特許第6702699号(P6702699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝ライフスタイル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6702699-洗濯機 図000002
  • 特許6702699-洗濯機 図000003
  • 特許6702699-洗濯機 図000004
  • 特許6702699-洗濯機 図000005
  • 特許6702699-洗濯機 図000006
  • 特許6702699-洗濯機 図000007
  • 特許6702699-洗濯機 図000008
  • 特許6702699-洗濯機 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702699
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/30 20200101AFI20200525BHJP
【FI】
   D06F33/02 S
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-230599(P2015-230599)
(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2017-93881(P2017-93881A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑山 勉
(72)【発明者】
【氏名】西脇 智
【審査官】 村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−061175(JP,A)
【文献】 特開2003−038888(JP,A)
【文献】 特開2003−144794(JP,A)
【文献】 特開2008−173512(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0092928(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101151409(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物が収容され洗い及びすすぎの行程が実行される洗い槽と、
前記洗い槽内の洗濯水を加熱して温水化する温水ヒータと、
前記洗い槽内の洗濯水を循環経路を通して循環させながら該洗い槽内の洗濯物に向けて散水させる循環ポンプと、
前記循環経路内に配置され水に対する徐溶性を有する抗菌剤と、
前記すすぎの行程において、前記温水ヒータにより前記洗い槽内の洗濯水の加熱状態で、前記循環ポンプを駆動して該洗い槽内の洗濯物に向けて散水する高濃度抗菌すすぎ動作を実行させる制御手段とを備え、
前記制御手段は、すすぎ行程における最終のすすぎ動作の実行後に、前記高濃度抗菌すすぎ動作を実行すると共に、
前記高濃度抗菌すすぎ動作は、ためすすぎの場合よりも低い所定水位の状態で、洗濯水を35℃〜45℃の範囲に加熱して行われる洗濯機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記洗い槽内の洗濯水が所定水位の状態で、前記温水ヒータにより洗濯水を加熱し、前記循環ポンプを所定時間駆動することにより、高濃度抗菌すすぎ動作を実行する請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記温水ヒータ及び前記循環ポンプの駆動に加えて、前記洗い槽内の洗濯物の撹拌動作を行うことにより、前記高濃度抗菌すすぎ動作を実行する請求項1又は2記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばドラム式の洗濯機においては、水槽内の下部に温水ヒータを設け、水槽(洗い槽)内に貯留される洗濯水を前記温水ヒータにより加熱することが可能な構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の洗濯機では、「おしぼり洗浄コース」を有し、このおしぼり洗浄コースでは、すすぎ行程が、水槽内の水を加熱して温水化した状態で実行される。