(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ランプ部は、前記隣り合う2つの照射口のそれぞれに対応して設けられ且つ前記光源の前記出射光を反射して前記隣り合う2つの照射口から照射させる2つのリフレクタ部を更に有し、
正面視において、前記エッジ部分が、前記2つのリフレクタ部の間隙を通って延びている、請求項1に記載のヘッドランプ装置。
前記第1面と前記第2面とが、前記車体の後方から前方に進むにつれて互いに上下方向に近接し、前記第1面と前記第2面との各前端縁に前記稜線が形成されて、前記稜線に前記エッジ部分が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヘッドランプ装置。
前記隣り合う2つの照射口のうち、上方の照射口は、その少なくとも一部を下方の照射口に対して後方に離隔させて、前記下方の照射口よりも前記車体の左右方向の外側に配置され、
前記エッジ部分が、前記車体の左右方向に延びている、請求項5又は6に記載のヘッドランプ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、鞍乗型乗物用のヘッドランプ装置のカバー体では、ヘッドランプ装置の路面等への照射に係る発光特性を維持することが優先される。このため、設計の自由度が低く、カバー体の外観に意匠的特長を持たせることが難しい。
【0005】
そこで本発明は、要求される発光特性を維持しながら、カバー体の外観の設計の自由度を向上できる鞍乗型乗物用のヘッドランプ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る鞍乗型乗物用のヘッドランプ装置は、少なくとも1つの光源と、前記光源の出射光を照射するための複数の照射口とを有する少なくとも1つのランプ部と、前記複数の照射口から照射される前記出射光を車体の前方に透過する透過部を有し、前記ランプ部の前部を被覆するカバー体と、を備え、前記透過部は、第1面と、前記第1面に対して屈曲する第2面とを有し、前記第1面と前記第2面とにより形成された稜線にエッジ部分が設けられ、前記エッジ部分が、前記複数の照射口のうち、隣り合う2つの照射口の間隙を通って延びている。
【0007】
上記構成によれば、透過部の第1面と第2面とにより形成された稜線にエッジ部分を設けるようにカバー体の外観を設計しても、複数の照射口のうち、隣り合う2つの照射口の間隙を通ってエッジ部分が延びているため、隣り合う2つの照射口から出射される光源の出射光がエッジ部分に当たりにくい。これにより、ヘッドランプ装置の発光特性がエッジ部分により影響を受けるのを防止し、ヘッドランプ装置の路面等への照射に係る発光特性を維持できる。よって、鞍乗型乗物のヘッドランプ装置において、要求される発光特性を維持しながら、カバー体の外観の設計の自由度を向上できる。
【0008】
前記ランプ部は、前記隣り合う2つの照射口のそれぞれに対応して設けられ且つ前記光源の前記出射光を個別に反射して前記隣り合う2つの照射口から照射させる2つのリフレクタ部を更に有し、正面視において、前記エッジ部分が、前記2つのリフレクタ部の間隙を通って延びていてもよい。
【0009】
上記構成によれば、正面視において、透過部に設けられたエッジ部分が、2つのリフレクタ部の間隙を通って延びているので、各リフレクタ部の反射光の光路がエッジ部分に当たりにくい。よって、鞍乗型乗物のヘッドランプ装置において要求される発光特性を維持しながら、カバー体の外観の設計の自由度を向上できる。
【0010】
前記カバー体と前記光源との前後間に配置された枠体を更に備え、前記枠体が、前記隣り合う2つの照射口の前記間隙と前後方向に重なり、前記エッジ部分が、前記枠体と前後方向に重なって配置されていてもよい。
【0011】
これにより、2つの照射口から出射される光源の出射光が、透過部に設けられたエッジ部分に当たるのが枠体によって一層防止されるので、エッジ部分で光源の出射光が散乱されるのを防止できる。
【0012】
前記第1面と前記第2面とが、前記車体の後方から前方に進むにつれて互いに上下方向に近接し、前記第1面と前記第2面との各前端縁に前記稜線が形成されて、前記稜線に前記エッジ部分が設けられていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、透過部において、エッジ部分が第1面及び第2面よりも車体の前方に突出するように設けられているので、エッジ部分が第1面及び第2面よりも車体の後方に突出するように設けられた場合に比べて、光源から透過部までの光源の出射光の光路を長く確保し易い。このため光源と透過部との間で、光源の出射光の光路の位置を調整し易く、光源の出射光がエッジ部分に当たるのを防止できる。
