特許第6702520号(P6702520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋紡株式会社の特許一覧

特許6702520セラミックグリーンシート製造用離型フィルム
<>
  • 特許6702520-セラミックグリーンシート製造用離型フィルム 図000003
  • 特許6702520-セラミックグリーンシート製造用離型フィルム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6702520
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】セラミックグリーンシート製造用離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20200525BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20200525BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   B28B1/30 101
   B32B27/00 L
   B32B27/36
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-504251(P2020-504251)
(86)(22)【出願日】2019年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2019037457
【審査請求日】2020年2月7日
(31)【優先権主張番号】特願2018-181783(P2018-181783)
(32)【優先日】2018年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松尾 有加
(72)【発明者】
【氏名】寺田 明紀
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/145864(WO,A1)
【文献】 特開2002−301790(JP,A)
【文献】 特開平11−300895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30
B32B 27/00
B32B 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルムであって、前記離型層は、エネルギー線硬化型化合物(I)、ポリエステル樹脂(II)、及び離型成分(III)を少なくとも含む塗膜が硬化されてなり、前記ポリエステル樹脂(II)が5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分由来のエステル構成単位を含有するセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項2】
離型層が、エネルギー線硬化型化合物(I)を海成分とし、ポリエステル樹脂(II)を島成分とする相分離構造を有し、表面凹凸を有する請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項3】
離型層が実質的に無機粒子を含有しない請求項1又は2に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項4】
前記エネルギー線硬化型化合物(I)が、1分子内に3以上のアクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項5】
離型層の厚みが、0.2〜3.5μmである請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項6】
離型層の領域表面平均粗さ(Sa)が、5〜40nmである請求項1〜5のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項7】
離型層表面の最大突起高さ(Rp)が、60nm以下である請求項1〜6のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いてセラミックグリーンシートを成型するセラミックグリーンシートの製造方法であって、成型されたセラミックグリーンシートが0.2μm〜1.0μmの厚みであるセラミックグリーンシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超薄層のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムに関するものであり、詳しくは超薄層のセラミックグリーンシート製造時にピンホール及び厚みムラや剥離不良による工程不良の発生を抑制したものを製造し得る、超薄層のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来ポリエステルフィルムを基材とし、その上に離型層を積層した離型フィルムは、積層セラミックコンデンサ(以下MLCCとする)、セラミック基板等のセラミックグリーンシート成型用に使用されている。近年、積層セラミックコンデンサの小型化・大容量化に伴い、セラミックグリーンシートの厚みも薄膜化する傾向にある。セラミックグリーンシートは、離型フィルムに、チタン酸バリウムなどのセラミック成分とバインダー樹脂を含有したスラリーを塗工し乾燥することで成型される。成型したセラミックグリーンシートに電極を印刷し離型フィルムから剥離したのち、セラミックグリーンシートを積層、プレスし裁断後、焼成、外部電極を塗布することで積層セラミックコンデンサが製造される。これまで、ポリエステルフィルムの離型層表面にセラミックグリーンシートを成型する場合、離型層表面の微小な突起が成型したセラミックグリーンシートに影響を与え、ハジキやピンホール等の欠点が生じやすくなるといった問題点があった。そのため、優れた平坦性を有する離型層表面を実現するための手法が種々開発されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら近年、さらなるセラミックグリーンシートの薄膜化が進み、1.0μm以下、より詳しくは0.2μm〜1.0μmの厚みのセラミックグリーンシートが要求されるようになってきた。そのため、離型層表面により高い平滑性が求められるようになってきている。また、セラミックグリーンシートの薄膜化に伴い、セラミックグリーンシートの強度が低下するため、離型層表面の平滑化だけではなく、セラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離するときの剥離力を低くかつ均一にすることが好ましく、離型フィルムからセラミックグリーンシートを剥離するときにセラミックグリーンシートにかかる負荷を極力少なくし、セラミックグリーンシートにダメージを与えないようにすることが好ましくなってきている。
【0004】
離型層表面の平滑化と剥離時のセラミックグリーンシートへの負荷を抑制する離型層側からの方法としては、離型フィルムの離型層に活性エネルギー線硬化成分を用いることで離型層の架橋密度を高め、弾性率を向上させることで、セラミックグリーンシート剥離時における離型層の弾性変形を抑制し剥離力を軽くする方策が検討されている(例えば、特許文献2、3参照)。しかしながらこの方法では、平滑性が高すぎるため面剥離となり、剥離力が重くなり、グリーンシートにクラックが入ることがあった。さらに超薄膜のセラミックグリーンシートを加工時に、平滑面が塗工設備の張力制御するための平滑ロールやゴムロールに接すると、ロールと平滑面のすべり性が不十分で張力制御が不安定になり、グリーンシート塗布面の平滑性が低下する問題があった。
【0005】
そこで、剥離開始時のきっかけ(剥離開始点)となる適度な大突起を有するポリエステルフィルムとすることで、平滑性と均一な剥離性とのバランスに優れた離型フィルムが報告されている(例えば、特許文献4)。しかしながら、PETに練りこまれたフィラーの場合、フィラー凝集による粗大突起が完全に無くすことができず、製品の欠点要因となる問題があった。特に、超薄層セラミックグリーンシートでは、セラミック材料として用いられる無機フィラーは60nm〜800nm程度の粒径であるため(例えば、特許文献5、6参照)、特許文献4に記載されるようなフィルムを用いると、剥離面で局所的な穴が発生する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−117899号公報
【特許文献2】国際公開第2013/145864号
【特許文献3】国際公開第2013/145865号
【特許文献4】国際公開第2014/203702号
【特許文献5】特開2016−127120号公報
【特許文献6】特開2017−081805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、離型層表面に低突起による表面凹凸を形成させることで、上記重剥離化、加工適性低下と欠点要因の発生を同時に抑制できることを見極めた。そして、本発明の課題は、剥離性に優れ、成型される極薄のセラミックグリーンシートについて、ハーフカット試験におけるクラック等のダメージを生じ難いセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルムであって、前記離型層は、エネルギー線硬化型化合物(I)、ポリエステル樹脂(II)、及び離型成分(III)を少なくとも含む塗膜が硬化されてなり、前記ポリエステル樹脂(II)が5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分由来のエステル構成単位を含有するセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
