特許第6702689号(P6702689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702689
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】液晶のフーリエ変換撮像分光器
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/447 20060101AFI20200525BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20200525BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20200525BHJP
   G01J 3/45 20060101ALI20200525BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   G01J3/447
   G02F1/01 D
   G02F1/13 505
   G01J3/45
   G01J3/02 C
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-208617(P2015-208617)
(22)【出願日】2015年10月23日
(65)【公開番号】特開2016-109676(P2016-109676A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2018年10月2日
(31)【優先権主張番号】14/527,347
(32)【優先日】2014年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/527,378
(32)【優先日】2014年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/883,404
(32)【優先日】2015年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ヘギー
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル・マルティーニ
【審査官】 中澤 真吾
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06421131(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0166045(US,A1)
【文献】 米国特許第05247378(US,A)
【文献】 米国特許第05642214(US,A)
【文献】 特開平08−082780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00−4/04
7/00−9/04
G02F 1/00−1/13
1/137−1/141
1/21−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイパースペクトル撮像パラメータを受信して、前記撮像パラメータを、連続する遅延特性で連続する遅延特性時間に取得される、連続する画像へ変換するよう構成された、プロセッサと、
ハイパースペクトル撮像コンポーネントであって、
少なくとも1つの入力偏光子であって、前記入力偏光子は、光の入射ビームを受信および偏光する、少なくとも1つの入力偏光子、
前記光の入射ビームと反対に前記入力偏光子と隣接して配置され、前記偏光された光のビームを前記入力偏光子から受信し、前記光の偏光を変更して、波長依存の偏光された光を生成する、液晶可変リターダ、
前記波長依存の偏光された光を受信して、前記光の偏光状態情報を、光明度として検出可能な形式へ変換するよう配置される、出力偏光子、
前記液晶可変リターダと電気的に接続される電圧ソース、および、
遅延特性コントローラであって、前記連続する遅延特性を、連続する遅延特性時間に受信し、前記液晶可変リターダに印加される、連続する電圧を連続する電圧時間に生成するよう構成された、コントローラ、
を備える、ハイパースペクトル撮像コンポーネントと、および、
前記遅延特性コントローラと同期化されて、前記光を、光明度として検出可能な形式で、前記液晶可変リターダの遅延特性の関数として受信し、前記光を出力信号へ、連続する画像として変換する、焦点面アレイであって、前記プロセッサは、前記連続する画像のハイパースペクトル画像データへの変換を行う、焦点面アレイと、
を備え
前記液晶可変リターダは、透明電極層がその上に設けられる2つの透明基板の間に挟まれた液晶材料を含む、少なくとも1つの液晶セルを含み、
前記電圧ソースは、前記液晶可変リターダを2つのコンポーネント電界により駆動するよう構成され、前記2つのコンポーネント電界は、前記液晶材料を前記透明電極層と垂直に配列させる第1のコンポーネントと、前記液晶材料を前記透明電極層と平行に配列させる第2のコンポーネントとを有し、これら2つのコンポーネントは同時に適用される
ことを特徴とする、ハイパースペクトル撮像システム。
【請求項2】
前記液晶可変リターダの少なくとも一対の対称性の破れ特性のうちの前記対称性の破れ特性は、肯定極性と否定極性との間に均一に分散される、請求項1に記載のシステム
【請求項3】
少なくとも1つの入力偏光子と隣接して配置される、少なくとも1つの光源をさらに備え、それにより、前記光源からの光が前記焦点面アレイに到達する、請求項1に記載のシステム
【請求項4】
遅延特性補償デバイスを、前記少なくとも1つの入力偏光子と前記出力偏光子との間にさらに備える、請求項1に記載のシステム
【請求項5】
遅延特性抽出器をさらに備える、請求項1に記載のシステム
【請求項6】
前記液晶可変リターダの温度情報を前記遅延特性コントローラに提供する、少なくとも1つの温度センサをさらに備える、請求項1に記載のシステム
【請求項7】
ハイパースペクトル撮像パラメータのセットをプロセッサで受信することと、
前記プロセッサで、前記ハイパースペクトル撮像パラメータに対応する連続する遅延特性時間に連続する遅延特性を生成することと、
前記連続する遅延特性を前記連続する遅延特性時間に、遅延特性コントローラへ送信することと、
前記遅延特性コントローラで、液晶可変リターダへ印加される、連続する電圧を連続する電圧時間に生成することと、
前記連続する電圧を前記連続する電圧時間に、液晶可変リターダへ印加することと、
連続する画像を、前記液晶可変リターダを介して連続する遅延特性時間で焦点面アレイで取得することと、および、
前記プロセッサを使用して、ハイパースペクトル画像データを前記連続する画像から生成することと、
を備え
前記液晶可変リターダは、透明電極層がその上に設けられる2つの透明基板の間に挟まれた液晶材料を含む、少なくとも1つの液晶セルを含み、
前記液晶可変リターダを2つのコンポーネント電界により駆動することをさらに備え、前記2つのコンポーネント電界は、前記液晶材料を前記透明電極層と垂直に配列させる第1のコンポーネントと、前記液晶材料を前記透明電極層と平行に配列させる第2のコンポーネントとを有し、これら2つのコンポーネントは同時に適用される
ことを特徴とする、ハイパースペクトル画像データを生成する方法。
【請求項8】
前記連続する電圧を印加することは、前記液晶可変リターダのセルにおける液晶の前記誘電異方性がサインを変更する前記周波数より上または下のうちの一方で、周波数コンポーネントからなる時間変動電圧を印加すること、その後、前記液晶の前記誘電異方性がサインを変更する前記周波数より上または下のうちの他方で、周波数コンポーネントからなる時間変動電圧を印加すること、を備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記遅延特性時間系列における時間の間隔は、前記液晶可変リターダの緩和時間より短い、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記液晶可変リターダの較正遅延特性を所与の遅延特性時間で測定し、前記較正遅延特性と所与の遅延特性時間に対応する遅延特性系列における遅延特性との間の相違を用いて前記液晶可変リターダの動作をリアルタイムで調整することを、さらに備える、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶のフーリエ変換撮像分光器に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイパースペクトル撮像(HSI)は、電磁スペクトルの紫外(UV)部、可視部、赤外部の全域から情報を収集および処理する。ハイパースペクトル撮像カメラは、シーンの各地点でのスペクトル情報からなる、ハイパースペクトル画像データ、即ちHSIデータを取得する。HSIは、シーンの画像における情報の深度を増大させるために、または、従来のモノクロまたはカラーカメラで記録され得るものを超えて、画像の視覚コントラストを増大させるために、頻繁に適用される。この向上したコントラストは、視覚ノイズにより目立たなくなっている、見つけにくい物体またはカモフラージュされた物体を検出するのに、使用され得る。また、材料の識別にも役立ち得る。これは、一切れの果物の完熟度など、対象物の状態に関する詳細な情報にアクセスするために使用され得る。HSIの既知の用途は、工業および農業での仕分け、農業および防衛のための遠隔測定、脅威の識別、さらには医薬など、多様な分野に多くある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スマートフォン技術の出現により、世界の人口のかなりの割合の人々が大抵の場合に携行する、強力なモバイルプラットフォームが提供されてきた。