(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702528
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】アンテナおよび通信デバイス
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/24 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
H01Q3/24
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-152878(P2018-152878)
(22)【出願日】2018年8月15日
(65)【公開番号】特開2019-36962(P2019-36962A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】201710701968.0
(32)【優先日】2017年8月16日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100140534
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 敬二
(72)【発明者】
【氏名】マオマオ・ジュウ
(72)【発明者】
【氏名】ボ・ユアン
(72)【発明者】
【氏名】ルイ・フア
【審査官】
新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−345633(JP,A)
【文献】
特開2001−036337(JP,A)
【文献】
特開昭50−117343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電素子と少なくとも1つの非給電素子とを備え、各非給電素子と前記給電素子との間の距離が指定された閾値内にあり、各非給電素子が、接地された第1の導体、レギュレータ回路、および制御スイッチを備え、前記レギュレータ回路が前記非給電素子の電流経路長を調節するように構成され、
前記制御スイッチがオフにされると、電流が前記第1の導体および前記レギュレータ回路を通って流れ、前記非給電素子の前記電流経路長が前記給電素子の共振長よりも長くなる、または前記制御スイッチがオンにされると、前記電流が前記第1の導体および前記制御スイッチを通って流れ、前記非給電素子の前記電流経路長が前記給電素子の共振長よりも短くなり、
前記第1の導体が第1の下位導体および第2の下位導体を備え、前記制御スイッチの2つの端部が前記第1の下位導体および前記第2の下位導体にそれぞれ接続され、前記レギュレータ回路が第2の導体を備え、前記第2の導体の2つの端部が前記第1の下位導体および前記第2の下位導体にそれぞれ接続され、前記制御スイッチがオンにされるとき、前記第1の下位導体が前記制御スイッチを通して前記第2の下位導体に接続され、または前記制御スイッチがオフにされるとき、前記第1の下位導体が前記第2の導体を通して前記第2の下位導体に接続される、アンテナ。
【請求項2】
前記第1の下位導体の一方の端部と前記第2の導体の一方の端部が前記制御スイッチの一方の端部で接続点に固定され、前記第2の下位導体の一方の端部と前記第2の導体の他方の端部が前記制御スイッチの他方の端部で接続点に固定される、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記制御スイッチがオフにされるとき、前記非給電素子の前記電流経路長が、λ/4より長く、前記給電素子の前記共振長よりも長くなり、
前記制御スイッチがオンにされるとき、前記非給電素子の前記電流経路長が、λ/4より短く、前記給電素子の前記共振長よりも短くなり、λが前記給電素子の中間の波長である、請求項1または2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記制御スイッチがオンにされるとき、前記非給電素子が導波器となる、請求項3に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記制御スイッチがオフにされるとき、前記非給電素子が反射器となる、請求項3に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記第2の導体がU字型に曲がった構造である、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記指定された閾値が0.2λ〜0.25λであり、λが前記給電素子の前記中間の波長である、請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記制御スイッチがオンにされるとき、前記レギュレータ回路がディセーブルにされ、前記非給電素子の前記電流経路長が0.21λ〜0.24λであり、
