【文献】
クルマの電子安全始まる ISO 26262を越えて,日経エレクトロニクス,日本,日経BP社,2011年 1月10日,第1047号,pages.46-57
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
[実施の形態]
(過電流保護回路)
まず、過電流保護回路について説明する。過電流保護(OCP:Over Current Protection)は、出力電流が制限値より多く流れたときに出力電流を制限して、ICや負荷の焼損を防ぐ機能である。
【0014】
具体的には、
図1(a)に示すように、電源電圧Vccを抵抗R1,R2で分圧して電圧V´を得、抵抗Rmに流れる電流Iにより発生したモニタ電圧△Vを2個のコンパレータ(比較器)10,12に入力し、基準電圧△V1,△V2と比較する。基準電圧△V1,△V2の値は、マイコン等の制御部(図示せず。)からの制御信号△V1_CTR,△V2_CTRにより調整することができる。
図1(b)に示すように、モニタ電圧△Vが基準電圧△V1,△V2の値V
MONを超えると、出力電流が制限され、ICや負荷の焼損を防ぐようになっている。
【0015】
このような過電流保護回路は、基本動作を司る回路と異なり、異常時のみ動作するため、出荷試験後に確実に動作することを確認することは非常に難しい。本実施の形態では、過電流保護回路を簡易な構成で自己診断するため、以下の構成を採用している。
【0016】
(過電流保護回路自己診断装置)
実施の形態に係る過電流保護回路自己診断装置は、異常を検出する第1保護回路と、異常を検出する第2保護回路と、第1保護回路の自己診断期間と第2保護回路の自己診断期間を交互に切り替え、第1保護回路の自己診断期間中は、第2保護回路が異常検出動作している間に第1保護回路の出力信号を用いて第1保護回路を自己診断し、第2保護回路の自己診断期間中は、第1保護回路が異常検出動作している間に第2保護回路の出力信号を用いて第2保護回路を自己診断する制御部とを備える。
【0017】
具体的には、
図1(a)に示すように、第1保護回路は、第1基準電圧△V1とモニタ電圧△Vを比較する第1コンパレータ10であり、第2保護回路は、第2基準電圧△V2とモニタ電圧△Vを比較する第2コンパレータ12であり、制御部は、第1コンパレータ10の自己診断期間において、第1基準電圧△V1を可変制御し、第1コンパレータ10の出力信号OUTD1を用いて第1コンパレータ10を自己診断し、第2コンパレータ12の自己診断期間において、第2基準電圧△V2を可変制御し、第2コンパレータ12の出力信号OUTD2を用いて第2コンパレータ12を自己診断してもよい。
【0018】
また、第1コンパレータ10の出力信号OUTD1と制御部の制御信号IND1が入力される第1AND回路14と、第2コンパレータ12の出力信号OUTD2と制御部の制御信号IND2が入力される第2AND回路16と、第1AND回路14の出力信号と第2AND回路16の出力信号が入力されるOR回路18とを備え、制御部は、OR回路18の出力信号OUTを用いて異常を検出してもよい。
【0019】
より具体的には、制御部は、第1コンパレータ10の自己診断期間において、第1AND回路14にローレベル「0」の制御信号IND1を入力するとともに、第1基準電圧△V1を変化させる制御信号△V1_CTRを第1コンパレータ10に入力した結果、第1コンパレータ10の出力信号OUTD1にハイレベル「1」の期間が存在する場合は第1コンパレータ10の動作に問題がないと自己診断し、第2コンパレータ12の自己診断期間において、第2AND回路16にローレベル「0」の制御信号IND2を入力するとともに、第2基準電圧△V2を変化させる制御信号△V2_CTRを第2コンパレータ12に入力した結果、第2コンパレータ12の出力信号OUTD2にハイレベル「1」の期間が存在する場合は第2コンパレータ12の動作に問題がないと自己診断してもよい。
【0020】
また、制御部は、OR回路18の出力信号OUTがハイレベル「1」である場合は異常を検出してもよい。
【0021】
また、制御部は、第1保護回路と第2保護回路のうちの一方の動作に問題が発生した場合は他方の保護回路だけを用いて保護機能を継続させてもよい。
【0022】
また、第1保護回路及び第2保護回路は、過電流を検出する過電流保護回路を備えていてもよい。
【0023】
