特許第6702808号(P6702808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702808
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ボス部取外用治具
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20200525BHJP
   B66B 23/04 20060101ALI20200525BHJP
   B25B 27/073 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   B66B31/00 D
   B66B23/04 B
   B25B27/073 A
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-121603(P2016-121603)
(22)【出願日】2016年6月20日
(65)【公開番号】特開2017-226487(P2017-226487A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 知至
(72)【発明者】
【氏名】庄司 靖
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−007261(JP,A)
【文献】 実開平07−000668(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00−31/02
B25B 27/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの手摺を駆動する手摺駆動装置の駆動ローラが取り付けられる環状のボス部を、そのボス部が軸受を介して取り付けられた軸部から取り外すのに用いられるボス部取外用治具であって、
外周面に雄ねじが設けられ、先端が前記軸部の軸方向の端面に当接される軸部材と、
内部に前記雄ねじに螺合する雌ねじが設けられ、一面が前記ボス部の軸方向の端面に当接される当接面になると共に、前記ボス部の前記端面に固定するための締結部材が挿通される複数の挿通孔を有するボス固定部材と、
を備え、
前記ボス固定部材が円板状の部分を有して、前記複数の挿通孔が前記円板状の部分の周方向に間隔をおいて配置され、
前記ボス固定部材が前記ボス部に固定された状態で、前記軸部材が回転することによって、前記ボス部を前記ボス固定部材と一緒に前記軸部から取り外し、
さらに、前記軸部材を回転させるために前記軸部材の前記軸方向の先端側とは反対側に前記軸部材と一体に設けられるハンドル部を備え、
前記軸部材の前記軸方向の先端部には、前記ボス部を前記軸部から取り外す際に前記軸部に対して回転する前記軸部材を前記軸部の前記軸方向の端面に接触させる板状の回転座が設けられ、
前記ハンドル部は、前記軸部材の径方向に延在する1以上の棒状部分を有する、ボス部取外用治具。
【請求項2】
乗客コンベアの手摺を駆動する手摺駆動装置の駆動ローラが取り付けられる環状のボス部を、そのボス部が軸受を介して取り付けられた軸部から取り外すのに用いられるボス部取外用治具であって、
外周面に雄ねじが設けられ、先端が前記軸部の軸方向の端面に当接される軸部材と、
内部に前記雄ねじに螺合する雌ねじが設けられ、一面が前記ボス部の軸方向の端面に当接される当接面になると共に、前記ボス部の前記端面に固定するための締結部材が挿通される挿通孔を有するボス固定部材と、
を備え、
前記ボス固定部材が前記ボス部に固定された状態で、前記軸部材が回転することによって、前記ボス部を前記ボス固定部材と一緒に前記軸部から取り外し、
さらに、複数のピンと、
前記駆動ローラと一体に設けられてチェーンが掛け渡されるスプロケットから前記チェーンを浮かせるために、前記ピンの先端部が前記スプロケットの歯の間に挿入された状態を維持するように前記ピンを支持するピン支持部材と、を備え、
前記ピン支持部材は、前記軸部材が通過する貫通孔と、前記軸方向において前記挿通孔よりも前記チェーンから遠い側に配置されて、前記締結部材が挿通される遠方側挿通孔と、前記軸部材の径方向において前記遠方側挿通孔よりも外方に設けられる複数のピン挿通孔と、を有し、
前記ピン挿通孔は、そのピン挿通孔に挿入された前記ピンの先端部が前記スプロケットの歯の間に入り込むことが可能な位置に配設される、ボス部取外用治具。
【請求項3】
請求項2に記載のボス部取外用治具において、
前記ピン支持部材が、前記ボス固定部材と一体に設けられる、ボス部取外部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
乗客コンベア(エスカレーター、動く歩道)の手摺を駆動する手摺駆動装置の駆動ローラが取り付けられるボス部を、そのボス部が軸受を介して取り付けられた軸部から取り外すのに用いられるボス部取外用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアは、手摺を循環駆動させる手摺駆動装置を備える。特許文献1に記載されているように、手摺駆動装置は、トラス内に配設された駆動ローラ及び加圧ローラを含み、駆動ローラは、駆動ローラ駆動機構により回動される。手摺が駆動ローラと加圧ローラとで挟み込まれた状態で駆動ローラが回動することによって、手摺が駆動ローラ及び加圧ローラから摩擦力を受けて循環移動する。
【0003】
