特許第6702514号(P6702514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6702514
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】酸化膜形成装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20200525BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20200525BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20200525BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   H01L21/31 B
   C23C16/40
   C23C16/455
   C23C16/42
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-551404(P2019-551404)
(86)(22)【出願日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】JP2019034881
【審査請求日】2019年9月17日
(31)【優先権主張番号】特願2018-225083(P2018-225083)
(32)【優先日】2018年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】亀田 直人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 敏徳
(72)【発明者】
【氏名】花倉 満
【審査官】 鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−244142(JP,A)
【文献】 特開2009−088229(JP,A)
【文献】 特開2013−207005(JP,A)
【文献】 特開2016−108655(JP,A)
【文献】 特開平05−198512(JP,A)
【文献】 特開平06−002150(JP,A)
【文献】 特開2003−092290(JP,A)
【文献】 特開2003−092292(JP,A)
【文献】 特開2009−239082(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/114363(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/316
C23C 16/40
C23C 16/42
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成膜基体に酸化膜を形成する酸化膜形成装置であって、
前記被成膜基体が配置される処理炉と、
前記被成膜基体の処理面と対向して備えられるシャワーヘッドと、を備え、
前記シャワーヘッドは、
前記被成膜基体にオゾンガスを供給する第1スリットと、
前記被成膜基体に不飽和炭化水素ガス、前記酸化膜を構成する元素であるSiまたは金属元素を構成元素として含む原料ガス、または、前記不飽和炭化水素ガスと前記原料ガスを混合した混合ガスを供給する第2スリットと、を備え、
前記第1スリットと前記第2スリットは、スリットの短手方向に交互に並んで備えられ、
前記シャワーヘッドは、当該シャワーヘッドのガス供給面が前記被成膜基体の処理面に対して1mm以上、100mm以下離れた距離に向かい合って備えられ、
前記第1スリットおよび前記第2スリットのスリット幅は、0.1mm以上、10mm以下であって、互いに異なるものであり、
隣り合う第1スリットのスリット中心間の間隔および隣り合う第2スリットのスリット中心間の間隔は、1mm以上、100mm以下である、酸化膜形成装置。
【請求項2】
前記処理炉は、
前記オゾンガスが供給される第1ガス供給口と、
前記不飽和炭化水素ガス、前記原料ガスまたは前記混合ガスが供給される第2ガス供給口と、を備え、
前記第1ガス供給口と前記シャワーヘッドの間には、前記オゾンガスを拡散させる第1ガスバッファ空間が備えられ、
前記第2ガス供給口と前記シャワーヘッドの間には、前記不飽和炭化水素ガス、前記原料ガスまたは前記混合ガスを拡散させる第2ガスバッファ空間が備えられた、請求項1に記載の酸化膜形成装置。
【請求項3】
前記シャワーヘッドに備えられた前記第1スリットおよび前記第2スリットのうち最も外側のスリットは、前記第1スリットである、請求項1または請求項に記載の酸化膜形成装置。
【請求項4】
前記シャワーヘッドは、前記処理炉内部に着脱可能に備えられる板である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の酸化膜形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化膜を形成する元素を含む原料ガスを被成膜基体に供給して、被成膜基体に酸化膜を形成する酸化膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
包装用や電子部品、フレキシブルデバイス等に用いられる有機材料では、表面保護や機能性付加のために無機膜の成膜が行われる。また、各種電気デバイスの多くにおいてフレキシブル化が検討されており、これらは、例えば、有機フィルム上での形成が求められる。そこで、有機フィルム等低耐熱基板上で成膜可能な低温成膜技術が検討されている。
