特許第6702665号(P6702665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702665
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】L型同軸コネクタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/38 20110101AFI20200525BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20200525BHJP
   H01R 9/053 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   H01R24/38
   H01R43/00 B
   H01R9/053
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-146842(P2015-146842)
(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公開番号】特開2017-27843(P2017-27843A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年4月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591043064
【氏名又は名称】モレックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】390015244
【氏名又は名称】日本モレックス合同会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 照仁
(72)【発明者】
【氏名】水村 晶範
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−078322(JP,A)
【文献】 特開平08−022851(JP,A)
【文献】 特開2001−085079(JP,A)
【文献】 特開2005−129339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00−12/91
H01R24/00−24/86
H01R 9/03− 9/11
H01R 4/24− 4/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み立て時に接続される同軸ケーブルの延びる方向と、相手コネクタとの嵌合方向とが略直角をなすL型同軸コネクタであって、
端子本体と、組み立て時に前記同軸ケーブルの芯線が圧接される芯線接続部とを有する端子と、
前記端子本体が取り付けられるハウジング本体と、前記端子本体の前記芯線接続部と反対側において前記ハウジング本体から前記嵌合方向における相手コネクタと嵌合される面側とは反対方向である上方に向かって延在する押圧部とを有するハウジングと、
前記ハウジングを収容する収容部と、前記ハウジングの前記押圧部と同一側において前記収容部から前記上方に向かって延在する蓋部とを有する外部導体と、を備え、
前記芯線接続部は、組み立て時に挿入される同軸ケーブルの側に前記端子本体から斜め上方に向かって延在し、さらに、その先端側は、前記上方と逆である下方へ向かって延在することを特徴とするL型同軸コネクタ。
【請求項2】
前記端子の前記芯線接続部が、前記端子本体との境界において、前記下方へ押し下げられる際の支点となる凹状溝を有することを特徴とする請求項1に記載のL型同軸コネクタ。
【請求項3】
前記端子の前記芯線接続部が、前記端子本体とは反対側において、45°の向きで前記下方に向かって2度屈曲していることを特徴とする請求項1又は2に記載のL型同軸コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記端子本体の前記芯線接続部側においてハウジング本体から同軸ケーブルの延びる方向へ延在する支持部を備え、
前記支持部は、前記芯線接続部よりも前記下方に位置することを特徴とする請求項1から3に記載のL型同軸コネクタ。
【請求項5】
接続された同軸ケーブルの延びる方向と、相手コネクタとの嵌合方向とが略直角をなすL型同軸コネクタであって、
