特許第6702619号(P6702619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6702619電動シートベルトリトラクターの制御方法及び電動シートベルトリトラクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702619
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】電動シートベルトリトラクターの制御方法及び電動シートベルトリトラクター
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/48 20060101AFI20200525BHJP
   B60R 22/46 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   B60R22/48 102
   B60R22/46 166
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-535061(P2018-535061)
(86)(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公表番号】特表2019-503297(P2019-503297A)
(43)【公表日】2019年2月7日
(86)【国際出願番号】EP2017050769
(87)【国際公開番号】WO2017129431
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2018年8月19日
(31)【優先権主張番号】16153300.5
(32)【優先日】2016年1月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】シャンムガム、サラバナ
(72)【発明者】
【氏名】アトワドカル、アヒジャート
(72)【発明者】
【氏名】シェティ、ビジェイ
(72)【発明者】
【氏名】アキーブ、サウシーフ
(72)【発明者】
【氏名】ルクト、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ウィテンバーグ、ゲルト、ヘルガ
(72)【発明者】
【氏名】カルステンセン、ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ズラウ、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】クルート、ガンター
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−167002(JP,A)
【文献】 特開2012−218476(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/117820(WO,A1)
【文献】 特開平10−167005(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0224887(US,A1)
【文献】 特表2011−504984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/44−22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動シートベルトリトラクターであって、
シートベルトが巻き付けられるスピンドル(2)と、
ローター(3)と、
前記ロータ(3)を介して前記スピンドル(2)を引込み方向又は引出し方向に駆動する電気モーター(4)と、
前記スピンドル(2)と前記ローター(3)との間に配置され、それ自体が緊縮又は拡張することによって、前記ローター(3)又はリトラクター固定部分に対する前記スピンドル(2)の相対運動を可能にするばね(11)と、
前記スピンドル(2)の相対運動を検出するセンサー装置(10)とを備え、
前記電気モーター(4)は、前記センサー装置(10)が前記相対運動を検出したときに駆動され、
前記ばね(11)は、前記ローター(3)又は前記リトラクター固定部分に対する前記スピンドル(2)の前記シートベルトの引き出し方向における第1の相対運動によって緊縮し、
前記緊縮したばね(11)は、前記スピンドル(2)を、前記シートベルトの巻き取り方向における第2の相対運動を行うように駆動し、
前記センサー装置(10)は、前記スピンドル(2)の第2の相対運動を検出すると信号を生成し、該信号により、前記電気モーター(4)が作動し、前記スピンドル(2)を前記巻き取り方向に駆動することを特徴とする電動シートベルトリトラクター。