【0003】
成膜技術としては、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)や物理気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)等、微細電子デバイスの製造プロセスにおいて、各種絶縁膜や導電膜等の形成に利用されている。一般的に、成膜速度や被覆性の点で、化学気相成長の方が優れている。
【0004】
化学気相成長では、各種成膜元素を有する化合物を含む原料ガス(例えば、シラン(ケイ素化合物の総称)、TEOS(TetraEthyl OrthoSillicate)、TMA(TriMethyl Alminium)、フッ化タングステン(WF6))等に、各種反応ガスを加えて反応させ、反応生成物を被成膜基体に堆積させ、膜を形成する。この技術は、ガス間の反応を促進させ、さらに被成膜基体上での膜質向上のために、数百℃以上の高温下で実施される。つまり、化学気相成長法は、低温化が難しく、多くの場合、有機材料の耐熱温度を超えてしまう。
【0005】
例えば、高濃度のオゾンガスを化学気相成長の技術に適用した場合でも、高濃度のオゾンガスとTEOSガスを用いて、数百℃以上の高温下で基板上にSiO2膜が形成されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
低温で、化学気相成長を行い、良い膜質を得るためには、低温でも化学反応性が高い反応活物質の導入が必要となる。例えば、被成膜基体に堆積した被覆膜の酸化を100℃以下で行う手法(例えば、特許文献2)や、有機物の除去を目的としたアッシング技術において、室温での反応を行う手法がある(例えば、特許文献3、4)。これらの手法では、高濃度のオゾンと不飽和炭化水素の反応から生成される反応活性種を利用して、200℃以下の成膜プロセスを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−109984号公報
【特許文献2】特開2013−207005号公報
【特許文献3】特開2008−294170号公報
【特許文献4】特開2009−141028号公報
【特許文献5】特開2009−191311号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ニュースリリース 2018年“世界初 ピュアオゾンを使用し常温で酸化膜を作る技術を確立しました”、[オンライン]、2019年7月31日、株式会社明電舎ホームページ、インターネット、〈https://www.meidensha.co.jp/news/news_03/news_03_01/1227605_2469.html〉
【発明の概要】
【0009】
発明者らは、鋭意検討の結果、オゾンガスと不飽和炭化水素の反応から生成される反応活性種と、CVD原料ガスの反応により、被成膜基体上に酸化膜を形成する方法を発明した(例えば、非特許文献1)。
【0010】
この方法では、オゾンガス、不飽和炭化水素および原料ガスが混合された付近で、CVDによる成膜が行われる。よって、被成膜基体上に形成された酸化膜の膜厚に偏りが生じるおそれがある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、オゾンガスと、不飽和炭化水素ガスと、原料ガスの反応により被成膜基体上に酸化膜を形成する際に、酸化膜の膜厚分布の偏りを低減する技術を提供することを目的としている。
【0012】
上記目的を達成する本発明の酸化膜形成装置の一態様は、被成膜基体に酸化膜を形成する酸化膜形成装置であって、前記被成膜基体が配置される処理炉と、前記被成膜基体の処理面と対向して備えられるシャワーヘッドと、を備え、前記シャワーヘッドは、前記被成膜基体にオゾンガスを供給する第1孔と、前記被成膜基体に不飽和炭化水素ガス、前記酸化膜を構成する元素であるSiまたは金属元素を構成元素として含む原料ガス、または、前記不飽和炭化水素ガスと前記原料ガスを混合した混合ガスを供給する第2孔と、を備える。そして、前記シャワーヘッドは、当該シャワーヘッドのガス供給面が前記被成膜基体の処理面に対して1mm以上、100mm以下離れた距離に向かい合って備えられ、前記第1孔および前記第2孔の直径は、0.1mm以上、10mm以下であり、隣り合う第1孔の間隔および隣り合う第2孔の間隔は、1mm以上、100mm以下である。
【0013】
また、前記処理炉は、前記オゾンガスが供給される第1ガス供給口と、前記不飽和炭化水素ガス、前記原料ガスまたは前記混合ガスが供給される第2ガス供給口と、を備え、前記第1ガス供給口と前記シャワーヘッドの間には、前記オゾンガスを拡散させる第1ガスバッファ空間が備えられ、前記第2ガス供給口と前記シャワーヘッドの間には、前記不飽和炭化水素ガス、前記原料ガスまたは前記混合ガスを拡散させる第2ガスバッファ空間が備えられたものでも良い。
【0014】
また、前記第1孔は、前記処理面に沿って互いに直交する2方向において等間隔で並んで矩形格子状に配置され、前記第2孔は、前記処理面に沿って前記第1孔から偏倚した位置であって、前記2方向にそれぞれ平行な方向において等間隔で並んで矩形格子状に配置されたものでも良い。
【0015】
また、前記シャワーヘッドの外周部に沿って、前記第1孔が形成されたものでも良い。
【0016】
また、前記シャワーヘッドは、前記処理炉内部に着脱可能に備えられる板であっても良い。
【0017】
