特許第6702557号(P6702557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702557
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】レーダシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/28 20060101AFI20200525BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20200525BHJP
   G01S 13/44 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   G01S13/28
   G01S7/02 216
   G01S13/44
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-253554(P2016-253554)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-105770(P2018-105770A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 晋一
(72)【発明者】
【氏名】白坂 知彦
【審査官】 安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−182010(JP,A)
【文献】 特開2003−287567(JP,A)
【文献】 特開2016−217807(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0114026(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42,
G01S 13/00−13/95,
CSDB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ntr(Ntr≧2)台の符号化またはランダム信号変調を行う送受信装置を備えるレーダシステムであって、
観測時間軸を通信期間、CW(Continues Wave)期間及びレンジング期間に分割し、
前記通信期間では、位置、送信周波数、送信時刻を含む通信情報を変調信号として、他の送受信装置の受信では、直接波または目標から反射した受信波を受信して、必要に応じて前記CW期間に算出した速度で補正した信号を用いて復調した後、復調信号を用いて同期及び同調させ、
前記CW期間では、Mcw(Mcw≧1)チップをMcwall(Mcwall≧2)回繰り返す信号により変調した送信信号を送信し、目標からの反射を受信した信号を用いて速度を算出し、
前記レンジング期間では、Mr(Mr≧2)チップにより変調した信号を送信し、目標からの反射を受信した信号を用いて、観測速度により補正した参照信号を用いて、レンジ圧縮して距離を出力し、必要に応じて測角を行い、目標の3次元位置または2次元位置を算出するレーダシステム。
【請求項2】
前記通信期間、CW期間及びレンジング期間の送信パルス列に、チップ長1の符号化またはランダム信号による変調を用いた単パルスを用いる請求項1記載のレーダシステム。
【請求項3】
Nt(Nt≧1)台の送信装置とNr(Nr≧1、Nt+Nr≧(4、3)(3次元位置同定、2次元位置同定)台の受信装置を備えるレーダシステムであって、
観測時間軸を通信期間、CW(Continues Wave)期間及びレンジング期間に分割し、
前記通信期間では、位置、送信周波数、送信時刻を含む通信情報を変調信号として、他の受信装置では、直接波または目標から反射した受信波を、必要に応じてCW期間に算出した速度で補正した信号を用いて復調した後、復調信号を用いて同期及び同調させ、
前記CW期間では、Mcw(Mcw≧1)チップをMcwall(Mcwall≧2)回繰り返す信号により変調した送信信号を送信し、目標からの反射を受信した信号を用いて速度を算出し、
前記レンジング期間では、Mr(Mr≧2)チップにより変調した信号を送信し、目標からの反射を受信した信号を、観測速度により補正した参照信号を用いてレンジ圧縮して距離を出力し、必要に応じて測角を行い、目標の3次元位置または2次元位置を算出するレーダシステム。
【請求項4】
前記送信装置と前記受信装置の(3,2)(3次元位置同定、2次元位置同定)組以上の距離と、前記受信装置の測角値から交点を算出して目標の(3,2)次元位置を算出する請求項3記載のレーダシステム。
【請求項5】
前記送信装置は、送信波を受信復調する受信手段を備え、送信装置間で通信情報を共有して、送信位置とビーム指向方向を、所定の観測範囲に設定する請求項3または4記載のレーダシステム。
【請求項6】
前記受信装置は、前記Nt(Nt≧1)台の送信装置への通信手段を備え、前記通信手段によって送信制御信号を伝送し、
前記送信装置は、送信装置間の送信波の受信手段により、情報共有し制御を行う請求項5記載のレーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、複数の送受信レーダ装置、または受信レーダ装置により目標の位置を検出するマルチスタティック方式のレーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の送受信レーダ装置、または受信レーダ装置により目標の位置を検出する、従来のマルチスタティックレーダシステムでは、レーダ装置間の時刻同期が不十分な場合や距離精度が不十分な場合には、観測位置の誤差が大きかった。また、開口の小さい受信装置を用いた場合には、十分な測角精度を得ることが困難であった。また、送信装置が見通し外にある場合には、直接波を受信できず、同期したマルチスタティック動作ができなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】パルス圧縮、大内、‘リモートセンシングのための合成開口レーダの基礎’、東京電機大学出版局、pp.131-149(2003)