特許文献1に記載はないが、一般的に、駆動ローラは、環状のボス部の外周面に配設される。また、ボス部は、乗客コンベアの本体ベースから突出する軸部に軸受を介して取り付けられて軸部に対して回動自在になっている。ボス部には、駆動ローラに動力を付与するチェーンを掛け渡すスプロケットが駆動ローラと同軸上に設けられる。駆動ローラは、ボス部の軸方向の一端側に取り付けられ、スプロケットは、ボス部の軸方向の他端側に設けられる。軸受の損傷等が生じて、ボス部を取り外す必要性が生じると、駆動ローラがボス部から取り外された後、ボス部が軸受と共に軸部から取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−8702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13図15は、ボス部72の取り替えをより詳しく説明するための図であり、参考例の方法によるボス部72の取り替えを説明する図である。
【0006】
この参考例のボス部72の取り替えでは、先ず、図13に示すように、手摺駆動装置において駆動ローラ85が配設される駆動ローラユニット15から、駆動ローラ85をボス部72の軸方向の端面に固定しているボルト89を取り外し、駆動ローラユニット15から駆動ローラ85を取り外す。
【0007】
続いて、図14に示すように、軸部71に外嵌された軸受73の離脱を防止するために軸部71の環状溝に嵌入されているC型止め輪87を当該環状溝から取り外し、軸受73が軸部71から取り外し可能な状態にする。
【0008】
その後、図15に示すように、ボス部72に設けられて径方向の外方に延在する段部88にギヤプーラー90の爪91を架けた後、ギヤプーラー90のジャッキボルト99を回転させることによって、ジャッキボルト99の先端を軸部71の軸方向の端面71aに接触させる。
【0009】
次に、さらにジャッキボルト99を回すことによって、ジャッキボルト99をギヤプーラー90の本体部95に対して軸部71側に少し相対移動させた後、チェーン20をボス部72の駆動ローラ用スプロケット86から取り外す。詳しくは、ジャッキボルト99がギヤプーラー90の本体部95から爪91側に少し移動した状態(ボス部72が少し抜けた状態)で、ギヤプーラー90を一旦ボス部72から外す。その後、手でチェーン20を持上げてチェーン20を駆動ローラ用スプロケット86から外した後、ギヤプーラー90を再度ボス部72に架ける。
【0010】
続いて、ジャッキボルト99を更に回すことによって、爪91をジャッキボルト99の軸部71側の先端に対して軸方向の外方側に移動させ、爪91が係止しているボス部72を軸受73と共に軸部71から軸方向の外方に引き抜く。このようにして、ボス部72を軸受73と共に軸部71から取り外す。
【0011】
この参考例のボス部72の取外方法では、ギヤプーラー90をボス部72の段部88に据え付ける際、トラス内という狭いスペース内において、一方の手でギヤプーラー90を支えた状態で他方の手でジャッキボルト99を回す必要があるが、この作業が容易でない。
【0012】
また、チェーン20を、ボス部72が少し抜けた位置で駆動ローラ用スプロケット86から外す際、ギヤプーラー90を一旦ボス部72から外した後、チェーン20をスプロケットから外し、その後、ギヤプーラー90を再度ボス部72に架ける必要があるが、ギヤプーラーを外したり架け直したりする作業が作業効率を悪化させる。
【0013】
更には、ギヤプーラー90は、ボス部72が急に抜けたり、一定の引き抜き力が存在しなかったりすると、下に落下する。このため、ギヤプーラー90は、常に支えられる必要があり扱いにくい。
【0014】
本発明の目的は、狭いトラス内でもボス部を軸部から容易に取り外しでき、作業効率を向上できるボス部取外用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
開示に係るボス部取外用治具は、乗客コンベアの手摺を駆動する手摺駆動装置の駆動ローラが取り付けられる環状のボス部を、そのボス部が軸受を介して取り付けられた軸部から取り外すのに用いられるボス部取外用治具であって、外周面に雄ねじが設けられ、先端が前記軸部の軸方向の端面に当接される軸部材と、内部に前記雄ねじに螺合する雌ねじが設けられ、一面が前記ボス部の軸方向の端面に当接される当接面になると共に、前記ボス部の前記端面に固定するための締結部材が挿通される挿通孔を有するボス固定部材と、を備え、前記ボス固定部材が前記ボス部に固定された状態で、前記軸部材が回転することによって、前記ボス部を前記ボス固定部材と一緒に前記軸部から取り外す。
【0016】
開示のボス部取外用治具は、例えば次のように用いられる。先ず、駆動ローラをボス部に固定している締結部材を、ボス部のタップ孔から取り外すことによって、駆動ロータをボス部から取り外すと共に、タップ孔を外部に露出させる。その後、ボス固定部材の一面(当接面)をボス部の軸方向の端面に当接させた状態で、ボス固定部材の挿通孔を介して締結部材をボス部のタップ孔に締め込むことによって、ボス固定部材をボス部に固定する。次に、軸部材を回転させることによって、ボス固定部材の雌ねじに対して軸部材の雄ねじを軸部側に相対移動させ、ボス固定部材を軸部材に対して軸部側とは反対側に相対移動させる。その結果、ボス固定部材に固定されたボス部も軸部側とは反対側に軸方向に移動し、ボス部が軸受と共に軸部から軸方向に引き抜かれる。
【0017】
開示によれば、締結部材を用いてボス固定部材をボス部に固定した後、軸部材を回転させるだけで、ボス部を軸部から引き抜くことができる。よって、狭いトラス内でもボス部を軸部から容易に取り外しできる。
【0018】