【請求項2】
前記緊縮したばね(11)は、前記スピンドル(2)を、第2の相対運動において5度〜20度だけ駆動し、前記センサー装置(10)によって信号を生成することを特徴とする、請求項1に記載の電動シートベルトリトラクター。
【請求項3】
前記電気モーター(4)は、前記シートベルト(1)が停止位置から引き出されるときの、引出し方向における前記ローター(3)又はリトラクター固定部分に対する前記スピンドル(2)の相対運動を、前記センサー装置(10)が検出すると、前記シートベルト(1)の引出し方向において作動することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電動シートベルトリトラクター。
【請求項4】
前記電気モーター(4)は、前記シートベルト(1)を締めた後、該シートベルト(1)の引込み方向に作動することを特徴とする、請求項3に記載の電動シートベルトリトラクター。
【請求項5】
前記電気モーター(4)は、車両に固定されたバックルから前記シートベルト(1)を解除した後、引込み方向における前記ローター(3)又はリトラクター固定部分に対する前記スピンドル(2)の相対運動を、前記センサー装置(10)が検出すると、前記シートベルト(1)の引込み方向に作動することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動シートベルトリトラクター。
【請求項6】
前記ばね(11)は、車両に固定されたバックルから前記シートベルト(1)を解放する前に、前記シートベルト(1)の引込み方向に逆らって緊縮し、
前記緊縮したばね(11)は、前記バックルから前記シートベルト(1)を解放した後に、前記スピンドル(2)を引込み方向に駆動し、
前記電気モーター(4)は、引込み方向における前記ローター(3)又はリトラクター固定部分に対する前記スピンドル(2)の回転を検出する前記センサー装置(10)の信号によって作動し、前記スピンドル(2)を引込み方向に駆動することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動シートベルトリトラクター。
【請求項7】
前ばね(11)は、前記スピンドル(2)と前記ローター(3)との間に配置され、前記ローター(3)又はリトラクター固定部分に対する前記スピンドル(2)の相対運動を可能にするように設けられ、
前記スピンドル(2)は、前記ローター(3)に対する該スピンドル(2)の相対運動を制限する、前記ローター(3)に対する当接部を有することを特徴とする、請求項1乃至6の何れか1項に記載の電動シートベルトリトラクター。
【請求項8】
前記センサー装置(10)は、センサー及び磁気ホイール(9)を備え、
前記センサーは、前記リトラクターのフレームに対して固定され、
前記磁気ホイール(9)は、前記スピンドル(2)に対して固定されることを特徴とする、請求項7に記載の電動シートベルトリトラクター。
【請求項9】
前記磁気ホイール(9)は、周方向に交互の極を有して共通の直径において配置される、異なる極性を有する複数の単一磁石(25)を備えることを特徴とする、請求項8に記載の電動シートベルトリトラクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の特徴を有する電動シートベルトリトラクターの制御方法に関し、また、請求項8のプリアンブルに記載の特徴を有する電動シートベルトリトラクターに関する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるシートベルトシステムは、シートベルトリトラクターと、車両に固定されたバックルと、バックルにロックすることができる摺動式タングを伴うシートベルトとを備える。シートベルトリトラクターは、シートベルトが巻き付けられるとともに、フレーム内でシートベルトの引込み方向及び引出し方向に回転することができるスピンドルを備える。リトラクターには、シートベルト引出し速度の所定値又は車両減速度の所定値を超えた場合にスピンドルを引出し方向に制止する制止装置が更に設けられている。制止装置は、機械的なシートベルト加速度センサー及び機械的な車両減速度センサーによって起動される。さらに、シートベルトリトラクターに、不可逆的及び可逆的なプリテンション装置を備え付け、それにより、衝突前状況又は衝突の初期段階において、シートベルトに存在し得る弛みをなくすように引っ張り、乗員を車両の減速度に近付けることが既知である。可逆的なプリテンショナーは、現在のシートベルトシステムでは、クラッチによってスピンドルに結合することができる電気モーターによって実現される。電気モーターが作動するとき、クラッチは、摩擦力又は慣性力によって閉鎖される。
