特許第6702799号(P6702799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニイタカの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702799
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】アルカリ洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/32 20060101AFI20200525BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20200525BHJP
   C11D 7/06 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   C11D7/32
   C11D7/26
   C11D7/06
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-103420(P2016-103420)
(22)【出願日】2016年5月24日
(65)【公開番号】特開2017-210522(P2017-210522A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190736
【氏名又は名称】株式会社ニイタカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 恵太
(72)【発明者】
【氏名】赤阪 天平
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−543896(JP,A)
【文献】 特開平11−349989(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/073644(WO,A2)
【文献】 特開2010−150307(JP,A)
【文献】 特表2011−503369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤(A)及びキレート剤(B)を含有するアルカリ洗浄剤組成物であって、
前記アルカリ剤(A)の含有量が40.0〜47.0重量%であり、
前記キレート剤(B)の含有量が0.5〜30.0重量%であり、
前記キレート剤(B)はジエチレントリアミン5酢酸又はその塩、及び、メチルグリシン2酢酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とするアルカリ洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩、及び、前記メチルグリシン2酢酸又はその塩が併用された請求項1に記載のアルカリ洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩と、前記メチルグリシン2酢酸又はその塩との重量比が、ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩:メチルグリシン2酢酸又はその塩=2:1〜1:2である請求項2に記載のアルカリ洗浄剤組成物。
【請求項4】
さらにプロピレングリコール及び/又はアルキルグルコシドを合計1〜10重量%含有する請求項1〜のいずれかに記載のアルカリ洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場等では、製造設備の大型化や製造品種の増加に伴って洗浄頻度が増加している。そのため、設備の部品を分解して洗浄するCOP洗浄(Cleaning out of place:分解洗浄)は困難となり、設備の配管内や槽内に洗浄液を満たして洗浄液を循環させたり、洗浄液をスプレーして汚れを洗浄・除去するCIP洗浄(Cleaning in place:定置洗浄)が広く採用されている。CIP洗浄の際には、酸洗浄剤やアルカリ洗浄剤組成物が用いられることが多い。
食品工場において洗浄の対象となる汚れは主に食品残渣である。食品残渣には、有機汚れと、無機汚れとがあり、有機汚れとしては、タンパク質、油脂及び炭水化物等が挙げられ、無機汚れとしては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等の無機塩からなるスケール等が挙げられ、これらが複合汚れとなることが多い。
これらの汚れの洗浄は、濃縮アルカリ洗浄剤組成物を水道水や井戸水等で希釈して用いるのが一般的であるが、上記無機塩や、希釈に用いる水の硬度成分によって、洗浄剤組成物が充分な機能を発揮できない場合がある。そのため、無機塩や硬度成分を捕捉するために、アルカリ洗浄剤組成物にキレート剤が配合される。
また、近年、製造や輸送コスト、製造や輸送に伴う二酸化炭素の排出を抑制するためにアルカリ洗浄剤組成物のさらなる濃縮が行われている。しかし、高濃度のアルカリ剤に配合できるキレート剤は少なく、長期間にわたり保存安定性を保つことができるキレート剤はさらに少ない。特に、長期間保存する場合には、キレート剤が析出してしまい無機塩や硬度成分を充分に捕捉できなくなることがある。そのため、アルカリ洗浄剤組成物の高濃縮化には高度な配合技術が必要になる。
【0003】
