(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1及び
図2は、トラックなどの自動車に搭載された空調システムの一例を示す。なお、空調システムは、トラック以外の自動車に搭載することもできる。
【0010】
自動車の空調システム100は、吸込口切替ユニット120と、ブロワユニット140と、調温ユニット160と、左右一対のサイドベンチレータダクト180と、デフロスタダクト200と、フットダクト220と、左右一対のサイドベンチレータダクト180の一方の中間部と吸込口切替ユニット120とを接続する接続ダクト240と、を有する。
【0011】
吸込口切替ユニット120は、円筒形状のケーシング122と、この内部空間に回転自由に内挿される円筒形状の弁体124と、ケーシング122に対して弁体124を相対回転させるサーボモータなどのアクチュエータ126と、を有する。ここで、円筒形状とは、完全な円筒形状に限らず、見た目で円筒形状と認識できる程度でよい。
【0012】
ケーシング122の円環形状の外周には、車室外の外気を導入する外気導入口122Aと、車室内の内気を導入する内気導入口122Bと、接続ダクト240を接続するダクト接続口122Cと、空気を排出する排出口122Dと、が夫々形成されている。弁体124の円環形状の外周には、
図3で詳細に示すように、例えば、矩形形状をなす4つの開口124A〜124Dが形成されている。弁体124の開口124A〜124Dは、ケーシング122に対する弁体124の相対回転角度に応じて、
図3〜
図5に夫々示すように、外気導入口122Aと排出口122D、内気導入口122Bと排出口122D、ダクト接続口122Cと排出口122Dを選択的に連通可能な位置に形成されている。ここで、内気導入口122Bは、車室の比較的低い位置で開口している。
【0013】
従って、ケーシング122に対する弁体124の相対回転角度を第1の角度にすると、
図3に示すように、外気導入口122Aと排出口122Dとが連通される。また、ケーシング122に対する弁体124の相対回転角度を第2の角度にすると、
図4に示すように、内気導入口122Bと排出口122Dとが連通される。さらに、ケーシング122に対する弁体124の相対回転角度を第3の角度にすると、
図5に示すように、ダクト接続口122Cと排出口122Dとが連通される。要するに、吸込口切替ユニット120は、外気導入口122A、内気導入口122B及びダクト接続口122Cを選択的に開通させる。
【0014】
ここで、吸込口切替ユニット120は、円筒形状のケーシング内で回転する円筒形状の弁体を有する、ロータリー式の流路切替弁としての吸込口切替手段の一例として挙げられる。なお、吸込口切替ユニット120は、ロータリー式の流路切替弁に限らず、公知の流路切替弁とすることもできる。
【0015】
ブロワユニット140は、吸込口切替ユニット120の下流に配置され、空気を送風する円筒形状のブロワファン142と、これを回転駆動させる電動モータ144と、を有する。従って、ブロワユニット140は、吸込口切替ユニット120の外気導入口122A、内気導入口122B又はダクト接続口122Cを介して吸い込まれた空気を、その下流に配置された調温ユニット160に供給することができる。
【0016】
調温ユニット160は、ブロワユニット140の下流に配置され、冷媒を使用して空気を冷却するエバポレータ162と、エンジン冷却水を使用して空気を加温するヒータコア164と、を有する。また、調温ユニット160は、エバポレータ162を通過した空気のうち、ヒータコア164へと導入する導入量を変更して空気を設定温度に調温する、エアミックスドア166及びこれを駆動するアクチュエータ168を更に有する。さらに、調温ユニット160は、サイドベンチレータダクト180への通路を開閉するベンチレータドア170及びこれを駆動するアクチュエータ172と、デフロスタダクト200への通路を開閉するデフロスタドア174及びこれを駆動するアクチュエータ176と、を更に有する。
【0017】
左右一対のサイドベンチレータダクト180は、調温ユニット160の下流に配置され、調温ユニット160で設定温度に調温された空気を、その先端部に位置する吹出口182へと導いて車室内の左右へと吹き出す。なお、
図1に示す空調システム100では、各サイドベンチレータダクト180には2つの吹出口182が形成されているが、その数は任意とすることができる。また、左右一対のサイドベンチレータダクト180の一方、具体的には、運転席と反対側に位置する助手席側のサイドベンチレータダクト180の中間部には、接続ダクト240の一端部が接続されている。
【0018】
デフロスタダクト200は、調温ユニット160の下流に配置され、調温ユニット160で設定温度に調温された空気を、その先端部に位置する吹出口202からフロントウインドウ(図示せず)の左右及び中央の内面へと吹き出す。フットダクト220は、調温ユニット160の下流に配置され、調温ユニット160で設定温度に調温された空気を、その先端部に位置する吹出口222から左右の足元へと吹き出す。なお、デフロスタダクト200の吹出口202及びフットダクト220の吹出口222は、
図1に示す個数に限らず、任意の個数とすることができる。
【0019】