前記制御スイッチがオフにされるとき、前記レギュレータ回路がイネーブルにされ、前記非給電素子の前記電流経路長が0.26λ〜0.28λであり、λが前記給電素子の前記中間の波長である、請求項1から7のいずれか一項に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの非給電素子の数量が4であり、前記4つの非給電素子が前記給電素子を囲んで配置される、請求項1から8のいずれか一項に記載のアンテナ。
【請求項10】
前記4つの非給電素子が、リング形状を形成し、均等に配設される、請求項9に記載のアンテナ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のアンテナを備える、通信デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、情報技術の分野に関し、詳細には、アンテナおよび通信デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレスローカルエリアネットワーク(wireless local area network, WLAN)は、家庭、オフィス、および他の屋内/屋外環境に広く適用される。しかし、家庭およびオフィスなどの屋内環境では、設置されるWLAN通信デバイス、たとえばアクセスポイント(ホットスポットとも呼ばれる)の水平カバレージエリアおよびスルーウォール性能は、WLANの性能に影響を及ぼす重要な指標である。したがって、高指向性利得を有する適応型切替ビーム方式スマートアンテナが、WLAN通信デバイスにおいて極めて重要になる。
【0003】
以下の方法が、現在、スマートアンテナを実装するのに使用可能である。
【0004】
1. 異なるアンテナまたはアンテナアレイが、放射を実行するために無線周波数スイッチを使用することによって選択される。アンテナまたはアンテナアレイの放射方向は互いに異なっており、それによって、システムのアンテナビームの切替が実現される。
【0005】
2. 制御スイッチを使用することによって素子と給電ネットワークが接続され、放射を実行するために制御スイッチをオンまたはオフにすることによって異なる素子が選択される。異なる素子の放射方向は互いに異なっており、それによって、ビームの切替が実現される。
【0006】
3. 制御スイッチを使用することによって、互いに異なる方向の反射器が選択および接続され、それによって、ビームの切替が実現される。
【0007】
しかし、これらの解決策には、アンテナの指向性利得が全方向利得と比べてわずかにしか改善されないこと、サイズが大きいためにアンテナアレイの内蔵および集積が難しいことなどの問題がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願は、WLAN通信デバイスの通信効率を改善するためにアンテナおよび通信デバイスを提供する。
【0009】
第1の態様によれば、アンテナが提供され、アンテナは、給電素子と少なくとも1つの非給電素子とを含み、各非給電素子と給電素子との間の垂直距離が指定の閾値内にあり、各非給電素子が、接地された第1の導体、レギュレータ回路、および第1の導体上に配設されレギュレータ回路を制御するように構成される制御スイッチを含み、レギュレータ回路が非給電素子の電流経路長を調節するように構成され、
制御スイッチがオフにされると、電流が第1の導体およびレギュレータ回路を通って流れ、非給電素子の電流経路長が給電素子の共振長よりも長くなる、または制御スイッチがオンにされると、電流が第1の導体および制御スイッチを通って流れ、非給電素子の電流経路長が給電素子の共振長よりも短くなる。
【0010】
