(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記危険の発生が予測されると前記制御装置が判断した場合に、前記危険に関する情報を前記作業員または前記他の作業員に通知する第1通知装置をさらに備える、請求項1に記載のエレベータ安全管理システム。
前記危険の発生が予測されると前記制御装置が判断した場合に、前記危険に関する情報を前記作業の現場以外にいる者に通知する第2通知装置をさらに備える、請求項1または2に記載のエレベータ安全管理システム。
前記作業員の作業開始前に、前記作業員の情報を前記記録装置に記録し、前記作業員の作業中に、前記作業員の位置と前記記録装置に記録された前記作業員の情報とを前記表示装置に表示する、請求項7に記載のエレベータ安全管理システム。
エレベータの内部または付近に設置された受信装置であって、前記エレベータで作業する作業員が所持し、前記作業員の位置を通知する電磁波を送信する送信装置から、前記電磁波を受信する受信装置と、
前記作業員が前記エレベータで作業する間、前記受信装置により受信された前記電磁波に基づいて、前記作業員と前記エレベータを構成する機器との位置関係を常時把握し、前記作業員または前記エレベータで作業する他の作業員に前記エレベータによる危険が発生することが予測される場合に、前記危険を事前に回避するよう前記エレベータを制御する制御装置と、
前記受信装置により受信された前記電磁波に基づいて把握された前記作業員の位置と、前記エレベータを構成する機器の位置とを表示する表示装置と、
を備えるエレベータ安全管理システム。
【背景技術】
【0002】
エレベータの据付時や保守時に、作業員は、作業ルールを守った上で、エレベータ機器などの状況を確認しながら、自らの意思で安全確保を行っている。また、複数の作業員による共同作業では、作業員同士が、目視や声掛けによりお互いに注意喚起を行い安全確保に努めている。
【0003】
ところが、安全確保のための注意項目が多岐にわたり、すべてを確認することは大変な労力となりつつある。また、作業負荷が増大したときに、無意識に安全確認を省いてしまうことや、手順を間違えてしまうこともある。例えば複数の作業員が共同作業を行う場合には、相手の指示が聞こえない場合や、指示内容を聞き間違えた場合や、指示内容の思い込みがあった場合などに、正確な意思疎通が行えず災害につながることがある。
【0004】
このように、作業現場では作業員の意思のみが安全確保の命綱となっており、必須作業を省いたり手順を間違えたりすると、災害が起こるおそれがある。あるいは、災害が起こらずとも、作業員が危険に晒されるおそれがある。また、現場における作業状況を、現場にいない監督者などが確認することはできない。災害が起きた場合に、その後に作業状況を検証しても、それは推測でしかない。
【0005】
作業員の安全確保に関しては、エレベータ機器と作業員との衝突防止に関する種々の提案がなされている。例えば、作業員がピットにいる場合において、釣合おもりが作業員に向かって下降してきたときに、釣合おもりが作業員に衝突する直前に釣合おもりの到来を検知し、到来の検知に応じてエレベータを停止させる提案がなされている。
【0006】
エレベータ保守では一般に、昇降路内に人がいる場合、通常速度でのエレベータ運転は行わず、通常速度より遅い点検速度でのエレベータ運転を行う。前者を通常運転と呼び、後者を点検運転と呼ぶ。ピットに人がいることを認識できていない状況で通常運転を行った場合、ピットの人は、高速で下降してくるエレベータのかごや釣合おもりに気付かないか、これらを避けきれずに衝突してしまうと考えられる。また、点検運転を行った場合でも、エレベータを操作する人がピットに人がいることを認識していないか、ピットにいる人がエレベータのかごや釣合おもりが下降していることを認識できていない場合は、衝突が起こることが考えられる。これらの場合、かごや釣合おもりが作業員に衝突する直前にエレベータを自動で停止させるという手法では、作業員に徐々に危険が迫るという状況を回避することができない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の作業員1、送信装置(送信機)2、および受信装置(受信機)3の位置関係を示す模式図である。
【0013】
送信装置2は、エレベータで作業する作業員1により所持され、作業員1の位置を通知する電磁波を送信する。受信装置3は、エレベータの内部または付近に設置され、送信装置2から送信された電磁波を受信する。
