(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702644
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】SiC基材に放電プラズマにより端栓を焼結させた燃料被覆管
(51)【国際特許分類】
C04B 37/00 20060101AFI20200525BHJP
C04B 35/565 20060101ALI20200525BHJP
C04B 35/80 20060101ALI20200525BHJP
G21C 3/10 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
C04B37/00 C
C04B35/565
C04B35/80 600
G21C3/10 200
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-159684(P2018-159684)
(22)【出願日】2018年8月28日
(62)【分割の表示】特願2016-541982(P2016-541982)の分割
【原出願日】2014年8月18日
(65)【公開番号】特開2019-23157(P2019-23157A)
(43)【公開日】2019年2月14日
【審査請求日】2018年8月28日
(31)【優先権主張番号】14/027,299
(32)【優先日】2013年9月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】シュウ、ペン
(72)【発明者】
【氏名】ラホーダ、エドワード、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ハルスタディウス、ラース
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ジュン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】樋口 真一
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 文寿
【審査官】
谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−233734(JP,A)
【文献】
特表2010−504902(JP,A)
【文献】
特開平03−084887(JP,A)
【文献】
特表2008−501977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00−37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状セラミック複合材を1つ以上の端栓で気密封止した端部キャップ付きセラミック複合材管を提供する方法であって、
(1)管壁および円周軸を有する管状セラミック複合材(40、12)ならびに当該1つ以上の端栓(14)材を用意し、
(2)外側面および内側面を有する当該1つ以上の端栓(14)材を当該管状セラミック複合材の1つ以上の端部に取り付け、
(3)1つ以上の一次電極(22)を当該1つ以上の端栓(14)の外側面に取り付け、
(4)放電プラズマ焼結法を用いる際に当該電極に電流を通すことから成る電界支援焼結技術を用いて0.01〜6.0分にわたり当該管状セラミック複合材と当該端栓との境界部の温度を毎分200℃から最大毎分1,500℃の速度で急上昇させ、その際に当該端栓と当該管の端部との境界部の温度は周囲温度から2,500℃の間とする
ことから成る方法。
【請求項2】
前記端部キャップ(14)がセラミック、炭化物、窒化物、金属および合金から成る群より選択された材料から作られている、請求項1の方法。
【請求項3】
端栓(14)がSiC系材料である、請求項1の方法。
【請求項4】
ステップ(1)の後に端部キャップ(14)および管状セラミック複合材の端部の境界面を研磨する、請求項1の方法。
【請求項5】
ステップ(3)とステップ(4)の間において、1つ以上の二次電極(24)を当該管状セラミック複合材(40、12)の外側面(20)に取り付けるステップをさらに有する、請求項1の方法。
【請求項6】
管状セラミック複合材を1つ以上の端栓で気密封止した端部キャップ付きセラミック複合材管を提供する方法であって、