同軸ケーブルと、
端子本体と、前記同軸ケーブルの芯線が圧接される芯線接続部とを有する端子と、
前記端子本体が取り付けられるハウジング本体と、前記端子本体の前記芯線接続部と反対側において前記ハウジング本体から同軸ケーブルの延びる方向へ延在する押圧部とを有するハウジングと、
前記ハウジングを収容する収容部と、前記ハウジングの前記押圧部と同一側において前記収容部から同軸ケーブルの延びる方向へ延在する蓋部とを有する外部導体と、を備え、
前記ハウジングは、前記端子本体の前記芯線接続部側においてハウジング本体から同軸ケーブルの延びる方向へ延在する支持部を備え、
前記同軸ケーブルの前記嵌合方向における相手コネクタに向かう方向である下方側は前記支持部により支持され、前記支持部に支持された同軸ケーブルの前記下方と逆である上方側の前記同軸ケーブルは、前記芯線接続部により圧接されており、
前記端子の前記芯線接続部が、前記端子本体とは反対側において、45°の向きで前記下方に向かって2度屈曲していることを特徴とするL型同軸コネクタ。
【請求項6】
組み立て時に接続される同軸ケーブルの延びる方向と、相手コネクタとの嵌合方向とが略直角をなすL型同軸コネクタの製造方法であって、
端子本体と、組み立て時に前記同軸ケーブルの芯線が圧接される芯線接続部とを有する端子と、
前記端子本体が取り付けられるハウジング本体と、前記端子本体の前記芯線接続部と反対側において前記ハウジング本体から前記嵌合方向における相手コネクタと嵌合される面側とは反対方向である上方に向かって延在する押圧部とを有するハウジングと、
前記ハウジングを収容する収容部と、前記ハウジングの前記押圧部と同一側において前記収容部から前記上方に向かって延在する蓋部とを有する外部導体と、を備え、
組み立て時に前記蓋部が前記収容部の側に折り曲げられると、前記押圧部が前記蓋部に追随して折り曲げられ、前記押圧部によって前記上方と逆である下方に押し下げられた前記芯線接続部が前記芯線を圧接することを特徴とするL型同軸コネクタの製造方法。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記端子本体の前記芯線接続部側においてハウジング本体から同軸ケーブルの延びる方向へ延在する支持部を備え、
前記支持部は、前記下方から同軸ケーブルを支持することを特徴とする請求項に記載のL型同軸コネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルの端部に取り付けられるL型同軸コネクタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組み立て時に接続される同軸ケーブルの延びる方向と、相手コネクタとの嵌合方向とが略直角をなすL型同軸コネクタが知られている。この種のL型同軸コネクタは、同軸ケーブルの芯線に接続される端子と、該端子を収容するハウジングと、該ハウジングを収容し、且つ同軸ケーブルのシールド線に接続される外部導体と、を備えており、同軸ケーブルの芯線と端子との接続方式としては、半田付け方式、挟み込み方式及び圧接方式が公知である。
【0003】
半田付け方式及び挟み込み方式は、端子に接続する芯線の先端部を予め同軸ケーブルの内部絶縁体から露出させる必要があるので、露出させた芯線先端部の品質管理が必要であり、また、半田付け方式は、作業スキルへの依存性が高いため、品質にバラツキが生じ易いという問題がある。一方、圧接方式では、端子の芯線接続部が内部絶縁体を突き破って芯線を圧接するので、芯線の先端部を予め内部絶縁体から露出させる必要がないだけでなく、作業スキルへの依存性を低減して品質のバラツキも抑制することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−80262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器の小型化に伴い、L型同軸コネクタの低背化が求められている。例えば、同軸ケーブルの外径(外皮の外径)と同等の嵌合高さ(相手コネクタとの嵌合方向の高さ)まで低背化されたL型同軸コネクタ、換言すると、嵌合高さと同等の外径を有する同軸ケーブルとの接続が可能なL型同軸コネクタが要求されている。