(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記姿勢検出生地は、着用者の右部肩峰近傍から右部肩甲骨を通り左部第十二肋骨近傍に到る部位に配された右部帯状生地と、着用者の左部肩峰近傍から左部肩甲骨を通り右部第十二肋骨近傍に到る部位に配される左部帯状生地とを含み、前記右部帯状生地と前記左部帯状生地が左右の肩甲骨の中央下部で交差するように配されている請求項1記載の衣料。
前記姿勢検出生地は、着用者の右部肩甲骨と左部肩甲骨とを結び、左右の肩甲骨またはその周辺領域を通過するように配置された水平帯状生地を含む請求項1記載の衣料。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された歪みセンサ付き布帛の伸縮性能は、合成樹脂、ゴム、不織布、金属等で構成される基板に依存し、布帛本体の伸縮性能と一致するものではないため、着用者の姿勢により変化する被服の伸縮状態を精度よく検出するのが困難であるという問題があった。
【0007】
また、被服に配置される歪みセンサの面積が大きくなると、基板により通気性が阻害されるという問題もあり、日常的に着用することができないという問題もあった。
【0008】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、日常的に着用でき、着用者の姿勢の変化に起因する身生地の伸縮状態を正確に検出することができる衣料を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明による衣料の第一の特徴構成は、身生地が体表面を被覆する伸縮生地で構成される衣料であって、前記身生地の伸縮状態の変化を電気特性の変化に変換する姿勢検出生地が前記身生地と一体に編成または前記身生地に接合され、前記姿勢検出生地で検出される電気特性の変化に基づいて着用者の姿勢を検出可能に構成さ
れ、前記姿勢検出生地は、少なくとも着用者の計測対象部位に配置され、前記身生地の伸縮状態と相関して電気特性が変化する第1の導電性伸縮生地と、前記第1の導電性伸縮生地に電気的に接続され、前記身生地の伸縮状態にかかわらず電気抵抗が略一定の第2の導電性伸縮生地を含み、前記第2の導電性伸縮生地は、コース方向にループが形成された導電糸と、コース方向に挿入された弾性糸とで編成され、ヒートセットにより弾性糸が導電糸に熱融着した編地で構成されている点にある。
【0010】
体表面を被覆する伸縮性の身生地と一体に編成または身生地に接合された姿勢検出用の伸縮編地が、身生地の伸縮に伴って伸縮する当該姿勢検出生地の電気特性の変化により、着用者の姿勢が検出されるようにな
る。
【0011】
そして、着用者の計測対象部位に配置された姿勢検出生地である第1の導電性伸縮生地が身生地の伸縮に伴って伸縮し、身生地の伸縮状態と相関をもって姿勢検出生地の電気特
性が変化するので、身生地の伸縮状態を正確に姿勢検出生地の抵抗変化として検出することができるようになる。
【0012】
また、着用者の計測対象部位に第1の導電性伸縮生地を配した構造のみでは第1の導電性伸縮生地により身生地の伸縮を良好に検出できない虞がある。第1の導電性伸縮生地を配した領域とその周辺部で身生地の伸縮特性が変化するためである。例えば、計測対象部位で身生地が伸長する場合に、身生地と一体で第1の導電性伸縮生地が伸長すれば問題ないのであるが、第1の導電性伸縮生地の周縁部で身生地側が余分に伸長して第1の導電性伸縮生地の伸長が妨げられる場合が想定される。
【0013】
そのような場合でも、第1の導電性伸縮生地に第2の導電性伸縮生地を電気的に接続することで、第1の導電性伸縮生地の周縁部で身生地側の余分な伸長が阻まれ、着用者の姿勢変化に対応した身生地の伸縮に対応して第1の導電性伸縮生地が伸縮可能になり、身生地の伸縮状態を正確に検出できるようになる。しかも、第2の導電性伸縮生地を第1の導電性伸縮生地の