上記の技術的解決策では、非給電素子の電流経路長および非給電素子と給電素子との間の距離が制御され、その結果、制御スイッチがオフにされレギュレータ回路がイネーブルにされるとき非給電素子が反射器を形成し、または制御スイッチがオンにされレギュレータ回路がディセーブルにされるとき非給電素子が導波器を形成する。反射器と導波器が互換性がある設計が使用され、その結果、1つの給電素子(給電ダイポール)、M個の導波器、およびN個の反射器の組合せをアンテナとして実装して、高い指向性利得および干渉抑制能力を達成する(ここで、M+N>=1、および、M+N=非給電素子の数量)。加えて、反射器と導波器が切り替えられるときに、アンテナビーム切替を迅速に完了することができ、容易な実装および小さいサイズを特徴としている。
【0011】
特定の実装解決策では、第1の導体が第1の下位導体および第2の下位導体を含み、制御スイッチの2つの端部が第1の下位導体および第2の下位導体にそれぞれ接続され、レギュレータ回路が第2の導体を含み、第2の導体の2つの端部が第1の下位導体および第2の下位導体にそれぞれ接続され、制御スイッチがオンにされるとき、第1の下位導体が制御スイッチを通して第2の下位導体と連通し、または制御スイッチがオフにされるとき、第1の下位導体が第2の導体を通して第2の下位導体と連通する。非給電素子の電流経路長は、第2の導体を使用することによって変えられる。第2の導体は、金属導体のセグメントである。第2の導体が第1の導体に加えられるとき、長くなった電流経路長が、第2の導体の長さである。さらに、第2の導体の形状は、制限されない。直線形状もしくは円弧形状のいずれかまたは別の形状を使用することができる。第1の導体に加えられる電流経路長は、第2の導体の長さによってのみ影響を受ける。第1の下位導体および第2の下位導体は、やはり金属導体のセグメントである。その形状は制限されず、異なる長さを使用することができる。たとえば、特定の実装解決策では、第2の導体はU字型に曲がった構造である。
【0012】
特定の実装解決策では、制御スイッチがオンにされるとき、非給電素子の電流経路長は、λ/4より長く、給電素子の共振長よりも長くなり、または制御スイッチがオフにされるとき、非給電素子の電流経路長は、λ/4より短く、給電素子の共振長よりも短くなり、ここで、λは給電素子の中間の波長である。
【0013】
特定の実装解決策では、制御スイッチの2つの端部は接続点を別個に備え、第1の下位導体の一方の端部と第2の導体の一方の端部が制御スイッチの一方の端部で接続点に固定され、第2の下位導体の一方の端部と第2の導体の他方の端部が制御スイッチの他方の端部で接続点に固定される。このことによって、第2の導体の接続を容易にし、また、電流が流れる電流経路長が第1の導体および第2の導体の長さに等しくなり得ることを確実にする。したがって、全電流経路長は、第1の導体および第2の導体の長さによって直接に定めることができる。
【0014】
特定の実装解決策では、整合ネットワークが第2の導体上に設けられる。第2の導体によって第1の導体に加えられる電流経路長は、設けられる整合ネットワークを使用することによって調節される。
【0015】
特定の実装解決策では、整合ネットワークは、インダクタ、または直列に接続されるコンデンサとインダクタである。実際の使用では、異なる要件に従って、異なる電流経路長を選択して使用することができる。
【0016】
特定の実装解決策では、指定された閾値は、0.2λ〜0.25λであり、ここで、λは給電素子の中間の波長である。特定の設定では、非給電素子から給電素子への距離は、0.2λ、0.21λ、0.22λ、0.23λ、0.24λ、または0.25λなどの異なる距離を使用することができる。
【0017】
特定の実装解決策では、レギュレータ回路がディセーブルにされるとき、非給電素子の電流経路長は、0.21λ〜0.24λである。すなわち、レギュレータ回路がディセーブルにされるとき、非給電素子の電流経路長は異なり、たとえば、0.21λ、0.22λ、0.23λ、または0.24λであってよい。レギュレータ回路がイネーブルにされるとき、非給電素子の電流経路長は、0.26λ〜0.28λに入り、ここで、λは給電素子の中間の波長である。すなわち、レギュレータ回路がイネーブルにされるとき、非給電素子の電流経路長は異なり、たとえば、0.26λ、0.27λ、または0.28λであってよい。
【0018】
