(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ブラシ状ポリマーは、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリジエン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリオルガノゲルマン、または前述のポリマーの少なくとも1種を含む組み合わせである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
前記ブラシ状ポリマーは、ヒドロキシル基末端ポリスチレン、ヒドロキシル基末端ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル基末端ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−トリフルオロエチルメタクリレート)、ヒドロキシル基末端ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート)、または前述のポリマーの少なくとも1種を含む組み合わせである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
前記ブロックコポリマーの前記第一のブロックまたは前記第二のブロックは、ビニル芳香族モノマー、エチレン性不飽和モノマー、1−ブテン、1,3−ブタジエン、イソプレン、ビニルアセテート、ジヒドロピラン、ノルボルネン,無水マレイン酸、シロキサンのモノマーまたは前述のモノマーの少なくとも1種を含む組み合わせから誘導されたポリマーを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【背景技術】
【0002】
現代の電子装置は、周期性が40ナノメートル未満である構造を活用することに変化してきている。所与の基板上の種々の機能部品(たとえば、電界効果トランジスタのゲート)の大きさ及びスペースを縮小する能力は、現状、フォトレジストの露光に使われる光の波長(すなわち、193nm)により制限される。これらの制限は、50nm未満の限界寸法(CD)を有する機能部品の製作に対し大きな問題を引き起こす。
【0003】
周期性が40ナノメートル未満であるパターンを形成するにあたって、ブロックコポリマーが1つの解決策であることが提唱されてきた。ブロックコポリマーは、系の自由エネルギーを減少させるために、自己組織化ナノ構造を形成する。ナノ構造は、100ナノメートル未満の平均最大幅または厚さを有する構造である。この自己組織化は、自由エネルギーの減少の結果として周期的構造を生成する。周期的構造は、ラメラ状または円筒状のドメイン形態であり得る。これらの構造のために、ブロックコポリマーの薄膜は、ナノメートルスケールで空間化学的コントラストを提供することから、それらは、周期的なナノスケール構造体を作成するために、代替の低コストナノパターニング材料として使用されてきた。
【0004】
コポリマー及びパターニングのプロセスを開発するために、数多くの試みが行われている。
図1A及び1Bは、基板上に配置されたラメラ形成ブロックコポリマーの例を示す。ブロックコポリマーは、お互いに反応的に結合し、お互いに不混和性であるブロックA及びブロックBを含む。ラメラドメインのアラインメントは、それらが配置される基板表面の表面に平行(
図1A)または垂直(
図1B)のいずれかであり得る。垂直に配向されたラメラは、ナノスケールラインパターンを提供し、一方、平行に配向されたラメラによって作成された表面パターンは存在しない。
【0005】
基板平面に平行にラメラが形成する場合、1つのラメラ相は、基板の表面で第一の層を形成し(基板のx−y平面内)及び、別のラメラ相は、第一の層に重なる平行層を形成し、従って、垂直(z)軸に沿って膜を見た場合、マイクロドメインの横方向のパターンも、横方向の化学的コントラストも形成しない。表面に垂直にラメラが形成する場合、垂直に配向されたラメラは、ナノスケールのラインパターンを提供する。
【0006】
一方で、円筒形状のブロックコポリマーは、円筒が表面に平行に形成されると、ナノスケールのラインパターンを提供し、円筒が表面に垂直に形成されると、正孔またはポストパターンを提供する。従って、有用なパターンを形成し、ブロックコポリマー中の自己組織化ミクロドメインの配向を制御することが望ましい。球状または円筒状形成ブロックコポリマーを用いるプロセスを示す概略図は、
図1(C)及び1(D)に示す。ブロックコポリマーは、ブラシ層により処置されたトレンチなどの基板に塗布される。ドメインを形成し、整列させるためにアニールした後、1つのブロックがエッチングまたは現像工程により選択的に除去され、基板に転写して、元のトレンチ基板における場合よりも外観が小さいナノスケールパターンを作成することができるマスクが提供される。
【0007】
ブロックコポリマーを、(任意の溶媒の存在下で)熱を用いてアニールし、それによって、ガラス転移温度超、秩序〜無秩序転移温度未満の温度で、ポリマーブロックA及びBのミクロ相分離を可能にする。アニールされた膜は、次に、コポリマー中のブロックの1つの位置に見合うパターンを明らかにするために、溶媒/現像液への浸漬または、他ではなく1つのポリマーブロックを優先的に除去する反応性イオンエッチングによるなど、適切な方法によってさらに現像することができる。
【0008】
従来のブロックコポリマーの使用では、自己組織化プロセスの間に方位制御及び長距離秩序に関する問題が生ずる。ポリ(スチレン)及びポリ(ジメチルシロキサン)のジブロックコポリマー(PS−b−PDMS)により誘導自己組織化技術を用いたナノスケール寸法(特に、サブ45ナノメートル)のパターニングでの適用が約束される。ポリスチレンドメインとポリ(ジメチルシロキサン)ドメインとのエッチング選択性により、これらの材料がパターニングに有用となる。これらの材料は、一般に、正孔またはトレンチなどの物理的制限を用いて、ブロックコポリマーの形態を整列させるいわゆるグラフォエピタキシー誘導自己組織化(DSA)プロセスで使用する。Jung and Rossは、Nano Lett.2007、7、2046において、長さのあるトレンチにPS−b−PDMSを使用し、その結果、PDMS円筒が整列されることについて記述している。トレンチ及びエッチングでの整列後、シロキサン材料は、SiO
2ライン内でレジストラインパターンを形成して、特徴密度を増大させる。天然酸化層を有するトレンチ−パターン形成Si基板は、PS−b−PDMSを塗布しアニーリングする前に、最初にヒドロキシル末端官能基PDMSブラシ状ポリマー(PDMS−OH)を塗布する。しかし、PDMS−OHは、PDMSの酸素エッチング耐性が原因で、ブラシ状ポリマー材料には望ましくない。これは、トレンチ底部のPDMS層により、パターン転写が困難になるためである。また、ヒドロキシル末端官能基ポリスチレンブラシ状ポリマー(PS−OH)を使用して、PS−b−PDMSの塗布及びアニーリング前にトレンチ基板を処理していた。
【0009】
しかし、当業者における従来の知識では、このような操作でPS−b−PDMSブロックコポリマーを使用すると、ポリスチレンブロックとポリジメチルシロキサンブロックとの非適合性が大きいことから、効率よく熱アニール処理することができないとされている。この点は、スペースが30nm以上であるPS−b−PDMS材料で特に明らかである。いずれのブロックコポリマー系においても、ドメイン間スペースが増大するごとに、欠陥を少なくするための材料のアニールはさらに困難になる。従って、当業者は、ポリ(スチレン)−b−ポリ(ジメチルシロキサン)ブロックコポリマーなどのブロックコポリマーを製造する様々な代替技術を開発してきた。たとえば、Jung and Rossは、溶媒蒸気アニール処理を用いて、PS−b−PDMSを整列させ、Millwardらの米国特許公報第2011/0272381号では、ポリ(スチレン)−b−ポリ(ジメチルシロキサン)など、ジブロックコポリマー膜を製造するための溶媒アニール方法を開示している。
【0010】
また、一部のDSAスキームでは、ライン及びスペースが限界寸法(CD)に適合することが望ましい。たとえば、エッチング後のスペースCDの少なくとも2つの異なる集団を有することが可能であり、1つは、SiO
2ガイドと隣接するシロキサン円筒との間に形成され(ガイド隣接スペース)、もう1つは、シロキサン円筒間に形成される(円筒間スペース)。スペースCD、特に、ピッチの大きいブロックコポリマー(L
0>30nm)では、ガイド隣接スペースCDは多くの場合、円筒間スペースCDより狭いため、適合するスペースCDを得ることは困難になり得る。
【0011】