また、第1保護回路及び第2保護回路は、過電圧を検出する過電圧保護回路を備えていてもよい。
【0024】
また、第1保護回路及び第2保護回路は、低電圧を検出する低電圧保護回路を備えていてもよい。
【0025】
また、第1保護回路及び第2保護回路は、過温度を検出する過温度保護回路を備えていてもよい。
【0026】
(過電流保護回路自己診断装置の動作例)
図2は、実施の形態に係る過電流保護回路自己診断装置の動作例を概略的に示す。
【0027】
まず、制御部は、電源電圧Vccの供給を開始するとともに(ステップS101)、タイマ動作を開始する(ステップS102)。そして、タイマのカウント値に基づいて第1コンパレータ10の自己診断期間と第2コンパレータ12の自己診断期間を交互に切り替える(ステップS103)。
【0028】
具体的には、第1コンパレータ10の自己診断期間中は、第2コンパレータ12が異常検出動作している間に第1コンパレータ10の出力信号OUTD1を用いて第1コンパレータ10を自己診断する(ステップS104,S107)。異常検出動作とは、保護回路本来の動作(通常動作)を意味する。第1コンパレータ10の自己診断期間中、第1コンパレータ10の動作に問題があることが分かった場合は、問題発生時の対応処理を実行する(ステップS105→S106→S103)。また、第2コンパレータ12が異常を検出した場合は、異常発生時の対応処理を実行する(ステップS108→S109→S103)。
【0029】
一方、第2コンパレータ12の自己診断期間中は、第1コンパレータ10が異常検出動作している間に第2コンパレータ12の出力信号OUTD2を用いて第2コンパレータ12を自己診断する(ステップS110,S113)。第2コンパレータ12の自己診断期間中、第2コンパレータ12の動作に問題があることが分かった場合は、問題発生時の対応処理を実行する(ステップS114→S115→S103)。また、第1コンパレータ10が異常を検出した場合は、異常発生時の対応処理を実行する(ステップS111→S112→S103)。
【0030】
[実施例1]
次に、実施例1に係る過電圧保護回路自己診断装置について説明する。
【0031】
(過電流保護回路診断装置)
実施例1に係る過電流保護回路診断装置は、
図3に示すように、第1基準電圧ΔV1とモニタ電圧ΔVを比較する第1コンパレータ10と、第2基準電圧ΔV2とモニタ電圧ΔVを比較する第2コンパレータ12と、第1コンパレータ10の出力信号OUTD1と制御部の制御信号IND1が入力される第1AND回路14と、第2コンパレータ12の出力信号OUTD2と制御部の制御信号IND2が入力される第2AND回路16と、第1AND回路14の出力信号と第2AND回路16の出力信号が入力されるOR回路18と、マイコン等の制御部(図示せず。)とを備える。基本的な構成は、
図1を用いて説明した通りである。
【0032】
(過電流保護回路診断装置の動作例)
図4は、
図3に示される過電流保護回路自己診断装置が自己診断を行う場合のタイミングチャートである。具体的には、
図4(a)は、モニタ電圧△V、第1コンパレータ10の第1基準電圧△V1、第2コンパレータ12の第2基準電圧△V2を示している。
図4(b)は、制御信号IND1,IND2を示している。
図4(c)は、第1コンパレータ10の出力信号OUTD1、第2コンパレータ12の出力信号OUTD2を示している。
図4(d)は、OR回路18の出力信号OUTを示している。
【0033】
まず、制御部は、
図4(a)に示すように、時間t1〜t4の間、制御信号△V1_CTRを用いて第1コンパレータ10の第1基準電圧△V1を例えば0V〜1.5Vの範囲でスイープさせる。スイープさせる範囲は、モニタ電圧△Vが第1基準電圧△V1を上回る時間が存在すればよく、特に限定されるものではない。ここでは、時間t2〜t3の間、モニタ電圧△Vが第1基準電圧△V1を上回る場合を例示している。一方、時間t1〜t4の間、第2コンパレータ12の第2基準電圧△V2は、例えば1.5Vなど、異常検出動作時の値としておく。
【0034】
また、制御部は、
図4(b)に示すように、時間t1〜t4の間、第1AND回路14に入力される制御信号IND1をローレベル「0」にする。このように、制御信号IND1がローレベル「0」の期間を「第1コンパレータ10の自己診断期間」と呼ぶ。第1コンパレータ10の自己診断期間t1〜t4の間、第2AND回路16に入力される制御信号IND2はハイレベル「1」にしておく。