スマートフォンに存在するセンサの数および種類は増加する傾向にあり、スマートフォンの計算能力は、それに応じて向上している。スマートフォンは既に複数の画像センサを含んでいるが、既存のHSI技術のサイズおよびコストが極めて大きいため、現在のところ、HSIカメラの候補とは見なされていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの実施形態はハイパースペクトル撮像システムであり、以下を含む:ハイパースペクトル撮像パラメータを受信して、連続する遅延特性で連続する遅延特性時間に取得される、連続する画像へ変換する、プロセッサと;ハイパースペクトル撮像コンポーネントであって、少なくとも1つの入力偏光子であって、入力偏光子は光の入射ビームを受信および偏光する、少なくとも1つの入力偏光子、入力偏光子からの偏光された光のビームを受信して、光の偏光を変更して波長依存の偏光された光を生成する、光の入射ビームと反対の入力偏光子に隣接するよう配置される、液晶可変リターダ、波長依存の偏光された光を受信して、光の偏光状態情報を光明度として検出可能な形式へ変換するよう配置される、出力偏光子、液晶可変リターダと電気的に接続される電圧ソース、および、遅延特性コントローラであって、連続する遅延特性を連続する遅延特性時間に受信し、液晶可変リターダへ印加される、連続する電圧を連続する電圧時間に生成するコントローラ、を有する、ハイパースペクトル撮像コンポーネントと;および、光を、光明度として検出可能な形式で、液晶可変リターダの遅延特性の関数として受信し、光を出力信号へ、連続する画像として変換する、遅延特性コントローラと同期化される焦点面アレイであって、プロセッサは、連続する画像のハイパースペクトル画像データへの変換を行う、焦点面アレイ。
【0005】
別の実施形態は、ハイパースペクトル画像データを生成する方法であり、以下を含む:ハイパースペクトル撮像パラメータのセットをプロセッサで受信すること;プロセッサで、ハイパースペクトル撮像パラメータに対応する、連続する遅延特性を連続する遅延特性時間に生成すること;連続する遅延特性を連続する遅延特性時間に、遅延特性コントローラへ送信すること;遅延特性コントローラで、液晶可変リターダへ印加される、連続する電圧を連続する電圧時間に生成すること;連続する電圧を、連続する電圧時間に液晶可変リターダへ印加すること;連続する画像を、液晶可変リターダを介して焦点面アレイで取得すること、および、プロセッサを使用して、ハイパースペクトル画像データを、連続する画像から生成すること。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、ハイパースペクトル撮像カメラを包含するデバイスの第1の図を示す。
図2図2は、ハイパースペクトル撮像カメラを包含するデバイスの第2の図を示す。
図3図3は、ハイパースペクトル撮像カメラを含むデバイスの概略図を示す。
図4図4は、ハイパースペクトル撮像システム光路の光線図を示す。
図5図5は、平衡位相遅延と液晶電圧との対比を表すグラフを示す。
図6図6は、検出された明度と経路遅延との対比を表すグラフを示す。
図7図7は、各画像画素で検出された明度と波長との対比を表すグラフを示す。
図8図8は、複数のスタックされた液晶セルからなる液晶可変リターダの実施形態を示す。
図9図9は、単一の液晶層の各側に対の電極を有する、液晶可変リターダの1つの実施形態の電極パネルの上面図を示す。
図10A図10Aは、標準的な反平行配列液晶セルと光学的に補正されたベンドセルの実施形態との間の比較を示す。
図10B図10Bは、標準的な反平行配列液晶セルと光学的に補正されたベンドセルの実施形態との間の比較を示す。
図11図11は、光学的に補正されたベンドセルの光線図を示す。
図12図12は、ハイパースペクトル撮像システムを動作させる方法の実施形態のフローチャートを示す。
図13図13は、ハイパースペクトル撮像システムを較正する方法の実施形態のフローチャートを示す。
図14図14は、ハイパースペクトル撮像システムを較正する方法の代替的な実施形態のフローチャートを示す。
図15図15は、遅延特性の閉ループ制御のフローチャートを示す。
図16図16は、撮像システムの視野内にスペーサを伴う液晶可変リターダを有する、ハイパースペクトル撮像システムの一部分の実施形態を示す。
図17図17は、スペーサが焦点面アレイの画素間に置かれる、スペーサを伴う液晶可変リターダの実施形態を示す。
図18図18は、湾曲した液晶可変リターダを有する、撮像システムの一部分の実施形態を示す。
図19図19は、較正光源に連結する偏光ビームスプリッタを使用する、ハイパースペクトル撮像カメラの実施形態を示す。
図20図20は、視野全体に較正光源を伴う撮像配列を行う方法の実施形態のフローチャートを示す。
図21図21は、2つのコンポーネントの電界の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ハイパースペクトル撮像は、仕分け、遠隔測定、および医学的用途など、多くの有望な使用事例を有する。この技術のコスト、サイズ、および有用性が、その用途を限定していた。ハイパースペクトル撮像カメラを多くの共通システム内に含めることができれば、ハイパースペクトル撮像(HSI)は、さらに広範囲に広まる。例えば、スマートフォンは、容易に利用可能なHSIカメラの技術プラットフォームである。スマートフォンに含めることで、HSIで可能となることの境界を押し広げることができる。これは、スマートフォンが、新しい用途を容易に開発する大抵の個々人により携行される、汎用プラットフォームであるからである。
【0008】
流通している最先端のHSIカメラは、シーン全体にわたるスリットを走査することにより、または、スリットを介して格子を用いて伝達される光を分散することにより、機能する場合がある。または、液晶同調フィルタを、瞬間撮像が1つの波長帯域で可能となる焦点面アレイの前に配置することにより、機能する場合がある。この考察において使用される、焦点面アレイ(即ち、FPA)という用語は、アレイが要素の配列であり得る、配列に配置される1つ以上の光検出要素である。FPAの例は、電荷結合素子(CCD)、CMOS画像センサなど、を含む。シーンから生じる光はFPA上に到達し、処理されてシーンの画像をもたらす、信号を生成する。低価格のハイパースペクトル撮像カメラでは、光帯域通過フィルタを焦点面アレイ自体にタイル状に敷く場合がある。これは、既存の三原色カメラと類似しているが、良好なスペクトル分解能のために空間分解能を犠牲にして、大きな離散光帯域を伴う。液晶同調フィルタおよび光帯域通過フィルタにより、所与の波長帯域の画像を直ちに取得できる一方で、帯域外の波長を全て切り捨てる負担の上で行われる。
【0009】
典型的には、波長の範囲全体にわたるシーンの撮像が望まれる。したがって、一度に1つのスペクトル帯域からだけ記録するより、同時に全ての波長の光を記録することが望ましい。これは、フーリエ変換ハイパースペクトル撮像など、波長情報を、検出器により記録される時間信号へ符号化する、光学的に多重化された形式のハイパースペクトル撮像を使用して、達成され得る。当該の実施形態において例示されるような、任意の光学的な多重化技術は、フェルゲットの利得として知られる特性である、光処理能力を増大させる。
【0010】
分散システムとしても既知の、格子および2次元焦点面アレイを使用するシステムは、所与の帯域内および1つの空間軸に沿う、全ての波長からの光を同時に記録し得る。他の空間軸に沿う空間情報は、画像化される対象全体にわたりプッシュブルーム手法でスリットを走査することにより、構築されてよい。空間情報はスリットの長方向において瞬間的に取得され、短方向は格子またはプリズムを伴って波長に分散されるため、FPAは波長の全てを同時に記録し得る。スリットは物体を横切る際に走査され、スリットの短方向における空間情報が収集される。分散システムは、コスト、サイズ、または複雑性が、高いことが多い。本明細書における実施形態は、光路における制御可能な液晶可変リターダをFPAの前に単に追加するので、これらの報いを被ることはない。加えて、分散システムにおいてスリットを使用すると、任意の所与の時間の総合的な光処理能力が、スリットを通過する光に制限される。前述のスリットの使用により、フーリエ変換ハイパースペクトル撮像システムおよび他の多重化システムは、ジャキノの利得として知られる、処理能力の利点を増大させる。
【0011】
フーリエ変換ハイパースペクトル撮像を行うための従来の手法は、撮像経路を2つの部分に分け、FPAに再結合される光を記録しながら、1つの部分の長さを変化させるデバイスである、撮像マイケルソン干渉計を使用することである。この種のHSIは、フェルゲットおよびジャキノの利点の両方から恩恵を受けるが、大きくて高価であり、振動および位置ずれに影響を受けやすい。当該の実施形態は、これらの欠点のいずれにも悩まされない。
【0012】
本明細書における実施形態により、極度に小型で低コストになる見込みを有し、スマートフォン上を含む、カメラが現段階で使用されている全ての場所に統合可能な、新しい分類のHSIカメラが可能となる。実施形態は、スマートフォンのような汎用ホストプラットフォームにおいて利点を有する。これは、波長分解能、撮像速度、および空間分解能など、性能パラメータが、ソフトウェアにおいて選択でき、ハードウェア構成により固定化されないからである。本明細書における実施形態に記載されるHSIコンポーネントは、FPA、光学、およびプロセッサなど、ホストシステムの既存のカメラコンポーネントと併せて動作させることができ、組み合わせてHSIカメラを形成する。HSIコンポーネントおよびホストシステムのカメラコンポーネントは、同じカメラボタンで起動されることができ、HSIコンポーネントは、ホストシステムのカメラコンポーネントが標準の非ハイパースペクトル画像を撮影できるよう、ソフトウェアにおいて構成され得る。実施形態は、システムの複雑性のほとんどを電子回路/ソフトウェア側へ移行することにより、増大する計算能力の向上を活用し、それにより、システム全体のコストを低く維持する。