(1)管壁および円周軸を有する管状セラミック複合材(40、12)、ならびに1つ以上の端栓(14)材を用意し、
(2)外側面および内側面を有する当該1つ以上のセラミック製端栓(14)複合材またはセラミック前駆体複合材を当該管状セラミック複合材の1つ以上の端部に取り付け、
(3)1対以上の一次電極(22)のうちの少なくとも1つの当該一次電極を当該1つ以上の端栓(14)の外側面に取り付け、
(4)1つ以上の二次電極(24)を当該管状セラミック複合材の外側面(20)に取り付け、
(5)放電プラズマ焼結(SPS)法を用いる際に当該1対以上の一次電極に電流を通すことから成る電界支援焼結技術を用いて当該管状セラミック複合材と当該端栓との隙間の温度を毎分200℃から最大毎分1,500℃の速度で急上昇させ、その際に当該端栓と当該管端部との境界部の温度は周囲温度から2,500℃の間とし、0.01〜60分にわたり0.001MPa〜50MPaの圧力をかけて、1つ以上の端部キャップにより当該管状セラミック複合材を封止する
ことから成る方法。
【請求項7】
前記セラミック端部キャップ(14)が、前記セラミック複合材と同じ物質であるかまたは同じ物質の前駆体である、請求項6の方法。
【請求項8】
好ましい前記管状セラミック複合材および前記端部キャップ(14)の材質がSiCである、請求項6の方法。
【請求項9】
ステップ(1)の後に端部キャップ(14)および管状セラミック複合材の端部境界面を研磨する、請求項6の方法。
【請求項10】
ステップ(4)において二次電極(24)を取り付けない、請求項6の方法。
【請求項11】
最も好ましい管状セラミック複合材(40、12)が、内側に単一または複数のモノリシックSiC系層を有し、SiC系基材中にSiC系繊維層のうちの1層以上を有するSiC複合材から作られている、請求項6の方法。
【請求項12】
管状セラミック複合材(40、12)の長さが0.6〜5.5メートルである、請求項6の方法。
【請求項13】
ステップ(1)の後に端部キャップ(14)および管状セラミック複合材の端部の境界面を研磨する、請求項6の方法。
【請求項14】
ステップ(4)の後に4〜20MPaの接合圧力を印加し、ステップ(5)の後の保持時間を5〜60分にする、請求項6の方法。
【請求項15】
ステップ(1)またはステップ(2)の後に0.035MPa〜0.351MPaの背圧で前記管内に不活性ガスを導入する、請求項6の方法。
【請求項16】
前記不活性ガスがヘリウムである、請求項15の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、ここに参照により援用されている2013年9月16日に提出された米国特許出願第14/027,299号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、端栓を放電プラズマ焼結法により封止したシリコンカーバイド(以下、SiCという)製の燃料棒被覆管に関するもので、被覆の設計・構造は問わない(モノリシック系や、内側がモノリシックSiCで外側がSiC繊維とSiC基材の複合体であるデュプレックス系など)。
【背景技術】
【0003】
加圧水型原子炉(PWR)、重水炉(例えばCANDU)、沸騰水型原子炉(BWR)などの典型的な原子炉の炉心には、多数の燃料集合体が含まれており、各燃料集合体は、複数の細長い燃料要素または燃料棒から成る。燃料棒のそれぞれには、燃料ペレットを積み重ねた形態の原子燃料用核分裂性物質が含まれており、それは例えば、二酸化ウラン(UO
2)、二酸化プルトニウム(PuO
2)、窒化ウラン(UN)および/またはウラン・シリサイド(U
3Si
2)のうちの1つ以上の物質に、例えばホウ素またはホウ素化合物や、ガドリニウムまたはガドリニウム化合物などを、ペレットの表面上またはペレット中に添加したものである。環状または粒子状の燃料を使用することもある。燃料棒は、核分裂性物質を封じ込める機能を果たす被覆を有している。燃料棒はアレイ状にグループ化され、このアレイは、高い核分裂率を維持するに十分な中性子束が炉心内に発生して、大量のエネルギーが熱として放出されるように構成される。炉心で発生した熱を抽出して有用な仕事をさせるために、水などの冷却材を炉心中に圧送する。燃料集合体には、望まれる炉心のサイズおよび原子炉のサイズに応じて、さまざまなサイズと設計のものがある。