【0014】
前記隣り合う2つの照射口が、上下方向に離隔して配置され、前記透過部は、前記エッジ部分を境にして隣接する上面と下面とを有し、前記下面が、前記車体の前方から後方に進むにつれて下方に傾斜していてもよい。
【0015】
これにより、正面視におけるヘッドランプ装置の投影面積を小さくでき、例えばカバー体の外観を、車体の前方から後方に進むにつれて、上下方向及び左右方向が徐々に増大する流線型形状に設計し易くできる。また、鞍乗型乗物の走行時に走行風から受ける走行抵抗を抑えることができる。
【0016】
前記下面が、前記エッジ部分から後方に向けて、後方に窪む曲面に形成されていてもよい。これにより、透過部の下面を更に目立たなくできるので、ヘッドランプ装置のコンパクトな印象の外観を実現できると共に、透過部の下面が、対向車の搭乗者等に外光を反射するのを防止できる。
【0017】
前記隣り合う2つの照射口のうち、上方の照射口は、その少なくとも一部を下方の照射口に対して後方に離隔させた状態で、前記下方の照射口よりも前記車体の左右方向の外側に配置され、前記エッジ部分が、前記車体の左右方向に延びていてもよい。
【0018】
これにより、エッジ部分が車体の左右方向に延びるように、カバー体の外観を設計できると共に、上面視において視認される透過部の下面を小さく見せ、ヘッドランプ装置のコンパクトな印象の外観を実現できる。
【0019】
前記隣り合う2つの照射口のうち、一方の照射口からロービーム用の出射光が照射され、他方の照射口からハイビーム用の出射光が照射されてもよい。これにより、上下方向にロービーム用の出射光を照射する照射口とハイビーム用の出射光を照射する照射口とが配置されたレイアウトを持つヘッドランプ装置において、要求されるヘッドランプ装置の発光特性を維持しながら、カバー体の外観の設計の自由度を向上できる。
【0020】
前記車体の左右方向の両側に一対の前記ランプ部が配置され、前記一対のランプ部のそれぞれに前記エッジ部分が設けられていてもよい。これにより、例えば、単一のランプ部を備える鞍乗型乗物において、当該ランプ部に左右方向に延びるエッジ部分を形成した場合に比べ、各ランプ部に形成する照射口の口径を小さくしながら、一対のランプ部の各透過部に形成するエッジ部分の合計長さを長くするようにカバー体の外観を設計できる。
【0021】
2つの前記光源が、上下方向に離隔して配置され、正面視において、前記2つの光源のうち、下方の光源が、上方の光源よりも前記車体の前記左右方向の中央側に配置されていてもよい。これにより正面視において、各光源が上下方向に配置され、且つ、互いに左右方向にずれて配置されたレイアウトのヘッドランプ装置を設計できると共に、要求されるヘッドランプ装置の発光特性を維持しながら、カバー体の外観の設計の自由度を向上できる。
【0022】
前記光源は、発光ダイオード素子でもよい。光源を発光ダイオード素子とすることで、他の種類の光源に比べて光源の出射光の出射角が小さく、出射光の広がりが抑制されるので、光源の出射光が、透過部に設けられたエッジ部分に当たるのを一層防止できる。また、ヘッドランプ装置の要求される発光特性を維持しながら、隣り合う2つの照射口を近接して配置できる。また、透過部に設けるエッジ部分を第1面及び第2面よりも前方に突出させ、エッジ部分の延びる方向と直交するカバー体の断面において、エッジ部分の突出する側と反対側の第1面と第2面との間の角度を小さくした形状に、カバー体の外観を設計できるので、カバー体の外観の設計の自由度を良好に向上できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、要求される発光特性を維持しながら、カバー体の外観の設計の自由度を向上できる鞍乗型乗物用のヘッドランプ装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について、各図を参照して説明する。以下に記載する各方向は、鞍乗型乗物1の搭乗者から見た鞍乗型乗物1の車体の各方向を基準とする。
【0026】
図1は、実施形態に係る鞍乗型乗物1の左側面図である。