それにもかかわらず、基板のパターニングで使用するブロックコポリマーとブラシ状ポリマー組成物の新規の組み合わせに対するニーズが残されている。特に、中間的長さのスケール(20〜40nm)のパターニングを可能とし、好ましくは、欠陥形成の少ない急速アニーリングプロファイルを示す新規コポリマー組成物に対するニーズが残されている。また、トレンチガイド誘導自己組成化塗布において、ガイド隣接スペース限界寸法を大きくできるようにするニーズもある。
【0012】
このため、ドメインサイズが25ナノメートル未満であり、周期性が50ナノメートル未満である自己組織化膜を生成できるブロックコポリマーとブラシ状ポリマーの組み合わせを見つけることが所望される。また、エッチング耐性が高い少数ブロック及び比較的エッチング耐性が低いマトリックスブロックを含むブロックコポリマーと表面エネルギー及び塗布厚さが変動する性質を有し、エッチング耐性ブロックと比較して、エッチング耐性が低いブラシ状ポリマーとの組み合わせを見出すことが望ましい。また、シリコン含有量が少ないポリマー及びエッチング耐性シリコン含有ポリマーを含むブロックコポリマーとシリコン含有量が少なく、ブロックコポリマー中において有機ポリマーとは異なるポリマーを含むブラシ状ポリマーとの組み合わせを見出すことが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される「相分離された」は、個別のミクロ相分離ドメインを形成するブロックコポリマーのブロックの傾向を指し、また、「ミクロドメイン」または「ナノドメイン」及び単に「ドメイン」とも呼ばれる。周期的なドメインを形成するための同じモノマー集合体のブロック、並びにドメインの間隔及び形態は、ブロックコポリマー中の異なるブロック間の相互作用、大きさ及び体積分率に依存する。ブロックコポリマーのドメインは、スピンキャスティングステップの間、加熱ステップの間などの適用中に形成することができる、または、アニールステップによって調整することができる。「加熱」(本明細書中ではさらに「焼成」とも称する)は、基板及びその上の被覆層の温度を、周囲温度よりも上昇させる一般的なプロセスである。「アニーリング」は、熱アニーリング、熱勾配アニーリング、溶媒蒸気アニーリングまたは他のアニーリング方法を含むことができる。熱アニーリングは、時には「熱硬化」と呼ばれ、ブロックコポリマーアセンブリの層において、パターンを固定し、欠陥を除去するための特異的な焼成工程であり得、一般的に、膜形成プロセスの終わりまたは終わり近くで、高温(たとえば、150℃〜400℃)で、長時間(たとえば、数分〜数日間)加熱することを含む。アニーリングは、行われる場合、ミクロ相分離ドメインの層(以下、「膜」と呼ぶ)の欠陥を減少または除去するために使用される。
【0017】
自己組織化層は、相分離を介してドメインを形成する、少なくとも第一のブロック及び第二のブロックを有するブロックコポリマーを含む。本明細書で使用される「ドメイン」は、ブロックコポリマーのブロックに対応させることにより形成されたコンパクトな結晶質、半結晶質、または非晶質領域を意味し、これらの領域は、ラメラ状、円筒形、または球状であり得、基板上に配置された基板の表面及び/または表面改質層の面に対して、直交または垂直に形成される、または、基板と平行若しくは基板の平面内に形成される。一実施形態において、ドメインは、約1〜約25ナノメートル(nm)、具体的には約5〜約22nm、さらにより具体的には約7〜約20nmの平均最大寸法を有する。
【0018】
本発明のブロックコポリマーに言及する際、本明細書及び、添付の特許請求の範囲において用いられる用語「MN」は、本明細書の実施例において使用した方法に従って測定される、ブロックコポリマーの数平均分子量(g/mol)である。
【0019】
本発明のブロックコポリマーに言及する際、本明細書及び、添付の特許請求の範囲において用いられる用語「M
W」は、本明細書の実施例において使用した方法に従って測定される、ブロックコポリマーの重量平均分子量(g/mol)である。
【0020】
本発明のブロックコポリマーに言及する際、本明細書及び、添付の特許請求の範囲において用いられる用語「PDI」または「D」は、以下の式に従って決定したブロックコポリマーの多分散性(多分散性指数または単に「分散性」とも呼ばれる)である。
【数1】
【0021】
本明細書で使用するとき、PtBS−b−PDMSは、ポリ(4−tert−ブチルスチレン)及びポリジメチルシロキサンのブロックコポリマーを示す。本明細書で使用するとき、PS−b−PDMSは、ポリスチレン及びポリジメチルシロキサンのブロックコポリマーを示す。
【0022】
遷移用語である「含む(comprising)」は、遷移用語「〜から成る(consisting of)」及び「〜から本質的に成る(consisting essentially of)」を含む。
【0023】
本明細書で使用される用語「及び/または」は、「及び」だけではなく「または」の両方を意味する。たとえば、「A及び/またはB」は、A、BまたはA及びBを意味すると解釈される。
【0024】
本明細書は、ロックコポリマー及びブラシ状ポリマーの組み合わせを含む組成物に関し;ブロックコポリマーは、ブラシ状ポリマー上に配置されるとき、マトリックス中においてエッチング耐性円筒状形態(すなわち、エッチング耐性円筒)を作製する。ブラシ状ポリマーは少なくとも1つのポリマーを含み、ブラシ状ポリマーに含まれる少なくとも1つのポリマーは、ブロックコポリマー中のポリマーとは組成(化学組成及び構造)が異なる。ブラシ状ポリマーは、基板に共有結合させることができる少なくとも1つの部分を含む。
【0025】
一実施形態では、ブロックコポリマーは、共に共有結合する第一のブロック及び第二のブロックを含み、少なくとも1つのブロックはエッチング耐性であり、ブラシ状ポリマーはブラシ状ポリマーが基板に結合され得る反応性部分を含む。ブラシ状ポリマーは、化学的及び構造的に、ブロックコポリマーの第一のブロック及び第二のブロックとは異なる。反応性部分は、ブラシ状ポリマーと共有結合する。コポリマーの第一のブロックは、一般に、10原子%未満、具体的には5原子%未満、より具体的には2原子%未満のシリコンを含み、第二のブロックは、少なくとも10原子%のシリコン、具体的には、少なくとも20%のシリコン、より具体的には、少なくとも30%のシリコンを含む。ある実施形態では、ブロックコポリマーはポリシロキサンを含み、ブラシ状ポリマーは、基板との共有結合を可能にする少なくとも1つの部分を含む。
【0026】
コポリマーの第一のブロック及びコポリマーの第二のブロックは両方とも、狭い多分散性指数を有し、結果として、高度な周期性を示すブロックコポリマーを形成する。コポリマーは、ラメラ状及び/または円筒状の形態を有し、それらが配置される基板の表面に垂直または平行に整列することができ、従って、それらを先進的な半導体パターニングに有用とすることができる。これらのブロックコポリマーを、基板(その上にそれらが配置される)上に、約50ナノメートル以下、具体的には約40ナノメートル以下の特徴を作成するために使用することができる。ブロックコポリマーは、自己組織化するためのアニーリングを介して、改善された長距離秩序を示す形態にさらに処理し得る。この特徴は、有利には、様々なリソグラフィーの用途についての可変ドメイン間隔を有するフォトレジストとして、ブロックコポリマーが使用されることを可能にする。
【0027】
ブロックコポリマーは、マルチブロックコポリマーとすることができる。一実施形態において、マルチブロックは、ジブロック、トリブロック、テトラブロックなどを含むことができる。ブロックは、線状コポリマー、分岐ポリマー、星形コポリマーなどの一部であり得る。分岐ポリマーは、骨格でグラフト重合する(これらのコポリマーは、「櫛形コポリマー」と呼ばれることもある)。1つの例示的な実施形態において、ブロックコポリマーは、線状ジブロックコポリマーである。
【0028】
ブロックコポリマーの第一のブロックまたは第二のブロックは、たとえば、ビニル芳香族モノマー、エチレン性不飽和モノマー、1−ブテン、1,3−ブタジエン、イソプレン、ビニルアセテート、ジヒドロピラン、ノルボルネン,無水マレイン酸、アルキレンオキシド、ラクトン、ラクタム、エポキシド、シロキサンなどのモノマーまたは前述のモノマーの少なくとも1つを含む組み合わせから誘導されたポリマーを含み得る。第一のブロックがシリコン含有部分を含むとき、その含有部分は10原子パーセント未満、具体的には5原子パーセント未満、より具体的には、2原子パーセント未満の量で存在する。
【0029】