【0035】
これにより、
図4(c)に示すように、時間t1〜t4のうち時間t2〜t3の間のみ、第1コンパレータ10の出力信号OUTD1はハイレベル「1」となっている。この場合、モニタ電圧△Vが第1基準電圧△V1を上回る時間t2〜t3が正しく検出されているため、第1コンパレータ10の動作に問題がないと自己診断することができる。一方、時間t1〜t4の間、第2コンパレータ12は異常検出動作を行っており、モニタ電圧△Vはずっと第2基準電圧△V2より低いため、第2コンパレータ12の出力信号OUTD2はローレベル「0」のままとなっている。
【0036】
その結果、
図4(d)に示すように、時間t1〜t4の間、OR回路18の出力信号OUTはローレベル「0」のままであり、過電流発生報告信号NDは得られない。自己診断中の第1コンパレータ10の出力信号OUTD1は、OR回路18より後段に伝わらないため、過電流の検出に影響しないようになっている。
【0037】
制御部は、第1コンパレータ10の動作に問題がないことが分かると、第1コンパレータ10を異常検出動作させ、第2コンパレータ12を自己診断する。具体的には、
図4(a)に示すように、時間t4〜t7の間、制御信号△V2_CTRを用いて第2コンパレータ12の第2基準電圧△V2を例えば0V〜1.5Vの範囲でスイープさせる。スイープさせる範囲は、モニタ電圧△Vが第2基準電圧△V2を上回る時間が存在すればよく、特に限定されるものではない。ここでは、時間t5〜t6の間、モニタ電圧△Vが第2基準電圧△V2を上回る場合を例示している。一方、時間t4〜t7の間、第1コンパレータ10の第1基準電圧△V1は、例えば1.5Vなど、異常検出動作時の値としておく。
【0038】
また、制御部は、
図4(b)に示すように、時間t4〜t7の間、第2AND回路16に入力される制御信号IND2をローレベル「0」にする。このように、制御信号IND2がローレベル「0」の期間を「第2コンパレータ12の自己診断期間」と呼ぶ。第2コンパレータ12の自己診断期間t4〜t7の間、第1AND回路14に入力される制御信号IND1はハイレベル「1」にしておく。
【0039】
これにより、
図4(c)に示すように、時間t4〜t7のうち時間t5〜t6の間のみ、第2コンパレータ12の出力信号OUTD2はハイレベル「1」となっている。この場合、モニタ電圧△Vが第2基準電圧△V2を上回る時間t5〜t6が正しく検出されているため、第2コンパレータ12の動作に問題がないと自己診断することができる。一方、時間t4〜t7の間、第1コンパレータ10は異常検出動作を行っており、モニタ電圧△Vはずっと第1基準電圧△V1より低いため、第1コンパレータ10の出力信号OUTD1はローレベル「0」のままとなっている。
【0040】
その結果、
図4(d)に示すように、時間t4〜t7の間、OR回路18の出力信号OUTはローレベル「0」のままであり、過電流発生報告信号NDは得られない。自己診断中の第2コンパレータ12の出力信号OUTD2は、OR回路18より後段に伝わらないため、過電流の検出に影響しないようになっている。
【0041】
制御部は、第2コンパレータ12の動作に問題がないことが分かると、第2コンパレータ12を異常検出動作させ、第1コンパレータ10を自己診断する。以降、第1コンパレータ10又は第2コンパレータ12の動作に問題が見つかるまで同様の動作を繰り返す。
【0042】
以上のように、実施例1に係る過電流保護回路自己診断装置によれば、一方のコンパレータを異常検出動作させて電流モニタしながら他方のコンパレータを動作確認するようにしているため、常に動作確認がとれているコンパレータを用いて過電流を検出することができる。また、このように動作確認するために必要な部品点数も少なく簡易な構成であるため、コスト面でも優れている。
【0043】
[実施例2]
次に、実施例2に係る過電圧保護回路自己診断装置について説明する。過電圧保護(OVP: Over Voltage Protection)は、出力電圧が何らかの原因で負荷の耐圧を超えないように保護する機能である。
【0044】
(過電圧保護回路自己診断装置)
実施例2に係る過電圧保護回路自己診断装置は、
