【文献】
LI, Wei et al,Quantitative susceptibility mapping of human brain reflects spatial variation in tissue composition,Neuroimage,2011年 1月,vol. 11, Issue 4,1645 - 1656頁,URL,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21224002
【文献】
LI, Wei et al,A method for estimating and removing streak artifacts in quantitative susceptibility mapping,Neuroimage,2014年12月,vol. 108,111 - 122頁,URL,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4406048
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アーチファクト成分を用いて、当該アーチファクト成分が残存する第2磁化率画像を生成する第2磁化率画像生成部を更に備える、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記アーチファクト生成部は、前記第1磁化率画像の周波数空間マスキングにより前記アーチファクト成分を生成する、請求項1〜3の何れか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記第2磁化率画像生成部は、前記第1磁化率画像から、前記アーチファクト成分を除去することで前記第2磁化率画像を生成する、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記第3磁化率画像生成部は、前記第2磁化率画像から、前記アーチファクト成分を除去することで前記第3磁化率画像を生成する、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記アーチファクト生成部は、前記第1磁化率画像の周波数空間において、スピンの相互作用が0となる角度であるマジックアングル及び当該マジックアングル周辺領域のマスキングにより前記アーチファクト成分を生成する、請求項1〜9の何れか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記第1磁化率画像の異なる周波数空間マスキングを用いて、前記アーチファクト生成部による前記アーチファクト成分の生成と、前記第2磁化率画像生成部による第2磁化率画像の生成とを反復的に繰り返す、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記第1磁化率画像の異なる周波数空間マスキングを用いて、前記アーチファクト生成部による前記アーチファクト成分の生成と、前記第3磁化率画像生成部による第3磁化率画像の生成とを反復的に繰り返す、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
被検体から発生する磁気共鳴信号に基づいて生成された画像を取得し、前記画像に含まれる複数の画素に含まれる位相成分から被検体の磁化率を示す第1磁化率画像を生成する第1磁化率画像生成部と、
前記第1磁化率画像の周波数信号からアーチファクト成分を生成するアーチファクト生成部と、
を備える、医用画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置及び医用画像処理装置を詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。例えば、
図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御回路5、送信コイル6、送信回路7、受信コイル8、受信回路9、及び、計算機システム20を備える。
【0012】
静磁場磁石1は、中空の略円筒形状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、その内側に形成される撮像空間に一様な静磁場を発生させる。なお、静磁場磁石1は、例えば、永久磁石、超伝導磁石等である。
【0013】
傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒形状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、静磁場磁石1の内側に配置される。具体的には、傾斜磁場コイル2は、互いに直交するx,y,zの各軸に対応する3つのコイルを組み合わせて構成される。これらの3つのコイルは、傾斜磁場電源3から個別に供給される電流により、互いに直交するx軸、y軸及びz軸それぞれに沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を撮像空間に発生させる。なお、z軸の方向は、静磁場の磁束の方向と同じに設定される。
【0014】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電力を供給することで、傾斜磁場コイル2に傾斜磁場を発生させる。具体的には、傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2が有する3つのコイルそれぞれに個別に電流を供給してx軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を適宜発生させることで、互いに直交するリードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を撮像空間内に発生させる。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
【0015】
これらの3つの方向は、MR信号に空間的な位置情報を付与するために用いられる。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じて磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号の周波数を変化させることで、MR信号にリードアウト方向の位置情報を付与する。また、位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、MR信号に位相エンコード方向の位置情報を付与する。また、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス傾斜磁場は、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させることで、MR信号にスライス方向に沿った位置情報を付与する。