接続ダクト240の他端部、即ち、サイドベンチレータダクト180に接続された一端部の反対側に位置する端部は、吸込口切替ユニット120のダクト接続口122Cに接続されている。従って、接続ダクト240は、一方のサイドベンチレータダクト180と吸込口切替ユニット120とを連通させる。
【0020】
一方のサイドベンチレータダクト180と接続ダクト240との接続箇所の近傍には、接続ダクト240の通路と接続ダクト240の接続箇所より上流に位置するサイドベンチレータダクト180の通路とを選択的に閉じる、ドア260及びこれを駆動するアクチュエータ262が配設されている。ここで、ドア260及びアクチュエータ262が、閉路手段の一例として挙げられる。
【0021】
運転席に対面するダッシュボードの所定箇所には、運転者などが空調システム100のモード設定、吹出口選択、温度設定、風量設定などを行う、コントローラ280が取り付けられている。また、車室内の助手席には、助手席に乗員が乗車しているときにON信号を出力する着座センサ300が取り付けられている。そして、コントローラ280及び着座センサ300の各出力信号は、例えば、マイクロコンピュータを内蔵した電子制御装置320に入力されている。なお、電子制御装置320には、図示しない、内気温度を検出する内気温度センサ、外気温度を検出する外気温度センサ、日照量(照度)を検出する日照センサの各出力信号が更に入力されている。ここで、電子制御装置320が、制御手段の一例として挙げられる。
【0022】
そして、電子制御装置320は、例えば、フラッシュROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリに格納された制御プログラムを実行することで、コントローラ280の操作状態、着座センサ300,内気温度センサ,外気温度センサ及び日照センサの各出力信号に応じて、吸込口切替ユニット120のアクチュエータ126、ブロワユニット140の電動モータ144、各ドアのアクチュエータ168,172,176及び262を夫々電子制御する。
【0023】
具体的には、電子制御装置320は、コントローラ280のファンスイッチがONになると、ブロワユニット140の電動モータ144を作動させて、ブロワファン142による送風を開始する。また、電子制御装置320は、コントローラ280のエアコンスイッチがONになっていると、ブロワユニット140の作動時にコンプレッサ(図示せず)を作動させる。さらに、電子制御装置320は、コントローラ280の吹出口の選択状態に応じて、ベンチレータドア170のアクチュエータ172及びデフロスタドア174のアクチュエータ176を制御すると共に、設定温度並びに内気温度センサ,外気温度センサ及び日照センサの各出力信号に応じて、ブロワユニット140の電動モータ144を制御する。その他、電子制御装置320は、コントローラ280のモード選択状態及び着座センサ300の出力信号に応じて、吸込口切替ユニット120のアクチュエータ126及びドア260のアクチュエータ262を制御する。
【0024】
図6は、ブロワユニット140の電動モータ144が作動したことを契機として、電子制御装置320が所定時間ごとに繰り返し実行する制御プログラムの一例を示す。なお、制御プログラムを実行する前提条件として、サイドベンチレータダクト180への通路が開いているものとする。
【0025】
ステップ1(図では「S1」と略記する。以下同様。)では、電子制御装置320が、コントローラ280のモードスイッチの出力信号を読み込み、内気循環モードか外気導入モードかを判定する。ここで、モードスイッチは、例えば、外気導入モードのときOFF信号、内気循環モードのときON信号を出力するスイッチとすることができる。そして、電子制御装置320は、内気循環モードであると判定すれば、処理をステップ2へと進める(Yes)。一方、電子制御装置320は、外気導入モードであると判定すれば、処理をステップ7へと進める(No)。
【0026】
ステップ2では、電子制御装置320が、着座センサ300の出力信号を読み込み、これがONとなっているか否かを介して、助手席に乗員が着座しているか否か、即ち、複数名乗車であるか否かを判定する。そして、電子制御装置320は、複数名乗車であると判定すれば、処理をステップ3へと進める(Yes)。一方、電子制御装置320は、複数名乗車でない、要するに、運転者のみが乗車している1名乗車であると判定すれば、処理をステップ5へと進める(No)。
【0027】
ステップ3では、電子制御装置320が、吸込口切替ユニット120のアクチュエータ126に駆動信号を出力することで、ケーシング122に対する弁体124の相対回転角度を第2の角度にし、内気導入口122Bと排出口122Dとを連通させる。
【0028】
ステップ4では、電子制御装置320が、ドア260のアクチュエータ262に駆動信号を出力することで、接続ダクト240の通路を閉じる。ここで、ドア260によって接続ダクト240の通路を閉じると、その上流に位置するサイドベンチレータダクト180の通路が開き、ここを空気が通過することができる。その後、電子制御装置320は、所定時間での処理を終了させる。
【0029】
ステップ5では、電子制御装置320が、吸込口切替ユニット120のアクチュエータ126に駆動信号を出力することで、ケーシング122に対する弁体124の相対回転角度を第3の角度にし、ダクト接続口122Cと排出口122Dとを連通させる。
【0030】