【0013】
加えて、無線または有線の通信機能を有するスマートフォンまたは他の携帯デバイスを使用することにより、デバイスは、未加工のHSIデータを伝達することができる。あるいは、デバイスは、医療機器などの大型デバイスで使用するために、または、診断ルーチンの一部として使用するために、分析または処理されたHSIデータを送信する。
【0014】
携帯デバイスベースのHSIカメラにより、HSIの現在の用途が消費者レベルで可能になる。より重要なことに、HSIはモバイルプラットフォームに広く展開されるので、および、モバイルアプリケーション開発者はHSIの性能の活用方法を取得するので、疑う余地なく、HSIの新しくて興味深い使用が明らかになるだろう。
【0015】
以下の説明では、以下の定義を有する、いくつかの用語を使用する。「液晶可変リターダ」は、典型的にはガラスである、2つの透明の基板の間に挟まれた液晶材料を備える、少なくとも1つの液晶(LC)セルを指す。典型的には、インジウムスズ酸化物(即ち、ITO)などの透明な導体で作製される、ガラス基板上に置かれる透明電極層は、液晶分子の配向を変化させ、したがって、液晶可変リターダの光遅延特性を変化させるために使用される、液晶セル内における電界の生成を提供する。追加的な層は、好適な配列方向に塗り込まれて液晶分子を適応させる、電極層に置かれるポリイミド配列層など、セルの内部へ提供されてよい。液晶可変リターダを備える単一のLCセルの代わりに、複数のセルがあってもよい。
【0016】
「ハイパースペクトル撮像コンポーネント」(即ち、HSIコンポーネント)は、入力偏光子または偏光デバイス、液晶可変リターダ、出力偏光子または分析器、遅延特性コントローラおよび電圧ソースを有する、コンポーネントを指す。入力偏光子は、LC可変リターダと光のソースとの間にある。出力偏光子は、第1の偏光子と反対のLC可変リターダの側に存在する。遅延特性コントローラは、LC可変リターダへ印加される電圧を制御して、LCリターダを通過する光の所望の遅延特性を達成する。
【0017】
「ハイパースペクトル撮像システム」(即ち、HSIシステム)は、HSIコンポーネント、上記で定義されたような焦点面アレイ、およびプロセッサの組み合わせを指す。プロセッサは、プロセッサおよびFPAを含むシステムの全要素を包含し、ホストとは独立に機能するデバイスを意味する、スタンドアロンデバイスに常駐してよい。代替的に、プロセッサおよび/またはFPAは、関連する組み合わせの全てを伴う、ホストシステムのコンポーネントであってよい。「ホストシステム」または「ホスト」は、HSIパラメータをHSIカメラまたはHSIシステムへ送信し、代わりにHSIデータを受信する、選択的なデバイスである。「HSIカメラ」は、画像を記録するために必要な光学機器を伴うHSIシステムである。
【0018】
HSIコンポーネント(LC可変リターダ、遅延特性コントローラおよび電圧ソース)を有するホストシステムである、デバイスの例が、図1および図2に示されている。図1に、スマートフォンデバイス10がホストデバイスとして示される。この特定のデバイスが示され、議論されてよい一方で、この種のデバイスへの制限が意図されることはなく、または、暗示されるべきではないことに、留意しなければならない。HSIコンポーネントを適用し得る他の種類のデバイスは、潜望鏡、光学蛍光検出システム、望遠鏡、顕微鏡、内視鏡、繊維束撮像システム、明視野撮像システム、および、静止カメラ、ラインカメラ、および、ビデオカメラを含む。図1において、HSIコンポーネントは開口部12の経路にあってよく、撮像されたシーンは光14で照らされてよい。
【0019】
図2は、スマートフォン10のディスプレイ側を示す。ディスプレイ側は、HSIコンポーネントの使用を誘発する例示的なアプリケーション18を伴って、ディスプレイスクリーン19を示す。HSIコンポーネントを誘発するアプリケーションがない場合、HSIコンポーネントは動作しておらず、HSIを伴わないカメラの通常の(カラーまたはモノクロ)使用が可能である。さらに、ユーザに向くカメラ16は、HSIコンポーネントが与えられてよい。前向きの携帯電話HSIカメラは、医療用撮像などの用途でHSIデータを生成するのに、ユーザにとって特に有用である可能性がある。
【0020】
HSIコンポーネントの特定の実施形態において、LC可変リターダの光軸は、名目上は、偏光子に対して45度である。入力偏光子を通過する入射光の所与の波長では、HSIコンポーネントは、光遅延が増大するため、光の透過と非透過との間で揺れ動く。この揺れが発生するのは、遅延特性が増大するにつれて、LC可変リターダが周期的に光の偏光状態を変更し、出力された偏光子が、代わりに、リターダに倣って、その偏光状態に基づき、光を遮断または通過させる働きをするからである。遅延特性は、以下で説明されるように、光路遅延または光位相遅延として記載されてよく、ここで、光位相遅延は、波長により分割される光路遅延に比例する。
【0021】
光遅延特性の関数としての明度の揺れは、集合的にインターフェログラムと呼ばれ、入射波長に依存する期間を伴って起こる。各々の独自の入射波長は、遅延特性の関数として異なる速度で明度の揺れを生じ、入射波長の組み合わせによる明度の揺れは、線形的に一緒になる。波長は、受信された光のフーリエ変換により、光遅延特性の関数として、この場合は光路遅延の関数として、分割されることができ、光スペクトルをもたらす。液晶可変リターダは、焦点面アレイの光路に配置されるので、FPAは、独立的に、画像の各地点で明度の揺れまたはインターフェログラムをサンプリングおよび記録することができ、この情報を使用してハイパースペクトル画像データを算出し得る。
【0022】
ハイパースペクトル画像データの各波長λおよび各地点でのスペクトル分解能Δλは、式Δλ=2πλ/Δφで求められる。ここで、Δφは、インターフェログラムが記録される際の光位相遅延の範囲であり、ラジアンで表される。この式から、中心波長より大幅に小さい波長差異を解消するために、インターフェログラムは、光位相遅延の幅Δφ>>2πで記録されなければならないことが明らかである。この要件により、当該の実施形態は、典型的には、2πの範囲を超える構成要素の液晶段階の位相遅延を走査する必要がない、液晶同調フィルタと区別される。さらに、位相遅延の範囲は、波長λ、液晶複屈折Δn、および、液晶層の位置依存の有効厚さβの関数であり、以下の方程式で表される:Δφ=2πΔn(λ,T,V)β(x,y)/λ。ここで、複屈折は、波長、温度T、および時間依存の液晶電圧Vの関数であり、正常な偏光および異常な偏光で液晶可変リターダへ正常に入射する、2つの光線の間の複屈折を表す。FPAの所与の画素の位置での主光線の入射角の変化、および、光位相遅延の範囲の対応する位置依存は、位置依存の有効厚さβに組み込まれる。
【0023】
図3は、HSIコンポーネントを含み、ホストデバイス10と通信する可能性がある、16などのハイパースペクトルカメラの内部の概略図を示す。ホストデバイスは、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレット、手持ち式のカメラ、または、波長分解能、露光時間、または露光トリガなど、ハイパースペクトル画像データのパラメータを発行可能であり、当該のハイパースペクトル画像データを受信可能な、他のシステムであってよい。代替的に、カメラは、独自のプロセッサを伴った自己充足型であってよく、したがって、ホストと独立して機能することが可能であってよい。光は開口部12を介してHSIカメラに入り、光学機器22に入る。その後、光学機器は光をFPA24へ伝送する。FPAは、受信された光を、プロセッサ28により処理され得る信号へ変換する。HSIコンポーネントがホストデバイスと連動して使用される実施形態において、プロセッサ28およびFPA24は、ホストデバイスの一部であってよい。この実施形態におけるプロセッサは、カメラ16のプロセッサである。この説明のために、プロセッサ28は、ホストシステム10のプロセッサと分離していると見なされる。しかしながら、プロセッサ28は、ホストプロセッサ、専用プロセッサなどの区分であってよいことに、留意しなければならない。システム全体においてプロセッサが特定の配置に限定される意図はなく、暗示されるべきでもない。
【0024】
光学機器22は、後で詳細に説明されるように、リレーレンズまたは他のリレー光デバイスを含んでよい。さらに、光学機器は、撮像レンズを含んでよい。典型的には、撮像レンズは、FPAに対して固定される。しかしながら、HSIカメラは、手持ち式のデバイスで構成されるか、または、手持ち式のデバイス上に存在してよいので、撮像レンズは移動可能であってよいか、または、デバイスは、意図されない手の動きを補正する画像安定性を可能にする、他の光学技術を有してよい。他の光学要素は、光学機器に含まれるか、または、色補正デバイスなどのシステムにおける他の場所に含まれてよい。光学機器は、プロセッサ28の制御下にあってよい。
【0025】
代替的に、プロセッサは、FPAから出力信号を受信して、出力信号に画像安定化を行ってよい。出力信号は、典型的には、液晶可変リターダの特定の遅延特性状態で取得された各フレームを伴って、FPAにより検出される画像データのフレームを表す。プロセッサは、FPAから、各々がFPAで検出された画像データのフレームを表す、少なくとも2つの出力信号を受信してよい。理想的には、シーンまたはシーンの中の物体と、FPAとの間に、単一のHSIデータセットに対応する出力信号の取得中、相対的な動きはない。しかしながら、相対的な動きがない事例は常に現実的であるわけではないので、プロセッサは、画像分析を行って、画像または画像の中の物体の範囲の登録を判定および適用して、そのような動きを補正してよい。この補正により、後述されるように、システムが不安定な間に撮影された画像の撮像アーチファクト、移動する物体の画像、および、ビームのウォークオフ現象により生じる相対的なシーンの動きに至るまで、除去または軽減することが可能である。
