【実施例】
【0064】
<3.実施例>
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。本実施例では、イオン液体を合成し、イオン液体を含有する潤滑剤を作製した。そして、まずはフッ素系溶媒であるバートレル〔CF
3(CHF)
2CF
2CF
3〕及び炭化水素系のn−ヘキサンへの溶解性について調べた。その潤滑剤溶液を用いて磁気ディスク及び磁気テープの表面に塗布して、それぞれディスク耐久性及びテープ耐久性について評価した。磁気ディスクの製造、ディスク耐久性試験、磁気テープの製造、及びテープ耐久性試験は、次のように行った。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
<磁気ディスクの製造>
例えば、国際公開第2005/068589号公報に従って、ガラス基板上に磁性薄膜を形成し、
図4に示すような磁気ディスクを作製した。具体的には、アルミシリケートガラスからなる外径65mm、内径20mm、ディスク厚0.635mmの化学強化ガラスディスクを準備し、その表面をRmaxが4.8nm、Raが0.43nmになるように研磨した。ガラス基板を純水及び純度99.9%以上のイソプロピルアルコール(IPA)中で、それぞれ5分間超音波洗浄を行い、IPA飽和蒸気内に1.5分間放置後、乾燥させ、これを基板11とした。
【0066】
この基板11上に、DCマグネトロンスパッタリング法によりシード層としてNiAl合金(Ni:50モル%、Al:50モル%)薄膜を30nm、下地層12としてCrMo合金(Cr:80モル%、Mo:20モル%)薄膜を8nm、磁性層13としてCoCrPtB合金(Co:62モル%、Cr:20モル%、Pt:12モル%、B:6モル%)薄膜を15nmとなるように順次形成した。
【0067】
次に、プラズマCVD法によりアモルファスのダイヤモンドライクカーボンからなるカーボン保護層14を5nm製膜し、そのディスクサンプルを洗浄器内に純度99.9%以上のイソプロピルアルコール(IPA)中で10分間超音波洗浄を行い、ディスク表面上の不純物を取り除いた後に乾燥させた。その後、25℃50%相対湿度(RH)の環境においてディスク表面にイオン液体のn−ヘキサンとエタノールの混合溶媒を用いてディップコート法により塗布することで、潤滑剤層15を約1nm形成した。
【0068】
<熱安定性測定>
TG/DTA測定では、セイコーインスツルメント社製EXSTAR6000を使用し、200ml/minの流量で空気中を導入しながら、10℃/minの昇温速度で30℃−600℃の温度範囲で測定を行った。
測定における吸熱ピーク温度を融点とした。
【0069】
<ディスク耐久性試験>
市販のひずみゲージ式ディスク摩擦・摩耗試験機を用いて、ハードディスクを14.7Ncmの締め付けトルクで回転スピンドルに装着後、ヘッドスライダーのハードディスクに対して内周側のエアベアリング面の中心が、ハードディスクの中心より17.5mmになるようにヘッドスライダーをハードディスク上に取り付けCSS耐久試験を行った。本測定に用いたヘッドは、IBM3370タイプのインライン型ヘッドであり、スライダーの材質はAl
2O
3−TiC、ヘッド荷重は63.7mNである。本試験は、クリーン清浄度100、25℃60%RHの環境下で、CSS(Contact、Start、Stop)毎に摩擦力の最大値をモニターした。摩擦係数が1.0を超えた回数をCSS耐久試験の結果とした。CSS耐久試験の結果において、50,000回を超える場合には「>50,000」と表示した。また、耐熱性を調べるために、300℃の温度で3分間加熱試験を行った後のCSS耐久性試験を同様に行った。
【0070】
<磁気テープの製造>
図5に示すような断面構造の磁気テープを作製した。先ず、5μm厚の東レ製ミクトロン(芳香族ポリアミド)フィルムからなる基板21に、斜め蒸着法によりCoを被着させ、膜厚100nmの強磁性金属薄膜からなる磁性層22を形成した。次に、この強磁性金属薄膜表面にプラズマCVD法により10nmのダイヤモンドライクカーボンからなるカーボン保護層23を形成させた後、6ミリ幅に裁断した。このカーボン保護層23上にIPAに溶解したイオン液体を、膜厚が1nm程度となるように塗布して潤滑剤層24を形成し、サンプルテープを作製した。
【0071】
<テープ耐久性試験>
各サンプルテープについて、温度−5℃環境下、温度40℃30%RH環境下のスチル耐久性、並びに、温度−5℃環境下、温度40℃90%RH環境下の摩擦係数及びシャトル耐久性について測定を行った。スチル耐久性は、ポーズ状態での出力が−3dB低下するまでの減衰時間を評価した。シャトル耐久性は、1回につき2分間の繰り返しシャトル走行を行い、出力が3dB低下するまでのシャトル回数で評価した。また、耐熱性を調べるために、100℃の温度で10分間加熱試験を行った後の耐久性試験も同様に行った。
【0072】
本実施の形態におけるイオン液体は、共役塩基と、共役酸とを有し、前記共役塩基の元となる酸のアセトニトリル中でのpKaが、10以下である。更には、共役酸(カチオン部分)に炭素数6以上の炭化水素基を2個以上持ち、その内の一つは炭素数が14以下であることが好ましい。そのようなイオン液体の熱安定性、及び前記イオン液体を用いた磁気記録媒体の耐久性についての影響を調べた。更に、炭化水素系溶媒及びフッ素系溶媒への溶解性について調べた。
【0073】
ここで、本明細書においてのFTIRの測定は、日本分光社製FT/IR−460を使用し、KBrプレート法あるいはKBr錠剤法を用いて透過法で測定を行った。そのときの分解能は4cm
−1である。
【0074】
1H−NMR及び
13C−NMRスペクトルは、Varian MercuryPlus300核磁気共鳴装置(バリアン社製)で測定した。
1H−NMRの化学シフトは、内部標準(0ppmにおけるTMSあるいは重水素化溶媒ピーク)との比較としてppmで表した。分裂パターンは、一重項をs、二重項をd、三重項をt、四重項をq、五重項をquint、多重項をm、ブロードピークをbrとして示した。
【0075】
(実施例1A)
<ノナフルオロブタンスルホン酸−1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムの合成>
ノナフルオロブタンスルホン酸−1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムの合成は、以下のスキームにしたがって行った。
【化9】
【0076】
