(固形分換算)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30部(固形分換算)、硫酸バンドを0.20部(固形分換算)、湿潤紙力剤として、ポリアミド・アミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を0.10質量部(固形分換算)を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて4層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間にバレイショ澱粉を3.0質量部(固形分換算)吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の表面にサイズプレスで酸化澱粉を2.3g/m(固形分換算)塗布し、坪量278g/mの紙基材を得た。得られた紙基材には、表1に記載の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが含まれていた。
得られた紙基材に、厚さ、質量を表1に記載の条件となるよう熱可塑性樹脂層をラミネートした以外は実施例1と同様にして、ゲーブルトップ型紙容器を得た。
【0078】
[比較例2]
パルプ原料としてLBKP80部(アカシア材90%、ユーカリ材10%)、NBKP20部(ダグラスファー50%、ラジアータパイン30%、スギ20%)を、それぞれダブルディスクレファイナーを使用して叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100部に対して、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉0.60部(固形分換算)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30部(固形分換算)、硫酸バンドを0.20部(固形分換算)、湿潤紙力剤として、ポリアミド・アミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を0.10質量部(固形分換算)を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて5層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間にバレイショ澱粉を3.0質量部(固形分換算)吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の表面にサイズプレスで酸化澱粉を2.3g/m(固形分換算)塗布し、坪量466g/mの紙基材を得た。得られた紙基材には、表1に記載の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが含まれていた。
得られた紙基材に、厚さ、質量を表1に記載の条件となるよう熱可塑性樹脂層をラミネートした以外は実施例1と同様にして、ゲーブルトップ型紙容器を得た。
【0079】
[比較例3]
パルプ原料としてLBKP50部(アカシア材85%、ユーカリ材15%)、NBKP50部(ダグラスファー50%、ラジアータパイン30%、スギ20%)を、それぞれダブルディスクレファイナーを使用して叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100部に対して、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉0.60部(固形分換算)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30部(固形分換算)、硫酸バンドを0.20部(固形分換算)、湿潤紙力剤として、ポリアミド・アミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を0.10質量部(固形分換算)を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて3層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間にバレイショ澱粉を3.0質量部(固形分換算)吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の表面にサイズプレスで酸化澱粉を2.3g/m(固形分換算)塗布し、坪量119g/mの紙基材を得た。得られた紙基材には、表1に記載の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが含まれていた。
得られた紙基材に、厚さ、質量を表1に記載の条件となるよう熱可塑性樹脂層をラミネートした以外は実施例1と同様にして、ゲーブルトップ型紙容器を得た。
【0080】
[比較例4]
パルプ原料としてLBKP50部(アカシア材15%、ユーカリ材85%)、NBKP50部(ダグラスファー50%、ラジアータパイン30%、スギ20%)を、それぞれダブルディスクレファイナーを使用して叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100部に対して、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉0.60部(固形分換算)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30部(固形分換算)、硫酸バンドを0.20部(固形分換算)、湿潤紙力剤として、ポリアミド・アミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を0.10質量部(固形分換算)を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて5層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間にバレイショ澱粉を3.0質量部(固形分換算)吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の表面にサイズプレスで酸化澱粉を2.3g/m(固形分換算)塗布し、坪量377g/mの紙基材を得た。得られた紙基材には、表1に記載の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが含まれていた。
得られた紙基材に、厚さ、質量を表1に記載の条件となるよう熱可塑性樹脂層をラミネートした以外は実施例1と同様にして、ゲーブルトップ型紙容器を得た。
【0081】
[比較例5]