【0026】
撮像光学機器22を通過した後、光は、入力偏光子40、液晶可変リターダ42、選択的な補正層43、選択的な波長板45、および、出力偏光子または分析器44を介して伝達される。その後、光はFPA24に達する。光は、光検出器47へ第2の経路を通ってよい。一部の実施形態において、結果として生じる検出信号は、遅延特性検出器27により抽出され、プロセッサ28および遅延特性コントローラ50へ送信される。遅延特性抽出器は、液晶可変リターダの遅延特性を、光検出器47またはFPA24、または、その両方により生成される信号から、抽出し得る。これは、別個の電子回路またはプロセッサから構成されるか、または、カメラプロセッサ28内に存在する機能であり得る。検出信号は、一般的に、プロセッサ28へFPA24から直接的に送信されるため、存在する場合、要求しているシステムまたはホストに送信される前にハイパースペクトル画像データに加工され得る。加えて、後に詳しく説明されるように、液晶可変リターダは、温度計30などの温度センサを含んでよい。そのような温度計は、サーミスタを電極内にパターニングすることにより、LC可変リターダのLCセル内に組み込まれ得る。さらに、これは、コンポーネントが熱的に接続されることを意味する、LC可変リターダと熱的接触しているサーミスタまたは同様の電子コンポーネントであってよく、または、1つ以上のLCセルのおおよその温度を感知するサーミスタまたは同様の電子コンポーネントであってよい。HSIデータは、カメラにより複数回にわたり、遅延特性コントローラの制御下で液晶可変リターダにより提供される複数の遅延特性で撮影された、複数の画像を処理することにより、取得される。
【0027】
上述されるように、HSI撮像装置の選択的な要素は、波長板45、および43などの遅延特性または位相補正層または補正器で構成されてよい。波長板により、変更コンポーネント間の位相変動が可能となり、光の偏光の変化が許容される。遅延特性または位相補正層は、画像の各地点で静的経路遅延を適用し、電圧波形を液晶可変リターダに印加することにより通常はサンプリングされる、インターフェログラムの異なる部分のサンプリングを可能とする。そのような補正層の1つの実施形態は、HSIコンポーネントが機能していない場合、液晶可変リターダとの組み合わせで正味ゼロの遅延特性を達成し、追加的に、対象の波長の任意、一部、または全ての部分で、正味ゼロの遅延特性を補正するよう設計されることが可能であろう。これにより、HSIコンポーネントがカメラの通常の非ハイパースペクトル動作に干渉されないようになる。
【0028】
別の種類の補正層は、FPAの全域にタイル状に敷かれた、異なる経路遅延の複数の領域で構成されるであろう。例示的な補正層は、一方が経路遅延0であり、他方が経路遅延Dである、2つの領域で構成される。LC可変リターダが0〜Dの経路遅延を生成し得る場合、経路遅延0の補正層の領域に対応する画像の領域は、経路遅延が0〜Dのインターフェログラムをもたらし、一方で他の領域は、経路遅延がD〜2Dのインターフェログラムをもたらす。特別なレンズが使用され、補正層領域あたり1つの画像を伴って、シーンの重複画像がもたらされた場合、経路遅延が0〜2Dのこのシーンのインターフェログラムは、異なる経路遅延範囲で取得された2つの画像の複製を一緒に合わせることにより、ソフトウェアにおいて形成される可能性がある。これにより、0〜Dの経路遅延を伴って、インターフェログラムのスペクトル分解能が2倍のハイパースペクトル画像データが提供されるが、これは半分の時間で測定され得る。しかしながら、画像は、1次元において空間分解能の半分を有するであろう。一般的に、そのような遅延特性補正層は、空間およびスペクトル分解能および撮像速度を犠牲にする手段を提示する。
【0029】
特定の遅延特性が長期間にわたり取得される場合、例えば、従来の非ハイパースペクトル撮像に対して0の遅延特性を保持する場合、可変リターダの遅延特性は所望の値に設定され、経時的にその値で維持され得る。別の手順において、効果的な遅延特性は、経時的な平均遅延特性が所望のものであるよう遅延特性を継続的に変化させることにより、経時的に達成され得る。
【0030】
HSIコンポーネントは、多くの異なる構成を有してよい。図4は、1つの例を示す。図4に示される実施形態において、光32および34の2つの非偏光平行単色ビームが記載されており、上部のビームは下部のビームの波長λより短い波長λを有する。光路は入射光を偏光する入力偏光子40を有する。液晶可変リターダ42は、入力偏光子に対して45度の配列配向を有する。
【0031】
図5に示されるように、液晶可変リターダ42へ印加される各電圧は、特有の複屈折または光位相遅延を、液晶可変リターダの遅軸と垂直なコンポーネントに対する、液晶可変リターダの遅軸と平行な偏光コンポーネントの間で測定されるものとして、もたらす。図5における構想は、液晶可変リターダの平衡位相遅延を電圧の関数として示しており、即ち、液晶がその電圧で完全に緩和することを許容した後に、所与の電圧で取得される位相遅延である。液晶可変リターダは、時間依存の電圧波形を、その構成要素であるLCセルの1つ以上の電極へ印加する、コントローラを有する。この電圧波形は、光位相遅延を、名目上は一定の速度で所与の波長の時間にわたり変化させるよう、選択され得る。または、リターダを、特定の時間に特定の遅延特性にするよう、選択され得る。出力偏光子または分析器44は、液晶可変リターダにより導かれる偏光の変動を、光明度の変動に変換する。1つ以上の偏光子は、ワイヤグリッド偏光子で構成されてよい。
【0032】
結果として生じる明度の時間依存の変動は、図6に示される検出された明度と経路遅延との対比、および、図7に示される検出された明度と波長との対比を伴って、24などの焦点面配列により得られる。図6の上側の曲線は、図4における検出された短い波長光線32の明度変動に対応し、一方で図6の下側の曲線は、検出された長い波長光線34の明度変動に対応する。同様に、図7におけるピーク46は、短い波長光線32に対応し、一方でピーク48は長い波長光線34に対応する。
【0033】
一部の実施形態では、低い液晶駆動電圧および/または速い液晶応答時間を維持しながら、2つの偏光コンポーネント間の高い光路遅延を介して遅延特性を達成する。フーリエ変換分光法の技術分野において既知なように、高い光路遅延は高いスペクトル分解能をもたらすため、有益である。しかしながら、高い光路遅延は、一般的に、液晶の総合的な厚さが大きくなることを意味する。駆動電圧および応答時間を低く保つために、図8に示されるように、単一の厚い液晶セルは、順次複数のセルに分割され得る。
【0034】
所与の電圧規模での個々のセルの液晶応答時間は、セルの厚さの2乗となるため、1つが単一のセルで構成され、1つが2つのセルに分離された、同一の経路遅延を伴う2つの液晶可変リターダは、4倍の差の切り替え時間を有することになる。反対に、切り替え時間が一定に保たれる場合、2つのセルは、切り替え電圧において4倍の差があるだろう。図8の実施形態の液晶可変リターダは、52のような、4つのLCセルのスタックで構成される。セルのスタック54は、妥当に選択された電圧波形を伴って、液晶応答時間と共に光路遅延を管理する、遅延特性コントローラ50などの中央コントローラにより制御されてよい。当技術分野で既知なように、図8に示される実施形態などの光コンポーネントの多層スタックは、各光インタフェースで反射防止膜を妥当に選択および適用することにより、効果が上がる。
【0035】
多層液晶可変リターダの1つの層またはセルが、任意の対称性の破れの特性を有し、ここでは層がセルのサブセットまたはセル全体であり得る場合、それらの特性は、層の間で互い違いまたは反対にされるべきであり、それにより、スタックが全体として望ましい対称性の性質を保持できる。このような対称性の破れの特性は、一般的に対称性の破れの特性がテスト方向に沿う向きであるか、または、反対の向きであるかの概念を指す、極性を有すると見なされ得る。電極が電圧ソースと接続する際の極性は、このような特性の1つであり、ここで極性の概念は直接的なものである。液晶配列方向は、このような特性の別の1つであり、ここで極性の概念は、図10Aなど、LC配向部と平行な平面におけるセルの断面描写に見られるような、液晶セルの最上部の電極の摩擦方向を考慮することにより、確かなものとなり得る。摩擦方向が右側の場合、示されるように、セルは正極性を有し、一方で左側への摩擦方向を伴うミラー画像セルは、負極性を有すると言える。
【0036】
従来の反平行セルでは、全ての液晶分子は、電極の摩擦方向に対応する、同じ方向へ配向される傾向がある。そのような構成は、入射角が法線から外れる際、入射角に光路遅延の一次依存を有する。2つの反平行セルが反対の極性でスタックされ、配列方向が互いに反対の場合、入射角の光路遅延の一次依存は等しく反対のため、互いに打ち消しあう。したがって、液晶セルのスタックにおける対称性の破れの特性の極性配列に注意を払うことにより、他の有利な動作の特徴と共に、二次以降の光路遅延の入射角依存を維持することが可能である。
【0037】
ハイパースペクトル動画など、複数のハイパースペクトル画像を連続して取ることが要求される用途の場合、LC可変リターダの応答時間を短くすることが、ますます重要になる。典型的には、LC可変リターダのセルが切り替えられ、その後、受動的に緩和されることが許容される。1つの実施形態において、LCセルは、最大の光位相遅延を伴う構成と最小の光位相遅延を伴う構成との間で、積極的に切り替えられる。この積極的な切り替えは、多くの手法において行われてよい。1つの実施形態において、LC材料を従来通りに取り囲む、対の電極の各々の電極は、対の櫛形電極と置換されている。