図1に示すように、鞍乗型乗物1は、一例として自動二輪車であって、車体フレーム2、走行用駆動ユニット3、燃料タンク4、シート5、ステアリングシャフト6、スイングアーム7、一対のフロントフォーク8、前輪9、ハンドル10、後輪11、カウル12、バッテリ13、ECU14、及び、ヘッドランプ装置15を備える。
【0027】
車体フレーム2は、前後方向に延びている。走行用駆動ユニット3は、一例としてエンジンであり、車体フレーム2に支持されている。燃料タンク4は、走行用駆動ユニット3の上方で、車体フレーム2に支持されている。シート5は、燃料タンク4の後方で、車体フレーム2に支持されている。ステアリングシャフト6は、上下方向に延び、車体フレーム2の前部に軸支されている。スイングアーム7は、車体側面の中央付近から後方に延びている。スイングアーム7の前端部は、車体フレーム2に軸支されている。これによりスイングアーム7は、上下に揺動する。なお走行用駆動ユニット3は、走行用電動モータでもよいし、エンジン及び走行用電動モータの両方でもよい。
【0028】
一対のフロントフォーク8は、ステアリングシャフト6に接続されている。前輪9は、一対のフロントフォーク8の下端部に軸支されている。ハンドル10は、ステアリングシャフト6の上端部に接続されている。後輪11は、スイングアーム7の後端部に軸支されている。カウル12は、車体の前部を覆うように車体フレーム2に取り付けられている。カウル12は、フロントカウル部12aとサイドカウル部12bとを有する。フロントカウル部12aは、一対のフロントフォーク8の上端部を覆っている。サイドカウル部12bは、フロントカウル部12aの後方で、走行用駆動ユニット3の前部と左右側部とを覆っている。バッテリ13とECU14とは、シート5の下方で車体フレーム2に支持されている。ヘッドランプ装置15は、車体の前部に設けられ、フロントカウル部12aに部分的に覆われている。
【0029】
図2は、ヘッドランプ装置15の正面図である。
図3は、
図2のヘッドランプ装置15の斜視図である。
図4は、
図2のヘッドランプ装置15のカバー体17を省略した斜視図である。
図2〜4に示すように、ヘッドランプ装置15は、一対のランプ部18、点灯回路(電源回路)ユニット19、光軸調整装置20、及び、ランプケース21を備える。
【0030】
一対のランプ部18は、一例として、左右(車幅)方向に間
隙をおいて並設されている。各ランプ部18は、リフレクタ式のヘッドランプ部であり、発光部25とリフレクタ体26とを有する。ここで一対のランプ部18は、少なくとも1つの光源を有する。具体的に、各発光部25は、前記複数の光源として2個のLED(発光ダイオード:light emitting diode)素子22(22a、22b)を有する。この複数の光源は、路面を照らすための前照灯用としてそれぞれ用いられる。
【0031】
各ランプ部18において、各LED素子22は、互いに離隔して配置され、車体の前方に向かって出射光を出射する。一対の発光部25では、ランプ部18の上部に、一対のLED素子22aがロービーム用光源として配置され、ランプ部18の下部に、一対のLED素子22bがハイビーム用光源として配置されている。正面視において、LED素子22bは、LED素子22aよりも下方に位置し、LED素子22aよりも左右方向の中央側に配置されている。このように、各ランプ部18の2つの光源(LED素子22a、22b)は、前後方向に直交する位置にずらして配置されている。具体的にLED素子22a、22bは、左右方向及び上下方向にずらして配置されている。
【0032】
各LED素子22a、22bは、個別に複数の配線基板29に実装されている。ランプ部18のロービームの光軸とハイビームの光軸との各位置は、光軸調整装置20を用いて、ヘッドランプ装置15におけるランプ部18の位置を変更することにより調整される。これにより、ランプ部18のエーミングがなされる。
【0033】
ヘッドランプ装置15は、LED素子22aを点灯させるロービームモードと、LED素子22bを点灯させるハイビームモードとに切換えられる。ロービームモードとハイビームモードとの切換えは、一例として、ハンドル10に設けられた不図示のスイッチを鞍乗型乗物1の運転者が操作することで実現される。ハイビームモードの照射パターンとしては、ロービーム用光源を消灯してハイビーム用光源を点灯してもよいし、ロービーム用及びハイビーム用の両方の光源を点灯してもよい。
【0034】