17.76gのウンデシルイミダゾールとドデシルブロミド20.00gと水酸化カリウム7.75gとをフラスコに加え、トルエン中で8.0時間加熱還流した。常温に戻した後に溶媒を除去し、n−ヘキサンと酢酸エチル9:1(n−ヘキサン:酢酸エチル(体積比))の溶媒を流出液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。27.35gの無色の液体である1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾールのガスクロマトグラフィーによる純度は98.8%以上であった。収率87.7%。
【0077】
エタノールに1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾール9.04gを溶解させ、35%の濃塩酸3.18gのエタノール溶液を加えた。溶媒を除去後の無色の結晶をジクロルメタンに溶解させ、洗浄液が中性になるまで水で洗浄し、有機溶媒を除去後にn−ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒から再結晶を行い、1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムクロリドの無色の結晶を8.30gを得た。収率84.0%。
【0078】
1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムクロリド2.67gを水とエタノールの混合溶媒を加熱して溶解させ、ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム2.57gの水溶液を加えた。加熱還流を1時間行い、冷却後に水層と有機層に分離した。水層をジクロルメタンで抽出し有機層と併せて水でAgNO
3試験が陰性になるまで洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後に溶媒を除去して、ノナフルオロブタンスルホン酸−1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムの無色結晶4.88gを得た。収率93.1%。
【0079】
生成物のFTIR吸収を以下に示す。
1135cm
−1、1235cm
−1、1354cm
−1、1470cm
−1、1522cm
−1、2853cm
−1、2920cm
−1、3081cm
−1、及び3147cm
−1に吸収振動が見られた。
【0080】
得られた化合物のCDCl
3中でのプロトン(
1H)NMR及びカーボン(
13C)NMRのピークについて、以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3,δppm);0.856(t/J=6.8Hz,6H), 1.180−1.400(m,34H), 1.720−1.860(m,4H), 2.934(t/J=8.0Hz,2H), 3.988(t/J=7.8Hz,2H), 7.048−7.057(m,1H), 7.291−7.302(m,1H), 13.710(brs,1H)
13C−NMR(CDCl
3,δppm);14.070, 22.647, 24.659, 26.347, 27.342, 28.943, 29.048, 29.288, 29.335, 29.441, 29.546, 30.093, 31.865, 47.734, 119.250, 122.410, 147.347
【0081】
これらのスペクトルから、生成物がノナフルオロブタンスルホン酸−1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムであることが同定された。
なお、ノナフルオロブタンスルホン酸−1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムにおける共役塩基の元となる酸(ノナフルオロブタンスルホン酸)のアセトニトリル中でのpKaは、0.7である。
【0082】
(実施例2A)
<ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド−1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムの合成>
ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド−1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムの合成は、以下のスキームにしたがって行った。
【化10】
【0083】
実施例1Aで合成した1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムクロリド2.67gを加熱した純水に溶解させ、カリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド3.88gを水とエタノールの混合溶媒に溶解させたものを加えた。加熱還流を1h行い、冷却後ジクロルメタンで抽出を行った。有機層を純水でAgNO
3試験が陰性になるまで洗浄を行った。無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を除去してビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド−1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウム5.53gの無色の液体を得た。収率91.1%。
【0084】
生成物のFTIR吸収を以下に示す。
1077cm
−1、1238cm
−1、1355cm
−1、1468cm
−1、1601cm
−1、2859cm
−1、2930cm
−1、及び3268cm
−1に吸収振動が見られた。
【0085】
得られた化合物のCDCl
3中でのプロトン(
1H)NMR及びカーボン(
13C)NMRのピークについて、以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3,δppm);0.852(t/J=6.8Hz,3H), 0.858(t/J=6.8Hz,3H), 1.160−1.400(m,34H), 1.700(quint,t/J=7.7Hz,2H), 1.770−1.870(m,2H), 2.913(t/J=7.8Hz,2H), 4.002(t/J=7.6Hz,2H), 7.085−7.094(m,1H), 7.278−7.291(m,1H)
13C−NMR(CDCl
3,δppm);14.051, 22.628, 24.535, 26.336, 27.524, 28.923, 29.019, 29.288, 29.470, 29.498, 29.537, 30.064, 31.856, 47.868, 119.279, 120.601, 147.251
【0086】