このように高濃縮化されたアルカリ洗浄剤組成物として、特許文献1には、(A)成分として水酸化ナトリウムを26〜40重量%、(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸及び/又はその塩を0.4〜5重量%、(C)成分としてトリエチレンテトラアミン六酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミン二コハク酸及びこれらの塩から選択される少なくとも1種の可溶化剤、及び(D)成分として水を含有することを特徴とする硬質表面用液体洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5634821号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された硬質表面用液体洗浄剤組成物では、エチレンジアミン四酢酸を安定的に可溶化させるため、トリエチレンテトラアミン六酢酸が用いられている。しかし、エチレンジアミン四酢酸は低温安定性が充分でないため、長期間低温で保存する際に、析出することがあった。また、キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸を可溶化するために別成分であるトリエチレンテトラアミン六酢酸を用いているため、コストがかかるという問題点があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、低温安定性に優れ、有機汚れ及び無機汚れを充分に除去することができるアルカリ洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、アルカリ剤(A)及びキレート剤(B)を含有するアルカリ洗浄剤組成物であって、上記アルカリ剤(A)の含有量が5.0〜47.0重量%であり、上記キレート剤(B)の含有量が0.5〜30.0重量%であり、上記キレート剤(B)はジエチレントリアミン5酢酸又はその塩、及び、メチルグリシン2酢酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0008】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物には、キレート剤(B)として、ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩、及び、メチルグリシン2酢酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種が含有されている。
これら物質は低温安定性に優れるので、本発明のアルカリ洗浄剤組成物を長期間低温で保存したとしても析出しにくい。
また、これら物質は、キレート剤であるので、本発明のアルカリ洗浄剤組成物を水道水や井戸水等で希釈して用いる際、無機塩や、水の硬度成分等を捕捉することができる。さらに、これら物質は、アルカリ剤の洗浄能力を低下させにくい。そのため、本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、有機汚れ及び無機汚れを充分に除去することができる。
【0009】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物では、アルカリ剤(A)の含有量が5.0〜47.0重量%である。
アルカリ剤(A)の含有量が、5.0重量%未満であるとアルカリ剤(A)の含有量が少なすぎるため、有機汚れ及び無機汚れを充分に除去しにくくなる。
アルカリ剤(A)の含有量が、47.0重量%を超えると低温安定性が悪くなり、長期間低温で保存した場合、キレート剤(B)が析出しやすくなる。
【0010】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物では、キレート剤(B)の含有量が0.5〜30.0重量%である。
キレート剤(B)の含有量が、0.5重量%未満であるとキレート剤(B)の含有量が少なすぎるため、無機塩や硬度成分を充分に捕捉することができず、アルカリ洗浄剤組成物が充分な洗浄力を発揮しにくくなる
キレート剤(B)の含有量が、30重量%を超えるとキレート剤(B)の濃度が飽和状態に近づくので、キレート剤(B)が析出しやすくなる。そのため、長期間低温で保存した場合、キレート剤(B)が析出しやすくなる。
【0011】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物では、上記ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩、及び、上記メチルグリシン2酢酸又はその塩が併用されることが望ましい。
これら物質が併用されていると、有機汚れ及び無機汚れを除去しやすくなる。
【0012】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物では、上記ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩と、上記メチルグリシン2酢酸又はその塩との重量比が、ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩:メチルグリシン2酢酸又はその塩=2:1〜1:2であることが望ましい。
これらの重量比が上記範囲内にあると、本発明のアルカリ洗浄剤組成物の低温安定性を向上させることができる。
【0013】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物では、アルカリ剤(A)の含有量が35.0〜47.0重量%であることが望ましい。
ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩と、メチルグリシン2酢酸又はその塩との重量比が、ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩:メチルグリシン2酢酸又はその塩=2:1〜1:2であり、かつ、アルカリ剤(A)の含有量が35.0〜47.0重量%であると、本発明のアルカリ洗浄剤組成物の低温安定性を特に向上させることができる。
【0014】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、さらにプロピレングリコール及び/又はアルキルグルコシドを合計1〜10重量%含有することが望ましい。
本発明のアルカリ洗浄剤組成物が、これらを含むと、低温での保存安定性が向上する。
また、アルキルグルコシドは、アルキル鎖の炭素数が4〜10であることが望ましく、4〜8であることがより望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物には、キレート剤(B)として、ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩、及び、メチルグリシン2酢酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種が含有されている。
これら物質は低温安定性に優れるので、本発明のアルカリ洗浄剤組成物を長期間低温で保存したとしても析出しにくい。
また、これら物質は、キレート剤であるので、本発明のアルカリ洗浄剤組成物を水道水や井戸水等で希釈して用いる際、無機塩や、水の硬度成分等を捕捉することができる。さらに、これら物質は、アルカリ剤の洗浄能力を低下させにくい。
さらに、本発明のアルカリ洗浄剤組成物では、アルカリ剤(A)の含有量が5.0〜47.0重量%であり、キレート剤(B)の含有量が0.5〜30.0重量%である。そのため、有機汚れ及び無機汚れを充分に除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のアルカリ洗浄剤組成物について具体的な実施形態を示しながら説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0017】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、アルカリ剤(A)及びキレート剤(B)を含有するアルカリ洗浄剤組成物であって、上記アルカリ剤(A)の含有量が5.0〜47.0重量%であり、上記キレート剤(B)の含有量が0.5〜30.0重量%であり、上記キレート剤(B)はジエチレントリアミン5酢酸又はその塩、及び、メチルグリシン2酢酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0018】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物では、アルカリ剤(A)の含有量が5.0〜47.0重量%である。また、アルカリ剤(A)の含有量は、31.0〜47.0重量%であることが望ましく、35.0〜47.0重量%であることがより望ましい。
アルカリ剤(A)の含有量が、5.0重量%未満であるとアルカリ剤(A)の含有量が少なすぎるため、有機汚れ及び無機汚れを充分に除去しにくくなる。
アルカリ剤(A)の含有量が、47.0重量%を超えると低温安定性が悪くなり、長期間低温で保存した場合、キレート剤(B)が析出しやすくなる。
【0019】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物では、アルカリ剤(A)として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を用いることができ、その種類は特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、メタケイ酸ナトリウム、セスキケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、セスキケイ酸カリウム、オルソケイ酸カリウム等があげられる。これらの中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであることが望ましい。
これらのアルカリ剤(A)は、水和物となっていてもよい。
【0020】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物では、キレート剤(B)の含有量が0.5〜30.0重量%である。キレート剤(B)の含有量が、0.5重量%未満であるとキレート剤(B)の含有量が少なすぎるため、無機塩や硬度成分を充分に捕捉することができず、アルカリ洗浄剤組成物が充分な洗浄力を発揮しにくくなる。
キレート剤(B)の含有量が、30.0重量%を超えるとキレート剤(B)の濃度が飽和状態に近づくので、キレート剤(B)が析出しやすくなる。そのため、長期間低温で保存した場合、キレート剤(B)が析出しやすくなる。
【0021】
また、スケール等の無機汚れを除去する観点からは、本発明のアルカリ洗浄剤組成物におけるキレート剤(B)の含有量は、8.0〜30.0重量%であることがより望ましい。
キレート剤(B)の含有量が、上記範囲であると、アルカリ洗浄剤組成物中のキレート剤(B)の濃度が充分に高くなり、キレート能を充分に高く発揮することができる。その結果、スケール等の無機汚れを好適に除去することができる。
【0022】