また、本発明に係るボス部取外用治具は、乗客コンベアの手摺を駆動する手摺駆動装置の駆動ローラが取り付けられる環状のボス部を、そのボス部が軸受を介して取り付けられた軸部から取り外すのに用いられるボス部取外用治具であって、外周面に雄ねじが設けられ、先端が前記軸部の軸方向の端面に当接される軸部材と、内部に前記雄ねじに螺合する雌ねじが設けられ、一面が前記ボス部の軸方向の端面に当接される当接面になると共に、前記ボス部の前記端面に固定するための締結部材が挿通される挿通孔を有するボス固定部材と、を備え、前記ボス固定部材が前記ボス部に固定された状態で、前記軸部材が回転することによって、前記ボス部を前記ボス固定部材と一緒に前記軸部から取り外し、さらに、複数のピンと、前記駆動ローラと一体に設けられてチェーンが掛け渡されるスプロケットから前記チェーンを浮かせるために、前記ピンの先端部が前記スプロケットの歯の間に挿入された状態を維持するように前記ピンを支持するピン支持部材と、を備え、前記ピン支持部材は、前記軸部材が通過する貫通孔と、前記軸方向において前記挿通孔よりも前記チェーンから遠い側に配置されて、前記締結部材が挿通される遠方側挿通孔と、前記軸部材の径方向において前記遠方側挿通孔よりも外方に設けられる複数のピン挿通孔と、を有し、前記ピン挿通孔は、そのピン挿通孔に挿入された前記ピンの先端部が前記スプロケットの歯の間に入り込むことが可能な位置に配設され
【0019】
ボス部の外周面には、駆動ローラを回動させる動力を伝えるチェーンが掛け渡されるスプロケットが設けられる。本発明によれば、締結部材で、ピン支持部材をボス固定部材と共にボス部に固定できる。そして、その後、ピン支持部材のピン挿通孔にピンを挿入して、ピンの先端部をチェーンに干渉していないスプロケットの歯の間に嵌り込ませた後、ボス部を軸部に対して回転させるだけで、ピンの先端部をチェーンとスプロケットの歯の間に移動させることができる。よって、ピンでチェーンとスプロケットとの嵌め合いを外すことができ、チェーンをスプロケットから浮かすことができるので、ユーザが手でチェーンをスプロケットから外す手間を省くことができ、ボス部の引き抜きの作業効率を更に向上できる。
【0020】
また、前記ピン支持部材を備える場合において、前記ピン支持部材は、前記ボス固定部材と一体に設けられてもよい。
【0021】
上記構成によれば、ピン支持部材がボス固定部材と一体に設けられるので、ピン支持部材及びボス固定部材をボス部に固定する際、ピン支持部材の周方向の位相をボス固定部材の周方向の位相に合わせる必要がない。よって、ピン支持部材及びボス固定部材を容易にボス部に固定できる。
【0022】
また、本発明の別の態様に係るボス部取外用治具は、乗客コンベアの手摺を駆動する手摺駆動装置の駆動ローラが取り付けられる環状のボス部を、そのボス部が軸受を介して取り付けられた軸部から取り外すのに用いられるボス部取外用治具であって、外周面に雄ねじが設けられ、先端が前記軸部の軸方向の端面に当接される軸部材と、内部に前記雄ねじに螺合する雌ねじが設けられ、一面が前記ボス部の軸方向の端面に当接される当接面になると共に、前記ボス部の前記端面に固定するための締結部材が挿通される複数の挿通孔を有するボス固定部材と、を備え、前記ボス固定部材が円板状の部分を有して、前記複数の挿通孔が前記円板状の部分の周方向に間隔をおいて配置され、前記ボス固定部材が前記ボス部に固定された状態で、前記軸部材が回転することによって、前記ボス部を前記ボス固定部材と一緒に前記軸部から取り外し、さらに、前記軸部材を回転させるために前記軸部材の前記軸方向の先端側とは反対側に前記軸部材と一体に設けられるハンドル部を備え、前記軸部材の前記軸方向の先端部には、前記ボス部を前記軸部から取り外す際に前記軸部に対して回転する前記軸部材を前記軸部の前記軸方向の端面に接触させる板状の回転座が設けられ、前記ハンドル部は、前記軸部材の径方向に延在する1以上の棒状部分を有する
【0023】
本発明によれば、軸部材を回転させる回転用掴み部が軸部材の軸方向の先端側とは反対側に設けられるので、大きな回転トルクを軸部材に付与できる。また、軸部材の軸方向の先端部に、軸部の軸方向の端面の大きな領域に接触可能な板状の回転座が設けられるので、軸部の端面及び軸部材の先端にかかる面圧を低減できる。よって、軸部材の先端部が軸部の端面に接触している状態で軸部材が軸部に対して相対回転しても、軸部の端面及び軸部材の先端部が傷つきにくい。また、回転掴み部が、径方向に延在するハンドル部で構成されるので、工具を用いずに大きなトルクを軸部材に付与することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るボス部取外用治具によれば、駆動ローラが取り付けられるボス部を狭いトラス内でも軸部から容易に取り外しでき、作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】手摺駆動装置を含むエスカレーターの概略構成図である。
図2】手摺駆動装置の駆動ローラユニットの軸方向の断面図である
図3】ボス部取外用治具の正面図である。
図4】ピン支持部材を、図3に矢印Bで示す方向から見たときのB矢視図である。
図5】ピン支持部材のピン挿通孔に挿入されるピンの正面図である。
図6】メンテナンス途中状態における駆動ローラユニットの軸方向一部断面図である。
図7】メンテナンス途中状態における駆動ローラユニットの軸方向一部断面図である。
図8図1において、欄干の延在方向でアイドラスプロケットの片側に配設された2つの駆動ローラユニットのメンテナンス途中状態を示す正面図である。
図9図1において、欄干の延在方向でアイドラスプロケットの片側に配設された2つの駆動ローラユニットのメンテナンス途中状態を示す正面図である。
図10】変形例のボス部取外用治具の正面図である。
図11】変形例のボス部取外用治具を図10に矢印Dで示す方向から見たときのD矢視図である。