これらのスペクトルから、生成物がビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド−1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムであることが同定された。
なお、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド−1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムにおける共役塩基の元となる酸(ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド)のアセトニトリル中でのpKaは、0.0である。
【0087】
(実施例3A)
<ノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムの合成>
ノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムの合成は、以下のスキームにしたがって行った。
【化11】
【0088】
トルエン200g中に2−ウンデシルイミダゾール15.06gとオクタデシルブロミド22.62g、水酸化カリウム5.00gとをフラスコに加え、加熱還流を12時間行った。常温に戻してろ過後に溶媒を除去し、n−ヘキサンと酢酸エチル9:1(n−ヘキサン:酢酸エチル(体積比))の溶媒を流出液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。29.00gの無色の液体である1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾールを得た。収率90.2%。
【0089】
AGILENT社製ガスクロ質量分析装置(6890N/5975MSD)を用いて質量分析を行ったところ、分子イオンピークは474に現れており、またガスクロによる純度は98.9%以上であった。
【0090】
また、重クロロホルム中でのプロトン(1H)NMR及びカーボン(13C)NMRのピークについて、以下に示す。
1H−NMR(CDCl3,δppm);0.846(t/J=7.0Hz,6H), 1.170−1.390(m,46H), 1.640−1.760(m,4H), 2.599(t/J=7.8Hz,2H), 3.772(t/J=7.2Hz,2H),6.760(d/J=1.6Hz,1H),6.890(d/J=1.6Hz,1H)
13C−NMR(CDCl
3,δppm);14.080, 22.647, 26.614, 26.806, 28.013, 29.144, 29.326, 29.383, 29.422, 29.498, 29.613, 29.661, 30.945, 31.875, 45.664, 118.608, 126.993, 148.123
【0091】
これらのスペクトルから、生成物が1‐オクタデシル‐2‐ウンデシルイミダゾールであることが同定された。
【0092】
1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾール4.70gをエタノールに溶解させ、ノナフルオロブタンスルホン酸3.01gをエタノールに溶解させたものを加え、加熱還流を1h行った。冷却後に溶媒を除去し、残存物をジクロルメタンで抽出し、有機層を純水で十分に洗浄を行った。無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を除去後、100℃で65時間真空乾燥を行い、ノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾリウム7.04gの薄黄色の結晶を得た。収率91.7%。
【0093】
生成物のFTIR吸収を以下に示す。
1060cm
−1、1135cm
−1、1236cm
−1、1277cm
−1、1354cm
−1、1471cm
−1、1520cm
−1、1605cm
−1、2852cm
−1、2919cm
−1、3083cm
−1、3148cm
−1、及び3220cm
−1に吸収振動が見られた。
【0094】
また、重クロロホルム中でのプロトン(1H)NMR及びカーボン(13C)NMRのピークについて、以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3,δppm);0.849(t/J=6.8Hz,3H), 0.852(t/J=7.2Hz,3H), 1.180−1.410(m,46H), 1.670‐1.760(m,2H), 1.804(quint/J=6.8Hz,2H), 2.922(t/J=7.8Hz,2H), 3.993(t/J=7.4Hz,2H), 7.081(t/J=2.0Hz,1H), 7.282(t/J=2.4Hz,1H)
13C−NMR(CDCl
3,δppm);14.070, 14.099,22.647, 22.666, 24.640, 26.355, 27.285, 28.962, 29.029, 29.278, 29.335, 29.460, 29.498, 29.518, 29.556, 29.671, 30.083, 31.856, 31.894, 47.715, 119.135, 120.554, 147.251
【0095】
これらのスペクトルから、生成物がノナフルオロブタンスルホン酸1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムであることが同定された。
なお、ノナフルオロブタンスルホン酸1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムにおける共役塩基の元となる酸(ノナフルオロブタンスルホン酸)のアセトニトリル中でのpKaは、0.7である。
【0096】
(実施例4A)
<ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド−1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムの合成>
ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド−1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムの合成は、以下のスキームにしたがって行った。
【化12】
【0097】