また、仕上げ剤の投入が、温水ヒータの断電状態で行われる。これにより、温かいおしぼり(蒸しタオル)を得ることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−167064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、衣類に付着した雑菌の繁殖に起因する、洗濯物の部屋干し時のにおいや黄ばみ等の発生を気にするユーザが多くなっており、洗濯物の抗菌効果が求められるようになってきている。そこで、洗濯機の給水経路の途中に、徐溶性の抗菌剤を配置し、抗菌剤を含んだ洗濯水で洗いやすすぎを行うものも供されてきている。しかし、現状の抗菌効果では飽き足らないユーザもおり、より一層の抗菌効果の向上が望まれる。
【0005】
そこで、洗濯物の抗菌効果の高い洗濯運転の実行が可能な洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の洗濯機は、洗濯物が収容され洗い及びすすぎの行程が実行される洗い槽と、前記洗い槽内の洗濯水を加熱して温水化する温水ヒータと、前記洗い槽内の洗濯水を循環経路を通して循環させながら該洗い槽内の洗濯物に向けて散水させる循環ポンプと、前記循環経路内に配置され水に対する徐溶性を有する抗菌剤と、前記すすぎの行程において、前記温水ヒータにより前記洗い槽内の洗濯水の加熱状態で、前記循環ポンプを駆動して該洗い槽内の洗濯物に向けて散水する高濃度抗菌すすぎ動作を実行させる制御手段とを備え、前記制御手段は、すすぎ行程における最終のすすぎ動作の実行後に、前記高濃度抗菌すすぎ動作を実行すると共に、前記高濃度抗菌すすぎ動作は、ためすすぎの場合よりも低い所定水位の状態で、洗濯水を35℃〜45℃の範囲に加熱して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態を示すもので、洗濯機の外観構成を概略的に示す斜視図
図2】内部構成を概略的に示す斜視図
図3】洗濯機の電気的構成を示すブロック図
図4】自動コースの洗濯運転における制御装置が実行する制御手順を示すフローチャート
図5】主要な行程における各部のオン・オフの状態を示すタイムチャート
図6】抗菌剤の溶解度合いの温度依存性を調べた結果を示す図
図7】第2の実施形態を示すもので、自動コースの洗濯運転における制御装置が実行する制御手順を示すフローチャート
図8】主要な行程における各部のオン・オフの状態を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)第1の実施形態
以下、循環ポンプを備えたドラム式の洗濯機に適用した第1の実施形態について、図1から図6を参照しながら説明する。まず、図1及び図2を参照しながら、本実施形態に係る洗濯機1の全体構成について述べる。図1に示すように、この洗濯機1は、ほぼ矩形箱状をなし洗濯機本体を構成する外箱2を有している。この外箱2の底部には、台板3が設けられている。外箱2の前面の中央部には、図示しない円形の衣類出入口が設けられていると共に、その衣類出入口を開閉する扉4が配設されている。
【0009】
外箱2の上面前部には、操作パネル5が設けられている。この操作パネル5には、電源入りキー6、電源切りキー7が設けられている。また。詳しく図示はしないが、操作パネル5には、洗濯運転に関する各種設定を行うための各種操作キーが設けられていると共に、必要な表示を行うための各種表示部が設けられている。図示はしないが、前記各種操作キーには、洗濯運転のコースを選択するためのコース選択キーや、マニュアル設定を行うためのマニュアル設定キー等が設けられると共に、後述する高濃度抗菌すすぎ動作の実行の有無を設定するための動作設定キーが設けられている。操作パネル5の裏側には、洗濯機1の全体を制御する制御手段としての制御装置8(図3参照)が設けられている。
【0010】
図2は、洗濯機1の内部構成を、外箱2を取外した状態で示しており、外箱2内には、横軸円筒状の水槽9が後下がりにやや傾斜した状態で設けられている。この水槽9は、台板3上に複数(例えば左右一対)のサスペンション10(一部のみ図示)を介して支持されている。水槽9の前端部には、円環状をなす水槽カバー9aが設けられている。この水槽カバー9aは、前記衣類出入口に連通する洗濯物の投入口を構成している。この水槽9の後端側中心部には、例えばブラシレスDCモータからなるアウタロータ形のモータ11(図3にのみ図示)が配設されている。