【非特許文献2】位相モノパルス(位相比較モノパルス)方式、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.87-89(1996)
【非特許文献3】テーラー分布、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.134-135(1996)
【非特許文献4】CFAR処理、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.87-89(1996)
【非特許文献5】BPSK、QPSK、西村、‘ディジタル信号処理による通信システム設計’、CQ出版社、pp.222-226(2006)
【非特許文献6】符号化レーダ、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.278-280(1996)
【非特許文献7】符号コード(M系列)発生方式、M.I.Skolnik, ‘Introduction to radar systems’, McGRAW-HILL pp.429-430(1980)
【非特許文献8】SS変調、丸林、スペクトル拡散通信とその応用、電子情報通信学会編、pp.1-18(1998)
【非特許文献9】OFDM、西村、‘ディジタル信号処理による通信システム設計’、CQ出版社、pp. 248-269(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上述べたように、従来のマルチスタティックレーダシステムでは、レーダ装置間の時刻同期ずれや中心周波数のずれ等の影響で、精度よく観測できず、距離精度が不十分であり、また小型の受信装置では測角精度も低い課題があった。
【0005】
本実施形態は上記課題に鑑みなされたもので、レーダ装置間の同期・同調を行って目標距離を高精度に観測することのできるレーダシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本実施形態に係るレーダシステムは、Ntr(Ntr≧2)台の符号化またはランダム信号変調を行う送受信装置を備える。観測時間軸を通信期間、CW(Continues Wave)期間及びレンジング期間に分割し、前記通信期間では、位置、送信周波数、送信時刻を含む通信情報を変調信号として、他の送受信装置の受信では、直接波または目標から反射した受信波を受信して、必要に応じて前記CW期間に算出した速度で補正した信号を用いて復調した後、復調信号を用いて同期及び同調させ、前記CW期間では、Mcw(Mcw≧1)チップをMcwall(Mcwall≧2)回繰り返す信号により変調した送信信号を送信し、目標からの反射を受信した信号を用いて速度を算出し、前記レンジング期間では、Mr(Mr≧2)チップにより変調した信号を送信し、目標からの反射を受信した信号を用いて、観測速度により補正した参照信号を用いて、レンジ圧縮して距離を出力し、必要に応じて測角を行い、目標の3次元位置または2次元位置を算出する。
【0007】
すなわち、通信期間において、送信側の装置の位置、送信タイミング、送信周波数を通信情報から抽出することにより同期同調し、CW期間において、速度を抽出し、レンジング期間において、速度により補正した参照信号を用いてパルス圧縮して目標距離を観測し、また送信ビームスケジュールを通信情報から抽出することにより、受信側の装置では送信方向、周波数等に応じた受信ビームを形成し、観測範囲を効率よく観測し、目標の3[または2]次元の位置を同定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係るレーダシステムの構成を示すブロック図。
図2】第1の実施形態において、送信信号の変調パルスと拡散符号の一例を示す図。
図3】第1の実施形態において、送信信号、受信信号、通信復調結果を示す図。
図4】第1の実施形態において、同期前後の送信と受信のタイミング関係を示す図。
図5】第1の実施形態において、変調及び復調の処理の流れを示す図。
図6】第1の実施形態において、レンジ−ドップラデータを取得する様子を示す図。
図7】第1の実施形態において、クラッタがある場合のレンジ−ドップラ観測結果を示す図。
図8】第1の実施形態において、複数の送受信装置がある場合の同期/同調を実行する概念を示す図。
図9】第1の実施形態において、目標位置の同定例を示す図。
図10】第1の実施形態において、送信ビームスケジュールを通信情報から抽出して受信ビームを効率よく形成する様子を示す図。
図11】第2の実施形態に係るレーダシステムの概略構成を示すブロック図。
図12】第2の実施形態において、送信信号の変調パルスと拡散符号の一例を示す図。
図13】第2の実施形態において、送信信号、受信信号、通信復調結果を示す図。
図14】第3の実施形態に係るレーダシステムの概略構成を示すブロック図。
図15】第4の実施形態に係るレーダシステムの概略構成を示すブロック図。
図16】第4の実施形態において、搭載用レーダの場合の座標系を示す図。
図17】第5の実施形態に係るレーダシステムの概略構成を示すブロック図。
