(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6702571
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】踏段の清掃方法
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20200525BHJP
B66B 23/12 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
B66B31/00 F
B66B23/12 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-231430(P2018-231430)
(22)【出願日】2018年12月11日
【審査請求日】2018年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】中谷 竜
【審査官】
加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−045371(JP,A)
【文献】
特開2001−316065(JP,A)
【文献】
特開2017−095207(JP,A)
【文献】
実開昭59−071261(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/00
B66B 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三角形に形成された左右一対の踏段フレームと、
左右一対の前記踏段フレームの上面に形成されたクリート面と、
左右一対の前記踏段フレームの後面に形成されたライザ面と、
前記踏段フレームの前端部で、かつ、前記クリート面の下方に配された左右一対の前輪と、
前記ライザ面の下方で、かつ、左右一対の前記踏段フレームの後端部の外側に配された左右一対の後輪と、
少なくとも前記クリート面の下面に着脱自在に取り付けられた一層の保護フィルムと、
を有する踏段の清掃方法において、
前記クリート面から前記保護フィルムを剥がし、
新しい前記保護フィルムを取り付ける場合に、
前記クリート面に前記保護フィルムを形成する液体を吹き付ける、
踏段の清掃方法。
【請求項2】
三角形に形成された左右一対の踏段フレームと、
左右一対の前記踏段フレームの上面に形成されたクリート面と、
左右一対の前記踏段フレームの後面に形成されたライザ面と、
前記踏段フレームの前端部で、かつ、前記クリート面の下方に配された左右一対の前輪と、
前記ライザ面の下方で、かつ、左右一対の前記踏段フレームの後端部の外側に配された左右一対の後輪と、
少なくとも前記クリート面の下面に着脱自在に取り付けられた多層の保護フィルムと、
を有する踏段の清掃方法において、
前記クリート面から一層の前記保護フィルムを剥がし、
次の層の前記保護フィルムを露出させる、
踏段の清掃方法。
【請求項3】
前記ライザ面の前面にも前記保護フィルムが、着脱自在に取り付けられている、
請求項1又は2に記載の踏段の清掃方法。
【請求項4】
前記クリート面の下面には、複数のリブが形成され、
前記保護フィルムは、前記リブの上から取り付けられている、
請求項1又は2に記載の踏段の清掃方法。
【請求項5】
前記踏段は、乗客コンベアの踏段である、
請求項1又は2に記載の踏段の清掃方法。
【請求項6】
前記乗客コンベアは、エスカレータ、又は、動く歩道である、
請求項5に記載の踏段の清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、
踏段の清掃方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアにおいて、踏段を走行させる踏段チェーンには、潤滑油が用いられ、これにより踏段の移動がスムーズになるようにしている。そのため、乗客コンベアが稼働し日数が経つにつれて、踏段の裏面に油や埃が付着し、保守員の点検時に踏段の裏面を清掃する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−333074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように点検時において踏段の裏面を清掃していると、作業時間がよけいに掛かるという問題点があった。
【0005】
そこで本発明の実施形態は、上記問題点に鑑み、踏段の裏面を簡単に清掃できる
踏段の清掃方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、
三角形に形成された左右一対の踏段フレームと、左右一対の前記踏段フレームの上面に形成されたクリート面と、左右一対の前記踏段フレームの後面に形成されたライザ面と、前記踏段フレームの前端部で、かつ、前記クリート面の下方に配された左右一対の前輪と、前記ライザ面の下方で、かつ、左右一対の前記踏段フレームの後端部の外側に配された左右一対の後輪と、少なくとも前記クリート面の下面に着脱自在に取り付けられた一層の保護フィルムと、を有する踏段の清掃方法において、前記クリート面から前記保護フィルムを剥がし、新しい前記保護フィルムを取り付ける場合に、前記クリート面に前記保護フィルムを形成する液体を吹き付ける、踏段の清掃方法である。