ビニル芳香族モノマーは、スチレン、アルキルスチレン、またはそれらの組み合わせであり得る。ビニル芳香族モノマーを重合して、ブロックコポリマーの第一のブロックを作製する。好適なアルキルスチレンの例は、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、4−tert−ブチルスチレンなど、または前述のアルキルスチレンモノマーの少なくとも一種を含む組み合わせである。第一のブロック中で使用できる他のスチレンは、ヒドロキシスチレン、アセトキシスチレンまたはそれらの組み合わせである。例示的アルキルスチレンモノマーは、4−tert−ブチルスチレンである。ブロックコポリマーの例示的第一のブロックは、ポリスチレン、ポリ(4−tertブチルスチレン)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0030】
エチレン性不飽和モノマーは、アクリレートまたはメタクリレートであり得る。一実施形態では、第一のブロックは式(1)で示されるアクリレートモノマーから誘導される構造を有する。
【化1】
(この式において、R
1は、水素または1から10個の炭素原子を有するアルキル基である)。第一の繰り返しモノマーの例としては、アクリレートの他、α−アルキルアクリレートなどのアルキルアクリレート、メタクリレート、エタクリレート、プロピルアクリレートなど、または前述のアクリレートの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。
【0031】
一実施形態では、第一のブロックは式(2)で示される構造を有するモノマーから誘導された構造を有する。
【化2】
この式において、R
1は、水素または1から10個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
2は、C
1〜10のアルキル、C
3〜10のシクロアルキル、またはC
7〜10アラルキル基である。アルキル(α−アルキル)アクリレートの例としては、メタクリレート、エタクリレート、プロピルアクリレート、(メタ)アクリレートモノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど、または少なくとも1種の前述のアクリレートを含む組み合わせが挙げられる。用語「(α−アルキル)アクリレート」は、特に指定されていない限り、アクリレート、または(α−アルキル)アクリレートのいずれかであると考えられることを意味する。
【0032】
一実施形態では、第一のブロックは、少なくとも1つのフッ素原子置換基を有するモノマーから誘導され、式(3)によって示される構造を有する;
【化3】
(この式において、R
1は、水素または1から10個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
3は、C
2〜10のフルオロアルキル基である)。式(3)の構造を有する化合物の例としては、トリフルオロエチルメタクリレート及びドデカフルオロヘプチルメタクリレートが挙げられる。コポリマーの第一のブロックの例示的エチレン性不飽和モノマーとしては、メチルメタクリレートが挙げられる。ブロックコポリマーの例示的第一のブロックは、ポリメチルメタクリレートである。
【0033】
コポリマーの第二のブロックは、たとえば、ビニル芳香族モノマー、エチレン性不飽和モノマー、1−ブテン、1,3−ブタジエン、イソプレン、ビニルアセテート、ジヒドロピラン、ノルボルネン,無水マレイン酸、シロキサンなどのモノマーまたは前述のモノマーの少なくとも1つを含む組み合わせから誘導されたポリマーを含み得る。第二のブロックは、少なくとも10原子%の量で存在するシリコン、具体的には少なくとも20原子%のシリコン、より具体的には少なくとも30原子%のシリコンの量で存在するシリコン含有部分を含む。
【0034】
第二のブロックのビニル芳香族モノマーは、シリコン部分を含有するスチレン、アルキルスチレンまたはこれらの組み合わせであり得る。ビニル芳香族モノマーを重合して、ブロックコポリマーの第一のブロックを作製する。好適なシリコン含有アルキルスチレンの例として、4−トリメチルシリルスチレン、4−(トリメチルシリルメチル)スチレン,トリメチル(4−ビニルフェノキシ)シラン、p−(t−ブチルジメチルシロキシ)スチレンの他、メタクリルオキシプロピルへプタイソブチル−T8−シルセスキオキサンなどのスチリル系多面オリゴシルセスキオキサンなどが挙げられる。
【0035】
一実施形態では、第二のブロックは式(4)で示される構造を有するモノマーから誘導された構造を有する。
【化4】
(この式において、R
1は、水素または1から10個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
2は、C
1〜10のアルキル、C
3〜10のシクロアルキル、またはC
7〜10アラルキル基であり、R
3は、シリコン含有基である)。これらのモノマーの例としては、メタクリルオキシメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、(メタクリルオキシメチル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、ビス(トリメチルシリル)メチルメタクリレート、(トリメチルシリル)メチルメタクリレート、メタクリルオキシペンタメチルジシロキサン、メタクリルオキシメチルフェネチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリルオキシエトキシトリメチルシラン、(メタクリルオキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルへプタイソブチル−T8−シルセスキオキサン、(メタクリルオキシオキシメチル)フェニルジメチルシランが挙げられる。
【0036】
一実施形態では、第二のブロックは式(5)で示される構造を有するモノマーから誘導された構造を有する。
【化5】
(この式において、R
1は、水素または1から10個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
2は、C
1〜10のアルキル、C
3〜10のシクロアルキル、またはC
7〜10アラルキル基であり、R
3は、シリコン含有基である)。これらのモノマーの例としては、メタクリルアミドプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシランが挙げられる。
【0037】
一実施形態では、第二のブロックは、式(6)の構造を有するシロキサンモノマーから誘導される。
【化6】
(この式において、Rは、それぞれ独立して、C
1〜C
10アルキル、C
3〜C
10シクロアルキル、C
6〜C
14アリール、C
7〜C
13アルキルアリールまたはC
7〜C
13アリールアルキルである)。前述のR基の組み合わせは、同じモノマー内に存在することができる。式(4)中の重合度nは25〜5,000、具体的には30〜3,000、より具体的には50〜1,000であり得る。ポリシロキサンは第二のブロックであり、一般に、第二のブロックの総原子重量を基準にして、15原子%超、具体的には35原子%超、具体的には50原子%超、より具体的には80原子%超の量で存在する。別の実施形態では、第二のブロックは、ビニルトリメチルシランまたはジメチルシラブタンから誘導される。
【0038】
例示的実施形態においては、第二のブロックは、数平均分子量10,000〜80,000グラム/モル、具体的には15,000〜40,000グラム/モルを有するポリジメチルシロキサンを含む。
【0039】
ブラシ状ポリマー上に配置した場合、第一のブロック及び第二のブロックは、ブロックコポリマー中の第二のブロックが円筒(すなわち、円筒状形態)または球(すなわち、球状形態)が形成される量で存在する。第二のブロックは、コポリマーの総体積の約5〜約40容積パーセントを構成する。円筒状組成物を所望する場合、第二のブロックは、コポリマーの総体積の約15〜約35体積%、より具体的には約20〜約30体積%を構成する。例示的な実施形態において、第二のブロックは、コポリマーの総体積の約25体積%を構成する。
【0040】
球状(すなわち、球状形態)を所望する場合、第二のブロックは、コポリマー総体積の約5〜約20体積%、具体的には、約8〜約15体積%を構成する。
【0041】
移動相にテトラヒドロフラン(THF)を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定するとき(35℃、流量1mL/分)、ブロックコポリマーの多分散性指標は、約1.20以下、具体的には約1.15以下、具体的には約1.10以下である。
【0042】
多角度レーザー光散乱ゲル浸透クロマトグラフィー及び多分散性指標を用いて決定されるように、ブロックコポリマーの重量平均分子量は、約3〜約150、具体的には約7.5〜約120、具体的には約10〜約100、より具体的には約15〜約80kg/モルである。例示的な実施形態において、ブロックコポリマーは約3〜約120kg/モルの重量平均分子量を有することが望ましい。
【0043】