酸化膜形成装置の他の態様は、被成膜基体に酸化膜を形成する酸化膜形成装置であって、前記被成膜基体が配置される処理炉と、前記被成膜基体の処理面と対向して備えられるシャワーヘッドと、を備え、前記シャワーヘッドは、前記被成膜基体にオゾンガスを供給する第1スリットと、前記被成膜基体に不飽和炭化水素ガス、前記酸化膜を構成する元素であるSiまたは金属元素を構成元素として含む原料ガス、または、前記不飽和炭化水素ガスと前記原料ガスを混合した混合ガスを供給する第2スリットと、を備え、前記第1スリットと前記第2スリットは、スリットの短手方向に交互に並んで備えられる。そして、前記シャワーヘッドは、当該シャワーヘッドのガス供給面が前記被成膜基体の処理面に対して1mm以上、100mm以下離れた距離に向かい合って備えられ、前記第1スリットおよび前記第2スリットのスリット幅は、0.1mm以上、10mm以下であり、隣り合う第1スリットのスリット中心間の間隔および隣り合う第2スリットのスリット中心間の間隔は、1mm以上、100mm以下である。
【0018】
以上の発明によれば、オゾンガスと、不飽和炭化水素ガスと、原料ガスの反応により被成膜基体上に酸化膜を形成する際に、酸化膜の膜厚分布の偏りが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る酸化膜形成装置の概略図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る酸化膜形成装置の要部断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る酸化膜形成装置に備えられるシャワーヘッドの平面図である。
図4】(a)SiO2膜の面方向の膜厚計測結果を示す図、(b)SiO2膜のA−A断面における膜厚計測結果を示す図である。
図5】シャワーヘッドを用いずに形成したSiO2膜の膜厚計測結果を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る酸化膜形成装置に備えられるシャワーヘッドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る酸化膜形成装置について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態の説明では、オゾン濃度が100vol%のオゾンガス、不飽和炭化水素ガスとしてエチレンガスを用い、原料ガスとしてTEOSガス、キャリアガスとして窒素ガスを用いた例を示すが、濃度の異なるオゾンガスや、不飽和炭化水素ガス、原料ガスまたはキャリアガスとして、後に詳述する他のガスを用いた場合も同様に酸化膜を形成することができる。
【0021】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る酸化膜形成装置1は、オゾンガス発生装置2(または、高濃度のオゾンガスが充填されたボンベ)、エチレンガスボンベ3、TEOSガスボンベ4、窒素ガスボンベ5および成膜処理を行う処理炉6(チャンバ)を備える。
【0022】
オゾンガス発生装置2は、処理炉6にオゾンガスを供給する。オゾンガス発生装置2は、配管2aを介して処理炉6に接続される。配管2aには、流量可変のバルブV1が設けられ、オゾンガスの流量制御が個別に行われる。配管2aの流量は、例えば、バルブV1の1次圧と2次圧の差圧および配管2aの断面積に基づいて算出される。このようにオゾンガスの流量計測では、圧力差で流量を計測するようなシステムを備えた装置を用いることが好ましい。これは、熱を加える方式の計測装置を用いると、オゾンの分解が起きるためである。
【0023】
エチレンガスボンベ3は、処理炉6にエチレンガスを供給する。エチレンガスボンベ3は、配管3aを介して処理炉6に接続される。配管3aには、流量可変のバルブV2が設けられ、エチレンガスの流量制御が個別に行われる。図示していないが、配管3aには、例えば、マスフローメータ等のエチレンガスの流量を計測する計測装置が備えられる。
【0024】
TEOSガスボンベ4は、処理炉6にTEOSガスを供給する。TEOSガスボンベ4は、配管4aおよび配管3aを介して処理炉6に接続される。配管4aには、流量可変のバルブV3が設けられ、TEOSガスの流量制御が個別に行われる。TEOSガスの流量は、例えば、バルブV3の1次圧と2次圧の差圧および配管4aの断面積に基づいて算出される。また、配管4aには、気化室7が備えられる。例えば、気化室7では、TEOSが70℃以上に加熱され、常温では液体であるTEOSが気化室7で気化されてから処理炉6に供給される。
【0025】
窒素ガスボンベ5は、TEOSガスを処理炉6に送るキャリアガスとして窒素ガスを供給する。キャリアガスとしては、窒素の他に、例えば、アルゴン等の不活性ガスが用いられる。窒素ガスボンベ5は、配管5a、配管4aおよび配管3aを介して処理炉6に接続される。配管5aには、流量可変のバルブV4が設けられ、窒素ガスの流量制御が個別に行われる。窒素ガスボンベ5から供される窒素ガス(および、他のキャリアガス)は、処理炉6内のガスを攪拌またはパージすることもできる。
【0026】
処理炉6には、酸化膜が形成される被成膜基体8が配置される。処理炉6において、化学気相成長法により被成膜基体8上に酸化膜(この実施例では、SiO2膜)が形成される。処理炉6が、コールドウォール炉であると、処理炉6壁面でのオゾン等の分解が抑制されるので好ましい。処理炉6には、排気用配管9が接続される。排気用配管9には、真空ポンプ10および排気後の残留ガスを分解するための除外筒11が備えられ、この除外筒11を介して処理炉6内のガスが大気中に放出される。排気用配管9には、流量可変のバルブV5が設けられ、このバルブV5により成膜プロセス中の処理炉6内の圧力が制御される。