図12】変形例のボス部取外用治具を用いたメンテナンス途中状態における駆動ローラユニットの軸方向一部断面図である。
図13】参考例の方法によるボス部の取り替えを説明する図である。
図14】参考例の方法によるボス部の取り替えを説明する図である。
図15】参考例の方法によるボス部の取り替えを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、乗客コンベアがエスカレーター1である場合について説明するが、乗客コンベアは複数の踏段が段差なく連なる動く歩道であってもよい。また、以下において説明される実施形態及び変形例の特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。
【0027】
図1は、手摺駆動装置11を含むエスカレーター1の概略構成図である。また、図2は、手摺駆動装置11の駆動ローラユニット15の軸方向の断面図である。本発明の一実施形態に係るボス部取外用治具30は、駆動ローラユニット15の駆動ローラ85が取り付けられるボス部72を、そのボス部72が軸受73を介して取り付けられる軸部71から取り外すのに用いられる。以下では、先ず、図1及び図2を用いて、エスカレーター1、手摺駆動装置11、及び駆動ローラユニット15の構造について説明する。
【0028】
図1に示すように、エスカレーター1は、本体枠13、一対の欄干2、複数の踏段3、踏段チェーン6、上部踏段スプロケット4、下部踏段スプロケット5、駆動スプロケット7、駆動チェーン9、手摺10、手摺駆動スプロケット12、第1手摺チェーン18及び駆動機8を備える。
【0029】
本体枠13は、隣接する階床間に亘って配設され、一対の欄干2は、本体枠13の幅方向の両側に設けられる。踏段3は、一対の欄干2の間に配設される。複数の踏段3は踏段チェーン6により無端状に連結され、踏段チェーン6は、上部踏段スプロケット4と下部踏段スプロケット5の間に掛け渡される。
【0030】
駆動スプロケット7は、上部踏段スプロケット4と同軸上に設けられ、駆動チェーン9は、駆動スプロケット7と駆動機8の間に掛け渡される。駆動機8の駆動力が、駆動チェーン9、駆動スプロケット7、及び上部踏段スプロケット4を介して踏段チェーン6に伝達されることによって、踏段チェーン6が、上部踏段スプロケット4と下部踏段スプロケットの間を循環移動し、それに伴って複数の踏段3が循環移動する。
【0031】
手摺10は、欄干2の周縁部に循環移動可能に取り付けられ、手摺駆動装置11によって循環移動する。詳しくは、手摺駆動装置11は,上部踏段スプロケット4と同軸上に設けられた手摺駆動スプロケット12に巻き掛けられた第1手摺チェーン18により駆動される。
【0032】
手摺駆動装置11は、複数の駆動ローラユニット15、加圧ローラ17、アイドラスプロケット19、2連スプロケット21、及び第2手摺チェーン20を有する。駆動ローラユニット15には、駆動ローラ85(図2参照)及び駆動ローラ用スプロケット86(図2参照)が同軸上に一体に設けられる。駆動ローラ85、加圧ローラ17、アイドラスプロケット19、及び2連スプロケット21は、欄干2と略平行に延在する取付枠25(図2参照)に回動自在に取り付けられる。
【0033】
加圧ローラ17は、手摺10を挟んで駆動ローラ85と対向する位置に配設され、アイドラスプロケット19は、駆動ローラユニット15よりも2連スプロケット21側に配設される。2連スプロケット21には、第1及び第2スプロケット21a,21bが同軸上に設けられる。
【0034】
第2手摺チェーン20は、無端のループ状であり、駆動ローラ用スプロケット86、アイドラスプロケット19、及び第1スプロケット21aに掛け渡される。詳述しないが、アイドラスプロケット19の軸部は、図1に矢印Aで示す方向に延在する長孔(図示せず)に取り付けられ、アイドラスプロケット19の取付位置は、矢印A方向に移動可能になっている。このことから、第2手摺チェーン20の張力は、アイドラスプロケットの取付位置の調整によって調整可能になっている。駆動機8の動力により、第1手摺チェーン18を介して2連スプロケット21が回動し、その結果、第2手摺チェーン20が循環移動して、第2手摺チェーン20が掛け渡された駆動ローラ用スプロケット86と一体の駆動ローラ85が回動する。そして、駆動ローラ85の回動により、駆動ローラ85と加圧ローラ17に挟まれた手摺10が摩擦駆動される。加圧ローラ17は、手摺10を駆動ローラ85に押し付け、従動回転する。
【0035】
次に、駆動ローラユニット15の詳細な構造について説明する。図2に示すように、駆動ローラユニット15は、軸部71、ボス部72、2つの軸受73、駆動ローラ85、及びC型止め輪87を有する。軸部71は、取付枠25において鉛直方向に延在する平板状の本体部25aと一体に構成され、本体部25aの一方側表面からその法線方向に突出する。ボス部72は、2つの軸受73を介して軸部71に回動自在に取り付けられる。ボス部72の外周面の本体部25a側には、駆動ローラ用スプロケット86が設けられ、駆動ローラ用スプロケット86には、第2手摺チェーン20が掛け渡される。
【0036】
ボス部72の外周面の本体部25a側とは反対側には、駆動ローラ取付用の円筒外周面75が設けられ、ボス部72の本体部25a側とは反対側の軸方向の端面には、駆動ローラ85を取り付けるためのタップ孔が設けられる。また、駆動ローラ85は、全体として円形キャップ状の形状を有し、円板部93が筒部94の軸方向の一方側に配設された構成を有し、円板部93には、軸部挿通孔85a及びボルト挿通孔85bが設けられる。筒部94を円筒外周面75に外嵌した状態でボルト89を円板部93のボルト挿通孔85b及びボス部72のタップ孔に締め込むことによって、駆動ローラ85がボス部72に取り付けられる。C型止め輪87は、軸部71の先端部に設けられたC型止め輪取付用の環状溝に陥入される。C型止め輪87は、軸受73が軸部71から外れるのを防止するために設けられる。なお、駆動ローラ85は、軸部71を中心として回転し、駆動ローラ85の周面の加圧ローラ17と対向する部分が手摺10に接触して、手摺10を送る。