しかしながら、特許文献1に示されるL型同軸コネクタでは、外部導体が、ハウジングの上方を覆う蓋部だけでなく、その左右両側から下方に延在するかしめ部を有し、該かしめ部を内側に折り曲げてハウジングの下方を覆うことにより組み立てられるので、嵌合高さが同軸ケーブルの外径に比して大きくなり、上記の要求を満たすことは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、端子を同軸ケーブルの芯線に圧接させるものでありながら、嵌合高さと同等の外径を有する同軸ケーブルとの接続が可能なL型同軸コネクタおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、本発明に係る第1の態様は、組み立て時に接続される同軸ケーブルの延びる方向と、相手コネクタとの嵌合方向とが略直角をなすL型同軸コネクタであって、端子本体と、組み立て時に同軸ケーブルの芯線が圧接される芯線接続部とを有する端子と、端子本体が取り付けられるハウジング本体と、端子本体の芯線接続部と反対側においてハウジング本体から上方に向かって延在する押圧部とを有するハウジングと、ハウジングを収容する収容部と、ハウジングの押圧部と同一側において収容部から上方に向かって延在する蓋部とを有する外部導体と、を備え、芯線接続部は、組み立て時に挿入される同軸ケーブルの側に端子本体から斜め上方に向かって延在し、さらに、その先端側は、下方へ向かって延在する。
【0008】
また、端子の芯線接続部が、端子本体との境界において、押し下げられる際の支点となる凹状溝を有してもよい。
【0009】
また、端子の芯線接続部が、端子本体とは反対側において、45°の向きで下方に向かって2度屈曲していてもよい。
【0010】
また、ハウジングは、端子本体の芯線接続部側においてハウジング本体から同軸ケーブルの延びる方向へ延在する支持部を備え、支持部は、芯線接続部よりも下方に位置してもよい。
【0011】
また、本発明の他の実施の態様は、接続された同軸ケーブルの延びる方向と、相手コネクタとの嵌合方向とが略直角をなすL型同軸コネクタであって、同軸ケーブルと、端子本体と、同軸ケーブルの芯線が圧接される芯線接続部とを有する端子と、端子本体が取り付けられるハウジング本体と、端子本体の芯線接続部と反対側においてハウジング本体から同軸ケーブルの延びる方向へ延在する押圧部とを有するハウジングと、ハウジングを収容する収容部と、ハウジングの押圧部と同一側において収容部から同軸ケーブルの延びる方向へ延在する蓋部とを有する外部導体と、を備え、ハウジングは、端子本体の芯線接続部側においてハウジング本体から同軸ケーブルの延びる方向へ延在する支持部を備え、同軸ケーブルの下方側は支持部により支持され、その上方側は、芯線接続部により圧接されている。
【0012】
また、端子の芯線接続部が、端子本体とは反対側において、45°の向きで下方に向かって2度屈曲していてもよい。
【0013】
さらに、本発明のL型同軸コネクタの製造方法では、組み立て時に接続される同軸ケーブルの延びる方向と、相手コネクタとの嵌合方向とが略直角をなすL型同軸コネクタの製造方法であって、端子本体と、組み立て時に同軸ケーブルの芯線が圧接される芯線接続部とを有する端子と、端子本体が取り付けられるハウジング本体と、端子本体の芯線接続部と反対側においてハウジング本体から上方に向かって延在する押圧部とを有するハウジングと、ハウジングを収容する収容部と、ハウジングの押圧部と同一側において収容部から上方に向かって延在する蓋部とを有する外部導体と、を備え、組み立て時に蓋部が収容部の側に折り曲げられると、押圧部が蓋部に追随して折り曲げられ、押圧部によって下方に押し下げられた芯線接続部が芯線を圧接する。
【0014】
また、この製造方法では、ハウジングは、端子本体の芯線接続部側においてハウジング本体から同軸ケーブルの延びる方向へ延在する支持部を備え、支持部は、下方から同軸ケーブルを支持してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、端子を同軸ケーブルの芯線に圧接させるL型同軸コネクタでありながら、嵌合高さと同等の外径を有する同軸ケーブルとの接続が可能になり、また、そのL型同軸コネクタを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るL型同軸コネクタの同軸ケーブルと接続する前の状態を示す斜視図である。