特定の実装解決策では、非給電素子の数量は4であり、4つの非給電素子は、給電素子を囲んで配置される。4つの非給電素子上のレギュレータ回路をイネーブルにすることおよびディセーブルにすることによって、異なる数量の反射器および導波器が形成され、それによって、指向性利得および干渉抑制能力を改善する。
【0019】
特定の実装解決策では、4つの非給電素子は、リング形状を形成し、均等に配設される。
【0020】
第2の態様によれば、通信デバイスが提供され、通信デバイスは、上記の実装形態のいずれか1つによるアンテナを含む。
【0021】
上記の技術的解決策では、非給電素子の電流経路長および非給電素子と給電素子との間の距離が制御され、その結果、レギュレータ回路がイネーブルにされるとき非給電素子が反射器を形成し、またはレギュレータ回路がディセーブルにされるとき非給電素子が導波器を形成する。反射器と導波器が互換性がある設計が使用され、その結果、1つの給電素子(給電ダイポール)、M個の導波器、およびN個の反射器の組合せをアンテナとして実装して、高い指向性利得および干渉抑制能力を達成する(ここで、M+N>=1、および、M+N=非給電素子の数量)。加えて、反射器と導波器が切り替えられるときに、アンテナビーム切替を迅速に完了することができ、容易な実装および小さいサイズを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】本出願によるレギュレータ回路の概略構造図である。
【
図3】本出願による反射器として機能する非給電素子の概念図である。
【
図4】本出願による導波器として機能する非給電素子の概念図である。
【
図5】本出願による別のレギュレータ回路の概略構造図である。
【
図6】本出願による別のアンテナの概略構造図である。
【
図7】
図6に示されるアンテナの構造の全方向シミュレーション図である。
【
図8】
図6に示されるアンテナの構造の指向性シミュレーション図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本出願の目的、技術的解決策、および利点をより明確にするために、以下では、添付図面を参照して本出願を詳細にさらに記載している。
【0024】
図1に示されるように、本出願の実施形態はアンテナを提供する。アンテナは、給電素子1および少なくとも1つの非給電素子2を含む。各非給電素子2と給電素子1との間の垂直距離が指定の閾値内にあり、各非給電素子2が、接地された第1の導体21、レギュレータ回路22、および第1の導体21上に配設されレギュレータ回路22を制御するように構成される制御スイッチ23を含み、レギュレータ回路22が非給電素子2の電流経路長を調節するように構成される。
【0025】
制御スイッチ23がオフにされると、電流が第1の導体21およびレギュレータ回路22を通って流れ、非給電素子2の電流経路長が給電素子1の共振長よりも長くなる、または制御スイッチ23がオンにされると、電流が第1の導体21および制御スイッチ23を通って流れ、非給電素子2の電流経路長が給電素子1の共振長よりも短くなる。
【0026】
給電素子1は、異なるタイプのアンテナ、具体的には、たとえば、素子アンテナまたは平面逆Fアンテナ(planar inverted F antenna, PIFA)であってよい。
【0027】
上記の解決策では、反射器および導波器の機能は、非給電素子2を使用することによって実装される。非給電素子2が2つの構成要素動作モード間で切り替わるとき、制御を実施するためにレギュレータ回路22が使用される。レギュレータ回路22が第1の導体21に接続されると、第1の導体21の全電流経路長は増加する。この場合、非給電素子2は反射器として機能する。レギュレータ回路22が第1の導体21に接続されないとき、第1の導体21の電流経路長は、給電素子1の共振長よりも短い。この場合、非給電素子2は導波器として機能する。以下は、非給電素子2の動作原理を詳細に記載する。
【0028】
図1中の非給電素子は接地され、給電素子1は