【0027】
図2に処理炉6の詳細を示す。処理炉6は、被成膜基体8が配置される炉筐体6aと、炉蓋6bと、混合ガス拡散部6cを備える。炉蓋6bの炉筐体6a内部側には、遮蔽板12が設けられる。そして、遮蔽板12を介して炉蓋6bに混合ガス拡散部6cが設けられる。また、混合ガス拡散部6cの遮蔽板12が設けられた面と反対側の面には、シャワーヘッド板13が設けられる。処理炉6を構成する各部品は、例えば、処理炉6内の圧力を1Pa以下に到達可能な真空仕様で固定される構造を有する。
【0028】
遮蔽板12には、オゾンガスが通過する孔12aと、混合ガスが通過する孔12bが形成される。また、オゾンガスが通過する孔12aの混合ガス拡散部6cが設けられた側には、オゾンガスが通過するオゾンガス通過部14が備えられる。オゾンガス通過部14は、例えば、筒状の部材である。遮蔽板12の孔12aを通過したオゾンガスがオゾンガス通過部14を通ることで、混合ガス拡散部6c内においてオゾンガスが他のガスと混ざりあうことなく炉筐体6a内に供される。
【0029】
炉筐体6aは、例えば、アルミニウムまたはSUS材(ステンレス鋼)により形成される(炉蓋6b、混合ガス拡散部6c、遮蔽板12も同様である)。炉筐体6aには、試料台15(加熱サセプタ)が備えられ、試料台15の上に被成膜基体8が載置される。試料台15は、例えば、アルミニウムまたはSUS材の他、石英ガラスやSiC材により形成される。試料台15を加熱するヒータ(図示せず)は、例えば、半導体製造技術において加熱手段として用いられている赤外線を発する光源が適用される。試料台15を加熱することで、被成膜基体8が所定の温度に加熱される。加熱手段は、例えば、200℃程度まで加熱可能であることが好ましい。
【0030】
炉蓋6bは、炉筐体6aの上部に形成された開口16を塞ぐように設けられる。炉蓋6bには、オゾンガスバッファ空間17および混合ガス通過部18が形成される。
【0031】
オゾンガスバッファ空間17は、炉筐体6a側に開口を有し、この開口を覆うように遮蔽板12が設けられる。オゾンガスバッファ空間17の上部には、配管2aが接続されるオゾンガス導入部19が備えられ、オゾンガス導入部19を介して配管2aからオゾンガスバッファ空間17にオゾンガスが供給される。また、オゾンガスバッファ空間17には、ガス流拡散板20が備えられる。
【0032】
混合ガス通過部18は、炉蓋6bを貫通して形成される。混合ガス通過部18の炉筐体6aの外部側端部には、配管3aが接続される。また、混合ガス通過部18の炉筐体6aの内部側端部は、遮蔽板12に形成された孔12bを介して混合ガス拡散部6cの内部に連通している。したがって、エチレンガス、TEOSガスおよび窒素ガスが混合された混合ガスは、混合ガス通過部18を通って配管3aから混合ガス拡散部6c内部に供給される。混合ガス通過部18は、オゾンガスバッファ空間17の周囲に少なくとも1つ設けられる。なお、混合ガス通過部18を、オゾンガスバッファ空間17を囲むように等間隔に備えると、混合ガスの流量の偏りが低減される。また、混合ガス通過部18の流路断面積は、例えば、混合ガス通過部18に接続される配管3aの流路断面積と同じである。
【0033】
ガス流拡散板20は、例えば、円形の板状であり、オゾンガス導入部19の開口面と向かい合うように配置される。ガス流拡散板20は、フック等によりオゾンガスバッファ空間17の天井部に備えられる。ガス流拡散板20の大きさを、オゾンガス導入部19の開口面より大きい面積とすることで、オゾンガス導入部19から流入したオゾンガスが直接遮蔽板12に吹き付けられなく好ましい。また、ガス流拡散板20が大きくなると、ガス流拡散板20の近傍を通過するオゾンガスの流通抵抗が増加するので、ガス流拡散板20の直径は、例えば、オゾンガスバッファ空間17の横断面積の1/2程度が好ましい。また、ガス流拡散板20は、オゾンガスバッファ空間17の天井部と遮蔽板12の中間または中間よりもオゾンガス導入部19側に備えられる。ガス流拡散板20の厚さは、薄いほど好ましい。
【0034】
混合ガス拡散部6cは、遮蔽板12と接する端部に開口を有する箱体である。混合ガス拡散部6cの内壁面と遮蔽板12により、混合ガスバッファ空間21が形成される。混合ガス拡散部6cのシャワーヘッド板13と接する端面には、オゾンガスが通過する孔21aと、混合ガスが通過する孔21bが形成される。孔21aには、オゾンガス通過部14が備えられる。
【0035】
シャワーヘッド板13は、被成膜基体8の処理面と対向して備えられる。シャワーヘッド板13には、オゾンガスが通過する孔13aと、混合ガスが通過する孔13bが形成される。孔13a、13bは、それぞれ周期的(矩形格子、斜方格子、平行体格子など平面格子状または同心円状)に配置される。シャワーヘッド板13は、例えば、アルミニウムまたはSUS材の他、石英ガラスやSiC材により形成される。シャワーヘッド板13の端面(ガス供給面)と被成膜基体8の処理面との間隔Lを、例えば、1mm〜100mm、より好ましくは5mm〜30mmとすることで、被成膜基体8上に形成されるCVD膜(実施形態では、SiO2膜)の膜厚の偏りが少なくなり好ましい。
【0036】