図2】同軸ケーブルと接続した状態を示すL型同軸コネクタの斜視図である。
図3】(a)は端子の上面図、(b)は端子の正面図、(c)は端子の右側面図、(d)は端子の背面図、(e)は端子の下面図である。
図4】端子の斜視図である。
図5】(a)はハウジングの上面図、(b)はハウジングの正面図、(c)はハウジングの右側面図、(d)はハウジングの背面図、(e)はハウジングの下面図である。
図6】ハウジングの斜視図である。
図7】(a)は外部導体の上面図、(b)は外部導体の正面図、(c)は外部導体の右側面図、(d)は外部導体の背面図、(e)は外部導体の下面図である。
図8】外部導体の斜視図である。
図9】ハウジングに端子を圧入した状態を示す斜視図である。
図10】自動組立機による端子の圧入工程を示す説明図であり、(a)は圧入前の状態を示す斜視図、(b)は圧入後の状態を示す斜視図である。
図11】自動組立機で複数の端子を連続又は同時に圧入する場合を示す斜視図である。
図12】ハウジングを外部導体に装着する工程を示す斜視図である。
図13】自動組立機で複数のハウジングを連続又は同時に装着する場合を示す斜視図である。
図14】外部導体の蓋部を折り曲げる過程で端子の芯線接続部が同軸ケーブルの芯線を圧接することを示す説明図であり、(a)は蓋部を折り曲げる前の状態を示すA−A断面図、(b)は蓋部を折り曲げる途中の状態を示すA−A断面図、(c)は蓋部を折り曲げが完了した状態を示すA−A断面図である。
図15】外部導体の蓋部を折り曲げる過程で外部導体の補強部が同軸ケーブルのシールド線に当接されることを示す説明図であり、(a)は蓋部を折り曲げる前の状態を示すB−B断面図、(b)は蓋部を折り曲げる途中の状態を示すB−B断面図、(c)は蓋部を折り曲げが完了した状態を示すB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付して説明する。また、L型同軸コネクタは、同軸ケーブルが挿入される面を正面、その反対側を背面、正面側から見て右側に連続する面を右側面、正面側から見て左側に連続する面を左側面、相手コネクタと嵌合される面を下面、その反対側を上面とする。また、背面から正面に向かう方向を前方、その逆を後方、下面から上面に向かう方向を上方、その逆を下方、右側面から左側面に向かう方向を左側方、その逆を右側方として説明する。ただし、L型同軸コネクタの姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0018】
[L型同軸コネクタ]
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係るL型同軸コネクタ1は、組み立て時に接続される同軸ケーブル2の延びる方向Xと、図示しない相手コネクタとの嵌合方向Zとが略直角をなすものであり、ハウジング11、端子51及び外部導体61を備える。また、L型同軸コネクタ1に接続される同軸ケーブル2は、芯線3と、芯線3の外周側を覆う内部絶縁体4と、内部絶縁体4の外周に沿って編組されるシールド線5と、シールド線5の外周側を覆う外皮6とを備える。
【0019】
[端子]
図3及び図4に示すように、端子51は、導電性の板材を打ち抜き及び曲げ加工して形成されており、端子本体52と、組み立て時に挿入される同軸ケーブル2の側に端子本体52から斜め上方に向かって延在し、組み立て時に同軸ケーブル2の芯線3が圧接される芯線接続部53とを有する。
【0020】
端子本体52は、ハウジング11に圧入される圧入部52aと、その左右両端部から下方に延在する一対の接点部52bとを有しており、接点部52bは、L型同軸コネクタ1が相手コネクタに嵌合した際、相手コネクタの内側接点に接触して導通される。
【0021】
芯線接続部53は、端子本体52との境界から斜め上方に延在する基部53aと、基部53aの先端から45°の向きで下方(基部53aに対する相対的な方向)に向かって屈曲する第1屈曲部53bと、第1屈曲部53bの先端から45°の向きで下方(第1屈曲部53bに対する相対的な方向)に向かって屈曲する第2屈曲部53cと、第2屈曲部53c及び第1屈曲部53bの左右中心部に切込み状に形成される芯線導入溝53dとを有する。つまり、芯線接続部53は、端子本体52とは反対側において、45°の向きで下方に向かって2度屈曲した形状を有する。また、第2屈曲部53cの先端は、芯線導入溝53dから芯線接続部53の幅方向の外側に向かってテーパ状に形成されている。