リフレクタ体26は、互いに離隔して配置された少なくとも1つ(ここでは2つ)のリフレクタ部26a、26bを有する。リフレクタ部26a、26bは、LED素子22a、22bの出射光を個別に反射する。リフレクタ体26の内部において、LED素子22aの発光面は、リフレクタ部26aに露出し、LED素子22bの発光面は、リフレクタ部26bに露出している。LED素子22a、22bの発光面は、リフレクタ部26a、26bに下方に光を出射するように露出している。一例として、リフレクタ体26は、ロービーム用のリフレクタ部26aとハイビーム用のリフレクタ部26bとの両方を一体的に有するように形成されている。しかしながら、リフレクタ体はこれに限定されず、例えば、リフレクタ部26a、26bを個別に有する2の部材で形成されていてもよい。
【0035】
ここで一対のランプ部18は、LED素子22a、22bの出射光を照射するための複数の照射口を有する。具体的に一対のランプ部18は、後述するハウジング部37に形成された隣り合う2つの照射口37b、37cを有する。一対のランプ部18は、照射口37b、37cからLED素子22a、22bの出射光を照射させる。照射口37b、37cは、上下方向に離隔して配置されている。リフレクタ部26a、26bは、照射口37b、37cから個別に露出し、照射口37b、37cからLED素子22a、22bの出射光を照射させる。これにより、隣り合う2つの照射口37b、37cのうち、照射口37bからロービーム用の出射光が照射され、照射口37cからハイビーム用の出射光が照射される。なおランプ部18は、直射式のヘッドランプ部でもよい。この場合、リフレクタ体26は省略できる。
【0036】
点灯回路ユニット19は、電源の電力が与えられて各LED素子22a、22bを点灯させる。ランプケース21は、互いに前後方向に組み合わされた壁部16及びカバー体17を有する。壁部16は、カバー体17の後方で左右方向及び上下方向に延び、車体フレーム2の前部に支持されている。壁部16の各周縁には、複数の嵌合部16aが間隔をおいて形成されている。壁部16とカバー体17との間には、内部空間30が形成されている。ランプケース21では、壁部16の嵌合部16aがカバー体17の嵌合部17aと嵌合され、内部空間30にランプ部18と点灯回路ユニット19とが収容されている。
【0037】
カバー体17は、壁部16の前側で、左右方向及び上下方向に延びている。カバー体17は、その前端部17iから後方に進むにつれて、左右方向の寸法と上下方向の寸法とが徐々に増大する流線型形状(以下、単に流線型形状と称する。)の外観形状を有する。カバー体17は、複数の嵌合部17aと、少なくとも1つ(ここでは一対)の透過部17bと、中央部17cとを有する。複数の嵌合部17aは、カバー体17の周縁に間隔をおいて配置されている。一対の透過部17bは、カバー体17の一対のランプ部18の前側の位置に設けられ、一対のランプ部18の複数の照射口37b、37cから出射される光源の出射光を車体の前方に透過する。正面視において、各透過部17bは、カバー体17の左右方向の中央から左右方向の両側に向けて斜め上方に延び、ランプ部18のリフレクタ体26と前後方向に重なっている。一例として、一対の透過部17bのうち、カバー体17の左右方向の中央に対して右側に位置する右透過部17dと、前記中央に対して左側に位置する左透過部17eとは、互いに対称的な形状を有する。各透過部17bは、上下方向に屈曲されている。これにより、一対の透過部17bの各前面には、上面(第1面)17fと下面(第2面)17gとが形成されている。
【0038】
上面17fは、透過部17bの上部に位置し、カバー体17の左右方向の中央から左右方向の外側に向けて斜め上方に延びている。下面17gは、透過部17bの下部に位置し、上面17fに対して屈曲している。一例として、上面17fと下面17gとは隣接している。透過部17bでは、上面17fと下面17gとにより稜線が形成されている。この稜線は、一例として壁部16の前方に突出している。当該稜線には、エッジ部分17hが設けられている。これにより上面17fと下面17gとは、エッジ部分17hを境にして隣接している。
【0039】
エッジ部分17hは、正面視において、カバー体17の左右方向の前記中央から左右方向の外側に向けて斜め上方に延び、LED素子22bの上方に位置するエッジ中央部分17h1から左右方向の外側に向けて斜め下方に延びている。エッジ部分17hは、隣り合う2つの照射口37b、37cの間隙を通って、左右方向に延びている。またエッジ部分17hは、リフレクタ体26のリフレクタ部26a、26bの間隙を通って、左右方向に延びている。またエッジ部分17hは、ハウジング部37の後述する枠部37dと前後方向に重なり、左右方向に延びている。またエッジ部分17hは、LED素子22aが実装された配線基板29におけるLED素子22aの実装位置と、LED素子22bが実装された配線基板29におけるLED素子22bの実装位置との間隙を通って、左右方向に延びている。