【0003】
電気モーターはシートベルトリトラクターの価格を著しく増大させることから、電気モーターは、可能な限り多くの機能、例えば、停止位置への巻取り動作を補助する、又は快適性等のために巻取り力を低減するのにも用いるように意図される。
【0004】
さらに、シートベルトリトラクターは、電気モーターを制御する信号をもたらすセンサー装置を備える必要がある。既存のシートベルトリトラクターにおけるセンサー装置は、スピンドルに固定される、異なる極性の複数の磁極を有する磁気ホイールによって実現される。磁極は、同一の寸法を有し、磁気ホイールの円周に規則的な構成で配置される。さらに、センサー装置は、リトラクターのフレームにおいて磁気ホイールの磁極に面して位置するセンサー、例えばホールセンサーを備える。センサー装置は、スピンドルの回転運動を検出し、検出された回転角度又は検出された回転数を用いて、電気モーターを起動する。信号は、CPUにおいて更に処理することができる。スピンドルの回転運動又は回転位置は、ここでは、シートベルトの引出し長さを表す信号としても用いられ、これは、電気モーターを作動させて、シートベルトを繰り出す又は巻き取るのに必須の基準である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景に鑑み、本発明の目的は、電動シートベルトリトラクターの制御方法を提供するとともに、電動シートベルトリトラクターの簡単かつ確実な動作を可能にする制御機構を備える電動シートベルトリトラクターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、請求項1に記載の特徴を有する制御方法及び請求項8に記載の特徴を有する電動シートベルトリトラクターによって解決される。更なる改良形態は、従属請求項、図面、及び関連の記載内に含まれている。
【0007】
制御方法の基本構想によれば、スピンドルとローターとの間に配置されるばねを設けることによって、ローターに対するスピンドルの相対運動を可能にし、ばねが緊縮又は拡張することによる、ローター又はリトラクターの固定部分に対するスピンドルの相対運動によって生成される、センサー装置の信号によって、電気モーターが制御されることが提案される。
【0008】
したがって、本発明の構想は、2つのステップに基づく。第1のステップによれば、スピンドルとローターとの間に、スピンドルとローターとの相対運動を可能にするばねを設ける。第2のステップによれば、スピンドルがローター又はリトラクターの固定部分に対する相対運動を行う際にセンサー装置によって生成される信号によって、電気モーターを制御する。この相対運動は、間に配置されるばねによって可能である。相対運動中、ばねは、緊縮又は拡張することができ、拡張の場合では、相対運動を、拡張するばねによって開始することができる。この場合、スピンドルは、ばねによって駆動される。
【0009】
好ましい実施形態によれば、ばねは、ローターに対するスピンドルの第1の方向における第1の相対運動によって緊縮し、続いて、緊縮したばねは、スピンドルを、第1の方向とは反対側を向いた第2の方向における第2の相対運動を行うように駆動し、センサー装置は、スピンドルの第2の運動を検出すると信号を生成し、信号により、電気モーターが作動し、スピンドルを第2の方向に駆動する。提案される実施形態の利点は、ばねが、例えばシートベルトの繰出し等の相対運動によって緊縮すること、及び、第2のステップにおいて、ばねがその後拡張し、それにより、スピンドルを反対方向に駆動する際に、相対運動が行われることである。ばねは、この場合、スピンドルの運動中に予め負荷されるエネルギー貯蔵部として機能する。第2のステップにおいて、ばねのエネルギーを用いて、その後、スピンドルをローターに対して、反対方向に好ましくは5度〜20度だけ駆動し、センサー装置によって信号を生成する。このとき、緊縮したばねによって開始されるスピンドルのこの短い運動を、センサー装置が検出することで、電気モーターを起動し、電気モーターが、スピンドルを同じ方向に更に駆動する。
【0010】
さらに、電気モーターは、シートベルトが停止位置から引き出されるときの、引出し方向におけるローターに対するスピンドルの相対運動を、センサー装置が検出すると、シートベルトの引出し方向において作動することが好ましい。シートベルトが停止位置にある場合、ばねは、中立位置において拡張している。シートベルトが停止位置から引き出されると、スピンドルは、ばねを緊縮させることによって、回転しないローターに対して回り、それにより、引出し方向においてローターに対する相対運動を行う。ローターに対するスピンドルのこの相対運動を、センサー装置が検出すると、電気モーターを起動し、電気モーターが、ローター及びスピンドルを引出し方向に更に駆動する。