【0022】
そして、芯線接続部53は、組み立て時に下方に押し下げられることにより、同軸ケーブル2の芯線3を圧接する。具体的には、第2屈曲部53cの先端部が同軸ケーブル2の内部絶縁体4を突き破り、芯線導入溝53d内に芯線3を挟み込む状態で芯線接続部53が同軸ケーブル2の芯線3に接続される。また、第2屈曲部53cの先端はテーパ状に形成されているため、内部絶縁体4を芯線導入溝53dに確実にガイドし、かつ、突き破りやすい。
【0023】
また、本実施形態の芯線接続部53は、端子本体52との境界において、押し下げられる際の支点となる凹状溝53eを有する。このような凹状溝53eによれば、組み立て時に芯線接続部53を押し下げる際、その押し下げ荷重を軽減できるとともに、端子51を所定の位置で正確に曲げ変形させることができる。
【0024】
[ハウジング]
図5及び図6に示すように、ハウジング11は、樹脂成形部品であり、端子51の端子本体52が取り付けられるハウジング本体12と、ハウジング本体12の前方(芯線接続部53の延在方向)に形成されるケーブルセット部13と、ハウジング本体12の後方から上方に向かって延在する押圧部14とを有する。
【0025】
ハウジング本体12は、端子本体52の圧入部52aが上方から圧入される圧入凹部12aと、圧入された端子本体52の接点部52bを下面側に露出させる接点開口部12bと、上端部から左右外側方に突設される係合凸部12cとを有しており、また、ハウジング本体12の後方から上方に向かって延在する押圧部14は、その基部としての基端部を支点とする弾性変形に基づいて前方に折り曲げ自在となっている。
【0026】
ケーブルセット部13は、組み立て時に同軸ケーブル2の先端部がセットされる部分であり、同軸ケーブル2の芯線3及び内部絶縁体4の先端面が突き当てられる突き当て面部13aと、内部絶縁体4の下面側を支える支持部としての底面部13bと、内部絶縁体4の左右側方を覆う左右の側壁部13cと、側壁部13cの外側面に突設される係合爪部13dとを有する。
【0027】
[外部導体]
図7及び図8に示すように、外部導体61は、導電性の板材を打ち抜き及び曲げ加工して形成されており、ハウジング11を収容する収容部62と、ハウジング11の押圧部14と同一側において収容部62の後方であって、その上縁から上方に向かって延在する蓋部63と、蓋部63の先端側に形成され、組み立て時に同軸ケーブル2のシールド線5を圧着するシールド線圧着部64と、組み立て時に同軸ケーブル2の外皮6を圧着する外皮圧着部65とを有する。
【0028】
収容部62は、ハウジング11を上方から装着可能な平面視U字形状であり、L型同軸コネクタ1が相手コネクタに嵌合した際、相手コネクタの外側接点に接触して導通される接点部62aと、組み立て時にハウジング11の係合凸部12cと係合する係合凹部62bと、組み立て時にハウジング11の係合爪部13dと係合する係合凹部62cとを有する。さらに、収容部62は、その前端(すなわち、自由端)から前方に延在する左右の補強部62dを有しており、左右の補強部62dは、組み立て時にシールド線5の左右側面に対向配置される。また、補強部62dの内側には、シールド線5に当接して同軸ケーブル2を抜け止めするための凹凸面62eが形成されている。
【0029】
蓋部63は、基部に折り曲げ部63aを有し、組み立て時に折り曲げ部63aを支点として前方(収容部62側)に折り曲げられることにより、収容部62の上方を覆う。蓋部63の左右両側には、組み立て状態で下方に延在する第1係合部63b及び第2係合部63cが形成されており、第1係合部63bは、収容部62の左右を支持することが可能な係合爪63dを有し、第2係合部63cは、蓋部63の折り曲げ時に収容部62の下縁に係合して折り曲げ状態を維持する係合爪63eを有する。
【0030】
シールド線圧着部64は、蓋部63を折り曲げたとき、シールド線5の上面側に沿う上面部64aと、上面部64aの左右両端から下方に延在してシールド線5の左右側面に沿い、左右外側方から中央側への曲げ加工(かしめ加工)によりシールド線5を圧着する圧着部64bとを有する。曲げ加工前における左右の圧着部64bは、均等な間隔ではなく、圧着部64bの基部側と比べて先端側ほど間隔が広い末広がり状に形成されている。