【0014】
本実施形態の送信装置2は、電磁波として微弱電波を発し、送信装置2と近距離にある受信装置3と微弱電波により通信する。また、本実施形態の受信装置3は、作業員1が立ち入る場所の床面などに設置されている。よって、作業員1は、送信装置2がなるべく受信装置3の設置場所と近くなる位置に送信装置2を身に着けることが望ましく、例えば自身の足元に送信装置2を身に着けることが望ましい。
【0015】
図2は、第1実施形態のエレベータ設置施設の構成を示す断面図である。
【0016】
図2は、エレベータ設置施設内の作業員1として、かご上作業員1aと、かご内作業員1bと、ピット作業員1cと、乗場作業員1dとを示し、これらの作業員1が所持する送信装置2として、かご上送信装置2aと、かご内送信装置2bと、ピット送信装置2cと、乗場送信装置2dとを示し、エレベータ設置施設内の受信装置3として、かご上受信装置3aと、かご内受信装置3bと、ピット受信装置3cと、乗場受信装置3dとを示している。
【0017】
図2はさらに、本施設内のエレベータを構成するかご4と、釣合おもり5と、乗場ドア6と、昇降路ピット7と、かご上スイッチ8と、ピットスイッチ9とを示している。かご上スイッチ8やピットスイッチ9は、後述する安全スイッチおよび点検スイッチを備えている。
図2は、エレベータ設置施設の例として、3階建て以上の建屋を示している。
【0018】
本実施形態の作業員1は、かご上、かご内、ピット、各階乗場などに作業のために滞在する可能性がある。そのため、本実施形態の受信装置3は、本施設内においてこれらの場所に設置されている。
【0019】
図3は、第1実施形態のエレベータ安全管理システムの構成を示す模式図である。
【0020】
図3のエレベータ安全管理システムは、
図2に示すエレベータにおける安全を管理するために構築されており、上述の送信装置2と、上述の受信装置3と、エレベータ制御盤11と、ローカル監視装置12と、リモート監視装置13により構成されている。エレベータ制御盤11は制御装置の例であり、送信装置2は第1通知装置の例であり、ローカル監視装置12やリモート監視装置13は第2通知装置の例である。
【0021】
エレベータ制御盤11は、
図2に示すエレベータの動作を制御する。エレベータ制御盤11は例えば、作業員1がエレベータで作業する間、受信装置3により受信された電磁波に基づいて、作業員1とエレベータを構成する機器との位置関係を常時把握する。即ち、エレベータ制御盤11は、作業員1がエレベータで作業している作業時間内を通じて、作業員1とエレベータを構成する機器との位置関係を把握し続ける。エレベータを構成する機器の例は、かご4や釣合おもり5などである。そして、エレベータ制御盤11は、エレベータで作業するいずれかの作業員にエレベータによる危険が発生することが予測される場合に、この危険を事前に回避するようエレベータを制御する。
【0022】
例えば、かご上作業員1aがかご上で作業し、ピット作業員1cがピットで作業している際に、かご上作業員1aがエレベータの誤操作を行った場合、エレベータ制御盤11は、かご上作業員1aやピット作業員1cにじきに危険が発生すると予測することができる。理由は、かご4が最上階に到達するとかご上作業員1aが危険であるし、かご4や釣合おもり5が最下階に到達するとピット作業員1cが危険であるからである。そこで、エレベータ制御盤11は、危険が発生する直前にエレベータを停止するのではなく、危険が発生すると予測したらすぐにエレベータを停止する。エレベータ制御盤11は例えば、かご上作業員1aがエレベータの誤操作を行った時点でエレベータを停止する。これにより、危険を事前に回避することが可能となり、危険が発生する直前にエレベータを停止する場合に比べて、作業員1の安全性を向上させることが可能となる。
【0023】
エレベータ制御盤11は、エレベータ操作信号として、エレベータの高速運転を要求する高速運転操作信号や、エレベータの点検運転を要求する点検運転操作信号や、安全スイッチのオン/オフ信号や、点検スイッチのオン/オフ信号を受信し、これらのエレベータ操作信号に応じてエレベータの動作を制御する。なお、このような制御の詳細については後述する。
【0024】
符号P1は、エレベータ制御盤11とローカル監視装置12が、エレベータ設置施設内に設置されていることを示している。符号P2は、リモート監視装置13が、エレベータ設置施設外に設置されていることを示している。
【0025】