【0011】
さらに、電気モーターは、シートベルトを締めた後、シートベルトの引込み方向に作動する。シートベルトは、シートベルトに存在し得る弛みを取り除くように引っ張られ、それにより、シートベルトは、その後、可能な限り乗員に近付いて当接する。電気モーターは、この場合では、シートベルトを締めるたびに緊縮する可逆的なプリテンショナーとして機能する。
【0012】
さらに、電気モーターは、車両に固定されたバックルからシートベルトを解除した後、引込み方向におけるローターに対するスピンドルの相対運動を、センサー装置が検出すると、シートベルトの引込み方向に作動することが好ましい。電気モーターは、この場合、シートベルトの解除後、スピンドルの相対運動が検出された後に、シートベルトを停止位置に巻き取るのに用いられる。
【0013】
別の好ましい解決策によれば、ばねは、シートベルトの引込み方向に逆らって車両に固定されたバックルからシートベルトを解放する前に、スピンドルを引込み方向に負荷するように緊縮し、ばねは、シートベルトの解放後にスピンドルを引込み方向に駆動し、電気モーターは、引込み方向におけるスピンドルの回転を検出するセンサーの信号によって作動し、スピンドルを引込み方向に駆動する。ここで、提案される解決策の利点は、シートベルトがバックルから解放された後、緊縮したばねが、スピンドルをローター及びリトラクター固定部分に対して引込み方向に自動的に駆動することであることを見て取ることができる。ローター又はリトラクター固定部分に対するスピンドルのこの相対運動を用いて、その後、電気モーターを起動する信号をセンサー装置にもたらし、続いて、スピンドルを駆動して、シートベルトを最終停止位置に更に巻き取ることができる。シートベルトを締めた後、シートベルトは、乗員の胴部に可能な限り近付く最大の長さまで引き込まれる。また、ばねの緊縮は、通常使用時において、例えば、ラジオを操作すること、運転時の能動的な動作、又はグローブボックスに手を伸ばすとき等による、乗員の前方への短い動作によって行われ得る。乗員のこうした短い動作によって、シートベルトがバックルにロックされているときに、ローター又はリトラクター固定部分に対して引込み方向にばねが緊縮する。シートベルトが、大抵の場合、通常使用時に、特に、乗員の動作によってシートベルトが解除される直前の時点に、少なくとも最小長さだけ引き出される際、この動きは、ばねを緊縮させ、スピンドルを引込み方向に負荷するのに用いられる。乗員がタングを、この場合ではバックルから解放すると、スピンドルは、緊縮したばねによって引込み方向に自動的に回転する。その後、この動きを用いて、信号を生成し、電気モーターを起動し、シートベルトを巻き取ることができる。
【0014】
さらに、スピンドルは、ローターに対するスピンドルの相対運動を制限する、ローターに対する当接部を有することが提案される。この当接部を用いると、例えば、ローターからスピンドルに駆動運動を直接伝達することができる。代替的には、当接部は、シートベルト引出し加速度が所定値を超えた場合にウェビング感応式(webbing sensitive)の制止を実現するように用いることもできる。電気モーターは、この場合、制止されたローターに当接部が当接することによってスピンドルが制止されるように、制止又は停止される。
【0015】
さらに、センサー装置は、センサー及び磁気ホイールを備え、センサーは、リトラクターのフレームに固定され、磁気ホイールは、スピンドルに固定されることが提案される。この解決策の利点は、センサーの取付けが非常に簡単かつ確実なことである。この場合、センサーは、ここではリトラクター固定部分であるフレームに対するスピンドルの相対運動を検出する。電気モーターが作動していないとき、電気モーター及びローターは一切の運動を行わないため、ローターに対するスピンドルの運動は、フレーム及び任意の他のリトラクター固定部分に対するスピンドルの運動と同一である。磁気ホイールは、スピンドルに取り付けられ、スピンドルとともに回転すると、センサーにおいて信号を生成するように用いられる。
【0016】
磁気ホイールは、交互の極を有して共通の直径において配置される、異なる極性を有する複数の単一磁石を備えることが好ましい。
【0017】
以下、本発明について、添付図面を参照して好ましい実施形態に基づいて例示する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電動シートベルトリトラクターの断面図である。
図2】スピンドル、ローター、及びスピンドルとローターとの間に配置されるばねを備える電動シートベルトリトラクターの正面図である。