電気特性の変化を伝達する信号伝送媒体として機能させることができるので抵抗変化を検出するための電極の配置の自由度を確保することができるようになる。
【0014】
第2の導電性伸縮生地は、ヒートセットにより弾性糸が導電糸に熱融着された状態となるので、伸長状態であっても収縮状態であっても導電糸のループの接触状態が殆ど変化することがなく、従って伸縮により電気特性は殆ど変化することがない。
【0015】
同第
二の特徴構成
は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記姿勢検出生地は、着用者の右部肩峰近傍から右部肩甲骨を通り左部第十二肋骨近傍に到る部位に配された右部帯状生地と、着用者の左部肩峰近傍から左部肩甲骨を通り右部第十二肋骨近傍に到る部位に配される左部帯状生地とを含み、前記右部帯状生地と前記左部帯状生地が左右の肩甲骨の中央下部で交差するように配されている点にある。
【0016】
姿勢検出生地を構成する右部帯状生地と左部帯状生地が背部で交差するように身生地に設けると着用者の上半身の姿勢を検出することができ、例えば猫背になっているか否かを検出できるようになる。このとき、右部帯状生地を着用者の右部肩峰近傍から右部肩甲骨を通り左部第十二肋骨近傍に到る部位に配し、左部帯状生地を着用者の左部肩峰近傍から左部肩甲骨を通り右部第十二肋骨近傍に到る部位に配すると、各帯状生地が肩峰と第十二肋骨で位置決めされ、身生地が伸縮する際に、姿勢検出生地が計測対象部位からずれるようなことが回避できるようになる。
【0017】
同第
三の特徴構成
は、上述の第
二の特徴構成に加えて、前記右部帯状生地は右部肩峰を挟むように複数本平行配置されるとともに、前記左部帯状生地は左部肩峰を挟むように複数本平行配置されている点にある。
【0018】
各帯状生地が肩峰を挟むように配置されることにより、各帯状生地が肩峰でグリップされてずれるようなことがなくなり、また複数本の姿勢検出生地により冗長検出されるので、例えば平均値を求める等により検出精度を高めることができるようになる。
【0019】
同第四の特徴構成
は、上述の第
二または第
三の特徴構成に加えて、前記右部帯状生地及び前記左部帯状生地のうち少なくとも左右の肩峰から交差位置迄は
前記第1の導電性伸縮生地で構成され、その他の部位は前記第1の導電性伸縮生地に電気的に接続され
た前記第2の導電性伸縮生地で構成されている点にある。
【0020】
左右の肩峰から交差位置迄を身生地の伸縮状態と相関して電気
特性が変化する第1の導電性伸縮生地で構成することにより、それ以外の領域で身生地が伸縮することによる影響が排除されるので正確な電気
特性の計測ができるようになる。しかも、第2の導電性伸縮生地を第1の導電性伸縮生地の
電気特性の変化を伝達する信号伝送媒体として機能させることができるので、
電気特性の変化を検出するための電極の配置の自由度を確保することができるようになる。
【0021】
同第
五の特徴構成
は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記姿勢検出生地は、着用者の右部肩甲骨と左部肩甲骨とを結び、左右の肩甲骨またはその周辺領域を通過するように配置された水平帯状生地を含む点にある。
【0022】
水平帯状生地により左右の肩甲骨の間の皮膚の伸縮状態が検出され、背中が丸まっているか胸が張られた状態であるかが正確に把握できるようになる。
【0023】
同第
六の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記姿勢検出生地は、着用者の右部肩甲骨と左部肩甲骨とを結び、左右の肩甲骨の上下方向下方を通過するように配置された水平帯状生地を含む点にある。
【0024】
水平帯状生地が肩甲骨の上下方向下方を通過するように配置されることによって、左右の肩甲骨の間の皮膚の伸縮状態が極めて良好に検出できるようになる。
【0025】
