特許第6702725号(P6702725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702725
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】改良されたポックスウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20200525BHJP
   C12N 15/30 20060101ALI20200525BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20200525BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20200525BHJP
   C07K 14/005 20060101ALI20200525BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20200525BHJP
   C07K 14/37 20060101ALI20200525BHJP
   C07K 14/44 20060101ALI20200525BHJP
   C07K 14/82 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 39/002 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20200525BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20200525BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20200525BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20200525BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200525BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20200525BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20200525BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20200525BHJP
【FI】
   C12N15/12ZNA
   C12N15/30
   C12N15/31
   C12N15/863 Z
   C07K14/005
   C07K14/195
   C07K14/37
   C07K14/44
   C07K14/82
   A61K39/002
   A61K39/02
   A61K39/12
   A61K39/00 G
   A61K39/00 H
   A61P31/00
   A61P31/12
   A61P33/00
   A61P35/00
   A61P31/04
   A61P31/10
   A61K39/00 K
   A61K31/7088
   A61K48/00
   A61K39/39
   A61K35/761
   A61K35/76
【請求項の数】20
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-562528(P2015-562528)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-510989(P2016-510989A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】IB2014059802
(87)【国際公開番号】WO2014141176
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年3月7日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2013/055409
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ、コロカ
(72)【発明者】
【氏名】リッカルド、コルテーゼ
(72)【発明者】
【氏名】アントネラ、フォルゴリ
(72)【発明者】
【氏名】アルフレード、ニコシア
【審査官】 星 功介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/062656(WO,A1)
【文献】 特表2012−509071(JP,A)
【文献】 Drillien, R., et al.,Modified vaccinia virus Ankara induces moderate activation of human dendritic cells,Journal of General Virology,2004年,85,2167-2175
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 14/00−14/825
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸構築物を含んでなる改変ワクシニアアンカラ(MVA)ベクターであって、該核酸構築物が、
(i)少なくとも一つの抗原タンパク質またはその抗原フラグメントをコードする核酸配列、ここで該核酸配列が下記(ii)と作動可能に連結され、および
(ii)少なくとも一つのバリアント鎖をコードする核酸、ここで該少なくとも一つのバリアント鎖が下記である
(a)天然インバリアント鎖、または
(b)天然インバリアント鎖と少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントを含んでなる、ベクター。
【請求項2】
少なくとも一つのコードされるインバリアント鎖が哺乳動物起源のものである、請求項1に記載のMVAベクター。
【請求項3】
コードされる少なくとも一つのインバリアント鎖が、配列番号1もしくは配列番号3であるか、または配列番号1または配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1または2に記載のMVAベクター。
【請求項4】
少なくとも一つの抗原タンパク質が、病原生物のタンパク質、癌特異的タンパク質、または異常な生理応答反応に関連するタンパク質である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のMVAベクター。
【請求項5】
病原生物がウイルス、細菌、原生生物または多細胞寄生生物である、請求項4に記載のMVAベクター。
【請求項6】
医薬としての使用のための、請求項1〜5のいずれか一項に記載のMVAベクター。
【請求項7】
免疫応答のプライミングまたはブースティングにおいて使用するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載のMVAベクター。
【請求項8】
免疫応答のプライミングが同種プライム−ブーストワクチン接種レジメンの一部である、請求項7に記載のMVAベクター。
【請求項9】
免疫応答のプライミングが異種プライム−ブーストワクチン接種レジメンの一部である、請求項7に記載のMVAベクター。
【請求項10】
MVAベクターが、鼻腔内、筋肉内、皮下、皮内、胃内、経口、または局所経路を介して投与される、請求項1〜9のいずれか一項に記載のMVAベクター。
【請求項11】
(a)(i)少なくとも一つの第1の抗原タンパク質またはその抗原フラグメントをコードする核酸配列、ここで該核酸配列が下記(ii)と作動可能に連結され、および
(ii)少なくとも一つのバリアント鎖をコードする核酸、ここで該少なくとも一つのバリアント鎖が下記である
.天然インバリアント鎖、または
2.天然インバリアント鎖と少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントを含んでなる核酸構築物を含んでなるMVAベクター、ならびに
(b)少なくとも一つの第2の抗原タンパク質もしくはその抗原フラグメント、または
一つの第2の抗原タンパク質またはその抗原フラグメント、または
ウイルス様粒子
をコードする核酸配列を含んでなる第2のベクター
を含んでなり、
ここで、該第1の抗原タンパク質またはその抗原フラグメントの少なくとも一つのエピトープが該第2の抗原タンパク質またはそのフラグメントと免疫学的に同一である、ワクチンの組合せ。
【請求項12】
第2のベクターがアデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アルファウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、アレナウイルスベクター、パラミクソウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、裸のDNAおよびウイルス様粒子から選択される、請求項11に記載のワクチンの組合せ。
【請求項13】
アデノウイルスベクターが非ヒト大型類人猿由来アデノウイルスベクターである、請求項12に記載のワクチンの組合せ。
【請求項14】
アデノウイルスベクターがチンパンジーまたはボノボアデノウイルスベクターである、請求項13に記載のワクチンの組合せ。
【請求項15】
プライム−ブーストワクチン接種レジメンにおいて使用するための、請求項11〜14のいずれか一項に記載のワクチンの組合せ。
【請求項16】
MVAベクター(a)が免疫応答のプライミングに使用され、(b)のベクターまたは抗原タンパク質が免疫応答のブースティングに使用される、請求項15に記載のワクチンの組合せ。
【請求項17】
(a)のベクターまたは抗原タンパク質が免疫応答のプライミングに使用され、MVAベクター(b)が免疫応答のブースティングに使用される、請求項15に記載のワクチンの組合せ。
【請求項18】
免疫応答が鼻腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、胃内投与、経口投与および局所投与からなる群から選択される投与経路によってプライミングされ、免疫応答が鼻腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、胃内投与、経口投与および局所投与からなる群から選択される投与経路によってブースティングされる、請求項16または17に記載のワクチンの組合せ。
【請求項19】
対象における免疫応答の刺激において使用するための、請求項1または2に記載のMVAベクターを含んでなる組成物。
【請求項20】
核酸構築物を含んでなるMVAベクターを含む組成物であって、該核酸構築物が、
(i)少なくとも一つの抗原タンパク質またはその抗原フラグメントをコードする核酸配列、ここで該核酸配列が下記(ii)と作動可能に連結され、および
(ii)少なくとも一つのバリアント鎖をコードする核酸、ここで該少なくとも一つのバリアント鎖が下記である
.天然インバリアント鎖、または
2.天然インバリアント鎖と少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントを含んでなる、
組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
技術分野
本出願は、抗原タンパク質とインバリアント鎖をコードする核酸構築物を含んでなる改良されたポックスウイルスワクチン、およびこのようなポックスウイルスベクターの新規な投与レジメンに関する。特に、免疫応答のプライミングまたはブースティングのための前記ポックスウイルスベクターの使用が開示される。
【0002】
背景技術