ブロックコポリマーは、約60ナノメートル以下、具体的には約50ナノメートル以下、より具体的には約40ナノメートル以下、より具体的には約36ナノメートル以下の小角X線散乱により測定したドメイン間隔を有する。
【0044】
例示的な実施形態では、ブロックコポリマーは、ポリ(スチレン)−ブロック(b)−ポリ(アルキルシロキサン)、ポリ(アルキルスチレン)−b−ポリ(アルキルシロキサン)またはそれらの組み合わせである。例示的な実施形態では、ポリ(スチレン)−ブロック(b)−ポリ(アルキルシロキサン)は、ポリ(スチレン)−b−ポリ(ジメチルシロキサン)であり、ポリ(アルキルスチレン)−b−ポリ(アルキルシロキサン)はポリ(t−ブチルスチレン)−b−ポリ(ジメチルシロキサン)である。
【0045】
本明細書で開示のポリ(スチレン)−b−ポリ(ジメチルシロキサン)ブロックコポリマーまたはポリ(t−ブチルスチレン)−b−ポリ(ジメチルシロキサン)ブロックコポリマーは、ポリ(スチレン)−b−ポリ(ジメチルシロキサン)ブロックコポリマー成分(以下、PS−b−PDMS)を含むか、またはポリ(t−ブチルスチレン)−b−ポリ(ジメチルシロキサン)(以下、PtBS−b−PDMS)を含み、ブロックコポリマー成分は、単一のPS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマーから選択されるか、または少なくとも2つの異なるPS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマーのブレンドから選択され、PS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマー成分の平均分子量は、2〜1,000kg/mol、具体的には5〜100kg/mol、より具体的には、6〜60kg/molである。
【0046】
一実施形態では、PS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマー成分は、単一のPS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマー(2つのブロックコポリマーのブレンドでなく)であり;PS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSコポリマーの平均分子量は(本明細書に前述のとおり)、2〜1,000kg/mol(具体的には5〜100kg/mol、より具体的には、6〜60kg/mol)である。
【0047】
別の実施形態においては、PS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMS成分は、少なくとも2つの異なるPS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマーのブレンドであり、PS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマーのブレンドの平均分子量は(本明細書に前述のとおり)、25〜1,000kg/mol、具体的には30〜1,000kg/mol、より具体的には30〜100kg/mol、もっとも具体的には、30〜60kg/molである。例示的実施形態においては、PS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマー成分は、少なくとも2つの異なるPS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマーのブレンドであり、少なくとも2つの異なるPS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマーは、数平均分子量M
nが1〜1,000kg/molであるPS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマーから選択され;多分散性PDは1〜3、具体的には1〜2、もっとも具体的には1〜1.2であり;ポリスチレンのマトリックス中において、所望の形態がポリジメチルシロキサン円筒を含む場合、ポリ(ジメチルシロキサン)重量分率Wf
PDMSは0.18〜0.8、具体的には0.18〜0.35である。ブロックコポリマーのブレンドは、PS−b−PDMSブロックコポリマー及びPtBS−b−PDMSブロックコポリマーを含み得る点に留意のこと。
【0048】
PS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマーは、好ましくは、さらなる処理の影響を受けやすい全分子量及び多分散性を有する。ある実施形態では、ブロックコポリマーの重量平均分子量(Mw)は、10,000〜200,000g/molである。同様に、ブロックコポリマーの数平均分子量(Mn)は、5,000〜200,000である。また、ブロックコポリマーの多分散性(Mw/Mn)は、1.01〜6である。ある実施形態では、ブロックコポリマーの多分散性は、1.01〜1.5、具体的には1.01〜1.2、より具体的には、1.01〜1.1である。分子量Mw及びMnはいずれも、たとえば、ユニバーサルキャリブレーション法を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって測定し、ポリスチレン標準品を基準としてキャリブレーションすることができる。
【0049】
本発明の方法で使用されるPS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマーは、任意によりさらに溶媒を含む。PS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマーでの使用に好適な溶媒としては、動的光散乱によって測定すると、平均流体力学直径が50ナノメートル(nm)未満である粒子または凝集体中にPS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマー成分を分散させることができる液体が挙げられる。具体的には、使用される溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エトキシエチルプロピオネート、アニソール、エチルラクテート、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、アミルアセテート、γ−ブチロラクトン(GBL)、n−メチルピロリドン(NMP)及びトルエンから選択される。より具体的には、使用する溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)及びトルエンから選択される。さらに具体的には、使用する溶媒は、トルエンまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
【0050】
本発明の方法で使用されるPS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマーは、任意によりさらに添加剤を含む。PS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマーに使用する好ましい添加剤としては、界面活性剤及び酸化防止剤が挙げられる。さらにポリマー(ホモポリマー及びランダムコポリマーを含む);界面活性剤;酸化防止剤;光酸発生剤;熱酸発生剤;失活剤;硬化剤;接着促進剤;溶出速度調節剤、光硬化剤;光増感剤;酸増幅剤;可塑剤;架橋剤が挙げられる。PS−b−PDMSまたはPtBS−b−PDMSブロックコポリマーに使用する好ましい添加剤としては、界面活性剤及び酸化防止剤が挙げられる。
【0051】
前述のように、ブラシ状ポリマーは基板に配置され、ブラシ状ポリマーを基板に共有結合できる反応性の種を含む。ブロックコポリマーよりも表面エネルギーが低いまたは高いように、ブラシ状ポリマーを選択できる。特定の組み合わせのブラシ状ポリマーとブロックコポリマーを選択することによって、エッチング耐性円筒間のドメイン間間隔を制御できる。さらに、トレンチ内に配置した場合、トレンチ壁とエッチング耐性円筒の表面との間隔を制御できる。トレンチ壁と円筒表面との距離及び円筒間の距離の制御を使用して、電子機器で使用する高品質の半導体を製造できる。
【0052】
ブラシ状ポリマーは、一般に、反応種を含むポリマーまたはコポリマーを含む。ブラシ状ポリマーに用いるポリマーまたはコポリマーは、ブロックコポリマー中に含まれるすべてのポリマーと化学組成が異なる。ブラシ状ポリマーで使用されるコポリマーはブロックコポリマーまたはランダムコポリマーであり得る。ある実施態様では、ブラシ状ポリマーは以下の式(7A)または(7B)の構造を有する。
【化7】
(この式において、反応種Xは、たとえば、ヒドロキシル基、チオール基、アミン基、カルボキシル基、シラン基またはアルコキシ基であることができ、R
1、R