図1の中央にある。非給電素子2と給電素子1との間の垂直距離は、指定された閾値内にある。指定された閾値は、0.2λ〜0.25λであり、ここで、λは給電素子1の中間の波長である。特定の設定では、非給電素子2と給電素子1との間の距離が0.2λ〜0.25λに入ることを条件として、非給電素子2から給電素子1への距離は、0.2λ、0.21λ、0.22λ、0.23λ、0.24λ、または0.25λなどの異なる距離を使用することができ、ここで、λは給電素子1の中間の波長であり、給電素子1の共振長は波長のおよそ1/4(すなわち、λ/4)である。特定の使用では、非給電素子2の電流経路長が共振長よりわずかに長いとき、非給電素子2は誘導性であり、電流は電圧より90°遅れる。給電素子1と非給電素子2との間の経路差により生じる90°位相差と非給電素子2が誘導性であるので生じる位相差は相殺される。ここで、経路差は、非給電素子2が給電素子1の方向に向くので生じる。したがって、この方向における、非給電素子2と給電素子1の放射場が重ね合わされ強められる。同様に、反対の方向では、給電素子1と非給電素子2との間の経路差により生じる90°位相差と非給電素子2が誘導性であるので生じる位相差は、180°に重ね合わされる。したがって、この方向における、非給電素子2と給電素子1の放射場が相殺され、1つの方向の電場が強められ1つの方向の電場が弱められ、このことによって指向性ビームが形成される。この様態では、非給電素子2は、ビームに反射作用を働かせて反射器となる。
【0029】
非給電素子2の電流経路長が共振長よりわずかに短いとき、非給電素子2は、給電素子1からおよそ1/4波長離れている。非給電素子2は容量性であり、電流は電圧より90°進んでいる。給電素子1と非給電素子2との間の経路差により生じる90°位相差と非給電素子2が容量性であるので生じる位相差は、180°に重ね合わされる。ここで、経路差は、非給電素子2が給電素子1の方向に向くので生じる。したがって、この方向における、非給電素子2と給電素子1の放射場が相殺される。同様に、反対の方向では、給電素子1と非給電素子2との間の経路差により生じる90°位相差と非給電素子2が容量性であるので生じる位相差は、相殺される。したがって、この方向における、非給電素子2と給電素子1の放射場が重ね合わされる。この場合、非給電素子2は、ビームに導波機能を働かせて導波器となる。
【0030】
非給電素子2の電流経路長が特に調節されるとき、調節は、レギュレータ回路22を使用することによって実施される。
図1に示されるように、この実施形態で配設される非給電素子2は2つの部分を含み、1つの部分は、一定の電流経路長を有する第1の導体21であり、他の部分は、一定の電流経路長を有するレギュレータ回路22である。第1の導体21は2つの部分を含み、2つの部分はそれぞれ第1の下位導体211および第2の下位導体212である。制御スイッチ23の2つの端部が第1の下位導体211および第2の下位導体212にそれぞれ接続される。
図2に示されるように、第1の下位導体211と第2の下位導体212は、真っ直ぐな棒状の構造で接続される。第1の導体21の電流経路長に影響を及ぼす構造は、電流が第1の導体21上で流れる長さの中にあり、第1の導体21の形状は制限されない。したがって、第1の導体21の形状は、上記の1つの形状に制限されず、任意の他の形状、たとえば箱形状、らせん形状、または波形状などといった異なる形状であってよい。それに対応して、第1の下位導体211および第2の下位導体212は、上記の形状を使用することもできる。加えて、第1の下位導体211と第2の下位導体212は、レギュレータ回路22の使用可能性を制御する制御スイッチ23を使用することによって接続される。制御スイッチ23がオフにされるとき、第1の下位導体211と第2の下位導体212は、直接連通しない。制御スイッチ23がオンにされるとき、第1の下位導体211と第2の下位導体212は、直接連通する。
【0031】
非給電素子2のレギュレータ回路22は、少なくとも1つの第2の導体221を含む。第2の導体221の2つの端部が第1の下位導体211および第2の下位導体212にそれぞれ接続される。第2の導体221の電流経路長は、非給電素子2の電流経路長の値を調節するために使用される。
図3に示されるように、制御スイッチ23がオフにされるとき、第1の下位導体211が第2の導体22を通して第2の下位導体212と連通する。
図3中の矢印を有する直線が、電流経路長を図示する。第2の導体221の電流経路長が第1の導体21に加えられるとき、非給電素子2の電流経路長は、第1の導体21の電流経路長と第2の導体221の電流経路長の和である。
図4に示されるように、制御スイッチ23がオンにされ、第1の下位導体211が制御スイッチ23を通して第2の下位導体212と連通する。