【0011】
水槽9内には、洗濯物(衣類)が収容される洗い槽としての円筒状の回転槽(ドラム)12が回転可能に支持されている。この回転槽12は、前後方向に延び且つ後下がりにやや傾斜した傾斜軸を中心に回転するように構成されている。前記モータ11の回転軸が、水槽9の背面を貫通して、回転槽12の後端側中央部に連結されている。これにて、回転槽12はモータ11により直接的に回転駆動される。この回転槽12の周壁部には通水及び通気用の多数個の孔12aが形成され、また、回転槽12の内周面部には、洗濯物掻き上げ用(撹拌用)の複数個例えば3個のバッフル13が設けられている。この回転槽12の前面開口部は、前記水槽カバー9aの投入口に臨んでいる。尚、モータ11部分には、該モータ11の位置を検出する回転センサ14(図3にのみ図示)が設けられている。
【0012】
そして、本実施形態では、図2に示すように、前記水槽9の底部の洗濯水が溜められる部分には、左寄り部位に位置して凹所15が下方に凸となるように設けられ、この凹所15内に位置して水槽9内で温水を生成するための温水ヒータ16が設けられている。詳しく図示はしないが、この温水ヒータ16は、例えばシーズヒータからなり、ヒータホルダにより保持されて設けられている。また、凹所15内には、例えばサーミスタからなり、水槽9内の底部の洗濯水の温度を検出する水温検出手段としての水温センサ17(図3参照)が設けられている。
【0013】
前記外箱2内の上部には、水槽9の左上部に位置して、該水槽9内への給水を行う給水機構18が設けられている。この給水機構18は、給水弁19や注水ケース20等を有している。前記給水弁19の入口部には、ホース接続口19aが設けられ、水道に接続されるようになっている。給水弁19の出口部は、注水ケース20の入口部に接続され、注水ケース20の出口部が水槽9に接続されている。図示はしないが、前記注水ケース20の内部には、洗剤貯留部等が設けられている。これにて、給水弁19の開放動作により、水道水が、ホース接続口19aから給水弁19、注水ケース20を順に通って水槽9に供給される。
【0014】
一方、前記水槽9の底部には、図示しない排水口が形成され、この排水口には、機内排水ホース21の基端部が接続されている。そして、機内排水ホース21の先端側には、抗菌剤ユニット22及びリントフィルタ23が順に接続されている。リントフィルタ23の出口側が、循環ポンプ24の入口側に接続されている。循環ポンプ24の下流側には排水弁25が接続され、この排水弁25の出口側に、機外に排水を行うための排水パイプ26が接続されている。循環ポンプ24の吐出口に、循環ホース27の一端部が接続され、循環ホース27の他端部は、水槽カバー9aに設けられた図示しない噴水ノズルに接続されている。
【0015】
ここで、詳しい図示などは省略するが、前記抗菌剤ユニット22について簡単に述べておく。周知のように、抗菌剤ユニット22は、入口及び出口を有し通水可能なケース内に、所要量の徐溶性の抗菌剤を収容して構成されている。前記抗菌剤としては、抗菌ガラスと称されるものが採用される。即ち、抗菌剤は、例えば溶解性ガラスとしてのリン酸系ガラス又はホウ酸系ガラスに、銀イオンを主体とした抗菌成分(例えば酸化銀)を担持させた粒状(キューブ状)に構成されている。この抗菌剤を水が通過、接触することにより、その水中に銀イオンが徐々に溶け出すようになり、抗菌水が得られるようになっている。尚、抗菌剤は、例えば10年間交換することなく使用できるように、機能や量が調整されている。
【0016】
これにて、排水弁25を閉じた状態で循環ポンプ24が駆動されると、前記水槽9内の洗濯水が、排水口から、機内排水ホース21、抗菌剤ユニット22、リントフィルタ23を通って吸込まれる。そして、吸込まれた洗濯水は、循環ホース27を通り、噴水ノズルから回転槽12内にシャワー状に散水されるという循環が行われる。従って、機内排水ホース21、循環ホース27等から洗濯水の循環経路が構成される。このとき、循環経路において、洗濯水が抗菌剤ユニット22を通る際に、洗濯水に抗菌成分が溶け込み、抗菌水となって回転槽12内の洗濯物に注水されるようになる。
【0017】