2及びR
3は、同じであっても異なってもよく、水素、C
1〜10アルキル基、C
1〜10アルキルエステル基、C
3〜10シクロアルキルエステル基、C
7〜10アラルキルエステル基、C
6〜C
14アリール、C
7〜C
13アルキルアリールまたはC
7〜C
13アリールアルキル基であり得る。他の基も、R
1、R
2及びR
3として使用可能である。)
【0053】
ブラシ状ポリマーに使用できるポリマー及びコポリマーの例として、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリジエンの他、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(ブチレンオキシド)などのポリ(アルキレンオキシド)を含むポリエーテル、これらのランダムまたはブロックコポリマー;ポリ((メタ)アクリレート)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノゲルマン、などが挙げられる。
【0054】
一実施形態では、ブロックコポリマーのブロックは、モノマーとしてC
2〜30オレフィン系モノマー、C
1〜30のアルコールから誘導される(メタ)アクリレートモノマー、無機(鉄、シリコン、ゲルマニウム、スズ、アルミニウム、チタンなど)含有モノマー、または前述のモノマーの少なくとも1種を含む組み合わせを含む。特定の実施形態では、ブロックに使用する例示的モノマーとしては、C
2〜30オレフィン系モノマー、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1,3−ブタジエン、イソプレン、ビニルアセテート、ジヒドロピラン、ノルボルネン、無水マレイン酸、スチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−メチルスチレン、またはメチルスチレンが挙げられ;(メタ)アクリレート系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、またはヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、が挙げられる。これらのモノマーの任意の1つから誘導されたポリマー(複数可)が、ブラシ状ポリマー上に配置されたブロックコポリマーに含まれない限り、これらのモノマーの2つ以上の組み合わせをブラシ状ポリマー中に用いることができる。
【0055】
ブラシ状ポリマーで使用される例示的なブロックとしては、スチレン(すなわち、ポリスチレンブロック)またはポリ(メチルメタクリレート)などの(メタ)アクリレートホモポリマーブロックが挙げられ;例示的ランダムブロックとしては、たとえば、ランダム共重合されたスチレン及びメチルメタクリレート(たとえば、ポリ(スチレン−コ−メチルメタクリレート))のブロックが挙げられ;例示的な代替コポリマーブロックとしては、スチレン及び無水マレイン酸のブロックが挙げられ、無水マレイン酸はほとんどの条件下においてホモ重合することができないため、スチレン−無水マレイン酸二分子繰り返し構造を形成することが既知である(たとえば、ポリ(スチレン−alt−無水マレイン酸))。このようなブロックは例示を目的とし、限定することを考慮していない点は理解されるであろう。
【0056】
ブラシ状ポリマーで使用が考慮される例示的ブロックコポリマーとしては、以下のジブロックまたはトリブロックコポリマーが挙げられる;ポリ(スチレン−b−ビニルピリジン)、ポリ(スチレン−b−ブタジエン)、ポリ(スチレン−b−イソプレン)、ポリ(スチレン−b−メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−b−アルケニル芳香族)、ポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−(エチレン−プロピレン))、ポリ(エチレンオキシド−b−カプロラクトン)、ポリ(ブタジエン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−t−ブチル(メタ)アクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−b−t−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド−b−プロピレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−テトラヒドロフラン)、ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(スチレン−b−トリメチルシリルメチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(メチルメタクリレート−b−トリメチルシリルメチルメタクリレート)、など、または前述のブロックコポリマーの少なくとも1種を含む組み合わせ。
【0057】
例示的ブラシ状ポリマーとしては、ヒドロキシル基末端ポリスチレン、ヒドロキシル基末端ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル基末端ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−トリフルオロエチルメタクリレート)(P(MMA−r−TFEMA)−OH)、及びヒドロキシル基末端ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート)(P(MMA−r−DFHMA)−OH)が挙げられる。
【0058】
一実施形態では、ブラシ状ポリマー及びブロックコポリマーを含む組成物を使用するにあたって、ブラシ状ポリマーは、最初に基板に配置させる。基板は、ブラシ状ポリマーを基板に配置させる前に溶媒で洗浄してもよい。ブラシ状ポリマー及びブロックコポリマーはいずれも、基板に配置させる前に精製工程を経てもよい。精製には、遠心分離、濾過、蒸留、デカンテーション、蒸発、イオン交換ビーズによる処理などが挙げられる。ブラシ状ポリマーを基板に配置させるときに、基板を加熱して、ブラシ状ポリマーと基板との間の反応を促進させる。
【0059】
一実施形態では、ブラシ状ポリマーは、基板に配置させる前に溶媒に分散/溶解してもよい。溶媒は上記に挙げ、これらの溶媒の1つまたは複数を使用してブラシ状ポリマーを溶解させることもできる。このリストに記述されていない他の溶媒を使用することもできる。ブラシ状ポリマーは、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ドクターブレードを用いる静電塗布などによって基板に配置してもよい。
【0060】
基板にブラシ状ポリマーを配置した後、ブロックコポリマーは、ブラシ状ポリマー上に配置させる。ブロックコポリマーの表面エネルギーは、ブラシ状ポリマーよりも高くても低くてもよい。ブラシ状ポリマーとブロックコポリマーの適切な組み合わせを選択することによって、トレンチ壁と円筒状ドメインとの間隔を制御し得る。ブロックコポリマーは、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ドクターブレードを用いる静電塗布などによってブラシ状ポリマーに配置してもよい。
【0061】
ブラシ状ポリマー及びブロックコポリマーを配置した基板は、アニール処理を受けてもよい。ブロックコポリマーは、アニーリングプロセスにおいて溶媒を除去すること及びドメインを形成することの双方を行うために、最大4時間、最高400℃の温度まで加熱する。例示的な実施形態では、ブロックコポリマーは、基板上に配置され、温度200〜400℃、具体的には温度250〜340℃まで0.5分間〜2時間、具体的には1分〜10分間加熱する。円筒状及び/またはラメラ状ドメインのドメイン間の間隔(すなわち、周期性)を変化させるために、ブロックコポリマーのアニーリングを用いることができる。ドメインのサイズもアニーリング温度及び時間によって変化し得る。
【0062】
アニーリング時、ブロックコポリマーの円筒状または球状ドメインは、基板上のブラシ状ポリマーと接触させた第一のブロックを塗布した基板上に形成され、第二のブロックは、第一のドメインのマトリックス内で円筒状または球状の形態で第二のドメインを形成する。このため、円筒状ドメインは、基板の面と平行に整列される。次いで、ブロックコポリマーのドメインの1つをエッチングにより除去する。次に、第一または第二のドメインのいずれかを除去することによって、レリーフパターンを形成し、ブラシ状ポリマー層の基礎部分または基板の基礎を露光する。一実施形態において、湿式エッチング法、現像、または酸素プラズマなどのプラズマを用いた乾式エッチング法により、除去を行う。エレクトロニクス、半導体などの分野で使用することができる、他の表面を装飾するまたは製造するために、除去された少なくとも1つのドメインを有するブロックコポリマーを、次に、鋳型として使用する。