【0016】
寝台4は、被検体Sが載置される天板4aを備え、静磁場磁石1及び傾斜磁場コイル2の内側に形成される撮像空間へ天板4aを挿入する。例えば、寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。
【0017】
寝台制御回路5は、寝台4の動作を制御する。例えば、寝台制御回路5は、寝台4が有する駆動機構を制御して、天板4aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動する。
【0018】
送信コイル6は、中空の略円筒形状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、傾斜磁場コイル2の内側に配置される。また、送信コイル6は、送信回路7から供給されるRF(Radio Frequency)パルス電流により、撮像空間にRF磁場を印加する。
【0019】
送信回路7は、ラーモア周波数に対応するRFパルス電流を送信コイル6に供給する。
【0020】
受信コイル8は、撮像空間に置かれた被検体Sに装着され、送信コイル6によって印加されるRF磁場の影響で被検体Sから放射されるMR信号を受信する。また、受信コイル8は、受信したMR信号を受信回路9へ出力する。例えば、受信コイル8には、撮像対象の部位ごとに専用のコイルが用いられる。ここでいう専用のコイルは、例えば、腹部用の受信コイル、頭部用の受信コイル、脊椎用の受信コイル等である。
【0021】
受信回路9は、受信コイル8によって受信されたMR信号に基づいてMR信号データを生成する。具体的には、受信回路9は、MR信号をデジタル変換することでMR信号データを生成し、生成したMR信号データを収集回路24へ送信する。
【0022】
なお、ここでは、送信コイル6がRF磁場を印加し、受信コイル8がMR信号を受信する場合の例を説明するが、実施形態はこれに限られない。例えば、送信コイル6が、MR信号を受信する受信機能をさらに有してもよいし、受信コイル8が、RF磁場を印加する送信機能をさらに有していてもよい。送信コイル6が受信機能を有している場合は、受信回路9は、送信コイル6によって受信されたMR信号からもMR信号データを生成する。また、受信コイル8が送信機能を有している場合は、送信回路7は、受信コイル8にもRFパルス電流を供給する。
【0023】
計算機システム20は、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、計算機システム20は、入力回路21、ディスプレイ22、シーケンス制御回路23、収集回路24、画像生成回路25、記憶回路26、システム制御回路27及び、磁化率生成回路28を備える。
【0024】
入力回路21は、操作者から各種指示及び各種情報の入力を受け付ける。例えば、入力回路21は、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル、ボタン、スイッチ等によって実現される。入力回路21は、システム制御回路27に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号に変換してシステム制御回路27へと出力する。
【0025】
ディスプレイ22は、各種情報及び各種画像を表示する。例えば、ディスプレイ22は、操作者から各種指示及び各種情報の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。また、例えば、ディスプレイ22は、画像生成回路25によって生成された画像を表示する。ディスプレイ22は、例えば、液晶モニタ、CRT(Cathode-Ray Tube)モニタ、タッチパネル等により実現される。
【0026】
シーケンス制御回路23は、各種スキャンを実行する。具体的には、シーケンス制御回路23は、システム制御回路27から送信されるシーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信回路7及び受信回路9を駆動することで、各種スキャンを実行する。ここで、シーケンス実行データは、MR信号データを収集するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。具体的には、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給される電流の強さ、送信回路7が送信コイル6にRF送信するタイミング及び送信されるRFパルス電流の強さ、受信回路9がMR信号を検出するタイミング等を定義した情報である。シーケンス制御回路23は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0027】
収集回路24は、各種スキャンが実行された結果として、受信回路9によって生成されるMR信号データを収集する。具体的には、収集回路24は、受信回路9からMR信号データを受信すると、受信したMR信号データに対してアベレージング処理、位相補正処理等の補正処理を行い、補正後のMR信号データを画像生成回路25に送信する。なお、収集回路24によって収集されるMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて各MR信号データが2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして、記憶回路26に記憶される。
【0028】
画像生成回路25は、収集回路24によって収集されたMR信号データに基づいて、画像を生成する。例えば、画像生成回路25は、収集回路24からMR信号データを受信すると、受信したMR信号データに後処理すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことで被検体Sの画像を生成する。すなわち、画像生成回路25は、被検体Sから発生するMR信号に基づいて画像を生成する。
【0029】
また、画像生成回路25は、生成した画像のデータを記憶回路26に送信する。画像を構成する複数の画素のデータはそれぞれ複素数データである。複素数データは、絶対値成分を強度信号、位相成分を位相信号として分離することができる。従って、画像生成回路25は、画像のデータを複素数データのまま記憶回路26に送信しても良いし、複素数データを強度信号データと位相信号データに分離した上で記憶回路26に送信しても良い。画像生成回路25は、例えば、プロセッサにより実現される。画像生成回路25は、画像生成部の一例である。