図3】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図4】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図5】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図6】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図7】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図8】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図9】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図10】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図11】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図12】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図13】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図14】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図15】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図16】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図17】シートベルトを停止位置から繰り出す位置から、シートベルトを停止位置に巻き取る位置までの異なる位置における、電動シートベルトリトラクターのスピンドル、ローター、及びばねを示す図である。
図18】磁気ホイール及びセンサー装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1において、リトラクターを車両構造体に固定する2つの対向するジャーナル6及び7と、シートベルト1が巻き付けられるスピンドル2と、スピンドル2に直接結合されるか又はクラッチを介して結合することができる電気モーター4とを備えるU字形フレームを有する電動シートベルトリトラクターが示されている。スピンドル2は、中にローター3が配置される中央貫通穴を有する。ローター3には、左端部において駆動ホイール5が固定され、駆動ホイール5は、スピンドル2と電気モーター4との間に配置される図示していないギア機構の別のギアホイールに係合する。ギア機構は、駆動ホイール5を介してローター3に電気モーター4の回転運動を伝達する。ローター3は、他方の端部において、外側セクションに軸方向凹部18を有する径方向フランジ14と、その端部に延在する中央ピン19とを更に備える。さらに、スピンドル2に固定されるカップ8が設けられる。したがって、カップ8は、スピンドル2の一部として理解することもできる。カップ8の外側セクションにおいて、軸方向貫通穴によって実現される凹部17が設けられる。
【0020】
ローター3のピン19において、ピン19を取り囲むコイルセクションと、互いに反対側の2つの軸方向にコイルセクションの外側へと延在する2つの端部12及び13とを有するばね11が配置される。ばね11は、ピン19によって適所に保持され、第1の端部12がローター3のフランジ14の凹部18内に係合し、他方の端部13がカップ8の凹部17に係合する。したがって、ばね11は、周方向において、第1の端部12がローター3に固定され、第2の端部13がカップ8及びスピンドル2に固定される。ばね11は、ばね11がピン19を取り巻くコイルセクションに、複数のコイルを含む。ばね11の端部12及び13は、端部において軸方向に曲がり、コイルセクションから離れるように外側へと延在する径方向アームとして形成される。ローター3及びスピンドル2が互いに対する相対運動を行う場合、コイルセクションのコイルは、ばね11の状態及び相対運動の回転方向に応じて、緊縮又は拡張する。いずれの場合も、ばね11を緊縮又は拡張させることによって、ばね11がローター3に対するスピンドル2の相対運動を可能にする。
【0021】