また、低温安定性の観点からは、キレート剤(B)の含有量は、2.1〜15.0重量%であることが望ましく、2.1〜4.0重量%であることがより望ましい。
キレート剤(B)の含有量が、上記範囲であると、アルカリ洗浄剤組成物中のキレート剤(B)の含有量が充分に低いため、キレート剤が析出しにくくなる。
また、アルカリ洗浄剤組成物中のアルカリ剤(A)の含有量を相対的に高くすることができる。その結果、タンパク質等の有機汚れを充分に除去することができる。
【0023】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物には、キレート剤(B)として、ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩、及び、メチルグリシン2酢酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種が含有されている。
これら物質は低温安定性に優れるので、本発明のアルカリ洗浄剤組成物を長期間低温で保存したとしても析出しにくい。
また、これら物質は、キレート剤であるので、本発明のアルカリ洗浄剤組成物を水道水や井戸水等で希釈して用いる際、無機塩や、水の硬度成分等を捕捉することができる。さらに、これら物質は、アルカリ剤の洗浄能力を低下させにくい。そのため、本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、有機汚れ及び無機汚れを充分に除去することができる。
【0024】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物では、ジエチレントリアミン5酢酸の塩としては、特に限定されず、ナトリウム塩、カリウム塩等であってもよい。
また、本発明のアルカリ洗浄剤組成物では、メチルグリシン2酢酸の塩としては、特に限定されず、ナトリウム塩、カリウム塩等であってもよい。
【0025】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物では、ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩、及び、メチルグリシン2酢酸又はその塩が併用されることが望ましい。
これら物質が併用されていると、有機汚れ及び無機汚れを除去しやすくなる。
【0026】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物において、ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩、及び、メチルグリシン2酢酸又はその塩が併用される場合、その重量比は、ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩:メチルグリシン2酢酸又はその塩=2:1〜1:2であることが望ましく、1:1であることがより望ましい。
これらの重量比が上記範囲内にあると、低温安定性を向上させることができる。
【0027】
また、ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩、及び、メチルグリシン2酢酸又はその塩の重量比が、ジエチレントリアミン5酢酸又はその塩:メチルグリシン2酢酸又はその塩=2:1〜1:2である場合、アルカリ剤(A)の含有量が35.0〜47.0重量%であることが望ましい。
この場合、本発明のアルカリ洗浄剤組成物の低温安定性を特に向上させることができる。
【0028】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、不凍剤を含むことが望ましい。不凍剤としては、プロピレングリコール、アルキルグルコシド等が挙げられる。
これらは、単独で用いられていても、併用されていてもよい。
また、アルキルグルコシドは、アルキル鎖の炭素数が4〜10であることが望ましく、4〜8であることがより望ましい。
【0029】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物がプロピレングリコール及び/又はアルキルグルコシドを含む場合、本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、プロピレングリコール及び/又はアルキルグルコシドを合計1〜10重量%含有することが望ましく、1〜5重量%含有することがより望ましい。
本発明のアルカリ洗浄剤組成物が、プロピレングリコール及び/又はアルキルグルコシドを合計1〜10重量%含有すると、低温での保存安定性が特に向上する。
【0030】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、その他の成分として、界面活性剤、ポリアクリル酸とその塩を含有していてもよい。
【0031】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物のpHは、特に限定されないが、10〜14であることが望ましく、12〜14であることがより望ましい。
【0032】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、−5℃〜50℃で保存することができ、保存温度は、1〜40℃であることが望ましく、5〜20℃であることがより望ましい。
本発明のアルカリ洗浄剤組成物の保存温度が−5℃〜50℃の範囲であると、1ヶ月以上、キレート剤(B)が析出することなく本発明のアルカリ洗浄剤組成物を安定に保存することができる。
本発明のアルカリ洗浄剤組成物の保存温度が−5℃未満であると、キレート剤(B)が析出しやすくなる。