【0063】
ブロックコポリマー形態は、パターニングされた表面を用いてグラフォエピタキシー誘導自己組織化スキームと組み合わせて使用し、基板上のドメインの位置及び方向を制御することができる。パターニングされた基板は、ライン及びスペースパターン、トレンチ、正孔、ポストなどの局所的特徴を含み、密集ピッチ(すなわち、ライン幅対スペース幅の比率が1:1以上(たとえば、1.1:1、1.2:1、1.5:1、2:1など))、半密集ピッチ(1:1未満(たとえば、1:1.5))を有する規則パターン、またはピッチが1:2以下(たとえば、1:3、1:4など)である希薄なパターンとなるために、自己組織化を誘導するように形成できる。ブラシ状ポリマーは、グラフォエピタキシー基板のこれらの局所的特徴を有する底部及び/または側壁に塗布して、ドメイン配列及び特徴寸法を制御し得る。
【0064】
有利な点としては、形成時のドメインは、「自己修復」機構でアニーリング中あらゆる配置における欠陥を修正することができるので、ライン端部が高粗度及びライン幅が高粗度のラインまたは点線を使用することによって、このパターニング方法による耐性が認められる。
【0065】
一実施形態では、少なくとも1つのミクロ相分離ドメインが選択的に除去され、局所パターニングを生成し、その後、反応性イオンエッチングプロセスにより、局所パターンから他の基板にパターン転写する。他の基板は、半導体基板であり得る。上記の方法及び構造は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM)など、高密度ライン/スペースパターンまたはハードドライブ内などでのデータストレージの高密度特徴を必要とするメモリデバイスなどの半導体デバイスの製造に使用できる。
【0066】
開示した方法により、ナノスケール構造上の特徴の自己組織調整物が形成され、多くの場合、溶液コーティング技法を用いて、方位制御表面改質層を連続堆積することにより、ナノパターニングされた特徴の方向制御が可能になる。これによって、基板のエッチングによって種々の位相幾何を得るために及び多種多様な組成または位相幾何の基板の幅広い特徴を作り出すために有用な種々のポストパターニングプロセスにおいて、所望の特徴パターンを大きく制御することができるようになる。
【0067】
本明細書で開示の組成物及び製造方法の詳細は、以下の非限定例に記述する。
【0068】
実施例
実施例1
この例では、基板に配置させるブラシ状ポリマーの製造を示す。次に、ブロックコポリマーがブラシ状ポリマー上に配置される。ブラシ状ポリマーは、ヒドロキシル基末端ポリジメチルシロキサン(OH末端PDMS)、ヒドロキシル基末端ポリスチレン(OH末端PS)、OH末端官能基ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−トリフルオロエチルメタクリレート)(P(MMA−r−TFEMA)−OH)、OH末端官能基ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート)−OHブラシ状ポリマー(P(MMA−r−DFHMA)−OH)であった。これらの材料の合成または調達は以下に詳細を記述する。
【0069】
OH末端PDMSの合成
Si−H末端PDMS(4.0g)及びアリルアルコール(0.29g、4.9mmol、18当量、シラン系)を20mLバイアルで混和させた。バイアルは、窒素(N2)ブランケット下に置き、少量の5%Pt/Cをその中に添加した。バイアルの蓋を閉めて、加熱ブロック内で15時間110℃まで加熱した。粗反応混合物は、ヘキサンを用いてフリット及び1μmフィルターを介して濾過し、すべてのPDMSを洗浄した。次に、60℃でポリマーを排出させて、ヘキサン及び過剰アリルアルコールを除去して、所望のPDMS−OHが生成した。
【0070】
OH末端ポリスチレンの調達
Mn=10kg/molのヒドロキシル末端官能基ポリスチレンは、Scientific Polymerから購入し、Mn=10kg/molのヒドロキシル末端官能基ポリジメチルシロキサンは、Dow Corningから購入し、受領した状態で使用した。
【0071】
OH末端官能基ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−トリフルオロエチルメタクリレート(P(MMA−r−TFEMA)−OH)の合成
シュレンクフラスコには、マグネチック攪拌子、4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジル(0.537g)、Cu(I)Br(0.144g)、メチルメタクリレート(7.00g)、トリフルオロエチルメタクリレート(3.00g)及びトルエン(10g)が付属していた。アルゴン混入溶液を15分間散布し、次に、90℃に予熱した油浴に入れた。一旦溶液が平衡となったら、注射器から開始剤(2−ヒドロキシエチル2−ブロモ−2−メチルプロパノエート)(0.211g)を添加して、反応物を90℃で攪拌した。重合をクエンチした後、混合物をTHFを用いて希釈し、イオン交換ビーズと攪拌して触媒を除去した。溶液は、透明になった後、濾過し、50重量%に濃縮し、沈殿して過剰シクロヘキサンとなった。ポリマーを回収して、真空オーブンにおいて、60℃で一晩乾燥させた。
1H NMRから、ポリマーがメチルメタクリレート69重量%とトリフルオロエチルメタクリレート31重量%の組成物を有していることが明らかになった。ゲル浸透クロマトグラフィーから、ポリスチレン(PS)標準物に対してMn=13.9kg/molであり、Mw/Mn=1.20であることがが明らかになった。
【0072】
OH末端官能基ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート−OHブラシ状ポリマー(P(MMA−r−TFEMA)−OH)の合成
反応性アルコール末端基をマグネチック攪拌子が付属したシュレンクフラスコに添加して、コポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート)を含むランダムコポリマーヒドロキシル末端官能基ブラシ状ポリマーを製造し、4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジル(0.537g)、Cu(I)Br(0.143g)、メチルメタクリレート(1.02g)、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート(9.05g)及びトルエン(10g)を添加した。アルゴン混入溶液を15分間散布し、次に、90℃に予熱した油浴に入れた。溶液が平衡となったら、注射器から開始剤(2−ヒドロキシエチル2−ブロモ−2−メチルプロパノエート)(0.210g)を添加して、反応物を90℃で攪拌した。重合をクエンチした後、混合物をTHFを用いて希釈し、イオン交換ビーズと攪拌して触媒を除去した。溶液は、透明になった後、濾過し、50重量%に濃縮し、沈殿して過剰シクロヘキサンとなった。ポリマーを回収して、真空オーブンにおいて、60℃で一晩乾燥させた。
1H NMRから、ポリマーがメチルメタクリレート7重量%とドデカフルオロヘプチルメタクリレート93重量%の組成を有していることが明らかになった。ゲル浸透クロマトグラフィーから、PS標準物に対してMn=14.9kg/molであり、Mw/Mn=1.27であることが明らかになった。
【0073】
基板の準備
4種類の異なるブラシ状ポリマーを異なる基板に配置した。ブラシ状ポリマーは、鎖末端部に単一のヒドロキシル官能基を有し、ポリスチレン−OHブラシ状ポリマー(PS−OH)、ポリジメチルシロキサン−OHブラシ状ポリマー(PDMS−OH)の他、トリフルオロエチルメタクリレート31重量%を含むポリ(メチルメタクリレート−ランダム−トリフルオロエチルメタクリレート)−OHブラシ状ポリマー(P(MMA−r−TFEMA)−OH)、及びドデカフルオロヘプチルメタクリレート93重量%を含むポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート)−OHブラシ状ポリマー(P(MMA−r−DFHMA)−OH)を含む。
【0074】
天然の酸化被膜を有するシリコン基板の表面は、トルエン中に所望のヒドロキシル末端ポリマーブラシ状ポリマー1.5重量%(固体)を含む溶液を1分間、3,000rpmでその基板上にスピンコーティングして修飾した。その後、基板を150℃に設定したホットプレート上に1分間置いた。基板を窒素雰囲気下において、250℃に設定したホットプレート上に20分間置いて、堆積させたブラシ状ポリマー層に付着させた。次に基板をトルエンで洗浄し、基板をトルエン中に1分間浸漬した後、3,000rpmで1分間スピン乾燥させて、付着していないポリマーを洗い落とした。その後、基板を110℃に設定したホットプレート上に1分間置いて焼成させた。