【0004】
燃料棒被覆は通常、ジルコニウム(Zr)製であり、最大約2重量%のNb、Sn、FeおよびCrなどの他の金属を含む。そのようなジルコニウム合金被覆管は、例えばBiancheriaら、Kapil、およびLahodaにより教示されている(それぞれ米国特許第3,427,222号、第5,075,075号および第7,139,360号を参照)。この燃料棒/被覆管は、各端部に端部キャップと、積み重ねられた原子燃料ペレットを定位置に保つための金属ばね等の押さえ装置とを具備している。
図1は、このタイプの先行設計例であり、一連の燃料ペレット10、ジルコニウム系被覆12、ばね押さえ装置14、および端部キャップ16を示している。
【0005】
被覆が金属製の燃料棒には次のような問題がある。前述した冷却水中に存在するかも知れない異物に接触すると摩耗する可能性がある。「設計基準外」事故のような過酷な条件下で、金属被覆は、1,093℃(華氏2,000度)を超える温度の蒸気と発熱反応する可能性がある。原子燃料を保護するためのこのようなジルコニウム金属被覆は、原子炉温度が最高1,204℃(華氏2,200度)に達しうる「冷却材喪失」事故時に強度が低下する可能性があり、燃料棒内に生じる核分裂生成ガスのために膨張する可能性もある。さらに、電力業界における継続的な要請に応じて、原子炉の運転温度と被覆の放射線被曝量が限度いっぱいに引き上げられている。
【0006】
これらすべての理由に鑑みて、Maruyamaら(米国特許第6,246,740号)、Zender(米国特許第5,391,428号)、Hanzawaら(米国特許第5,338,576号)、Feinroth(米国特許第5,182,077号および米国特許公報第2006/0039524A1号)、Easlerら(米国特許公報第2007/0189952 A1号)、およびわずかな言及ながらKorton(米国特許第6,697,448号)が教示しているように、例えばシリコンカーバイド(SiC)モノリスや繊維の、またはそれらを組み合わせた試験的なセラミック材料を、金属製燃料棒の完全なまたは部分的な代替物として用いることが検討されてきた。
【0007】
原子力産業では、一般的に脆いセラミックに、完全な破壊条件下で応力/温度/圧力が解放されるような極めて高い可撓性を付与する完全に正しい組み合わせを探求する必要がある。1つの可能性は、試験的なSiC繊維強化SiC複合材を使用することである。これは、高純度β相またはα相の化学量論的シリコンカーバイドを、β相SiCが浸透した連続的なβ相化学量論的シリコンカーバイド繊維から成る中心複合層で覆い、三層の場合はさらに、細粒β相シリコンカーバイドの外部保護層を設けた、二層または三層の管である。繊維成分にプレストレスをかけ、繊維からトウ(短繊維)を形成し、トウを逆巻きオーバーラップすることが提案されているが、この繊維には、境界部を緩く、滑りを可能にして、耐ひずみ性と可撓性を高める厚さ1マイクロメートル未満のSiCまたは炭素または黒鉛または窒化ホウ素が塗布される。Feinrothらは、参照によって本願に含まれる米国特許公報第2006/0039524A1号において、このような原子燃料管ならびに公知のプロセスである化学蒸気浸透法(CVI)およびポリマー含浸焼成法(PIP)を使用した基材の緻密化について記述した。アルミナ基材中のアルミナ(Al
2O
3)繊維も、代替物として提案されている。
【0008】
本願で使用する「セラミック複合材」という用語は、SiCおよびAl
2O
3を含む上述のすべての複合型構造体を意味し、そのように定義される。
【0009】
意外にも、そのようなセラミック複合材向けの端栓についてはほとんど言及がない。実際、端栓を取り付けてシリコンカーバイド燃料棒被覆などのセラミック複合材被覆の封止性を保証するシール技術を見つけるのは、これまで達成が困難な仕事であった。それは、境界接合部に以下のような様々な要件が課されるためである。
・通常運転、想定内運転事象、稀発事故、および限界故障の発生時および発生後において機械的強度を保証すること。
・照射時と、原子炉特有の腐食環境下において端栓と被覆との接合部の封止性を保証すること。
・燃料ペレットおよび押さえ装置が完全に装荷された被覆に適合する接合プロセスであること。また、端栓およびシール技術は、典型的には最大圧力300psiとなるヘリウムまたは他の熱伝導性の充填ガスによる燃料の加圧が可能であること。