2. 離型層が、エネルギー線硬化型化合物(I)を海成分とし、ポリエステル樹脂(II)を島成分とする相分離構造を有し、表面凹凸を有する上記第1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
3. 離型層が実質的に無機粒子を含有しない上記第1又は第2に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
4. 前記エネルギー線硬化型化合物(I)が、1分子内に3以上のアクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである上記第1〜第3のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
5. 離型層の厚みが、0.2〜3.5μmである上記第1〜第4のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
6. 離型層の領域表面平均粗さ(Sa)が、5〜40nmである上記第1〜第5のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
7. 離型層表面の最大突起高さ(Rp)が、60nm以下である上記第1〜第6のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
8. 上記第1〜第7のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いてセラミックグリーンシートを成型するセラミックグリーンシートの製造方法であって、成型されたセラミックグリーンシートが0.2μm〜1.0μmの厚みであるセラミックグリーンシートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムによれば、従来のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムと比較して、剥離力が重過ぎることがなく、加工性に優れ、離型層に大突起が無いため、成型される厚み1μm以下といった超薄膜セラミックグリーンシートについて、ハーフカット試験におけるクラック等のダメージを生じ難いセラミックグリーンシート製造用離型フィルムの提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明品(実施例1)離型層表面の電子顕微鏡写真である。
図2】本発明品(実施例2)離型層表面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
(ポリエステルフィルム)
本発明の離型フィルムにおいて基材として用いるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、特に限定されず、離型フィルム基材として通常一般に使用されているポリエステルをフィルム成型したものを使用することが出来るが、好ましくは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分からなる結晶性の線状飽和ポリエステルであるのが良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体がさらに好適であり、とりわけポリエチレンテレフタレートから形成されたポリエステルフィルムが好適である。ポリエチレンテレフタレートは、エチレンテレフタレートの繰り返し単位が好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、他のジカルボン酸成分、ジオール成分が少量共重合されていてもよいが、コストの点から、テレフタル酸とエチレングリコールのみから製造されたものが好ましい。また、本発明のフィルムの効果を阻害しない範囲内で、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶化剤などを添加してもよい。ポリエステルフィルムは双方向の弾性率の高さ等の理由から二軸延伸されたポリエステルフィルムであることが好ましい。
【0013】
上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの固有粘度は0.50〜0.70dl/gが好ましく、0.52〜0.62dl/gがより好ましい。固有粘度が0.50dl/g以上の場合、延伸工程で破断が発生しづらく好ましい。逆に、0.70dl/g以下の場合、所定の製品幅に裁断するときの裁断性が良く、寸法不良が発生しないので好ましい。また、原料は十分に真空乾燥することが好ましい。
【0014】
本発明におけるポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されず、従来一般に用いられている方法を用いることが出来る。例えば、前記ポリエステルを押出機にて溶融して、フィルム状に押出し、回転冷却ドラムにて冷却することにより未延伸フィルムを得て、該未延伸フィルムを一軸又は二軸延伸することにより得ることが出来る。二軸延伸フィルムは、縦方向あるいは横方向の一軸延伸フィルムを横方向または縦方向に逐次二軸延伸する方法、或いは未延伸フィルムを縦方向と横方向に同時二軸延伸する方法で得ることが出来る。
【0015】
本発明において、ポリエステルフィルム延伸時の延伸温度はポリエステルの二次転移点(Tg)以上とすることが好ましい。縦、横各々の方向に1〜8倍、特に2〜6倍の延伸をすることが好ましい。
【0016】
上記ポリエステルフィルムは、厚みが12〜50μmであることが好ましく、さらに好ましくは12〜38μmであり、より好ましくは、15μm〜31μmである。フィルムの厚みが12μm以上であれば、フィルム生産時や離型層の加工工程、セラミックグリーンシートの成型の時に、熱により変形するおそれがなく好ましい。一方、フィルムの厚みが50μm以下であれば、使用後に廃棄するフィルムの量が極度に多くならず、環境負荷を小さくする上で好ましく、さらには、使用する離型フィルムの面積当たりの材料が少なくなるため経済的観点からも好ましい。
【0017】
上記ポリエステルフィルム基材は、単層であっても2層以上の多層であっても構わないが、少なくとも片面には実質的に無機粒子を含まない表面層Aを有する積層ポリエステルフィルムであることが好ましい。2層以上の多層構成からなる積層ポリエステルフィルムの場合は、実質的に無機粒子を含有しない表面層Aの反対面には、粒子などを含有することができる表面層Bを有することが好ましい。積層構成としては、離型層を塗布する側の層を表面層A、その反対面の層を表面層B、これら以外の芯層を芯層Cとすると、厚み方向の層構成は離型層/表面層A/表面層B、あるいは離型層/表面層A/芯層C/表面層B等の積層構造が挙げられる。当然ながら芯層Cは複数の層構成であっても構わない。また、表面層Bには粒子を含まないこともできる。その場合、フィルムをロール状に巻き取るための滑り性を付与するため、表面層B上には粒子とバインダーを含んだコート層(D)を設けることが好ましい。
【0018】
本発明におけるポリエステルフィルム基材において、離型層を塗布する面を形成する表面層Aは、実質的に無機粒子を含有しないことが好ましい。このとき、表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は、7nm以下が好ましい。Saが7nm以下であると、離型層の膜厚が2.0μm以下、更に薄く0.5μm以下のような薄膜でも、積層する超薄層セラミックグリーンシートの成型時にピンホールなどの発生が起こりにくく好ましい。表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好まシート言えるが、0.1nm以上であって構わない。但し表面層A上に後述のアンカーコート層などを設ける場合は、コート層に実質的に無機粒子を含まないことが好ましく、コート層積層後の領域表面平均粗さ(Sa)が前記範囲内であることが好ましい。本発明において「無機粒子を実質的に含有しない」とは、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下であることにより定義され、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量である。これは積極的に無機粒子をフィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0019】