【0040】
一対の透過部17bは、各LED素子22a、22bから出射されて各リフレクタ部26a、26bで反射された光を透過する。具体的に、一対の透過部17bにおいて、上面17fは、リフレクタ部26aと前後方向に重なり、下面17gは、リフレクタ部26bと前後方向に重なっている。これにより一対の透過部17bは、上面17fにおいて、各LED素子22aから出射されて各リフレクタ部26aで反射された光を透過する。また、一対の透過部17bは、下面17gにおいて、各LED素子22bから出射されて各リフレクタ部26bで反射された光を透過する。
【0041】
上面17fは、その延びる方向と直交する方向において、車体の前方に緩やかに突出して湾曲している。一対の透過部17bでは、上面17fと下面17gとが、車体の後方から前方に進むにつれて互いに近接している。エッジ部分17hは、上面17fと下面17gとの各前端縁に形成された前記稜線に設けられている。一例として、下面17gは、車体の前方から後方に進むにつれて下方に傾斜している。下面17gは、エッジ部分17hから後方に向けて、後方に窪む曲面に形成されている。なお下面17gは、例えばエッジ部分から後方に向けて、前方に膨出する曲面に形成されていてもよい。カバー体17の中央部17cの前面は、一対の透過部17bの間において、一対の透過部17bの前面よりも後方に位置している。中央部17cの前面は、車体の前方から後方に向けて上がり勾配に傾斜している。
【0042】
前後方向において、リフレクタ部26a、26bと透過部17bとの間には、一定の間隙が空けられている。この間隙により、ヘッドランプ装置15のランプケース21内において、LED素子22a、22bの出射光の光路と、リフレクタ部26a、26bの反射光の光路とが確保されている。リフレクタ部26a、26bの反射光の上下方向の広がりは、後述するハウジング部37の照射口37b、37cの各周縁により規制されている。
【0043】
一対のランプ部18は、壁部16の前側に配置された一対のハウジング部37を更に有する。ハウジング部37は、カバー体17とLED素子22a、22bとの前後間に配置され、光を透過しない材料で形成されている。ハウジング部37の内部には、発光部25とリフレクタ体26とが収容されている。ハウジング部37は、取付部37a、照射口37b、37c、及び枠部37dを有する。取付部37aは、板状に形成され、ハウジング部37の上部から上方に突出している。取付部37aは、締結部材38を用いてカバー体17に取り付けられている。照射口37b、37cは、ハウジング部37の前部に設けられている。一例として、照射口37b、37cは、上下方向に離隔して配置されている。照射口37bは、ハウジング部37の上部に設けられている。照射口37bから、リフレクタ部26aが露出している。照射口37cは、ハウジング部37の下部に設けられている。照射口37cから、リフレクタ部26bが露出している。ハウジング部37において、照射口37cは、照射口37bの下方で、ヘッドランプ装置15の左右方向の中央側の位置に配置されている。照射口37bは、照射口37cの上方に配置され、ヘッドランプ装置15の左右方向の前記中央から外側に延びている。
【0044】
枠部37dは、左右方向に延び、照射口37b、37cの間隙と前後方向に重なっている。この枠部37dをハウジング部37が有することにより、ハウジング部37は、カバー体17とLED素子22a、22bとの前後間に配置されて、隣り合う2つの照射口37b、37cの間隙と前後方向に重なる枠体として構成されている。ハウジング部37は、光軸調整装置20に支持されている。
【0045】
図5は、
図2のヘッドランプ装置15の左側面図と、エッジ部分17hの拡大断面図である。
図5の前記拡大断面図では、エッジ部分17hの延びる方向と直交する透過部17bの断面を示している。カバー体17の一対の透過部17bでは、側面視において、上面17fが、カバー体17の前端部17iから後方に進むにつれて上方に傾斜して延びると共に、下面17gが、カバー体17の前端部17iから後方に進むにつれて下方に傾斜して延びている。上面17fと下面17gとは、後方に向けて互いに屈曲しながら緩やかにカーブしている。ハウジング部37の照射口37b、37cのうち、上方の照射口37bは、その少なくとも一部を下方の照射口37cに対して後方に離隔させて、下方の照射口37cよりも左右方向の外側に配置されている。