【0037】
次に、ボス部取外用治具30の構造について説明する。図3は、ボス部取外用治具30の正面図である。図3に示すように、ボス部取外用治具(以下、単に治具という)30は、軸部材31、回転用掴み部の一例としてのハンドル部32、ボス固定部材33、及びピン支持部材34を有し、ハンドル部32は、軸部材31の軸方向の先端側とは反対側に軸部材31と一体に設けられる。
【0038】
軸部材31の外周面には、雄ねじ31aが設けられ、軸部材31の軸方向の先端部には、軸部材31の径方向に広がる円板状の回転座31bが設けられる。回転座31bは、駆動ローラユニット15(図2参照)の軸部71が軸部材31を安定に支持できるように設けられる。
【0039】
ハンドル部32は、2つの棒状部分32aで構成され、各棒状部分32aは、軸部材31から軸部材31の径方向に延在する。2つの棒状部分32aは、軸部材31における円形断面の中心を通る同一の直線上に位置する。なお、この実施例とは異なり、ハンドル部は、軸部材の径方向に延在する1又は3以上の棒状部分で構成されてもよい。また、回転用掴み部は、棒状部分32aからなるハンドル部32で構成されなくてもよく、軸部材の軸方向の先端側とは反対側に軸部材と一体に設けられる蝶ねじの頭部で構成されてもよい。また、回転用掴み部は、六角回し部等で構成されてもよく、スパナ等の工具が架けられて回される構成でもよい。又は、回転掴み部は、軸部材に設けられてなくてもよい。本実施形態によれば、回転掴み部が、径方向に延在するハンドル部32で構成されるので、工具を用いずに大きなトルクを軸部材31に付与することができる。
【0040】
ボス固定部材33は、第1円板部35と、第2円板部36とを有し、第2円板部36は、第1円板部35のハンドル部32側の端面に、溶接部や接着剤等で構成される固定手段で固定される。第1円板部35の中心部分には、回転座31bに比べ十分大きな貫通孔35aが設けられる。また、第2円板部36は、雌ねじ36aが設けられた内周面37を中心部分に有する。貫通孔35aの中心軸と、雌ねじ36aの中心軸とは、同一の直線上に位置している。軸部材31は、第1円板部35の貫通孔35aを通過でき、軸部材31の雄ねじ31aは、第2円板部36の雌ねじ36aに螺合する。
【0041】
第1円板部35には、複数の挿通孔35bが設けられ、ここに締結部材の一例としてのボルト39が挿入される。複数の挿通孔35bは、貫通孔35aの径方向の外側において第1円板部35を貫通しており、貫通孔35aおよび第2円板部36よりも径方向の外方側に周方向に互いに間隔をおいて設けられる。
【0042】
図2に示すように、ボス部72の軸方向の端面47には、駆動ローラ85をボルト89でボス部72の端面47に固定するための複数のタップ孔72aが設けられる。図2及び図3を参照して、軸部材31が軸部71の中心に位置し、回転座31bの全面が軸部71の軸方向の端面71aの略中心に当接している状態で、複数の挿通孔35bは、軸方向から見たとき複数のタップ孔72aに重なる位置に配置可能になっている(以下、軸方向から見たとき重なることを軸方向に重なるという)。
【0043】
なお、第2円板部36が、第1円板部35のハンドル部32側の端面に溶接や接着剤等によって固定される場合について説明した。しかし、第1円板部と、第2円板部とは、例えば鋳造等により一体に成形されてもよい。また、第2円板部が存在しなくてもよく、第1円板部に、軸部材31が通過する貫通孔を設ける替わりに、軸部材31の雄ねじに螺合するねじ孔を設ける構成でもよい。また、軸部材31に回転座31bを設ける場合について説明したが、軸部材に回転座が設けられなくてもよい。
【0044】
図3を参照して、ピン支持部材34は、第2手摺チェーン20を浮かせるためのピン40(図5参照)を支持するために設けられる。ピン支持部材34は、円板状の部材であり、軸部材31が通過する貫通孔34aと、ボルト39が挿通される複数の挿通孔34bと、複数のピン挿通孔34cとを有する。挿通孔34bは、ボス固定部材33の挿通孔35bの軸方向のハンドル部32側(ハンドル部20よりも遠方側)に配置される。ピン支持部材34の挿通孔34bは、遠方側挿通孔を構成する。複数のピン挿通孔34cは、軸部材31の径方向において挿通孔34bよりも外方に配置される。複数のピン挿通孔34cは、貫通孔34aの同心円上に設けられ、各ピン挿通孔34cは、ピン支持部材34を貫通する。
【0045】
ピン支持部材34の貫通孔34aは、大径孔部34a1と、大径孔部34a1より内径が小さい小径孔部34a2を有する。すなわち、ピン支持部材34は、複数のピン挿入孔34cが設けられる周辺部分が厚肉で、そこから径方向の内側に伸びる薄肉円環状の段部34a3を有する。厚肉部分において段部が突出していない箇所の内側が大径孔部34a1となり、段部34a3の内側が小径孔部34a2となっている。大径孔部34a1は、小径孔部34a2よりも回転座31b側に配置される。大径孔部34a1の中心軸と、小径孔部34a2の中心軸とは、略一致している。
【0046】
小径孔部34a2の内径は、ボス固定部材33の第2円板部36の外径よりも若干(僅かに)大きく、第1円板部35の外径よりも小さい。また、大径孔部34a1の内径は、第1円板部35の外径よりも若干(僅かに)大きい。また、第1円板部35の軸方向の長さは、大径孔部34a1の軸方向の長さと同一か又は若干(僅かに)大きくなっている。