本発明のアルカリ洗浄剤組成物の保存温度が50℃を超えると、アルカリ洗浄剤組成物中の成分が変質しやすくなる。
【実施例】
【0033】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1〜11)及び(比較例1〜8)
表1及び2に示すように、アルカリ洗浄剤組成物の化合物を混合し、各実施例及び各比較例に係るアルカリ洗浄剤組成物を製造した。なお、表1及び2中、化合物の数値は「重量%」を意味する。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
(低温安定性評価)
以下に記載の方法で、実施例1〜11及び比較例1〜8の低温安定性の評価を行った。
【0038】
100mLのプラスチック製透明容器に、実施例1〜11のアルカリ洗浄剤組成物、又は、比較例1〜8のアルカリ洗浄剤組成物を80g加え試験洗浄剤とした。
そして、各試験洗浄剤を、−8℃又は−5℃に設定された恒温器に1ヶ月保存した。
その後、結晶の析出の有無を目視にて確認した。
評価基準は、以下の通りである。評価結果を表1及び2に示す。
◎:−8℃で保存した際に結晶の析出なし。
○:−8℃で保存した際に結晶の析出あり、−5℃で保存した際に結晶の析出なし。
×:−5℃で保存した際に結晶の析出あり。
【0039】
(タンパク質に対する洗浄力評価)
以下に記載の方法で、モデルタンパク質汚れを作製し、そのモデルタンパク質汚れを用いて、実施例1〜11及び比較例1〜8のアルカリ洗浄剤組成物のタンパク質に対する洗浄力評価を行った。
【0040】
(1)モデルタンパク質汚れの作製
エタノール200gとグルテン30gとを混合し混合物を作製した。そして、該混合物0.2gをスライドガラス(72×52mm)に塗布し、室温で1時間静置し、混合物を乾燥させた。
その後、混合物が塗布されたスライドガラスを、5秒間水に浸漬し、室温で3時間静置し、混合物を乾燥させた。
その後、混合物が塗布されたスライドガラスを100℃、24時間オーブンにより加熱した。
これらの工程を経て得られた混合物が付着したスライドガラスをモデルタンパク質汚れとした。
【0041】
(2)タンパク質に対する洗浄力評価の試験方法
実施例1〜11のアルカリ洗浄剤組成物、又は、比較例1〜8のアルカリ洗浄剤組成物を水で100倍希釈し、1重量%アルカリ洗浄剤組成物の洗浄液を作製した。
各洗浄液にモデルタンパク質汚れを90℃、5分間浸漬した。
その後、モデルタンパク質汚れを取り出し、タンパク質汚れが落ちた面積を測定することにより、各アルカリ洗浄剤組成物のタンパク質に対する洗浄力を評価した。評価方法は以下の通りである。結果を表1及び2に示す。
◎:タンパク質汚れが落ちた面積が、90%以上であった。
○:タンパク質汚れが落ちた面積が、50%以上、90%未満であった。
×:タンパク質汚れが落ちた面積が、50%未満であった。
【0042】
(スケールに対する洗浄力評価)
以下に記載の方法で、実施例1〜11及び比較例1〜8のアルカリ洗浄剤組成物のスケールに対する洗浄力評価を行った。
【0043】
スケールのモデルとして大理石片(10×5×1cm)を準備した。次に、大理石片をイオン交換水ですすぎ、80℃、1時間乾燥させた。
大理石片を冷却後、大理石片の重量を測定し、試験前大理石片の重量とした。
次に、実施例1〜11のアルカリ洗浄剤組成物、又は、比較例1〜8のアルカリ洗浄剤組成物を水で100倍希釈し、1重量%アルカリ洗浄剤組成物の洗浄液を作製した。
次に、各洗浄液に、大理石片を90℃、30分浸漬した。
その後、大理石片を取り出し、イオン交換水で充分に洗浄した。
その後、洗った大理石片を80℃、1時間乾燥させた。
大理石片を冷却後、大理石片の重量を測定し、試験後大理石片の重量とした。
試験前大理石片の重量及び試験後大理石片の重量から、大理石片1cm当たりの重量減少量を求め、その数値より、1時間当たりの大理石片の溶解速度(mg/cm・h)を算出した。評価基準は以下の通りである。結果を表1及び2に示す。
◎:0.3mg/cm・h以上、0.5mg/cm・h以下。
○:0.1mg/cm・h以上、0.3mg/cm・h未満。
×:0.1mg/cm・h未満。
【0044】
表1に示すように、実施例1〜11のアルカリ洗浄剤組成物は、低温安定性評価、タンパク質に対する洗浄力評価及びスケールに対する洗浄力評価の全てにおいて良好な評価であった。
【0045】
さらに、水酸化ナトリウムの含有量が35.0〜47.0重量%であり、ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウム、及び、メチルグリシン2酢酸ナトリウムが併用され、ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウム、及び、メチルグリシン2酢酸ナトリウムの合計重量が2.1〜4.0重量%であり、かつ、ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウム、及び、メチルグリシン2酢酸ナトリウムとの重量比が、2:1〜1:2である実施例4〜6、10及び11のアルカリ洗浄剤組成物は、低温安定性が特に良好な評価であった。
【0046】
また、水酸化ナトリウムの含有量が31.0重量%以上である、実施例1及び3〜11のアルカリ洗浄剤組成物は、タンパク質に対する洗浄力が特に良好な評価であった。
【0047】
また、キレート剤の含有量が8.0〜30.0重量%である実施例2、8及び9のアルカリ洗浄剤組成物は、スケールに対する洗浄力が特に良好な評価であった。