一方、循環ポンプ24の駆動を停止した状態で排水弁25が開放されると、水槽9内の水は、機内排水ホース22、抗菌剤ユニット22、リントフィルタ23、循環ポンプ24、排水弁25、排水パイプ26を通して機外へ排出される。尚、洗濯水がリントフィルタ23を通る際に、洗濯水に含まれていたリントが捕獲されるようになる。詳しく図示はしないが、リントフィルタ23は、その先端のキャップを操作することにより、出し入れが可能に構成され、外箱2には、リントフィルタ23の出し入れ(点検)用の開口部が設けられ、その開口部がカバー2a(図1参照)により開閉可能に塞がれている。
【0018】
また、詳しく図示はしないが、前記リントフィルタ23部分には、エアトラップが設けられ、外箱2内の最上部には、そのエアトラップとエアチューブによって接続された水位センサ28(図3参照)が配設されている。これにて、水位センサ28により、前記水槽9内の水位が検出される。更に、図示はしないが、前記外箱2内には、回転槽12内に温風を循環供給して洗濯物を乾燥させるための乾燥ユニットが設けられている。この乾燥ユニットは、水槽9に設けられた給気口と排気口とを該水槽9の外側でつなぐように設けられた循環ダクト、この循環ダクト内に設けられた送風ファン及びヒータ等から構成されている。前記循環ダクト内に、除湿手段例えばヒートポンプを設けても良い。
【0019】
図3は、上記した制御装置8を中心とした、洗濯機1の電気的構成を概略的に示している。制御装置8は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主体として構成され、洗濯機1全体を制御して洗濯運転の各行程を実行する。また、この制御装置8には、前記操作パネル5の各種操作キーからの操作信号が入力されると共に、制御装置8が操作パネル5の各種表示部の表示を制御する。制御装置8には、前記水温センサ17、水位センサ28、回転センサ14からの検知信号が入力される。そして、制御装置8は、図示しない駆動回路を介して前記モータ11を駆動制御すると共に、前記給水弁19、排水弁25、循環ポンプ24、温水ヒータ16等を夫々制御する。
【0020】
以上の構成により、制御装置8は、操作パネル5にてユーザにより設定される運転コースに応じて、各センサからの入力信号や予め記憶された制御プログラムに基づいて、洗濯機1の各機構を制御し、周知の洗い、すすぎ、脱水の各行程からなる洗濯運転を自動で実行するようになっている。このとき、制御装置8は、水槽9内への給水後に、温水ヒータ16により洗濯水を例えば60℃前後に加熱しながら洗い行程を進めることにより、温水洗浄コースの洗濯運転を実行することが可能とされている。この温水で洗濯を行うことで、洗浄性能の向上が期待できる。
【0021】
さて、本実施形態では、ユーザの操作パネル5の動作設定キーの操作により、高濃度抗菌すすぎ動作の実行が設定(オン)されている場合に、制御装置8は、すすぎの行程において、高濃度抗菌すすぎ動作を実行させる。次の作用説明(フローチャート説明)でも述べるように、この高濃度抗菌すすぎ動作は、水槽9内の洗濯水を温水ヒータ16により例えば約40℃に加熱した状態で、循環ポンプ24を駆動して該洗い槽9内の洗濯物に向けて散水することを、所定時間例えば5分間実行することにより行われる。従って、制御装置8が制御手段として機能する。
【0022】
本実施形態では、制御装置8は、すすぎ行程中の、すすぎ動作いわゆるためすすぎの実行後に、高濃度抗菌すすぎ動作を実行する。この場合、高濃度抗菌すすぎ動作は、水槽9内の洗濯水が所定水位(ためすすぎの場合よりも低い所定水位)の状態で、温水ヒータ16により洗濯水を常温よりも高い所定温度まで加熱して温水とし、温水ヒータ16をオフした後、循環ポンプ24を所定時間、例えば本実施形態では5分間駆動することにより行われる。このとき、洗濯水を加熱する所定温度としては、例えば35℃〜45℃の範囲とすることができ、本実施形態では、例えば約40℃としている。これにより、洗濯水が抗菌剤ユニット22を通る際に、常温の洗濯水を用いた通常時に比較して、約2倍の濃度で、洗濯水に抗菌成分が溶け込むことが確認されている。
【0023】