・接合技術は、商業的大量生産を可能にすること。
【0010】
近年、いくつかのシール技術が検討されたが、いずれも、本論である原子炉環境において有効な技術ではないことが判明している。そのため、SiC部品を封止するためにSiC以外の様々な化合物(Ti系配合物、Al−Si配合物など)を使用した多数のシール技術(ろう付け技術を含む)が提案されている。例えば、V.Chaumatら(米国特許公報第2013/0004325A1号)、A.Gasse(米国特許公報第2003/0038166号)、A.Gasseら(米国特許第5,975,407号)、F.Montgomeryら(米国特許5,447,683)、G.A.Rossiら(米国特許第4,925,608号)、およびMcDermidの「Thermodynamicbrazing alloy design for joining silicon carbide」(
J.Am.Ceram.Soc.Vol.74,No.8,pp.1855−1860,1991)が挙げられる。
【0011】
2007年以降、SiC接合技術に関する研究が爆発的に増えた。例えば、C.H.Henager,Jr.らの「Coatingsand joining for SiC and SiC composites for nuclear energy systems」
Journal ofNuclear Materials,367,370(2007)1139−1143、 M.Ferrarisらの「
Joining of machinedSiC/SiC composites for thermonuclear fusion reactors」
Journal of NuclearMaterials,375(2008)410−415、J. Liらの「A high temperatureTi−Si eutectic braze for joining SiC」
Materials Letters,62(2008),3135−3138、W.Tianの「Reaction joining of SiC ceramics using TiB
2−based composites」
Journal of the European Ceramic Society,30(2010)3203−3208、および M.Ferrarisらの「Joiningof SiC−based materials for nuclear energy applications」
Journal of Nuclear Materials,417(2011)379−382が挙げられる。これらの論文は、より高い出力を保証する手段を電力会社に知らせようとするものである。電力会社は、世界のエネルギー需要を満たすための経済的条件として、設計および材料により厳しい要求を突きつけている。
【0012】
上述のセラミックモデルは、もはや試験的なものではなく、高い機械的強度を有することが一般に示されており、原子炉に要求される気密性を実現できると考えられている。しかし、このような接合技術は、原子炉環境下で燃料棒の典型的な寿命までは持ちこたえるのに必要な耐腐食性および耐放射線性を付与しないことが判明している。試験的な放電プラズマ焼結(SPS)などの他のシール技術については、参照によって本出願に組み込まれるMunirらの「Theeffect of electric field and pressure on the synthesis and consolidation of materials:areview of the spark plasma sintering method」
J.Mater Sci.,41(2006)763,777に記されている。これらの技術は、追加の化合物を使用しないが、このプロセスを使用して経済的に大量に製造するのは現時点では非現実的であり、依然として難しい課題である。熱間等方圧加圧(HIP)法は、多くの民生分野で使用されている周知の技術であり、SiC同士の接合にも使用可能である。しかしHIP法は、ARossiらが指摘(米国特許第4,925,608号)したように、原子燃料棒を封止する脆弱な環境では、長い焼結サイクル、約1,700℃という高温、および超高圧のために実際的ではない上に、大量生産には向かない。必要とされるのは、管状セラミック複合材をセラミック製または金属製の端部キャップで封止するための商業的に実現可能な接合方法である。