【0008】
本発明の他の実施形態は、
三角形に形成された左右一対の踏段フレームと、左右一対の前記踏段フレームの上面に形成されたクリート面と、左右一対の前記踏段フレームの後面に形成されたライザ面と、前記踏段フレームの前端部で、かつ、前記クリート面の下方に配された左右一対の前輪と、前記ライザ面の下方で、かつ、左右一対の前記踏段フレームの後端部の外側に配された左右一対の後輪と、少なくとも前記クリート面の下面に着脱自在に取り付けられた多層の保護フィルムと、を有する踏段の清掃方法において、前記クリート面から一層の前記保護フィルムを剥がし、次の層の前記保護フィルムを露出させる、踏段の清掃方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態を示すエスカレータの側面説明図。
【
図4】踏段のクリート面に保護フィルムを貼り付けた状態の斜視図。
【
図5】踏段のクリート面の裏面に貼り付けた保護フィルムが汚れた状態を示す斜視図。
【
図6】踏段のクリート面の裏面から汚れた保護フィルムを剥がしている状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態のエスカレータ10を
図1〜
図6を参照して説明する。
【0012】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の構造について、
図1を参照して説明する。
図1はエスカレータ10を側面から見た説明図である。
【0013】
図1に示すように、エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて前後方向に支持されている。
【0014】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の主駆動スプロケット24,24、左右一対のベルトスプロケット27,27が設けられている。駆動装置18は、誘導電動機(インダクションモータ)よりなるモータ20と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン22と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。この駆動チェーン22により主駆動スプロケット24が回転する。左右一対の主駆動スプロケット24,24と左右一対のベルトスプロケット27,27とは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20やディスクブレーキなどを制御する制御部50が設けられている。
【0015】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、従動スプロケット26が設けられている。上階側の主駆動スプロケット24と下階側の従動スプロケット26との間には、左右一対の無端の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。すなわち、左右一対の踏段チェーン28,28には、複数の踏段30の車輪301が等間隔で取り付けられている。踏段30の車輪301はトラス12に固定された不図示の案内レールに沿って走行すると共に、主駆動スプロケット24の外周部にある凹部と従動スプロケット26の外周部にある凹部に係合して、踏段30が上下に反転する。また、車輪302はトラス12に固定された案内レール25を走行する。
【0016】
トラス12の左右両側には、左右一対のスカートガード44,44と左右一対の欄干36,36が立設されている。欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。スカートガード44は、欄干36の側面下部に設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
【0017】
手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内に侵入し、案内ローラ群64を介してベルトスプロケット27に掛け渡され、その後、案内ローラ群66を介してスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部48から正面スカートガード42外に現れる。そして、手摺りベルト38は、ベルトスプロケット27が主駆動スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。また、回転するベルトスプロケット27に、走行する手摺りベルト38を押圧するための押圧部材68を有する。
【0018】
上階側の機械室14の天井面にある乗降口には、上階側の乗降板32が水平に設けられ、下階側の機械室16の天井面にある乗降口には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60から踏段30が現れる。また、乗降板34にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0019】
(2)踏段30
次に、踏段30について
図2〜