実施例3Aで合成した1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾール3.01gをエタノールに溶解させ、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドカリウム3.92gをエタノールに溶解させた後に、加熱還流を1h行った。冷却後に溶媒を除去し、残存物をジクロルメタンで抽出し、有機層を純水で十分に洗浄を行った。無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を除去後、100℃で20時間真空乾燥を行い、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド−1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾリウム6.16gの薄黄色の液体を得た。収率91.9%。
【0098】
生成物のFTIR吸収を以下に示す。
1077cm
−1、1200cm
−1、1217cm
−1、1237cm
−1、1354cm
−1、1467cm
−1、1520cm
−1、1601cm
−1、2856cm
−1、2927cm
−1、3111cm
−1、3170cm
−1、及び3267cm
−1に吸収振動が見られた。
【0099】
また、重クロロホルム中でのプロトン(1H)NMR及びカーボン(13C)NMRのピークについて、以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3,δppm);0.851(t/J=6.8Hz,3H), 0.857(t/J=6.8Hz,3H), 1.180−1.400(m,46H), 1.692(quint/J=7.4Hz,2H), 1.760‐1.870(m,2H), 2.904(t/J=7.8Hz,2H), 4.019(t/J=7.4Hz,2H), 7.153(t/J=2.2Hz,1H), 7.246(t/J=2.2Hz,1H), 11.954(brs,1H)
13C−NMR(CDCl
3,δppm);14.022, 14.070,22.618, 22.666, 24.496, 26.298, 27.448, 28.943, 28.990, 29.259, 29.288, 29.345, 29.470, 29.498, 29.565, 29.680, 30.054, 31.837, 31.904, 47.868, 118.972, 120.937, 147.117
【0100】
これらのスペクトルから、生成物がビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド−1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムであることが同定された。
なお、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド−1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムにおける共役塩基の元となる酸[ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド]のアセトニトリル中でのpKaは、0.0である。
【0101】
(比較例1A)
<ノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシルイミダゾリウムの合成>
ノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシルイミダゾリウムについては、下記スキームによって合成した。
【化13】
【0102】
1−オクタデシルイミダゾールは、以下の方法で合成した。
3gのイミダゾールを100mLのアセトニトリルに溶解させ、オクタデシルブロミド14.9gと水酸化カリウム2.51gとを加えて攪拌しながら加熱して4時間還流させた。溶媒を除去後、ジクロルメタンで抽出し、カラムクロマトグラフィーで精製した。ガスクロマトグラフィーでの分析したところ98.5%以上の純度であった。
【0103】
続いて、合成した1−オクタデシルイミダゾール3.27gを、エタノール50mLに溶解させ、これにノナフルオロブタンスルホン酸3.05gのエタノール溶液を徐々に滴下しながら加え、滴下終了後30分間攪拌させた後に1時間加熱還流させた。溶媒を除去後、エタノール/n−ヘキサンの混合溶媒を用いて再結晶を行い、無色のノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシルイミダゾリウムを得た。収率95%。
【0104】
生成物のFTIRスペクトルの帰属を以下に示した。
1134cm
−1、1355cm
−1、1246cm
−1、1470cm
−1、2852cm
−1、2920cm
−1、及び3158cm
−1に吸収振動が見られた。
【0105】
得られた化合物のCDCl
3中でのプロトン(
1H)NMR及びカーボン(
13C)NMRのピークについて、以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3,δppm);0.847(t,3H,J=7.2Hz), 1.222−1.282(m,30H), 1.790−1.890(m,2H), 4.181(t/J=7.2Hz,2H), 7.189(dd/J=1.8Hz,3.8Hz,1H), 7.444(dd/J=1.8Hz,3.8Hz,1H), 8.866(dd/J=1.8Hz,3.8Hz,1H), 13.200(brs,1H)
13C−NMR(CDCl
3,δppm);14.055, 22.648, 26.113, 28.875, 29.272, 29.318, 29.440, 30.142, 31.882, 49.847, 122.500, 122.851, 135.015
【0106】
以上から、ノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシルイミダゾリウムが合成されていることが確認できた。
なお、ノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシルイミダゾリウムにおける共役塩基の元となる酸〔ノナフルオロブタンスルホン酸〕のアセトニトリル中でのpKaは、0.7である。
【0107】
(比較例2A)
<ヘキサフルオロシクロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミド−1−ブチル−3−n−オクタデシルイミダゾリウムの合成>
比較のために、ヘキサフルオロシクロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミド−1−ブチル−3−n−オクタデシルイミダゾリウムの合成を、以下のスキームにしたがって行った。
【化14】
【0108】