【0013】
本発明の主目的は、高い強度を有し、気密封止され、商業的に有用かつ実現可能であり、過酷な原子炉環境の照射に耐えることができる端栓シールを、燃料ペレットを封じ込めるためのセラミック複合材管用として製造する方法を提供することである。
【発明の概要】
【0014】
上述の問題を解決し、主目的を達成することを意図する本発明は、端部に蓋を被せた、原子燃料を充填可能なセラミック複合材管を提供する方法に関連する。当該方法は以下のステップより成る。
(1)管壁および円周軸を有する管状セラミック複合材、ならびに別個の1つ以上の端栓材を提供する。
(2)1つ以上の端栓材(好ましくは精密に機械加工されて研磨された材片)を、管状セラミック複合材の少なくとも一方の端部に取り付け、この端栓は内側面と外側面とを有し、当該端栓と被覆管との境界部で管状セラミック複合材に接するものとする。
(3)1つ以上の一次電極を1つ以上の端栓の外側面に取り付ける。
(4)随意的に、1つ以上の二次電極を管状セラミック複合材の外側面に取り付ける。
(5)存在する電極に電流を通し、放電プラズマ焼結により端栓と被覆との境界部の温度を最大毎分1,500℃の速度で急上昇させる。その際に端栓と被覆管の端部との境界部の温度は周囲温度から2,500℃の間である。
【0015】
本発明のより詳細な好ましい態様は、以下のステップから成る方法にも関する。
(1)管壁および円周軸を有する管状セラミック複合材、ならびに別個の1つ以上の端栓材を用意する。
(2)1つ以上の端栓材(好ましくは精密に機械加工されて研磨されたセラミック製もしくは金属製の端栓複合材またはセラミック先駆体複合材)を、管状セラミック複合材の少なくとも一方の端部に取り付け、この端栓は内側面と外側面とを有し、当該端栓と被覆との境界部で管状セラミック複合材に接するものとする。
(3)1つ以上の一次電極を1つ以上のセラミック製端栓の外側面に取り付ける。
(4)随意的に、1つ以上の環状二次電極を管状セラミック複合材の外側面に装着する。
(5)存在する電極に電流を通し、放電プラズマ焼結法により端栓と被覆との境界部の温度を最大毎分1,500℃の速度で急上昇させる。その際に端栓と被覆管端部との境界部の温度を周囲温度から2,500℃の間とし、0.001MPa〜50.0MPaの圧力を0.01〜6.0分にわたってかけることにより、1つ以上の端部キャップを被覆管に封止する。平均電流は200〜800A(アンペア)、ピークパルス電圧は2〜4V(ボルト)であり、印加時間は好ましくは5〜60分である。
【0016】
セラミック製端部キャップは、セラミック複合材と同じ物質であるか、または加熱することによってセラミック複合材と同じ物質になる先駆物質であるのが好ましい。
【0017】
一般に知られている放電プラズマプロセス(SPSプロセス)の操作パラメータは、本願に開示する発見された特別の臨界的範囲を除き、好ましくは栓と被覆との隙間/境界部における温度を、最大毎分1,500℃、好ましくは毎分100℃〜1,000℃、最も好ましくは毎分1,000℃という速い速度で、1.0〜6.0分、5.0〜10MPaにおいて、ピーク温度は2,500℃、(好ましくは1,800℃〜2,150℃、最も好ましくは2,100℃まで上昇させるものである。
図2と
図3、4とを比較して示すように、随意ではあるが環状電極24の使用が望ましい。より簡易な技術を示す
図2において、使用する電極は2つの端部電極22だけである。電気的な構成はいずれの例も有用である。また、好ましくは、ステップ(4)の後に4〜20MPaの接合圧力を5〜60分にわたってかけ、ステップ(1)またはステップ(2)の後に、場合によっては端栓に孔をあけた上でヘリウムなどの内部ガスを管内に導入/注入/圧送し、ガスを加圧して、50〜500psiの圧力で端栓と管を封止する。
【0018】
端部キャップは、SiC製であるのが好ましい。ジルコニウムやジルコニウム合金などの他の金属製の端部キャップも使用できる。三元の炭化物または窒化物のグループも端部キャップ材として使用することができ、例えばTi
2AlC、Ti
4AlN
3、Ti
3AlC
2、Ti
2SiC、Ti
3SiC
2、Ti
3SnC
2、Zr
2AlC、Zr