本発明におけるポリエステルフィルム基材が積層フィルムである場合において、離型層を塗布する表面層Aと反対面を形成する表面層Bは、フィルムの滑り性や空気の抜けやすさの観点から、粒子を含有することが好ましく、特にシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を含有することが好ましい。含有される粒子含有量は、表面層B中に粒子の合計で5000〜15000ppmであることが好ましい。このとき、表面層Bの領域表面平均粗さ(Sa)は、1〜40nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、5〜35nmの範囲である。表面層Bのシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が5000ppm以上、Saが1nm以上の場合には、フィルムをロール状に巻き上げるときに、空気を均一に逃がすことができ、巻き姿が良好で平面性良好により、超薄層セラミックグリーンシートの製造に好適なものとなる。また、シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が15000ppm以下、Saが40nm以下の場合には、滑剤の凝集が生じにくく、粗大突起ができないため、超薄層のセラミックグリーンシートを成型後に巻き取った場合でもセラミックグリーンシートにピンホールなどの欠点を発生させることがなく好ましい。
【0020】
上記表面層Bに含有する粒子としては、透明性やコストの観点からシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることがより好ましい。シリカ及び/又は炭酸カルシウム以外に不活性な無機粒子及び/又は耐熱性有機粒子などを用いることができ、他に使用できる無機粒子としては、アルミナ−シリカ複合酸化物粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などが挙げられる。また、耐熱性有機粒子としては、架橋ポリアクリル系粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン系粒子などが挙げられる。またシリカ粒子を用いる場合、多孔質のコロイダルシリカが好ましく、炭酸カルシウム粒子を用いる場合は、ポリアクリル酸系の高分子化合物で表面処理を施した軽質炭酸カルシウムが、滑剤の脱落防止の観点から好ましい。
【0021】
上記表面層Bに添加する粒子の平均粒子径は、0.1μm以上2.0μm以下が好ましく、0.5μm以上1.0μm以下が特に好ましい。粒子の平均粒子径が0.1μm以上であれば、離型フィルムの滑り性が良好であり好ましい。また、平均粒子径が2.0μm以下であれば、離型層表面に粗大粒子によるピンホールが発生するおそれがなく好ましい。なお、粒子の平均粒子径の測定方法は、加工後のフィルムの断面の粒子を走査型電子顕微鏡で観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする方法で行うことができる。本発明の目的を満たすものであれば、粒子の形状は特に限定されるものでなく、球状粒子、不定形の球状でない粒子を使用できる。不定形の粒子の粒子径は円相当径として計算することができる。円相当径は、観察された粒子の面積を円周率(π)で除し、平方根を算出し2倍した値である。
【0022】
表面層Bには素材の異なる粒子を2種類以上含有させてもよい。また、同種の粒子で平均粒子径の異なるものを含有させてもよい。
【0023】
表面層Bに粒子を含まない場合は、表面層B上に粒子を含んだコート層で易滑性を持たせることも好ましい。本コート層を設ける手段は、特に限定されないが、ポリエステルフィルムの製膜中に塗工する所謂インラインコート法で設けることが好ましい。また、ポリエステルフィルムの離型層を積層しない側の表面に易滑性を持たせるコート層を設ける場合には、ポリエステルフィルムは表面層A及びBを有している必要はなく、無機粒子を実質的に含有しない単層のポリエステルフィルムからなっていてもよい。
【0024】
表面層Bの領域表面平均粗さ(Sa)は、40nm以下が好ましく、35nm以下がより好ましく、さらに好ましくは30nm以下である。また、表面層Bあるいは単層ポリエステルフィルムの離型層を積層しない側の表面にコート層(D)で易滑性を持たせる場合は、その表面のSaは、コート層を積層した表面を測定するものとし、前記の表面層Bの領域表面平均粗さ(Sa)と同等範囲であることが好ましい。
【0025】
(コート層D)
前記のポリエステルフィルムについて離型層を積層しない側の表面のコート層D中には、少なくともバインダー樹脂及び粒子が含まれていることが好ましい。
【0026】
(コート層Dのバインダー樹脂)
易滑塗布層を構成するバインダー樹脂としては特に限定されないが、ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル系樹脂(ポリビニルアルコール等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも粒子の保持、密着性の観点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。また、ポリエステルフィルムとのなじみを考慮した場合、ポリエステル樹脂が特に好ましい。溶剤への溶解性、分散性、さらには基材フィルムや他の層との接着性を達成させるため、バインダーのポリエステルは共重合ポリエステルであることが好ましい。なお、ポリエステル樹脂はポリウレタン変性されていても良い。また、ポリエステル基材フィルム上の易滑塗布層を構成する他の好ましいバインダー樹脂としてはウレタン樹脂が挙げられる。ウレタン樹脂としてはポリカーボネートポリウレタン樹脂が挙げられる。さらに、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂は併用しても良く、上記の他のバインダー樹脂を併用してもよい。
【0027】
(コート層Dの架橋剤)
本発明において、易滑塗布層中に架橋構造を形成させるために、易滑塗布層は架橋剤が含まれて形成されていてもよい。架橋剤を含有させることにより、高温高湿下での密着性を更に向上させることが可能になる。具体的な架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、アジリジン等が挙げられる。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用することができる。
【0028】
(コート層D中の粒子)
易滑塗布層は、表面にすべり性を付与するために、滑剤粒子を含むことが好ましい。粒子は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられるが、塗布層に適度な滑り性を与えるために、シリカが特に好ましく使用される。
【0029】
粒子の平均粒径は10nm以上であることが好ましく、より好ましくは20nm以上であり、さらに好ましくは30nm以上である。粒子の平均粒径は10nm以上であると、凝集しにくく、滑り性が確保できて好ましい。
【0030】
粒子の平均粒径は1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは800nm以下であり、さらに好ましくは600nm以下である。粒子の平均粒径が1000nm以下であると、透明性が保たれ、また、粒子が脱落することがなく好ましい。
【0031】
また、例えば、平均粒径が10〜270nm程度の小さい粒子と、平均粒径が300〜1000nm程度の大きい粒子を混用することも、後述の領域表面平均粗さ(Sa)、最大突起高さ(Rp)を小さく保ちながら、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を小さくして、すべり性と平滑性を両立させる上で好ましく、特に好ましくは、30nm以上250nm以下の小さい粒子と、平均粒径が350〜600nmの大きい粒子を併用することである。小さい粒子と大きい粒子を混用する場合、塗布層固形分全体に対して、小さい粒子の質量含有率を大きい粒子の質量含有率より大きくしておくことが好ましい。
【0032】
上記離型層を設ける側の層である表面層Aには、ピンホール低減の観点から、滑剤などの粒子の混入を防ぐため、再生原料などを使用しないことが好ましい。
【0033】
上記離型層を設ける側の層である表面層Aの厚み比率は、基材フィルムの全層厚みの20%以上50%以下であることが好ましい。20%以上であれば、表面層Bなどに含まれる粒子の影響をフィルム内部から受けづらく、領域表面平均粗さSaが上記の範囲を満足することが容易であり好ましい。基材フィルムの全層の厚みの50%以下であると、表面層Bにおける再生原料の使用比率を増やすことができ、環境負荷が小さく好ましい。
【0034】
また、経済性の観点から上記表面層A以外の層(表面層Bもしくは前述の芯層C)には、50〜90質量%のフィルム屑やペットボトルの再生原料を使用することができる。この場合でも、表面層Bに含まれる滑剤の種類や量、粒子径ならびに領域表面平均粗さ(Sa)は、上記の範囲を満足することが好ましい。
【0035】
また、後に塗布する離型層などの密着性を向上させたり、帯電を防止するなどのために表面層A及び/または表面層Bの表面に製膜工程内の延伸前または一軸延伸後のフィルムにコート層を設けてもよく、コロナ処理などを施すこともできる。コート層も設ける場合は、各層の(Sa)はコート層表面の測定値で代用する。また、表面層Aの表面にこれらコート層を設ける場合は、粒子を含有しないことが好ましい。
【0036】
(離型層)
本発明における離型層は、エネルギー線硬化型化合物(I)、ポリエステル樹脂(II)、及び離型成分(III)を少なくとも含む塗膜を硬化されてなることが好ましい。エネルギー線硬化型化合物(I)とポリエステル樹脂(II)が相分離して海島構造を形成することで、低突起による適度な高さの凹凸を簡便に形成でき、粗大突起が発生しないことから、成型されるグリーンシートにピンホールなどが発生しない。また、適度な凹凸により平面部分が少なくなるので、グリーンシートのハーフカット試験時に、カット時の応力が逃げやすく、カット端部にて点剥離(端部の自然に生じる小剥離)となるため、端部のクラックや変形などのダメージを抑制することができるとともに、次工程の剥離工程の剥離きっかけとなり剥離がスムーズに行える。