図18】第6の実施形態に係るレーダシステムの概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各実施形態の説明において、同一部分には同一符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1乃至図10を参照して、第1の実施形態に係るレーダシステムを説明する。図1に全体の系統を示し、図2(a),(b)に送信信号の変調パルスと拡散符号の一例を示し、図3(a),(b),(c)にそれぞれ送信信号、受信信号、通信復調結果を示す。
【0011】
このレーダシステムは、図1に示すように、互いに同構成のNtr個の送受信装置TR1〜TRNtr(図1ではNtr=3)を備える。送受信装置TRi(iは1〜Ntrのいずれか、図1ではi=3)は、送信装置Tiと受信装置Riとを備える。
【0012】
上記送受信装置TRiにおいて、i=1の送受信装置TR1を代表に説明する。
【0013】
送信装置T1は送信アンテナT11と送信器T12とを備え、送信器T12は送信部T121と送信変調部T122とを備える。
【0014】
受信装置R1は、受信アンテナR11と受信器R12と信号処理器R13とを備える。受信器R12は、受信部R121とローカル制御部R122とタイミング制御部R123とビーム指向方向制御部R124を備える。信号処理器R13は、Σ1ビーム系統、Σ2ビーム系統、Δビーム系統を備える。Σ1ビーム系統は、AD(Analog-Digital)変換部R131、データ保存部R132、復調部R133、制御信号生成部R134、CW期間処理部R135、速度抽出部R136、レンジング期間処理部R137、参照信号生成部R138を備える。Σ2ビーム系統は、AD変換部R139、相関処理用ウェイト部R13a、相関処理部R13b、CFAR処理部R13c、測距部R13d、測角部R13e、位置同定部R13fを備える。Δビーム系統は、AD変換部R13g、相関処理用ウェイト部R13h、相関処理部R13iを備える。
【0015】
上記送信装置T1において、送信アンテナT11は複数のアンテナ素子を配列して大開口アレイを形成してなるフェーズドアレイアンテナであり、送信器T12から繰り返し供給される特定周波数の送信信号を指定方向に送出する。送信器T12では、送信変調部T121において送信位置、送信時刻、送信周波数等の通信情報で変調された送信信号を送信部T122によって送信アンテナT11に送出する。
【0016】
上記受信装置R1において、受信アンテナR11は送信系と同様に複数のアンテナ素子を配列して大開口アレイを形成してなるフェーズドアレイアンテナであり、送信装置T1及び他の送受信装置TR1から送出された送信波の反射波を受信する。受信器R12では、受信部R121において、受信アンテナR11の複数のアンテナ素子でそれぞれ受信された信号をビーム制御指示に従って位相制御を施し合成することで、任意の方向に受信ビームを形成して受信信号を取得し、ベースバンドに周波数変換する。このようにして得られた受信信号は信号処理器R13に送られる。
【0017】
上記信号処理器R13は、受信信号をΣ1,Σ2ビーム系統とΔビーム系統に分配する。
【0018】
Σ1ビーム系統に入力された受信信号は、AD変換部R131でデジタル信号に変換されてデータ保存部R132に保存される。ここで、観測期間は通信期間、CW期間及びレンジング期間に分割される。この各期間の分割順は、入れ替えてもよい。
【0019】
復調部R133は、通信期間において、データ保存された受信信号から送信位置、送信時刻、送信周波数等の通信情報を復調する。復調された通信情報は制御信号生成部R134に送られる。この制御信号生成部R136は、通信情報に基づいて受信器R12のローカル制御部R122に対するローカル周波数制御信号、タイミング制御部R123に対するタイミング制御信号、ビーム指向方向制御部R124に対するビーム指向方向制御信号を生成する。
【0020】
また、CW期間処理部R135は、データ保存された受信信号からCW期間を切り出す。速度抽出部R136は、CW期間の受信信号から目標速度を算出する。また、レンジング期間処理部R137は、データ保存された受信信号からレンジング期間を切り出す。参照信号生成部R138はレンジング期間の受信信号を圧縮するための参照信号を生成し、CW期間の目標速度を用いて参照信号を補正する。
【0021】
Σ2ビーム系統に入力された受信信号は、AD変換部R139でデジタル信号に変換され、相関処理用ウェイト部13aで相関前処理としてウェイトを乗算され、相関処理部R13bで参照信号との相関処理によりレンジ圧縮された後、CFAR処理部R13cで所定のスレショルドを超えるセル(時間サンプル)の検出が実行される。続いて、測距部R13d、測角部R13eの測距、測角処理によりCFAR検出セルの中から目標までの距離、方向が演算され、位置同定部R13fによって目標の位置が同定され、観測結果して出力される。
【0022】
Δビーム系統に入力された受信信号は、AD変換部R13gでディジタル信号に変換され、相関処理用ウェイト部R13hで相関前処理としてウェイトを乗算され、相関処理部R13iで相関処理されて時間領域のΔビーム信号に変換された後、上記測角部R13eに送られ、測角演算に用いられる。
【0023】
上記構成によるレーダシステムにおいて、以下にその処理動作を説明する。
【0024】
図2は本実施形態の送信パルスのタイミング(図2(a)変調パルス)と各送信パルスの変調符号例(図2(b)拡散符号)を示し、図3にその処理の全体概要を示している(図3(a)送信期間、図3(b)受信期間、図3(c)目標距離)。
【0025】