感染性疾患は、なお人間にとって大きな脅威である。感染性疾患を予防または治療する一つの方法は、抗原物質を個体に投与し、個々の抗原に対する適応免疫応答を生じさせるというワクチン接種による免疫応答の人工的誘導である。抗原物質は、構造的には完全であるが不活化されている(すなわち、非感染性)は、もしくは弱毒された(すなわち、感染性が低減された)病原体(例えば、微生物またはウイルス)、または免疫原生が高いことが分かっている病原体の精製された成分であり得る。病原体に対する免疫応答を誘導するためのもう一つのアプローチは、病原体の免疫原性タンパク質またはペプチドをコードする1以上のベクターを含んでなる発現系の提供である。このようなベクターは裸のプラスミドDNAの形態であってもよく、または免疫原性タンパク質もしくはペプチドは、例えば、改変ワクシニアウイルス(例えば、改変ワクシニアアンカラ、MVA)もしくはアデノウイルスベクターに基づくウイルスベクターを使用することにより送達することもできる。このような発現系は、環境条件に対する感受性が低い、十分に特徴付けられた成分を含んでなるという利点を有する。
【0003】
ベクターに基づく発現系を開発する場合、これらの発現系の患者への適用が、個々の病原体による感染に対して防御性のある免疫応答を惹起するということが特定の目的となる。しかしながら、発現系によっては、病原体に対して免疫原性応答を誘導するものの、その病原体による感染から完全に防御するに十分強い免疫応答を惹起することができない場合がある。よって、病原体に対して防御免疫応答を誘導できる改良された発現系、ならびに増強された免疫応答を惹起する既知の発現系の新規な投与レジメン(regimen)の必要がなお存在する。
【0004】
抗原は、MHC分子により抗原提示細胞の表面に提示されるペプチドフラグメントである。抗原は、外来(すなわち、病原性)起源のもの、またはその生物体自体に由来するものであり得、後者は自己抗原と呼ばれる。MHC分子には、MHCクラスI(MHC−I)とMHCクラスII(MHC−II)の2つのクラスが存在する。MHC−I分子は、各細胞内で合成されたペプチドのフラグメントを提示する。MHC−II分子は、貪食作用により取り込まれ、次いでエンドソーム内で消化されたペプチドのフラグメントを提示する。一般に、MHC−II分子は、マクロファージまたは樹状細胞などの「専門の」抗原提示細胞によってのみ発現される。MHC−II分子に結合した抗原は、ヘルパーT細胞によって認識される。MHC−II分子によって提示された抗原に対する、ヘルパーT細胞のT細胞受容体の結合は、抗原提示細胞によって分泌されたサイトカインとともに、THの表現型の未熟なヘルパーT細胞の、様々なタイプのエフェクター細胞への成熟を誘導する。
【0005】
MHC−II分子は、小胞体で合成され、小胞体を離れてMHCクラスIIコンパートメントに入る膜結合型受容体である。内在性のペプチド、すなわち、自己抗原が、MHC−II分子と結合しないようにするために、新生MHC−II分子は別のタンパク質であるインバリアント鎖と結合し、このインバリアント鎖がMHC−II分子のペプチド結合溝を遮断している。MHCクラスIIコンパートメントが、貪食作用と消化を受けたタンパク質を含有する後期エンドソームと融合すると、インバリアント鎖が切断されて、MHC−II分子と結合したCLIP領域のみが残る。第2段階で、CLIPはHLA−DM分子によって除去され、外来抗原のフラグメントが自由に結合することができるMHC−II分子が残る。前記フラグメントは、このMHCクラスIIコンパートメントが原形質膜とひと度融合すると抗原提示細胞の表面に提示され、このようにして他の細胞、主としてヘルパーT細胞に外来抗原を提示する。
【0006】
アデノウイルスを用いて投与した場合、インバリアント鎖と、ワクチン接種に使用される発現系により含まれる抗原との融合は、前記抗原に対する免疫応答を増強するということが、これまでに見出されている(US2011/0293704として公開され、インバリアント鎖配列を開示する目的で引用することにより本明細書の開示の一部とされるWO2007/062656)。さらに、前記アデノウイルス構築物は、プライム−ブースティングワクチン接種レジメンに関して免疫応答をプライミングするために有用であることを実証した(US2010/0278904として公開され、インバリアント鎖配列をコードするアデノウイルスベクターを開示する目的で引用することにより本明細書の開示の一部とされるWO2010/057501)。本発明者らは、驚くことに、インバリアント鎖抗原融合物の送達のためにアデノウイルスの代わりにポックスウイルスを用いると、所与の抗原に対する免疫応答が同等に増強され得ることを見出した。この方法で、免疫応答を生じさせることが可能である。ポックスウイルスベクターは、免疫応答のプライミングに使用した場合にもこの効果を惹起したことは特に驚くべきことである。
【発明の概要】
【0007】
第1の側面において、本発明は、免疫応答のプライミングまたはブースティングにおいて使用するための核酸構築物を含んでなるポックスウイルスベクターであって、前記核酸構築物が、
(i)作動可能に連結された、少なくとも一つの抗原タンパク質またはその抗原フラグメントをコードする核酸配列と、
(ii)少なくとも一つのインバリアント鎖をコードする核酸
を含んでなるベクターに関する。
【0008】
別の側面において、本発明は、
(a)(i)作動可能に連結された、少なくとも一つの第1の抗原タンパク質またはその抗原フラグメントをコードする核酸配列と、
(ii)少なくとも一つのインバリアント鎖をコードする核酸
を含んでなる核酸構築物を含んでなるポックスウイルスベクター、ならびに
(b)少なくとも一つの第2の抗原タンパク質もしくはその抗原フラグメント、または
一つの第2の抗原タンパク質またはその抗原フラグメント、または
をコードする核酸配列を含んでなるウイルスベクター
を含んでなり、
ここで、前記第1の抗原タンパク質またはその抗原フラグメントの少なくとも一つのエピトープが前記第2の抗原タンパク質またはそのフラグメントと免疫学的に同一であるワクチンの組合せに関する。
【0009】
さらに別の側面において、本発明は、プライム−ブーストワクチン接種レジメンにおいて使用するための上記のワクチンの組合せに関する。このようなポックスウイルスベクターおよびの組合せを使用する方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】インバリアント鎖(li)−NS抗原をコードするMVAは、マウスにおいてより強いT細胞応答を誘導する。2群のマウスを2×10^5プラーク形成単位(pfu)の、NS抗原を含んでなるMVA(左のパネル)およびインバリアント鎖に連結されたNSを含んでなるMVA(右のパネル)で免疫した。NS抗原に対する全T細胞応答をIFNγ ELISpotにより測定し、y軸の数字はスポット形成細胞(SFC)/100万脾細胞を表す。
図2】インバリアント鎖(li)−NS抗原をコードするMVAは、マウスにおいて対応するアデノよりも強いT細胞応答を誘導する。2群のマウスを、NSをコードするMVA(MVA wt)またはヒトインバリアント鎖に連結されたNSをコードするMVA(MVAli)で免疫した。さらに2群のマウスを同等用量の、NSをコードするChAd3(ChAd3 wt)またはヒトインバリアント鎖に連結されたNSをコードするChAd3(ChAd3li)で免疫した。NS抗原に対する全T細胞応答をIFNγ ELISpotにより測定し、y軸の数字はスポット形成細胞(SFC)/100万脾細胞を表す。
図3】インバリアント鎖に連結されたNSを含んでなるMVAでのブースティングはマカクザルにおいてHCV−NS特異的T細胞の生成を増大させる。4個体のマカクザル2群をChAd3IiNSでプライミングし、50週間後にMVA−NS(灰色のバー)またはMVA−IiNS(黒いバー)でブースティングした。パネルAは、ブースト1週間後(ピークブースト)または3か月後(記憶)のIFNγ ELIspotによる応答を示す。y軸の数字はスポット形成細胞(SFC)/100万PBMCを表す。パネルBは、MVAIiNSでのブースト1週間後のIFNγ ICSによるより高いCD8頻度を示す(黒いバー)。y軸の数字は抗原特異的CD8 T細胞産生IFNγの%を表す。
図4】ヒトインバリアント鎖の4つのアイソフォーム(p33、p35、p41、p43、アイソフォームc)とネズミインバリアント鎖の2つのアイソフォーム(p31、p41)を示す概略図。ヒトp35およびp43では、付加的な16残基が翻訳の選択的開始のためにN末端に存在する。ヒトp41およびp43アイソフォームおよびネズミp41アイソフォームでは、付加的ドメインが選択的スプライシングのために存在する。ヒトcアイソフォームはヒトp33およびp35に比べて2つのエキソン(ヒトp41およびp43に比べて3つのエキソン)を欠き、フレームシフトを引き起こす。
【発明の具体的説明】
【0011】
そうではないことが定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0012】
例えば、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)", Leuenberger, H.G.W, Nagel, B. and Klbl, H. eds. (1995), Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland) に記載の通りに定義される。
【0013】
本明細書および以下に続く特許請求の範囲を通して、文脈がそうではないことを要求しない限り、「含んでなる(comprise)」という用語および「含んでなる(comprises)」および「含んでなる(comprising)」などの変形は、示された整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を包含するが、任意の他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を排除しないことを意味すると理解される。
【0014】
本明細書の文面にはいくつかの文献が引用されている。本明細書に引用される各文献(全ての特許、特許出願、化学刊行物、製造者の仕様書、説明書などを含む)は、前掲も後掲も、引用することによりその全内容が本明細書の開示の一部とされる。本明細書において、本発明は先行発明のためにこのような開示に先行する権利がないことを認めたものと解釈されるべきでない。本発明のある側面に関して本明細書に提供された定義は全て、本発明の他の側面にも当てはまる。
【0015】
本発明の基礎にある問題は、特許請求の範囲および以下の基性で特徴付けられる実施形態によって解決される。
【0016】
第1の側面において、本発明は、免疫応答のプライミングまたはブースティングにおいて使用するための核酸構築物を含んでなるポックスウイルスベクターであって、前記核酸構築物が、
(i)作動可能に連結された少なくとも一つの抗原タンパク質またはその抗原フラグメントをコードする核酸配列と、
(ii)少なくとも一つのインバリアント鎖をコードする核酸
を含んでなるベクターに関する。
【0017】
本発明において使用する場合、用語「ポックスウイルスベクター」は、ポックスウイルス科(Poxviridae)の天然に存在するメンバー、または核酸構築物を個体の細胞に導入することができるそれに由来するウイルスベクターを意味する。本発明の文脈において、導入される核酸構築物によりコードされている抗原およびインバリアント鎖が、ポックスウイルスベクターにより導入された際に前記細胞内で発現されることが企図される。
【0018】
ポックスウイルス科は、二本鎖DNAからなるゲノムを特徴とする。好適には、ポックスウイルスベクターは、チョルドポックスウイルス(chordopoxvirinae)亜科、より好ましくは、オルソポックス、パラポックス、ヤタポックス、アビポックス(好ましくは、カナリア痘(ALVAC)または鶏痘(FPV))およびモルシポックスからなる群から選択される前記亜科の属に属する。いっそうより好ましくは、ポックスウイルスベクターはオルソポックスに属し、ワクシニアウイルス、NYVAC(ワクシニアのコペンハーゲン株由来)、改変ワクシニアアンカラ(MVA)、ウシポックスウイルスおよびサル痘ウイルスからなる群から選択される。最も好ましくは、ポックスウイルスベクターはMVAである。
【0019】