ローカル監視装置12は、本施設内でエレベータの動作を監視するために設けられており、例えば本施設内のエレベータ機械室や管理室に設けられている。ローカル監視装置12は、例えばPC(Personal Computer)などのコンピュータであり、プロセッサなどの制御装置12aと、メモリやストレージなどの記録装置12bと、マウスやキーボードなどの操作装置12cと、ディスプレイなどの表示装置12dとを備えている。
【0026】
リモート監視装置13は、本施設外でエレベータの動作を監視するために設けられており、例えば作業員1が所属する企業の事務所内に設けられている。リモート監視装置13は、例えばPCなどのコンピュータであり、プロセッサなどの制御装置13aと、メモリやストレージなどの記録装置13bと、マウスやキーボードなどの操作装置13cと、ディスプレイなどの表示装置13dとを備えている。
【0027】
ローカル監視装置12とリモート監視装置13はいずれも、作業の現場(
図2に示すエレベータ)以外の場所に設けられており、作業の現場以外にいる者が現場における作業状況を確認するためなどに使用される。ローカル監視装置12とリモート監視装置13は、エレベータ制御盤11と有線ネットワークで接続されていてもよいし、無線ネットワークで接続されていてもよい。有線ネットワークの例は、電話回線である。
【0028】
なお、エレベータ制御盤11は、ローカル監視装置12と同様に、メモリやストレージなどの記録装置や、マウスやキーボードなどの操作装置や、ディスプレイなどの表示装置を備えていてもよい。また、本実施形態では施設内にエレベータ制御盤11とは別にローカル監視装置12が設けられているが、代わりに、エレベータ制御盤11にローカル監視装置12の機能を持たせることで、施設内にローカル監視装置12を設けなくてもよい。
【0029】
図4と
図5はそれぞれ、第1実施形態のエレベータ設置施設のピットに作業員1がいる場合のエレベータ走行(高速運転)の例を示す断面図とフローチャートである。
【0030】
ピット(昇降路ピット7)に作業員1(ピット作業員1c)がいるときには、作業員1にかご4や釣合おもり5が衝突する危険があるため、エレベータ制御盤11は、正常であればかご4の高速運転を行わない。ところが、この作業員1の作業手順の間違いにより、かご4が高速運転可能な状態になっている場合がある。この場合、他の作業員1や一般の利用者が、かご4に乗り込みかご呼びを行った場合や、どこかの階で乗場呼びを行った場合には、従来であればかご4は高速運転を開始してしまう。本実施形態のエレベータ制御盤11は、これを回避するための制御を行う。
【0031】
作業手順の間違いの一例は、作業員1がピットに入った後、乗場ドア6が閉じた状態でピットスイッチ9の点検スイッチをオンにしていない場合である。作業手順の間違いの別の例は、作業員1がピットでの作業を終了してピットから外に出る際に、乗場ドア6を開ける前にピットスイッチ9の点検スイッチをオフにしてしまった場合である。これらの場合、かご4の高速運転を許すべきではないにもかかわらず、かご4は高速運転可能な状態になっている、即ち、点検スイッチがオフになっている。
【0032】
仮にかご4が最下階または最上階まで移動した場合、ピット作業員1cの頭上にかご4または釣合おもり5が接近し、ピット作業員1cに衝突することが考えられる。これを防止するために、ピットにピット作業員1cがいるときには、ピット受信装置3cが継続してピット作業員1cの位置を検知し、検知された位置をエレベータ制御盤11の記録装置に記録する(ステップS1)。なお、検知された位置は、代わりにローカル監視装置12の記録装置12bに記録してもよい(以下同様)。
【0033】
ここで、ピットに作業員1がいるにもかかわらず、かご4が高速運転可能な状態になっている、即ち、点検スイッチがオフになっている場合を想定する(ステップS2)。この場合、他の作業員1や一般の利用者が、かご4に乗り込みかご呼びを行った場合や、どこかの階で乗場呼びを行った場合には(ステップS3)、従来であればかご4は高速運転を開始してしまう。
【0034】
しかしながら、本実施形態のエレベータ制御盤11は、ピット受信装置3cがピット作業員1cを検知しているときには、高速運転を実施しない(ステップS4)。例えば、ピット受信装置3cがピット作業員1cを検知しているときには、実施中の高速運転は停止し、新たな高速運転は開始しない。よって、ステップS3でかご呼びや乗場呼びが行われても、かご4を走行させず停止したままとする。