【0031】
外皮圧着部65は、蓋部63を折り曲げたとき、外皮6の上面側に沿う円弧部65aと、円弧部65aの左右両端から下方に延在して外皮6の左右側面に沿い、左右外側方から中央側への曲げ加工(かしめ加工)により外皮6を圧着する圧着部65bとを有する。曲げ加工前における左右の圧着部65bは、均等な間隔ではなく、先端側ほど間隔が広い末広がり状に形成されている。また、外皮圧着部65の内側には、外皮6に当接して同軸ケーブル2を抜け止めするための凹凸面65cが形成されている。
【0032】
[組み立て手順]
つぎに、L型同軸コネクタ1の組み立て手順について、図9図15を参照して説明する。ただし、同軸ケーブル2には、先端側から順番に、内部絶縁体4の外周面を露出させた内部絶縁体露出部2aと、シールド線5の外周面を露出させたシールド線露出部2bとが予め加工されているものとする。
【0033】
[端子圧入工程]
図9及び図10に示すように、L型同軸コネクタ1を組み立てる際には、まず、端子51をハウジング11のハウジング本体12に上方から圧入する端子圧入工程を行う。図10及び図11に示すように、この端子圧入工程を自動組立機で行う場合は、キャリアC1が接続された状態で端子51を製造するとともに、キャリアC1と端子51との間に分離用の分離部59を形成し、また、キャリアC2が接続された状態でハウジング11を製造するとともに、キャリアC2とハウジング11との間に分離用の分離部19を形成しておく。そして、自動組立機においては、同一ピッチで並ぶ複数の端子51及びハウジング11を連続的に供給すると、ハウジング11に対する端子51の圧入が自動的に実行された後、端子51がキャリアC1から分離される。
【0034】
[ハウジング装着工程]
図12に示すように、端子圧入工程の後は、端子51が圧入されたハウジング11を、外部導体61の収容部62に上方から嵌合状に装着するハウジング装着工程が行われる。このとき、ハウジング11の係合凸部12cが外部導体61の係合凹部62bに係合するとともに、ハウジング11の係合爪部13dが外部導体61の係合凹部62cに係合することにより、外部導体61に対するハウジング11の位置決め及び抜け止めが行われる。図13に示すように、このハウジング装着工程を自動組立機で行う場合は、キャリアC3が接続された状態で外部導体61を製造するとともに、キャリアC3と外部導体61との間に分離用の分離部69を形成しておく。また、端子圧入工程で端子51が圧入されたハウジング11は、キャリアC2に接続された状態であるが、キャリアC2同士は分離させておく。そして、自動組立機においては、外部導体61のピッチに合わせてハウジング11を連続的に供給すると、外部導体61に対するハウジング11の装着が自動的に実行された後、ハウジング11及び外部導体61がキャリアC2、C3から分離され、図1に示す状態のL型同軸コネクタ1が得られる。
【0035】
[外部導体折り曲げ工程]
図14の(a)に示すように、L型同軸コネクタ1に同軸ケーブル2を接続する際には、まず、同軸ケーブル2の先端部(内部絶縁体露出部2a)をハウジング11のケーブルセット部13に挿入状にセットする。このとき、同軸ケーブル2の芯線3及び内部絶縁体4の先端面がケーブルセット部13の突き当て面部13aに突き当てられるとともに、内部絶縁体4の下面側が底面部13bで支えられる。
【0036】
図14の(a)及び(b)に示すように、同軸ケーブル2の先端部をハウジング11のケーブルセット部13にセットしたら、外部導体61の蓋部63を前方(収容部62側)に折り曲げる。蓋部63を前方に折り曲げると、ハウジング11の押圧部14が蓋部63の下面に押されて追随状に折り曲げられるとともに、押圧部14が端子51の芯線接続部53を押し下げる。図14の(c)に示すように、押圧部14によって下方に押し下げられた芯線接続部53は、その基端部に形成された凹状溝53eを支点として下方に曲げ変形されるとともに、先端部が同軸ケーブル2の内部絶縁体4を突き破り、芯線導入溝53d内に芯線3を挟み込む状態で芯線3に接続される。ここで芯線接続部53は、前述したように45°の向きで下方に向かって2度屈曲した形状を有するので、内部絶縁体4を良好に突き破ることができるだけでなく、先端部(第2屈曲部53c)を芯線3に対して90°の向きで圧接させることができる。そして、外部導体61の蓋部63を所定の下限位置まで折り曲げると、蓋部63の第2係合部63cに形成される係合爪63eが収容部62の下縁に係合して折り曲げ状態が維持される。なお、芯線接続部53の屈曲する各角度は、同軸ケーブル2や端子51の種類または寸法等に応じて適宜変更することができる。