【0046】
エッジ部分17hは、エッジ部分17hの延びる方向と直交する方向の両側に位置する透過部17bの上面17f及び下面17gよりも車体の前方に突出している。
図5の前記拡大断面図に示すように、エッジ部分17hは、所定の幅方向の寸法を有する帯状の形状を有する。エッジ部分17hの前面の輪郭線は、上下方向に延びて上面17f及び下面17gよりも車体の前方に突出し、一例として、略円弧状に形成されている。
【0047】
この拡大断面における上面17fの輪郭線の接線L1と下面17gの輪郭線の接線L2との間の角度θの値は、適宜設定が可能である。本実施形態では、角度θの値は、80°以上160°未満の範囲の値に設定されることが望ましい。具体的に角度θの値は、80°以上150°未満の範囲の値がより望ましく、80°以上140°未満の範囲の値が更に望ましく、80°以上130°未満の範囲の値が一層望ましい。ここでは、角度θの値は、80°以上120°未満の範囲の値に設定されている。
【0048】
ここで、光源からの光が出射されるヘッドランプ装置の前面にエッジ部分を形成する場合には、光の散乱を防ぐため、角度θを小さくしながらエッジ部分を形成することが難しい。これに対して本実施形態では、エッジ部分17hを2つの光源(LED素子22a、22b)の間に配置することでエッジ部分17hに照射される光を抑制して、エッジ部分17hの形成によって路面等への照射に係る発光特性が影響を受けるのを抑えることができる。これにより本実施形態では、エッジ部分17hを形成する際の角度θに関する制限を緩和して、カバー体17の外観設計の自由度を向上することができ、ヘッドランプ装置15により照射される路面照射領域にエッジ部分17hの影響(例えば光の筋等)が生じるのを抑えることができる。
【0049】
具体的にヘッドランプ装置15では、透過部17bの上面17fと下面17gとにより形成された前記稜線にエッジ部分17hを設けるようにカバー体17の外観を設計しても、ハウジング部37の隣り合う2つの照射口37b、37cの間隙を通ってエッジ部分17hが延びているため、照射口37b、37cから出射されるLED素子22a、22bの出射光がエッジ部分17hに当たりにくい。これにより、ヘッドランプ装置15の発光特性が、エッジ部分17hにより影響を受けるのを防止し、ヘッドランプ装置15の路面等への照射に係る発光特性を維持できる。よって、鞍乗型乗物1のヘッドランプ装置15において要求される発光特性を維持しながら、カバー体17の外観の設計の自由度を向上できる。
【0050】
また、正面視において、透過部17bに設けられたエッジ部分17hが、リフレクタ体26における2つのリフレクタ部26a、26bの間隙を通って延びているので、各リフレクタ部26a、26bの反射光の光路が、エッジ部分17hに当たりにくい。これにより、リフレクタ部26a、26bの反射光の光路が、エッジ部分17hにより影響を受けるのを防止できる。
【0051】
また、ヘッドランプ装置15では、2つの光源(LED素子22a、22b)の位置を前後方向に直交する位置にずらすことで、カバー体17にエッジ部分17hを形成し易くすることができる。具体的には、2つの光源の位置を左右方向及び上下方向にずらすことで、2つの光源の間隔を大きくすることができ、カバー体17において、発光特性に与える影響を抑えつつエッジ部分17hとして用いることが可能な領域を増やすことができる。
【0052】
また、カバー体17とLED素子22a、22bとの前後間において、隣り合う2つの照射口37b、37cの間隙と前後方向に重なるように枠部37dが配置され、エッジ部分17hが枠部37dと前後方向に重なって配置されているので、2つの照射口37b、37cから出射されるLED素子22a、22bの出射光がエッジ部分17hに当たるのが、枠部37dによって一層防止される。これにより、エッジ部分17hでLED素子22a、22bの出射光が散乱されるのを防止できる。
【0053】
また、枠部37dとエッジ部分17hとを前後方向に重ねて配置することで、枠部37dによりエッジ部分17hを強調したカバー体17の外観の設計を可能にすると共に、枠部37dによりLED素子22a、22bの各出射光の光路を良好に仕切ることができる。
【0054】