図4中の矢印を有する直線が、電流経路長を図示する。非給電素子2上の電流は、制御スイッチ23および第1の導体21を通って流れる。この場合、電流経路長は、第1の導体21の電流経路長と制御スイッチ23上の電流経路長の和である。第2の導体221が第1の導体21に加えられるかどうかは、制御スイッチ23を設定することによって制御される。制御スイッチ23がオンにされるとき、レギュレータ回路22がディセーブルにされ、第1の下位導体211が第2の下位導体212と連通し、電流が第1の下位導体211および第2の下位導体212を通って流れる。この場合、第2の導体221を通って流れる電流は、非常に小さく、ほとんど無視することができる。したがって、非給電素子2の電流経路長は、第1の導体21の電流経路長と制御スイッチ23上の電流経路長の和である。制御スイッチ23がオフにされるとき、レギュレータ回路22がイネーブルにされ、第1の下位導体211、第2の導体221、および第2の下位導体212が連通し、電流が第1の下位導体211、第2の導体221、および第2の下位導体212を通って流れる。したがって、非給電素子2の電流経路長は、第1の導体21の電流経路長プラス第2の導体221の電流経路長である。特定の使用様態では、上記の制御スイッチ23は、PINダイオード(pin diode)であってよい。制御スイッチ23のオンまたはオフは、アンテナに対応する通信デバイスを使用することによって制御される。具体的には、通信デバイスは、適応型アルゴリズムを使用することによって、端末によって送信される受信信号を分析し、端末の位置を取得して、いくつかのPINダイオードをオンにするための制御信号をCPUが送るように制御し、その結果、この部分の非給電素子2が導波器となり、別の非給電素子2が反射器となる。アンテナは、端末を向く最も大きい放射を有する方向を有する指向性アンテナへと切り替えられる。
【0032】
第2の導体221の電流経路長を使用することによって非給電素子2の電流経路長を調節できることを、上記から知ることができる。したがって、設計では、第1の導体21の電流経路長および第2の導体221の電流経路長だけが制御される必要があり、その結果、第1の導体21の電流経路長は、λ/4および給電素子1の共振長より短くなり、第1の導体21の電流経路長プラス第2の導体221の電流経路長は、λ/4および給電素子1の共振長より長くなる。したがって、非給電素子2は、反射器または導波器のいずれかとして機能することができ、非給電素子2の2つのモード間の切替は、制御スイッチ23の動作状態を変えることによって実装される。
【0033】
特定の設定の間では、非給電素子2が導波器として機能するとき、制御スイッチ23が次いでオンにされ、電流が第1の導体21および制御スイッチ23を通って流れ、非給電素子2の電流経路長が給電素子1の共振長よりも短くなる。より特定の実装解決策では、非給電素子2の電流経路長は、λ/4より短く、給電素子1の共振長よりも短くなり、ここで、λは給電素子の中間の波長である。たとえば、非給電素子2の電流経路長は、0.21λ〜0.24λに入る。この場合、非給電素子2の電流経路長は、第1の導体21の電流経路長である。すなわち、第1の導体21の電流経路長は、0.21λ〜0.24λ内に制限される。たとえば、第1の導体21の電流経路長は異なって、たとえば、0.21λ、0.22λ、0.23λ、または0.24λであってよい。この場合、非給電素子2の電流経路長は異なる、たとえば、0.21λ、0.22λ、0.23λ、または0.24λである。
【0034】
加えて、非給電素子2が反射器として機能するとき、非給電素子2の電流経路長が給電素子1の共振長よりも長くなる。すなわち、制御スイッチ23がオフにされると、電流が第1の導体21およびレギュレータ回路22を通って流れ、第1の導体21のおよびレギュレータ回路22の電流経路長が給電素子1の共振長よりも長くなる。より特定の実装解決策では、非給電素子2の電流経路長は、λ/4より長く、給電素子1の共振長よりも長くなる。たとえば、非給電素子2の電流経路長は、0.26λ〜0.28λに入る。すなわち、レギュレータ回路22がイネーブルにされるとき、非給電素子2の電流経路長は異なって、たとえば、0.26λ、0.27λ、または0.28λであってよい。非給電素子2が反射器として機能するとき、非給電素子2の電流経路長は、第1の導体21の電流経路長の長さプラス第2の導体221の電流経路長の長さである。第1の導体21の電流経路長が0.21λ〜0.24λ内に入るので、第2の導体221の電流経路長は、0.03λ〜0.07λ内、たとえば、0.03λ、0.04λ、0.05λ、0.06λ、または0.07λなどといった異なる電流経路長内に入る。