【0037】
図15に示すように、外部導体折り曲げ工程では、端子51の芯線接続部53を同軸ケーブル2の芯線3に圧接させるだけでなく、外部導体61の補強部62dを同軸ケーブル2のシールド線5に当接させる。つまり、図15の(a)に示すように、外部導体61に形成された左右の補強部62dは、同軸ケーブル2の外皮6の外径程度の間隔、または、同軸ケーブル2のシールド線5の外径よりも大きい間隔を介して互いに対向しており、ハウジング11のケーブルセット部13に同軸ケーブル2の先端部をセットした状態では、シールド線5の左右側面部と隙間を介して対向している。この状態で、蓋部63を前方に折り曲げると、図15の(b)及び(c)に示すように、曲げ加工前における左右の圧着部64bは、均等な間隔ではなく、圧着部64bの基部側と比べて先端側ほど間隔が広い末広がり状に形成されており、また、左右の圧着部64bの基部側の間隔は、左右の補強部62dの間隔より狭く形成されているため、蓋部63の先端側に形成されるシールド線圧着部64が補強部62dを中央側に押し込んでシールド線5に当接させる。これにより、補強部62dの内側に形成される凹凸面62eがシールド線5に当接してL型同軸コネクタ1のケーブル引き上げ強度や引き抜き強度が高められ、同軸ケーブル2を確実に保持することができる。
【0038】
[ケーブル圧着工程]
図15の(c)に示すように、蓋部折り曲げ工程の後は、シールド線圧着部64及び外皮圧着部65のかしめ加工によるケーブル圧着工程が行われる。具体的には、シールド線圧着部64の先端側を左右外側方から中央側へ曲げ加工してシールド線5に圧着させるとともに、外皮圧着部65の先端側を左右外側方から中央側へ曲げ加工して外皮6に圧着させる。以上でL型同軸コネクタ1の組み立てが完了する。そして、図14の(c)に示すように、組み立て後におけるハウジング11の嵌合方向の高さは、同軸ケーブル2のシールド線5の外径以下であり、外部導体61の嵌合方向の高さは、同軸ケーブル2の外皮6の外径とほぼ同等である。
【0039】
以上に述べた実施形態によれば、組み立て時に接続される同軸ケーブル2の延びる方向Xと、相手コネクタとの嵌合方向Zとが略直角をなすL型同軸コネクタ1であって、端子本体52と、組み立て時に同軸ケーブル2の芯線3が圧接される芯線接続部53とを有する端子51と、端子本体52が取り付けられるハウジング本体12と、端子本体52の芯線接続部53と反対側においてハウジング本体12から上方に向かって延在する押圧部14とを有するハウジング11と、ハウジング11を収容する収容部62と、ハウジング11の押圧部14と同一側において収容部62から上方に向かって延在する蓋部63とを有する外部導体61と、を備え、芯線接続部53は、組み立て時に挿入される同軸ケーブル2の側に端子本体52から斜め上方に向かって延在し、さらに、その先端側は、下方へ向かって延在するL型同軸コネクタ1でありながら、ハウジングの上下を外部導体で覆う従来のL型同軸コネクタに比べて大幅な低背化を実現し、嵌合高さと同等の外径を有する同軸ケーブル2との接続が可能になる。
【0040】
また、端子51の芯線接続部53が、端子本体52との境界において、押し下げられる際の支点となる凹状溝53eを有するので、組み立て時に芯線接続部53を押し下げる際、その押し下げ荷重を軽減できるとともに、端子51を所定の位置で正確に曲げ変形させることができる。
【0041】
また、端子51の芯線接続部53が、端子本体52とは反対側において、45°の向きで下方に向かって2度屈曲しているので、押し下げ時に同軸ケーブル2の内部絶縁体4を良好に突き破ることができるだけでなく、先端部(第2屈曲部53c)を芯線3に対して90°の向きで圧接させることができる。
【0042】
また、ハウジング11は、端子本体52の芯線接続部53側においてハウジング本体12から同軸ケーブル2の延びる方向へ延在する支持部13bを備え、支持部13bは、芯線接続部53よりも下方に位置しているので、同軸ケーブル2と芯線接続部53との接続が確実で、かつ、容易となる。
【0043】