【0030】
記憶回路26は、各種データを記憶する。例えば、記憶回路26は、シーケンス制御回路23によって収集されたMR信号データ及び画像生成回路25によって生成された画像のデータを被検体Sごとに記憶する。また、記憶回路26は、シーケンス制御回路23、収集回路24、画像生成回路25、システム制御回路27が各種処理を実行する際に用いる各種プログラム及び各種データを記憶する。記憶回路26は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。
【0031】
システム制御回路27は、MRI装置100が有する各部を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、システム制御回路27は、入力回路21を介して、各種撮像パラメータの入力を操作者から受け付ける。そして、システム制御回路27は、受け付けた撮像パラメータに基づいてシーケンス実行データを生成し、生成したシーケンス制御回路23に送信することで、各種スキャンを実行する。
【0032】
また、システム制御回路27は、各種スキャンを実行した結果、収集回路24から送信されるMR信号データ、及び、画像生成回路25から送信される画像のデータを記憶回路26に格納する。また、システム制御回路27は、操作者から要求された画像を記憶回路26から読み出し、読み出した画像をディスプレイ22に出力する。また、例えば、システム制御回路27は、入力回路21を介して操作者から受け付けた指示に基づいて寝台制御回路5を制御することで、寝台4を動作させる。システム制御回路27は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0033】
磁化率生成回路28は、収集回路24によって収集されたMR信号データに基づいて、磁化率画像を生成する。磁化率生成回路28は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0034】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central preprocess unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。なお、記憶回路122にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0035】
以上、第1の実施形態に係るMRI装置100の構成例について説明した。
【0036】
ここで、非特許文献1に示されるMEDI法は、正則化手法において組織の磁化率を高精度に生成するため、強度信号の分布を示す強度画像と磁化率画像とが類似するという仮定の下、強度画像から輪郭画像を作成し、輪郭以外の領域を磁化率画像の空間連続性が高くなるよう、最終的な磁化率を算出する手法である。
【0037】
また、特許文献1に示される手法は、仮の磁化率画像から輪郭画像を作成し、輪郭画像を平滑化することで、最終的な磁化率を算出する手法である。
【0038】
MEDI法や特許文献1に示される手法は、強度画像や磁化率画像から輪郭画像を生成し、輪郭以外の領域を磁化率画像の空間連続性が高くなるように、最終的な磁化率を算出する手法である。
【0039】
これらの手法は、位相画像上のノイズ領域が小さい場合に、輪郭以外の平滑化により磁化率画像上の細い縞状のストリークアーチファクトは低減する。しかし、位相画像上のノイズ領域が大きい場合、縞状のストリークアーチファクトが太く、なだらかに発生するため、平滑化により太い縞状のストリークアーチファクトは低減することは困難である。
【0040】
そこで、本実施形態に係るMRI装置100は、以下に説明するように、幅が太いストリークアーチファクト等のような特定のアーチファクトを抑制する際に用いられる情報を生成することができるように構成されている。
【0041】
図2は、第1の実施形態に係るMRI装置100が有する機能の構成例を示すブロック図である。なお、
図2は、
図1に示した計算機システム20が有する構成要素のうち、ディスプレイ22、記憶回路26、磁化率生成回路28を示している。例えば、
図2に示すように、磁化率生成回路28は、分離機能28a、位相処理機能28b、第1磁化率画像生成機能28c、アーチファクト生成機能28d、第2磁化率画像生成機能28eを備える。
【0042】
ここで、例えば、磁化率生成回路28の構成要素である分離機能28a、位相処理機能28b、第1磁化率画像生成機能28c、アーチファクト生成機能28d、第2磁化率画像生成機能28eの各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路26に記憶されている。磁化率生成回路28は、各プログラムを記憶回路26から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の磁化率生成回路28は、
図2の磁化率生成回路28内に示された各機能を有することとなる。なお、
図2においては、単一の磁化率生成回路28にて、分離機能28a、位相処理機能28b、第1磁化率画像生成機能28c、アーチファクト生成機能28d、第2磁化率画像生成機能28eの各処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて磁化率生成回路28を構成し、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。
【0043】
分離機能28aは、記憶回路26に保存された画像のデータが複素数データである場合に、複素数データを強度信号データと位相信号データに分離して、位相信号データを位相処理機能28b、第1磁化率画像生成機能28c、第2磁化率画像生成機能28eに送信する。なお、分離機能28aは、記憶回路28に保存された画像のデータが強度信号データと位相信号データに分離されている場合には、上述した分離を行わずに、位相信号データを位相処理機能28b、第1磁化率画像生成機能28c、第2磁化率画像生成機能28eに送信する。
【0044】
位相処理機能28bは、記憶回路26に記憶された画像のデータに基づいて、被検体Sの体内組織の磁化率に由来する位相信号データである組織位相信号データを抽出する。位相処理機能28bは、抽出された組織位相信号データを第1磁化率画像生成機能28c及び第2磁化率画像生成機能28eに送信する。