また、透過部17bの上面17fと下面17gとが、車体の後方から前方に進むにつれて互いに近接し、上面17fと下面17gの各前端縁に形成された前記稜線にエッジ部分17hが設けられている。ここでエッジ部分17hが、上面17f及び下面17gよりも車体の前方に突出するように透過部17bに設けられているので、エッジ部分が、第1面及び第2面よりも車体の後方に突出するように透過部に設けられた場合に比べて、LED素子22a、22bから透過部17bまでのLED素子22a、22bの出射光の光路を長く確保し易い。このためLED素子22a、22bと透過部17bとの間で、LED素子22a、22bの出射光の光路の位置を調整し易く、LED素子22a、22bの出射光がエッジ部分17hに当たるのを防止できる。
【0055】
また、隣り合う2つの照射口37b、37cが、上下方向に離隔して配置され、透過部17bの上面17fと下面17gとが、エッジ部分17hを境にして隣接し、下面17gが、車体の前方から後方に進むにつれて下方に傾斜しているので、正面視におけるヘッドランプ装置15の投影面積を小さくできる。これにより、カバー体17の外観を、例えば、流線型形状に設計し易くできる。また、鞍乗型乗物1の走行時に走行風から受ける走行抵抗を抑えることができる。
【0056】
また、透過部17bの下面17gが、エッジ部分17hから後方に向けて後方に窪む曲面に形成されているので、下面17gを更に目立たなくすることができる。よって、ヘッドランプ装置15のコンパクトな印象の外観を実現できると共に、下面17gが対向車の搭乗者等に外光を反射するのを防止できる。
【0057】
また、隣り合う2つの照射口37b、37cのうち、上方の照射口37bが、その少なくとも一部を下方の照射口37cに対して後方に離隔させた状態で、照射口37cよりも車体の左右方向の外側に配置され、エッジ部分17hが左右方向に延びている。よって、エッジ部分17hが左右方向に延びるように、カバー体17の外観を設計できると共に、上面視において視認される透過部17bの下面17gを小さく見せ、ヘッドランプ装置15のコンパクトな印象の外観を実現できる。
【0058】
また、隣り合う2つの照射口37b、37cのうち、照射口37bからロービーム用の出射光が照射され、照射口37cからハイビーム用の出射光が照射されるので、上下方向にロービーム用の出射光を照射する照射口37bとハイビーム用の出射光を照射する照射口37cとが配置されたレイアウトを持つヘッドランプ装置15において、要求されるヘッドランプ装置15の発光特性を維持しながら、カバー体17の外観の設計の自由度を向上できる。
【0059】
また、左右方向の両側に配置された一対のランプ部18のそれぞれにエッジ部分17hが設けられているので、例えば、単一のランプ部を備える鞍乗型乗物において、当該ランプ部に左右方向に延びるエッジ部分を形成した場合に比べ、各ランプ部18に形成する照射口37b、37cの各口径を小さくしながら、一対のランプ部18の各透過部17bに形成するエッジ部分17hの合計長さを長くするように、カバー体17の外観を設計できる。
【0060】
また、2つのLED素子22a、22bが、上下方向に離隔して配置され、正面視において、2つのLED素子22a、22bのうち、下方のLED素子22bが、上方のLED素子22aよりも左右方向の中央側に配置されているので、正面視において、LED素子22a、22bが上下方向に配置され、且つ、互いに左右方向にずれて配置されたレイアウトのヘッドランプ装置15を設計できると共に、要求されるヘッドランプ装置15の発光特性を維持しながら、カバー体17の外観の設計の自由度を向上できる。
【0061】
また、光源をLED素子22とすることで、他の種類の光源に比べて光源の出射光の出射角が小さく、出射光の広がりが抑制されるので、LED素子22a、22bの出射光がエッジ部分17hに当たるのを一層防止できる。これにより、フィラメントを有する光源等に比べて高輝度な光源としてLED素子22を用いる場合でも、透過部17bに良好にエッジ部分17hを設けることができる。また、ヘッドランプ装置15の要求される発光特性を維持しながら、隣り合う2つの照射口37b、37cを近接して配置できる。また、透過部17bに設けるエッジ部分17hを上面17f及び下面17gよりも前方に突出させ、エッジ部分17hの延びる方向と直交するカバー体17の断面において、エッジ部分17hの突出する側と反対側の上面17fと下面17gとの間の角度を小さくした形状に、カバー体17の外観を設計できるので、カバー体17の外観の設計の自由度を良好に向上できる。