【0037】
(エネルギー線硬化型化合物(I))
本発明で用いるエネルギー線硬化型化合物(I)としては、1分子内に3以上の反応性基を有するエネルギー線硬化型化合物を用いることができる。1分子内に3以上の反応性基を有することで、高弾性率の離型層となり、グリーンシート剥離時の離型層の変形を抑制し、重剥離化を抑制することができて好ましい。また、離型層の耐溶剤性を向上させることができるためスラリー塗工時に溶剤による離型層の浸食なども防げるため好ましい。また、1分子内に3以上の反応性基を有するエネルギー線硬化型化合物としては、エネルギー線により直接的に反応するか、または間接的に発生した活性種により反応するかは特に限定しない。エネルギー線硬化型化合物(I)の離型層形成用塗布液中の固形分中の含有量としては、60〜98質量%が好ましく、75〜97質量%が好ましい。60質量%以上添加することで架橋度を維持し、高弾性率を得ることができる。
【0038】
エネルギー線硬化型化合物(I)の反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、アクリルアミド基、マレイミド基、エポキシ基、シクロヘキセンオキシド基などが挙げられる。その中でも、加工性に優れる(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型化合物が好ましい。
【0039】
(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型化合物としては、モノマー、オリゴマー、ポリマーに限定されず使用できる。また、少なくとも1分子内に3以上の反応性基を有する化合物を含有していることが好ましいが、分子内に1〜2の反応性基を有する化合物など2以上の化合物を混合して使用することもできる。これら反応基数が少ない化合物を混合することで、カールなどを抑制することができる。
【0040】
分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型モノマーとしては、イソシアヌル酸トリアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートとそれらのエチレンオキサイド変性物、プロピレンオキサイド変性物、カプロラクトン変性物等が挙げられる。
【0041】
分子内に1〜2の反応性基を有するエネルギー線硬化型モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホールマール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのモノマー類とそれらのエチレンオキサイド変性物、プロピレンオキサイド変性物、カプロラクトン変性物等が挙げられる。
【0042】
分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型オリゴマー類としては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、シリコーン変性アクリレートなどが挙げられ、一般に市販されているものが使用できる。例えば、荒川化学工業社製ビームセット(登録商標)シリーズ、新中村化学社製NKオリゴシリーズ、ダイセル・オルネクス社製EBECRYLシリーズ、大阪有機化学工業社製ビスコートシリーズ、共栄社化学社製ウレタンアクリレートシリーズ、DIC社製ユニディックシリーズなどが挙げられる。
【0043】
分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型ポリマー類としては、ポリマーに(メタ)アクリロイル基をグラフトしたグラフトポリマーや、多官能アクリルモノマーをポリマー末端に付加させたブロックポリマーなどが挙げられる。前記のようなポリマー類としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオルガノシロキサンなど使用でき、特に限定されるものではない。
【0044】
(ポリエステル樹脂(II))
本発明で用いるポリエステル樹脂(II)としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分由来のエステル構成単位を含有するポリエステル樹脂を使用することができる。この5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分由来のエステル構成単位とは、5−ナトリウムスルホイソフタル酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、オペンチルグリコール、1.4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールなどに代表される任意のジオール、グリコール成分とから構成されるエステル構成単位であり、このエステル構成単位がポリエステル樹脂中に含有されていることを意味している。ポリエステル樹脂中の5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分由来のエステル構成単位の含有の態様は、他のエステル構成単位やポリエステルとの混合状態でもよいし、他のエステル構成単位との共重合状態でもよく、ポリエステル樹脂(II)が5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分由来のエステル構成単位を含む共重合ポリエステルであることは特に好ましい態様である。ポリエステル樹脂(II)が5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分由来のエステル構成単位を含有することで、エネルギー線硬化型化合物(I)との相溶性が低下し離型層に適度な海島構造による表面凹凸を形成が容易となるため好ましい。ポリエステル樹脂(II)中における5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分由来のエステル構成単位の含有量としては、ポリエステル樹脂(II)を構成するの全エステル構成単位を100モル%するとき、0.5モル%以上12モル%以下であることが好ましい。0.5モル%以上であれば、エネルギー線硬化型化合物(I)との相溶性が低下し離型層に適度な海島構造による表面凹凸を形成が容易となるため好ましい。一方、12モル%以下であれば、ポリエステル樹脂(II)が溶解可能な溶媒のSP値が高くなり過ぎず、エネルギー線硬化型化合物(I)の溶媒への溶解が比較的容易であり、塗液の調製が容易なため好ましい。ポリエステル樹脂(II)中における5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分由来のエステル構成単位の含有量は、より好ましくは、1モル%以上10モル%以下である。
【0045】
ポリエステル樹脂(II)としては、単一のポリエステル樹脂であってもよいし、2種類以上のポリエステル樹脂を同時に用いることもできる。2種類以上のポリエステル樹脂を使用する場合は、少なくとも1種のポリエステル樹脂が5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分由来のエステル構成単位を含有すれば、その他のポリエステル樹脂は特に限定されない。ポリエステル樹脂(II)の離型層形成用塗布液中の固形分中の含有量として、1〜40質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。1質量%以上含有させることで十分な表面凹凸を形成することができ、40質量%以下にすることで離型層のエネルギー線硬化型化合物(I)による架橋度が高くなり、剥離時の温度依存性が低く好ましい。
【0046】
ポリエステル樹脂(II)しては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分由来のエステル構成単位を含有していれば、市販のものも使用することができる。例えば、東洋紡社製バイロン(登録商標)シリーズ、日本合成化学工業社製ニチゴーポリエスター(登録商標)シリーズなどが挙げられる。
【0047】
(離型成分(III))
本発明で用いる離型成分(III)としては、ポリオルガノシロキサン、フッ素化合物、長鎖アルキル化合物、ワックス類などグリーンシートとの間で離型性を発揮できる材料であればよく特に限定はない。またこれらの材料に(メタ)アクリロイル基などを有するエネルギー線硬化型化合物(I)と反応して結合できる官能基を有する材料が好ましい。また2種以上の材料を混合して用いることもできる。離型成分(III)の離型層形成用塗布液中の固形分中の含有量としては、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。0.05質量%以上添加されていれば剥離力が軽くでき、10質量%以下であれば離型成分のセラミックグリーンシート等への移行が抑えられるため好ましい。
【0048】
ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリフェニルシロキサンなどの他、一部を有機変性したシロキサン系化合物や、ポリオルガノシロキサンを有するブロックポリマーや、ポリオルガノシロキサンをグラフトしたポリマーなども使用できる。市販のものとしては、例えば、ビックケミージャパン社製BYK(登録商標)シリーズ、日油社製モディパー(登録商標)シリーズなど使用できる。
【0049】
フッ素化合物としては、特に限定されず、市販のものを使用することができる。例えば、DIC社製メガファック(登録商標)シリーズなどが挙げられる。
【0050】
長鎖アルキル化合物としては、長鎖アルキルアクリレートを共重合したアクリルポリマーや、長鎖アルキルをグラフトしたグラフトポリマー、長鎖アルキルを末端に付加させたブロックポリマーなどが挙げられる。また特に限定されず、市販のものを使用することができる。例えば、日立化成社製テスファイン(登録商標)シリーズ、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製ピーロイル(登録商標)などが挙げられる。
【0051】
活性エネルギー線としては、例えば、赤外線、可視光線、紫外線、X線のような電磁波、電子線、イオンビーム、中性子線およびα線のような粒子線等が挙げられ、これらの中でも、製造コストに優れる紫外線を用いるのが好ましい。
【0052】
前記活性エネルギー線を照射するときの雰囲気は、一般的な空気中でも窒素ガス雰囲気下でも構わない。窒素ガス雰囲気では、酸素濃度を減少させることでラジカル反応がスムーズに進行し離型層の弾性率を向上させることができるが、空気中で照射しても実用上問題なければ、空気中で照射する方が経済的観点から好ましい。
【0053】
(光重合開始剤)
本発明の離型層にラジカル重合系化合物を用いる場合は、光重合開始剤を添加することが好ましい。光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート等が挙げられる。特に、表面硬化性に優れるとされる、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンが好ましく、中でも2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンが特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
光重合開始剤の添加量は、特に限定されないが、例えば、離型層形成用塗布液中の固形分として0.1から20質量%程度含有させることが好ましい。
【0055】
本発明における離型層には、粒子径が1μm以下の粒子などを含有することができるが、ピンホール発生の観点から粒子など突起を形成するものは含有しないほうが好ましい。
【0056】
本発明における離型層には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、密着向上剤や、帯電防止剤などの添加剤などを添加してもよい。また、基材との密着性を向上させるために、離型塗布層を設ける前にポリエステルフィルム表面に、アンカーコート、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等の前処理をすることも好ましい。
【0057】
本発明において、離型層の厚みは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、好ましくは、硬化後の離型層が0.2〜3.5μmとなる範囲がよく、より好ましくは、0.5〜3.0μmである。離型層の厚みが0.2μm以上であるとエネルギー線硬化型共重合ポリマーの硬化性が良く、離型層の弾性率が向上するため良好な剥離性能が得られ好ましい。また、3.5μm以下であると、離型フィルムの厚みが薄くなってもカールを起こしにくくセラミックグリーンシートを成型、乾燥する過程で走行性不良を起こさず好ましい。
【0058】
本発明の離型フィルムは、離型層表面が適度な凹凸があることが好ましい。そのため、離型層表面の領域表面平均粗さ(Sa)が5〜40nmであることが好ましい。また、前記のSaを満足し、且つ離型層表面の最大突起高さ(Rp)が60nm以下であることが更に好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)は5〜20nmが好ましく、その際同時に最大突起高さ(Rp)が50nm以下であることが更に好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)は8.1〜18nmであることが特に好ましく、8.5〜17nmであることが最も好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以上であれば、セラミックグリーンシート剥離時に、ジッピングが軽減され、超薄層のグリーンシートであってもダメージ無く容易に剥離することができる。また領域表面平均粗さ(Sa)が40nm以下であれば、セラミックの粒径よりも十分に小さく、グリーンシートの表面形状に影響を及ぼすことが無い。前記のSaを満足し、且つ離型層表面の最大突起高さ(Rp)が60nm以下であれば、更にピンホール欠点を生じるおそれが少なくなり好ましい。最大突起高さ(Rp)は小さいことが好ましいが、領域表面平均粗さ(Sa)を5nm以上に調節する関係で、最大突起高さ(Rp)も5nm以上であっても構わず、10nm以上であっても構わない。前記のような離型層の領域表面平均粗さ(Sa)や最大突起高さ(Rp)の範囲に調節するためには、種々の要因が関連しているが、主に、ポリエステルフィルムの表面層A又は単層のポリエステルフィルムが無機粒子を実質的に含有しないため、離型層を積層する表面の粗さが小さいことと、離型層が1分子内に3以上の反応性基を有するエネルギー線硬化型化合物(I)と、前記エネルギー線硬化型化合物(I)を海成分とし、前記エネルギー線硬化型化合物(I)と非相溶であり島成分となる樹脂(II)を含有して硬化されていることが関係していると言える。離型層の領域表面平均粗さ(Sa)や最大突起高さ(Rp)を上記のような適度な範囲に調節する方法は特に限定されないが、主に、エネルギー線硬化型化合物(I)と樹脂(II)の材質の組合せや含有割合を調節することにより好ましく達成できる。
【0059】
本発明において、離型層の形成方法は、特に限定されず、離型性の化合物を溶解もしくは分散させた塗液を、基材のポリエステルフィルムの一方の面に塗布等により展開し、溶媒等を乾燥により除去後、硬化させる方法が用いられる。
【0060】
本発明の離型層を基材フィルム上に溶液塗布により塗布する場合の溶媒乾燥の乾燥温度は、50℃以上、120℃以下であることが好ましく、60℃以上、100℃以下であることがより好ましい。その乾燥時間は、30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。さらに溶剤乾燥後、活性エネルギー線を照射し硬化反応を進行させることが好ましい。この時用いる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線などを使用することができるが、紫外線が使用しやすく好ましい。照射する紫外線量としては光量で30〜300mJ/cmが好ましく、より好ましくは、30〜200mJ/cmである。30mJ/cm以上とすることで組成物の硬化が十分進行し、300mJ/cm以下とするこ
とで加工時の速度を向上させることができるため経済的に離型フィルムを作成することができ好ましい。
【0061】
本発明において、離型層を塗布するときの塗液の表面張力は、特に限定されないが30mN/m以下であることが好ましい。表面張力を前記のようにすることで、塗工後の塗れ性が向上し、乾燥後の塗膜表面の凹凸を低減することができる。
【0062】
上記塗液の塗布法としては、公知の任意の塗布法が適用出来、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、ワイヤーバーなどのバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、等の従来から知られている方法が利用できる。
【実施例】
【0063】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明で用いた特性値は下記の方法を用いて評価した。なお、以下、重量平均分子量を単にMwと記載することがある。
【0064】
(1)基材フィルム厚み
ミリトロン(電子マイクロインジケーター)を用い、測定すべきフィルムの任意の4箇所より5cm角サンプル4枚を切り取り、一枚あたり各5点(計20点)測定して平均値を厚みとした。
【0065】
(2)離型層厚み
離型層の厚みは、光干渉式膜厚計(F20、フィルメトリクス社製)を用いて測定した。(離型層の屈折率は1.52として算出)
【0066】
(3)領域表面平均粗さ(Sa)、最大突起高さ(Rp)
非接触表面形状計測システム(VertScan R550H−M100、菱化システム社製)を用いて、下記の条件で測定した値である。領域表面平均粗さ(Sa)は、5回測定の平均値を採用し、最大突起高さ(Rp)は7回測定し最大値と最小値を除いた5回の最大値を使用した。
(測定条件)
・測定モ−ド:WAVEモード
・対物レンズ:50倍
・0.5×Tubeレンズ
(解析条件)
・面補正: 4次補正
・補間処理: 完全補間
【0067】
(4)相分離構造
電子顕微鏡(VE−8800、キーエンス社製)を用いて、5000倍にて離型層表面を観察し、相分離の形成の有無を評価した。