MVAの記載は、Mayr A, Stickl H, Muller HK, Danner K, Singer H. “The smallpox vaccination strain MVA: marker, genetic structure, experience gained with the parenteral vaccination and behavior in organisms with a debilitated defense mechanism. “Abstammung, Eigenschaften und Verwendung des attenuierten Vaccinia-Stammes MVA.” Zentralbl Bakteriol B. 1978 Dec、 167(5-6):375-90およびMayr, A., Hochstein-Mintzel, V. & Stickl, H. (1975). Infection 3, 6-14に見出すことができる。
【0020】
MVAは、ニワトリ胚線維芽細胞で570回を超える継代培養中に複数の完全に特徴付けられた欠失を受けたワクシニアウイルスの高弱毒株である。これらは、宿主域遺伝子およびサイトカイン受容体をコードする遺伝子を含んでいた。包含されるウイルスは、ヒトおよびほとんどの他の哺乳動物細胞で効率的に複製できないが、複製欠陥はビリオン集合の後期に起こるので、ウイルス遺伝子および組換え遺伝子の発現は損なわれず、これにより、MVAは哺乳動物において感染を引き起こすことができない効率的な1回発現ベクターとなる。
【0021】
一実施形態では、MVAは、CEF細胞でのワクシニアウイルスの571回目の継代培養から得られたウイルスシードバッチ460MGに由来する。別の実施形態では、MVAは、ウイルスシードバッチMVA 476 MG/14/78に由来する。さらなる実施形態では、MVAは、1978年12月31日以前に由来または作出され、プリオン汚染フリーである。
【0022】
本発明の使用のためのさらなるポックスウイルスベクターは、MVAと類似の特性を有する。特に、それらは感染性であるが、ヒトにおいて複製不能である。この形質のために、複製のためにはタンパク質をトランスで発現させる必要があり得る。一般に、これらのタンパク質はウイルス生産細胞株で安定的にまたは一時的に発現され、それにより、ウイルスの複製を可能とする。
【0023】
用語「核酸」は、ヌクレオチドモノマーから構成されるポリマー高分子を意味する。ヌクレオチドモノマーは、核酸塩基、五炭糖(例えば、限定されるものではないが、リボースまたは2’−デオキシリボース)、および1〜3個のリン酸基から構成される。一般に、ポリヌクレオチドは、個々のヌクレオチドモノマー間のホスホジエステル結合を介して形成される。本発明の文脈において、核酸分子には、限定されるものではないが、リボ核酸(RNA)とデオキシリボ核酸(DNA)が含まれる。さらに、用語「ポリヌクレオチド」には、DNAまたはRNAの人工類似体、例えば、ペプチド核酸(PNA)も含まれる。
【0024】
用語「核酸構築物」は、少なくとも一つの抗原タンパク質と少なくとも一つのインバリアント鎖をコードする核酸を意味する。好適には、前記核酸は、核酸構築物によりコードされているポリペプチドの転写および翻訳を指示するエレメントをさらに含んでなる。このようなエレメントには、無細胞系または細胞系、例えば、細胞系においてmRNAの転写を指示するためのプロモーターおよびエンハンサーエレメントが含まれる。好適には、このようなプロモーターおよび/またはエンハンサーは、ポックスウイルスベクターの内在性プロモーターおよび/またはエンハンサーである。この酸性構築物が翻訳可能なRNAとして提供される場合には、核酸構築物は、少なくとも一つの免疫原性ポリペプチドをコードするRNAの翻訳および/または安定化に必要なエレメント、例えば、ポリAテール、IRES、キャップ構造などを含んでなることが想定される。
【0025】
用語「実質的に同じ」とは、核酸配列またはアミノ酸配列に関して使用される場合、個々に示される参照ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の80%を超える、85%を超える、90%を超える、95%を超える、98%を超える、または99%を超える配列同一性の程度を意味する。
【0026】
2以上のポリペプチドにおける残基は、残基または残基群がポリペプチド構造において類似の位置を占める場合に、互いに「対応する」と言われる。当技術分野で周知のように、2以上のポリペプチドにおける類似の位置は、アミノ酸配列または構造的類似性に基づいてそれらのポリペプチド配列をアラインすることによって決定することができる。このようなアラインメントツールは当業者には周知であり、例えばthe World Wide Web、例えば、ClustalW (www.ebi.ac.uk/clustalw)またはAlign (www.ebi.ac.uk/emboss/align/index.html)で得られるものであり得る(標準設定を使用、例えば、Alignの場合には、EMBOSS::needle, Matrix: Blosum62, Gap Open 10.0, Gap Extend 0.5)。当業者ならば、満足なアラインメントを得るためには、いずれかの配列にギャップを導入する必要のある場合があることを理解するであろう。残基が最良の配列アラインメントでアラインされた場合に、それらの残基は「対応する」と言われる。2つのポリペプチド間の「最良の配列アラインメント」は、アラインされた同一の残基が最大数となるようなアラインメントと定義される。「最良の配列アラインメントの領域」は、アラインされた二配列間の配列類似性または同一性が10、20または30アミノ酸長にわたって30%未満、20%未満、または10%未満に低下した場合に終わり、よって、類似性スコアの決定のために比較配列の長さの境界および限界を規定する。
【0027】
上記で概略を示したように、本発明のベクターはポックスウイルスベクターであることが企図される。従って、前記ポックスウイルスベクターが複製コンピテントである場合、核酸構築物は、ウイルスベクターの複製に必要とされる核酸配列および/または核酸構築物によりコードされているポリペプチドの発現を指示する調節エレメントをさらに含む、より大きな核酸分子により含まれる。
【0028】
本発明の一実施形態では、抗原タンパク質またはその抗原フラグメントとインバリアント鎖が単一のオープンリーディングフレームによって含まれ、従って、前記オープンリーディングフレームの転写および翻訳の結果、抗原タンパク質またはその抗原フラグメントとインバリアント鎖を含んでなる融合タンパク質が生じる。
【0029】
用語「オープンリーディングフレーム」(ORF)は、アミノ酸に翻訳され得るヌクレオチド配列を意味する。一般に、このようなORFは、開始コドン、通常3ヌクレオチドの倍数の長さを持つ、それに続く領域を含むが、所与のリーディングフレーム内には終止コドン(TAG、TAA、TGA、UAG、UAA,またはUGA)を含まない。一般に、ORFは天然に存在するか、または人工的に、すなわち、遺伝子技術の手段によって構築される。ORFはタンパク質をコードし、それに翻訳され得るアミノ酸がペプチド結合した鎖を形成する。
【0030】
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において互換的に使用され、長さ、共翻訳時修飾または翻訳後修飾とは無関係に、いずれのペプチド結合したアミノ酸鎖も意味する。
【0031】
本明細書で使用する用語「翻訳後」は、ヌクレオチドトリプレットのアミノ酸への翻訳および配列中の前のアミノ酸へのペプチド結合の形成の後に起こるイベントを意味する。このような翻訳後イベントは、全ポリペプチドが形成された後に、またはすでに翻訳プロセス中にすでに翻訳されたポリペプチドの部分で起こり得る。翻訳後イベントは一般に、結果として得られるポリペプチドの化学的または構造的特性を変更または修飾する。翻訳後イベントの例としては、限定されるものではないが、アミノ酸のグリコシル化もしくはリン酸化、または例えばエンドペプチダーゼによるペプチド鎖の切断が含まれる。
【0032】
本明細書で使用する用語「共翻訳」は、ヌクレオチドトリプレットのアミノ酸鎖への翻訳プロセス中に起こるイベントを意味する。これらのイベントは一般に、結果として得られるアミノ酸の化学的または構造的特性を変更または修飾する。共翻訳時イベントの例としては、限定されるものではないが、翻訳プロセスを完全に停止させ得るか、またはペプチド結合形成の妨害により2つの離散した翻訳産物を形成させ得るイベントが含まれる。
【0033】
本発明において使用可能なタンパク質(タンパク質誘導体、タンパク質変異体、タンパク質フラグメント、タンパク質セグメント、タンパク質エピトープおよびタンパク質ドメインを含む)は、化学修飾によってさらに修飾することができる。ゆえに、このような化学修飾ポリペプチドは、20種の天然アミノ酸中に見られる残基以外の化学基を含んでなってもよい。このような他の化学基の例としては、限定されるものではないが、グリコシル化アミノ酸およびリン酸化アミノ酸が含まれる。ポリペプチドの化学修飾は、例えば、安定性の増大、生体半減期の延長、または水溶解度の増大の一つ以上など、親ポリペプチドに比べて有利な特性を提供し得る。本発明において使用可能な変異体に適用可能な化学修飾としては、限定されるものではないが、ペグ化、非グリコシル化親ポリペプチドのグリコシル化、または親ポリペプチドに存在するグリコシル化パターンの改変が含まれる。本発明において使用可能な変異体に適用可能なこのような化学修飾は、共翻訳時または翻訳後に起こり得る。
【0034】
本出願において言及される「抗原タンパク質」は、少なくとも一つのエピトープを含有する上記で定義されるようなポリペプチドである。抗原タンパク質の「抗原フラグメント」は、少なくとも一つのエピトープを含んでなる前記抗原タンパク質の部分配列である。免疫誘導目的では、免疫応答を惹起するタンパク質の部分だけが関連する。従って、核酸構築物は、病原体または癌細胞に見られるような全長抗原タンパク質をコードする必要はない。このようなタンパク質の短縮フラグメントは、そのアミノ酸配列が免疫系による抗原タンパク質の認識を負う1または複数のエピトープを含んでなる十分な長さである。
【0035】
抗原決定基としても知られる用語「エピトープ」は、本発明の文脈において使用される場合、免疫系により認識されるポリペプチドの部分である。好適には、この認識は、問題のエピトープへの抗体、B細胞またはT細胞の結合により媒介される。抗体またはB細胞により結合されるエピトープは「B細胞エピトープ」と呼ばれ、T細胞により結合されるエピトープは「T細胞エピトープ」と呼ばれる。これに関して、用語「結合」は、特異的結合を意味し、これは、抗体またはT細胞受容体(TCR)と各エピトープの間の会合定数が1×10−1以上、または1×10−1、1×10−1、1×10−1以上である結合と定義される。当業ならば、どのようにして会合定数を決定すればよいかを十分に認知している(例えば、Caoili, S.E. (2012) Advances in Bioinformatics Vol. 2012参照)。好適には、エピトープへの抗体の特異的結合は、抗体のFab(fragment, antigen binding)領域により媒介され、B細胞の特異的結合は、B細胞受容体により含まれる抗体のFab領域により媒介され、T細胞の特異的結合は、T細胞受容体の可変(V)領域により媒介される。T細胞エピトープは抗原提示細胞の表面に提示され、そこでそれらは腫瘍組織適合(MHC)分子と結合している。それぞれMHCクラスI、IIおよびIII分子と呼ばれる少なくとも3つの異なるクラスのMHC分子が存在する。MHC−I経路を介して提示されるエピトープは、細胞傷害性Tリンパ球(CD8細胞)による応答を惹起し、一方、MHC−II経路を介して提示されるエピトープは、ヘルパーT細胞(CD4細胞)による応答を惹起する。MHCクラスI分子により提示されるT細胞エピトープは一般に8〜11アミノ酸長の間のペプチドであり、MHCクラスII分子により提示されるT細胞エピトープは一般に13〜17アミノ酸長の間のペプチドである。MHCクラスIII分子はまた、糖脂質としての非ペプチドエピトープも提示する。よって、用語「T細胞エピトープ」は、MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子のいずれかにより提示され得る8〜11または13〜17アミノ酸長のペプチドを意味する。
【0036】
エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの化学的に活性な表面分子群からなり、通常、特異的な三次元構造特徴、ならびに特異的な電荷特徴を有する。用語「エピトープ」は、コンフォメーションエピトープならびに非コンフォメーションエピトープを意味する。コンフォメーションエピトープおよび非コンフォメーションエピトープは、変性溶媒の存在下で前者に対する結合は失われるが、後者に対する結合は失われないことで識別される。T細胞エピトープは非コンフォメーションであり、すなわち、それらは直鎖であり、一方、B細胞エピトープはコンフォメーションまたは非コンフォメーションであり得る。直鎖B細胞エピトープは一般に5〜20アミノ酸長の間で様々である。
【0037】
本発明による抗原タンパク質は、ウイルス、細菌、原虫および多細胞寄生生物からなる群から選択される病原体に由来する。本発明の別の実施形態では、抗原タンパク質は、癌細胞により発現されるポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントである。
【0038】
抗原タンパク質またはその抗原フラグメントは、B細胞応答またはT細胞応答またはB細胞応答とT細胞応答を誘導する。よって、抗原タンパク質または抗原フラグメントは、少なくとも一つのT細胞エピトープおよび/または少なくとも一つのB細胞エピトープを含んでなる。
【0039】
本発明の特定の例示的実施形態では、ベクターによりコードされている抗原は、C型肝炎ウイルス(HCV)に由来する。HCVゲノムは、約3000アミノ酸の前駆体ポリタンパク質をコードしている約9.5kb長の1本鎖RNAからなる(Choo et al. (1989) Science 244, 362-364、 Choo et al. (1989) Science 244, 359-362、 Takamizawa et al. (1991) J. Virol. 65, 1105-1113)。HCVポリタンパク質は、C−El−E2−p7−NS2−NS3−NS4A−NS4B−NS5A−NS5Bの順序でウイルスタンパク質を含有する。個々のウイルスタンパク質はHCVポリタンパク質のタンパク質分解によって産生される。宿主細胞プロテアーゼは推定構造タンパク質C、El、E2、およびp7を放出し、810番のアミノ酸にNS2のN末端を作出する(Mizushima et al. (1994) J. Virol. 65, 2731-2734、 Hijikata et al. (1993) P.N.A.S. USA 90, 10773-10777)。非構造タンパク質NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5Bはおそらくウイルス複製機構を形成し、ポリタンパク質から放出される。NS2およびNS3のN末端と会合している亜鉛依存性プロテアーゼは、NS2とNS3の間の切断を担う(Grakoui et al. (1993) J. Virol. 67, 1385-1395, Hijikata et al. (1993) P.N.A.S. USA 90, 10773-10777)。
NS3のN末端ドメインに位置する別のセリンプロテアーゼは、NS3/NS4A、NS4A/NS4B、NS4B/NS5AおよびNS5A7NS5B接合部でのタンパクを担う(Bartenschlager et al. (1993) J. Virol. 67, 3835-3844、 Grakoui et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 10583-10587, Tomei et al. (1993) Virol. 67, 4017-4026)。NS4Aは、NS3活性の補因子を提供する(Failla et al. (1994) J. Virol. 68, 3753-3760、 De Francesco et al, 米国特許第5,739,002号)。NS5Aは、インターフェロン耐性を付与する高リン酸化タンパク質である(De Francesco et al., (2000) Semin. Liver Dis., 20(1), 69-83、 Pawlotsky (1999) Viral Hepat. Suppl. 1, 47-48)。NS5Bは、RNA依存性RNAポリメラーゼを提供する(De Francesco et al, 国際公開第WO96/37619号, Behrens et al, EMBO 15, 12-22, 1996, Lohmann et al., Virology 249, 108-118, 1998)。
【0040】
一つの限定されない例示的実施形態では、抗原タンパク質は、不活性なNS5B RNA依存性RNAポリメラーゼ領域を含有するMet−NS3−NS4A−NS4B−NS5A−NS5Bポリペプチドである。例えば、前記抗原タンパク質は、配列番号11で定義される配列と実質的に同じアミノ酸配列を有し、それ自体をプロセシングして、配列番号11中に存在するNS5B領域と実質的に同じ少なくとも一つのポリペプチドを産生するのに十分なプロテアーゼ活性を有する。この抗原タンパク質の配列はWO2003/031588に公開されており、これはUS2004/0247615として公開され、HCVポリペプチドを開示する目的で引用することにより本明細書の開示の一部とされる。産生されたNS5Bに相当するポリペプチドは酵素的に不活性である。さらなる実施形態では、HCVポリペプチドは、配列番号11中に存在するNS3、NS4A、NS4B、NS5A、およびNS5B領域と実質的に同じポリペプチドを産生するのに十分なプロテアーゼ活性を有する。
【0041】
一実施形態では、配列番号11の配列との配列同一性の程度は、配列番号11で定義される配列の80%を超えるか、85%を超えるか、90%を超えるか、95%を超えるか、または98%を超える。しかしながら、いくつかの実施形態では、抗原タンパク質の配列は、配列番号11で定義される配列と99%を超える配列同一性を有するか、またはそれと同一である。
【0042】
「li」または「CD74」としても知られる用語「インバリアント鎖」は、非多形性II型内在性膜タンパク質を意味する。このタンパク質は、リンパ球成熟および適応免疫応答に複数の機能を有し、特に、liは、新たに合成されたMCH IIのエンドサイトーシス経路への標的化を保証し、そこでこの複合体は抗原ペプチドと遭遇し得る(Pieters J. (1997) Curr. Opin. Immunol., 9: 8996)。さらに、liは、MHCクラスIシャペロンとして機能すること (Morris et al. (2004) Immunol. Res., 30: 171-179)、およびそのエンドソーム標的化配列により、共有結合された抗原に向けられたCD4の刺激を促進すること(CD8Tはそうではない)(Diebold et al. (2001) Gene Ther. 8: 487-493)が示されている。
【0043】
ヒトインバリアント鎖では、4つの異なるアイソフォームが知られ、一般にp33、p35、p41およびp43と呼ばれている(Strubin et al., 1986, EMBO Journal, 5: 3483- 3488)。配列番号1および配列番号2は、ヒトインバリアント鎖p35アイソフォームのアミノ酸配列および核酸配列に相当する。ヒトp33およびp41に関しては、ヒトp35およびp43アイソフォームは、翻訳の選択的開始のためにN末端に付加的な16個の残基を含む。ヒトp33およびp35に比べ、ヒトp41およびp43アイソフォームは、インバリアント鎖のC末端領域にインフレームで挿入された付加的ドメイン(エキソン6bの選択的スプライシング)を含んでなる。配列番号5および配列番号6は、ヒトインバリアント鎖p43アイソフォームのアミノ酸配列および核酸配列に相当する。ヒトp33およびp35に比べて2つのエキソンを欠く、さらなるヒトアイソフォームcの配列は、Genbank(受託番号BC024272)で入手可能である。配列番号9および配列番号10は、ヒトインバリアント鎖cアイソフォームのアミノ酸配列および核酸配列に相当する。
【0044】
【表1】
【0045】
ネズミインバリアント鎖では、ヒトインバリアント鎖アイソフォームp33およびp41に相当する2つのアイソフォーム(p31およびp41)のみが知られている。配列番号3および配列番号4は、ネズミインバリアント鎖p31アイソフォームのアミノ酸配列および核酸配列に相当する。配列番号7および配列番号8は、ネズミインバリアント鎖p41アイソフォームのアミノ酸配列および核酸配列に相当する。種々のアイソフォームの模式的概要を図4に示す。
【0046】
一実施形態では、本発明において使用されるインバリアント鎖は、配列番号1または3のインバリアント鎖と実質的に同じである。
【0047】
インバリアント鎖は、いくつかのドメイン、すなわち、ヒトインバリアント鎖p35およびp43変異体のER保留シグナル(ヒトインバリアント鎖配列番号1の1番〜16番)により先行される選別(標的化)ペプチド(リソソーム標的化配列としても知られる)(ヒトインバリアント鎖配列番号1の17番〜46番、ネズミインバリアント鎖配列番号3の1番〜29番)を含むサイトゾルドメイン、膜貫通ドメイン(シグナルアンカー、ヒトインバリアント鎖配列番号1の47番〜72番、ネズミインバリアント鎖配列番号3の30番〜55番)、およびそれ自体にKEY領域(ヒトインバリアント鎖配列番号1の93番〜96番、ネズミインバリアント鎖配列番号3の76番〜79番)、隣接するCLIP領域(ヒトインバリアント鎖配列番号1の97番〜120番、ネズミインバリアント鎖配列番号3の80番〜103番)を含んでなる管腔ドメインを含んでなる。CLIP領域は、コアCLIPペプチド(ヒトインバリアント鎖配列番号1の103番〜117番、ネズミインバリアント鎖配列番号3の86番〜100番)および三量体形成ドメイン(ヒトインバリアント鎖配列番号1の134番〜208番、ネズミインバリアント鎖配列番号3の117番〜191番、Mittendorf et al., (2009) Expert Opin. Biol. Ther., 9:71-78、 Strumptner-Cuvelette and Benaroch, 2002, Biochem. Biophys. Acta, 1542: 1-13)を含んでなる。管腔ドメインの残りの部分は、膜貫通領域とKEY領域の間に位置する2つの柔軟性の高い領域(ヒトインバリアント鎖配列番号1の73番〜92番、ネズミインバリアント鎖配列番号3の56番〜75番)または三量体形成ドメインの下流(ヒトインバリアント鎖配列番号の209番〜232番、ネズミインバリアント鎖配列番号3の192番〜215番)を含んでなる。インバリアント鎖は、ニワトリ、ウシ、イヌ、マウス、ラットおよびヒトなどの数種の生物において同定されている。
【0048】
一実施形態では、インバリアント鎖は脊椎動物起源、鳥類もしくは哺乳動物起源であるか、またはさらには、それはニワトリ、ウシ、イヌ、マウス、ラット、非ヒト霊長類およびヒト由来のインバリアント鎖からなる群から選択される。さらなる実施形態では、それはヒトまたはネズミ起源であり、例えば、ヒトインバリアント鎖は、配列番号1により定義されるアミノ酸配列を有する。前記ポリペプチドは、一実施形態では、配列番号2で示される核酸配列によりコードされている。別の実施形態では、ネズミインバリアント鎖は、配列番号3により定義されるアミノ酸配列を有する。前記ポリペプチドは、一実施形態では、配列番号4で示される核酸配列によりコードされている。
【0049】
用語「インバリアント鎖」はまた、天然インバリアント鎖もしくは天然インバリアント鎖と実質的に同じインバリアント鎖のアミノ酸配列の一部の欠失、またはそれらの他の配列での置換を特徴とする、上記のポリペプチドの変異体も含んでなる。例示的変異体を以下に示す。
【0050】
インバリアント鎖の一つの特定の変異体では、LRMKアミノ酸残基からなる内在性KEY領域が欠失しているか、または異なるアミノ酸配列により置換されている。例えば、LRMKアミノ酸残基または相当する残基が欠失している。LRMKアミノ酸残基の欠失は、完全であってもよく(LRMKアミノ酸残基の全てが関与)または部分的であってもよい(LRMKアミノ酸残基の少なくとも一つが関与)。LRMKアミノ酸残基の全ての完全欠失が想定される。さらに、LRMKアミノ酸残基の少なくとも一つのまたは全てが、異なるアミノ酸残基により置換されている。
【0051】