【0038】
図9は、従来の構成において1つの平坦電極を置換する、パネル60上の櫛形電極62および64の1つのセットを示す。この実施形態において、パネル60は、液晶材料を取り囲んで液晶セルを形成し、その上に電極層が存在する、光学的に透明な基板を指す。したがって、このパネルは、LC材料の他方の側で再現されることになる。1つの実施形態において、LC材料を取り囲むパネルは、一方が電界を基板に対して主に垂直配向との間で切り替え、別の対が電界を主に平行配向へ切り替えることを許容する、電極のセットを含むことになる。電極の各々のセットへの電圧の正しい印加により、LC分子は、垂直配向と平行配向との間で、または、より一般的には、最小の光位相遅延を提供する配向と最大の光位相遅延を提供する配向との間で、制御可能に時間内に回転し得る。これらの実施形態は、動作オンおよび動作オフの実施形態と称されてよく、ここでLC材料は、材料を「オン」状態に切り替えた後、LC材料が緩和されることを消極的に許容するのではなく、状態間の切り替えが積極的に行われる。
【0039】
応答時間の別の態様は、LC材料自体の選択である。LC材料を選択する際、光複屈折、誘電異方性、および回転粘度など、複数の要因のバランスを取らなければならない。高い光複屈折を伴うLC材料は、結果的に、応答時間および/または駆動電圧が低下する利点を伴って、典型的には、そのような高い複屈折材料の増大した回転粘度により部分的に相殺される、厚いLCセルと同じ光遅延特性を達成する、薄いLCセルをもたらす。
【0040】
高い誘電異方性を伴うLC材料は、低い誘電異方性材料と同じではあるが、低い駆動電圧からの応答をもたらすであろう。低い回転粘度を伴うLC材料は、高い回転粘度を伴う材料より速い応答速度を有するであろう。後により詳細に説明するように、屈折率および回転粘度の光分散および温度依存性など、材料依存の特性は、システム性能のために較正され得るが、LC材料は較正後のシステム性能を最適化するよう選択されてよい。別の実施形態において、LC材料および/またはLCセル調整は、LC切り替え時間を減少させるので、LCに大きな「プレチルト」角を与えるために使用されてよい。
【0041】
速い応答時間に加えて、高い視野角が、ハイパースペクトル撮像コンポーネントの有用性を高める。ハイパースペクトル撮像システムは既に存在しているが、その多くは、適用される光フィルタの角度依存の特性により、視野角が制限されている。本明細書において使用される「視野角」は、LC可変リターダの法線からの入射光角度のずれに対する、所与の波長および所与の液晶可変リターダの状態における、光位相遅延の変動しないレベルを指す。
【0042】
典型的には、液晶ディスプレイ(LCD)は、光を透過する状態と光が目立たない状態との間を交換し得る、交差偏光子間で切り替え可能な半波長板として設計される。本明細書において使用される「視野角」という用語は、オン状態とオフ状態との間に、特定のコントラスト比に至る角度を指す、典型的なLCDに適用されるような従来の使用とは異なる。本明細書における実施形態において、LC可変リターダは、高次元波長プレートとして機能してよい。画像の単一の地点は、ゼロでない開口数(NA)を有する円錐の光線で形成されるので、各円錐の光線は、異なる入射角でLC可変リターダを介して移動する。単一の画像画素を形成する円錐の光線の内部で、最大の位相遅延を伴う光線と最小の位相遅延を伴う光線との間の所与の波長での光位相遅延における差異を考慮する。これらの2つの光線の位相遅延におけるこの差異が、πラジアンに接近するにつれて、この画像画素で記録されるインターフェログラムのコントラストは減少する。
【0043】
高い総合的な光位相遅延は、所与の波長で高いスペクトル分解能を達成する必要があるが、単一の画像画素に対応する光線の入射光角度にわたる光位相遅延の平均的な変動は、πラジアンを大きく下回らなければならない。光位相遅延における角度の関数としての変動は総合的な光位相遅延に比例するので、高いスペクトル分解能の撮像は、角度の関数として最小の位相遅延変動を伴う、高い総合的な光位相遅延の上述した2つの相反する要件を組み合わせるため、困難である。したがって、高いスペクトル分解能のHSIデータを良好に取得するために、画像画素を形成する光線に対応する角度の範囲を減少させるよう、撮像NAを減少させなければならないか、または、液晶可変リターダの視野角が増大しなければならないか、いずれかである。撮像NAを減少させることで、システムの光処理量が低下するので、高い光処理量を維持しながら、高いスペクトル分解能を伴って撮像するために、視野角を増大させる技術を開発することが、重要である。
【0044】
広範な視野角を達成するLCセルの1つの特定の実施形態は、パイセルまたは光学的に補正されるベンド(OCB)セルとして知られる、平行な摩擦層を使用する。液晶セル内部の2つの配列層は、図10Aに70で示されるような反平行方向に対して、図10Bに72で示されるような平行方向に擦られてよい。これにより、セルの上半分は、セルの下半分と上半分との間の途中で、ミラーリング平面に対する下半分のミラー画像のように作用し、既に述べたように、配列方向が反対の2つの反平行セルをスタックするのと類似した対称性の利点を受ける。図11に示されるように、セルを介して異なる角度で進む光線は、正常な極性化と異常な極性化との間に、入射角における一次の同じ光路差異がある。この入射角に対する一次変動が生じるのは、光路差異における一次変動が、セルの上半分と下半分で反対のサインを有するため、互いに打ち消しあうからである。
【0045】
別の実施形態でダブルネマチックセルは、図8を参照して先ほど記載したように、一方が他方に対して180度回転しているLC配列方向を伴う、図10Aの70のような、2つの従来の反平行セルをスタックすることに関与する。これは、上半分および下半分が互いの上面にスタックされる別個のセルに収容されることを除いて、パイセルと類似して動作し、それにより、駆動電圧の低下および/または応答の高速化の利点を提供する。他の実施形態は、複数のダブルネマチックセルのスタック、単一または複数ドメインの垂直配列(VA)LCセル、および、面内切り替え(IPS)LCセルを含んでよい。配列方向が互いに対して90度である、2つのダブルネマチックセルをスタックすることで、正および負の遅延特性を達成することができ、さらに、高い視野角を有する、液晶可変リターダが提供されるであろう。
【0046】
光線が複屈折媒体を介して移動する場合、波動ベクトルおよびポインティングベクトルが平行ではない「ビームウォークオフ」と称される影響にさらされ得る。反対の対称性を伴う2つの層の実施形態は、第1のウォークオフが第2のウォークオフにより修正されるため、その改善策を提供する。一般的に、ウォークオフが2つのセルまたは反対の対称性の性質を伴う2つの半分のセルの間で取り消される、LCセルの対称性保護配列は、このウォークオフを修正し得る。IPS LCセルは、波動ベクトルがLC配向部と垂直または平行である場合、ビームウォークオフが最小になるので、ウォークオフの問題を有さない。ウォークオフが修正されない場合、画像はLC可変リターダの遅延特性の関数としてドリフトする可能性があり、フーリエ変換が取得されると、画像内で端部にアーチファクトを作成する。しかしながら、このウォークオフの修正は、画像登録技術により、アルゴリズム的にまだ可能であるかもしれず、液晶の分散効果を放置する。
【0047】
HSIコンポーネントの構造の異なる実施形態を実際に示してきたが、ここで説明は、その較正と共に、追加的な要素およびHSIコンポーネントを運用する方法に移る。
【0048】
図12は、HSIシステムを運用するフローチャートの実施形態を示しており、図3のシステム図と連動していると考えれば、さらに理解が深まるかもしれない。80で、図3におけるプロセッサ28は、ハイパースペクトル画像データの必要な特性を記載するか、または、ユーザまたは独立型のHSIカメラで起動するアプリケーションにより設定される、ホストデバイス上で起動するアプリケーションにより特定される、HSIパラメータを受信する。HSIパラメータは、例えば、所与のスペクトル分解能を伴う特定のハイパースペクトル画像データが、所与の時間に取得されることを必要としてよい。または、先験的に既知の特定のスペクトル特性を区別可能である、ハイパースペクトル画像データの最小セットを必要とし得る。82で、プロセッサ28は、遅延特性Γ,Γ〜Γおよび時間がt<t<〜tで、取得されるべき多数の画像Nを判定する。クロック25は、画像取得時間、FPA取得時間、FPA起動時間、遅延特性コントローラにより制御される遅延特性の変化など、ハイパースペクトル撮像プロセスにおけるイベントを同期化してよい。プロセッサ28は、連続する遅延特性を特定の時間に遅延特性コントローラへ送信する。遅延特性コントローラは、所望の遅延特性を所望の時間に取得し、連続する電圧を連続する時間にもたらす。電圧時間は、数または値のいずれかにおいて、遅延特性時間と異なってよい。電圧は、液晶可変リターダに、遅延特性を、第1の時間での第1の遅延特性から第2の時間での第2の遅延特性へなど、切り替えさせる。ほとんどの事例において、同じ時間特性であるが、異なる時間間隔内での切り替えは、異なる電圧系列を必要とする。
【0049】
上記で使用される電圧という用語は、ベクトルの各要素が、系統接地など、基準電圧への応答を伴う1つの特定の電極電位に対応する、ベクトルを指す。一部の実施形態において、そのようなベクトルは、各電極へ印加される位相、振幅、および周波数により特徴づけられるAC電圧のベクトルであり得る。異なる周波数を使用することにより、遅延特性コントローラは、周波数依存の誘電異方性など、一部の液晶の不均一な周波数依存性を利用し得る。さらに、カメラプロセッサは、遅延特性時系列の時間で焦点面アレイ24を起動し、84で焦点面アレイ検出器24をサンプリングし、プロセッサにより命令される遅延特性で連続する画像をもたらし得る。