同第
七の特徴構成
は、上述の第
五または第
六の特徴構成に加えて、前記水平帯状生地は、前
記第1の導電性伸縮生地で構成され、前記第1の導電性伸縮生地の端部に電気的に接続され
た前記第2の導電性伸縮生地が左右の肩部から胸側に延出するように配置されている点にある。
【0026】
第1の導電性伸縮生地に第2の導電性伸縮生地を電気的に接続することで、第1の導電性伸縮生地の周縁部で身生地側の余分な伸長が阻まれ、着用者の姿勢変化に対応した身生地の伸縮に対応して第1の導電性伸縮生地が伸縮可能になり、身生地の伸縮状態を正確に検出できるようになる。しかも、第2の導電性伸縮生地を第1の導電性伸縮生地の
電気特性の変化を伝達する信号伝送媒体として機能させることができ、左右の肩部から胸側に延出するように配置すれば、
電気特性の変化を検出するための電極の配置を胸側に配置して、
電気特性を検出する回路ブロックを胸側で操作できるようになる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した通り、本発明によれば、日常的に着用でき、着用者の姿勢の変化に起因する身生地の伸縮状態を正確に検出することができる衣料を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明による衣料の一例である上半身用衣料を図面に基づいて説明する。
図1(a),(b),(c)に示すように、本発明による上半身用衣料100は、着用者の上半身の姿勢の歪み、例えば背中が前に曲がった猫背になっているか否か等を、日常的に検出可能な衣料100である。
【0030】
当該衣料100は、二方向の伸縮性の身生地1で前身頃2と後身頃3と袖4が構成され、着用者の身体の表面に密接するように構成されている。そのため、着用者の姿勢の変化に伴って皮膚表面が伸長或いは収縮すると、それに伴って身生地1が皮膚表面に沿って同様に伸縮するようになる。
【0031】
このときの身生地1の伸縮の程度を検出するべく、身生地1の伸縮状態の変化を電気特性の変化に変換する姿勢検出生地5が身生地1と一体に編成または身生地1に接合されている。接合態様として、姿勢検出生地5を身生地1に接着する態様または
姿勢検出生地5を身生地1に縫着する態様がある。
【0032】
身生地1の伸縮に伴って伸縮する姿勢検出生地5で検出される電気特性の変化に基づいて着用者の姿勢が把握できるようになる。
【0033】
姿勢検出生地5は、少なくとも着用者の計測対象部位に配置され、身生地1の伸縮状態と相関して電気抵抗が変化する第1の導電性伸縮生地6と、第1の導電性伸縮生地6に電気的に接続され、身生地1の伸縮状態にかかわらず電気抵抗が略一定の第2の導電性伸縮生地7とで構成されている。
【0034】
詳述すると、姿勢検出生地5は、着用者の右部肩峰20近傍から右部肩甲骨を通り左部第十二肋骨近傍に到る部位に配された右部帯状生地5Aと、着用者の左部肩峰30近傍から左部肩甲骨を通り右部第十二肋骨近傍に到る部位に配される左部帯状生地5Bとを含み、右部帯状生地5Aと左部帯状生地5Bが左右の肩甲骨の中央下部P0で交差するように配されている。
【0035】
右部帯状生地5Aは右胸上部P1を始点として、右部肩峰20近傍を通過し、右部肩甲骨、肩甲骨の中央下部P0、左部第十二肋骨近傍P2、左腹部を通過して臍下部P3に配されている。
【0036】
左部帯状生地5Bは左胸上部P4を始点として、左部肩峰30近傍を通過し、左部肩甲骨、肩甲骨の中央下部P0、右部第十二肋骨近傍P5、左腹部を通過して臍下部P3に配され、臍下部P3で右部帯状生地5Aと電気的に接続されている。
【0037】
右部帯状生地5A及び左部帯状生地5Bのうち少なくとも左右の肩峰20,30から交差位置P0迄の間は、身生地1の伸縮状態と相関して電気抵抗が変化する第1の導電性伸縮生地6で構成され、その他の部位つまり交差位置P0から臍下部P3迄の間及び左右の肩峰20,30から始点P1,P4迄の間は、第1の導電性伸縮生地6に電気的に接続され、身生地の伸縮状態にかかわらず電気抵抗が略一定の第2の導電性伸縮生地7で構成されている。