また、すすぎ動作が複数回繰返される場合には、最終のすすぎ動作の実行後に、高濃度抗菌すすぎ動作が実行される。更に本実施形態では、制御装置8は、高濃度抗菌すすぎ動作を行うにあたっては、循環ポンプ24の駆動に加えて、回転槽12を回転駆動して、洗濯物の撹拌動作を併せて行うようになっている。尚、本実施形態では、洗濯水を加熱した後、循環ポンプ24を駆動するようにしているが、温水ヒータ16のオン状態で、つまり洗濯水を加熱しながら循環ポンプ24の駆動を開始するようにしても良い。
【0024】
次に、上記構成の洗濯機1の作用について、図4から図6も参照して述べる。図4のフローチャートは、高濃度抗菌すすぎ動作の実行が設定(オン)されている状態での、制御装置8が実行する自動コースの洗濯運転、つまり洗い、すすぎ、脱水の行程を順に行う場合の、特にすすぎ行程における詳細な処理ステップを示している。また、図5のタイムチャートは、上記すすぎ2及び高濃度抗菌すすぎ動作、並びに脱水行程に関しての、回転槽12、給水弁19、排水弁25、循環ポンプ24、温水ヒータ16のオン・オフの状態を示している。
【0025】
このとき、すすぎの行程は、すすぎ1として、シャワーすすぎの動作が実行され、次いですすぎ2として、ためすすぎのすすぎ動作が実行され、その後高濃度抗菌すすぎ動作が実行される。この場合、すすぎ2のためすすぎが最終のすすぎ動作となる。尚、すすぎの行程は全体として約30分程度実行される。また、すすぎ動作が、ためすすぎ1回の場合には、1回のためすすぎが最終のすすぎ動作となり、その後、高濃度抗菌すすぎ動作が実行される。
【0026】
ユーザは、洗濯運転を実行させたい場合、回転槽12内に洗濯物を投入し、注水ケース20内に必要量の洗剤を投入した上で、操作パネル5を操作して例えば自動コースを選択すると共に、高濃度抗菌すすぎ動作の実行を設定し、スタートキー44をオン操作する。すると、図4に示すように、まずステップS1にて、洗いの行程が実行される。詳しい説明は省略するが、この洗いの行程では、布量判定が行われて布量に応じた水位が設定され、給水弁19が開放されて、水位センサ28の検出に基づき設定水位まで給水が行われる。次いで、回転槽12を比較的低速で正方向及び逆方向に所定時間間隔で交互に回転させると共に、循環ポンプ24を適宜駆動することが行われる。洗い行程が終了すると、排水弁25が動作されて排水が行われる。
【0027】
洗い行程後の排水が終了すると、詳しい説明は省略するが、次のステップS2で、すすぎ1の行程、つまりシャワーすすぎの行程が、所定時間実行される。このすすぎ1の後、排水が行われる。次のステップS3〜ステップS12では、すすぎ2の行程、つまりためすすぎの行程が実行される。即ち、ステップS3では排水弁25が閉塞され、ステップS4にて、給水が開始される。ステップS5では、すすぎ設定水位に至ったかどうかが判断され、未だ設定水位に達していないときには(ステップS5にてNo)、ステップS4に戻って給水が継続される。設定水位に達すると(ステップS5にてYes)、ステップS6にて給水が停止される。
【0028】
次のステップS7では、循環ポンプ24が動作されると共に、ステップS8にて、回転槽12を低速で正逆方向に回転駆動する撹拌動作が行われる。この循環ポンプ24及び回転槽12の動作は、所要時間(例えば10分程度)だけ継続される(ステップS9)。所要時間が経過した場合には(ステップS9にてYes)、ステップS10にて循環ポンプ24の動作が停止されると共に、ステップS11にて回転槽12の撹拌動作が停止され、すすぎ2の行程(最終すすぎの行程)が終了する。尚、本実施形態では、水槽9内の洗濯水を残したまま次の高濃度抗菌すすぎ動作に移行するが、一旦排水し、その後新たに給水しても良い。
【0029】
さて、ステップS12〜ステップS24では、高濃度抗菌すすぎ動作が実行される。即ち、ステップS12では、水槽9内の水位が、高濃度抗菌すすぎの設定水位となっているかどうかが判断される。この際の水位は、ためすすぎの場合に比べて低い水位に設定される。設定水位とは異なっている場合には(ステップS12にてNo)、ステップS13にて、水位の調整が行われる。この水位の調整は、給水或いは排水により行われる。設定水位になると(ステップS12にてYes)、ステップS14にて給水が停止される。
【0030】