ステップ6では、電子制御装置320が、ドア260のアクチュエータ262に駆動信号を出力することで、接続ダクト240の接続箇所の上流に位置するサイドベンチレータダクト180の通路を閉じる。ここで、ドア260によってサイドベンチレータダクト180の通路を閉じると、接続ダクト240の通路が開き、ここを空気が通過することができる。その後、電子制御装置320は、所定時間での処理を終了させる。
【0031】
ステップ7では、電子制御装置320が、吸込口切替ユニット120のアクチュエータ126に駆動信号を出力することで、ケーシング122に対する弁体124の相対回転角度を第1の角度にし、外気導入口122Aと排出口122Dとを連通させる。
【0032】
ステップ8では、電子制御装置320が、ドア260のアクチュエータ262に駆動信号を出力することで、接続ダクト240の通路を閉じる。その後、電子制御装置320は、所定時間での処理を終了させる。
【0033】
かかる空調システム100によれば、コントローラ280のモードスイッチが外気導入モードに操作されていれば、
図7に示すように、吸込口切替ユニット120によって外気導入口122Aと排出口122Dとが連通されると共に、ドア260によって接続ダクト240の通路が閉じられる。そして、外気導入口122Aから導入された外気は、ブロワユニット140のブロワファン142によって送風され、調温ユニット160へと供給される。調温ユニット160へと供給された外気は、設定温度に応じて調温された後、左右一対のサイドベンチレータダクト180を経て、車室の左右から車室内へと吹き出される。この場合、車室内に外気が導入されるので、例えば、車室内の空気の二酸化炭素濃度を低下させることができ、運転者の覚醒度を向上させることができる。
【0034】
コントローラ280のモードスイッチが内気循環モードに操作されていれば、着座センサ300の出力信号に応じて複数名乗車であるか否かが判定される。複数名乗車であれば、
図8に示すように、吸込口切替ユニット120によって内気導入口122Bと排出口122Dとが連通されると共に、ドア260によって接続ダクト240の通路が閉じられる。そして、内気導入口122Bから導入された内気は、ブロワユニット140のブロワファン142によって送風され、調温ユニット160へと供給される。調温ユニット160へと供給された内気は、設定温度に応じて調温された後、左右一対のサイドベンチレータダクト180を経て、車室の左右から車室内へと吹き出される。この場合、冷房運転時には、一度冷却された内気が再び調温ユニット160へと導入されるので、冷房効率を向上させることができる(以下同様)。
【0035】
一方、内気循環モードにおいて1名乗車であれば、
図9に示すように、吸込口切替ユニット120によってダクト接続口122Cと排出口122Dとが連通されると共に、ドア260によって接続ダクト240の接続箇所より上流に位置するサイドベンチレータダクト180の通路が閉じられる。この状態では、吸込口切替ユニット120の排出口122Dは、接続ダクト240を介して、一方のサイドベンチレータダクト180の吹出口182と連通する。このため、ブロワユニット140のブロワファン142が回転駆動することで、図示するように、一方のサイドベンチレータダクト180の吹出口182から内気が導入され、これが調温ユニット160へと供給される。調温ユニット160へと供給された内気は、設定温度に応じて調温された後、他方のサイドベンチレータダクト180の吹出口182から車室内へと吹き出される。
【0036】
従って、車室内には、
図10に示すように、運転席側の吹出口182から吹き出された内気が、助手席側の吹出口182から吸い込まれる、空気の循環が生じる。このため、車室内の温度分布のむらが短時間で小さくなり、設定温度に達するまでの時間を短縮することができる。また、設定温度に達するまでの時間が短縮することから、空調システム100のコンプレッサの作動時間が短くなり、例えば、コンプレッサの交換サイクル(交換時期)を延長することもできる。
【0037】
図11は、所定条件下で予測した、空調システム100の冷房効果の一例を示す。
空調システム100の作動直後において、運転者の頭部温度が約52℃、エバポレータ162の入口温度(内気温度)が約42℃であったが、運転者の頭部温度が約15分後には30℃付近まで低下した。これは、サイドベンチレータダクト180の吹出口182から吸い込んだ内気は、内気導入口122Bから吸い込んだ内気よりも温度が高いため、調温ユニット160の冷房要求が高まり、急速に冷房が行なわれると共に、車室内に空気の循環が生じたためであると考えられる。
【0038】
以上説明した空調システム100では、内気循環モードにおいて1名乗車のとき、一方のサイドベンチレータダクト180の吹出口182から内気を吸い込んだが、助手席側に位置する、デフロスタダクト200の吹出口202及びフットダクト220の吹出口222の少なくとも一方から内気を吸い込むようにしてもよい。即ち、空調システム100は、内気循環モードにおいて1名乗車であれば、助手席側に位置する、サイドベンチレータダクト180、デフロスタダクト200及びフットダクト220の少なくとも1つの先端部開口から内気を吸い込むこともできる。この場合、接続ダクトを介して、デフロスタダクト200及びフットダクト220の中間部と吸込口切替ユニット120のダクト接続口122Cとを接続すると共に、接続箇所の近傍にドア及びこれを駆動するアクチュエータを配設すればよい。