図3に示すように、シャワーヘッド板13の孔13a、13bは、例えば、正方格子状に配置される。図3の場合、孔13aは、被成膜基体8の処理面に沿って互いに直交する2方向(図3では、図示上下左右方向に描写された2つのd1方向)において等間隔で並んで矩形格子状に配置されている。そして、孔13bは、被成膜基体8の処理面に沿って孔13aから偏倚した位置(図3では、孔13aの配置間隔の半分ずつ偏倚(孔13aに係る矩形格子の面心側に偏倚)した位置)であって、前記2方向にそれぞれ平行な方向(図3では、図示上下左右方向に描写された2つのd2方向)において等間隔で並んで矩形格子状に配置されている。これにより、シャワーヘッド板13においては、孔13a、13bの両者のうち一方の矩形格子の面心側位置に、他方が位置している構成(例えば、孔13aに係る矩形格子の面心側位置に、孔13bが位置している構成)となる。
【0037】
シャワーヘッド板13の孔13a、13bの配置態様は、被成膜基体8の形状によって異なる。例えば、被成膜基体8が円形の場合、異なる径を有する円周上であって交互に孔13a、13bが形成される。孔13a、13bの格子間隔d1、d2は、例えば、1mm〜100mmが好ましく、5mm〜30mmがより好ましい。また、孔13aと孔13bの間隔d3は、例えば、0.7mm〜71mmが好ましく、3.5mm〜22mmがより好ましい。間隔d1〜d3は、孔13a、13bの中心間の間隔である。このように、シャワーヘッド板13の孔13a、13bの間隔寸法を適切に決めることにより、被成膜基体8上に偏りの少ないSiO2膜を形成することができる。
【0038】
また、孔13a、13bの穴径(直径φ)は、例えば、0.1mm〜10mmが好ましく、0.5mm〜2mmがより好ましい。孔13a、13bの穴径は、オゾンガスバッファ空間17と混合ガスバッファ空間21の形状に応じて定められる。例えば、オゾンガスバッファ空間17や混合ガスバッファ空間21サイズを大きく取れない場合は、ガス流速・圧力が不均一となり易いので、孔13a、13bの穴径を小さくして圧損を高める。これにより、オゾンガスバッファ空間17や混合ガスバッファ空間21のガス分布の均一性が向上する。
【0039】
なお、シャワーヘッド板13の外周に沿って、オゾンガスが供される孔13aを形成し、その内側に、孔13a、13bを形成してもよい。すなわち、最も外側に、オゾンガスが供される孔13aを設けることで、炉筐体6aの炉壁に吸着しやすい未反応物がオゾンに晒される。その結果、未反応物とオゾンの反応が促進され、炉筐体6aの炉壁や排気路の内壁などへの未反応物の付着が抑制される。
【0040】
図2に矢印で示すように、オゾンガスは、配管2aを通過してオゾンガス導入部19に供給される。オゾンガス導入部19に導入されたオゾンガスは、オゾンガスバッファ空間17内に拡散される。オゾンガスバッファ空間17の大きさは、遮蔽板12の各孔12aや各オゾンガス通過部14を通過するオゾンガスのガス流量や圧力が同じとなるよう設計される。オゾンガスバッファ空間17の容積は、大きいほど好ましく、例えば、シャワーヘッド板13のガス供給面と被成膜基体8の処理面の間に形成される空間の1/2以上とすることで、オゾンガスのガス流量や圧力の分布を均一にすることができる。また、オゾンガスバッファ空間17内にガス流拡散板20を設けることで、遮蔽板12の各孔12aや各オゾンガス通過部14を通過するオゾンガスの流速および圧力分布がより均一化される。シャワーヘッド板13に到達したオゾンガスは、孔13aを通って被成膜基体8に吹き付けられる。
【0041】
一方、混合ガス(エチレンガス、TEOSガスおよび窒素ガスの混合ガス)は、配管3aから各混合ガス通過部18へ導入される。混合ガス通過部18に導入された混合ガスは、混合ガスバッファ空間21に拡散される。混合ガスバッファ空間21の大きさは、混合ガス拡散部6cの各孔21bおよびシャワーヘッド板13の各孔13bを通過する混合ガスのガス流および圧力が均一となるように設計される。混合ガスバッファ空間21の容積は、大きいほど好ましく、例えば、シャワーヘッド板13のガス供給面と被成膜基体8の処理面の間に形成される空間の1/2以上とすることで、混合ガスのガス流量や圧力の分布を均一にすることができる。
【0042】
シャワーヘッド板13から噴出されたオゾンガスおよび混合ガスは、シャワーヘッド板13と被成膜基体8の間の空間で混じり合い化学反応を起こしながら、被成膜基体8に到達する。そして、被成膜基体8上に供されたガスおよび反応後のガスは、被成膜基体8の外周方向に流れ、炉筐体6aの側壁部に備えられた複数の排気口22を通って、処理炉6の外部に排気される。
【0043】
ここで、本発明の実施形態に係る酸化膜形成装置1による酸化膜形成方法について、詳細に説明する。
【0044】
被成膜基体8が配置された処理炉6に、オゾンガス、各種成膜元素を含む原料ガス、不飽和炭化水素ガスが供給され、化学気相成長法(CVD法)により、被成膜基体8上に酸化膜が形成される。
【0045】
被成膜基体8は、基板またはフィルム等である。特に、オゾンと不飽和炭化水素を用いた酸化膜形成方法では、低温で酸化膜を形成することが可能であるので、Si基板等の比較的耐熱性が高い基板だけでなく、耐熱性が比較的低い合成樹脂で形成された基板またはフィルムに酸化膜を形成することができる。基板またはフィルムを形成する合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アラミド樹脂、オレフィン樹脂、ポリプロピレン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等がある。その他、PE(ポリエチレン)、POM(ポリオキシメチレン、または、アセタール樹脂)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)、PA(ポリアミド)、PFA(4フッ化エチレン、パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PVD(ポリ二塩化ビニル)等が用いられる。