比較例1Aで合成した1−オクタデシルイミダゾール10.7gとブロモブタン6.03gとをアセトニトリル中に溶解させ、加熱還流を5時間行った。溶媒を除去後、n−ヘキサンとエタノールとの混合溶媒から再結晶を行い、1−ブチル−3−オクタデシルイミダゾリウムブロミドを得た。このブロミド4.57gをエタノールに溶解させ、そこへ、カリウムヘキサフルオロシクロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミド3.31gのエタノール溶液を添加し、撹拌すると無色の沈殿が発生した。この溶液を1時間加熱還流させ、冷却後に溶媒を除去した。これにジクロルメタンを加えて溶解する部分を濾過して、その有機層を純水でAgNO
3試験が陰性になるまで洗浄した。乾燥させ、n−ヘキサンとエタノールとの混合溶媒から再結晶を行い、無色の結晶ヘキサフルオロシクロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミド−1−ブチル−3−n−オクタデシルイミダゾリウム6.00gを得た。収率90%。
【0109】
生成物のFTIR吸収を以下に示す。
1091cm
−1、1161cm
−1、1356cm
−1、1470cm
−1、1560cm
−1、2850cm
−1、及び2919cm
−1に吸収振動が見られた。
【0110】
また、重クロロホルム中でのプロトン(1H)NMR及びカーボン(13C)NMRのピークとその帰属について、以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3,δppm);0.850(t,3H,J=7.2Hz), 0.941(t,3H,J=7.2Hz), 1.170−1.410(m,32H), 1.835(quint,J=7.2Hz,4H), 4.160(m,4H), 7.267(d,1H,J=2.1Hz), 7.294(d,1H,J=2.1Hz), 8.749(s,1H)
13C−NMR(CDCl
3,δppm);13.254, 14.085, 19.351, 22.663, 26.113, 28.853, 29.303, 29.333, 29.448, 29.570, 29.631, 29.677, 30.127, 31.898, 32.004, 49.977, 50.244, 122.179, 122.263, 135.473
【0111】
これらのスペクトルから、生成物がヘキサフルオロシクロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミド−1−ブチル−3−n−オクタデシルイミダゾリウムであることが同定された。
なお、ヘキサフルオロシクロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミド−1−ブチル−3−n−オクタデシルイミダゾリウムにおける共役塩基の元となる酸〔ヘキサフルオロシクロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミド〕のアセトニトリル中でのpKaは、−0.8である。
【0112】
(比較例3A)
<ノナフルオロブタンスルホン酸−2−ヘプタデシルイミダゾールの合成>
ノナフルオロブタンスルホン酸−2−ヘプタデシルイミダゾールについては、下記スキームによって合成した。
【化15】
【0113】
原料の2−ヘプタデシルイミダゾールは、四国化成から購入したものをエタノールで再結晶させた後に用いた。再結晶により純度を93.0%から98.5%に向上させることにより、熱安定性は向上することから、合成原料として以下で使用する2−ヘプタデシルイミダゾールについては再結晶を行って精製したものを使用した。5.10gの2−ヘプタデシルイミダゾールを100mlのエタノールに溶解させ、これにノナフルオロブタンスルホン酸5.00gを徐々に滴下しながら加え、滴下終了後30分間攪拌させた後に1時間加熱還流させた。溶媒を除去後エタノール/n−ヘキサンの混合溶媒から再結晶を行い、無色のノナフルオロブタンスルホン酸−2−ヘプタデシルイミダゾール塩を得た。収率95%。
【0114】
生成物のFTIR吸収を以下に示す。
1135cm
−1、1356cm
−1、1238cm
−1、1471cm
−1、2850cm
−1、2918cm
−1、及び3160cm
−1に吸収振動が見られた。
【0115】
また、重クロロホルム中でのプロトン(1H)NMR及びカーボン(13C)NMRのピーク及びその帰属について下記に示す。
1H−NMR(CDCl
3,δppm);0.847(t,3H,J=6.8Hz), 1.160−1.340(m,28H), 1.710−1.809(m,2H), 2.943(t,J=7.5Hz,2H), 7.130(s,2H), 11.150(brs,2H)
13C−NMR(CDCl
3,δppm);14.055, 22.663, 25.777, 27.395, 28.875, 28.967, 29.349, 29.379, 29.532, 29.654, 29.684, 31.913, 118.409, 148.584
【0116】
これらのスペクトルから、生成物がノナフルオロブタンスルホン酸−2−ヘプタデシルイミダゾリウムであることが確認できた。
なお、ノナフルオロブタンスルホン酸−2−ヘプタデシルイミダゾリウムにおける共役塩基の元となる酸〔ノナフルオロブタンスルホン酸〕のアセトニトリル中でのpKaは、0.7である。
【0117】
(比較例4A)
<ノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシル−2−ヘプタデシルイミダゾールの合成>
ノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシル−2−ヘプタデシルイミダゾールの合成を以下のスキームにしたがって行った。
【化16】
【0118】
2−ヘプタデシルイミダゾール9.18g、オクタデシルブロミド9.99g、及び水酸化カリウム1.68gをアセトニトリル100mlとトルエン100ml中に加えて3時間加熱還流させた。反応溶液をろ過して生成した塩を除去し、溶媒をエバポレーターで除去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いてn−ヘキサン/酢酸エチル=9/1(体積比)の混合溶媒で未反応の原料を分離し、98%以上のガスクロマトグラフィー純度で目的物1−オクタデシル−2−ヘプタデシルイミダゾール14.5gを得た。
【0119】
このイミダゾール4.45gをエタノールに溶解させ、ノナフルオロブタンスルホン酸2.40gをエタノールに溶解させたものを徐々に滴下しながら加えた。滴下終了後30分間攪拌後、1時間加熱還流した。溶媒を除去後エタノール/n−ヘキサンの混合溶媒から再結晶を行い、無色のノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシル−2−ヘプタデシルイミダゾール塩6.43gを得た。収率94%。
【0120】
生成物のFTIRスペクトルを下記に示す。
1135cm
−1、1279cm