【0035】
第1の導体21が2つの金属セグメントを使用し、2つの金属セグメントはそれぞれ第1の下位導体211および第2の下位導体212であることが、
図2からわかる。レギュレータ回路22は、電気を導通させるために第2の導体221を使用し、第2の導体221は、やはり金属導体のセグメントである。この場合に、第2の導体221が第1の導体21に加えられるとき、長くなった電流経路長が第2の導体221の長さである。さらに、第2の導体221の形状は制限されない。直線形状もしくは円弧形状のいずれかまたは別の形状を使用することができる。
図2に示されるように、第2の導体221は、U字型に曲がった構造である。第2の導体221の長さが、第1の導体21に加えられる電流経路長に影響を及ぼす唯一の要因である。確かなことには、レギュレータ回路22の電流経路長は、別の様態でさらに制限される場合がある。
図5に示されるように、レギュレータ回路22は、整合ネットワーク222をさらに含む。整合ネットワーク222は、第2の導体221上に設けられ、非給電素子2の電流経路長を変えるように構成される。特定の設定では、整合ネットワーク222は、コンデンサ、インダクタ、または直列に接続されるコンデンサとインダクタであってよい。たとえば、電流がインダクタを通って流れるとき、そのことは、電流が極めて長い経路を通過したことと等価である。したがって、非給電素子2の電流経路長は、配設されるインダクタを使用することによって変えることができる。
【0036】
第2の導体221と第1の導体21が接続されるとき、第2の導体221の2つの端部が第1の下位導体211および第2の下位導体212にそれぞれ接続される。しかし、第2の導体221が第1の下位導体211および第2の下位導体212に接続される位置は、全非給電素子2の電流経路長に直接影響を及ぼす。第2の導体221と第1の下位導体211が接続される位置が、第1の下位導体211と制御スイッチ23が接続される位置からある距離である場合、第1の下位導体211についてのこの距離は、制御スイッチ23がオフにされるときの電流の循環には含まれない。この場合、電流経路長を第1の下位導体211の長さに従って計算すると、非給電素子2の実際の電流経路長が、計算された電流経路長より短くなる。したがって、第2の導体221が第1の下位導体211および第2の下位導体212に接続される位置が決定された後、第1の導体21のもの、および電流経路長中に実際に含まれるものである部分が次いで決定される。第1の下位導体211の長さおよび第2の下位導体212の長さは、第2の導体221の接続の位置によって生じる影響を補償するために変えられる。あるいは、特定の設定では、制御スイッチ23の2つの端部は、接続点を別個に備え、第1の下位導体211の一方の端部と第2の導体221の一方の端部が制御スイッチ23の一方の端部で接続点に固定され、第2の下位導体212の一方の端部と第2の導体221の他方の端部が制御スイッチ23の他方の端部で接続点に固定される。このことによって、第2の導体221の接続が容易になる。加えて、第1の下位導体211および第2の下位導体212のすべての部分が電流経路長として使用され、電流が通過する電流経路長が、第1の導体21および第2の導体221の長さと等価となることができることを確実にする。この場合、全電流経路長は、第1の導体21および第2の導体221の長さに従って直接制限される場合がある。
【0037】
この実施形態で提供されるアンテナの理解を容易にするために、以下では、特定の実施形態を使用して詳細にアンテナを記載する。
図6に示されるように、非給電素子2の数量は4であり、4つの非給電素子2は、給電素子1を囲んで配置される。4つの非給電素子2上のレギュレータ回路22をイネーブルにすることおよびディセーブルにすることによって、異なる数量の反射器および導波器が形成され、それによって、指向性利得および干渉抑制能力を改善する。特定の設定では、4つの非給電素子2は、リング形状を形成し、均等に配設される。
【0038】