図5に示すように、第1基準電圧Vt1とモニタ電圧Vmを比較する第1コンパレータ10と、第2基準電圧Vt2とモニタ電圧Vmを比較する第2コンパレータ12と、第1コンパレータ10の出力信号OUTD1と制御部の制御信号IND1が入力される第1AND回路14と、第2コンパレータ12の出力信号OUTD2と制御部の制御信号IND2が入力される第2AND回路16と、第1AND回路14の出力信号と第2AND回路16の出力信号が入力されるOR回路18と、マイコン等の制御部(図示せず。)とを備える。過電圧を検出する点を除き、実施例1と同様である。
【0045】
(過電圧保護回路診断装置の動作例)
図6は、
図5に示される過電圧保護回路自己診断装置が自己診断を行う場合のタイミングチャートである。具体的には、
図6(a)は、モニタ電圧Vm、第1コンパレータ10の第1基準電圧Vt1、第2コンパレータ12の第2基準電圧Vt2を示している。
図6(b)は、制御信号IND1,IND2を示している。
図6(c)は、第1コンパレータ10の出力信号OUTD1、第2コンパレータ12の出力信号OUTD2を示している。
図6(d)は、OR回路18の出力信号OUTを示している。
【0046】
まず、制御部は、
図6(a)に示すように、時間t1〜t4の間、制御信号△t1_CTRを用いて第1コンパレータ10の第1基準電圧Vt1を例えば0V〜1.5Vの範囲でスイープさせる。スイープさせる範囲は、モニタ電圧Vmが第1基準電圧Vt1を上回る時間が存在すればよく、特に限定されるものではない。ここでは、時間t2〜t3の間、モニタ電圧Vmが第1基準電圧Vt1を上回る場合を例示している。一方、時間t1〜t4の間、第2コンパレータ12の第2基準電圧Vt2は、例えば1.5Vなど、異常検出動作時の値としておく。
【0047】
また、制御部は、
図6(b)に示すように、時間t1〜t4の間、第1AND回路14に入力される制御信号IND1をローレベル「0」にする。このように、制御信号IND1がローレベル「0」の期間を「第1コンパレータ10の自己診断期間」と呼ぶ。第1コンパレータ10の自己診断期間t1〜t4の間、第2AND回路16に入力される制御信号IND2はハイレベル「1」にしておく。
【0048】
これにより、
図6(c)に示すように、時間t1〜t4のうち時間t2〜t3の間のみ、第1コンパレータ10の出力信号OUTD1はハイレベル「1」となっている。この場合、モニタ電圧Vmが第1基準電圧Vt1を上回る時間t2〜t3が正しく検出されているため、第1コンパレータ10の動作に問題がないと自己診断することができる。一方、時間t1〜t4の間、第2コンパレータ12は異常検出動作を行っており、モニタ電圧Vmはずっと第2基準電圧Vt2より低いため、第2コンパレータ12の出力信号OUTD2はローレベル「0」のままとなっている。
【0049】
その結果、
図6(d)に示すように、時間t1〜t4の間、OR回路18の出力信号OUTはローレベル「0」のままであり、過電圧発生報告信号NDは得られない。自己診断中の第1コンパレータ10の出力信号OUTD1は、OR回路18より後段に伝わらないため、過電圧の検出に影響しないようになっている。
【0050】
制御部は、第1コンパレータ10の動作に問題がないことが分かると、第1コンパレータ10を異常検出動作させ、第2コンパレータ12を自己診断する。具体的には、
図6(a)に示すように、時間t4〜t7の間、制御信号△t2_CTRを用いて第2コンパレータ12の第2基準電圧Vt2を例えば0V〜1.5Vの範囲でスイープさせる。スイープさせる範囲は、モニタ電圧Vmが第2基準電圧Vt2を上回る時間が存在すればよく、特に限定されるものではない。ここでは、時間t5〜t6の間、モニタ電圧Vmが第2基準電圧Vt2を上回る場合を例示している。一方、時間t4〜t7の間、第1コンパレータ10の第1基準電圧Vt1は、例えば1.5Vなど、異常検出動作時の値としておく。
【0051】
また、制御部は、
図6(b)に示すように、時間t4〜t7の間、第2AND回路16に入力される制御信号IND2をローレベル「0」にする。このように、制御信号IND2がローレベル「0」の期間を「第2コンパレータ12の自己診断期間」と呼ぶ。第2コンパレータ12の自己診断期間t4〜t7の間、第1AND回路14に入力される制御信号IND1はハイレベル「1」にしておく。
【0052】
これにより、