【0045】
第1磁化率画像生成機能28cは、組織位相信号データに基づいて、体内組織の磁化率を生成し、画素それぞれが磁化率を示す第1磁化率画像を生成する。第1磁化率画像生成機能28cは、生成した第1磁化率画像をアーチファクト生成機能28dに送信する。第1磁化率画像生成機能28cは、第1磁化率画像生成部の一例である。
【0046】
アーチファクト生成機能28dは、第1磁化率画像生成機能28cから送信された第1磁化率画像に基づいて、アーチファクト成分を生成し、生成したアーチファクト成分を第2磁化率画像生成機能28eに送信する。アーチファクト生成機能28dは、アーチファクト生成部の一例である。
【0047】
第2磁化率画像生成機能28eは、組織位相信号データ及びアーチファクト成分に基づいて、アーチファクトの少ない体内組織の磁化率を生成し、画素それぞれが磁化率を示す第2磁化率画像を、ディスプレイ22に送信する。第2磁化率画像生成機能28eは、第2磁化率画像生成部の一例である。
【0048】
(フローチャート)
図3は第1の実施形態に係るMRI装置100による画像処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0049】
図3に示すように、まず、シーケンス制御回路23は、操作者から撮像計画の設定を受け付け、データ収集を行う(ステップS101)。例えば、システム制御回路27は、TR(Repetition Time)やTE(Echo Time)等の撮像パラメータの初期値が設定されたパルスシーケンスの情報を予め保持している。例えば、システム制御回路27は、撮像部位や撮像目的ごとに、準備スキャン用のパルスシーケンスや本スキャン用のパルスシーケンスを含むパルスシーケンス群を管理する。そして、システム制御回路27は、GUIを介して、撮像部位や撮像目的ごとにパルスシーケンス群を操作者に提示し、操作者からパルスシーケンス群の選択や変更を受け付けることで、対象の検査で実行される検査用のパルスシーケンス群や撮像パラメータの設定を受け付ける。そして、システム制御回路27は、受け付けた検査用のパルスシーケンス群や撮像パラメータに基づいてシーケンス実行データを生成する。その後、システム制御回路27は、準備スキャンを開始する指示を入力回路21を介して操作者から受け付けると、準備スキャンを実行するためのシーケンス実行データをシーケンス制御回路23に送信する。すると、シーケンス制御回路23は、準備スキャンとして、感度マップを収集するためのスキャンを実行する。その後、収集回路24が、準備スキャンによって得られるMR信号データを収集し、画像生成回路25が、収集されたMR信号データに基づいて、感度マップを生成する。なお、準備スキャンには、例えば、シミングのためのスキャンや、診断用の画像の位置決めを行うための位置決め画像を収集するためのスキャン等が含まれてもよい。続いて、システム制御回路27は、本スキャンを開始する指示を入力回路21を介して操作者から受け付けると、本スキャンを実行するためのシーケンス実行データをシーケンス制御回路23に送信する。すると、シーケンス制御回路23は、本スキャンを実行する。例えば、シーケンス制御回路23は、本スキャンとして、診断用の画像を収集するためのスキャンを実行する。その後、収集回路24が、本スキャンによって得られるMR信号データを収集した後、画像生成回路25が、収集されたMR信号データ及び感度マップに基づいて、診断用の画像を再構成する。
【0050】
そして、分離機能28aは、画像生成回路25により画像のデータとして生成された複素数データを強度信号データと位相信号データに分離する(ステップS102)。分離機能28aは、位相信号データを位相処理機能28b、第1磁化率画像生成機能28c、第2磁化率画像生成機能28eに送信する。
【0051】
続いて、位相処理機能28bは、分離機能28aから送信された位相信号データを受信すると、受信した位相信号データから、体内組織の磁化率に由来する位相信号データである組織位相信号データを抽出する(ステップS103)。
【0052】
例えば、位相処理機能28bは、−πから+πに折り返されて収集された位相信号データに、位相アンラップ処理を適用して、折り返しのない位相信号データを生成する。位相アンラップ処理は、ラプラシアン法や領域拡張法等のMRI装置に適用される位相アンラップ処理を適用してもよいし、合成開口レーダ(SAR)等に適用される位相アンラップ処理を適用してもよい。次に、位相処理機能28bは、折り返しのない位相信号データに、背景磁場影響除去処理を適用し、位相信号データに重畳されている外部磁場要因の位相データを除去し、体内組織の磁化率に由来する位相信号データである組織位相信号データを抽出する。位相処理機能28bは、背景磁場影響除去処理として、ハイパスフィルターを適用する方法や、非特許文献1に示されるSHARP法やRESHARP法、PDF法などいずれの背景磁場影響除去処理を適用してもよい。そして、位相処理機能28bは、抽出した組織位相信号データを第1磁化率画像生成機能28c及び第2磁化率画像生成機能28eに送信する。
【0053】
続いて、第1磁化率画像生成機能28cは、位相処理機能28bから送信された組織位相信号データに基づいて、第1磁化率画像を生成する(ステップS104)。
【0054】
組織位相信号データから磁化率を生成する方法として、非特許文献1に記載された下記の式(1)を逆変換する方法が知られている。
【0056】
ただし、式(1)におけるχは磁化率であり、dは、dipole kernelとよばれる磁気双極子のふるまいを表す係数であり、δはローカルフィールドマップと呼ばれる値である。また、*はたたみ込み積分を表す。
【0057】
なお、δは、下記の式(2)に示すように、組織位相信号データθに対し、磁気回転比γ、磁場強度B
0、エコー時間TEで除算した値である。
【0059】
ここで、上述した式(1)はフーリエ変換を行うことで、下記の式(3)に示すように、単純乗算化できる。
【0061】
Dは、dのフーリエ変換であり、k空間データの座標位置(kx,ky,kz)により表現される。以下の説明では、kz方向を静磁場方向として説明する。
【0062】
式(3)の逆変換により磁化率χが生成できるが、下記の式(4)に示すDの逆数D
-1は、下記の式(5)に示すkxとkyとkzとの関係を満たす場合に、ゼロとなる。
【0064】