パルプ原料としてNBKP100部(ダグラスファー50%、ラジアータパイン30%、スギ20%)を、ダブルディスクレファイナーを使用して叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100部に対して、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉0.60部(固形分換算)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30部(固形分換算)、硫酸バンドを0.20部(固形分換算)、湿潤紙力剤として、ポリアミド・アミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を0.10質量部(固形分換算)を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて5層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間にバレイショ澱粉を3.0質量部(固形分換算)吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の表面にサイズプレスで酸化澱粉を2.3g/m(固形分換算)塗布し、坪量421g/mの紙基材を得た。得られた紙基材には、表1に記載の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが含まれていた。
得られた紙基材に、厚さ、質量を表1に記載の条件となるよう熱可塑性樹脂層をラミネートした以外は実施例1と同様にして、ゲーブルトップ型紙容器を得た。
【0082】
[比較例6]
パルプ原料としてNBKP100部(ダグラスファー50%、ラジアータパイン30%、スギ20%)を、ダブルディスクレファイナーを使用して叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー100部に対して、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉0.60部(固形分換算)、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30部(固形分換算)、硫酸バンドを0.20部(固形分換算)、湿潤紙力剤として、ポリアミド・アミンエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を0.10質量部(固形分換算)を添加し紙料を調製した。この紙料を用いて5層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙工程中、層間スプレーにて、各層間にバレイショ澱粉を3.0質量部(固形分換算)吹き付けるとともに、5層抄き合わせ後に、紙基材の表面にサイズプレスで酸化澱粉を2.3g/m(固形分換算)塗布し、坪量514g/mの紙基材を得た。得られた紙基材には、表1に記載の直鎖脂肪酸および直鎖アルコールが含まれていた。
得られた紙基材に、厚さ、質量を表1に記載の条件となるよう熱可塑性樹脂層をラミネートした以外は実施例1と同様にして、ゲーブルトップ型紙容器を得た。
【0083】
以上のようにして得られたラミネート紙について以下の性能評価を行った。性能評価は、ラミネート紙の平滑性、ラミネート紙の剥離性、抄紙汚れの発生程度については、◎、○または△のとき合格と判定した。ラミネート紙の接着性については、◎または○のとき合格と判定した。評価結果は表1に記載のとおりであった。
【0084】
(ラミネート紙の平滑性)
実施例および比較例で得られたゲーブルトップ型紙容器のラミネート紙について、JIS P8155:2010に従い、王研式平滑度を測定した。王研式平滑度が250秒以上であれば◎、200秒以上であれば○、100秒以上であれば△、100秒未満であれば×とした。
【0085】
(ラミネート紙の接着性)
実施例および比較例で得られたゲーブルトップ型紙容器のラミネート紙について、熱可塑性樹脂層のラミネート後、23℃50%の調湿条件で1ヶ月保管した後に、、JIS K6854−3:1999に従い、熱可塑性樹脂層と紙基材間の接着強度を測定した。試験片幅25mm、接着部の長さを150mmとし、接着部の両端25mmを除く100mmの領域における剥離の程度を目視にて◎、○、△、×で評価した。剥離がみられず、十分に接着していれば◎、極一部の箇所でのみ剥離がみられれば○、極一部の箇所で剥離がみられ、かつその剥離範囲が広い場合は△、剥離が複数個所でみられた場合は×と評価した。
【0086】
(ラミネート紙の剥離性)
実施例および比較例で得られたゲーブルトップ型紙容器のラミネート紙について、熱可塑性樹脂層のラミネート後、23℃50%の調湿条件で12ヶ月保管した後に、5cm角の紙片に裁断し、JISP8220−1:2012に記載の標準離解機を用いて、23℃の水で1分間離解を行った。1分経過後の離解紙片を回収し、その8割以上の紙片において、端部から2.0cm以上の領域に掛けて熱可塑性樹脂層と紙基材の剥離がみられれば◎、1.5cm以上2.0cm以下の剥離が見られれば○、1.0cm以上1.5cm以下の剥離がみられれば△、剥離が1.0cm以下であれば×と評価した。
【0087】
(抄紙汚れの発生程度)
実施例および比較例で得た紙基材を抄造した際の抄紙汚れの発生頻度を◎、○、△、×で評価した。得られた紙基材100gに相当する面積における、0.05mm以上のチリ個数を測定し、チリの数が0であれば◎、1〜2個であれば○、3〜5個であれば△、5個以上であれば×とした。
【0088】
【表1】
【0089】
表1の結果から分かるように、実施例1〜実施例8のラミネート紙は、原紙の平滑性、ラミネート紙の接着性、ラミネート紙の剥離性、抄紙汚れの発生程度において、いずれも優れていた。比較例1〜6のラミネート紙は、原紙の平滑性、ラミネート紙の接着性、ラミネート紙の剥離性、抄紙汚れの発生程度のいずれかの性能において劣っていた。
【要約】
【課題】紙基材と熱可塑性樹脂層との剥離が容易であり、原料をリサイクルすることが容易なラミネート紙と、当該ラミネート紙用紙基材、当該ラミネート紙を用いた紙容器および当該ラミネート紙の製造方法を提供する。
【解決手段】セルロースパルプを主成分とする紙基材と、当該紙基材の少なくとも一方の面上に積層された熱可塑性樹脂層とを有する紙容器用ラミネート紙であって、前記紙基材は、直鎖脂肪酸および直鎖アルコールの少なくとも1種を含有し、前記直鎖脂肪酸および前記直鎖アルコールの融点が80〜100℃であり、前記紙基材中の前記直鎖脂肪酸および前記直鎖アルコールの含有量の合計が100〜2500ppmであることを特徴とする紙容器用ラミネート紙である。また当該紙容器用ラミネート紙用紙基材、当該紙容器用ラミネート紙を用いた紙容器および当該紙容器用ラミネート紙の製造方法である。
【選択図】なし