本実施形態では、観測期間を通信期間、CW期間及びレンジング期間に分割し、通信期間で送信装置の位置、送信時刻、周波数情報を復調する、この各期間の分割順は、入れ替えてもよい。次に、CW期間で目標速度を算出し、レンジング期間で目標速度を用いて圧縮のための参照信号を補正して測距し、目標の3次元の位置を同定する。図2では、一例として長パルスの場合を示しているが、他の送信パルスや連続波の場合でもよい。
【0026】
まず、レーダ装置間が離隔しているため、時刻同期及び中心周波数のずれの補正が必要である。図4(a),(b),(c)に、同期前と同期後の送信タイミング、受信タイミング、通信復調出力を示して、時刻同期について説明する。
【0027】
送信装置T1では、図2に示すように、送信パルスに対して、送信位置、送信時刻、送信周波数等の通信情報を、拡散符号で変調(2次変調)する。符号化(非特許文献6参照)の方式としては、SS変調(非特許文献8参照)が考えられる。具体的には、例えばM系列コード(非特許文献7参照)があり、他のコードでもよい。この符号化の中には、±1内の小数を含むランダム信号(ノイズ)も含まれるものとする。また、ランダム信号としては、位相をランダムにすることであり、例えば周波数を変えて変調(周波数ホッピング)する方式も含まれる。この場合は、ローカル信号は同一にして、ローカル信号からの周波数を変化させれば、コヒーレント性を確保して周波数を変化できる。
【0028】
上記の符号列を用いて、次式に示すように、信号位相を変化させて、送信用信号を生成する。
【数1】
【0029】
上記はBPSK(Binary Phase shift Keying、非特許文献5参照)の場合であるが、他の位相変調方式でもよい。
【0030】
送受信装置TR1では、送信装置T1において、送信変調部T122でパルス列を符号コードにより変調して送アンテナT11から送信し、受信装置R1において、アンテナR11で捕捉した目標で反射された信号をローカル制御(R122)によって周波数変換し、AD変換(R131)によりディジタル信号に変換される。この受信信号の様子を図3に示す。受信パルス毎の受信信号は次式で与えられる。
【数2】
【0031】
この受信パルス列は、前述したようにMcmチップの信号がMcmall回繰り返したパルス列である。このMcmチップの信号を抽出するために、通信期間において相関処理を行う。相関処理のための参照信号は、次式で与えられる。
【数3】
【0032】
受信信号長と合わせるために、ゼロ埋めを行う。
【数4】
【0033】
これより、参照信号の周波数軸信号は次式となる。
【数5】
【0034】
一方、受信信号をFFT処理して
【数6】
【0035】
相関処理は周波数軸の乗算を逆FFT処理して、次式となる(非特許文献1参照)。
【数7】
【0036】
【数8】
【0037】
この相関処理後の受信信号は、図3に示すようにMcmチップ毎に積分した結果に相当し、McmチップによるPRI周期(Tcm)で、Mcmall個のピークが現れる。このMcmall個のデータが、復調したい信号に相当するため、変調方式に応じて、位相成分を抽出して復調する。また、目標反射信号の場合には、この位相成分には、目標ドップラ成分が含まれるため、復調の精度を高めるためには、目標速度に応じて、ドップラ成分による位相を補正する。この速度としては、後述するCW期間の速度成分を用いる。
【数9】
【0038】
この信号を用いて、位相成分を抽出すれば、ドップラ成分を補正した復調信号が得られる。復調信号には、送信装置の位置、送信時刻、送信周波数の通信情報が含まれている。送信装置のパルス送信時刻がわかると、図4に示すように、同期前に外れていた送信と受信のタイミングをタイミング制御(R123)で同期させ、距離ゼロを合わせることができる。このタイミング合わせは、後述する測距(R13d)の際に時刻ずれの影響を距離差(時間ずれ×光速/2)に換算して距離を補正してもよい。また、送信装置と受信装置の中心周波数がずれている場合には、ドップラ成分に誤差が生じるが、通信情報を用いて送信周波数に受信周波数を合わせることにより、正確なドップラ周波数を観測することができる。このドップラずれについても、後述する速度抽出(R136)において、中心周波数ずれ(ドップラずれΔfd)を速度差(波長×Δfd/2)に換算して速度を補正してもよい。
【0039】
以上は、通信変調の際に、(1)式に示すように、通信情報ビットをcm(p)として、変調する方式について述べた。この場合、各ビットのSNは、拡散符号系列Ccmの長さで決まる。この際、ノイズの影響を抑圧するためには、OFDM変調(非特許文献9参照)に類似の処理をすることができる。このためにcm列を逆FFT処理して、通信変調用のパルス幅全体に広げる。
【数10】
【0040】
この情報cm2を、(1)式のcmに置き換えて、(1)〜(8)式の処理を行い、scm(t)を得る。この様子を図5に示す。この相関処理後の受信信号は、McmチップによるPRI周期(Tcm)で、Mcmall個のピークが現れる。このMcmall個のデータは、(10)式に示すようにIFFT処理した情報であるため、FFT処理した結果が復調したい信号に相当する。これを用いて、変調方式に応じて位相成分を抽出して復調する。これは、Mcmall個のピークの位置をFFT処理する手法であるが、受信パルスの位置はおよそ抽出できるが、SNが低くてピークの位置を抽出しにくい場合は、受信パルスの幅内で、Mcmセル間隔毎に抽出したセル数McmallのFFT処理を、セルを1ずつずらせたMcm回実施し、FFT処理結果が最大振幅(平均の最大等)になるFFT処理結果を抽出して、位相復調すればよい。
【0041】