【0035】
この際、エレベータ制御盤11は、ピットに人がいるためかご4が動かせない旨を、かご内や乗場で操作を行った人に向けてアナウンスする(ステップS5)。また、ピット作業員1cが所持する送信装置2に、受信装置3からの信号を受信する機能を追加すれば、かご4が高速運転の操作をされたことをピット作業員1cにもアナウンスすることが可能となり(ステップS6)、作業手順の間違いを犯していることをピット作業員1cに気付かせることが可能となる。
【0036】
例えば、ステップS4において高速運転を実施しない場合、エレベータ制御盤11は、かご4が高速運転の操作をされたことを示す信号をピット受信装置3cからピット送信装置2cへと送信し、この操作がされた事実をピット作業員1cに通知する。ピット送信装置2cは、この事実をピット送信装置2cからの音声出力によってピット作業員1cに通知してもよいし、ピット送信装置2cの画面上でのモニタ表示によってピット作業員1cに通知してもよい。
【0037】
さらに、エレベータ制御盤11は、他の作業員1の送信装置2や、ローカル監視装置12や、リモート監視装置13にこの信号を送信し、この作業員1や、ローカル監視装置12の使用者や、リモート監視装置13の使用者に上記事実を通知してもよい。これらの場合にも、当該通知は音声出力で行ってもモニタ表示で行ってもよい。
【0038】
その後、ステップS4の高速運転の中止は、作業手順の間違いが解消されるまで継続される(ステップS7)。なお、未説明のステップS11〜S15については後述する。
【0039】
図6は、第1実施形態のエレベータ設置施設のピットに作業員1がいる場合のエレベータ走行(点検運転)の例を示す断面図である。なお、以下の説明中に登場するステップ番号については、
図5を参照されたい。
【0040】
かご上作業員1aが、かご上スイッチ8の点検スイッチをオンにすると、かご4は点検運転可能な状態になる(ステップS11)。かご上作業員1aが、ピット作業員1cの存在に気付いていない状態で点検運転の操作を行った場合には、ピット作業員1cは、かご4や釣合おもり5が下降してきたことに気付かずに、かご4や釣合おもり5に衝突することが考えられる。
【0041】
しかし、ピット受信装置3cはピット作業員1cの存在を検知していることから(ステップS1)、エレベータ制御盤11は、かご上で点検運転の操作を行われた時点で、ピット作業員1cが存在する旨をかご上作業員1aにアナウンスしてから点検運転を開始する(ステップS12、S13、S15)。同時に、エレベータ制御盤11は、かご4が点検運転される旨をピット作業員1cにもアナウンスする(ステップS14)。なお、これらのアナウンスは、ステップS5、S6のアナウンスと同様に実行可能である。
【0042】
なお、点検運転の操作は、かご上だけでなくかご内でも実行可能である。かご内で点検運転の操作が行われた場合の制御は、かご上で点検運転の操作が行われた場合の制御と同様に実行可能である。
【0043】
図7と
図8はそれぞれ、第1実施形態のエレベータ設置施設のかご上などに作業員1がいる場合のエレベータ走行の例を示す断面図とフローチャートである。
図8のフローチャートは、
図5のフローチャートにステップS1’を追加したものである。
【0044】
かご上またはピットに作業員1(かご上作業員1aまたはピット作業員1c)がいるときには、作業員1にかご4や釣合おもり5が衝突する危険があるため、エレベータ制御盤11は、正常であればかご4の高速運転を行わない。ところが、この作業員1の作業手順の間違いにより、かご4が高速運転可能な状態になっている場合がある。この場合、他の作業員1や一般の利用者が、かご4に乗り込みかご呼びを行った場合や、どこかの階で乗場呼びを行った場合には、従来であればかご4は高速運転を開始してしまう。本実施形態のエレベータ制御盤11は、これを回避するための制御を行う。
【0045】
仮にかご4が最下階または最上階まで移動した場合、かご4または釣合おもり5がかご上作業員1aまたはピット作業員1cに衝突することが考えられる。これを防止するために、ピットにピット作業員1cがいるときには、ピット受信装置3cが継続してピット作業員1cの位置を検知し、検知された位置をエレベータ制御盤11の記録装置に記録する(ステップS1)。また、かご上にかご上作業員1aがいるときには、かご上受信装置3aが継続してかご上作業員1aの位置を検知し、検知された位置をエレベータ制御盤11の記録装置に記録する(ステップS1’)。