【0047】
複数の挿通孔34bは、ピン支持部材34における小径孔部34a2よりも径方向の外側かつ大径孔部34a1よりも径方向の内側に設けられ、貫通孔34aに略平行に延在している。また、ボス固定部材33の中心軸と、ピン支持部材34の中心軸とが、一致している状態で、ピン支持部材34の複数の挿通孔34bは、ボス固定部材33の複数の挿通孔35bに軸方向に重なる位置に配置可能になっている。すなわち、周方向における間隔が一致しているため、両者の1つの孔同士34b,35bを一致させることで、全ての孔同士34b,35bが一致する。
【0048】
その結果、第1円板部35の第2円板部36側の端面がピン支持部材34の段部34a3に当接するまで、第1円板部35を大径孔部34a1に内嵌できる。また、この状態で、ボルト39を、ピン支持部材34の挿通孔34b、及びボス固定部材33の挿通孔35bを通過させた後で、ボス部72のタップ孔72a(図2参照)に締め込むことによって、ボス固定部材33及びピン支持部材34をボス部72に同時に固定できる。
【0049】
なお、ボス固定部材33と、ピン支持部材34とが別部材である場合について説明したが、ボス固定部材と、ピン支持部材とは一体に構成されてもよく、この場合、ピン支持部材及びボス固定部材を容易にボス部に固定できる。また、ボス固定部材33の第1円板部35をピン支持部材34の大径孔部34a1に内嵌する場合について説明したが、ピン支持部材が大径孔部を有さなくて、ボス固定部材の軸方向の一方側の端面と、ピン支持部材の軸方向の他方側の端面とが、当接する構成でもよい。
【0050】
図4は、ピン支持部材34を、図3に矢印Bで示す方向から見たときのB矢視図である。図3及び図4に示すように、複数のピン挿通孔34cは、大径孔部34a1よりも径方向の外方側に設けられ、複数の挿通孔34bは、大径孔部34a1よりも径方向の内方側に設けられる。また、複数の挿通孔34bは、貫通孔34aの中心を中心とする同じ円上に等間隔に設けられ、複数のピン挿通孔34cも、貫通孔34aの中心を中心とする同じ円上に等間隔に設けられる。なお、複数のピン挿通孔は、貫通孔の中心を中心とする同じ円上に等間隔に設けられなくてもよく、例えば、当該円の周方向の一部の位相の局所部分のみに、周方向の両端のピン挿通孔同士の間隔を除いて、周方向に等間隔に設けられてもよい。
【0051】
ピン挿通孔34cには、図5に正面図が示されるピン40が挿入される。図4に示すように、ピン40は、軸部43と、持ち手部41とを有し、持ち手部41は、軸部43の軸方向の一方側に設けられる。軸部43が、ピン挿通孔34cに挿入可能であるのに対し、持ち手部41は、ピン挿通孔34cに挿入不可能になっている。持ち手部41がピン支持部材34のハンドル部32側の端面に引っ掛かるまで、軸部43がハンドル部32側からピン挿通孔34cに挿入される。ピン40の役割については、以下で詳細に説明する。
【0052】
次に、図6図9を主に用いて、駆動ローラユニット15(図2参照)から、駆動ローラ85、ボス部72及び2つの軸受73を取り替える場合を例に治具30の用い方を説明する。図6及び図7は、メンテナンス途中状態における駆動ローラユニット15の軸方向一部断面図である。また、図8及び図9は、図1において、欄干2の延在方向でアイドラスプロケット19の片側に配設された2つの駆動ローラユニット15のメンテナンス途中状態を示す正面図である。なお、図8及び図9では、ピン40の役割をわかり易く説明するために、ピン40は、その先端部のみが示される。
【0053】
先ず、図6に示すように、図2に示すメンテナンス前の駆動ローラユニット15からボルト89を取り外すことによってメンテナンス前の駆動ローラユニット15から駆動ローラ85を離脱させ、その後、駆動ローラユニット15からC型止め輪87を取り外す。この状態で、図6に示すように、軸受73が軸部71からその軸方向に取り外し可能になる。
【0054】
次に、図1を参照して、アイドラスプロケット19を図1に矢印Aで示す方向における駆動ローラユニット15側に移動させ、第2手摺チェーン20を弛める。その後、図7に示すように、ボス固定部材33の第1円板部35の第2円板部36側の端面がピン支持部材34の段部34a3に当接するまで、第1円板部35を大径孔部34a1に内嵌する。その後、ボルト39を、ピン支持部材34の挿通孔34b、及びボス固定部材33の挿通孔35bを通過させた後で、ボス部72のタップ孔72aに締め込むことによって、ボス固定部材33及びピン支持部材34をボス部72に同時に固定する。この状態で、ボス固定部材33の軸方向のボス部72側の端面48は、ボス部72の軸方向の端面47に当接する。ボス固定部材33の端面48は、ボス部72の軸方向の端面47に当接させる一面(当接面)を構成する。
【0055】
続いて、ピン支持部材34のいくつかのピン挿通孔34cにハンドル部32側からピン40を挿入する。詳しくは、図4及び図8を参照して、ピン挿通孔34cの数は、駆動ローラ用スプロケット86の歯86aの数と一致している。図7及び図8を参照して、ボス固定部材33及びピン支持部材34をボス部72に固定している状態で、ピン挿通孔34cの少なくとも一部は、ボス部72の駆動ローラ用スプロケット86における断面三角形状の歯86aの間にあるスペースに軸方向に重なることが可能な位置に設けられる。すなわち、ボス部72を軸部71に対して適切に相対回転させて、ピン挿通孔34cの周方向の位置(周方向の位相)と、駆動ローラ用スプロケット86の歯86a間にあるスペースの周方向の位置とを合わせると、ピン挿通孔34cの少なくとも一部は、当該スペースと軸方向に重なる。また、図7に示すように、ピン40の軸部43の長さは、ピン支持部材34の軸方向のハンドル部32側の端面59から、駆動ローラ用スプロケット86における取付枠25の本体部25a側の端面86bまでの軸方向の距離よりも長い。