2TiC、Zr
2SnC、Nb
2SnC、Nb
3SiC
2、および(Zr
xNb
1−x)
2AlC(ここに0<x<1)が挙げられる。
【0019】
最も好ましいセラミック複合材またはその前駆物質、および端部キャップは、SiC複合材から作られており、内側面にモノリシックSiCがあり、SiC基材上にSiC繊維層のうちの少なくとも1つの層がある。端部キャップの境界/接触点およびセラミック複合材の端部は研磨するのが最も好ましい。管状セラミック複合材は、様々な原子炉の設計に対応できるよう、2〜18フィート(60.96〜546.64cm)の範囲の長さとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0021】
【
図1】燃料ペレット、押さえばね、および端部キャップを含む先行技術のジルコニウム合金燃料棒の拡大縦断面図である。
【0022】
【
図2】セラミック複合材の両端部を、二次電極を用いないで、デュアル操作により端部キャップで封止するためのSPSプロセスの断面図である。
【0023】
【
図3】二次的な環状電極を用いて一度に1つの端部に円周シールを施すSPSプロセスの断面図である。
【0024】
【
図4】二次的な環状電極を用いて一度に1つの端部キャップの中央部内側および最上部を封止するSPSプロセスの断面図である。
【0025】
【
図5】本発明を最も的確に示す、本プロセスの概略流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
現用および標準的燃料被覆は、核分裂生成物の障壁として機能し、放射性物質の環境への拡散を防ぐ様々なジルコニウム合金から作られている。ジルコニウム合金は、望ましい中性子特性を有し、従前は、通常運転条件下における強度と冷却材中の耐酸化性とについては十分な特性を備えていると考えられていたが、温度が1,200℃より高い設計基準を超えると急速に酸化する。ジルコニウムと蒸気とが反応すると急速に発熱し、この反応中に水素が発生するため、1,200℃を超える温度における耐酸化性がジルコニウム合金よりもはるかに優れているシリコンカーバイド(SiC)などの新素材が提案され、実験による検証が行われてきた。最新のSiC系材料は、もはや完全な試験的段階を通り越し、燃料破損温度を優れた性能を有するジルコニウム合金製被覆に比べて大幅に(600℃超)引き上げるのを可能にしている。本願は、原子炉中におけるセラミック製原子燃料管の高温での使用を可能にするシール方法を記述する。この方法により、先に記述および定義した「セラミック複合材」製の燃料棒管に用いる、1,200℃を超える温度で動作可能な耐放射線端部シールが形成される。
【0027】
先に定義した燃料棒用管状「セラミック複合材」は、高密度モノリシックSiCおよびSiC−SiC複合材料を含む複数層のセラミックSiC材料から成るのが最も好ましい。各層は、被覆の性能要件の充足に寄与する特有の機能を有する。「セラミック複合材」被覆の好ましい一態様において、被覆の内部層は浸透性が非常に低い高密度モノリシックSiCから成る。この層の主要な機能は、核分裂生成物を閉じ込めることである。信頼性を高めるために、被覆に最大3つのモノリシックSiC層を組み入れて、余剰の核分裂生成物閉じ込め能力が付与されるようにしてもよい。各層は、黒鉛に似ているが、製造時に生じた欠陥によりグラフェンシート間に多少の共有結合が存在する熱分解炭素か、あるいは、SiCの連続的な塊の形成を阻止して、一つの層から別の層へ亀裂が伝搬しないようにする窒化ホウ素や炭化ホウ素など他の物質より成る中間層によって分離される。被覆構造体における次の層は、SiC−SiCセラミック複合材である。
【0028】
SiC−SiCセラミック複合材は引張状態にあり、熱流束が高い期間に生じる被覆横断面半径方向の応力勾配に対抗するためにモノリス層を圧縮状態に保っている。SiC−SiC複合材は、高密度モノリシックSiCに比べて引張応力限界が高いので、この応力勾配を受け容れることができる。さらに、強化繊維の構成を調整することによって複合材層を設計することができる。例えば、編組や巻き角を種々変化させると、被覆の軸方向および周方向の相対的強度が変化する。これにより、被覆の耐用期間中に予想される応力を受容するための最適構成を設計する上で、余裕ができる。外部SiC−SiC層の主要機能は、内部モノリシックSiC層が破損した場合に被覆の構造健全性を維持することである。これらすべては、先に定義した用語「セラミック複合材」に含まれるものとして再定義する。耐腐食性の向上、圧力降下の抑制、熱伝達の向上などの特徴を追加するために、さらにSiC層を追加してもよい。これらすべてもまた、先に定義した用語「セラミック複合材」に含まれるものとして再定義する。