図6を参照すると、中央の給電素子が給電素子であり、給電素子の水平面の周りに4つの非給電素子(2A、2B、2C、および2D)がある。各非給電素子は上記の発明を使用する。すべての非給電素子の制御スイッチ23がオンにされると、得られるアンテナは、全方向アンテナである。その指向性図は全方向図であり、そのシミュレーション図が
図7に示される。非給電素子2Aの制御スイッチ23がオンにされ、非給電素子2B、2C、および2Dの制御スイッチ23がオフにされるとき、非給電素子2Aが導波器として機能して、給電素子のビームを案内し、非給電素子2B、2C、および2Dが反射器として機能して、給電素子のビームを反射する。導波器と反射器は同時に働き、そのことによって、強い指向性およびバックローブ抑制を有する指向性ビームが得られる。この場合に得られるアンテナは指向性アンテナであり、そのシミュレーション図が
図8に示される。したがって、異なる非給電素子の制御スイッチ23を選択および接続することによって、異なる方位の指向性ビーム、すなわち、異なる指向性アンテナを得て、そのことによって、高利得を有する適応型スマートアンテナを実装することができる。
【0039】
再び
図6を参照する。
図6では、非給電素子2A、2B、2C、および2Dのレギュレータ回路の方位は、全アンテナによって占められる空間的な面積を減らすために、任意に設定することができる。4つの非給電素子のレギュレータ回路のすべてを、給電素子の方向に向けるように配設して、そのことによって、アンテナによって占められる面積を最小化させることができる。
【0040】
反射器と導波器が互換性がある設計が使用され、それにより、M+N=非給電素子の数量として1つの給電素子とM個の導波器とN個の反射器との組合せが実装されて、高い指向性利得および干渉抑制能力が達成されることを上記記載から知ることができる。加えて、本出願では、異なるPINダイオードをオンにすることによってアンテナビーム切替を迅速に完了させて、簡単で豊富なアンテナビーム選択、ならびにアンテナの容易な実装および小さいサイズを特徴とすることができる。n*nの多入力多出力(multiple-input multiple-output, MIMO)のマルチアンテナワイヤレス通信システムでは、各アンテナがm個の非給電素子を含む。したがって、MIMOシステムは、2
m*nのビーム状態を有し、ここで、mはアンテナの数量であり、nはアンテナの数量である。特定の使用では、通信デバイスは、適応型アルゴリズムを使用することによって、端末によって送信される受信信号を分析し、端末の位置を取得して、いくつかのPINダイオードをオンにするための制御信号をCPUが送るように制御し、その結果、この部分の非給電素子2が導波器となり、別の非給電素子2が反射器となる。アンテナは、端末を向く最も大きい放射を有する方向を有する指向性アンテナへと切り替えられる。
【0041】
加えて、本出願は、通信デバイスをさらに提供する。通信デバイスは、上記の実装のいずれか1つによるアンテナを含む。
【0042】
上記の技術的解決策では、非給電素子2の電流経路長および非給電素子2と給電素子1との間の距離が制御され、その結果、レギュレータ回路22がイネーブルにされるとき非給電素子2が反射器を形成し、またはレギュレータ回路22がディセーブルにされるとき非給電素子2が導波器を形成する。反射器と導波器が互換性がある設計が使用され、それにより、1つの給電素子と、M個の導波器と、N個の反射器との組合せをアンテナとして実装して(ここで、M+N=非給電素子の数量)、高い指向性利得および干渉抑制能力を達成する。加えて、反射器と導波器が切り替えられるときに、アンテナビーム切替を迅速に完了することができ、アンテナの容易な実装および小さいサイズを特徴としている。
【0043】
明らかに、当業者は本出願の範囲から逸脱することなく、本出願に対する様々な修正形態および変更形態を作ることができる。本出願のこれらの修正形態および変更形態が、以下の請求項およびそれらの等価な技術によって指定された保護範囲内に入ることを条件として、本出願のこれらの修正形態および変更形態をカバーすることを本出願は意図している。
【符号の説明】
【0044】
1 給電素子
2 非給電素子
2A 非給電素子
2B 非給電素子
2C 非給電素子
2D 非給電素子
21 第1の導体
22 レギュレータ回路
23 制御スイッチ
211 第1の下位導体
212 第2の下位導体
221 第2の導体
222 整合ネットワーク