【0075】
次に、ヒドロキシル末端官能基ブラシ状ポリマーを自然酸化物を用いて、シリコン基板上に鋳造し、250℃で2分間焼成し、鋳造溶媒で洗浄し、130℃で60秒焼成して、残留溶媒を除去し、次に、接触角測定法を用いて、各ブラシ状ポリマーの表面エネルギーを測定した。接触角は、水(18オーム脱イオン水)、ヨウ化メチレン(CH
2I
2)及びジエチレングリコールを用いた液滴法により接触角測定器で測定した。極性成分及び分散性成分を双方とも含む表面エネルギーは、Owens−Wendtの方法を用いて、こうしたそれぞれの溶媒の接触角から算出した。結果は、単位を平方メートル当たりのミリジュール(mJ/m
2)として示し、表1にまとめる。
【表1】
【0076】
実施例2
比較用組成物(ポリスチレン−ブロック−ポリジメチルシロキサン)(PS−b−PDMS)の合成
アルゴン雰囲気下の500mL丸底反応器中に、シクロヘキサン(56g)及びスチレン(16.46g)を加えた。次に反応器内容物を加熱して40℃にした。迅速に0.06Mのsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液1回分(7.49g)をカニューレから反応器に加え、反応器内容物が黄橙色となった。反応器内容物を、30分間攪拌した。その後、反応器から、少量の反応器含有物を回収して、形成されたポリスチレンブロックのゲル浸透クロマトグラフィー分析用の無水メタノールを含む小型丸底フラスコ中に入れた。次に、新たに昇華したヘキサメチルシクロトリシロキサンの21重量%シクロヘキサン溶液22.39gを反応器に移した。反応器内容物を、20時間反応させた。その後、無水テトラヒドロフラン(93mL)を反応器に加え、反応を7時間進行させた。次に、クロロトリメチルシラン(1mL)を反応器に加えて、反応を停止させた。生成物は、1Lのメタノール中で沈殿させ濾過することにより単離した。さらなるメタノールで洗浄した後に、該ポリマーを150mLの塩化メチレンで再溶解させ、脱イオン水で2回洗浄し、次いで、メタノール1Lに再沈殿させた。その後、ポリマーは60℃の真空オーブンで一晩乾燥させ、19.7gとした。ポリ(スチレン)−b−ポリ(ジメチルシロキサン)ブロックコポリマー生成物は、数平均分子量(M
n)が40kg/molであり;多分散性(PDI)は1.11、PDMS含有量は22重量%であった(
1H NMRにより測定)。
【0077】
薄膜の形成
Mn=40kg/mol、PDMS22重量%含有のPS−b−PDMSブロックコポリマーをプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(Dow Chemical Companyから販売されているDowanol(登録商標)PMA)に溶解し、1.8重量%溶液を作製した。PS−b−PDMSブロックコポリマーの合成の詳細は、以下の実施例4に記述する。溶液を、手作業で0.2μmのWhatmanシリンジフィルターに通した。次に、濾過溶液を3,061rpmでポリ(スチレン)ブラシ状ポリマー塗布基板にスピンコートし、厚さ38.3nmの堆積膜を得た。その後、基板を150℃に設定したホットプレート上で1分間焼成させた。次に、堆積膜を含有酸素が6ppm未満である窒素雰囲気下で290℃に設定したホットプレートに1時間置くことでアニールした。
【0078】
PDMSの表面湿潤層が、アニール薄膜上の大気−薄膜界面に形成された。次に、アニール薄膜をPlasmaTherm 790i RIEを用いた二段階逐次反応性イオンエッチング(RIE)ステップを使って処理し、堆積PS−b−PDMS薄膜のブロックコポリマー形態が明らかになった。最初、短CF
4プラズマ(10mT、50W)RIE処理(8秒間ポストプラズマ安定化)を使って、PDMSの表面湿潤層を貫通させて打ち抜いた。その後、O
2プラズマRIE処理(25秒間ポストプラズマ安定化)を用いてポリスチレンを除去し、PDMSドメインをSiO
xに変換させた。
【0079】
次に、走査電子顕微鏡(SEM)にてプラズマ処理薄膜の検査を行った。試験試料を、両面炭素テープによりSEMステージに取り付け、分析前に、窒素を吹き付けて、清浄な状態とした。倍率50,000倍、作動距離4〜8で試験試料の画像を収集した。
図5のSEM画像からわかるように、得られた酸化PDMSラインのパターンは、ピッチが30nmであり、比較的相関長が短く、不規則な短いラインである。
【0080】
実施例3
この例では、PSブラシ状シリコン基板上でのPtBS−PDMSの薄膜形成及び熱アニーリングについて記述する。
【0081】
PtBS−b−PDMS(ポリ−tert−ブチルスチレン−b−ポリジメチルシロキサン)材料の合成
シクロヘキサン(234g)及びt−ブチルスチレン(55.7g)をアルゴン雰囲気下で最初に1000mL丸底反応器に加えて、PtBS−b−PDMS(Mn=41.4kg/mol、PDMS30.3重量%)を調製した。次に反応器内容物を加熱して40℃にした。迅速に0.745Mのsec−ブチルリチウムシクロヘキサン溶液1回分(1.84g)をカニューレから反応器に加え、反応器内容物が橙色となった。反応器内容物を、60分間攪拌した。次に、カニューレを介して0.97gの2,2,5,5−テトラメチル−1,2,5−オキサジシロラン(oxadisilolane)シクロヘキサン溶液(2mL)を添加し、数分後、少量の反応器内容物を反応器から回収して、形成されたポリ(t−ブチルスチレン)ブロックのゲル浸透クロマトグラフィー分析用の無水メタノールの入った小型丸底フラスコに入れた。新たに昇華したヘキサメチルシクロトリシロキサン(32.34g)シクロヘキサン溶液(33mL)、次いで乾燥テトラヒドロフラン(212g)を反応器に移し、反応を16時間進行させた。次に、クロロトリメチルシラン(1mL)を反応器に加えて、反応を停止させた。生成物は、1mLのメタノール中で沈殿させ濾過することにより単離した。さらなるメタノールで洗浄した後に、ポリマーを300mLの塩化メチレンに再溶解させ、脱イオン水で2回洗浄し、次いで、1Lのメタノールに再沈殿させた。その後、ポリマーを濾過して60℃の真空オーブンで一晩乾燥させ、70gとした。PtBS−PDMSブロックコポリマー生成物は、数平均分子量(M
n)が41.4kg/molであり;多分散性(PDI)は1.13、PDMS含有量は30.3重量%であった(
1H NMRにより測定)。
【0082】
さらに2つのPtBS−b−PDMS材料を上記の手順によって同様に調製し、1つはMn=51,600g/モル、PDMS28重量%であり、もう1つはMn=62,500g/モル、PDMS28重量%であった。
【0083】
薄膜の形成
PGMEA溶液から生成したPtBS−b−PDMS薄膜(Mn=51,600g/モル)は、0.2μm Whatmanシリンジフィルターを介して溶液を濾過して、薄膜の厚さを49.6nmとした後、ポリスチレンブラシ状ポリマー処理した基板上に塗布した。その後、基板を150℃に設定したホットプレート上で1分間焼成させた。次に、堆積膜を含有酸素が6ppm未満である窒素雰囲気下で290℃に設定したホットプレートに1時間置くことで、アニールした。
【0084】
走査型電子顕微鏡(SEM)で画像を撮影する前に、アニールされた試料を最初にCF
4プラズマフラッシュにより処理し、表面湿潤層を除去した後、O
2プラズマエッチングにより、有機PtBSマトリックスを除去した。試料のSEM画像は、Amray1910走査型電子顕微鏡を使用して、倍率50,000倍で撮影した。Igor Proを用いて、SEM画像に基づき、ピッチ及び相関長(CL)を求めた。
図6に示すSEM画像から、PS−PDMS薄膜で観察される(30nm)よりピッチの大きい(33nm)酸化PDMSラインパターンが明らかになった。特定のブロックコポリマー組成物では、ピッチが大きくなるに従って、分離強度が強くなる(より高いχN)ため、欠陥の少ない状態とするアニール能力が低下する。ピッチが大きいにもかかわらず、このPTBS−b−PDMSで与えられるパターンは、同じ熱量(すなわち、時間と温度の組み合わせ)でアニールしたPS−b−PDMS試料に比べて、さらに長くかつ直線状であり、相関長も長い。これにより、ブロックコポリマーをアニールして、十分な時間で大きなピッチ(たとえば、30nm超)で欠陥の少ない状態にするには、PS−b−PDMSよりもPtBS−b−PDMSが有利であることがわかる。
【0085】
実施例4