このため、上述した式(3)の逆変換は不良設定問題となる。上述した式(5)に示すkxとkyとkzとの関係を満たす場合の周波数空間の位置関係は、マジックアングルと呼ばれている。この問題に対して、磁化率の空間的滑らかさやエッジ構造など正則化項を追加した最適化による磁化率生成法がある。例えば、下記の式(6)において、f(χ1)を最小化することにより、第1磁化率画像χ1を生成する方法がある。
【0066】
ここで、式(6)の右辺の第一項は、上述した式(3)の一致度を示すデータ項、第二項は、磁化率の空間的滑らかさを示す正則項である。また、式(6)において、λは正則項に関するパラメータ、Wは重み係数、Gは勾配オペレータ、pはノルムを表す。例えば、重み係数Wは、複数エコー間の強度画像に基づいて決定される。
【0067】
本実施形態に係る第1磁化率画像生成機能28cは、上述した式(6)をニュートン法や最急降下法や共役勾配法、非線形共役勾配法、ペナルティ法、ADMM(alternating direction method of multipliers)法など各最適化手法を適用することで第1磁化率画像χ1を生成する。すなわち、第1磁化率画像生成機能28cは、画像生成回路25により生成された画像に含まれる複数の画素に含まれる位相成分から被検体Sの磁化率を示す第1磁化率画像χ1を生成する。この第1磁化率画像χ1において、細い縞状のストリークアーチファクト成分は低減されているが、太い縞状のストリークアーチファクト成分は残存している。
【0068】
続いて、アーチファクト生成機能28dが、第1磁化率画像χ1の周波数信号から、アーチファクト成分を生成する(ステップS105)。
【0069】
例えば、アーチファクト生成機能28dは、第1磁化率画像χ1をフーリエ変換や離散コサイン変換などで周波数変換し、第1磁化率画像χ1の周波数空間の処理によりアーチファクト成分χaを生成する。アーチファクト成分を生成する方法の一例として、第1磁化率画像χ1の周波数空間のマスキング処理がある。
【0070】
図4A〜4Dは、マスキングの例を示す図である。
図4A〜4Cは3次元(3D)の磁化率画像の周波数空間のうち、x方向(fx)を直流成分位置とした際の、y方向(fy)とz方向(fz)を示しており、「1」で示される領域が信号通過、「0」で示される領域が信号非通過をそれぞれ示している。
【0071】
図4Aは、fx、fy、fz全ての直流成分位置から等距離rの低周波成分のみが通過するマスキングを示している。
図4Bは、
図4Aに追加してマジックアングル50及びマジックアングル50周辺領域のみを通過するマスキングを示している。ここで、マジックアングル50は、スピンの相互作用が0となる角度である。
図4Cは、
図4Bにおいてマスキング領域境界が0〜1の間で滑らかに連続するようにマスキングする。
図4Dは、
図4Bにおいて磁化率画像の構造を示す低域成分を排除しアーチファクト成分のみを生成するために、直流成分位置から距離r2となる低域成分は非通過とするようマスキングする。上述したように、アーチファクト生成機能28dは、第1磁化率画像χ1の周波数空間において、マジックアングル50及びマジックアングル50周辺領域のマスキングによりアーチファクト成分を生成する。例えば、アーチファクト生成機能28dは、太い縞状のアーチファクト成分を生成する。なお、このようなマスキングは、第1磁化率画像χ1の周波数空間マスキングとも称される。
【0072】
ここで、rの決定方法の一例について説明する。例えば、第1磁化率画像χ1における注目したい磁化率の領域の大きさで、アーチファクトの幅が決まる。そのため、アーチファクト生成機能28dは、この領域の大きさに応じてrを決定する。例えば、アーチファクト生成機能28dは、領域が大きいほどアーチファクトは太くなるので、rを、なだらかな方向に小さくなるように設定する。rを小さくすると低周波しかとらないので、信号としてはなだらかになる。
【0073】
続いて、第2磁化率画像生成機能28eは、アーチファクト成分を用いて第2磁化率画像を生成する(ステップS106)。例えば、第2磁化率画像生成機能28eは、上述した式(6)を用いて組織位相信号データを逆変換する際にアーチファクト成分を低減させる項を追加した下記の式(7)を最適化関数とする。
【0075】
式(7)において、右辺の第三項は第2磁化率画像χ2にアーチファクト成分χaが少ない場合に、値が小さくなる項であり、H(a,b)はaとbの一致度を示すオペレータである。一致度を示すオペレータは、誤差や相関係数、内積など2つの信号の一致度を計算する処理であれば、いずれでも良い。λ1、λ2は第二項、第三項に関するパラメータである。
【0076】
第2磁化率画像生成機能28eは、式(7)を用いて、f(χ2)を最小化させて、アーチファクト成分が低減された(又は、アーチファクト成分を除去した)第2磁化率画像χ2を生成する。例えば、第2磁化率画像生成機能28eは、幅の太いアーチファクト成分が低減された(又は、幅の太いアーチファクト成分を除去した)第2磁化率画像χ2を生成する。また、Wは重み係数であり、第2磁化率画像生成機能28eは、第1磁化率画像χ1の画素ごとの磁化率値に応じて重み付け差分処理を行う。また、式(7)の右辺の第三項は第2磁化率画像χ2にアーチファクト成分χaが少ない場合に、値が小さくなる項であるため、第2磁化率画像生成機能28eは、アーチファクト成分χaを減少させる正則化を用いて、第2磁化率画像χ2を生成する。
【0077】
このように、ステップS106では、アーチファクト成分に基づいて、幅の太いアーチファクト成分が低減又は除去された第2磁化率画像χ2が生成される。また、ステップS106の1つ前のステップS105では、アーチファクト生成機能28dが、幅が太いアーチファクト等のような特定のアーチファクトを抑制する際に用いられる情報として、第1磁化率画像χ1の周波数信号からアーチファクト成分を生成する。したがって、第1の実施形態に係るMRI装置100によれば、特定のアーチファクトを抑制する際に用いられる情報を生成することができる。なお、特許文献2では、再構成画像におけるストリークアーチファクトの成分を表す画素の候補を検出することについて記載されているが、第1磁化率画像の周波数信号から、特定のアーチファクトを抑制する際に用いられる情報を生成することについては記載されていない。
【0078】
次に、システム制御回路27は、第2磁化率画像χ2をディスプレイ22に表示させ(ステップS107)、画像処理を終了する。なお、第2磁化率画像生成機能28eは、生成した第2磁化率画像を記憶回路26に格納してもよい。
【0079】
ディスプレイ22は、少なくとも第2磁化率画像を表示し、スライス位置等の表示条件をそろえた上で、強度画像や位相画像を合わせて表示しても良い。また、それぞれの座標位置に応じた強度値、位相値、磁化率値を表示しても良い。