【0038】
左右の肩峰20,30から交差位置P0を通過して腰部に到る迄の間を第1の導電性伸縮生地6で構成してもよい。計測対象部位の全てまたは一部を覆う領域に第1の導電性伸縮生地6が配置されていればよい。
【0039】
第1の導電性伸縮生地6及び第2の導電性伸縮生地7は共に身生地に接着または縫着固定されており、第1の導電性伸縮生地6と第2の導電性伸縮生地7との接合部は縁部が僅かに重畳するように配置され、両者が導電性接着剤で接着され、或いは導電性繊維で縫着固定されることにより電気的に接続されている。
【0040】
右部帯状生地5Aを着用者の右部肩峰20近傍から右部肩甲骨を通り左部第十二肋骨近傍に到る部位に配し、左部帯状生地5Bを着用者の左部肩峰30近傍から左部肩甲骨を通り右部第十二肋骨近傍に到る部位に配すると、各帯状生地5A,5Bが肩峰20,30の出っ張りと第十二肋骨の出っ張りによりそれぞれで位置決めされるアンカー効果によって、着用者の姿勢の変動に伴って身生地1が伸長または収縮する際に、姿勢検出生地5が計測対象部位からずれるようなことが回避できるようになる。
【0041】
右部帯状生地5Aは右部肩峰20を挟むように二本平行配置されるとともに、左部帯状生地5Bは左部肩峰30を挟むように二本平行配置されている。
【0042】
一対の帯状生地5Aが肩峰20を挟むように配置され、一対の帯状生地5Bが肩峰30を挟むように配置されることにより、各帯状生地5A,5Bが肩峰20,30でグリップされて肌面から身生地1がずれるようなことがなくなり、また複数本の姿勢検出生地5により姿勢変化に伴って生じる電気特性の変化が冗長検出されるので、例えば平均値を求める等により検出精度を高めることができるようになる。
【0043】
左右の肩峰20,30から交差位置P0迄を身生地の伸縮状態と相関して電気抵抗が変化する第1の導電性伸縮生地6で構成されるので、それ以外の領域で身生地が伸縮することによる影響が排除されるようになり、着用者の姿勢変化に伴う正確な電気抵抗の計測ができるようになる。
【0044】
また、着用者の計測対象部位に第1の導電性伸縮生地6を配した構造のみでは第1の導電性伸縮生地6により身生地の伸縮を良好に検出できない虞がある。第1の導電性伸縮生地6を配した領域とその周辺部で身生地1の伸縮特性が変化するためである。例えば、計測対象部位で身生地1が伸長する場合に、身生地1と一体で第1の導電性伸縮生地6が伸長すれば問題ないのであるが、第1の導電性伸縮生地6の周縁部で身生地1側が余分に伸長して第1の導電性伸縮生地6の伸長が妨げられる場合が想定される。
【0045】
そのような場合でも、第1の導電性伸縮生地6に第2の導電性伸縮生地7を電気的に接続することで、第1の導電性伸縮生地6の周縁部で身生地1側の余分な伸長が阻まれ、着用者の姿勢変化に対応した身生地1の伸縮に対応して第1の導電性伸縮生地6が伸縮可能になり、身生地1の伸縮状態を正確に検出できるようになる。しかも、第2の導電性伸縮生地7を第1の導電性伸縮生地6の抵抗変化を伝達する信号伝送媒体として機能させることができるので抵抗変化を検出するための電極の配置の自由度を確保することができるようになる。
【0046】
図2(a)に示すように、右部帯状生地5A及び左部帯状生地5Bの始点P1,P4を一対の電極として信号処理部SPを取り付けることにより、抵抗値の変化が検出されるようになる。信号処理部SPは、例えば定電流源と電圧検出部を備え、オームの法則に基づいた演算を行なう抵抗検出回路や、定電圧源と電流検出部を備え、オームの法則に基づいた演算を行なう抵抗検出回路と、演算結果を外部に送信する無線送信器等を備えて構成することができる。
【0047】