さらに別の例示的変異体では、配列番号1のヒトインバリアント鎖の107番および115番のメチオニン、または配列番号3のネズミインバリアント鎖の90番および98番のメチオニン、または他のインバリアント鎖におけるこれらの位置に相当するメチオニンが他のアミノ酸により置換されている。メチオニンは置換されていることが好適である。
【0052】
さらに別の例示的変異体では、インバリアント鎖は、例えば膜貫通領域までのN末端が除去されるような程度の、N末端切断型である。従って、さらなる実施形態では、配列番号1のインバリアント鎖のN末端の46未満のアミノ酸が切断されるか、41未満のアミノ酸が切断されるか、または36未満のアミノ酸が切断される。従って、また、配列番号3のインバリアント鎖に関しては、N末端の30未満のアミノ酸が切断されるか、25未満のアミノ酸が切断されるか、または20未満のアミノ酸が切断されることも企図される。配列番号1のインバリアント鎖の一実施形態では、ヒトインバリアント鎖の最初の16個のアミノ酸残基が欠失している。また、最初の16個のアミノ酸残基の少なくとも一つ、しかしながら全てではない欠失も可能である。さらに、ヒトインバリアント鎖(配列番号1)の最初の16個のアミノ酸残基の少なくとも一つ、または全ての、他のアミノ酸残基による置換も可能である。
【0053】
さらに別の変異体では、小胞体の内腔での発現のための少なくとも一つのシグナルペプチドがインバリアント鎖のN末端に、例えば、N末端切断のために膜貫通領域を欠いたN末端切断型のインバリアント鎖に付加される。
【0054】
インバリアント鎖のさらに別の変異体では、少なくとも一つのCLIP領域が個々のインバリアント鎖の内在性CLIP領域に付加されるか、またはそれに取って代わる。配列番号1のヒトインバリアント鎖では、CLIP領域は97番〜120番にわたり、配列番号3のネズミインバリアント鎖では、それは80番〜103番にわたる。よって、当業者ならば、配列番号1および3のインバリアント鎖においてCLIP領域に相当するアミノ酸残基を容易に決定することができる。さらなる実施形態では、完全な内在性CLIP領域が欠失または置換される。しかしながら、内在性CLIP領域に属する少なくとも一つのアミノ酸残基の欠失または置換も企図される。
【0055】
用語「インバリアント鎖」はまた、上記のインバリアント鎖およびそれらの変異体、例えば、配列番号1もしくは3のアミノ酸配列を有するか、または配列番号2もしくは4の核酸配列によりコードされているインバリアント鎖のフラグメントも意味する。遺伝コードの縮重特性のために、一つのアミノ酸が2つ以上のコドンによってコードされる場合があることが理解されるべきである。例えば、アミノ酸イソロイシンは、コドンAUU、AUCまたはAUAによりコードされ得る。従って、本発明はまた、特定の核酸配列に関わらず、配列番号1または3により定義されるアミノ酸配列をコードする上述の核酸配列の全ての変異体を包含する。生物が異なれば、異なるコドンを異なる効率で利用するので、ヌクレオチド配列のコドン使用頻度を意図する宿主生物に適合させることが有利であり得る。一実施形態では、フラグメントは、野生型インバリアント鎖または上記で定義されるその変異体の少なくとも40、50、60、70、80、90、10、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200または210のアミノ酸残基のフラグメントである。
【0056】
さらに、用語「インバリアント鎖」は上記の野生型インバリアント鎖、その変異体またはフラグメントのいずれかと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%または99.9%の配列同一性を有するポリペプチドを意味する。2つの異なるポリペプチド間の配列同一性を決定するための方法は当技術分野で周知である。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の類似性、すなわち、配列同一性のパーセンテージは、配列アラインメントによって決定することができる。このようなアラインメントは、いくつかの技術分野で公知のアルゴリズム、例えば、Karlin and Altschul (Karlin & Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877)の数学的アルゴリズム、hmmalign(HMMER package, hmmer.wustl.edu/)または例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/もしくはwww.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.htmlもしくはnpsa-pbil.ibcp.fr/cgi-bin/npsa_automat.pl?page=/NPSA/npsa_clustalw.htmlで利用可能なCLUSTALアルゴリズム(Thompson, J. D., Higgins, D. G. & Gibson, T. J. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 4673-80)を用いて行うことができる。配列同一性(配列一致)の程度は、例えば、BLAST、BLATまたはBLASTZ(またはBLASTX)を用いて計算することができる。類似のアルゴリズムが、Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410のBLASTNおよびBLASTPプログラムにも組み込まれている。
【0057】
比較のためにギャップを有するアラインメントを得るためには、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402に記載のようにGapped BLASTを用いる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを使用する場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを使用する。配列一致分析は、Shuffle−LAGAN(Brudno M., Bioin formatics 2003b, 19 Suppl 1: I54-I62)またはマルコフ確率場のような確立されたホモロジーマッピング技術によって補足することができる。本出願において配列同一性のパーセンテージが言及される場合、これらのパーセンテージは、特に断りのない限り、より長い配列の全長に関して計算される。
【0058】
用語「免疫応答をプライミングする」とは、免疫系の、少なくとも一つの抗原タンパク質またはその抗原との最初の遭遇と、その後の定義された時間内での抗原特異的免疫応答の誘導を意味する。前記期間は、プライミング前の、例えば、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも5年または少なくとも10年である。一実施形態では、抗原特異的免疫応答を誘導しない、個体または対象の免疫系の抗原タンパク質またはその抗原フラグメントとの遭遇は、本発明による「免疫応答をプライミングする」とは見なされない。例えば、持続的免疫を誘導しない、個体の免疫系の抗原タンパク質またはその抗原フラグメントとの遭遇は、本発明による「免疫応答をプライミングする」とは見なされない。さらなる実施形態では、持続的免疫の誘導は、メモリーB細胞および/またはメモリーT細胞の生成によって媒介される。例えば、癌の場合、免疫応答を惹起することなく、特異的抗原が癌細胞によって発現され得る。単にこの抗原が存在するだけでは、本出願により理解されるような前記抗原に対する「免疫応答のプライミング」ではない。一実施形態では、それ以前の一定の期間に疾患を治療または予防する目的で、個体または対象は抗原タンパク質もしくはその抗原フラグメント、またはこのようなタンパク質もしくはフラグメントをコードする核酸を含んでなるベクターで故意に免疫誘導されていない。
【0059】
しかしながら、用語「免疫応答をプライミングする」とは、個体の前記抗原タンパク質またはその抗原フラグメントを天然に含んでなる病原体との過去のいずれの接触も、その接触が医療目的で人為的に誘導されなかったならば、意味する。特に、本出願によれば、その感染が医療目的で人為的に誘導されなかったならば、個体が前述の病原体にすでに感染していてもよいことが想定される。免疫応答のプライミングが起こった際には、その個体の感染はなお存在していてもよいし、またはすでに排除されていてもよい。同様に、癌の場合には、本発明のポックスウイルスベクターで免疫される個体または対象は本発明の核酸構築物により含まれる抗原タンパク質またはその抗原フラグメントを発現する癌にすでに罹患していることが想定される。
【0060】
本発明によるポックスウイルスベクターで免疫される患者または対象は、例えば、哺乳動物または鳥類、より具体的には、霊長類、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、ウマ、ガチョウ、ニワトリ、アヒルまたはシチメンチョウ、最も具体的には、ヒトである。
【0061】
上記で定義される核酸構築物を含んでなるポックスウイルスベクターは、例えば、プライム−ブーストワクチン接種レジメンで使用される。
【0062】
多くの場合、ワクチンの単回投与では、問題の病原体の将来の感染の場合の効果的な防御のため、腫瘍疾患を含む疾患に対する防御のため、または腫瘍疾患などの疾患の治療的処置のために必要とされる数の長期持続免疫細胞を生成するのに十分でない。従って、前記病原体もしくは疾患に対する持続的かつ防御性免疫を確立するため、または所与の疾患を治癒させるためには、特定の病原体または疾患に特異的な生物学的調製物で繰り返し抗原投与することが必要とされる。同じ病原体または疾患に対するワクチンの繰り返し投与を含んでなる投与レジメンは、本出願では、「プライム−ブーストワクチン接種レジメン」と呼ばれる。一実施形態では、プライム−ブーストワクチン接種レジメンは、特定の病原体、病原体群または疾患に対するワクチンまたはワクチン組成物の少なくとも2回の投与を含む。1回目のワクチン投与は「プライミング」と呼ばれ、同じワクチンまたは1回目のワクチンと同じ病原体に対するワクチンのその後のいずれの投与も「ブースティング」と呼ばれる。よって、本発明のさらなる実施形態では、プライム−ブースティングワクチン接種レジメンは、免疫応答をプライミングするための1回のワクチン投与と、免疫応答をブースティングするためのその後の少なくとも1回の投与を含む。免疫応答をブースティングするために2回、3回、4回またはさらには5回の投与も本発明により企図されると理解されるべきである。
【0063】
プライムとブーストの間の期間は、場合により、1週間、2週間、4週間、6週間または8週間である。より詳しくは、その期間は4週間または8週間である。2回以上のブーストが行われる場合には、後のブーストは前のブーストの1週間、2週間、4週間、6週間または8週間後に投与される。例えば、任意の2回のブースト間の間隔は4週間または8週間である。
【0064】
プライム−ブーストワクチン接種レジメンは、同種または異種であり得る。同種プライム−ブーストレジメンでは、プライミングおよび少なくとも1回のブースティングは両方とも抗原タンパク質またはその抗原フラグメントの同じ投与手段を用いて行われ、すなわち、プライミングおよびブースティングはポリペプチドを用いて行われるか、またはプライミングおよびブースティングは、同じベクターにより含まれる核酸構築物を用いて行われる。本発明の文脈において、同種プライム−ブーストワクチン接種レジメンは、免疫応答のプライミングならびにブースティングの両方に本発明のポックスウイルスベクターを使用することを含んでなると考えられる。異種プライム−ブースティングレジメンは、免疫応答のプライミングおよびブースティングに異なる手段に異なる手段の使用を含む。本発明の文脈において、異種プライム−ブースティングレジメンは、免疫応答のプライミングのための上記のようなポックスウイルスベクターと、免疫応答のブースティングのための異なるベクターまたはペプチドワクチンを含んでなると考えられる。
【0065】
あるいは、異種プライム−ブースティングレジメンは、免疫応答のプライミングのための異なるベクターまたはペプチドワクチンと、免疫応答のブースティングのための上記のようなポックスウイルスベクターを含んでなると考えられる。