この実施例は、ブラシ状ポリマーを塗布した基板上でのポリ(t−ブチルスチレン)−ブロック−ポリジメチルシロキサン(PtBS−b−PDMS)コポリマーの使用を示すために実施した。4種類の異なるブラシ状ポリマーを基板に配置した。また、基板のブラシ状ポリマー上にポリスチレン−ブロック−ポリジメチルシロキサン(PS−b−PDMS)比較組成物を配置した。ブラシ状ポリマーは、鎖末端部に単一のヒドロキシル官能基を有し、ポリスチレン−OHブラシ状ポリマー(PS−OH)、ポリジメチルシロキサン−OHブラシ状ポリマー(PDMS−OH)の他、トリフルオロエチルメタクリレート31重量%を含むポリ(メチルメタクリレート−ランダム−トリフルオロエチルメタクリレート)−OHブラシ状ポリマー(P(MMA−r−TFEMA)−OH)、及びドデカフルオロヘプチルメタクリレート93重量%を含むポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート)−OHブラシ状ポリマー(P(MMA−r−DFHMA)−OH)を含む。
【0086】
薄膜の形成
シリコン基板上でグラフト重合させた4種類の異なるブラシ状ポリマー上で、2つのPtBS−b−PDMS材料(1つは数平均分子量(Mn)51,600g/モル、PDMS28重量%を有し、もう1つはMn62,500g/モル、PDMS28重量%)の試験を行った。
【0087】
PGMEA溶液から生成したPtBS−b−PDMS薄膜は、シリコン基板に塗布し、ブラシ状ポリマーで処理したシリコン表面は、上述の表1に示した。分子量の異なる2つの材料(51,600g/モル、62,500g/モル)は、それぞれ290℃及び310℃で1時間アニールした。走査型電子顕微鏡(SEM)で画像を撮影する前に、アニールされた試料を最初にCF
4プラズマフラッシュにより処理し、表面湿潤層を除去した後、O
2プラズマエッチングにより、有機PtBSマトリックスを除去した。それぞれの試料のSEM画像は、Amray 1910走査型電子顕微鏡を使用して、倍率50,000倍で撮影した。Igor Proを用いて、SEM画像に基づき、ピッチ及び相関長(CL)を求めた。
図2及び
図3に、走査型電子顕微鏡写真を示す。
図2及び
図3により得られた結果は、表2及び表3にまとめて示す。
【0088】
表2には、PtBS−b−PDMSコポリマー(Mn=51,600g/モル)のパラメータ(ピッチ(L
0)(単位ナノメータ)、相関長(単位ナノメータ)、膜厚(FT)(単位ナノメータ))を示す。表2の結果は、
図4にプロットされている。
【表2】
【0089】
表3には、PtBS−b−PDMSコポリマー(Mn=62,500g/モル)のパラメータ(ピッチ(L0)(単位ナノメータ)、相関長(単位ナノメータ)、膜厚(単位ナノメータ))を示す。表3の結果は、
図4にプロットされている。
【表3】
【0090】
表2及び表3に示し、
図4にプロットされているとおり、ピッチ(L
0)により標準化された相関長(CL)は、表面エネルギーと反比例して増大する。このことから、ブラシ状ポリマーの表面エネルギーにより、自己組織化の動態制御に有用な手段がもたらされることがわかる。このことから、熱量の上昇に加えて(すなわち、アニール温度及び時間の増大)、表面エネルギーも自己組織化動態の制御に、別の手段をもたすことがわかる。
【0091】
実施例5
この実施例は、トレンチのヒドロキシル基末端ポリブチルスチレン(PtBS−OH)ブラシ状ポリマー及びヒドロキシル基末端ポリスチレン(PS−OH)ブラシ状ポリマー上でのPtBS−b−PDMSのグラフォエピタキシャル誘導自己組織化を示すために実施した。
【0092】
PtBS−OHの合成
2つのヒドロキシル基末端ポリ(tert−ブチルスチレン)ブラシ状ポリマー(PtBS−OH)は、Bosmanら(J.Am.Chem.Soc.、2003、125(3)、715−728)によって記述された方法に従って、開始剤として2,2,5−トリメチル−3−(4’−p−ヒドロキシメチルフェニルエトキシ)−4−フェニル−3−アザヘキサンを用いて、窒素酸化物媒介重合により作製し、以下の性質を有するPtBS−OH材料を得た。Mn=16,100、PDI=1.24及びMn=35,900g/モル及びPDI=1.39。
【0093】
PS−OHの合成
2つのヒドロキシル基末端ポリスチレンブラシ状ポリマー(PS−OH)は、Bosmanら(J.Am.Chem.Soc.、2003、125(3)、715−728)によって記述された方法に従って、開始剤として2,2,5−トリメチル−3−(4’−p−ヒドロキシメチルフェニルエトキシ)−4−フェニル−3−アザヘキサンを用いて、窒素酸化物媒介重合により作製し、以下の性質を有するPS−OH材料を得た。Mn=11,000、PDI=1.23及びMn=20,000g/モル及びPDI=1.18。第三のPS−OHは、Changらによって米国特許公報第2013/0209344号に記述された方法によって作製し、PS−OH材料を得た(Mn=30,800、PDI=1.06)。
【0094】
薄膜の形成及び画像化
標準リソグラフィー法及びエッチング法を用いて、炭素床のSiO
2ラインのパターン(平均スペース寸法118nm)を作製した。小クーポンをウェハーから切り出し、基板として使用した。いくつかのパターニングした基板クーポンの表面は、その上に2重量%(固体)PGMEA溶液のPtBS−OHブラシ状ポリマー及びPS−OHブラシ状ポリマーをスピンコーティングして修飾した。塗布したPtBS−OHは、Mn=16,100g/モル及び35,900g/モルであり、PS−OHはMn=11,000g/モル、20,000g/モル、30,800g/モルであった。次に、基板を120℃に設定したホットプレート上に2分間置き、もう1つの基板は、窒素雰囲気下において、250℃に設定したホットプレート上に2分間置いて、堆積させたブラシ状ポリマー層に付着させた。次に基板をPGMEAで洗浄し、基板をPGMEA中に1分間浸漬した後、3,000rpmで1分間スピン乾燥させて、付着していないポリマーを洗い落とした。その後、基板を120℃に設定したホットプレート上で2分間置いて焼成した。
【0095】
次に、PGMEA溶液から生成したPtBS−b−PDMS(Mn62,500g/モル、PDMS28重量%を含む)薄膜を、非パターニング基板上でBCP膜の厚さが27nmとなる条件下で、ブラシ状ポリマー処理した基板に塗布した。塗布後、基板は、120℃で2分間、その後、300℃で2分間アニール処理した。次に、アニールされた試料をCHF
3プラズマフラッシュにより処理し、表面湿潤層を除去した後、O
2プラズマエッチングにより、有機PtBSマトリックスを除去した。トップダウン型走査電子顕微鏡(SEM)画像は、Hitachi CG4000 SEM(株式会社日立製作所、日本)により加速電圧0.2〜2kV、倍率400,000倍で操作して記録した。断面(SEM)画像は、Hitachi S−4800 FE−SEM(株式会社日立製作所、日本)により加速電圧15kV、倍率400,000倍で操作して記録した。ライン及びスペースの限界寸法(CD)値は、ImageJソフトウェアを用いて計測し、その結果を表4に示す。
【表4】
【0096】
トレンチ及びエッチングでの整列後、シロキサン材料は、SiO
2ライン内でレジストラインパターンを形成して、特徴密度を増大させる。2つのライン集団の限界寸法(CD)(1つは元のSiO
2ガイドパターンであり、もう1つはブロックコポリマーのシロキサンブロックである)は、同じであることが好ましい。同様に、スペース限界寸法は、特にSiO
2ガイドと隣接するシロキサン円筒との間のスペース(ガイド隣接領域)とシロキサン円筒間のスペース(円筒間スペース)とを一致させる必要がある。ピッチの大きいブロックコポリマー(L
0>30nm)では、ガイド隣接スペースCDは多くの場合円筒間スペース間CDより狭いため、一致するスペース間CDを得ることは困難である。たとえば、ブロックコポリマーとしてPtBS−b−PDMSを使用し、ブラシ状ポリマー層としてPtBS−OHを使用する場合、表4に示すように、試料1及び2では、スペース間CDは、比較的分子量の高い(Mn=35,900g/モル)PtBS−OHブラシ状ポリマーを用いた場合であっても、13nm未満に限定される。しかし、表4の試料3〜5及び
図7に示すとおり、PtBS−b−PDMSとPtBS−OHブラシ状ポリマーとを組み合わせた場合と比較して、PS−OHブラシ状ポリマーとPtBS−b−PDMSブロックコポリマーとを組み合わせることにより、ブラシ状ポリマーの分子量の関数として、ガイド隣接スペースCDが大きくなる。たとえば、Mn=11,000g/モルのPS−OHでは、ガイド隣接スペースCDが13nmとなり、Mn=30,800g/モルのPS−OHでは、20nm以下であった。このことにより、特に、ガイド隣接スペースCDが大きいことが求められる誘導自己組織化の場合、ブラシ状ポリマーと各BCPブロックとは異なる組成を有するブラシ状ポリマーとブロックコポリマーとの組み合わせの有用性が実証される。
【0097】
本明細書で開示のブロックコポリマーは、半導体、電界効果トランジスタなど、物品の製造にも使用することできる。