また、電極となる右部帯状生地5A及び左部帯状生地5Bの始点P1,P4に凹部と凸部の係合により固定する金属製のスナップボタンSの一方を取り付け、他方を信号処理部SPに取付けることにより、電極となる始点P1,P4に信号処理部SPを電気的に接続可能としながらも着脱自在に構成することができる。
【0048】
本実施形態では、右部帯状生地5A及び左部帯状生地5Bが臍下部P3で連結されているので、左右一対の第1の導電性伸縮生地6の直列抵抗の変化が検出できるようになる。右部帯状生地5A及び左部帯状生地5Bの下端部が臍下部P3で連結することなく、夫々電気的に絶縁されるように分離配置すれば、右部帯状生地5Aの始点P1と終点、左部帯状生地5Bの始点P4と終点でそれぞれの抵抗の変化が検出できるようになる。
【0049】
図4及び
図5には、第1の導電性伸縮生地6の編組織が示されている。第1の導電性伸縮生地6は、導電糸10で編成された平編地に弾性糸11をインレイによってコース方向に挿入して構成されている。導電糸10の1コース毎に弾性糸11を1コース挿入してあり、弾性糸11は、導電糸10に沿わせつつ導電糸10のループに絡ませている。
【0050】
「導電糸」とは、金属成分が糸表面に露出した裸素材を言う。また「弾性糸」とは、引っ張り力の無負荷時(非伸長時=常態)では収縮状態を維持し、引っ張り力が負荷されたときには引っ張り力に応じて自由に伸長するものであって、且つ、この引っ張り力を解除して無負荷時に戻せば、伸長状態から元の収縮状態に復元する(収縮する)素材を言う。
【0051】
導電糸10として、樹脂繊維や天然繊維、或いは金属線等を芯として、この芯に湿式や乾式のコーティング、メッキ、真空成膜、その他の適宜被着法を行って金属成分を被着させた金属被着線(メッキ線)を使用するのが好適である。芯には、モノフィラメントを採用することも可能ではあるが、モノフィラメントよりもマルチフィラメントや紡績糸のほうが好ましい。更にはポリウレタン繊維のような伸縮性を備えた繊維を用いることも可能である。被覆部としてウーリー加工糸やSCY、DCYなどのカバリング糸、毛羽加工糸などの嵩高加工糸がより好ましい。
【0052】
芯に被着させる金属成分には、例えばアルミ、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、錫、亜鉛、鉄、銀、金、白金、バナジウム、モリブデン、タングステン、コバルト等の純金属やそれらの合金、ステンレス、真鍮等を使用することができる。
【0053】
弾性糸11として、ポリウレタンやゴム系のエラストマー材料を単独で用いてもよいし、「芯」にポリウレタンやゴム系のエラストマー材料を用い、「カバー」にナイロンやポリエステルを用いたカバリング糸などを採用することができる。このようなカバリング糸を採用することで、親水性、撥水性、耐食・防食性、カラーリング等の機能を付与させることができる。また肌触りの向上や伸びの制御にも有用である。なお、弾性糸11として、導電性素材を含んだ糸を使用することも可能である。
【0054】
弾性糸11が、導電糸10による平編地に対してコース方向に挿入されているので、この弾性糸11が導電糸10による平編地をコース方向に引き締めるように作用する。これにより、身生地が伸長していないときには、弾性糸11の引き締め力によってコース方向で隣接する導電糸10のループ同士の接触状態が保持される(
図4参照)。
【0055】
導電糸10の個々のループは、コース方向で収縮した形状に変形され、この変形形状が保持される。導電糸10は導電性の裸素材であるから、ループによる接触箇所数が多ければ多いほど、またコース方向で押し縮められることで接触面積が増大すればするほど、導通接点の数、すなわち、導通面積が多く、通電経路が短くなり、コース方向に離れた2箇所間での電気抵抗が小さくなる。
【0056】