【0066】
本発明の一実施形態では、プライム−ブースティングワクチン接種レジメンは同種である。
【0067】
本発明の別の実施形態では、プライム−ブースティングワクチン接種レジメンは異種である。
【0068】
一つの異種プライムブースティングレジメンでは、上記のようなポックスウイルスベクターが免疫応答のブースティングに使用され、異なるベクターまたはペプチドワクチンが免疫応答のプライミングに使用される。別の実施形態としての異種プライムブースティングレジメンでは、上記のようなポックスウイルスベクターが免疫応答のプライミングに使用され、異なるベクターまたはペプチドワクチンが免疫応答のブースティングに使用される。
【0069】
別の実施形態では、異種プライム−ブースティングレジメンは、免疫応答のプライミングのためのアデノウイルスベクターと、免疫応答のブースティングのための上記のようなポックスウイルスベクターを含んでなると考えられる。
【0070】
さらに別の実施形態では、異種プライムブースティングレジメンは、免疫応答のプライミングのための上記のようなポックスウイルスベクターと、免疫応答のブースティングのためのアデノウイルスベクターを含んでなると考えられる。
【0071】
総てのプライム−ブースティングワクチン接種レジメンに関して、免疫応答のブースティングに使用される抗原タンパク質または抗原ペプチドは、免疫応答のプライミングに使用される抗原タンパク質またはその抗原フラグメントと免疫学的に同一であることが想定される。抗原タンパク質またはその抗原フラグメントはポリペプチド(「ペプチドワクチン」)として投与してもよく、または対象とする個体に投与される核酸分子によってコードされていてもよいことが理解されるべきである。後者の場合、所望の免疫応答を惹起する抗原タンパク質または抗原ポリペプチドは、免疫された個体の細胞で発現される。
【0072】
2つ以上の抗原タンパク質またはその抗原フラグメントは、それらが同じ抗体、T細胞またはB細胞によって認識されるならば、「免疫学的に同一」である。同じ抗体、T細胞またはB細胞による2つ以上の免疫原性ポリペプチドの認識は、前記抗体、T細胞またはB細胞の「交差反応性」としても知られる。一実施形態では、同じ抗体、T細胞またはB細胞による2つ以上の免疫学的に同一のポリペプチドの認識は、総てのポリペプチドにおける同一または類似のエピトープの存在によるものである。類似のエピトープは、同じ抗体またはB細胞受容体のFab領域または同じT細胞受容体のV領域によって結合されるに十分な構造および/または電荷の特徴を共通に有する。抗体、T細胞受容体またはB細胞受容体の結合の特徴は、例えば、問題のエピトープへの受容体の結合親和性によって定義される。本出願によって理解されるように、親和性定数が高いポリペプチドの親和性定数が、親和性定数が高いポリペプチドの親和性定数の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%であれば、2つの免疫原性ポリペプチドは「免疫学的に同一」である。受容体に対するポリペプチドの結合親和性を決定するための方法は、平衡透析法または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)など、当技術分野で周知である。
【0073】
一実施形態では、2つ以上の「免疫学的に同一」のポリペプチドは、少なくとも一つの同一のエピトープを含んでなる。最も強いワクチン接種効果は通常、免疫原性ポリペプチドが同一のエピトープを含んでなる場合、または免疫原性ポリペプチドが同一のアミノ酸配列を有する場合に得ることができる。
【0074】
一実施形態では、免疫応答のプライミングのための上記のようなポックスウイルスベクターの使用は、病原体もしくは疾患に対する防御免疫を確立するか、または疾患の根絶をもたらすであろう。
【0075】
一実施形態では、ポックスウイルスベクターは、鼻腔内、筋肉内、皮下、皮内、胃内、経口および局所経路によって投与される。
【0076】
「鼻腔内投与」は、肺を含む全気道の粘膜への本発明のベクターの投与である。より詳しくは、組成物が鼻粘膜に投与される。一実施形態では、鼻腔内投与は、点滴、スプレーまたはエアゾールの手段によって達成される。さらなる実施形態では、前記投与は、針などの機械的手段による粘膜の穿孔を含まない。
【0077】
用語「筋肉内投与」は、個体の任意の筋肉へのベクターの注射を意味する。例示的筋肉内注射は、三角筋、外側広筋または腹側臀部(ventrogluteal)および背側臀部(dorsogluteal)領域に投与される。
【0078】
用語「皮下投与」は、真皮下へのベクターの注射を意味する。
【0079】
用語「皮内投与」は、真皮の皮膚層間へのベクターの注射を意味する。
【0080】
用語「経口投与」は、口腔を介した胃系へのベクターの投与を意味する。
【0081】
「局所投与」は、針または類似のデバイスで皮膚を貫通しない、皮膚の任意の部分へのベクターの投与である。ベクターまた、口腔、鼻、生殖器領域および直腸の粘膜へ局所投与してもよい。
【0082】
別の側面において、本発明は、
(a)(i)作動可能に連結された、少なくとも一つの第1の抗原タンパク質またはその抗原フラグメントをコードする核酸配列と、
(ii)少なくとも一つのインバリアント鎖をコードする核酸
を含んでなる核酸構築物を含んでなるポックスウイルスベクター、ならびに
(b)少なくとも一つの第2の抗原タンパク質もしくはその抗原フラグメント、または
一つの第2の抗原タンパク質またはその抗原フラグメント、または
ウイルス様粒子
をコードする核酸配列を含んでなるベクター
を含んでなり、
前記第1の抗原タンパク質またはその抗原フラグメントの少なくとも一つのエピトープが前記少なくとも一つの第2の抗原タンパク質またはそのフラグメントと免疫学的に同一であるワクチンの組合せに関する。
【0083】
用語「ワクチン」は、特定の疾患に対する免疫を誘導または改善する生物学的調製物を意味する。前記調製物は、死滅した病原体または弱毒化した生きた病原体を含んでなり得る。前記調製物はまた、免疫応答を惹起するのに好適な病原体由来の1以上の化合物も含んでなり得る。一実施形態では、前記化合物は、前記病原体のポリペプチドと実質的に同一または免疫学的に同一のポリペプチドである。別の実施形態では、本ワクチンは、前記病原体のポリペプチドと実質的に同一または免疫学的に同一の免疫原性ポリペプチドをコードする核酸構築物を含んでなる。後者の場合、ワクチンで処置した個体において前記ポリペプチドを発現させることも企図される。ワクチン接種の基礎にある原理は、免疫「記憶」の生成である。個体の免疫系をワクチンで刺激すると、そのワクチンにより含まれる化合物を特異的に認識する免疫細胞の生成および/または増殖が誘導される。前記免疫細胞の少なくとも一部は、ワクチン接種後10年、20年または30年に及び得る期間、活性を留める。その個体の免疫系が上述の期間内に免疫応答を惹起し得る化合物が由来した病原体に遭遇すれば、ワクチン接種によって生成された免疫細胞が再活性化され、ワクチンで刺激されずに初めてその病原体の免疫原性化合物に遭遇する個体の免疫応答に比べてその病原体に対する免疫応答を増強する。
【0084】
本発明において使用する場合、用語「ベクター」は、少なくとも一つのポリヌクレオチド、または少なくとも一つのポリヌクレオチドとその中に含まれるポリヌクレオチドを細胞に導入することができる少なくとも一つのタンパク質との混合物を意味する。さらに、用語「ベクター」はまた、例えば、Geall et al., 2012, PNAS, 109:14604-14609により記載されているような、少なくとも一つのポリヌクレオチドで細胞をトランスフェクトすることができるリポソームまたは脂質ナノ粒子の調製物とともに処方された少なくとも一つのポリヌクレオチドも意味する。
【0085】
ベクターにより含まれる少なくとも一つのポリヌクレオチドは、少なくとも一つの免疫原性タンパク質をコードする少なくとも一つの核酸構築物からなるか、またはそれを含んでなる。本発明の核酸構築物からなる、またはそれを含んでなるポリヌクレオチドに加え、付加的ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドも細胞に導入されてよい。付加的ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの付加はまた、前記付加的ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドが本発明の核酸構築物を細胞に導入するために必要とされる場合、または付加的ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの導入が本発明の核酸構築物によってコードされる免疫原性ポリペプチドの発現を増強する場合にも企図される。
【0086】
本発明の文脈において、1または複数のベクターの導入時に、導入された核酸構築物によってコードされている抗原タンパク質またはその抗原フラグメントがその細胞内で発現されることが想定される。好適なベクターの例としては、限定されるものではないが、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスベクター、脂質ナノ粒子または人工染色体が含まれる。
【0087】
本発明の一実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、AAV5型および2型)、アルファウイルスベクター(例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV)、およびVEE−SINキメラ)、ヘルペスウイルスベクター(例えば、アカゲザルサイトメガロウイルス(RhCMV)などのサイトメガロウイルス由来のベクター)、アレナウイルスベクター(例えば、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)ベクター)、麻疹ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、パラミクソウイルスベクター、バキュロウイルスベクター(baculovirus vectot)、水疱性口内炎ウイルスベクター、レトロウイルス、レンチウイルス、ウイルス様粒子、および細菌胞子からなる群から選択される。
【0088】
さらなる実施形態では、ベクターは、アデノウイルスベクター、特に、ヒトまたは非ヒト大型類人猿由来のアデノウイルスベクターである。アデノウイルスが由来する例示的大型類人猿は、チンパンジー(Pan)、ゴリラ(Gorilla)およびオランウータン(Pongo)、例えば、ボノボ(Pan paniscus)および一般的なチンパンジー(Pan troglodytes)である。一般に、天然の非ヒト大型類人猿アデノウイルスが個々の大型類人猿の糞便サンプルから単離される。具体的には、ベクターは、hAd5、hAd11、hAd26、hAd35、hAd49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd55、ChAd63、ChAd73、ChAd82、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2、およびPanAd3ベクターまたは複製コンピテントAd4およびAd7ベクターに基づく非複製アデノウイルスベクターである。ヒトアデノウイルスhAd4、hAd5、hAd7、hAd11、hAd26、hAd35およびhAd49は当技術分野で周知である。天然型ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63およびChAd82に基づくベクターはWO2005/071093に詳細に記載され、これはUS20110217332として公開され、本明細書に記載のアデノウイルスベクターに関して参照することにより本明細書の開示の一部とされる。天然型PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、およびChAd147に基づくベクターはWO2010/086189に詳細に記載され、これはUS20120027788として公開され、本明細書に記載のアデノウイルスベクターに関して参照することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0089】