−1、1357cm
−1、1472cm
−1、2851cm
−1、2918cm
−1、及び3152cm
−1に吸収による振動が見られた。
【0121】
また、重クロロホルム中でのプロトン1H−NMR及びカーボン13C−NMRのピークとその帰属について以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3,δppm);0.848(t,6H,J=6.8Hz), 1.171‐1.307(m,58H), 1.702‐1.817(m,4H), 2.908(t,J=7.5Hz,2H), 4.003(t,J=7.5Hz,2H), 7.139(t,J=1.5Hz,1H), 7.255(t,J=1.5Hz,1H),13.285(brs,1H)
13C−NMR(CDCl
3,δppm);14.055, 22.648,24.602, 26.326, 27.196, 28.952, 28.998, 29.333, 29.455, 29.516, 29.562, 29.669, 30.051, 31.882, 47.725, 118.928, 120.866, 147.149
【0122】
これらのスペクトルから、生成物がノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシル−2−ヘプタデシルイミダゾリウムであることが確認できた。
なお、ノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシル−2−ヘプタデシルイミダゾリウムにおける共役塩基の元となる酸〔ノナフルオロブタンスルホン酸〕のアセトニトリル中でのpKaは、0.7である。
【0123】
(比較例5A)
<ペンタデカフルオロオクタン酸オクタデシルアンモニウムの合成>
比較のために、ペンタデカフルオロオクタン酸オクタデシルアンモニウムの合成を、以下のスキームにしたがって行った。
【化17】
【0124】
ペンタデカフルオロオクタン酸4.14gとオクタデシルアミン2.69gをエタノール中に加え、加熱還流を1h行った。溶媒を除去後にn−ヘキサンとエタノールの混合溶媒から再結晶を行い、6.23gの無色板状結晶を得た。収率92.0%。
【0125】
生成物のFTIR吸収を以下に示す。
1141cm
−1、1201cm
−1、1232cm
−1、1473cm
−1、1677cm
−1、2851cm
−1、2918cm
−1、及び3000
−1−3325cm−1に吸収振動が見られた。
【0126】
また、重メタノール中でのプロトン(1H)NMR及びカーボン(13C)NMRのピークについて、以下に示す。
1H−NMR(CD
3OD,δppm);0.890(t/J=6.6Hz,3H), 1.214−1.408(m,30H), 1.590−1.690(m,2H), 2.896(t/J=7.5Hz,2H), 4.891(brs)
13C−NMR(CD
3OD,δppm);14.444, 23.740, 27.464, 28.578, 30.242, 30.486, 30.516, 30.669, 30.791, 33.081, 40.758
【0127】
これらのスペクトルから、生成物がペンタデカフルオロオクタン酸オクタデシルアンモニウムであることが同定された。
なお、ペンタデカフルオロオクタン酸オクタデシルアンモニウムにおける共役塩基の元となる酸〔ペンタデカフルオロオクタン酸〕のアセトニトリル中でのpKaは、12.7である。
【0128】
上記実施例及び比較例で合成したイオン液体を以下にまとめた。
【化18】
【0129】
(実施例1B〜実施例5B、及び比較例1B〜比較例7B)
<溶媒への溶解性測定結果>
各実施例、各比較例で合成したイオン液体、及びZ−DOL、Z−TETRAOLに対して、フッ素系溶媒として三井・デュポン フロロケミカル株式会社製バートレルXF〔CF
3(CHF)
2CF
2CF
3〕及び純正化学社製試薬特級のn−ヘキサンを用いて溶解性試験を行った。
所定質量のバートレルXFあるいはn−ヘキサンに対してイオン液体を加え、超音波を5分間照射した後に1日間放置し、その溶解性を目視で確認した。
具体的には、バートレルXF(25℃)100質量部に対して、0.2質量部それぞれのイオン液体、Z−DOL、又はZ−TETRAOLを加え、超音波を5分間照射した後に1日間放置したのちに、その溶解性を目視で確認し、以下の評価基準で評価した。n−ヘキサンの場合には、同様に25℃において、100質量部に対して、0.5質量部それぞれのイオン液体、Z−DOL、又はZ−TETRAOLを加え、超音波を5分間照射した後に1日間放置したのちに、その溶解性を目視で確認し、以下の評価基準で評価した。
【0130】
なお、目視で確認し、透明である場合を溶解していると判断した。また、不透明である又は不溶分が見られる場合を溶解していない(不溶)と判断した。
結果を表2に示す。
〔評価基準〕
<<バートレルXF>>
・0.2質量%以上:
0.2質量部の添加で溶解している。
・0.2質量%未満:
0.2質量部の添加では不溶である。
【0131】
<<n−ヘキサン>>
・0.5質量%以上:
0.5質量部の添加で溶解している。
・0.5質量%未満:
0.5質量部の添加では不溶である。
【0132】
【表2】
【0133】
実施例1Aのイオン液体のバートレルXFへの溶解性は0.2質量%以上、n−ヘキサンへの溶解性は0.5質量%以上であった。
実施例2Aのイオン液体のバートレルXFへの溶解性は0.2質量%以上、n−ヘキサンへの溶解性は0.5質量%以上であった。
実施例3Aのイオン液体のバートレルXFへの溶解性は0.2質量%以上、n−ヘキサンへの溶解性は0.5質量%以上であった。
実施例4Aのイオン液体のバートレルXFへの溶解性は0.2質量%以上、n−ヘキサンへの溶解性は0.5質量%以上であった。
【0134】
比較例1A〜比較例4Aのイオン液体のバートレルXFへの溶解性は0.2質量%未満であり、n−ヘキサンへの溶解性は0.5質量%未満であった。比較例5Aのイオン液体のバートレルXFへの溶解性は0.2質量%未満であったが、n−ヘキサンへの溶解性は0.5質量%以上であった。Z−DOL、Z−TETRAOLのバートレルXFへの溶解性は0.2質量%以上であったが、n−ヘキサンへの溶解性は0.5質量%未満であった。
【0135】