次にCW期間の処理について述べる。CW期間では、ドップラを観測する必要があり、図2に示すように、Mcwチップの符号を用いてMcw×Mcwall個のパルスをMcwチップずつ同一の符号で変調し、Mcwall回繰り返す。HPRFの場合のレンジング期間では、Mrngチップの符号を用いて、Mrng個のパルスを符号変調する。
【0042】
符号化の方式としては、SS変調(非特許文献8参照)が考えられる。具体的には、例えばM系列コード(非特許文献7参照)があり、他のコードでもよい。この符号化の中には、±1内の小数を含むランダム信号(ノイズ)も含まれるものとする。この信号符号列を用いて、次式に示すように、信号位相を変化させて、送信用信号を生成する。
【数11】
【0043】
上記はBPSK(Binary Phase shift Keying、非特許文献3参照)の場合であるが、他の位相変調方式でもよい。
【0044】
送受信装置TR1の符号生成制御により、パルス列を符号コードにより変調して送受信した信号を周波数変換し、AD変換によりディジタル信号に変換する。この受信信号の様子を図3に示す。各受信パルス毎の受信信号は次式で与えられる。
【数12】
【0045】
この受信パルス列は、前述したようにMcwチップの信号がMall回繰り返したパルス列である。このMcwチップの信号を抽出するために、CW期間において相関処理を行う。相関処理のための参照信号は、次式で与えられる。
【数13】
【0046】
受信信号長と合わせるために、ゼロ埋めを行う。
【数14】
【0047】
これより、参照信号の周波数軸信号は次式となる。
【数15】
【0048】
一方、受信信号をFFT処理して
【数16】
【0049】
となる。相関処理(R13b)は周波数軸の乗算に、サイドローブ低減用のウェイトを乗算し、逆FFT処理して、次式となる。
【数17】
【0050】
【数18】
【0051】
この相関処理後の受信信号は、図3に示すように、Mcwチップ毎に積分した結果に相当し、McwチップによるPRI周期で、Mall個のピークが現れる。このMall個の信号をFFT処理すれば、ドップラ信号を検出することができる。このために、図6(a)に示すようにTcw内のレンジセル(Pセル)毎に、Tcw間(slow-time軸)のFFT処理を行い、図6(b)に示すようにレンジ−ドップラデータを得る。この目標信号をCFAR(非特許文献4参照)等より抽出して、速度を算出することができ、目標が複数の場合には、複数目標の速度を得ることができる。また、クラッタがある場合には、レンジ−ドップラで観測すると、図7に示すように観測される。このままCFAR等の検出を行うと、目標のみでなくクラッタまで検出され、正しい目標速度を出力できない場合がある。この対策のために、自機の速度が既知であることと、メインローブ方向のAZ,EL角度より、クラッタの中心速度を算出できるため、それを中心に所定の速度幅の速度範囲を抑圧した上で、目標速度を抽出する。
【0052】
次に、レンジング期間の信号を用いて相関処理をするための基準参照信号を生成する。基準参照信号としては、CW期間で出力した目標速度を用いる。
【数19】
【0053】
設定した基準参照信号長はMrngであり、相関処理のために符号長をRcell(図2)にするために、ゼロ埋めしたものを参照信号とする。
【数20】
【0054】
この参照信号と入力信号との相関を算出するために、参照信号をFFT処理する。
【数21】
【0055】
一方、レンジング期間の受信信号は次式で表すことができる。
【数22】
【0056】
受信信号をFFT処理して
【数23】
【0057】
相関処理は周波数軸の乗算を逆FFT処理して、次式となる。
【数24】
【0058】
【数25】
【0059】
この様子を図3に示す。目標距離は、srng(t)をCFAR等によりスレショルド検出して、時間軸を距離軸に変換すれば算出できる。速度については、CW期間のデータにより算出した結果を出力する。
【0060】
本実施形態は、図8に示すように複数の送受信装置がある場合であるが、離隔した送受信装置のうち、1台を送信、他の1台を受信とした場合でもよい。この場合の目標位置同定例について図9に示す。図9に示すように、送信〜目標〜受信間の距離と受信から見た目標のAZ,ELの測角値と通信情報に含まれる送信位置がわかれば、目標位置を同定することができる。AZ(EL)測角手法としては、アンテナ開口をAZ(EL)面に2分割して、和信号と差信号による位相モノパルス測角(非特許文献2参照)等を用いればよい。
【0061】
以下に、通信変調した送受信装置を用いた運用例について述べる。送受信装置であれば、マルチスタティック運用時に、送信装置としても、受信装置としても用いることができる。
【0062】
送信装置のビームスケジュールを通信情報から抽出することにより、受信装置では送信方向、周波数等に応じた受信ビームを形成し、無駄な送信を不要とし、観測範囲を効率よく観測することができる。一例を図10に示す。送信ビームに対して、異なる2サイトの受信ビームを制御して、無駄なく観測することができる。
【0063】
複数のマルチスタティックの装置間で観測した場合、SN(信号電力/雑音電力)が高い目標が得られた場合の観測範囲と送信装置の位置やビーム指向方向等をデータベース化しておき、以降の観測において用いることで、環境を含めた学習効果が期待できる。
【0064】
また、キャリブレーション時においては、1台の送受信装置で観測した目標位置を基準として、その位置を通信変調し、他の送受信装置に伝送する。これにより、マルチスタティック観測した場合の位置を、基準位置により補正することができる。
【0065】