○:相分離の形成している(相分離による凹凸構造が確認できる)
×:相分離しない(相分離による凹凸構造が見られない)
【0068】
(5)セラミックグリーンシートのハーフカット評価
下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、直径0.5mmのジルコニアビーズを分散媒とするビーズミルを用いて60分間分散し、セラミックスラリーを調製した。
トルエン 76.3質量部
エタノール 76.3質量部
チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT−1) 35.0質量部
ポリビニルブチラール 3.5質量部
(積水化学工業社製 エスレック(登録商標)BM−S)
DOP(フタル酸ジオクチル) 1.8質量部
次いで離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のセラミックグリーンシートが1.0μmになるように塗工し90℃で2分乾燥した。
得られたセラミックグリーンシート付離型フィルムをロータリーダイカッター(R.D.C(FB)−A4、塚谷刄物製作所社製)を用い、セラミックグリーンシート面側から両刃50°にて16mm×32mm角、深さ3μmになるようハーフカットした。グリーンシートが剥離した部分について、フィルムの端部から剥離した部分までの距離をレーザー顕微鏡にて測定し、下記基準で判定した。測定は5回測定し平均値を採用した。
○:端部にクラック等の欠点がなく、剥離部が十分にあり(目安:剥離が達している距離が端部から4mm以上)
△:端部にクラック等の欠点がなく、剥離部が少しあり(目安:剥離が達している距離が端部から1mm以上、4mmより小さい)
×:端部にクラック等の欠点があるか、又は剥離部がない(目安:剥離が達している距離が端部から1mmより小さい)
【0069】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(1))の調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口及び生成物取出口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用いた。TPA(テレフタル酸)を2トン/時とし、EG(エチレングリコール)をTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間、255℃で反応させた。次いで、第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成PETに対して8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウム四水塩を含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が40ppmのとなる量のTMPA(リン酸トリメチル)を含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1時間、260℃で反応させた。次いで、第2エステル化反応缶の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、高圧分散機(日本精機社製)を用いて39MPa(400kg/cm2)の圧力で平均処理回数5パスの分散処理をした平均粒子径が0.9μmの多孔質コロイダルシリカ0.2質量%と、ポリアクリル酸のアンモニウム塩を炭酸カルシウムあたり1質量%付着させた平均粒子径が0.6μmの合成炭酸カルシウム0.4質量%とを、それぞれ10%のEGスラリーとして添加しながら、常圧にて平均滞留時間0.5時間、260℃で反応させた。第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、95%カット径が20μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターで濾過を行ってから、限外濾過を行って水中に押出し、冷却後にチップ状にカットして、固有粘度0.60dl/gのPETチップを得た(以後、PET(1)と略す)。PETチップ中の滑剤含有量は0.6質量%であった。
【0070】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(2))の調製)
一方、上記PETチップの製造において、炭酸カルシウム、シリカ等の粒子を全く含有しない固有粘度0.62dl/gのPETチップを得た(以後、PET(2)と略す。)
【0071】
(積層フィルムX1の製造)
これらのPETチップを乾燥後、285℃で溶融し、別個の溶融押出し機押出機により290℃で溶融し、95%カット径が15μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターと、95%カット径が15μmのステンレススチール粒子を焼結したフィルターの2段の濾過を行って、フィードブロック内で合流して、PET(1)を表面層B(反離型面側層)、PET(2)を表面層A(離型面側層)となるように積層し、シート状に45m/分のスピードで押出(キャスティング)し、静電密着法により30℃のキャスティングドラム上に静電密着・冷却させ、固有粘度が0.59dl/gの未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。層比率は各押出機の吐出量計算でPET(1)/(2)=60%/40%となるように調整した。次いで、この未延伸シートを赤外線ヒーターで加熱した後、ロール温度80℃でロール間のスピード差により縦方向に3.5倍延伸した。その後、テンターに導き、140℃で横方向に4.2倍の延伸を行なった。次いで、熱固定ゾーンにおいて、210℃で熱処理した。その後、横方向に170℃で2.3%の緩和処理をして、厚さ31μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムX1を得た。得られたフィルムX1の表面層AのSaは2nm、表面層BのSaは29nmであった。
【0072】
(実施例1)
積層フィルムX1の表面層A上に以下組成の塗布液1をリバースグラビアを用いて乾燥後の離型層膜厚が2.5μmになるように塗工し、90℃で30秒乾燥後、高圧水銀ランプを用いて200mJ/cmとなるように紫外線を照射することで超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。