別の実施形態では、第2の抗原タンパク質またはその抗原フラグメントは、ポックスウイルスベクターにより含まれる核酸構築物によってコードされている抗原タンパク質またはその抗原フラグメントと免疫学的に同一である。
【0090】
本発明の別の実施形態では、ベクターは裸のDNAとして存在する。用語「裸のDNA」は、ウイルスベクターのタンパク質をコードしないが、少なくとも一つの抗原タンパク質またはそのフラグメントをコードするいずれの核酸分子、DNAまたはRNAも意味する。裸のDNAはいずれのポリペプチドとも会合されず、特に、ウイルス起源のポリペプチドと会合されないことが企図される。例えば、裸のDNAは、プラスミド、コスミドまたは人工染色体として存在する。さらなる実施形態では、裸のDNAは、ポックスウイルスベクターにより含まれる核酸構築物によってコードされている抗原タンパク質またはその抗原フラグメントと免疫学的に同一のポリペプチドをコードする。
【0091】
用語「ウイルス様粒子」(VLP)は、ウイルスタンパク質を含んでなるが核酸は含まない集合を意味する。VLPは、好適な生産細胞株においてウイルス表面タンパク質を発現させることによって生産することができる。核酸の欠如、従って遺伝情報の欠如はVLPを非感染性とするので、安全なワクチンが作製される。例えば、VLPは、ポックスウイルスベクターにより含まれる核酸構築物によってコードされている抗原タンパク質またはその抗原フラグメントと免疫学的に同一のポリペプチドを含んでなる。
【0092】
本発明のある特定の実施形態では、上記ワクチンの組合せは、プライム−ブーストワクチン接種レジメンで使用される。このプライム−ブーストワクチン接種レジメンの第1の実施形態では、ポックスウイルスベクターが免疫応答のプライミングに使用され、ウイルスベクターまたは抗原タンパク質もしくはその抗原フラグメントが免疫応答のブースティングに使用される。プライム−ブーストワクチン接種レジメンの別の実施形態では、ウイルスベクターまたは抗原タンパク質もしくはその抗原フラグメントが免疫応答のプライミングに使用され、ポックスウイルスベクターが免疫応答のブースティングに使用される。
【0093】
本発明の一実施形態では、免疫応答が鼻腔内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の筋肉内投与によりブースティングされる、
免疫応答が鼻腔内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の皮下投与によりブースティングされる、
免疫応答が鼻腔内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の皮内投与によりブースティングされる、
免疫応答が鼻腔内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の胃内投与によりブースティングされる、
免疫応答が鼻腔内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の経口投与によりブースティングされる、
免疫応答が鼻腔内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の局所投与によりブースティングされる、
免疫応答が鼻腔内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の鼻腔内投与によりブースティングされる、
免疫応答が筋肉内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の筋肉内投与によりブースティングされる、
免疫応答が筋肉内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の皮下投与によりブースティングされる、
免疫応答が筋肉内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の皮内投与によりブースティングされる、
免疫応答が筋肉内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の胃内投与によりブースティングされる、
免疫応答が筋肉内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の経口投与によりブースティングされる、
免疫応答が筋肉内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の局所投与によりブースティングされる、
免疫応答が筋肉内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の鼻腔内投与によりブースティングされる、
免疫応答が皮下投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の筋肉内投与によりブースティングされる、
免疫応答が皮下投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の皮下投与によりブースティングされる、
免疫応答が皮下投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の皮内投与によりブースティングされる、
免疫応答が皮下投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の胃内投与によりブースティングされる、
免疫応答が皮下投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の経口投与によりブースティングされる、
免疫応答が皮下投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の局所投与によりブースティングされる、
免疫応答が皮下投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の鼻腔内投与によりブースティングされる、
免疫応答が皮内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の筋肉内投与によりブースティングされる、
免疫応答が皮内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の皮下投与によりブースティングされる、
免疫応答が皮内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の皮内投与によりブースティングされる、
免疫応答が皮内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の胃内投与によりブースティングされる、
免疫応答が皮内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の経口投与によりブースティングされる、
免疫応答が皮内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の局所投与によりブースティングされる、
免疫応答が皮内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の鼻腔内投与によりブースティングされる、
免疫応答が胃内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の筋肉内投与によりブースティングされる、
免疫応答が胃内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の皮下投与によりブースティングされる、
免疫応答が胃内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の皮内投与によりブースティングされる、
免疫応答が胃内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の胃内投与によりブースティングされる、
免疫応答が胃内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の経口投与によりブースティングされる、
免疫応答が胃内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の局所投与によりブースティングされる、
免疫応答が胃内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の鼻腔内投与によりブースティングされる、
免疫応答が経口投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の筋肉内投与によりブースティングされる、
免疫応答が経口投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の皮下投与によりブースティングされる、
免疫応答が経口投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の皮内投与によりブースティングされる、
免疫応答が経口投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の胃内投与によりブースティングされる、
免疫応答が経口投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の経口投与によりブースティングされる、
免疫応答が経口投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の局所投与によりブースティングされる、
免疫応答が経口投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の鼻腔内投与によりブースティングされる、
免疫応答が局所投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の筋肉内投与によりブースティングされる、
免疫応答が局所投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の皮下投与によりブースティングされる、
免疫応答が局所投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の皮内投与によりブースティングされる、
免疫応答が局所投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の胃内投与によりブースティングされる、
免疫応答が局所投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の経口投与によりブースティングされる、
免疫応答が局所投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の局所投与によりブースティングされる、
免疫応答が局所投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の鼻腔内投与によりブースティングされる。
【0094】
一実施形態では、免疫応答が鼻腔内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の筋肉内投与によりブースティングされる。
【0095】
さらに別の実施形態では、免疫応答が鼻腔内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の鼻腔内投与によりブースティングされる。
【0096】
さらに別の実施形態では、免疫応答が筋肉内投与によりプライミングされ、免疫応答が少なくとも1回の筋肉内投与によりブースティングされる。
【0097】
さらなる側面において、本発明は、上記に定義される免疫応答をプライミングするためのポックスウイルスベクターを含んでなるワクチン組成物、またはポックスウイルスベクターと、(i)少なくとも一つの第2の抗原タンパク質またはその抗原フラグメントをコードする核酸配列を含んでなるベクター、(ii)第2の抗原タンパク質またはその抗原フラグメントおよび(iii)ウイルス様粒子からなる群から選択される薬剤とを含んでなるワクチンの組合せに関する。