以上のように、本実施形態に係るレーダシステムは、Ntr(Ntr≧2)台の符号化またはランダム信号(ノイズ)変調を用いる送受信装置において、観測時間軸を通信期間、CW期間及びレンジング期間に分割し、通信期間では位置、送信周波数、送信時刻等の通信情報を変調信号として、他の送受信装置の受信では、直接波または目標から反射した受信波を、必要に応じてCW期間に算出した速度で補正した信号を用いて復調した後、復調信号を用いて同期及び同調させるとともに、CW期間において、Mcw(Mcw≧1)チップをMcwall回繰り返す信号により変調した送信信号を送信し、目標からの反射を受信した信号を用いて速度を算出し、レンジング期間において、Mrチップにより変調した信号を送信し、目標からの反射を受信した信号を用いて、観測速度により補正した参照信号を用いて、レンジ圧縮して距離を出力し、必要に応じて測角を行い、目標の3[または2]次元位置(x,y,z)[または(x,y)]を算出する。すなわち、通信期間において、送信装置(送受信装置)の位置、送信タイミング、送信周波数を通信情報から抽出することにより、同期同調し、CW期間において、速度を抽出し、レンジング期間において、速度により補正した参照信号を用いてパルス圧縮して目標距離を観測し、また送信ビームスケジュールを通信情報から抽出することにより、受信装置(送受信装置)では送信方向、周波数等に応じた受信ビームを形成し、観測範囲を効率よく観測し、目標の3次元または2次元の位置を同定することができる。
【0066】
(第2の実施形態)
図11乃至図13を参照して、第2の実施形態に係るレーダシステムを説明する。図11は全体の系統を示し、図12(a),(b)は送信信号の変調パルスと拡散符号の一例を示し、図13(a),(b),(c)はそれぞれ送信信号、受信信号、通信復調結果を示す。
【0067】
第1の実施形態では、比較的長パルスの場合について述べた。この場合、送信装置と受信装置が離隔している場合はよいが、送受信装置の場合には、送信ブラインドが長くなり、近距離の観測ができない。この対策のために、本実施形態ではチップ長1の単パルスを用いる場合について述べる。
【0068】
全体の系統を図11に示す。送信信号を図12に、また受信信号と処理の概要を図13に示す。通信期間、CW期間及びレンジング期間とも、第1の実施形態の長パルスの代わりに単パルスを送受信する。単パルスは、長パルスを分割して、PRI(パルス繰り返し周期)による間隙を空けた信号に相当する。
【0069】
通信期間では、図13に示すように、パルス数McmをMcmall回繰り返して送受信し、符号長Mcmの参照信号を用いて相関処理し、Mcmallの信号の位相成分を用いて通信情報を復調する。CW期間では、図13に示すように、パルス数McwをMcwall回繰り返して送受信し、符号長Mcwの参照信号を用いて相関処理し、Mcwallの信号を図6と同様に、レンジセル毎にFFT処理してドップラ成分を抽出し、目標速度を算出する。レンジング期間では、図13に示すように、パルス数Mrngを送受信し、符号長Mrngの参照信号を用いて相関処理し、目標距離を算出する。
【0070】
これにより、算出した距離と必要に応じて測角値を用いて、図8または図9のように目標の3次元位置(2次元位置)を同定する。
【0071】
以上のように、本実施形態に係るレーダシステムは、通信期間、CW期間及びレンジング期間の送信パルス列に対して、チップ長1の符号化またはランダム信号による変調を用いた単パルスを用いる。すなわち、通信期間、CW期間及びレンジング期間において、符号化した単パルスを用いることにより、LPI性を確保しつつ、遠距離のブラインドを抑えて、測速及び測距離ができ、目標の3次元位置(2次元位置)を同定できる。
【0072】
(第3の実施形態)
図14を参照して、第3の実施形態に係るレーダシステムを説明する。図14は全体の系統を示す。
【0073】
第1及び第2の実施形態では、個々のレーダ装置に送受信装置を用いた場合について述べた。本実施形態では、送信装置と受信装置が分離されている場合について述べる。
【0074】
本実施形態に係るレーダシステムは、Nt(Nt≧1)台(図14ではN台)の送信装置T1〜TNとNr(Nr≧1、Nt+Nr≧(4、3)(3次元位置同定、2次元位置同定)台(図14では1台)の受信装置R1を備える。
【0075】
送信装置T1は、図1の送受信装置TR1に示したものと同様に、アンテナT11、送信器T12を備え、送信器T12は送信部T121及び送信変調部T122を備える。同様に、送信装置TNは、アンテナTN1、送信器TN2を備え、送信器TN2は送信部TN21及び送信変調部TN22を備える。
【0076】
上記受信装置R1は、図1の送受信装置TR1に示したものと同様に、受信アンテナR11、受信器R12、信号処理器R13を備える。但し、信号処理器R13において、位置同定部R13fは除かれている。
【0077】
すなわち、本実施形態のレーダシステムでは、観測時間軸を通信期間、CW期間及びレンジング期間に分割し、通信期間では位置、送信周波数、送信時刻等の情報を変調信号として、他の受信装置では、直接波または目標から反射した受信波を、必要に応じてCW期間に算出した速度で補正した信号を用いて復調した後、復調信号を用いて同期及び同調させるとともに、CW期間において、Mcw(Mcw≧1)チップをMcwall回繰り返す信号により変調した送信信号を送信し、目標からの反射を受信した信号を用いて速度を算出し、レンジング期間において、Mrチップにより変調した信号を送信し、目標からの反射を受信した信号を、観測速度により補正した参照信号を用いてレンジ圧縮して距離を出力し、必要に応じて測角を行い、目標の3[または2]次元位置(x,y,z)[または(x,y)]を算出する。