【0080】
図5は、第1の実施形態に係る画像処理の一例を説明するための図である。
図5の例に示すように、ステップS103で、位相処理機能28bは、3次元の組織位相信号データ31を抽出する。なお、
図5には、fx−fy平面、fz−fy平面、fx−fz平面のそれぞれに、組織位相信号データ31が投影された投影図が示されている。
【0081】
そして、
図5の例に示すように、ステップS104で、第1磁化率画像生成機能28cは、組織位相信号データ31に基づいて、3次元の第1磁化率画像32を生成する。なお、
図5には、fx−fy平面、fz−fy平面、fx−fz平面のそれぞれに、第1磁化率画像32が投影された投影図が示されている。
【0082】
そして、
図5の例に示すように、ステップS105で、アーチファクト生成機能28dは、3次元の周波数空間マスク33を用いて、第1磁化率画像32に対して周波数空間のマスキング処理を行って、アーチファクト成分34を生成する。なお、
図5には、fx−fy平面、fz−fy平面、fx−fz平面のそれぞれに、周波数空間マスク33及びアーチファクト成分34が投影された投影図が示されている。
【0083】
そして、
図5の例に示すように、ステップS106で、第2磁化率画像生成機能28eは、組織位相信号データ31及びアーチファクト成分34を用いて、3次元の第2磁化率画像35を生成する。なお、
図5には、fx−fy平面、fz−fy平面、fx−fz平面のそれぞれに、第2磁化率画像35が投影された投影図が示されている。
【0084】
ここで、第1磁化率画像生成機能28cは、アーチファクト生成機能28dによりアーチファクト成分が精度良く生成されるように、第2磁化率画像生成機能28eが第2磁化率画像χ2を生成する際に用いるパラメータと異なるパラメータで第1磁化率画像χ1を生成してもよい。
【0085】
一例として、式(6)に示される正則化パラメータλと、式(7)に示すλ1とを異ならせてもよい。例えば、λをλ1より小さく設定することで、第1磁化率画像χ1には、強調されたアーチファクト成分が含まれる。このため、アーチファクト生成機能28dにより、強調されたアーチファクト成分が生成される。一方、λをλ1より大きく設定することで、第1磁化率画像χ1には、平滑化されたアーチファクト成分が含まれる。このため、アーチファクト生成機能28dにより、平滑化されたアーチファクト成分が生成される。
【0086】
別の一例として、式(6)に示す第1磁化率画像χ1を最適化処理により求める際の反復回数nと、式(7)に示す第2磁化率画像χ2を最適化処理により求める際の反復回数n1と異ならせてもよい。p=1の場合、一般的には反復回数が大きくなるほど、画像の先鋭度が向上するが、ノイズも同様に強調されるなど、反復回数により生成されるアーチファクト成分が異なる。
【0087】
更に別の一例として、式(6)の重み係数Wや勾配パラメータGを、式(7)の重み係数Wや勾配パラメータGと異ならせてもよい。例えば、第1磁化率画像生成機能28cは、重み係数Wを用いない(Wを全て1とみなす)で第1磁化率画像χ1を生成してもよい。また、第1磁化率画像生成機能28cは、式(7)の重み係数Wや勾配パラメータGを用いない(全て1とみなす)で第1磁化率画像χ1を生成してもよい。
【0088】
更に別の一例として、式(6)で示すノルムpと、式(7)で示すノルムpとで異なる値を設定しても良い。p=2(L2ノルム)の場合、式(6)は解析的に解くことが可能なL2ノルム最適化であるため、高速に磁化率画像を生成できるが、比較的平滑化が強いぼけた画像が生成される。p=1の場合、数値計算的に解くL1ノルム最適化であるが、解像度の高い磁化率画像が生成される。例えば、アーチファクト生成機能28dは、第1磁化率画像からアーチファクト成分を生成することから、第1磁化率画像生成機能28cは、式(6)においてp=2で高速に第1磁化率画像を生成し、第2磁化率画像生成機能28eは、式(7)においてp=1で第2磁化率画像を生成する。
【0089】
(アーチファクト成分の変形例)
アーチファクト成分χaは、脳組織の磁化率成分を含んでいる場合があるため、脳組織の磁化率成分を除去して、アーチファクト成分χaを生成することが好ましい。例えば、下記の式(8)及び式(9)に示すように、アーチファクト生成機能28dは、第1磁化率画像χ1の画素ごとの磁化率値の大きさに応じてアーチファクト成分重み係数Waを設定する。そして、アーチファクト生成機能28dは、アーチファクト成分χaに、アーチファクト成分重み係数Waで重み付けを行う。アーチファクト成分重み係数Waは0〜1の範囲で平滑化がされていても良い。χa´は、アーチファクト成分重み係数により重み付けされたアーチファクト成分を示す。
【0091】
図6は、アーチファクト成分に、アーチファクト成分重み係数で重み付けを行う処理の一例を説明するための図である。
図6の例に示すように、ステップS105で、アーチファクト生成機能28dは、アーチファクト成分34に対してアーチファクト成分重み係数36で重み付けを行って、アーチファクト成分37を生成する。なお、
図6には、fx−fy平面、fz−fy平面、fx−fz平面のそれぞれに、アーチファクト成分重み係数36、アーチファクト成分37が投影された投影図が示されている。
【0092】
そして、
図6の例に示すように、ステップS106で、第2磁化率画像生成機能28eは、組織位相信号データ31及びアーチファクト成分37を用いて、3次元の第2磁化率画像38を生成する。なお、
図6には、fx−fy平面、fz−fy平面、fx−fz平面のそれぞれに、第2磁化率画像38が投影された投影図が示されている。
【0093】
(アーチファクト成分重み係数の他の決定方法)
アーチファクト成分χaは、典型的に周波数空間でのマジックアングル方向のノイズが、磁化率画像空間において一定の方向を持ち、発生する。従って、磁化率画像空間においてアーチファクト成分の方向性(アーチファクト方向)は既知となるため、当該アーチファクト方向に沿って平滑化を適用したものを新しいアーチファクト成分としてもよい。
図7Aは、第1磁化率画像の一例を示す図である。
図7Bは、
図7Aの例に示す第1磁化率画像から生成されたアーチファクト成分の一例を示す図である。
図8は、アーチファクト方向に沿って平滑化を適用したものを新しいアーチファクト成分とする処理の一例を説明するための図である。アーチファクト方向は、マジックアングル方向から一意に設定しても良いし、画素単位にSobelオペレータなど方向検出オペレータを用いて設定しても良い。
【0094】