これからわかるように、実施例で用いたイオン液体は、非極性溶媒であるバートレルXFやn−ヘキサンへの溶解性が改善されていることが分かる。これは潤滑剤として広く使用されている材料が長鎖脂肪酸あるいはそのエステルであることを考慮すると、添加剤としてその効果を発揮できることを意味している。また炭化水素の長さが11と12のイミダゾール誘導体である実施例1B〜2Bでは、フッ素系溶媒であるバートレルXFに対しての溶解性が改善しており、ハードディスク用途としての生産に用いるには十分である。また実施例3B〜4Bと比較例4Bを比べることにより、共役酸であるイミダゾリウム骨格に含まれる2個の炭化水素のうちの一方の炭化水素の炭素数が11と小さい炭化水素鎖を用いることによりその溶解性が改善されていることがわかる。また実施例3B〜4Bと比較例1B及び比較例3Bと比べてわかるように、炭化水素鎖が1個のものでは溶解性が不十分で、2個を導入することにより溶解性は改善する。同様に実施例3B〜4Bと比較例2Bを比べるとわかるように、2個の炭化水素を持つものでも一方の炭化水素鎖の炭化水素数が4ではその溶解性が不十分である。
【0136】
炭素数が1個のイミダゾール系イオン液体、長鎖の炭化水素を2個以上導入したもの、あるいは炭化水素鎖が2個でも片方の炭素数が4と短いイミダゾール系イオン液体では、比較例1B〜比較例3Bからわかるように、バートレルXFやn−ヘキサンへの溶解性は低い。つまり分子設計手法として炭素数が6以上の炭化水素が2個以上導入され、その一方の炭化水素数は14以下にすることが溶剤への溶解性に対して有効であることが分かる。
【0137】
本発明者らの検討結果から、イオン液体に対して長鎖の炭化水素が2個以上導入されその一方の炭化水素数を14以下することによりフッ素系溶媒及び炭化水素系溶媒への溶解性が改善することが分かった。またアニオンとしてビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドを持つものはノナフルオロブタンスルホン酸よりも溶解性は総じて高い。
【0138】
(実施例1C)
<熱安定性測定結果>
ノナフルオロブタンスルホン酸−1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムの5%、10%、20%重量減少温度は、それぞれ349.4℃、374.1℃、398.9℃であり、比較例として示した一般的に磁気記録媒体用途の潤滑剤として知られている市販品のパーフルオロポリエーテルZ−DOL(比較例6C)と比較すると170℃以上、またZ−TETRAOL(比較例7C)と比較しても100℃以上高いことが分かる。
【0139】
(実施例2C)
<熱安定性測定結果>
ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド−1−ドデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムの5%、10%、20%重量減少温度は、それぞれ337.7℃、361.6℃、383.8℃であった。市販品のパーフルオロポリエーテルZ−DOL(比較例6C)やZ−TETRAOL(比較例7C)と比較しても、それぞれ約160℃、100℃以上熱安定性が改善されていることが分かる。
【0140】
(実施例3C)
<熱安定性測定結果>
ノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムの5%、10%、20%重量減少温度は、それぞれ328.3℃、368.1℃、396.7℃であり、比較例として示した一般的に磁気記録媒体用途の潤滑剤として知られている市販品のパーフルオロポリエーテルZ−DOL(比較例6C)と比較すると170℃以上、またZ−TETRAOL(比較例7C)と比較しても80℃以上高いことが分かる。
【0141】
(実施例4C)
<熱安定性測定結果>
ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド−1−オクタデシル−2−ウンデシルイミダゾリウムの5%、10%、20%重量減少温度は、それぞれ329.1℃、362.4℃、388.4℃であった。市販品のパーフルオロポリエーテルZ−DOL(比較例6C)やZ−TETRAOL(比較例7C)と比較しても、それぞれ160℃、90℃以上熱安定性が改善されていることが分かる。
【0142】
(比較例1C)
<熱安定性測定結果>
ノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシルイミダゾリウムの5%、10%、20%重量減少温度は、それぞれ349.3℃、375.0℃、397.5℃であった。イオン液体であるために市販品のパーフルオロポリエーテルZ−DOL(比較例6C)やZ−TETRAOL(比較例7C)と比較しても、熱安定性は高い。
【0143】
(比較例2C)
<熱安定性測定結果>
ヘキサフルオロシクロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミド−1−ブチル−3−n−オクタデシルイミダゾリウムの5%、10%、20%重量減少温度は、それぞれ347.2℃、367.0℃、387.8℃であった。イオン液体であるために市販品のパーフルオロポリエーテルZ−DOL(比較例6C)やZ−TETRAOL(比較例7C)と比較しても、熱安定性は高い。
【0144】
(比較例3C)
<熱安定性測定結果>
ノナフルオロブタンスルホン酸−2−ヘプタデシルイミダゾールの5%、10%、20%重量減少温度は、それぞれ365.4℃、390.5℃、414.3℃であった。イオン液体であるために市販品のパーフルオロポリエーテルZ−DOL(比較例6C)やZ−TETRAOL(比較例7C)と比較しても、熱安定性は高い。
【0145】
(比較例4C)
<熱安定性測定結果>
ノナフルオロブタンスルホン酸−1−オクタデシル−2−ヘプタデシルイミダゾールの5%、10%、20%重量減少温度は、それぞれ338.2℃、365.9℃、390.1℃であった。イオン液体であるために市販品のパーフルオロポリエーテルZ−DOL(比較例6C)やZ−TETRAOL(比較例7C)と比較しても、熱安定性は高い。
【0146】
(比較例5C)
<熱安定性測定結果>
ペンタデカフルオロオクタン酸オクタデシルアンモニウムの5%、10%、20%重量減少温度は、それぞれ206.9℃、215.8℃、223.4℃であった。イオン液体ではあるが、酸のpKaが10よりも大きいためにイオン間の結合力が弱く、熱安定性に欠ける結果となっている。この比較例の場合にはイオン液体ではあるが市販品のパーフルオロポリエーテルZ‐DOL(比較例6C)やZ‐TETRAOL(比較例7C)と比較しても、熱安定性は大きくは改善していない。
【0147】
(比較例6C)
<熱安定性測定結果>
比較例6Cとして、末端に水酸基をもつ分子量約2000の市販品のパーフルオロポリエーテルZ‐DOLの測定を行った結果、5%、10%、20%重量減少温度は、それぞれ165.0℃、197.0℃、226.0℃であり、重量減少は蒸発に起因している。
【0148】
(比較例7C)
<熱安定性測定結果>
市販品で磁気記録媒体用潤滑剤として一般的に使用されている、末端に水酸基を複数個持つ分子量約2000のパーフルオロポリエーテル(Z‐TETRAOL)を潤滑剤として用いた。Z‐TETRAOLの5%、10%、20%重量減少温度は、それぞれ240.0℃、261.0℃、282.0℃であり、Z‐DOL同様に重量減少は蒸発に起因している。