さらに、磁気ホイール9が設けられており、この磁気ホイール9は、図18において正面からも示されている。磁気ホイール9は、複数の磁極25を備えるとともに、カップ8に固定され、したがって、磁気ホイール9は、スピンドル2に対しても固定される。磁極25は、共通の直径上の磁気ホイール9の外周において同一の寸法のリング形状構成で設計されている。さらに、磁気ホイール9は、スピンドル2の軸に対して偏心して配置され、したがって、磁極25も、スピンドル2の軸に対して偏心して配置されている。さらに、磁極25は、S極とN極とが交互に配置され、それにより、軸方向にカップ8の外側へと交番磁界が形成される。
【0022】
カップ8と、フレームの右側ジャーナル7を通って延在するスピンドル2の端部とは、フレームのジャーナル7に取り付けられたカップ形状のハウジング16によって包囲される。ハウジングの内部には、例えば、磁気ホイール9の磁極25に面して位置付けられる、ホールセンサー等の2つのセンサー23及び24を備えるセンサー装置10が配置される。センサー23及び24は、互いに周方向に規定の距離を有して位置付けられ、それにより、センサー23及び24によって発生する信号S1及びS2のオフセットを検出することによって、スピンドル2がハウジング16及びフレームに対して回転する方向の検出が可能である。このオフセットは、図18の右図に示されているとおりである。
【0023】
ローター3とスピンドル2との第1の相対運動によってばね11が緊縮する場合、発生する張力は、その後、続く状況においてローター3に対するスピンドル2の第2の相対運動を開始するのに用いられる。この運動は、センサー装置10によって検出される。それにより、センサー装置10は、相対運動の方向に応じた信号を生成し、その信号は、電気モーター4を制御するとともに、電気モーター4を作動させ、スピンドル2を同じ方向に更に駆動するのに用いられる。
【0024】
図2では、ローター3及びスピンドル2の正面図におけるリトラクターが示されている。リトラクターのハウジング16及びフレームは、図示を容易にするために削除されている。ばね11は、ローター3の中央ピン19を取り巻くコイルセクションを有して構成されている。第1の端部12は、ローター3のフランジ14に接続され、第2の端部13は、カップ8に周方向に接続されている。また、カップ8は、スピンドル2に固定され、それにより、第2の端部13も周方向にスピンドル2に固定される。
【0025】
センサー装置10は、ローター3に対するスピンドル2の相対回転方向に応じた信号を生成する。ローター3は、電気モーター4の作動前には動かないため、ローター3に対するスピンドル2の相対回転は、リトラクターのフレーム及びハウジング16並びに他の全てのリトラクター固定部分に対する、スピンドル2の相対回転と同一である。センサー装置10がハウジング16に固定されることから、ローター3に対するスピンドル2の相対回転又は相対運動は、検出器のハウジング16に固定されたセンサー装置10によって検出することができる。センサー装置10は、信号線を介して中央処理装置15に接続され、中央処理装置15はまた、信号線によって電気モーター4に接続される。ハウジング16におけるセンサー装置10の配置は、センサー装置10が非可動部分に固定されることから、設計構造及びセンサー装置10と中央処理装置15との接続を著しく容易にする。代替的には、センサー装置10は、スピンドル2又はローター3に固定して、スピンドル2とローター3との相対運動を検出することもできる。この場合、信号は、例えば集電リングのような可動接点を介して伝達する必要がある。
【0026】
以下、図3図17によって制御方法を説明する。動きの理解を容易にするために、全ての説明において、ローター3は、直立位置を起点とした位置に配置され、フランジ14は、ばね11の第1の端部12とともに12時位置に配置されている。概して、左図において、スピンドル2が、カップ8、フランジ14を有するローター3、及びカップ8とローター3との間に配置されるばね11とともに示されている。右図において、スピンドル2と、ローター3と、ばね11とが、単独の部品として対応する向きで示されている。
【0027】
図3では、スピンドル2及びローター3を備える電動リトラクターは、シートベルト1がスピンドル2に完全に巻き付けられた位置で示されている。この位置は、停止位置とも称される。ばね11は、弛緩しており、ばね11の双方の端部12及び13は、間に180度の角度を有して互いに反対側に配置されている。乗員がシートベルト1を着用し始める場合、シートベルト1を、停止位置から短い長さだけ引き出す。これは、図4において左図の矢印によって示されている。ローター3は回転せず、したがって、フランジ14及びばね11の第1の端部12は、12時位置から動かない。スピンドル2は、例えば5度〜20度等の小さな角度だけ、回転していないローター3に対して反時計回り方向に回転する。