【0056】
その結果、ピン挿通孔34cに最後まで挿入されたピン40は、駆動ローラ用スプロケット86の歯86aの間にあるスペースを通り抜け、ピン40の先端部は、駆動ローラ用スプロケット86よりも本体部25a側に位置する。図8に示す例では、複数のピン40は、図8の紙面において左側に位置する駆動ローラユニット15の駆動ローラ用スプロケット86の右側面にある歯86aの間に嵌り込むように幾つかのピン挿通孔34cに挿入される。
【0057】
その後、左側に位置する駆動ローラユニット15の駆動ローラ用スプロケット86を、取付枠25の本体部25aに対して図8に矢印Cで示す反時計回りに回転させる。そして、図9に示すように、複数のピン40を、当該左側に位置する駆動ローラユニット15の上側及び左側面側に位置させると共に、全て又は大多数のピン40の先端部を、第2手摺チェーン20に接触させる。このようにして、第2手摺チェーン20を、複数のピン40で駆動ローラ用スプロケット86の歯86aから浮かせ、駆動ローラ用スプロケット86の歯86aに対して径方向に間隔をおいた箇所に配置する。なお、この実施例では、ピン40の数は、ピン挿通孔34cの数よりも少なくなっているが、複数のピン挿通孔が、ピン支持部材の周方向の一部の位相部分のみに局所的に集中して設けられる場合には、ピンの数は、ピン挿通孔の数と同一でもよい。
【0058】
その後、図7を参照して、軸部材31の雄ねじ31aがボス固定部材33の雌ねじ36aに対して軸方向の軸部71側に相対移動するようにハンドル部32を回転させ、軸部材31の回転座31bを軸部71の軸方向の端面71aに当接させる。そして、その後、ハンドル部32を、更に、同じ方向に回転させることによって、第2円板部36の雌ねじ36aを軸部材31の雄ねじ31aに対して軸方向のハンドル部32側に軸方向に移動させ、ボス固定部材33に固定されたボス部72を軸受73と共に軸方向の外方側に引き抜く。この引き抜きの際、ボス固定部材33と共に引き抜かれるピン40によって、駆動ローラ用スプロケット86が第2手摺チェーン20と干渉しない位置に軸方向に移動するまで、第2手摺チェーン20が駆動ローラ用スプロケット86から浮いている状態が維持される。よって、第2手摺チェーン20が重力によって再び駆動ローラ用スプロケット86に掛かることが防止され、ボス部72は第2手摺チェーン20に干渉することなく容易に引き抜かれる。その後、ボス固定部材33及びピン支持部材34をボス部72に固定しているボルト39を、ボス部72から外し、軸部71からのボス部72及び軸受73の取り外しが完了する。
【0059】
上記実施形態によれば、ボルト39を用いてボス固定部材33をボス部72に固定した後、軸部材31を回転させるだけで、ボス部72を軸部71から引き抜くことができる。よって、狭いトラス内でもボス部72を軸部71から容易に取り外しできる。
【0060】
また、ボルト39で、ピン支持部材34をボス固定部材33と共にボス部72に固定できる。そして、その後、ピン支持部材34のピン挿通孔34cにピン40を挿入して、ピン40の先端部を駆動ローラ用スプロケット86の歯86aの間に嵌り込ませた後、ボス部72を軸部71に対して回転させるだけで、ピン40の先端部を、第2手摺チェーン20と駆動ローラ用スプロケット86の歯86aの間に移動させることができる。よって、ピン40で第2手摺チェーン20と駆動ローラ用スプロケット86との嵌め合いを外すことができ、第2手摺チェーン20を駆動ローラ用スプロケット86から浮かすことができるので、ユーザが手で第2手摺チェーン20を駆動ローラ用スプロケット86から外す手間を省くことができ、ボス部72の引き抜きの作業効率を向上できる。
【0061】
更には、軸部材31を回転させるハンドル部32が軸部材31の軸方向の先端側とは反対側に設けられるので、大きな回転トルクを軸部材31に付与できる。また、軸部材31の軸方向の先端部に、軸部71の軸方向の端面71aに接触させる板状の回転座31bが設けられるので、軸部71に対する軸部材31の相対回転によって軸部71の端面71a及び軸部材31の先端部が傷つきにくい。
【0062】
尚、本発明は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態では、ピン40が、雌ねじが設けられないピン挿通孔34cに挿通される場合について説明した。しかし、ピンの軸部に雄ねじを設け、ピン挿通孔に雌ねじを設けてもよい。そして、ピンの軸部の雄ねじをピン挿通孔の雌ねじに螺合することによって、ピンをピン支持部材に固定するようにしてもよい。この変形例によれば、ピンがピン支持部材に固定されるので、ピンが第2手摺チェーンからの反力で移動することがない。よって、ピンを確実に第2手摺チェーンと駆動ローラ用スプロケットとの間に位置させることができ、第2手摺チェーンを確実に駆動ローラ用スプロケットから浮かすことができる。
【0064】