(塗布液1)
化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
100.00質量部
(NKエステル(登録商標)A−DPH、新中村化学工業社製、6官能アクリレート、固形分濃度100%)
樹脂(II) ポリエステル樹脂(A) 9.45質量部
離型剤(III) 1.26質量部
(アクリロイル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、BYK−UV3505、ビックケミージャパン社製、固形分濃度40質量%)
光重合開始剤 5.25質量部
(OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
希釈溶剤(MEK/トルエン=1/1) 431.30質量部

ポリエステル樹脂(A)は下記組成で共重合したポリエステル樹脂を使用した。
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=49/48.5/2.5//50/50(mol%)
【0073】
(実施例2)
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂(B)を変更し、下記塗布液2を使用した。塗布液2を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。

(塗布液2)
化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
100.00質量部
(NKエステル(登録商標)A−DPH、新中村化学工業社製、6官能アクリレート、固形分濃度100%)
樹脂(II) ポリエステル樹脂(B) 9.45質量部
離型剤(III) 1.26質量部
(アクリロイル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、ビックケミージャパン社製BYK−UV3505、固形分濃度40質量%)
光重合開始剤 5.25質量部
(OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
希釈溶剤(MEK/トルエン=1/1) 431.30質量部

ポリエステル樹脂(B)は下記組成で共重合したポリエステル樹脂を使用した。
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/プロパンジオール/トリメチロールプロパン=97.5/2.5//20/79.2/0.8(mol%)
【0074】
(実施例3)
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂(II)と希釈溶剤を変更し、下記塗布液3を使用した。塗布液3を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。