そして、ステップS15では、温水ヒータ16がオンされ、洗濯水が加熱される。これと併せて、ステップS16にて、循環ポンプ24が駆動されると共に、ステップS17にて、回転槽12が低速で回転されて槽撹拌の動作が行われる。ステップS18では、水温センサ17の検出に基づき、水槽9内の洗濯水の温度が設定温度、この場合40℃まで上昇したかどうかが判断される。水槽9内の洗濯水の温度が、未だ設定温度に至らない場合には(ステップS18にてNo)、ステップS15からの処理が繰返される。この間においては、図5に示したように、循環ポンプ24の動作と、回転槽12の撹拌動作とが、間欠的に行われ、一定の時間間隔での動作、休止が繰返されるようになっている。
【0031】
洗濯水の温度が設定温度に達した場合には(ステップS18にてYes)、ステップS19にて、温水ヒータ16がオフされる。この後、さらにステップS20にて、循環ポンプ24が駆動されると共に、ステップS21にて、回転槽12が低速で回転されて槽撹拌の動作が行われる。図5に示すように、これらの動作は所定時間、例えば全体で5分間連続して行われる(ステップS22)。
【0032】
所定時間の動作が終了すると(ステップS22にてYes)、ステップS23にて循環ポンプ24の動作が停止されると共に、ステップS24にて回転槽12の撹拌動作が停止され、高濃度抗菌すすぎの動作が終了し、すすぎの行程が終了する。このような高濃度抗菌すすぎの動作が終了すると、ステップS25にて、排水弁25が開放され、ステップS26にて、脱水の行程が実行される。脱水行程では、回転槽12が高速で一方向回転されることが所定時間行われ、洗濯運転が終了する。
【0033】
上述のように、高濃度抗菌すすぎ動作が実行されることにより、水槽9内の洗濯水が約40℃の温水とされた状態で、循環ポンプ24が駆動されることにより、その温水が循環経路内の抗菌剤ユニット22を通った上で、回転槽12内の洗濯物に向けて散水されるようになる。このとき、洗濯水が抗菌剤ユニット22を通過する際に、洗濯水にその抗菌剤が溶け込むのであるが、洗濯水が温水とされていることにより、常温の水を用いた場合に比べて抗菌剤が高濃度で溶け込むようになる。
【0034】
ここで、図6は、本実施形態で使用されている抗菌ガラスと称される抗菌剤の、溶解度合いの温度依存性を調べた結果を示している。横軸が水温、縦軸が、精製水100mlを各温度に維持し、22.2gの抗菌剤を入れて24時間経過した後の、抗菌剤の質量の減少量を表しており、温度が高くなるほど、減少量つまり溶解度が比例的に大きくなる結果が得られている。水温が20℃の常温の場合の質量減少量が0.0363gであったのに対し、水温を40℃の温水としたものでは、質量減少量が0.0703gとなり、常温の場合の1.9倍(約2倍程度)の溶解量となる。
【0035】
これにて、本実施形態では、高濃度抗菌すすぎ動作において、常温の場合と比較して、抗菌剤が温水内に約2倍の高濃度で溶け込むようになり、洗濯物に対し、高濃度の抗菌剤を浸み込ませることができる。従って、洗濯運転終了後の洗濯物における、抗菌効果をより一層高めることができ、雑菌の繁殖による臭いの発生などを効果的に防止することができるのである。尚、温水の温度をより高くすれば、その分抗菌剤の溶解濃度を高くすることができるのであるが、温水にユーザが触れてしまうこと等を考慮すると、さほど高い温度とすることなく、40℃程度とすることが望ましいと考えられる。
【0036】
このように本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。本実施形態の洗濯機1では、すすぎの行程において、温水ヒータ16により水槽9内の洗濯水の加熱状態で、循環ポンプ24を駆動して回転槽12内の洗濯物に向けて散水する高濃度抗菌すすぎ動作の実行を可能とした。これにより、高濃度抗菌すすぎ動作の実行によって、洗濯物に対し、高濃度の抗菌剤を浸み込ませることができ、抗菌効果をより一層高めることができる。この結果、洗濯物の抗菌効果の高い洗濯運転の実行を可能とするという優れた効果を得ることができる。
【0037】
特に実施形態では、すすぎ動作(ためすすぎ)の実行後に、水槽9内の洗濯水が所定水位の状態で、高濃度抗菌すすぎ動作を実行するようにした。これにより、比較的低い水位、つまり少ない水量で加熱時間を短く済ませることができる。これと共に、循環ポンプ24の駆動を、一定の時間にわたって行うことにより、高濃度の抗菌剤を含んだ水を洗濯物に浸透させることができ、十分な抗菌効果を得ることができる。
【0038】