【0050】
遅延特性抽出器27は、FPA24からの連続する画像、FPAからの連続する部分画像、FPAからの選択された画素値、FPAからの単一の画素値のいずれかの情報から、または、光検出器47または他の光センサからの信号から、各時点での実際の遅延特性を抽出し得る。遅延特性の抽出は、ミツオ・タケダ、ヒデキ・イナ、およびセイジ・コバヤシによる、「Fourier−transform method of fringe−pattern analysis for computer−based topography and interferometry(コンピュータベースのトポグラフィおよび干渉分光法のためのフリンジパターン分析のフーリエ変換方法)」(J.Opt.Soc.Am.72,156−160(1982))に記載される方法にしたがって行われてよく、記録されたインターフェログラムにおける各地点で位相遅延を抽出し得る。その後、システムは、プロセッサ28が処理して、86でHSIデータをもたらし、ホストデバイスまたはカメラ上の要求中のアプリケーションへ送信する、連続する画像を既知の時間特性として有する。代替的に、遅延特性コントローラが十分に高い正確性を有する場合、遅延特性抽出器は必要ない。これは、各画像の取得が遅延特性コントローラのタイミングと同期化されており、系列内での各画像の遅延特性は、カメラプロセッサ28により命令されるものと非常に近いからである。
【0051】
一部の液晶材料は、特定の駆動周波数で誘電異方性のサインの変化に遭遇する。この周波数に満たないで材料を駆動すると、分子は駆動電界と平行または垂直に配列され、この周波数を超えて駆動すると、分子は、低い周波数の配列に対して90度で配列される。この特性は、駆動周波数の選択を伴って2つの配向間で液晶材料を切り替えることにより、実施形態の動作オンおよび動作オフに使用され得る。
【0052】
ハイパースペクトル撮像システムの多くの特徴は、較正を必要としてよい。例えば、FPAの位置の関数として算出された単色ソースの波長は、LC可変リターダのLCセルが不均一な厚さを有してよいので、均一に現れなくてよく、さらに、各画素位置での主光線の角度に、算出された波長の依存性が存在していてもよい。較正でこの情報を利用することにより、レーザなどの単色ソースの処理されたHSIデータセットが、全ての画像画素において同じ波長でスペクトルピークを示すようになる。例えば、レーザソースは532ナノメートルの波長を有してよい。レーザソースからHSIコンポーネントを介してFPAへ光を向かわせ、その後、光のHSIデータをレーザソースから取得することにより、FPAの特定地点でピーク波長を判定することで、540ナノメートルで検出されるピークが生じる可能性がある。アプリケーションソフトウェアは、このオフセットを調整するようプログラムされ得る。位置の関数としてのこのオフセットの滑らかに変化する性質により、較正プロセスは、画像平面の数地点またはビン化された画素の範囲で行われた後、画像平面全体にわたって内挿されてよく、または、全ての画素で個別に行われ得る。
【0053】
加えて、回転粘度および他の材料パラメータと共に、LC材料の反射/分散の指標は、温度の関数として変化してよく、切り替えプロセスに固有のヒステリシスがあってよい。したがって、遅延特性コントローラは、時間だけでなく撮像速度および動作温度などの関数として、正しい電圧をLC可変リターダ内でLCセルの電極へ提供するよう、較正および最適化されるべきである。この遅延特性コントローラの較正またはスペクトルオフセットの上記の較正は、蛍光灯バルブまたは複数の既知のスペクトル線を有する他の光源に、HSIコンポーネントを向けることにより、支援されてよい。これは、光分散があり、複数のスペクトルピークが分散を見積もるために必要である場合、特に有用であろう。
【0054】
図1に戻って参照すると、撮像される対象物を照らすために開口部から離れて向けられている光源14が存在することが分かり得る。図3を参照すると、この実施形態においてレーザダイオード20の形態である、HSI光路へのセンサまたは要素の内部を照らすことが可能な第2の光源が確認できる。代替的に、レーザダイオード20は、発光ダイオード、高輝度発光ダイオード、フィルタ処理したブロードバンド光源、または、既知のスペクトル特徴を有する任意の他の光源であってもよい。光源は、単にシーンの一般的な照明を提供してもよい。単色の外部に対面するソースは、撮像ラマン分光法などに対する、分光ソースとして有用である可能性がある。光源は、暗視用の赤外線LED、または、典型的な白色LEDより平坦なスペクトル出力を伴う真の「白色光」源を形成するために組み合わされる、特定のスペクトル出力を伴う1つ以上のLEDなど、照明として使用される広帯域の外部または内部に対面するソースで構成されてよい。
【0055】
較正プロセスにおいて、デバイスの一部として含まれる光源は、較正光源として使用されてよい。ソースは、これらの特徴に基づくハイパースペクトルシステムの様々な性能の特徴を調整できる、既知のスペクトル特徴を知っているべきであり、これにより、各画像画素で算出されたスペクトルは、較正されたソースの既知のスペクトルを、可能な限り高いスペクトル分解能で正確に反射する。
【0056】
遅延特性コントローラは、理論的には、LC可変リターダの現状を知ることができる。例えば、LC可変リターダは、電源投入時または動作中の任意の時点で、所与の状態に初期化され得る。LC可変リターダを初期化するための1つの考えられる方法は、最小または最大の遅延特性状態において、素早く平衡化するのに十分に高い電圧で駆動することである。遅延特性コントローラが、特定の時間での遅延特性などの入力から、電圧と時間との対比などの出力へ進むために、遅延特性コントローラは、ルックアップテーブル、物理モデル、発見的アルゴリズムなどを対照として使用し得る。さらに、液晶可変リターダの開始遅延特性を考慮し得る。
【0057】
遅延特性コントローラの重要な態様は、記載する時系列が、遅延特性が達成されるべき時に異なっていても、所与の遅延特性系列に対して正しい電圧系列をもたらす能力である。したがって、遅延特性コントローラの出力は、単に遅延特性系列だけでなく、遅延特性系列と時系列の両方に対して、関数依存性を有さなければならない。一般的に、時系列は順序付けられているが、遅延特性系列はそうでないことに、留意されたい。隣接する遅延特性系列要素間の時間間隔が液晶可変リターダの緩和時間より長い場合、システムは断熱的に駆動されると考えられ、電圧系列は、相対的に入力時系列と無関係であるべきである。しかしながら、隣接する遅延特性系列要素間の時間間隔が液晶可変リターダの緩和時間より短い場合、必要な電圧系列は時系列に大きく依存するため、システムは動的に駆動されると考えられる。言い換えれば、遅延特性コントローラは、動的な遅延特性コントローラである。
【0058】
図13は、較正方法の1つの実施形態を示す。90で、HSIシステムは光源に照らされる。光源は内部に対面する単色の光源であってよく、最初に外観に反射するのではなく、直接的にハイパースペクトルコンポーネントを通過する光線を生じさせる。光源はHSIシステムでサンプリングされ、システムの性能特徴を較正するために使用される。これにより、例えば、遅延特性コントローラの較正、または、光LC駆動波形の判定が可能になる可能性がある。そのような較正は、出荷時設定において行われ得る。
【0059】
さらに、較正は、図14のように、通常使用中に更新され、例えば、LC可変リターダの経年劣化を補正し得る。100で、光はLC可変リターダで受信され、遅延特性コントローラ50により判定された一連の電圧は、102でLC可変リターダを駆動するために使用されてよい。この一連の電圧はLC可変リターダを駆動し、一方で図3のレーザダイオード20から、または、近くにある蛍光灯からなど、較正ソースからの光を含む、受信された光100のハイパースペクトル画像データ104が得られる。較正ソースのスペクトル特性が既知であることを考慮すると、LC可変リターダの時間依存の光遅延特性を算出(即ち、較正遅延特性を測定)し、電圧波形と同期させるために遅延特性コントローラにより使用された、所望の遅延特性と比較することが可能である。その後、遅延特性コントローラは、106で、所望の遅延特性と実際の遅延特性との間の不一致に基づいて更新され、より正確に遅延特性を時間の関数として制御する電圧波形を生成し得る。例えば、測定される中心波長は、遅延特性コントローラと、遅延特性コントローラが生成する時間依存の駆動電圧波形の正式な調整の後、よりよいスペクトル分解能も伴って、100で受信される光の既知の中心波長とより緊密に近似され得る。別の選択肢は、線形軌道に続いて、遅延特性と時間の特徴との対比を有する。性能特徴、較正情報、および、較正に使用される光の特性の一部または全ては、例えば、プロセッサ28のメモリに組み込まれる、ルックアップテーブルに保存され、比較および調整が可能であり得る。
【0060】
HSIシステムは、システム自体の較正データを生成するのではなく、他のソースからの較正データを使用してよいことに留意すべきである。上記の自己較正プロセスにおいて生成される構成データがHSIシステムのメモリに保存されてよい一方で、メモリは、さらに、他のソースなどから入手可能な、システムへ提供される較正データを保存してよい。システムが上記に記載されるプロセスを行う場合にのみ、較正データが利用可能であると意図する限定はなく、推定されるべきでない。
【0061】