身生地が伸長しているときには、導電糸10のループ同士が、弾性糸11による引き締め力に抗して離反するようになる。このときの導電糸10のループの離反挙動は、全ループが一斉に離反するのではなく、編地の伸長度合いに比例して接触圧が徐々に低下しながらも未だ接触状態を維持するもの(非伸長時よりも接触面積が減少したもの)や、接触を解除して隙間を徐々に広げるもの、或いは非伸長時の接触状態を維持するもの等が混在する状況を経ることになる(
図5参照)。
【0057】
そのため、非伸長時から伸長を開始してその伸長度が大きくなればなるほど、導通面積が減少し、通電経路が長くなり、電気抵抗は徐々に大きくなる傾向を示す。当然に、身生地2による伸長力が解除されると、弾性糸11によるコース方向の引き締め力によってコース方向に収縮し、非伸長時の状態に復元するので、導通面積の増加に伴って電気抵抗は小さくなる。
【0058】
図4,5では、導電糸10で平編地を編成する例を説明したが、ゴム編地(フライス編)で地組織を構成し、弾性糸11をインレイによってコース方向に挿入してもよい。
【0059】
即ち、第1の導電性伸縮生地6は、コース方向にループが形成された導電糸10と、コース方向に挿入され収縮状態で各ループが接触し伸長状態で各ループが離反可能な弾性糸11とで編成された編地で構成されている。
【0060】
さらに、第2の導電性伸縮生地7は、コース方向にループが形成された導電糸と、コース方向に挿入された弾性糸とで編成され、ヒートセットにより弾性糸が導電糸の交編部に熱融着した編地で構成されている。
【0061】
つまり、第1の導電性伸縮生地6とほぼ同じ編組織で構成され、弾性糸11として低融点ポリウレタンが用いられ、第1の導電性伸縮生地6で用いる導電糸10よりも太い導電糸10が用いられている。
【0062】
ヒートセットにより弾性糸11が導電糸10の交編部に熱融着された状態となるので、基本的に弾性糸11によってコース方向に収縮力が作用することがなく、多少の伸長状態であっても収縮状態であっても導電糸10のループの接触状態が殆ど変化することがなく、従って伸縮により抵抗値は殆ど変化することがない。
【0063】
第1の導電性伸縮生地6及び第2の導電性伸縮生地7は、長手方向がコース方向に沿うように帯状に形成されている。
【0064】
図6(a),(b)に示すように、第1の導電性伸縮生地6として、弾性糸11を芯部として、導電糸10を一重に被覆したSCYまたは二重に被覆したDCYとしたカバリング糸14により編成された生地を用いることも可能である。
【0065】
図6(c)に示すように、生地の伸長時に、弾性糸11そのものが伸長することにより巻き付けられた導電糸10の隙間が広がり、隣り合ったコース同士での導電糸の接点が減少することにより抵抗値が変化する。
【0066】
図6(d)には、このようなカバリング糸を用いた平編地が例示されている。カバリング糸としてSCYとDCYのどちらを用いても良いが、DCYは導電糸どうしの交差部があり導通が確保できる上に被覆密度が上がりやすく、初期抵抗値を下げる効果が得られるのでより好ましい。弾性糸のドラフト率と導電糸の撚り数は肌着用に通常用いられるカバリング糸と同程度(たとえばドラフト率1.0〜5.0倍程度、撚り数50〜2000T/m程度)であればよい。
【0067】
この例のように、姿勢検出生地5は、身生地1と一体に編成されることも可能であり、身生地1のうち姿勢検出生地5を配置すべき領域のみ身生地1と一体に編成することも可能である。また、身生地1と一体に編成する態様として、身生地の編成後に上述したカバリング糸を身生地に縫い込んで姿勢検出生地5として機能するように構成することも可能である。
【0068】
身生地1を編成する原糸として綿等の天然繊維が好適に用いられる。また、天然繊維以外に、キュプラ、ビスコースレーヨン等の再生セルロース繊維、ポリエステル等の合成繊維等を用いることができる。
【0069】
身生地1としてフライス編みやスムース編み、更には天竺編み等の緯編地や、ラッセル編み等の経編地を好適に用いることができる。身生地1に緯編地を用いる場合には、コース方向が身幅に沿うように、そしてウェール方向が着丈に沿うように用いられることが好ましい。