(塗布液3)
化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
100.00質量部
(NKエステル(登録商標)A−DPH、新中村化学工業社製、6官能アクリレート、固形分濃度100%)
樹脂(II) ポリエステル樹脂(C) 9.45質量部
離型剤(III) 1.26質量部
(アクリロイル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、BYK−UV3505、ビックケミージャパン社製、固形分濃度40質量%)
光重合開始剤 5.25質量部
(OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
希釈溶剤(シクロペンタノン) 431.30質量部

ポリエステル樹脂(C)は下記組成で共重合したポリエステル樹脂を使用した。
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=48/48/4//80/20(mol%)
【0075】
(実施例4)
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂(II)と希釈溶剤を変更し、下記塗布液4を使用した。塗布液4を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。

(塗布液4)
化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
100.00質量部
(NKエステル(登録商標)A−DPH、新中村化学工業社製、6官能アクリレート、固形分濃度100%)
樹脂(II) ポリエステル樹脂(D) 9.45質量部
離型剤(III) 1.26質量部
(アクリロイル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、BYK−UV3505、ビックケミージャパン社製、固形分濃度40質量%)
光重合開始剤 5.25質量部
(OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
希釈溶剤(シクロペンタノン) 431.30質量部

ポリエステル樹脂(D)は下記組成で共重合したポリエステル樹脂を使用した。
モノマー組成:(酸成分)イソフタル酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)ジエチレングリコール=93/7//100(mol%)
【0076】
(比較例1)
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂(II)を変更し、下記塗布液5を使用した。塗布液5を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。

(塗布液5)
化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
100.00質量部
(NKエステル(登録商標)A−DPH、新中村化学工業社製、6官能アクリレート、固形分濃度100%)
樹脂(II) ポリエステル樹脂(E) 9.45質量部
離型剤(III) 1.26質量部
(アクリロイル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、BYK−UV3505、ビックケミージャパン社製、固形分濃度40質量%)
光重合開始剤 5.25質量部
(OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
希釈溶剤(MEK/トルエン=1/1) 431.30質量部

ポリエステル樹脂(E)は下記組成で共重合したポリエステル樹脂を使用した。
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=50/50//50/50(mol%)
【0077】
(比較例2)
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂(II)を変更し、下記塗布液5を使用した。塗布液5を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。

(塗布液5)
化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
100.00質量部
(NKエステル(登録商標)A−DPH、新中村化学工業社製、6官能アクリレート、固形分濃度100%)
樹脂(II) ポリエステル樹脂(F) 9.45質量部
離型剤(III) 1.26質量部
(アクリロイル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、BYK−UV3505、ビックケミージャパン社製、固形分濃度40質量%)
光重合開始剤 5.25質量部
(OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
希釈溶剤(MEK/トルエン=1/1) 431.30質量部

ポリエステル樹脂(F)は下記組成で共重合したポリエステル樹脂を使用した。
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/セバシン酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=52/18/30//54/46(mol%)
【0078】
(比較例3)
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂(II)を変更し、下記塗布液6を使用した。塗布液6を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。

(塗布液6)
化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
100.00質量部
(NKエステル(登録商標)A−DPH、新中村化学工業社製、6官能アクリレート、固形分濃度100%)
樹脂(II) ポリエステル樹脂(G) 9.45質量部
離型剤(III) 1.26質量部
(アクリロイル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、BYK−UV3505、ビックケミージャパン社製、固形分濃度40質量%)
光重合開始剤 5.25質量部
(OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
希釈溶剤(MEK/トルエン=1/1) 431.30質量部

ポリエステル樹脂(G)は下記組成で共重合したポリエステル樹脂を使用した。
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/アジピン酸/トリメリット酸//(ジオール成分)2−メチル−1,3−プロパンジオール/ブタンジオール=40/39/20/1//60/40(mol%)
【0079】
(比較例4)
実施例1に比べ、ポリエステル樹脂(II)を変更し、下記塗布液7を使用した。塗布液7を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層厚み、領域表面平均粗さSa、最大突起高さRp、相分離構造、セラミックグリーンシートのハーフカット時の剥離きっかけの評価を行った。

(塗布液7)
化合物(I)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
100.00質量部
(NKエステル(登録商標)A−DPH、新中村化学工業社製、6官能アクリレート、固形分濃度100%)
樹脂(II) ポリエステル樹脂(H) 9.45質量部
離型剤(III) 1.26質量部
(アクリロイル基を有する変性ポリジメチルシロキサン、BYK−UV3505、固形分濃度40質量%)
光重合開始剤 5.25質量部
(OMNIRAD(登録商標)907、IGM Japan GK社製、固形分濃度100質量%)
希釈溶剤(MEK/トルエン=1/1) 431.30質量部

ポリエステル樹脂(F)は下記組成で共重合したポリエステル樹脂を使用した。
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/アゼライン酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=30/20/50//65/35(mol%)
【0080】
相分離構造による離型層表面凹凸の状態評価に使用した実施例1、2の離型層表面の電子顕微鏡写真を図1、2に示す。
【0081】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムによれば、従来のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムと比較して、剥離力が重くなりすぎることがなく、加工性に優れ、離型層に大突起が無いため、成型される厚み1μm以下といった超薄膜セラミックグリーンシートにピンホールなどの欠点を少なくできるセラミックグリーンシート製造用離型フィルムの提供が可能となった。
【要約】
【課題】剥離性に優れ、成型される極薄のセラミックグリーンシートについて、ハーフカット試験におけるクラック等のダメージを生じ難いセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを提供すること。
【解決手段】ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルムであって、前記離型層は、エネルギー線硬化型化合物(I)、ポリエステル樹脂(II)、及び離型成分(III)を少なくとも含む塗膜が硬化されてなり、
前記ポリエステル樹脂(II)が5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分由来のエステル構成単位を含有するセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【選択図】なし
図1
図2