一部の実施形態において、画素のビン化を行うことが有利であってよく、それにより、FPAの範囲内の隣接する画素で記録される明度値は、直接的にFPAで統合されるか、または、後にソフトウェアに統合される。画素が読み込まれる前にFPAで一緒にビン化される場合、一般的に、FPAのフレーム率を向上させることが可能である。これにより、FPAと、カメラプロセッサ28など、FPAからのデータを記録するデバイスとの間で、固定の最大通信速度が推定される。したがって、ビン化される画素の数を変化させることにより、空間分解能と撮像速度との間のトレードオフが可能となり、さらに、撮像速度とスペクトル分解能との間のトレードオフもあるため、画素のビン化は、スペクトルおよび空間分解能と撮像速度との間のトレードオフを行う、さらに別の方法である。加えて、画素のビン化は、特に信号が弱く最小の空間分解能が必要とされる場合、画像の雑音比に対する信号を増大させるのに重要である可能性がある。極限状態では、全ての画素が一緒にビン化され、実施形態は非撮像フーリエ分光計として機能する。
【0062】
画素のビン化は、液晶可変リターダの所与の波長および状態での光位相遅延の位置依存の変動など、FPAの様々な滑らかに変化する位置依存量の較正に特に有用であってよい。信頼できる較正情報を得るために、高い信号対雑音比を達成する必要がある可能性がある一方で、較正を必要とする量は滑らかに変化する性質であるため、それほど多くの空間分解能が必要となるわけではない。HSIシステムの視野全体にわたる較正情報は、測定結果から内挿され得る。
【0063】
遅延特性コントローラは、異なる時系列を考慮する能力に加えて、異なる温度を選択的に把握する能力を有し得る。これは、温度が、複屈折に影響を与えるのと同時に、誘電異方性、回転粘度、および弾性定数など、液晶材料の動的特性に影響を与えるからである。しかしながら、液晶材料の融点が動作温度と比較して十分に高い場合、液晶材料は温度に影響を受けないので、これは選択的である。コントローラは製造所で完全に較正され、完全に開ループであり得る。この較正が十分に信頼できる場合、この実施形態においてはレーザダイオード20である位相基準は必要なく、遅延特性抽出器27も必要ない。しかしながら、較正が製造所で固定されていても、位相基準に、要求される画像の実際の遅延特性を知らせるのに役立つ可能性がある。
【0064】
所望の場合、遅延特性コントローラは、図14を参照して既に記載されたように、ハイパースペクトル画像データの取得の合間に自己更新し得る。これは、要求された遅延特性系列を、遅延特性抽出器27により、または、可能であればプロセッサ28により、記録されるような、実際の遅延特性系列を比較し、両者間の相違に基づいて遅延特性コントローラを更新することにより、行う。要求された遅延特性系列と実際の遅延特性系列からエラー信号を生成し、エラー信号を利用して液晶可変リターダを閉ループの手法でリアルタイムに駆動することさえ可能であり、それにより、エラー信号は、開ループの遅延特性コントローラにより算出された電圧に対する修正を計算するために使用される。図15は、そのようなプロセスの例を示す。
【0065】
110で、図3の遅延特性コントローラ50は、所与の遅延特性Γを時間tに設定する。その後、112で、シーン画像Sが焦点面アレイにより取得される。その後、114で、遅延特性抽出器は、以前のフレームの遅延特性Γ’を抽出する。その後、目的の遅延特性Γと実際の遅延特性Γ’の間の差異を見つけることにより、116で、遅延特性エラーを算出し、118で、エラー信号を別個のコントローラ入力として適用する。その後、119で、システムは繰り返し適用され、必要なだけプロセスを繰り返す。したがって、システムは、遅延特性コントローラへの直接的なフィードバックを伴い、閉ループの手法で動作する。
【0066】
他の修正および実施形態が可能である。撮像時間を削減するために、例えば、システムは、HSIコンポーネントの前にバイエルフィルタなどの光帯域通過フィルタを含み、FPAに達する光を既知のスペクトル帯域に制限することが可能であってよく、エイリアシングのないインターフェログラムのサブサンプリングが許容されてよい。各画像画素で記録された信号をフィルタリングした、電子デジタルまたはアナログ帯域通過フィルタは、同じ効果を達成する。さらに、光フィルタは、シャープカットオフを有するフィルタのシャープカットオフ近くで起こるスペクトル特性を撮像している場合、スペクトル分解能を向上させてよい。本明細書において使用される場合、シャープカットオフまたは通過帯域と阻止帯域との間の遷移は、フィルタが存在しない場合、単色光源から取得されるスペクトルピークの反値全幅よりシャープである。そのようなフィルタは、スペクトルピークがフィルタカットオフの下または上のいずれで起こったかの情報をもたらす。
【0067】
さらに、異なる種類の光フィルムなど、他の種類の光フィルタまたは光コンポーネントが、特定の実施形態において適用されてよい。例えば、フィルムなどの遅延特性補正デバイスが、LC可変リターダの「オン」または「オフ」状態において特定の遅延特性を達成するために使用されてよい。さらに、フィルタまたはフィルムは、色補正を提供して、液晶の分散効果を修正してよい。または、標準の反射防止膜が、LC可変リターダのLCセルの上または中に使用されてよい。
【0068】
LC電極は、グラフェン、インジウムスズ酸化物、または、高い導電性および高い光透過性を有する他の材料で構成されてよい。特に本発明の多層の実施形態を考慮すると、電極から反射または吸収される光は最小化されなければならず、したがって、電極層において高い光透過性を維持することが有利である。
【0069】
上述された実施形態の多くは、従来のカメラと同じシステムにHSIコンポーネントが存在することを前提としており、従来のカメラが無理なく動作できるよう、ゼロ遅延特性モードを有するHSIコンポーネントを伴う。しかしながら、FPAの最終的な焦点面にも、その近くにもないが、代わりに、FPAの焦点面の接合において、1つ以上のリレー光学機器のセットによりFPAの焦点面と連結される、HSIコンポーネントを有することが望ましい場合がある。これにより、アドオンモジュールは、既存の携帯電話またはカメラで使用され、したがって、アドオンは、例えば、既存の携帯電話またはカメラを制御するか、または、既存の携帯電話またはカメラにより制御される、ハイパースペクトルコンポーネントであり、個々の画像フレームの取得を伴う液晶可変リターダの駆動を同期化する。
【0070】
代替的に、デバイスを入射光に対して透過させることに加えて、さらに、偏光子を入射光に対して完全に透過させることが望ましい場合がある。この実施形態において、カメラが通常の非ハイパースペクトルカメラとして動作する場合、システムは、偏光子に起因する光を消失しない。1つの実施形態において、システムは、少なくとも2つの状態間を切り替え得る、切り替え可能偏光子を適用する。一方の状態は、名目上、光の1つの偏光のみを伝達し、直交する偏光を吸収、反射、または遮断する。他方の状態は、両方の偏光を伝達する。そのような偏光子は、H.RenおよびS.T.Wuによる、「Anisotropic Liquid Crystal Gels for Switchable Polarizers and Displays(切り替え可能偏光子およびディスプレイのための異方性液晶ゲル)」(Appl.Phys.Lett.81,1432−1434(2002))に提示される、異方性液晶ゲルを使用して、作り出され得る。さらに、これらの偏光子は、低い動作電圧、高いコントラスト比、広い帯域幅、広い視野角、および速い応答時間といった、所望の特性を有する。
【0071】
液晶可変リターダの1つ以上の液晶セルに適用される別の修正点は、これらのセルの平坦性に関与する。図3の焦点面アレイ24または光センサ47へ向かう光が通過する、液晶可変リターダの一部分である、開口部全体の液晶可変リターダの状態の制御は、液晶セルが均一に厚い場合、より容易になる。所与の地点での応答時間は、温度、駆動電圧、および他のセル特性と同様に、分離不可能なセルの厚さの関数である。したがって、セルへ適用される所与の電圧波形は、厚さが異なるセルの地点で異なる応答を引き起こす。さらに、これらの応答の差異は、温度の関数として変化する。これにより、遅延特性コントローラの較正は、特に遅延特性が開口部全体ではなく、液晶可変リターダの開口部における1つの地点でのみ測定される場合、非常に困難になる。
【0072】
開口部にスペーサを含むことで、LCセルを均一な厚さにするための1つの手法が提供される。しかしながら、スペーサにより液晶材料が移動するため、液晶可変リターダの遅延特性変動が、スペーサが存在する場所で変化する。これは、結果として、ハイパースペクトル画像データにアーチファクトとして現れる。しかしながら、これらのアーチファクトの深刻な影響を軽減する選択肢が存在する。
【0073】
1つの実施形態において、スペーサは高いアスペクト比を有し、それにより、撮像システムの光軸に沿うようにスペーサが生じさせる、塞がれた地点のサイズまたは直径は、スペーサの高さと比較して小さくなる。これにより、低いアスペクト比のスペーサと比較して、画像における分裂を最小に留める。
【0074】
別の実施形態において、液晶セル(単数または複数)または液晶可変リターダは、HSIカメラ内で撮像光学機器の焦点面から離れるよう移動し得る。実際に、液晶可変リターダの液晶セルは、HSIシステムの入力偏光子と出力偏光子との間にある限り、撮像光学機器に対して任意の位置に独立して置かれ得る。液晶セルは、互いに隣接してよく、または、離れてもよい。1つまたは複数が、撮像光学機器の焦点面、接合焦点面、フーリエ面、撮像光学機器と撮像されるシーンとの間、撮像光学機器とFPAとの間など、にあり得る。セルが十分に均一な平坦性を有する限り、画像内に所与の地点を作り出す光線は、液晶セルの異なる地点を横断し得る。これらの地点の全てが所与のセル内で同じ厚さを有するので、これらの光線の全てが同じ遅延特性を経験する。セルを焦点面から離すことで、セルの開口部内で任意のスペーサに起因する塞がれた地点が不鮮明になる。図16は、この例を示す。これらを利用する計算写真学の分野の原理など、一部の実施形態において、さらに、FPA24が撮像光学機器の焦点面から離れて存在してよいことに、留意されたい。焦点面アレイが撮像光学機器の焦点面に存在しない場合、上述したようにスペーサに起因する地点を不鮮明にするために、液晶セルはFPAの焦点面に存在するべきでない。