【0098】
用語「組成物」は、抗原タンパク質もしくはそのフラグメントまたはウイルス様粒子を含んでなるの組合せ、または核酸構築物と、薬学上許容可能な担体、製薬賦形剤およびアジュバントからなる群から選択される少なくとも一つのさらなる化合物とを含んでなるベクターを意味する。
【0099】
「薬学上許容可能な」とは、動物、より詳しくはヒトにおける使用に関して、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって承認されているか、または米国薬局方または他の一般に認知されている薬局方に挙げられていることを意味する。
【0100】
用語「担体」は、本発明において使用する場合、治療的有効成分が一緒に投与される、限定されるものではないが、希釈剤、賦形剤、またはビヒクルなどの薬理学的に不活性な物質を意味する。このような医薬担体は液体であっても固体であってもよい。液体担体には、限定されるものではないが、水および油(落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油など、石油、動物、植物または合成起源のものを含む)中の無菌液体、例えば、生理食塩水が含まれる。生理食塩水およびデキストロースおよびグリセロール水溶液も、液体担体として、特に注射溶液に使用可能である。生理食塩水は、医薬組成物が静脈内にまたはネブライザーによって鼻腔内に投与される場合に、一つの好ましい担体である。
【0101】
好適な製薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。
【0102】
好適な医薬担体の例は、E. W. Martinにより"Remington's Pharmaceutical Sciences"に記載されている。
【0103】
用語「アジュバント」は、細胞性または体液性レベルのいずれかで、その組成物の有効成分に対する免疫応答を増強、刺激、活性化、強化または調節する薬剤を意味し、例えば、免疫アジュバントは、実際の抗原に対する免疫系の応答を刺激するが、免疫効果自体は持たない。このようなアジュバントの例としては、限定されるものではないが、無機アジュバント(例えば、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウムなどの無機金属塩)、有機アジュバント(例えば、サポニンまたはスクアレン)、オイルベースのアジュバント(例えば、フロイントの完全アジュバントおよびフロイントの不完全アジュバント)、サイトカイン(例えば、IL−1β、IL−2、IL−7、IL−12、IL−18、GM−CFS、およびINF−γ)、粒状アジュバント(例えば、免疫刺激複合体(ISCOMS)、リポソーム、または生分解性ミクロスフェア)、ビロソーム、細菌アジュバント(例えば、モノホスホリル脂質A、またはムラミルペプチド)、合成アジュバント(例えば、非イオン性ブロックコポリマー、ムラミルペプチド類似体、または合成脂質A)、または合成ポリヌクレオチドアジュバント(例えば、ポリアルギニンまたはポリリジン)が含まれる。
【実施例】
【0104】
実施例1:インバリアント鎖に連結されたNSを含んでなるMVA(MVA−hli NS)によるプライミングは、マウスにおいてHCV−NS特異的T細胞の生成を増大させる。
2群のBalb/cマウスを2×10^5pfu(プラーク形成単位)の、NSをコードするMVAで、または同じ用量の、ヒトインバリアント鎖に連結されたNSを含んでなるMVAで筋肉内免疫した。NS領域は、HCVゲノムの約3分の2を包含し、5つの異なるタンパク質(NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5B)をコードし、これらはコードされているNS3プロテアーゼによるHCVポリタンパク質のタンパク質分解切断から生じる。免疫誘導10日後に脾細胞を回収し、HCV−NS特異的T細胞応答を、NSにわたるペプチドのプールを用いてIFNγ ELIspotにより評価した。応答は、6つの各ペプチドプールに対する反応性を合計し、およびsubtrアクチンg バックグラウンド(ペプチドを含まない対照ウェルで計数されたスポット)を差し引くことによって評価した。NSを標的とする特異的T細胞のレベルは、liに基づくMVAワクチンでプライミングしたマウスで高かった(図1)。
【0105】
実施例2:インバリアント鎖に連結されたNSを含んでなるMVA(MVA−hli NS)によるプライミングは、マウスにおいて、対応するアデノウイルスベクターよりも強いT細胞応答を誘導する。
2群のBalb/cマウスを、2×10^5pfuの、NSをコードするMVAで、または同じ用量の、ヒトインバリアント鎖に連結されたNSを含んでなるMVAで筋肉内免疫した。さらなる2群のマウスを、2×10^5iu(感染単位)の、NSをコードするChAd3で、または同じ用量の、ヒトインバリアント鎖に連結されたNSを含んでなるChAd3で免疫したピーク免疫応答は、それぞれMVAおよびChAd3ベクターワクチンでの免疫誘導10日後および21日後に回収した脾細胞において評価した。T細胞応答は、NSにわたるペプチドのプールを用いて、IFNγ ELIspotにより評価した。結果(図2)は、liに基づくMVAワクチンは、対応するliに基づくChAd3ワクチンよりも高い応答を誘導することを示す。
【0106】
実施例3:インバリアント鎖に連結されたNSを含んでなるMVA(MVA−hli NS)によるブースティングは、マカクザルにおいて、HCV−NS特異的T細胞の生成を増大させる。
4個体のマカクザル2群をChAd3IiNSでプライミングし、50週間後にMVA−NS(灰色のバー)またはMVA−IiNS(黒いバー)でブースティングした。注射用量は、アデノウイルスベクターでは1×1010vp、MVAベクターでは2×10pfuであった。免疫応答は、NSにわたるペプチドのプールを用い、IFNγ ELIspotおよびIFNγ細胞内染色(ICS)により、プライミング1週間後(ピーク応答)および3か月後(記憶応答)に回収したPBMCにおいて評価した。図3に示されるように、両時点とも、MVAIiNSを受容した群でより高いELISpot応答が誘導された(黒いバー)。パネルAは、ブースト1週間後または3か月後のIFNγ ELIspotによる応答を示す。パネルBは、MVAIiNSによるブースト1週間後の、ICSによる、IFNγを産生するCD8 T細胞のより高い頻度を示す(黒いバー)。
【0107】
材料および方法
アデノウイルスおよびMVAベクター
遺伝子型1b、bk株由来の全HCV NS3−5B(NS)領域を発現するChAd3ベクターは従前に記載されている(Colloca et al. Sci Transl Med 4(115), 115ra112, 2012)。同じカセットを発現するMVAベクターを、従前に記載されているように誘導および調製した(Cottingham, M.G. et al PLoS ONE 3, e1638, 2008、 Di Lullo, G. et al. Virol. Methods 156, 37-43, 2009)。ヒトIi(p35、NCBI参照配列:NM_004355)挿入配列をGeneArt(Life Technologies、ペーズリー、UK)により合成し、次に、NS導入遺伝子のN末端のHCMVおよびBGHpA制御下にクローニングした。
【0108】
動物およびワクチン接種
総ての試験手順は国家および国際法および政策(EEC理事会指令86/609、イタリア政令116/92)に従って行った。イタリア保健省の倫理委員会はこの研究を承認した。動物の取り扱い手順は麻酔下で行い、苦痛を最小限にし、動物数を低減するためにあらゆる努力を行った。雌6週齢Balb/cまたはC57Bl/6マウスはCharles River(コモ、イタリア)から購入し、マウス各5個体の試験群を設定した。ChAd3およびMVAベクターは、一部位当たり50μlの用量(最終用量100μl)を送達することにより、四頭筋に筋肉内投与した。
【0109】
細胞生物学・神経学研究所(イタリア学術研究会議、ローマ)で飼育された目的繁殖コロニーからのナイーブ雌11〜19週齢(体重範囲3.2〜6.5Kg)カニクイザル(macaca fascicularis)を各5個体の試験群に割り付けた。免疫は総て、安定化バッファーに希釈した0.5mlのウイルスを注射する三角筋における筋肉内経路によって送達した。注射用量は、アデノウイルスベクターでは1×1010vp、MVAベクターでは2×10pfuとした。取扱中、動物は10mg/kg塩酸ケタミンのi.m.注射により麻酔した。
【0110】
ペプチド
HCV遺伝子型1b BK株のNS3−NS5B(1985a.a.)由来のオープンリーディングフレームにわたる、15アミノ酸長、11アミノ酸重複の494ペプチドのセットをBEI Resources(マナサス、VA)から入手した。
【0111】
マウスおよびマカクザルサンプルを用いたex vivo IFNγ ELISpot
MSIP S4510プレート(Millipore)を、10μg/mlの抗マウスまたは抗サルIFNγ抗体(両方ともU−CyTech Utrecht、オランダから)で4℃にて一晩コーティングした。洗浄およびブロッキング後、マウス脾細胞またはマカクザル末梢血単核細胞(PBMC)を2種類の異なる密度(2×10および4×10細胞/ウェル)の二反復で播種し、重複する15マーペプチドプールを用い、各単一ペプチドの終濃度を4μg/mlとして一晩刺激した。ペプチド希釈剤DMSO(Sigma−Aldrich、ミラン、イタリア)およびConA(Sigma−Aldrich、ミラン、イタリア)をそれぞれ陰性対照および陽性対照として用いた。続いてビオチン化抗マウスまたは抗サルIFNγ抗体(両方ともU−CyTech Utrecht、オランダから)、ストレプトアビジン−アルカリ性ホスファターゼコンジュゲート(BD Biosciences、NJ)、および最後にBCIP/NBT 1−Step溶液(Thermo Fisher Scientific、ロックフォードIL)でインキュベートすることにより、プレートを現像した。プレートをA.EL.VIS自動プレートリーダーにより取得および分析した。ELISpot応答は以下の条件の総てを満たした場合に陽性と見なした:Con−A刺激ウェルに存在するIFNγ生産、少なくとも一つのペプチドプールに対して脾細胞またはPBMC100万個当たり少なくとも50個の特異的スポット、陽性ウェルに見られるスポットの数がmock対照ウェル(DMSO)で検出される数の3倍、および応答が細胞希釈とともに低下。ELISpotデータは、脾細胞またはPBMC100万個当たりのIFNγスポット形成細胞(SFC)として表した。
【0112】
マカクザルサンプルを用いた細胞内サイトカイン染色(ICS)およびFACS分析
簡単に述べれば、2×10サルPBMCを、37℃、5%CO中、15〜20時間、抗ヒトCD28/CD49d共刺激抗体(BD Biosciences、NJ)およびブレフェルジンA(Sigma−Aldrich、ミラン、イタリア)の存在下、抗原としてのペプチドプールを各2μg/mlのペプチド終濃度で用いて刺激した。DMSO(Sigma−Aldrich、ミラン、イタリア)を陰性対照として用い、ブドウ球菌内毒素B(SEB、Sigma−Aldrich、ミラン、イタリア)を陽性対照として用いた。一晩刺激した後、PBMCを以下の表面抗体で染色した(PBMCs where stained with the following surface antibodies):APC抗サルCD3、クローンSP34−2、PerCp−Cy5.5抗サルCD4、クローンL200、PE抗ヒトCD8、クローンRPA−T8(総てBD Biosciences、NJから)。細胞内染色は、Cytofix/Cytopermで処理した後、Perm Wash(BD Biosciences、NJ)の存在下で、FITC抗ヒトIFNγクローンMD−1(U−CyTech Utrecht、オランダ)を用いて行った。染色細胞をFACS Cantoフローサイトメーターで取得し、DIVAソフトウエア(BD Biosciences、NJ)を用いて分析した。各サンプルにつき、少なくとも30,000のCD8+、CD3+ゲートイベントを取得した。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]