【0046】
オゾンガスは、オゾン濃度が高いほど好ましい。例えば、オゾンガスのオゾン濃度(体積%濃度)は、20〜100vol%が好ましく、80〜100vol%がより好ましい。これは、オゾン濃度が100vol%に近いほど、オゾンから生成される反応活性種(OH)をより高密度で被成膜基体表面に到達させることができるためである。この反応活性種(OH)は、化学気相成長に必要な反応に加え、膜中不純物のカーボン(C)と反応し、このカーボン(C)をガスとして除去することができる。したがって、より多くの反応活性種(OH)を被成膜基体表面に供給することで、不純物の少ない酸化膜の形成が可能となる。また、オゾン濃度が高いほど(すなわち、酸素濃度が低いほど)、オゾンが分離して発生する原子状酸素(O)の寿命が長くなる傾向があることからも、高濃度のオゾンガスを用いることが好ましい。すなわち、オゾン濃度を高くすることで、酸素濃度が低くなり、原子状酸素(O)が酸素分子との衝突によって失活することが抑制される。また、オゾン濃度を高くすることで、酸化膜形成プロセスのプロセス圧力を減圧にできるため、ガス流制御性・ガス流向上の観点からも、高濃度のオゾンガスを用いることが好ましい。
【0047】
オゾンガスの流量は、例えば、0.2sccm以上が好ましく、0.2〜1000sccmがより好ましい。sccmは、1atm(1013hPa)、25℃におけるccm(cm3/min)である。また、オゾンガスの流量(供給量)は、不飽和炭化水素ガスの流量(供給量)の2倍以上が好ましい。不飽和炭化水素ガスがOH基へ分解する分解ステップが複数ステップから成るため、オゾン分子:不飽和炭化水素分子=1:1で供給した場合に、反応に必要なオゾン分子が不足し、OH基が十分な量得られないおそれがあるためである。なお、不飽和炭化水素ガスと原料ガスを供給する際には、オゾンガスの流量を不飽和炭化水素ガスと原料ガスの合計流量の2倍以上とすることで、良好な成膜レートで酸化膜を形成することができる。
【0048】
高濃度のオゾンガスは、オゾン含有ガスから蒸気圧の差に基づいてオゾンのみを液化分離した後、再び液化したオゾンを気化させて得ることができる。高濃度のオゾンガスを得るための装置は、例えば、特開2001−304756号公報や特開2003−20209号公報の特許文献に開示されている。これらの高濃度のオゾンガスを生成する装置は、オゾンと他のガス(例えば、酸素)の蒸気圧の差に基づきオゾンのみを液化分離して高濃度のオゾン(オゾン濃度≒100vol%)を生成している。特に、オゾンのみを液化および気化させるチャンバを複数備えると、これらのチャンバを個別に温度制御することにより、連続的に高濃度のオゾンガスを供給することができる。なお、高濃度のオゾンガスを生成する市販の装置として、例えば、明電舎製のピュアオゾンジェネレータ(MPOG−HM1A1)がある。
【0049】
原料ガスは、酸化膜を形成する元素(例えば、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、インジウム(In)、錫(Sn)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、鉛(Pb)等、以下これらの元素を金属または金属元素という)を構成元素として含む原料ガスが用いられる。例えば、Si−O結合若しくはSi−C結合を有する有機シリコンまたは金属元素−酸素結合若しくは金属元素−炭素結合を有する有機金属を含有する原料ガスや、金属ハロゲン化物や有機金属錯体またはケイ素や金属の水素化物等の原料ガスが用いられる。具体的には、原料ガスとして、シラン(ケイ化水素の総称)、TEOS(TetraEthyl OrthoSillicate)、TMS(TriMthoxySilane)、TES(TriEthoxySilane)、TMA(TriMethyl Alminium)、TEMAZ(Tetrakis(ethylmethylamino)zirconium)、フッ化タングステン(WF6)等が用いられる。また、金属元素1種類だけでなく複数種類の金属元素を含む異種複核錯体(例えば、特開2016−210742等に記載の錯体)を原料ガスとして用いることもできる。原料ガスの流量は、例えば、0.1sccm以上が好ましく、0.1〜500sccmがより好ましい。
【0050】
不飽和炭化水素は、エチレンに例示される2重結合を有する炭化水素(アルケン)やアセチレンに例示される3重結合を有する炭化水素(アルキン)が用いられる。不飽和炭化水素としては、エチレンやアセチレンの他に、ブチレン等の低分子量の不飽和炭化水素(例えば、炭素数nが4以下の不飽和炭化水素)が好ましく用いられる。不飽和炭化水素ガスの流量は、例えば、0.1sccm以上が好ましく、0.1〜500sccmがより好ましい。
【0051】
図4に、酸化膜形成装置1で成膜されたSiO2膜の膜厚分布を示す。酸化膜形成装置1は、φ75mmの被成膜基体8の成膜が可能である装置を用いた。この例では、被成膜基体8としてSi基板を用いた。また、SiO2膜の形成にあたり、オゾンガス100sccm(100vol%濃度)、エチレンガス64sccm、TEOSガス1sccm、窒素ガス15sccmの条件で、処理炉6の炉内圧力30Pa程度で3分成膜を行った。