それにより、ばね11の第2の端部13は、第1の端部12に対して動かされ、ばね11のコイルセクションが緊縮する。スピンドル2、ばね11、及びローター3の向きは、右図に示されている。スピンドル2は、ローター3に対して回転し、また、ハウジング16及びハウジング16に固定されたセンサー装置10に対しても回転する。ハウジング16は、リトラクターのフレームに取り付けられ、したがって、この場合、リトラクター固定部分である。スピンドル2の動きは、ばね11が緊縮し、センサー23及び24において互いにオフセットを伴う2つの異なる信号S1及びS2を生成する第1の相対運動である。ここで、信号S1及びS2のオフセットは、スピンドル2の回転方向に応じる。この場合、スピンドル2は、反時計回り方向に回転し、それにより、センサー23が信号S1を生成し、センサー24が、時間的に遅延した信号S2を生成する。信号S1及びS2は、中央処理装置15において処理され、中央処理装置15は、電気モーター4を制御する別の信号を生成する。電気モーター4が作動し、スピンドル2を、図5において左図の円形矢印によって示されているように、反時計回り方向に更に駆動する。次いで、ローター3及びばね11の第1の端部12は、スピンドル2の引出し動作に続いて、電気モーター4によって反時計回り方向にともに駆動される。乗員が一定の引出し力で停止位置からシートベルト1を引き出すとともに、ローター3が同一の回転速度でスピンドル2に追従するように駆動される限り、ローター及びスピンドルの互いに対する向きは変化せず、ばね11は、緊縮状態に保たれる。この向きは、乗員が引出し動作を止め、シートベルト1のタングを、図示していない車両に固定されたバックルにロックするまで保持される。
【0028】
引出し動作中、タングをロックするまでばね11が緊縮状態を保つことから、スピンドル2は、タングをバックルにロックした後、ばね11がその後拡張するときに、ばね11によって、ローター3に対して時計回り方向に回転する。これは、図6の左図における矢印によって示されている。ばね11によって駆動されるときのスピンドル2のこの回転は、図4においてばね11が緊縮するときの第1の相対運動の第1の方向とは反対側を向いた第2の方向への相対運動である。ばね11によって駆動されるときのスピンドル2のこの短い回転は、センサー装置10によって再び検出され、それにより、回転方向を示すオフセットを有する2つの信号S1及びS2が生成される。スピンドル2が、本特許の意味における第2の方向である引込み方向に駆動される場合、信号S1及びS2のシーケンスは、図18における図と比較して反対になっている。信号S1及びS2は、中央処理装置15において処理され、電気モーター4を起動して、スピンドル2を時計回り方向に駆動し、図6のように、シートベルト1が乗員の胸部に接触するまで、シートベルトに存在し得る弛みをなくすように引き込む。
【0029】
シートベルト1の弛みをなくすように引っ張る場合、スピンドル2は、引込み方向に駆動され、スピンドル2の動きは、この動きが終わると妨害され、ついにはスピンドル2が制止される。スピンドル2が制止されるとすぐに、電気モーター4及びローター3が、制止されたスピンドル2に対する更なる回転を行う。これは、図7の矢印によって示されている。スピンドル2に対するローター3のこの第1の相対運動は、ばね11を緊縮させる。スピンドル2、ローター3、及びばね11の向きは、乗員が後に更なる動作を行わなければ維持される。したがって、スピンドル2は、引込み方向に予負荷され、それにより、シートベルト1は、ばね11の張力から生じる僅かに高まった保持力で当接する。
【0030】
この状況において、乗員が、例えば音楽をかけるために前方に動く場合、乗員は、ばね11の張力に逆らって引出し方向にシートベルト1を引っ張る。これは、図8の左図における矢印によって示されている。シートベルト1のこの引出し動作は、静止しているローター3に対するスピンドル2の相対運動、並びにハウジング16及びセンサー装置10に対するスピンドル2及びカップ8の相対運動をもたらす。この運動を、センサー装置10が検出することにより、信号S1及びS2を生成し、この信号は、中央処理装置15において処理されて、第2の信号を生成し、それにより、電気モーター4を起動し、シートベルト1の引出し方向にローター3を駆動する。したがって、ローター3は、スピンドル2の回転に追従するように駆動される。理想的な場合では、ローター3は、ばね11の緊縮状態を変更することなく、スピンドル2に追従して駆動される。
【0031】