図8の例に示すように、ステップS105で、アーチファクト生成機能28dは、アーチファクト成分34に対してアーチファクト方向に平滑化を適用して新しいアーチファクト成分41を生成する。すなわち、アーチファクト生成機能28dは、アーチファクト方向に沿うアーチファクトについては「1」、アーチファクト方向に沿わないアーチファクトには「0」が重み付けされるようなアーチファクト成分重み係数Waを決定する。なお、
図8には、fx−fy平面、fz−fy平面、fx−fz平面のそれぞれに、アーチファクト成分41が投影された投影図が示されている。
【0095】
そして、
図8の例に示すように、ステップS106で、第2磁化率画像生成機能28eは、組織位相信号データ31及びアーチファクト成分41を用いて、3次元の第2磁化率画像42を生成する。なお、
図8には、fx−fy平面、fz−fy平面、fx−fz平面のそれぞれに、第2磁化率画像42が投影された投影図が示されている。
【0096】
(反復的にアーチファクト成分を生成)
また、マスキング領域は1種類のみではなく、複数のマスキング領域を用意し反復的にアーチファクト成分を生成しても良い。
図9は、複数のマスキング領域から反復的にアーチファクトを生成し、繰り返し第2磁化率画像を生成する画像処理の処理手順を示すフローチャートである。
図9に示す画像処理と、
図3に示す画像処理との違いについて説明する。
図9に示す画像処理では、第2磁化率画像生成機能28eが第2磁化率画像を生成した(ステップS106)後、アーチファクト生成機能28dは、終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS108)。終了条件を満たす場合(ステップS108:Yes)には、システム制御回路27は、第2磁化率画像をディスプレイ22に表示させ(ステップS107)、画像処理を終了する。
【0097】
一方、終了条件を満たさない場合(ステップS108:No)には、アーチファクト生成機能28dは、異なるマスキング領域を設定し(ステップS109)、再度アーチファクト成分を生成する(ステップS105)。異なるマスキング領域を設定することで、通過する周波数成分が変化し、異なるアーチファクト成分が生成できるため、再度ステップS106で生成される第2磁化率画像は、太さの異なるアーチファクト成分が低減された磁化率画像となる。このように、第1の実施形態に係るMRI装置100は、第1磁化率画像の異なる周波数空間マスキングを用いて、アーチファクト生成機能28dによるアーチファクト成分の生成と、第2磁化率画像生成機能28eによる第2磁化率画像の生成とを反復的に繰り返す。
【0098】
上述した終了条件を満たす場合とは、例えば、アーチファクト成分が十分低減された場合や、ステップS108において所定回数以上、否定判定(ステップS108:No)が繰り返された場合である。
【0099】
終了条件を満たす他の例について説明する。前提として、アーチファクト生成機能28dが、第1磁化率画像のコピーをステップS108での判定における比較対象のデータとして用いて、アーチファクト成分を生成するたびに、第1磁化率画像のコピーから、生成したアーチファクト成分の絶対値を減算する。このような前提のもと、第1磁化率画像のコピーにおけるアーチファクト成分の絶対値が閾値以内である場合が終了条件を満たす場合となる。また、操作者が第2磁化率画像を視覚評価し、マウスなどの入力回路21を用いて終了するか否かの指示を磁化率生成回路28に入力しても良い。
【0100】
第1の実施形態に係るMRI装置100について説明した。上述したように、第1の実施形態に係るMRI装置100は、特定のアーチファクトを抑制する際に用いられる情報を生成することができる。
【0101】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るMRI装置100について説明する。
図10は、第2の実施形態に係るMRI装置内の磁化率生成回路の構成の一例を示す図である。第2の実施形態に係る磁化率生成回路28と、第1の実施形態の磁化率生成回路28との違いは、第2の実施形態に係る磁化率生成回路28が第3磁化率画像生成機能28fを備える点である。第3磁化率画像生成機能28fは、第2磁化率画像生成機能28eから送信される第2磁化率画像を、アーチファクト生成機能28dから送信されるアーチファクト成分に基づいて第3磁化率画像を生成し、生成した第3磁化率画像をディスプレイ22に表示させる。
【0102】
図11は、第2の実施形態に係るMRI装置による画像処理の処理手順を示すフローチャートである。シーケンス制御回路23は、操作者から撮像計画の設定を受け付け、データ収集を行い(ステップS201)、分離機能28aは、画像生成回路25により画像のデータとして生成された複素数データを強度信号データと位相信号データに分離する(ステップS202)。続いて、位相処理機能28bは、上述した位相アンラップや背景磁場除去処理により組織位相信号データを生成する(ステップS203)。続いて、第1磁化率画像生成機能28cは、上述した式(6)を用いて、p=2で、第1磁化率画像を生成する(ステップS204)。アーチファクト生成機能28dは、アーチファクト成分を生成する(ステップS205)。以上の処理は、第1の実施形態に示されるフローチャート(ステップS101〜S105)と同一の処理である。
【0103】
また、第2磁化率画像生成機能28eは、第1磁化率画像生成機能28cが第1磁化率画像を生成した方法と同様の方法で、第2磁化率画像を生成する。例えば、第2磁化率画像生成機能28eは、式(6)を用いて、p=1で第2磁化率画像を生成する(ステップS206)。すなわち、第2磁化率画像生成機能28eは、第1磁化率撮像画像を生成する際の条件と異なる条件で第2磁化率画像を生成する。
【0104】
そして、第3磁化率画像生成機能28fは、所定の係数αをステップS205で生成されたアーチファクト成分に乗じ、第2磁化率画像から、所定の係数αが乗じられたアーチファクト成分を減じることで、第3磁化率画像を生成する(ステップS207)。このように、第3磁化率画像生成機能28fは、第2磁化率画像とアーチファクト成分とを用いて、第2磁化率画像から、アーチファクト成分を除去または低減することで第3磁化率画像を生成する。なお、所定の係数αが乗じられたアーチファクト成分の強度と、第2磁化率画像の強度とが略同一となるように、所定の係数αの値が定められる。そして、システム制御回路27は、第3磁化率画像をディスプレイ22に表示させ(ステップS208)、画像処理を終了する。
【0105】