【0046】
図8のステップS2〜S15は、
図5のステップS2〜S15と同様に実施可能である。ただし、
図8のステップS5、S6、S13、S14では、かご上作業員1aもアナウンス(通知)の対象となる。
【0047】
図5と
図8のいずれのフローチャートでも、昇降路ピット7の内部に作業員1がいる場合には高速運転は許されていない。そして、もし上述のような人間系のミスが生じた場合には、エレベータ制御盤11が高速運転を中止する(ステップS4)。これにより、エレベータで作業する作業員1の安全性を向上させることが可能となる。
【0048】
また、昇降路ピット7の内部に作業員1がいる状況下で点検運転を行う場合には、一般には作業員1同士が合図復唱で確認しあう。本実施形態では、この合図復唱が上手く機能しなかった場合にも、エレベータ制御盤11から作業員1へのアナウンスによって作業員1に点検運転の開始を気付かせることができる。
【0049】
図9は、第1実施形態の安全スイッチS1と点検スイッチS2を示す斜視図である。
【0050】
本実施形態のかご上スイッチ8やピットスイッチ9は、
図9に示すように、安全スイッチS1および点検スイッチS2を備えている。安全スイッチはS1は、オンとオフとの切り替えが可能であり、通常時はオフにセットされている。点検スイッチはS2は、通常運転(オフ)と点検運転(オン)との切り替えが可能であり、通常時は通常運転(オフ)にセットされている。
【0051】
作業員1が点検スイッチを点検運転に切り替えると、かご4は点検運転ができる状態となる。かご上スイッチ8やピットスイッチ9はさらに、かご4の上昇操作や下降操作を行うためのボタンを備えている。作業員1は、これらのボタンを操作することで点検運転を行う。
【0052】
図10は、第1実施形態のモニタ表示の例を説明するための図である。
図11は、第1実施形態のモニタ表示の別の例を説明するための図である。
【0053】
本実施形態のエレベータ制御盤11は、各受信装置3により受信された電磁波に基づいて把握された各作業員1の位置と、エレベータを構成する機器の位置とを、ローカル監視装置12の表示装置12dや、リモート監視装置13の表示装置13dに表示する。エレベータを構成する機器の例は、かご4や釣合おもり5などであり、これらの位置の情報はエレベータ制御盤11が管理している。
【0054】
図10の表示画面21や、
図11の表示画面22は、これらの表示装置12d、13dに表示される表示画面の例を示している。前者はGUI(Graphical User Interface)の例に相当し、後者はCUI(Character User Interface)の例に相当する。
【0055】
図10の表示画面21は、エレベータの断面図内で、かご4の位置と、釣合おもり5の位置とを示している。表示画面21はさらに、作業員1がいる場所を黒の三角で示し、作業員1がいない場所を白の三角で示している。
【0056】
図11の表示画面22は、かご4の上下方向の位置と、釣合おもり(C/W)5の位置とを黒の四角で示している。表示画面22はさらに、作業員1がいる場所を黒の丸で示し、作業員1がいない場所を白の○で示している。
【0057】
本実施形態では、表示画面21、22ともに、作業員1の移動を連続的に表示する必要はなく、作業員1が各場所に「いる」か「いない」の判定結果を表示すれば十分である。例えば、作業員1が1階乗場から階段を使って2階に移動したときには、階段を移動する作業員1を追跡する必要はなく、1階乗場に作業員1が「いる」か「いない」かと、2階乗場に作業員1が「いる」か「いない」かを判定して表示すれば十分である。監督者は、表示画面21、22を確認することで、作業現場にいなくても作業員1の位置とかご4や釣合おもり5などの位置とを把握することができ、作業員1の作業状況を適切に監視することができる。
【0058】
エレベータ制御盤11はさらに、各作業員1が行ったエレベータの操作を表示画面21、22に表示してもよい。例えば、作業員1の作業手順に間違いがあった場合に、作業手順の間違いや危険のおそれを通知する警報を表示画面21、22に表示してもよい。このような警報は、その間違いを犯した作業員1の送信装置2のモニタや、その他の作業員1の送信装置2のモニタに表示してもよい。また、このような警報は、モニタ表示の代わりにまたはモニタ表示と共に、音声出力により行ってもよい。
【0059】