また、本発明の他の実施の態様は、接続された同軸ケーブル2の延びる方向Xと、相手コネクタとの嵌合方向Zとが略直角をなすL型同軸コネクタ1であって、同軸ケーブル2と、端子本体52と、同軸ケーブル2の芯線3が圧接される芯線接続部53とを有する端子51と、端子本体52が取り付けられるハウジング本体12と、端子本体52の芯線接続部53と反対側においてハウジング本体12から同軸ケーブル2の延びる方向Xへ延在する押圧部14とを有するハウジング11と、ハウジング11を収容する収容部62と、ハウジング11の押圧部14と同一側において収容部62から同軸ケーブル2の延びる方向Xへ延在する蓋部63とを有する外部導体61と、を備え、ハウジング11は、端子本体52の芯線接続部53側においてハウジング本体12から同軸ケーブル2の延びる方向Xへ延在する支持部13bを備え、同軸ケーブル2の下方側は支持部13bにより支持され、その上方側は、芯線接続部53により圧接されているL型同軸コネクタ1でありながら、ハウジングの上下を外部導体で覆う従来のL型同軸コネクタに比べて大幅な低背化を実現し、嵌合高さと同等の外径を有する同軸ケーブル2との接続が可能になる。
【0044】
また、端子51の芯線接続部53が、端子本体52とは反対側において、45°の向きで下方に向かって2度屈曲しているので、押し下げ時に同軸ケーブル2の内部絶縁体4を良好に突き破ることができるだけでなく、先端部(第2屈曲部53c)を芯線3に対して90°の向きで圧接させることができる。
【0045】
さらに、本発明のL型同軸コネクタ1の製造方法では、組み立て時に接続される同軸ケーブル2の延びる方向Xと、相手コネクタとの嵌合方向Zとが略直角をなすL型同軸コネクタ1の製造方法であって、端子本体52と、組み立て時に同軸ケーブル2の芯線3が圧接される芯線接続部53とを有する端子51と、端子本体52が取り付けられるハウジング本体12と、端子本体52の芯線接続部53と反対側においてハウジング本体12から上方に向かって延在する押圧部14とを有するハウジング11と、ハウジング11を収容する収容部62と、ハウジング11の押圧部14と同一側において収容部62から上方に向かって延在する蓋部63とを有する外部導体61と、を備え、組み立て時に蓋部63が収容部62の側に折り曲げられると、押圧部14が蓋部63に追随して折り曲げられ、押圧部14によって下方に押し下げられた芯線接続部53が芯線3を圧接するL型同軸コネクタ1の製造方法でありながら、ハウジングの上下を外部導体で覆う従来のL型同軸コネクタに比べて大幅な低背化を実現し、嵌合高さと同等の外径を有する同軸ケーブル2との接続が可能になり、また、容易に製造することができる。
【0046】
また、その製造方法では、ハウジング11は、端子本体52の芯線接続部53側においてハウジング本体12から同軸ケーブル2の延びる方向へ延在Xする支持部13bを備え、支持部13bは、下方から同軸ケーブルを支持しているので、同軸ケーブル2との接続が確実、かつ、容易であり、また、容易に製造することができる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…L型同軸コネクタ、2…同軸ケーブル、2a…内部絶縁体露出部、2b…シールド線露出部、3…芯線、4…内部絶縁体、5…シールド線、6…外皮、11…ハウジング、12…ハウジング本体、12a…圧入凹部、12b…接点開口部、12c…係合凸部、13…ケーブルセット部、13a…突き当て面部、13b…底面部(支持部)、13c…側壁部、13d…係合爪部、14…押圧部、19…分離部、51…端子、52…端子本体、52a…圧入部、52b…接点部、53…芯線接続部、53a…基部、53b…第1屈曲部、53c…第2屈曲部、53d…芯線導入溝、53e…凹状溝、59…分離部、61…外部導体、62…収容部、62a…接点部、62b…係合凹部、62c…係合凹部、62d…補強部、62e…凹凸面、63…蓋部、63a…折り曲げ部、63b…第1係合部、63c…第2係合部、63d…係合爪、63e…係合爪、64…シールド線圧着部、64a…上面部、64b…圧着部、65…外皮圧着部、65a…円弧部、65b…圧着部、65c…凹凸面、69…分離部、C1、C2、C3…キャリア。
図1
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