【0052】
図4(a)に示すように、図中実線で示した範囲(基板中心からφ60mm)で膜厚分布が5%以内の均一度が実現できた。すなわち、図4(b)に示すように、基板中心から30mmで均一膜厚が実現し、その周辺では、基板中心から遠くなるに従い膜厚が減少した。これは、基板の周辺部では、ガス到達までにシャワーヘッド板13から噴き出したガスの到達に時間がかかるため、到達前にCVD反応が一部終了してしまっているためであると考えられる。
【0053】
図5は、シャワーヘッド板13を用いずに、室温(25℃)で化学気相成長法により被成膜基体8(具体的には、8インチSiウエハ)上に酸化膜を形成した結果(SiO2の膜厚分布(nm))を示す。図5の成膜範囲は、図4中に実線で囲んだ範囲に相当する。図中矢印Aは、オゾンガスの供給位置を示し、点線で囲った範囲Bは、エチレンガスおよびTEOSガスの供給位置を示す。エチレンガスおよびTEOSガスは、被成膜基体8の処理面の上方から処理面に向かうように供給した。また、矢印Cは、排気口22の位置を示す。酸化膜の形成は、オゾンガスの流量を100sccm、エチレンガスの流量を64sccm、TEOSガスの流量を0.3sccmとしたガスの流量条件で、処理炉6の処理圧50Pa程度で、3分間行った。酸化膜の膜厚の最大値は、138nmであり、成膜速度の最大値は、46nm/minであった。
【0054】
図5に示すように、シャワーヘッド板13を用いない場合でも、高い成膜速度で酸化膜(SiO2膜)を形成することができた。しかし、例えば、被成膜基体8の中央部のようなオゾンガスと混合ガスがぶつかる箇所での成膜が多く行われ、オゾンガスの下流側の端部では、酸化膜が中央部の半分ほどしか形成されなかった。これは、酸化膜の形成反応によってオゾンが消費されることにより、成膜処理が進行しなかったためと考えられる。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態に係る酸化膜形成装置について、図6を参照して詳細に説明する。本発明の第2実施形態に係る酸化膜形成装置は、第1実施形態の酸化膜形成装置1とシャワーヘッド板23の構造が異なる。よって、第1実施形態の酸化膜形成装置1と同様の構成については、同じ符号を付し、異なる部分について詳細に説明する。本発明の第2実施形態に係る酸化膜形成装置は、被成膜基体8にオゾンガスや混合ガスを供給するシャワーヘッド板23が長方形の噴出し穴(スリット構造)を有する。
【0056】
本発明の第2実施形態に係る酸化膜形成装置は、処理炉6を備える。処理炉6は、炉筐体6aと、炉蓋6bと、混合ガス拡散部6cを備える。炉蓋6bの炉筐体6a内部側には、遮蔽板12が設けられ、この遮蔽板12を介して炉蓋6bに混合ガス拡散部6cが設けられる。また、混合ガス拡散部6cの遮蔽板12が設けられた面と反対側の面には、シャワーヘッド板23が設けられる。
【0057】
シャワーヘッド板23は、被成膜基体8の処理面と対向して備えられる。シャワーヘッド板23は、例えば、アルミニウムまたはSUS材の他、石英ガラスやSiC材により形成される。シャワーヘッド板23の端面(ガス供給面)と被成膜基体8の処理面との間隔Lは、例えば、1mm〜100mm、より好ましくは5mm〜30mmとすることで、被成膜基体8上に形成されるCVD膜(実施形態では、SiO2膜)の膜厚の偏りが少なくなり好ましい。
【0058】
図6に示すように、シャワーヘッド板23には、オゾンガスが通過するスリット23aと、混合ガス(エチレンガス、TEOSガスおよび窒素ガスが混合された混合ガス)が通過するスリット23bが形成される。スリット23a、23bは、各スリット23a、23bの短手方向に隣接して交互に配置される。スリット23aとスリット23aの間隔d4およびスリット23bとスリット23bの間隔d5は、1mm〜100mmが好ましく、5mm〜50mmがより好ましい。また、スリット23aとスリット23bの間隔d6は、0.5mm〜50mmが好ましく、2.5mm〜25mmがより好ましい。それぞれの間隔d4〜d6は、スリットの中心間の間隔である。
【0059】
また、スリット23a、23bのスリット幅(すなわち、スリット23a、23bの開口部の短手方向の幅)は、0.1mm〜10mmが好ましく、0.5mm〜2mmがより好ましい。スリット23a、23bのスリット幅は、オゾンガスバッファ空間17や混合ガスバッファ空間21の形状で決まる。つまり、オゾンガスバッファ空間17や混合ガスバッファ空間21の空間サイズを大きく取れなく、ガス流速・圧力が不均一である場合、スリット23a(または、スリット23b)のスリット幅を小さくして圧損を高めることで、オゾンガスバッファ空間17や混合ガスバッファ空間21のガス分布の均一性が改善される。スリット23a、23bのスリット長は、被成膜基体8のサイズにより適宜変更される。また、最も外側(図6では最上段と最下段)スリットに、オゾンガスが供給されるスリット23aを設けることで、オゾンガスと吸着性のある未反応物との反応が促進され、処理炉6の内壁や排気路の内壁への付着物が低減される。
【0060】
なお、シャワーヘッド板23にスリット23a、23bを形成した場合、オゾンガスバッファ空間17と炉筐体6a内を連通するオゾンガス通過部は、スリット23aの断面を有する直方体上の流路となる。したがって、混合ガスバッファ空間21を流れる混合ガスは、このオゾンガス通過部を迂回するように流れることとなる。そして、炉蓋6bに形成される混合ガス通過部18は、スリット23a、23bの並んだ方向であって、スリット23a、23bを挟むように備えられる。例えば、図6中の上下に位置するように混合ガス通過部18が炉蓋6bに備えられる。