【0029】
本願において、この特定の技術に適合するように大幅に改良された方法は、発見され本明細書に開示された有用な具体的操作パラメータを用いてプラズマ焼結法を実施する、適正化パラメータによる電界支援プラズマ焼結技術を必要とするものである。SiC端栓とセラミック管(好ましくはSiC系燃料棒管)とを両者の境界部で接合し、最大500psiの充填圧力で当該管を封止する放電プラズマ焼結(SPS)法は本願にとって有用であるが、本発明に関連する態様を
図2〜4に示す。
【0030】
別の方法では、相対する境界面が管の内側または外側に存在する端栓を使用する。SPS法は、加熱速度が最大毎分1,500℃と大きく、2つのSiCピース(またはプレピース/先駆物質)を数分で接合することが可能である。境界部における望ましい局所温度は1,400℃〜2,150℃、保持時間は0.01〜60分(好ましくは5〜60分)、圧力は0.001〜50MPa(好ましくは5〜20MPa)の範囲である。
【0031】
次に図について説明する。
図2に示すのは放電プラズマ焼結(SPS)法であり、放電プラズマ焼結装置11を使用して接合材、融着材およびセラミックの端部キャップをセラミック複合材に取り付けるが、その際に一次電極および随意的に二次電極を使用する。また、以下の周知のプロセスにより、ヘリウムなどの不活性ガスを管に導入して50〜500psiの内部背圧を与える。すなわち、端栓を穿孔し、ガスを導入し、原子炉内に原子燃料ペレットを保持するための、1本以上の端栓付き管状セラミック複合材12内の燃料を交換する。当該管状セラミック複合材は、1つ以上の端部キャップ14の間に位置し、端栓は当該管状セラミック複合材の最上部16および内部18ならびに外周部20に係合する。封止能力をさらに高めるために、端部キャップ14または表面16、18にペーストを塗布してもよい。少なくとも2本の電極を、各電極22が1つ以上の端部キャップに隣接して接触するように端部キャップ/管に装着する。端部キャップと管の端部との間の境界部26は、接着性をよくするために研磨するのが最も好ましい。
【0032】
焼結装置10は真空に保つか、周囲温度とするか、または加熱炉内で50℃から最大1,500℃の温度にする。図には、圧力制御/電力供給手段30、電力線32、燃料ペレット34およびペレット保持手段(ここではばね36)も示している。端部キャップは好ましくはSiC製であり、端部キャップ覆い部38の好ましい長さは0.75インチ(1.905cm)から1.25インチ(3.175cm)の間である。
【0033】
図3は、
図2と同じ参照符号を使用しているが、一度に1つの端部を封止するために随意的に環状電極を用いる方法であって、端部キャップが管の最上部および外周部と接触する方法を示している。
図4は、端部キャップが管の最上部および内周部と接触する方法を示している。これらの方法では、1つ以上の電極24が管状セラミック複合材に隣接して接触するかまたは取り囲む。
図5に示す本発明の方法において、符号40は外壁、内壁および円周軸を有する管状セラミック複合材の供給を表す。42は当該セラミック複合材への1つ以上の端栓複合材の取り付けを示す。当該端栓複合材はセラミック複合材と同じ材質であるのが好ましい。端部キャップ44はセラミック複合材の最上部、内部面および側面を覆う完全ではあるが複雑なシールを提供し、また、端部キャップ46は
図3に示すように管状セラミック複合材の最上部と側面のみを覆い、また、端部キャップ48は
図4に示すように管状セラミック複合材の最上部と内部面を覆う。ペーストを塗布するかまたは塗布せずに端栓を管の端部に装着し、電極を管および端栓に装着し、これらすべてに放電プラズマ焼結法(11、50)を施し、端部キャップが固化してセラミック複合材52の端部を確実に封止するようにする。
【0034】
さらに、以下の特徴を有することができる。