【0062】
また、エッジ部分17hが、LED素子22aの配線基板29における実装位置と、LED素子22bの配線基板29における実装位置との間隙を通って、左右方向に延びているので、2つのLED素子22a、22bの各出射光がエッジ部分17hに当たるのを防止し、エッジ部分17hを良好に設けることができる。
【0063】
また、エッジ部分17hの延びる方向と直交する透過部17bの断面において、エッジ部分17hが、その両側に位置する上面17f及び下面17gよりも車体の前方に突出しているので、LED素子22a、22bの出射光がエッジ部分17hにより散乱されるのを良好に防止して、エッジ部分17hを設けることができる。以下、本実施形態の変形例について、本実施形態との差異を中心に説明する。
【0064】
(変形例1)
図6は、変形例1に係るヘッドランプ装置115の正面図である。ヘッドランプ装置115には、左右方向に複数(ここでは4個)の照射口137eが配置されている。正面視において、各照射口137eの内部には、LED素子122cが配置され、カバー体117のエッジ部分117hは、カバー体117の車幅方向中央よりも外側で、隣り合う2つの照射口137eの間隙を通って上下方向に延びている。
【0065】
このような構成のヘッドランプ装置115においても、ヘッドランプ装置115の路面照射領域にエッジ部分117hの影響が生じるのを抑えることができ、カバー体117の外観の設計の自由度を向上できる。
【0066】
(変形例2)
図7は、変形例2に係るカバー体217のエッジ部分217hの拡大断面図である。エッジ部分217hの前面の輪郭線は、上下方向に延びて上面217f及び下面217gよりも車体の後方に突出している。この拡大断面において、上面217fの接線L1と、下面217gの接線L2との間の角度θの値は、80°未満の値に設定されている。
【0067】
変形例2では、角度θの値は、40°以上80°未満の範囲の値に設定されることが望ましい。具体的に角度θの値は、40°以上75°未満の範囲の値がより望ましく、40°以上70°未満の範囲の値が更に望ましく、40°以上65°未満の範囲の値が一層望ましい。ここでは、角度θの値は、40°以上60°未満の範囲の値に設定されている。
【0068】
このような構成を有するカバー体217によれば、エッジ部分117hに光源の光が当たるのを抑えながら、カバー体217の外観の設計の自由度をより一層向上させることができる。
【0069】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成を変更、追加、又は削除できる。また、鞍乗型乗物は、当然ながら自動二輪車に限定されず、その他の各種の乗物、例えば、三輪車、小型滑走艇(PWC:Personal Water Craft)、スノーモービル、及びATV(全地形走行車)等のいずれかでもよい。
【0070】
実施形態のヘッドランプ装置15が備える前記枠体は、ハウジング部37に限定されない。例えば、前記枠体は、カバー体17とランプ部18との前後間に配置された化粧板やシート体等の部材で構成してもよい。また前記枠体は、前記部材とハウジング部37との両方により構成してもよい。前記部材とハウジング部37とは、前後方向に重なっていてもよい。
【0071】
またヘッドランプ装置15では、照射口37b、37cのうち、上方の照射口37bの全体が、下方の照射口37cに対して下方の照射口37cの後方に離隔していてもよい。
【0072】
ランプ部18は、少なくとも1つの光源を有していればよい。また、ランプ部18が複数の光源を有する場合、エッジ部分17hは、隣り合う2つの光源の間隙を通って延びていなくてもよい。
【0073】
また、例えば正面視において、ランプ部18のエッジ部分17hの延びる方向と直交する方向の一方側の位置に、少なくとも1つの光源を配置すると共に、ランプ部18に当該光源の出射光を照射する隣り合う2つの照射口37b、37cを配置し、エッジ部分17hをこの隣り合う2つの照射口37b、37cの間隙を通って延びるように設けてもよい。
【0074】
光源は、LED素子以外の発光素子でもよく、例えば、有機電界発光素子(有機EL素子)でもよい。また、ランプ部は、光源として、種類が異なる複数の発光素子を有してもよい。また、一対のランプ部の並列方向は、左右方向に限定されず、例えば上下方向でもよい。また、カバー体のエッジ部分の延びる方向は、左右方向又は上下方向に限定されず、これ以外の方向であってもよい。