図4を参照して説明する。
【0020】
図2に示すように、踏段30は、三角形に形成された左右一対の踏段フレーム303,303と、この踏段フレーム303,303の上面に形成されたクリート面304と、踏段フレーム303,303の後面に形成されたライザ面305とよりなり、踏段フレーム303,303とクリート面304とライザ面305とは、アルミダイカストで一体に形成されている。
【0021】
踏段フレーム303の前端部で、かつ、クリート面304の下方には、左右一対の前輪301,301が設けられている。左右一対の前輪301,301は、
図2に示すように、踏段フレーム303の前端部に回動自在に設けられた回転軸306の両端部に設けられている。また、
図2に示すように、前輪301には、無端状の踏段チェーン28が連結され、踏段チェーン28が移動することにより、前輪301が回転しながら踏段30を移動させる。
【0022】
図2、
図3に示すように、踏段フレーム303は、その後下端部、すなわち、ライザ面305の下方に、後方に向かって突出する左右一対の取り付け部307を含んでいる。取り付け部307は、踏段フレーム303の他の部分を形成するときに一体に形成されている。
図2に示すように、左右一対の取り付け部307,307の先端部の外側には、左右一対の後輪302,302が軸部313によって取り付けられている。
【0023】
図3に示すように、クリート面304の下面(裏面)とライザ面305の前面(裏面)には、前後方向に複数の縦リブ308が形成されている。また、クリート面304の裏面であって、踏段フレーム303の前端部の左右方向には、前リブ309が形成されている。さらに、クリート面304の裏面であって、前後方向のほぼ中央部には左右方向に横リブ310が形成されている。
【0024】
図4に示すように、踏段30のクリート面304の裏面には、長方形の透明無色の保護フィルム312が貼り付けられている。この保護フィルム312は、貼り付け面に対し取り外しが可能な粘着面が設けられ、クリート面304の裏面に、縦リブ308、横リブ310の上から貼り付けることができる。貼り付ける範囲は、左右方向に関して左右一対の踏段フレーム303,303の間の範囲であって、前後方向に関して前リブ309とライザ面305の間の範囲である。
【0025】
これにより、踏段30を使用していると、
図5に示すように、埃や踏段チェーン28からの油は、保護フィルム312に付着する。
図6に示すように、保守員は保守点検時において、クリート面304から保護フィルム312を剥がし、新しい保護フィルム312を貼り付ける。これにより、踏段30のクリート面304の裏面を清掃できる。
【0026】
(3)効果
本実施形態によれば、踏段30のクリート面304の裏面に貼り付けられている保護フィルム312によって、クリート面304の裏面を油や汚れから保護できる。
【0027】
また、保守員は保護フィルム312をクリート面304から剥がし、新しい保護フィルム312を貼り付けるだけで、踏段30のクリート面304の裏面を簡単に清掃できる。
【0028】
上記実施形態の変更例について説明する。
【0029】
(1)変更例1
上記実施形態では、1枚の保護フィルム312を貼り替える方法であったが、これに代えてクリート面304に貼り付ける保護フィルム312が、多層のフィルムからなり、表面のフィルムが汚れた場合には、その汚れたフィルムを剥がし、次のフィルムを露出させる構造にしてもよい。
【0030】
(2)変更例2
上記実施形態では、クリート面304の裏面に保護フィルム312を貼り付ける方法であったが、これに代えてクリート面304の裏面に合成樹脂などの液体をスプレーで吹き付けて硬化させ、保護フィルム312を形成してもよい。
【0031】
(3)変更例3
上記実施形態では、クリート面304の裏面にのみ保護フィルム312を設けたが、これに代えてクリート面304の裏面とライザ面305の裏面に保護フィルム312を貼り付けてもよい。
【0032】
(4)変更例4
上記実施形態では、保護フィルム312は透明無色であったが、これに代えて、有色(例えば、青色、赤色)、又は透明有色(例えば透明な青色、赤色)であってもよい。このような有色、有色透明であれば、どの部分が保護フィルム312に覆われているかを保守員が一目で判別できる。
【0033】
(5)変更例5
上記実施形態では、エスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。
【0034】
(6)その他
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
10・・・エスカレータ、28・・・踏段チェーン、30・・・踏段、301・・・前輪、302・・・後輪、303・・・踏段フレーム、304・・・クリート面、305・・・ライザ面、312・・・保護フィルム
【要約】
【課題】踏段の裏面を簡単に清掃できる踏段を提供する。
【解決手段】三角形に形成された左右一対の踏段フレーム303と、左右一対の踏段フレーム303,303の上面に形成されたクリート面304と、左右一対の踏段フレーム303,303の後面に形成されたライザ面305と、クリート面304の下面に着脱自在に取り付けられた保護フィルム312とを有する。
【選択図】
図3