・長さ2〜18フィート(60.96〜548.64cm)の端部が封止されたSiC製燃料棒管を使用する。当該管は密度が理論密度の95%を超える1〜3層のモノリシックSiC内部層、SiC−SiC複合材の層、および随意的なSiC堆積外部層から成る。
・SiC前駆体ペースト材を接合面に塗布してまたは塗布せずに、他のセラミック複合材ペースト、金属ろう材、SiO
2−Al
2O
3などのガラス含有材、またはSiおよびAlなどの金属ろう化合物を使用する放電プラズマ焼結法によって一方または両方の端部がモノリシックSiCまたは金属製端栓で封止された上述の燃料棒管を使用する。
・端栓には円形のスロットが存在し、スロットの幅は燃料棒管の壁厚の1.001〜1.1倍で、深さは0.05〜0.5インチ(0.127〜1.27cm)であり、その部分で燃料棒管が封止される。
・端栓は燃料棒管の内側または外側において0.05〜1インチ(0.127〜2.54cm)の深さに嵌合し、相対する境界面において燃料棒管を封止する。
・端栓の複合材/前駆物質(ただし管は別)が以下のうちの1つの方法で製造される。すなわち、化学蒸着法(CVD)、冷間押出しに続く常圧焼結、熱間等方圧加圧(HIP)、または積層造形法(3次元印刷やレーザー支援蒸着/焼結など)である。
・SiC前駆物質の密度は、理論密度の35%〜60%である。
・端栓および燃料棒管の相対する境界面は、鏡面仕上げにするか、または粒度320もしくはより細粒のダイヤモンドペーパーで研磨する。
・燃料棒管の内径は0.25〜0.60インチ(0.635〜1.524cm)の範囲であり、管壁厚は0.01〜0.15インチ(0.025〜0.381cm)の範囲である。
【0035】
本発明は、ある程度しなやかで、破壊制御的、災害対応型であり、寿命の長い、長さ2〜18フィート(60.96〜548.64cm)の封止済み燃料棒管を、商業的かつ実際的に生産するための飛躍的でおそらくは革新的な方法を提供する。モノリシックSiCおよびSiC繊維基材、または他の「セラミック複合材」から作られるこの燃料棒管には、ヘリウムまたは他のガスが最大500psiの圧力で充填される。
【0036】
燃料棒管は、単数または複数の内部モノリシックSiC層および好ましくは複合材である外部SiC/SiC層から成る二重構造であるのが好ましい。この燃料棒管は、一方または両方の端部を、SiCまたは他の材料製の端栓によって封止される。この燃料棒管と端栓は、放電プラズマ焼結法などの電界支援焼結技術を用いて接合される。この接合は、周囲条件または真空中、あるいは与圧室内または加熱された室内で実施できる。封止された管は気密であり、最大10,000psiの差圧、最大1,500℃の温度の下で、少なくとも6年は変形しない。
【0038】
原子燃料を原子炉内に閉じ込めるための長さ12フィート(365.76cm)の押出し成形化学量論的α相の原子炉用SiC管から成る「セラミック複合材」に関して、当該管の内径は0.32インチ(0.8128cm)、壁厚は0.015インチ(0.0381cm)、密度はSiC理論密度の95%であり、当該管は6つの層の巻線状化学量論的β相のSiC繊維から成る層厚0.026インチ(0.066cm)のSiC複合材を巻回し、化学蒸着浸透法によって当該複合材にβ相化学量論的SiCを浸透させ、当該複合材の正味密度をSiCの理論密度の80%を超えるようにしたものである。
【0039】
この「セラミック複合材」を、
図4に示すように高度に研磨された管内部および上部シール面を有する押出し成形された化学量論的α相端栓によって封止し、封止の際には、周囲条件、375psiにおいてヘリウムが充填されたチェンバ内で、周知の定義済み放電プラズマ焼結法を用いた。加熱速度は毎分200℃、接合圧力は5MPa、栓/管の接合面でのピーク温度は2,100℃、ピーク温度における保持時間は5分から最大60分とした。
【0040】
この方法によると、前述の調整された放電プラズマ焼結プロセスに従って管状セラミック複合材に端部キャップを良好に装着でき、それにより提供されるPSAによって端部が封止された管は、原子炉内の標準的な圧力および温度に対応し、曲げおよび破壊に対して実質的な回復力がある。
【0041】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何らも制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物である。