【0070】
身生地1として、熱変形性弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で熱変形性弾性糸を熱変形させることにより解れ止め加工した編地で、端縁が切りっ放し処理されている編地を用いることがさらに好ましい。
【0071】
このような解れ止め加工を施した編地を採用すれば、洗濯を繰り返しても切りっ放し処理された端部から繊維が解れるようなことが無く、見栄えの悪化を招くことが無い。また、例えば端部を折り返して縫着するような従来の解れ止め加工が不要になるので、従来の解れ止め処理による端部の厚み等に起因する肌触りの悪化による不快感を招くことがなく、肌に優しい衣類が提供できるようになる。
【0072】
図7に示すように、プレーティング編みは添え糸編みともいい、既存の編成方法を採用することができる。例えば複数本の糸をそれぞれ別の給糸口から、編み針に給糸する編成方法を用いると編成ループそれぞれの糸の配置が安定的に定まるため、特に好ましい。従って、熱変形性弾性糸12とそれ以外の糸13とを別の給糸口から編み針に給糸して編み立てられたプレーティング編地は、各編成ループにおける熱変形性弾性糸12とそれ以外の糸13との配置が安定しているため、全てのループに熱変形性弾性糸を隣接させることができ、ヒートセット加工等により熱変形性弾性糸を熱変形させれば、編地の全てのループで確実に解れ止め機能が実現できるようになる。
【0073】
具体的に、熱変形性弾性糸12に低融点ポリウレタン弾性糸、それ以外の糸13に綿糸とレーヨンの混紡糸を選択し、フライス編みまたはスムース編みで編成された編地をヒートセット加工することにより、低融点ポリウレタン弾性糸が溶融して互いに融着することで、解れ止め機能が実現される。
【0074】
熱変形性弾性糸として低融点ポリウレタン弾性糸のような熱融着性弾性糸を用いる以外に、ポリウレタンウレア弾性繊維を用いることも可能である。ヒートセット加工等の加熱加工によりポリウレタンウレア弾性繊維同士またはポリウレタンウレア弾性繊維と相手糸との接触点でポリウレタンウレア弾性繊維の圧縮変形が発生し、ポリウレタンウレア弾性繊維同士またはポリウレタンウレア弾性繊維への相手糸の固着が生じるため、編地からポリウレタンウレア弾性繊維や相手糸が抜けにくくなり、カールや解れが抑制された編地を得ることができる。つまり、加熱処理により溶融し或いは圧縮変形するような特性を備えた熱変形性弾性糸であればこれらに限るものではない。
【0075】
このような解れ止め加工された編地を採用すれば、前身頃と後身頃と袖部を接着剤で接合することができ、その際に上述した姿勢検出生地5も接着剤で身生地に接合することができるようになる。
【0076】
接着剤となる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、EVA系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト樹脂、反応型ホットメルト樹脂等が挙げられる。中でも反応型ホットメルト樹脂は、接着強度が高く、しかも短時間での接着が可能な点で特に好ましい。
【0077】
図9(a),(b)には、本発明による上半身用衣料100の別の態様が示されている。姿勢検出生地5は、着用者の右部肩甲骨と左部肩甲骨とを結び、左右の肩甲骨またはその周辺領域を通過するように配置された水平帯状生地5Cで構成されていることが好ましい。水平帯状生地5Cにより左右の肩甲骨の間の皮膚の伸縮状態が検出され、背中が丸まっているか胸が張られた姿勢の良い状態であるかが把握できるようになる。
【0078】
水平帯状生地5Cは、着用者の右部肩甲骨と左部肩甲骨とを結び、左右の肩甲骨の上下方向下方を通過するように配置されていることがさらに好ましく、左右の肩甲骨の間の皮膚の伸縮状態が極めて良好に検出できるようになる。
【0079】