乗員が前方への動きを止めると、スピンドル2に作用する引出し力も止まり、スピンドル2は、ハウジング16及びセンサー装置10に対してこれ以上回転しなくなる。こうして動きが止まることにより、センサー装置10の信号S1及びS2の変化が生じ、この信号は、中央処理装置15において制御信号へと処理され、電気モーター4を停止させる。乗員が音楽をかけるときの乗員の第1の相対運動によってばね11が緊縮したままであることから、スピンドル2はその後、ばね11によって、ここでは引込み方向である第2の方向に駆動される。これは図9に示されている。図9における図は、スピンドル2が駆動された後の、ばね11が既に拡張した場合のばね11を示している。第2の方向におけるローター3及びハウジング16に対するスピンドル2のこの相対運動を、センサー装置10が検出し、電気モーター4を作動して、ローター3を、この場合では図10に示されている引込み方向である第2の方向に駆動する。したがって、ローター3は、引込み方向に駆動され、スピンドル2を、ばね11を介して、シートベルト1が通常の着席位置に座っている乗員の胸部に接触するまで引込み方向に更に駆動する。
【0032】
シートベルト1が乗員の胸部に接触するとすぐに、スピンドル2の動きは妨害され、最終的に停止するが、ローター3は、電気モーター4によって、図11に示されている引込み方向に更に駆動される。この第1の相対運動中、ばね11は、ばね11の第1の端部12が、静止している第2の端部13に対して動くことによって緊縮する。
【0033】
乗員がバックルからタングを解放すると、ばね11は拡張し、スピンドル2を第2の方向において、図12に示されているような引込み方向に駆動する。ローター3及びハウジング16に対するスピンドル2のこの相対運動は、センサー装置10によって検出され、電気モーター4が再度起動されて、ローター3を第2の方向に駆動する。この場合、第2の方向は、図13に示されているとおりの引込み方向である。ローター3の運動は、この場合も再びばね11を介してスピンドル2に伝達され、それにより、スピンドル2はまた、シートベルト1の引込み方向に駆動される。シートベルト1は、その後、停止位置に達するまで巻き取られる。
【0034】
スピンドル2は妨害されて、停止位置に達すると最終的に止まるが、電気モーター4は、ローター3を更に駆動して、ばねを予負荷し、図14に示されているように所定の時間にわたってその予負荷を保つ。バックルセンサーが、この場合ではタングがロックされていないことを検出すると、電気モーター4が再び作動し、ローター3を、図15の停止位置に達するまで反対方向に駆動する。最後のステップは、シートベルト1の停止位置への引込み動作を、乗員が前方にかがむのを終えて着席位置に戻るときの引込み動作から区別するのに必須である。
【0035】
記載の例のそれぞれにおいて、電気モーター4は、スピンドル2がハウジング16及びハウジング16に取り付けられたセンサー装置10に対して相対運動を行う際に生成される信号によって起動される。ローター3が電気モーター4の作動前には静止していることから、この相対運動は、スピンドル2とローター3との相対運動と同一である。電気モーター4が作動すると、スピンドル2が以前動いていたのと同じ方向にローター3を駆動する。センサー装置10によって検出されるスピンドル2の相対運動は、乗員自身が、例えば停止位置等からシートベルト1を引っ張るか又は音楽をかける際に生じる。代替的には、スピンドル2の相対運動は、ばね11が、先行するステップにおいて緊縮し、その後拡張して、スピンドル2を好ましくは引込み方向に駆動する場合に、ばね11によって開始することもできる。これらの場合の全てにおいて、相対運動は、スピンドル2とローター3との間に配置されたばね11によって可能になる。
【0036】
さらに、スピンドル2のウェビング感応式の制止も、図16及び図17に記載されているようなばね11を用いて実現される。ローター3は、フランジ14の反対側において、径方向外方に向いたフィンガー22を備える。スピンドル2には、図16の左図において読み手の方に向いた軸方向正面において突出部21が設けられている。
【0037】
図16において、図7におけるように、シートベルト1を着用している場合の通常使用時のスピンドル2及びローター3の向きが示されている。図17の矢印によって示されているように、シートベルト1が非常に高い加速度で引き出される場合、突出部21がフィンガー22に当接し、それにより、スピンドル2の更なる回転が止まるまで、スピンドル2は、図における反時計回り方向に回転する。ローター3がこの場合では停止された電気モーター4を介して制止されることから、スピンドル2も、突出部21がフィンガー22に当接することによって、引出し方向における更なる回転を制止される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18