【0061】
以上のような、本発明の第1、第2実施形態に係る酸化膜形成装置によれば、シャワーヘッド構造を備え、シャワーヘッド板13、23のガス供給面と被成膜基体8の処理面の間の距離と、シャワーヘッド板13、23に形成される孔13a、13bまたはスリット23a、23bを、所定の値とすることで、被成膜基体8上に形成される酸化膜の膜厚分布をより均一にすることができる。つまり、被処理基体8のシャワーヘッド板13、23の中央部と向かい合う部分を中心として均一な酸化膜を形成することができるので、被成膜基体8の狙った位置に均一な酸化膜を形成することができる。その結果、高い成膜速度で酸化膜を形成できるだけでなく、大面積基板に均一な酸化膜を形成することができる。したがって、本発明の第1、第2実施形態に係る酸化膜形成装置は、直径6cmのような小さな被成膜基体8だけでなく、直径10cm以上、さらには直径30cm以上の大面積を有する被成膜基体8上により均一な膜厚分布を有する酸化膜を形成する装置として好適である。
【0062】
つまり、オゾンと不飽和炭化水素の反応により形成される活性種は、寿命が短いので、被成膜基体8の表面上で効率よく原料ガスと反応させる必要がある。本発明の第1、第2実施形態に係る酸化膜形成装置では、シャワーヘッド板13、23を通過後にオゾンガスと混合ガスを混合させ活性種を生じさせている。さらに、被成膜基体8の処理面に、この活性種と原料ガスを均等に供給することで、被成膜基体8上により均一な酸化膜を形成することができる。
【0063】
また、成膜工程において、シャワーヘッド板13、23に吸着物が発生する。そこで、シャワーヘッド板13、23を処理炉6内に着脱可能に備えることで、定期的にシャワーヘッド板13、23を取り外して交換または洗浄することができる。
【0064】
また、本発明の第1、第2実施形態に係る酸化膜形成装置では、200℃以下の低温で被成膜基体8上に酸化膜を形成することができる。その結果、耐熱温度が低い材料(例えば、合成樹脂等の有機材料)により形成された被成膜基体8(基板やフィルム)上に酸化膜を形成することができる。
【0065】
また、プラズマを用いることなく、被成膜基体8上に酸化膜を形成することができるので、被成膜基体8の損傷が抑制される。特に、電子デバイスや有機フィルム上に酸化膜(例えば、SiO2膜)を形成する前に、予め薄膜(例えば、電子デバイスを構成する下地膜(主に有機薄膜)等)が形成されている場合であっても、この薄膜に絶縁破壊等のダメージを与えることなく、電子デバイスや有機フィルム上に酸化膜を形成することができる。
【0066】
また、本発明の第1、第2実施形態に酸化膜形成装置では、200℃以下の処理条件で、高い成膜速度で酸化膜を形成することができる。また、実施例で形成された酸化膜は、5MV/cmの耐圧性を備えており、本発明の実施形態に係る酸化膜形成方法により、耐圧性に優れ、ガスバリア性に優れた酸化膜を形成することができる。
【0067】
従来、ガスバリア性を求められる材料に対する成膜の実施温度は、80℃以下である。したがって、本発明の実施形態に係る酸化膜形成方法は、ガスバリア性を求められる材料に対する酸化膜形成に好適に適用することができる。
【0068】
以上、具体的な実施形態を示して本発明の酸化膜形成装置について説明したが、本発明の酸化膜形成装置は、実施形態に限定されるものではなく、その特徴を損なわない範囲で適宜設計変更が可能であり、設計変更されたものも、本発明の技術的範囲に属する。
【0069】
例えば、実施形態の説明では、炉蓋の中央部にオゾンガスを供給しているが、炉蓋の中央部に混合ガスを供給する態様とすることもできる。また、混合ガスは、処理炉に個別に供給し、処理炉内で混合する態様とすることもできる。さらには、シャワーヘッド板に、オゾンガス、不飽和炭化水素ガス、原料ガスが噴き出す孔をそれぞれ形成する態様とすることもできる。この場合、それぞれのガス供給配管とシャワーヘッド板の間に実施例と同様のガスバッファ空間を備えてもよい。また、シャワーヘッド板に、各ガスが噴き出す孔をそれぞれ設けた場合、シャワーヘッドと被成膜基体間の距離、オゾンガスが噴き出す孔と不飽和炭化水素ガスや原料ガスが噴き出す孔の距離、および各ガスの噴き出す穴径は、実施例と同じ範囲とすることで、被成膜基体上に均一な酸化膜を形成することができる。
【要約】
被成膜基体(8)が配置される炉筐体(6a)と炉蓋(6b)を備える酸化膜形成装置(1)である。炉蓋(6b)の内側に、遮蔽板(12)を介して混合ガス拡散部(6c)を設ける。混合ガス拡散部(6c)に混合ガスバッファ空間(21)を形成する。混合ガス拡散部(6c)にシャワーヘッド板(13)を設ける。炉蓋(6b)にオゾンガスバッファ空間(17)を形成し、オゾンガスバッファ空間(17)にガス流拡散板(20)を備える。シャワーヘッド板(13)に、オゾンガスが通過する孔(13a)と、混合ガスが通過する孔(13b)を形成する。孔(13a、13b)をそれぞれ矩形格子状に配置する。隣り合う孔13a(および隣り合う孔13b)の距離は1mm以上、100mm以下であり、孔(13a、13b)の穴径は0.1mm以上、10mm以下である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6