このように、ステップS207では、アーチファクト成分に基づいて、幅の太いアーチファクト成分が低減又は除去された第3磁化率画像が生成される。また、ステップS207より前のステップS205では、アーチファクト生成機能28dが、幅が太いアーチファクト等のような特定のアーチファクトを抑制する際に用いられる情報として、第1磁化率画像χ1の周波数信号からアーチファクト成分を生成する。したがって、第2の実施形態に係るMRI装置100によれば、特定のアーチファクトを抑制する際に用いられる情報を生成することができる。
【0106】
図12は、第2の実施形態に係るMRI装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
図12の例に示すように、ステップS206で、第2磁化率画像生成機能28eは、式(6)を用いて、p=1で、3次元の第2磁化率画像39を生成する。なお、
図12には、fx−fy平面、fz−fy平面、fx−fz平面のそれぞれに、第2磁化率画像39が投影された投影図が示されている。
【0107】
そして、ステップS207で、第3の磁化率画像生成機能28fは、所定の係数αをアーチファクト成分34に乗じ、第2磁化率画像39から、アーチファクト成分34に所定の係数αを乗じたアーチファクト成分を減じることで、3次元の第3磁化率画像40を生成する。なお、
図12には、fx−fy平面、fz−fy平面、fx−fz平面のそれぞれに、アーチファクト成分34及び第3磁化率画像40が投影された投影図が示されている。
【0108】
なお、第1の実施形態と同様、第1磁化率画像生成機能28cは、アーチファクト生成機能28dによりアーチファクト成分が精度良く生成されるように、第2磁化率画像生成機能28eが第2磁化率画像χ2を生成する際に用いるパラメータと異なるパラメータで第1磁化率画像χ1を生成してもよい。
【0109】
例えば、第1磁化率画像生成機能28cは、アーチファクト成分を強調するように式(6)に示される正則化パラメータλを小さく設定したり、第1磁化率画像χ1を最適化処理により求める際の反復回数を変更しても良い。また、第1磁化率画像生成機能28cは、式(6)の重み係数Wや勾配パラメータGを用いない(全て1とみなす)で第1磁化率画像χ1を生成してもよい。
【0110】
また、第2の実施形態に係る第3磁化率画像生成機能28fは、第1の実施形態に係る第2磁化率画像生成機能28eと同様に、第2磁化率画像の画素ごとの磁化率値に応じて重み付け差分処理を行う。また、第3磁化率画像生成機能28fは、第1磁化率画像と第2磁化率画像との信号比により重み付け差分処理を行ってもよい。また、第3磁化率画像生成機能28fは、これら2つの重み付け差分処理を行っても良い。
【0111】
また、第1の実施形態に係るMRI装置100と、第2の実施形態に係るMRI装置100とを適宜組み合わせてもよい。例えば、第1の実施形態と同様に、第2の実施形態に係るMRI装置100は、複数のマスキング領域を用意し反復的にアーチファクト成分を生成しても良い。
図13は、第2の実施形態において、複数のマスキング領域から反復的にアーチファクトを生成し、繰り返し第3磁化率画像を生成する画像処理の処理手順を示すフローチャートである。
図13に示すように、第3磁化率画像生成機能28fが第3磁化率画像を生成した(ステップS207)後、アーチファクト生成機能28dは、第1の実施形態と同様の終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS209)。終了条件を満たす場合(ステップS209:Yes)には、システム制御回路27は、第3磁化率画像をディスプレイ22に表示させ(ステップS208)、画像処理を終了する。
【0112】
一方、終了条件を満たさない場合(ステップS209:No)には、アーチファクト生成機能28dは、異なるマスキング領域を設定し(ステップS210)、再度アーチファクト成分を生成する(ステップS205)。異なるマスキング領域を設定することで、通過する周波数成分が変化し、異なるアーチファクト成分が生成できるため、再度ステップS207で生成される第3磁化率画像は、太さの異なるアーチファクト成分が低減された磁化率画像となる。このように、第2の実施形態に係るMRI装置100は、第1磁化率画像の異なる周波数空間マスキングを用いて、アーチファクト生成機能28dによるアーチファクト成分の生成と、第3磁化率画像生成機能28fによる第3磁化率画像の生成とを反復的に繰り返す。
【0113】
第2の実施形態に係るMRI装置100について説明した。上述したように、第2の実施形態に係るMRI装置100は、特定のアーチファクトを抑制する際に用いられる情報を生成することができる。
【0114】
また、上述した磁化率生成回路28が有する各機能と同様の機能を医用画像処理装置が有してもよい。医用画像処理装置は、例えば、専用又は汎用コンピュータである。例えば、医用画像処理装置は、ネットワークを介して接続されたMRI装置等の医用画像診断装置から、被検体から発生するMR信号に基づいて生成された画像を取得する。そして、医用画像処理装置は、上述した磁化率生成回路28が有する各機能と同様の機能を発揮して、取得した画像に対して各種の処理を行う。したがって、かかる医用画像処理装置は、上述した第1の実施形態又は第2の実施形態に係るMRI装置100と同様に、特定のアーチファクトを抑制する際に用いられる情報を生成することができる。
【0115】
なお、上述した実施形態に係るMRI装置において、記憶回路に記憶されるものとしたプログラムは、あらかじめ各装置にインストールされていてもよいし、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体又はネットワークを介して配布されて、各装置に適宜インストールされてもよい。または、当該プログラムは、例えば、各装置に内蔵又は外付けされたハードディスク、メモリ、CD−R(Compact Disk Recordable)、CD−RW(Compact Disk Rewritable)、DVD−RAM(Digital Versatile Disc Random Access Memory)、DVD−R(Digital Versatile Disc Recordable)等の記憶媒体に記録されて、各装置が有するプロセッサによって適宜読み出されて実行されてもよい。
【0116】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、特定のアーチファクトを抑制する際に用いられる情報を生成することができる。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。