図6(c)に示すように、時間t4〜t7のうち時間t5〜t6の間のみ、第2コンパレータ12の出力信号OUTD2はハイレベル「1」となっている。この場合、モニタ電圧Vmが第2基準電圧Vt2を上回る時間t5〜t6が正しく検出されているため、第2コンパレータ12の動作に問題がないと自己診断することができる。一方、時間t4〜t7の間、第1コンパレータ10は異常検出動作を行っており、モニタ電圧Vmはずっと第1基準電圧Vt1より低いため、第1コンパレータ10の出力信号OUTD1はローレベル「0」のままとなっている。
【0053】
その結果、
図6(d)に示すように、時間t4〜t7の間、OR回路18の出力信号OUTはローレベル「0」のままであり、過電圧発生報告信号NDは得られない。自己診断中の第2コンパレータ12の出力信号OUTD2は、OR回路18より後段に伝わらないため、過電圧の検出に影響しないようになっている。
【0054】
制御部は、第2コンパレータ12の動作に問題がないことが分かると、第2コンパレータ12を異常検出動作させ、第1コンパレータ10を自己診断する。以降、第1コンパレータ10又は第2コンパレータ12の動作に問題が見つかるまで同様の動作を繰り返す。
【0055】
以上のように、実施例2に係る過電圧保護回路自己診断装置によれば、一方のコンパレータを異常検出動作させて電圧モニタしながら他方のコンパレータを動作確認するようにしているため、常に動作確認がとれているコンパレータを用いて過電圧を検出することができる。また、このように動作確認するために必要な部品点数も少なく簡易な構成であるため、コスト面でも優れている。
【0056】
なお、ここでは、第1コンパレータ10と第2コンパレータ12の動作に問題がない場合を例示したが、問題が発生した場合はそのことを即座に制御部側で検知し、即座に部品を交換することができる。しかも、部品を交換するまでの間は、問題のないコンパレータだけを用いて保護機能を継続することが可能である。
【0057】
また、電流モニタ回路と電圧モニタ回路とを兼用したり、第1コンパレータ10の値と第2コンパレータ12の値との差異を検出することもできる。そのため、少ない冗長回路により信頼性の高いシステムを構築することが可能である。
【0058】
また、ここでは、第1コンパレータ10と第2コンパレータ12の2つを例示したが、保護回路の数は2個に限定されず、3個以上でもよい。もちろん、部品点数の少ない簡易な構成という点では、2個の保護回路を交互に切り替えるのが好ましい。
【0059】
また、ここでは、過電流保護(OCP)と過電圧保護(OVP)を例示したが、低電圧保護(UVLO:Under Voltage Lock Out:)や、過温度保護(OTP:Over Thermal Protection)等の保護回路にも同様に適用することが可能である。
【0060】
[適用例]
(車載用電子制御システム)
図7は、実施例1に係る過電流保護回路自己診断装置、又は実施例2に係る過電圧保護回路自己診断装置を適用可能な車載用の電子制御システムの構成例を模式的に示す。
【0061】
車載用の電子制御システムは、1つの半導体チップ上に必要とされるシステムを集積したSoC(System-on-Chip)200と、SoCシステムバス90を介してそれぞれSoC200に接続されたマイコン(マイクロコンピュータ)A(50A)、マイコンB(50B)、マイコンC(50C)と、マイコンA(50A)、マイコンB(50B)、マイコンC(50C)にそれぞれ接続された電源供給部A(100A)、電源供給部B(100B)、電源供給部C(100C)とを備える。
【0062】
電源供給部A(100A)は、パワーIC(1A)に電圧V1を供給し、パワーIC(2A)に電圧V2を供給し、パワーIC(3A)に電圧V3を供給する。同様に、電源供給部B(100B)は、パワーIC(1B)に電圧V1を供給し、パワーIC(2B)に電圧V2を供給し、パワーIC(3B)に電圧V3を供給する。電源供給部C(100C)は、パワーIC(1C)に電圧V1を供給し、パワーIC(2C)に電圧V2を供給し、パワーIC(3C)に電圧V3を供給する。
【0063】
ここで、電圧V1は、例えば3.3Vであり、電圧V2は、例えば1.8Vであり、電圧V3は、例えば1.2Vである。
【0064】
電源供給部A(100A)、電源供給部B(100B)、電源供給部C(100C)は、それぞれ、電源供給部110と、コントロール回路20と、タイマ30と、電圧コンパレータC1、C2と、異常判定部40とを備える。
【0065】