【0078】
送信装置T1〜TNは、広範囲の観測範囲を覆うような送信ビームを形成する簡易型でよいが、アンテナがビーム走査できるものでもよい。その場合は、ビームスケジュールを含めて通信変調する。受信装置の通信復調方式、パルス圧縮処理等は、第1または第2の実施形態と同様である。
【0079】
受信装置R1から見て、目標の測角値と、通信情報から入手した送信位置がわかれば、送信〜受信の距離を観測することにより、目標の3次元位置を同定することができる。
【0080】
以上のように、本実施形態に係るレーダシステムは、Nt(Nt≧1)台の送信装置とNr(Nr≧1、Nt+Nr≧(4,3)(3次元位置同定、2次元位置同定)台の受信装置において、観測時間軸を通信期間、CW期間及びレンジング期間に分割し、通信期間では位置、送信周波数、送信時刻等の通信情報を変調信号として、他の受信装置では、直接波または目標から反射した受信波を、必要に応じてCW期間に算出した速度で補正した信号を用いて復調した後、復調信号を用いて同期及び同調させるとともに、CW期間において、Mcw(Mcw≧1)チップをMcwall回繰り返す信号により変調した送信信号を送信し、目標からの反射を受信した信号を用いて速度を算出し、レンジング期間において、Mrチップにより変調した信号を送信し、目標からの反射を受信した信号を、観測速度により補正した参照信号を用いてレンジ圧縮して距離を出力し、必要に応じて測角を行い、目標の3[または2]次元位置(x,y,z)[または(x,y)]を算出する。
【0081】
すなわち、送信装置と受信装置が離隔している場合に、通信期間において、送信装置(送受信装置)の位置、送信タイミング、送信周波数を通信情報から抽出することにより、同期同調し、CW期間において、速度を抽出し、レンジング期間において、速度により補正した参照信号を用いてパルス圧縮して目標距離を観測し、また送信ビームスケジュールを通信情報から抽出することにより、受信装置(送受信装置)では送信方向、周波数等に応じた受信ビームを形成し、観測範囲を効率よく観測し、目標の3次元位置(または2次元位置)を同定することができる。
【0082】
(第4の実施形態)
図15及び図16を参照して、第4の実施形態に係るレーダ装置を説明する。図15に全体の系統を示し、図16に搭載用レーダの場合の座標系を示す。なお、図15において、図14とは位置同定部R13fを備える点が異なる。
【0083】
第1乃至第3の実施形態では、受信装置からみてAZ、ELの測角値と送信〜受信の距離を用いて目標の位置を同定する手法について述べた。この場合、受信装置が比較的大型で測角精度が高い場合には、3次元位置精度が高いが、受信装置が小型の場合には、測角精度が低く、位置精度が低くなる。本実施形態では、この対策のために、主に、複数の送信〜受信の距離を用いて3次元位置の同定を行う手法について述べる。
【0084】
図16に示すように送信装置を3台とすると、受信装置についても同様の処理を行い、送信1〜目標〜受信、送信2〜目標〜受信までの各々の距離として、R1a、R2a、R3aを得ることができる。
【0085】
この距離を用いて、図16に示すように、目標位置(x,y,z)を算出する。この手法としては、R1、R2及びR3の楕円球面の交点となる。その中で、受信レーダ装置により観測したAZ角、EL角方向の3次元の位置を中心に、所定の範囲内を目標存在領域として、その中の交点を算出する。目標存在領域内の点を(x,y,z)の格子点に分割し、各々の点で次式の値が最小となる点(x,y,z)を算出する。
【数26】
【0086】
なお、受信装置に送受信機能がある場合には、送信装置は2台により、同様の方法での交線の中点を目標の3次元の観測位置として出力することができる。
【0087】
また、例えば、送信装置1台の場合に、受信装置3台あれば、同様にR1〜R3が得られるため、同様の手法で3次元の位置を決めることができる。また、複数の送信装置の場合には、目標のSNが低いレーダが含まれる場合があり、そのまま3次元の位置を算出すると、位置誤差が増える場合が考えられる。この対策のため、SN値に所定のスレショルドを設けて、スレショルド以上の送信〜受信装置の値を用いて位置を算出する。
【0088】
また、上記実施形態の構成は、目標の3次元の位置を出力する場合について述べたが、目標の2次元の位置(x,y)を出力する場合は、送信装置+受信装置の数は、送信装置2台+受信装置1台以上、または、送信装置1台+受信装置2台以上であればよい。
【0089】
以上のように、本実施形態に係るレーダシステムは、送信と受信の(3,2)(3次元位置同定、2次元位置同定)組以上の距離Rと、受信装置の測角値より、交点を算出することにより、目標の(3,2)次元位置を算出する。
【0090】
(第5の実施形態)
図17を参照して、第5の実施形態に係るレーダ装置を説明する。
【0091】
本実施形態では、送信装置間で情報を共有できる場合について述べる。送信装置T1〜TNは、送信機能を持っているため、通信復調できるための受信機能を持っていれば、直接波や目標からの反射信号を復調して、送信装置間で通信情報を共有できる。系統を図17に示す。
【0092】
図17において、送信装置T1は、アンテナT11及び送信器T12と共に、信号処理器T13及び位置駆動装置T14を備える。信号処理器T13は、送信パルスを変調する変調信号を生成する変調信号生成部T130と、アンテナT11を通じて受信信号を検波する受信部T131と、受信信号をディジタル信号に変換するAD変換部T132と、ディジタル化された受信信号にFFT処理用のウェイトを乗算するFFT用ウェイト部T133とウェイトが乗算された受信信号をFFT処理して周波数領域の信号に変換するFFT処理部T134と、周波数領域でスレショルドを超える信号を求めるCFAR処理部T135、CFAR出力から送信情報を復調する復調部T136、復調された送信情報に基づいて受信ビームの指向方向を制御するビーム指向方向制御部T137、復調された送信情報に基づいて位置駆動装置T14を駆動制御する位置制御部T138を備える。