【0075】
図16において、液晶可変リターダの1つ以上の液晶セルを代表し得る、液晶セル120は、2つのパネル間に挟まれた液晶材料124を有し、さらに122のようなスペーサも有する。ここで、セル120は、撮像光学機器の焦点面から離れて存在し、ここに焦点面アレイ24があってよい。光は撮像光学機器22を通過し、全ての光線は、焦点面アレイ24に達する前に、同じ厚さのセル120を経験する。スペーサ122が光を塞ぐ可能性があるエリアは、領域126全体にわたり不鮮明にされる。例えば、1ミクロンの直径を伴うスペーサが10ミクロンごとに正方格子上に置かれる場合、スペーサは、エリア内における液晶セルの開口部の1%ほどを塞ぐであろう。LC可変リターダセルが、直接的にFPAまたは撮像光学機器の焦点面にある場合、スペーサは、可視アーチファクトを作成し得る。セルを焦点面から離すことで、ハイパースペクトル画像データの空間広がり全体に、これらのアーチファクトの影響が広がり、したがって、薄くなる。
【0076】
スペーサおよび焦点面アレイに関する別の選択肢は、図17に示されるように、焦点面アレイの画素間にスペーサを構築することに関与する。図17において、焦点面アレイ24の個々の画素128は、焦点面アレイの上部に構築される、液晶セルの122などのスペーサ間に置かれる。図16および図17は、単にハイパースペクトル撮像システムの一部分であり、電極、LC材料、波長板、偏光子など、既に述べた他の要素が、これらの部分を使用する完全なハイパースペクトル撮像システムに含まれ得ることに、留意するべきである。
【0077】
別の実施形態は、均一な厚さを有するが、平坦でないLCセルの使用に関与する。撮像システムの広視野で、所与の領域地点の中心光線は、図18に示されるように、著しい斜角でハイパースペクトルカメラに入ってよい。撮像光学機器22に入る光は、斜角で進入する。LCセル130を焦点面アレイ24の前に曲げることにより、視野における所与の地点の中心光線は、通常、領域地点を問わず液晶セル上へ入射する。
【0078】
既に述べたように、図3のレーザダイオード20により提供されるような、単色光源または較正光源を伴う焦点面アレイを照らす際に、利点がある。図19のシステムにより、画像光を塞ぐことなく画像光を取得する、同じ幾何学的経路を介する焦点面アレイの完全な照射が可能になる。これは、システムの第1の偏光子の代わりに、144などのビームスプリッタを利用する。この実施形態において、レーザダイオード20からのレーザ光学機器142を介するレーザ光は、偏光ビームスプリッタに1つのポートを介して入る垂直(V)偏光を有し、シーン140からの撮像光学機器22を介する画像光は、偏光ビームスプリッタに第2のポートを介して入る水平(H)偏光を有する。液晶セル摩擦方向は、名目上、HまたはV偏光方向のいずれかに整列される分析器を伴って、2つの偏光方向間で45度であろう。選択的に、2つの焦点面アレイ150および164を、2つの分析器または出力偏光子148および162、および、2つのLC可変リターダ146および160を介して使用することは、名目上、光処理量を100パーセント向上させる、光の他の偏光の取得を許容することになる。この2つの焦点面アレイの実施形態は、較正光源がない場合でも有利であろう。
【0079】
図19における照明理論は、遅延特性が、完全な視野全体にわたって各地点で測定されることを許容する。この情報により、上述したリアルタイムの閉ループ制御が可能となるか、または、画像の分析においてハイパースペクトル画像データを生成することができる可能性がある。この配列により、システムは、単色画像ソースからの光のフレームを伴って画像データのフレームをインターリーブし、各時点および地点で遅延特性を測定することが可能である。光源をサンプリングするために使用される露光時間は、光源の強さが大きくなると、削減され得る。図20は、そのような方法の実施形態を示す。
【0080】
図20において、システムは、170で、遅延特性を遅延特性Γで時間tiに設定する。その後、172でシーンSが取得され、画像データの1つのフレームをもたらす。その後、174で、レーザが電源オンされ、176で、レーザ光の画像がレーザ画像Lとして取得される。その後、178で、レーザは電源オフされ、179で、次の設定でプロセスが繰り返される。この手法において、システムは、遅延特性を視野の複数の地点で多くの異なる時間に取得し、システムの動作における調整、または、データの処理における調整などが可能となる。
【0081】
さらに別の修正点は、液晶可変リターダの制御に関与する。液晶材料の動的な制御は問題となり得るので、リターダを、断熱的であるが、リターダの受動的な緩和時間よりも非常に速い制御された遅延特性の変化を許容する手法で駆動することが、利点となる可能性がある。これは、電圧波形の正しい選択を介して、リターダの緩和時間または応答時間を大幅に削減することにより、行われ得る。液晶可変リターダの応答時間は、駆動電圧が十分に高い場合、非常に短くされ得る。したがって、液晶可変リターダを2つのコンポーネントの電界で駆動することが、有用である可能性がある。
【0082】
本明細書において使用される場合、2つのコンポーネント領域は、液晶材料がセルの層と垂直に配置される、第1のコンポーネントまたは垂直コンポーネント、および、液晶がセルの層と平行に配置される、第2のコンポーネントまたは平行コンポーネント、を有する。これらのコンポーネントは、例えば、図21のように、垂直および平行な電界を作成するよう電極駆動電位を組み合わせることにより、および、正の誘電異方性および負の誘電異方性を作成する駆動周波数を組み合わせることにより、生成され得る。図21における平行電界186は、電極182上に置かれる正の電圧および電極184上の負の電圧から生じてよい。垂直電界188は、下の図における電極182上に置かれる正の電圧および電極184上に置かれる負の電圧から生じてよい。その後、垂直コンポーネントは、正の誘電異方性を伴う周波数fでの垂直電界、または、負の誘電異方性を伴う周波数fでの平行電界であってよい。さらに、平行コンポーネントは、正の誘電異方性を伴う周波数fでの平行電界、または、負の誘電異方性を伴う周波数fでの垂直電界であってよい。
【0083】
平行(または、垂直)電界のみが使用される場合、第1のコンポーネントEは周波数f(f)での電界振幅であり、第2のコンポーネントEは周波数f(f)での電界振幅である。代替的に、電界に対して周波数fのみ(または、周波数fのみ)を使用し得る。この事例において、コンポーネントEは平行(または、垂直)電界であり、コンポーネントEは垂直(または、平行)電界である。液晶ダイレクタ配向190は、逆正接関数(E/E)により与えられる角度シータ(θ)を断熱的に追跡し、この角度に対する緩和時間は、τ=((E/E+E))trelaxにより与えられる。ここで、trelaxは液晶セルの受動的な(電界オフ)緩和時間であり、ECは臨界磁場応答であり、セル中心点での有限歪曲を作成する。LCダイレクタの配向変化は、緩和時間τが、液晶ダイレクタの配向変化間の任意の時間より、確実に非常に速くなることにより、任意に速くされてよい。これは、電界コンポーネントEおよびEが十分に大きくされるが、補正割合を伴うことにより達成され、所望の液晶ダイレクタ配向に到達し、したがって、液晶可変リターダの所望の遅延特性に到達する。より一般的に、2つのコンポーネント電界のうちの一方のコンポーネントは、正のトルクを印加して、液晶分子を液晶可変リターダのセル内で回転させてセルの遅延特性を向上可能であり、他方のコンポーネントは、負のトルクを印加して、遅延特性を低下させ得る。両方のコンポーネントを同時に適用することにより、液晶分子が、コンポーネントの比率により設定される角度で、コンポーネントの大きさにより判定される割合で、均衡にされる。したがって、2つのコンポーネント電界は、原理上は、液晶分子のダイレクタの任意の制御を許容し、液晶可変リターダの遅延特性の任意の制御を許容する。
【0084】
速い駆動時間に関する他の考察が、液晶材料自体の選択にある。強誘電性液晶または高分子網目液晶は、より速い応答時間を有する。高分子網目液晶材料は、高分子網目に埋め込まれている液晶材料を有する。
【0085】
上記の方法およびデバイスは、医療用撮像、仕分け、当技術分野で見出される材料の分光法など、いくつかの用途のうちの1つにより、適用されてよい。これらの各々は、スマートフォンの世界で典型的に「アプリケーション」と称される、独自のソフトウェアプログラムを有してよい。既に述べたように、HSIシステムは、顕微鏡や望遠鏡などの従来からある実験室設備と同様に、電話やタブレットなど、多くの異なる種類のホストデバイスに統合されてよい。
【0086】
このシステムにより可能となるかもしれない1つの特定の用途は、例えば、家庭医療診断テストの比色分析読出しを行う医療診断デバイスとして、HSIシステムを使用するための、ユーザの能力である。ユーザは、体の位置の1つ以上のHSIデータセットおよび/または医療診断テストストリップを取り入れ得る。結果として生じるHSIデータセットは、全体的または部分的に、システムに含まれる処理性能を使用して診断情報内で処理されることができるか、または、クラウド内で処理され得る。含まれる通信リンクを使用して、診断情報は、最終的に医者または研究所へ転送され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21