水平帯状生地5Cは、身生地1の伸縮状態と相関して電気抵抗が変化する第1の導電性伸縮生地6で構成され、第1の導電性伸縮生地6の端部に電気的に接続され、身生地1の伸縮状態にかかわらず電気抵抗が略一定の第2の導電性伸縮生地7が左右の肩部から胸側に延出するように配置されていることが好ましい。
【0080】
第2の導電性伸縮生地7を第1の導電性伸縮生地6の抵抗変化を伝達する信号伝送媒体として機能させることができ、左右の肩部から胸側に延出するように配置すれば、抵抗変化を検出するための電極の配置を胸側に配置して、抵抗を検出する信号処理部SPを胸側で着脱操作できるようになる。
【0081】
図8には、第1の導電性伸縮生地6及び第2の導電性伸縮生地7の抵抗値特性が示されている。
図8には、参考として、銅線を導電糸として用い、弾性糸として155dtexのポリウレタン繊維を用いて交編した導電性伸縮生地の特性も示している。
【0082】
第1の導電性伸縮生地6は、155dtexのポリウレタン繊維を芯糸に用い、芯糸をメッキ糸33dtexでダブルカバリングしてDCYとした導電糸のみでフライス編みされた編地で構成されている。
【0083】
第2の導電性伸縮生地7は、155dtexのポリウレタン繊維を芯糸に用い、芯糸をメッキ糸231dtex(77dtex×3本)でDCYしたカバリング糸を導電糸として用い、弾性糸として110dtexの低融点ポリウレタン繊維を用いて交編した後にヒートセット加工により、低融点ポリウレタン繊維を導電糸の交差部に融着して構成されている。
【0084】
第1の導電性伸縮生地6は生地の伸長率と抵抗率が線形の関係が現れるが、第2の導電性伸縮生地7は生地の伸長率に関わらず略一定の抵抗率となる。
【0085】
このような第1の導電性伸縮生地6及び第2の導電性伸縮生地7を用いて
図1に示す衣料を作成して、姿勢変化を検出する実験を行なった。
【0086】
図2(a),(b),(c)に示すように、姿勢検出生地5の両端に電極となるスナップボタンSを介して信号処理部SPを取り付けて、着用者の姿勢が正立姿勢から猫背姿勢に変化する際の皮膚の伸びと抵抗値の変化量を計測した。符号AからHは姿勢検出生地5に沿った皮膚の伸びの計測範囲を示している。符号A,B,Hは前身に対応する部位、符号CからGは後身に対応する部位である。
【0087】
図3に示すように、正立姿勢を基準に猫背姿勢に変化すると、後身では皮膚が伸長し、前身では皮膚が収縮すること、その程度が検出した抵抗変化とほぼ相関が得られることが判明した。尚、
図3中、「順手」とは左右の腕を左右それぞれの体側に沿わせた状態、「交差」とは左右の腕を前で交差させた状態で猫背姿勢に変化させた場合のデータである。
【0088】
上述した実施形態では、半袖の上半身用の衣料を例に本発明を説明したが、長袖に構成されていてもよい。上述した実施形態では解れ止め加工された切りっ放し生地を身生地に用いた例を説明したが、このような身生地に限るものではなく、着用者の体表面を被覆する伸縮生地で構成される限り、身生地の編組織、糸種等が制限されるものではない。
【0089】
上述した実施形態では、姿勢検出生地で検出される電気特性の変化が抵抗値の変化である場合について説明したが、本発明に用いられる姿勢検出生地は姿勢の変化に伴って変化する任意の電気特性の変化を利用することができる。
【0090】
例えば、インダクタンス、静電容量、共振周波数等である。導電性繊維を絶縁性繊維でカバーし、さらにその周りを導電性繊維でカバーした糸を用いた編地または織地で姿勢検出生地を構成し、当該生地の伸長によってインダクタンス及び容量が変化して共振周波数の変化を検知するような構成であってもよい。
【0091】
この場合、信号処理部から編地または織地に周波数をスイープした交流信号を印加し、その振幅の変化に基づいて共振周波数の変化を検知することができる。
【0092】
半袖の上半身用の衣料ではなく下半身用の衣料として本発明を実現することも可能である。