【0093】
同様に、送信装置TNは、アンテナTN1及び送信器TN2と共に、信号処理器TN3及び位置駆動装置TN4を備える。信号処理器TN3は、変調信号生成部TN30と、受信部TN31と、AD変換部TN32と、FFT用ウェイト部TN33と、FFT処理部TN34、CFAR処理部TN35、復調部TN36、ビーム指向方向制御部TN37、位置制御部TN38を備える。
【0094】
図17において、送信装置T1〜TNは、復調部T136により、他の送信装置の情報(送信位置、送信ビーム方向、送信周波数、送信時間等)を復調し、他の送信装置に伝送するために変調信号を生成して、送信変調する。これにより、所定の観測範囲が予め既知であれば、送信装置間で所定の観測範囲を覆う送信ビームを形成するように、送信装置の位置、ビーム指向方向を最適化する制御が可能となる。
【0095】
以上のように第5の実施形態に係るレーダシステムは、送信装置に送信波を通信復調できる受信手段をもち、送信間で通信情報を共有することにより、送信位置とビーム指向方向を、所定の観測範囲に設定する。すなわち、送信の位置及びビーム指向方向を、所定の観測範囲に応じて最適制御することができる。
【0096】
(第6の実施形態)
図18を参照して、第6の実施形態に係るレーダシステムを説明する。図18はシステム全体の系統を示す。但し、図18において、受信装置R1に通信装置R13jが付加されている点が図17と異なる。
【0097】
第5の実施形態では、送信装置間のみの情報共有手法について述べた、本実施形態では、更に受信装置との情報を共有できる手法について述べる。受信装置R1は、他からの電波放射を極力抑圧するために、有線を含む簡易な通信装置R13jを備える。無線の場合は、受信装置R1から極力離隔した位置まで有線とし、その位置から送信装置T1〜TNに無線で情報を送信する。
【0098】
送信する情報としては、送信装置の電源ON/OFF、送信タイミング、送信周波数、送信周波数スイープ帯域、観測範囲(ビーム指向方向)、送信装置の位置等がある。
【0099】
受信装置の近傍の送信装置は、受信装置の通信情報を復調すると、他の送信装置に伝送するために、送信波を変調する。これにより、受信装置も含めて、送信装置間で情報を共有できる。これにより、送信装置〜受信装置まで情報を共有できるため、所定の範囲の目標を観測するために、送信装置の位置、送信ビーム/受信ビ−ムの指向方向等の最適な制御が可能となる。
【0100】
なお、本実施形態は、受信装置から送信装置へは通信装置R13jを用いた通信を行うが、第1の実施形態では、複数の送受信装置間で、レーダ波に通信情報を重畳するため、本実施形態と同様の機能を持たせることができる。
【0101】
また、本実施形態では、送信装置が受信機能をもっているため、送信装置で目標を観測し、受信装置側に送信波に目標位置情報を変調して、伝送することも可能であるが、送信装置の受信規模が増大するという問題が生じる。本実施形態では、送信装置の受信機能は極力簡易にする範囲としている。同様に受信装置の通信機能も、電波を極力送信しないことを特徴とするため、簡易な通信機能としている。
【0102】
以上のように、第6の実施形態に係るレーダシステムは、受信装置から、Ntp(Ntp≧1)個の送信装置への通信手段により、送信制御信号を伝送し、送信装置では、送信装置間の送信波の受信手段により、情報共有し、制御を行う。すなわち、送信の位置及びビーム指向方向を受信側で観測した情報を用いて、必要最低限の通信手段を用いて最適制御を実施することができる。
【0103】
なお、本発明は上記実施形態をそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0104】
TR1〜TR3…送受信装置、
T1,TN…送信装置、T11,TN1…送信アンテナ、T12,TN2…送信器、T121,TN21…送信部、T122,TN22…送信変調部、T13,TN3…信号処理器、T14,TN4…位置駆動装置、T130,TN30…変調信号生成部、T131,TN31…受信部、T132,TN32…AD変換部、T133,TN33…FFT用ウェイト部、T134,TN34…FFT処理部、T135,TN35…CFAR処理部、T136,TN36…復調部、T137,TN37…ビーム指向方向制御部、T14,TN4…位置駆動装置、T138,TN38…位置制御部、
R1…受信装置、R11…受信アンテナ、R12…受信器、R13…信号処理器、R121…受信部、R122…ローカル制御部、R123…タイミング制御部、R124…ビーム指向方向制御部、R13…信号処理器、R131…AD変換部、R132…データ保存部、R133…復調部、R134…制御信号生成部、R135…CW期間処理部、R136…速度抽出部、R137…レンジング期間処理部、R138…参照信号生成部、R139…AD変換部、R13a…相関処理用ウェイト部、R13b…相関処理部、R13c…CFAR処理部、R13d…測距部、R13e…測角部、R13f…位置同定部、R13g…AD変換部、R13h…相関処理用ウェイト部、R13i…相関処理部、R13j…通信装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18