また、最終すすぎの実行後に、高濃度抗菌すすぎ動作を実行するようにしたので、高濃度の抗菌剤を含んだ水を洗濯物に浸透させた状態のまま、脱水行程に進み、洗濯を終えることができるので、高濃度の抗菌剤の効果を十分に享受することができる。更に本実施形態では、高濃度抗菌すすぎ動において、回転槽12を回転駆動して洗濯物の撹拌動作を併せて行うようにしたので、洗濯物の撹拌動作によって、洗濯物全体にわたって高濃度の抗菌剤をしみこませることができ、より一層効果的となる。
【0039】
(2)第2の実施形態、その他の実施形態
図7及び図8は、第2の実施形態を示すものであり、上記第1の実施形態と異なる点は、制御装置8が実行する、高濃度抗菌すすぎ動作の動作内容にある。この第2の実施形態では、制御装置8は、上記第1の実施形態(図5)における、ステップS20〜ステップS22の処理動作を省略するようにしている。
【0040】
即ち、本実施形態では、すすぎ2の後、ステップS12からの高濃度抗菌すすぎ動作が開始されると、水槽9内の洗濯水が設定水位となっている状態で(ステップS12〜S14)、温水ヒータ16がオンされ、洗濯水が加熱される(ステップS15)。これと併せて、循環ポンプ24が駆動されると共に、回転槽12が低速で回転されて槽撹拌の動作が行われる(ステップS16、S17)。ステップS18にて、水槽9内の洗濯水の温度が設定温度、例えば40℃まで上昇したかどうかが判断される。設定温度に至らない場合には(ステップS18にてNo)、ステップS15からの処理が繰返される。
【0041】
そして、洗濯水の温度が設定温度に達した場合には(ステップS18にてYes)、図8にも示すように、温水ヒータ16がオフされる(ステップS19)。これと共に、ステップS23にて循環ポンプ24の動作が停止されると共に、ステップS24にて回転槽12の撹拌動作が停止され、高濃度抗菌すすぎの動作が終了する。この後、排水が行われ(ステップS25)、脱水行程が実行され(ステップS26)、洗濯運転が終了する。
【0042】
この第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、高濃度抗菌すすぎ動作の実行によって、洗濯物に対し、高濃度の抗菌剤を浸み込ませることができ、抗菌効果をより一層高めることができる。この結果、洗濯物の抗菌効果の高い洗濯運転の実行を可能とするという優れた効果を得ることができる。また、洗濯水の温度が設定温度に達したところで、高濃度抗菌すすぎ動作を終了するようにしたので、高濃度抗菌すすぎ動作に要する時間を比較的短く済ませることができる。
【0043】
尚、図示はしないが、以下に述べるその他の実施形態のように構成することも可能である。即ち、上記実施形態では、ドラム式の洗濯機1に適用したが、洗濯機としては、ドラム式の洗濯機に限られず、水槽および回転槽の中心軸線が上下方向に向く、いわゆる縦軸型の洗濯機にも適用することができる。この場合、回転槽の底部のパルセータに一体に設けられたポンプ羽根を用いて、水槽内の洗濯水を揚水し、水槽の側壁部を上方に延びる流路を通して回転槽の上部から散水するといった循環を行う構成のものに、温水ヒータや抗菌剤を設けることにより、上記各実施形態と同様に実施することができる。この構成では、パルセータの駆動によって洗濯物の撹拌動作を行うことができる。
【0044】
また、上記した各実施形態では、ユーザの動作設定キーの操作によって、高濃度抗菌すすぎ動作が実行されるように構成したが、自動の洗濯運転のコースに、高濃度抗菌すすぎ動作を組込んでおき、そのコースの実行時には、高濃度抗菌すすぎ動作を毎回実行するように構成しても良い。その他、所定温度等の水温や、各部の駆動時間等の時間の具体的数値としても、一例を示したに過ぎず、適宜変更することが可能であるなど、要旨を逸脱しない範囲内で様々に変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0045】
図面中、1は洗濯機、2は外箱、5は操作パネル、8は制御装置(制御手段)、9は水槽、12は回転槽(洗い槽)、16は温水ヒータ、17は水温センサ、21は機内排水ホース(循環経路)、22は抗菌剤ユニット、24は循環ポンプ、27は循環ホース(循環経路)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8