また、治具30が、ピン挿通孔34cを有するピン支持部材34と、ピン40とを備える場合について説明した。しかし、治具は、ピン支持部材でないチェーン浮かせ部材を備えてもよく、ピンが存在しなくてもよい。詳しくは、チェーン浮かせ部材は、ピン挿入孔が存在しない代わりに、上記実施形態のピン支持部材34でピン挿通孔34cが円周上に配置された円の一部から軸方向に延在する断面円弧状の板部を備えてもよい。この場合、チェーン浮かせ部材は、ボス部に固定される際に、当該断面円弧状の板部が第2手摺チェーンに接触しない箇所に固定される。そして、チェーン浮かせ部材が固定されたボス部を軸部に対して相対回転させることによって、当該断面円弧状板部を第2手摺チェーンと駆動ローラ用スプロケットとの間に位置させる。この変形例によれば、ピン支持部材と異なって、第2手摺チェーンを浮かせるためのチェーン浮かせ部材にピンを挿通する必要がないので、複数のピンをピン挿通孔に挿通する手間を省け、駆動ローラ用スプロケットから第2手摺チェーンを容易に浮かすことができる。また、ピンの管理が不必要になるので、チェーン浮かせ部材の管理を容易に行うことができる。更には、断面円弧状の板部が第2手摺チェーンからの力で移動することにないので、第2手摺チェーンを確実に駆動ローラ用スプロケットから浮かすことができる。
【0065】
また、ボス固定部材33及びピン支持部材34をボス部72に固定するボルト39が、駆動ローラ85をボス部72に固定するボルト89と異なる場合について説明した。しかし、ボス固定部材33及びピン支持部材34をボス部72に固定するボルト39として、駆動ローラ85をボス部72に固定するボルト89を用いてもよい。
【0066】
詳しくは、上記実施形態では、ピン支持部材34にボス部72側に開口する大径孔部34a1を設けて、ボス固定部材33の第1円板部35をピン支持部材34の大径孔部34a1に内嵌した。したがって、ピン支持部材34に大径孔部34a1を設けない構成との比較で、ボルト39の長さを大径孔部34a1の軸方向の長さ分だけ短くできる。よって、ボス固定部材33をボス部72に固定するボルト39にピン支持部材34をボス部72に固定する役割を兼用させても、ボルト39の長さがあまり長くなることがない。その結果、ボルト39の長さ及びボス部72の端面47に設けられるタップ孔72aの深さを適切に調整することによって、駆動ローラ85をボス部72に固定するボルト89に、ボス固定部材33及びピン支持部材34をボス部72に固定するボルト39の役割を兼用させることができる。この変形例によれば、ボス固定部材33及びピン支持部材34をボス部72に固定するボルトを新たに用意する必要がないので、治具の製造コストを低減できる。また、紛失し易いボルトが必要なく、かつ、治具の一部としてボルトを持ち運ぶ必要もないので、治具の管理や持ち運びが容易になる。
【0067】
更には、ピン支持部材34がボス固定部材33と共にボス部72に固定される場合について説明した。しかし、図10、すなわち、変形例のボス部取外用治具130の正面図に示すように、ボス部取外用治具(以下、単に治具という)130は、上記実施形態で説明した、軸部材31、ハンドル部32、ボス固定部材33及びボルト139で構成され、ピン支持部材34を含まなくてもよい。この変形例では、図11、すなわち、治具130を図10に矢印Dで示す方向から見たときのD矢視図においては、ボス固定部材33の第1円板部35の貫通孔35a、ボルト139(図10参照)を挿入する複数の挿通孔35b、及び軸部材31の回転座31bが視認される。
【0068】
この治具130を用いた場合、ボス部72は、次のように取り外される。先ず、図12、すなわち、メンテナンス途中状態における駆動ローラユニット15の軸方向一部断面図に示すように、ボルト139をハンドル部32側から複数の挿通孔35bに挿通した後、ボス部72のタップ孔72aに締めこむことによって、ボス固定部材33をボス部72に固定する。次に、ハンドル部32を回してボス固定部材33に対して軸部材31を軸部71側に相対移動させて、軸部材31の回転座31bを軸部71の端面71aに当接させる。続いて、ハンドル部32を更に同じ方向に回転させて、軸部材31をボス固定部材33に対して軸方向の軸部71側に相対移動させることによって、ボス固定部材33に固定されたボス部72を軸部材31に対してハンドル部32側に軸方向に少し移動させた後、第2手摺チェーン20をボス部72の駆動ローラ用スプロケット86から取り外す。駆動ローラ用スプロケット86が、第2手摺チェーン20を掛け渡している箇所から軸方向に移動しているので、取り外された第2手摺チェーン20は、重力で落下しても再び駆動ローラ用スプロケット86に噛み合うことはない。
【0069】
その後、更に、ハンドル部32を回して軸部材31をボス固定部材33に対して軸部71側に相対回転させることによって、ボス固定部材33に固定されているボス部72を軸受73と共に軸部71から軸方向の外方側に引き抜く。このようにして、ボス部72が軸受73と共に軸部71から取り外される。なお、変形例の治具130においても、ボス固定部材33をボス部72に固定するボルトとして、駆動ローラ85をボス部72に固定するボルトを使用できることは言うまでもない。この変形例の治具130によれば、ピン支持部材34が存在しない。よって、治具130を簡単安価に製造することができ、治具130の持ち運びも容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
1 エスカレーター、 10 手摺、 11 手摺駆動装置、 20 第2手摺チェーン、 30, 130 ボス部取外用治具、 31 軸部材、 31a 雄ねじ、 31b 回転座、 32 ハンドル部、 33 ボス固定部材、 34 ピン支持部材、 34a ピン支持部材の貫通孔、 34b ピン支持部材の挿通孔、 34c ピン支持部材のピン挿通孔、 35b 挿通孔、 36a 雌ねじ、 39, 139 ボルト、 40 ピン、 47 ボス部の端面、 48 ボス固定部材の一面(端面)、 71 軸部、 71a 軸部の端面、 72 ボス部、 73 軸受、 85 駆動ローラ、 86 駆動ローラ用スプロケット、 86a 駆動ローラ用スプロケットの歯。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15