この場合、警報を送信装置2とリモート監視装置13とに表示するだけでなく、送信装置2とリモート監視装置13との間の双方向通信を可能としてもよい。これにより、作業者1が一人作業を行う場合や、経験の浅い作業員1が作業を行う場合などに、事務所の監督者から現場の作業員1にアドバイスを行うことなどが可能となる。別言すると、安全性の向上だけでなく作業の見える化を図ることが可能となる。これは、リモート監視装置13ではなくローカル監視装置12から行ってもよい。
【0060】
また、警報には複数のレベルを設けてもよい。例えば、エレベータ制御盤11は、いずれかの作業員1にすぐに危険が及ぶ場合には、第1のレベルの警報(高レベル警報)を表示画面21、22等に出力する。また、エレベータ制御盤11は、いずれの作業員にもすぐには危険が及ばないが、この危険を放置するといずれかの作業員1に危険が及ぶ場合には、第1レベルより低い第2レベルの警報(低レベル警報)を出力する。これにより、作業者1や監督者により適切な対応を促すことが可能となる。
【0061】
また、エレベータ制御盤11は、表示画面21、22等への表示対象となる情報を、あらかじめエレベータ制御盤11の記録装置に記録しておいてもよい。例えば、エレベータ制御盤11は、作業員1の作業開始前に、この作業員1の情報を記録装置に記録し、この作業員1の作業中に、この作業員1の位置と、記録装置に記録されたこの作業員1の情報とを表示画面21、22等に表示する。このような情報の例は、各作業員1の経験が浅いか否かを示す情報である。この場合、監督者は、ある位置で作業中の作業員1が経験が浅いと表示されている場合には、この位置の作業員1を重点的に監督対象とすることができる。
【0062】
また、エレベータ制御盤11は、表示画面21、22等への表示対象となる情報を、表示画面21、22への表示後に記録装置に記録してもよい。このような情報の例は、各作業員1が行った操作の履歴である。これにより、災害が発生した場合にこの情報を現場検証に使用することが可能となる。なお、以上の情報は、エレベータ制御盤11の記録装置に記録する代わりに、ローカル監視装置12の記録装置12bや、リモート監視装置13の記録装置13bに記録してもよい。
【0063】
図12は、第1実施形態の高速運転の詳細を説明するための表である。
図13は、第1実施形態の点検運転の詳細を説明するための表である。
【0064】
図12は、高速運転の際に、操作作業員、即ち、エレベータの操作を行った作業員1に出力される警報(アナウンス)と、非操作作業員、即ち、その他の作業員1に出力される警報(アナウンス)と、エレベータがとる状態とを示している。
【0065】
点検スイッチがオフの場合には、高速運転が可能である。しかしながら、かご上やピットに非操作作業員がいることが検知されると、操作作業員が高速運転の操作を行っても、
図12に示すように高速運転は開始されない。一方、かご内や乗場のみに非操作作業員がいることが検知された場合には、
図12に示すように高速運転は開始されるが、注意喚起を促す警報が操作作業員に出力される。
【0066】
図13は、点検運転の際に、操作作業員、即ち、エレベータの操作を行った作業員1に出力される警報(アナウンス)と、非操作作業員、即ち、その他の作業員1に出力される警報(アナウンス)と、エレベータがとる状態とを示している。
【0067】
点検スイッチがオンの場合には、点検運転が実施される。この場合、いずれの場所に非操作作業員がいることが検知されても、
図13に示すように点検運転は開始されるが、非操作作業員がかご上、かご内、またはピットにいる場合に注意喚起を促す警報が操作作業員に出力される。
【0068】
以上のように、本実施形態のエレベータ制御盤11は、作業員1がエレベータで作業する間、受信装置3により受信された電磁波に基づいて、作業員1とエレベータを構成する機器との位置関係を常時把握し、この作業員1やエレベータで作業する他の作業員1にエレベータによる危険が発生することが予測される場合に、この危険を事前に回避するようエレベータを制御する。よって、本実施形態によれば、エレベータで作業する作業員1の安全性を向上させることが可能となる。
【0069】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムおよび方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムおよび方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。