平常時においては、マイコンA(50A)、マイコンB(50B)、マイコンC(50C)は、それぞれ、電源供給部A(100A)、電源供給部B(100B)、電源供給部C(100C)のイネーブル端子ENに対して、電源供給機能を有効にする制御信号であるイネーブル信号ENA、ENB、ENCを出力する。
【0066】
また、電源供給部A(100A)、B(100B)、C(100C)は、電源供給動作中に異常(の兆候)を検出すると、マイコンA(50A)、B(50B)、C(50C)に対して、異常発生を報告する異常発生報告信号(図示せず)を出力する。異常発生報告信号に呼応して、マイコンA(50A)、B(50B)、C(50C)は、SoC200に対して、割り込み信号IRQを出力するとともに、電源供給部A(100A)、B(100B)、C(100C)に対して、電源供給機能を無効にする制御信号であるディスエーブル信号(図示せず)を出力する。ディスエーブル信号を受信した電源供給部A(100A)、B(100B)、C(100C)は、パワーIC(1A・2A・3A)、(1B・2B・3B)、(1C・2C・3C)に対する電源供給を停止する。
【0067】
図8は、実施例1に係る過電流保護回路自己診断装置、又は実施例2に係る過電圧保護回路自己診断装置と接続されたスイッチング電源100をI2Cバスに適用した構成例を模式的に示す。
【0068】
スイッチング電源100は、電源供給部(Vcc)110と、コントロール回路20と、タイマ30と、電圧コンパレータC(C1、C2)と、異常判定部(異常判定ブロック)40とを備える。スイッチング電源100は、I2Cバスを介して、パワーIC1、IC2に電源を供給する。スイッチング電源100には、実施例1に係る過電流保護回路自己診断装置(OCP)より過電流発生報告信号NDが入力されるようにしてもよいし、また、実施例2に係る過電圧保護回路自己診断装置(OVP)より過電圧発生報告信号NDが入力されるようにしてもよい。
【0069】
図9は、実施例1に係る過電流保護回路自己診断装置、又は実施例2に係る過電圧保護回路自己診断装置を、負荷15に電源を供給するシステムに適用した例を模式的に示す。電源供給システムは、エンジンコントロールユニット(ECU:Engine Control Unit)マイコン50と、コントロール回路20と、電源供給部110と、ローパスフィルタ(L1・Co)と、例えばスピーカなどの負荷15とを備える。
図9におけるコントロール回路20には、実施例1に係る過電流保護回路自己診断装置(OCP)より過電流発生報告信号NDが入力されるようにしてもよいし、また、実施例2に係る過電圧保護回路自己診断装置(OVP)より過電圧発生報告信号NDが入力されるようにしてもよい。コントロール回路20の出力は、コンパレータ111の正(+)入力に接続されており、一方、コンパレータ111の負(−)入力には、基準電圧VREFとして、出力電圧が供給される。
【0070】
電源供給部110は、コンパレータ111と、PWM変調器112と、ドライバ113と、ドライバ出力段114とを備える。
【0071】
平常時においては、ECUマイコン50は、コントロール回路20に対して、電源供給機能を有効にする制御信号であるイネーブル信号ENSをイネーブル端子ENから出力する。イネーブル信号ENSを受信したコントロール回路20は、電源供給機能を有効にする制御信号をコンパレータ111に供給する。
【0072】
また、コントロール回路20は、電源供給動作中に異常(の兆候)を検出すると、ECUマイコン50に対して、異常発生を報告する異常発生報告信号(過電流発生報告信号NDや過電圧発生報告信号NDなど)を出力する。異常発生報告信号に呼応して、ECUマイコン50は、コントロール回路20に対して、電源供給機能を無効にする制御信号であるディスエーブル信号(図示せず)を出力する。ディスエーブル信号を受信したコントロール回路20は、電源供給機能を無効にする制御信号をコンパレータ111に供給することで、電源供給を停止する。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態によれば、保護回路を簡易な構成で自己診断することが可能な保護回路自己診断装置及び保護回路診断方法を提供することができる。
【0074】
[その他の実施の形態]
上記のように、実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0075】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。