【0149】
実施例1C〜実施例4C、比較例1C〜比較例7Cの結果を、融点とともに、表3にまとめた。
【0150】
【表3】
【0151】
このように実施例1A〜実施例4A、比較例1A〜比較例4Aの長鎖炭化水素基を持つイミダゾール系イオン液体系の潤滑剤は、市販品のパーフルオロポリエーテルであるZ−DOL、及びZ−TETRAOLと比較して熱安定性に圧倒的に優れていることが分かる。比較例5Aのイオン液体は前述したように、カルボン酸でありpKaが高いために、イオン間の結合力が弱く、熱安定性に欠ける結果となっている。
熱安定性についての長鎖炭化水素基を持つイミダゾール系イオン液体の中での比較では系統的な差は見出せないが、十分な熱安定性を持つものと考えられる。
実施例のイオン液体は、比較例1A〜4Aのイオン液体と比較しても融点が低く、潤滑剤としての応用の範囲が広くなるメリットがある。
【0152】
(実施例1D〜実施例4D、及び比較例1D〜比較例4D)
<ディスク耐久性試験>
実施例1D〜実施例4D、及び比較例1D〜比較例4Dのそれぞれのイオン液体を含有する潤滑剤を塗布して、磁気ディスクを作製した。表4に示すように、磁気ディスクのCSS測定は、50,000回を超え、加熱試験後のCSS測定も50,000回を超え、優れた耐久性を示した。
【0153】
(比較例5D)
<ディスク耐久性試験>
ペンタデカフルオロオクタン酸オクタデシルアンモニウムを含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表4に示すように、磁気ディスクのCSS測定は、50,000回を超えたものの、加熱試験後のCSS測定は891回であり、加熱試験により耐久性が悪化した。ペンタデカフルオロオクタン酸オクタデシルアンモニウムは比較例12に示したように、イオン液体ではあるが、酸のpKaが10よりも大きいためにイオン間の結合力が弱く熱安定性が低下し、加熱試験後の特性が悪化したものと考えられる。
【0154】
(比較例6D)
<ディスク耐久性試験>
Z−DOLを含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表4に示すように、磁気ディスクのCSS測定は、50,000回を超えたものの、加熱試験後のCSS測定は12,000回であり、加熱試験により耐久性が悪化した。
【0155】
(比較例7D)
<ディスク耐久性試験>
Z−TETRAOLを含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気ディスクを作製した。表4に示すように、磁気ディスクのCSS測定は、50,000回を超えたものの、加熱試験後のCSS測定は36,000回であり、加熱試験により耐久性が悪化した。
【0156】
実施例1D〜実施例4D、及び比較例1D〜比較例7Dの結果を、表4にまとめた。
【0157】
【表4】
【0158】
(実施例1E〜実施例4E、比較例1E〜比較例7E)
実施例1A〜実施例4Aのイオン液体、比較例1A〜比較例5Aのイオン液体、Z−DOL、及びZ−Tetraolをそれぞれ含有する潤滑剤を用いて、前述の磁気テープを作製した後に、以下の測定を行った。
・100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数
温度−5℃の環境下、又は温度40℃、相対湿度90%環境下
・スチル耐久試験
温度−5℃の環境下、又は温度40℃、相対湿度30%環境下
・シャトル耐久試験
温度−5℃の環境下、又は温度40℃、相対湿度90%環境下
・加熱試験後の100回のシャトル走行後の磁気テープの摩擦係数
温度−5℃の環境下、又は温度40℃、相対湿度90%環境下
・加熱試験後のスチル耐久試験
温度−5℃の環境下、又は温度40℃、相対湿度30%環境下
・加熱試験後のシャトル耐久試験
温度−5℃の環境下、又は温度40℃、相対湿度90%環境下
【0159】
実施例1E〜4E、及び比較例1E〜7Eの結果を、表5−1及び表5−2にまとめる。
【0160】
【表5-1】
【0161】
【表5-2】
【0162】
表中、スチル耐久性の「>60」は、60分超であることを表す。
表中、シャトル耐久性の「>200」は、200回超であることを表す。
【0163】
以下のことが確認できた。
実施例1A〜実施例4Aのそれぞれのイオン液体を含有する潤滑剤を塗布した磁気テープは、優れた摩擦特性、スチル耐久性、及びシャトル耐久性を有することが分かった。
比較例1A〜比較例4Aのそれぞれのイオン液体を含有する潤滑剤を塗布した磁気テープは、優れた摩擦特性、スチル耐久性、及びシャトル耐久性を有することが分かった。この比較例潤滑剤はイオン液体であるゆえに加熱試験後にも優れた磁気テープ耐久性を示した。
比較例5Aのイオン液体を含有する潤滑剤を塗布した磁気テープは、優れた摩擦特性、スチル耐久性、及びシャトル耐久性を示したが、加熱試験後に磁気テープ耐久性が大きく劣化した。
Z−DOLを塗布した磁気テープは、スチル耐久性、及びシャトル耐久性の劣化が大きいことが分かった。
Z−Tetraolを塗布した磁気テープは、スチル耐久性、及びシャトル耐久性の劣化が大きいことが分かった。
【0164】
表5−1及び表5−2から、共役塩基と、共役酸とを有するイオン液体を含有し、前記共役酸が、炭素数が6以上の直鎖状の炭化水素基を2個以上有し、その一方の炭化水素数は14以下であり、前記共役塩基の元となる酸のアセトニトリル中でのpKaが10以下であると、優れた耐熱性、並びに磁気テープ、及び磁気ディスクにおける耐久性を得られることが分かった。更には、耐熱性及び磁気記録媒体の耐久性に優れるばかりでなく、イオン液体でありながら希釈剤としてn−ヘキサンにも溶解するので、これは潤滑剤として広く使用されている長鎖脂肪酸あるいはそのエステルに対する添加剤としてその効果を発揮できることを意味している。またその中にはフッ素系溶媒であるバートレルにも溶解するものもあるので、特にハードディスクやマイクロマシン等への応用を考えたときに製造プロセスの上でも問題はない。
【0165】
以上の説明からも明らかなように、共役塩基と、共役酸とを有するイオン液体を含有し、前記共役酸が、炭素数が6以上の直鎖状の炭化水素基を2個以上の有し、その一方の炭化水素数は14以下であり、前記共役塩基の元となる酸のアセトニトリル中でのpKaが、10以下であるイオン液体系潤滑剤は、分解温度及び5%、10%、20%重量減少温度が高く熱安定性に優れる。また高温条件下においても従来のパーフルオロポリエーテルと比較しても優れた潤滑性を保つことができ、また、長期に亘って潤滑性を保つことができる。したがって、このイオン液体を含有する潤滑剤を用いた磁気記録媒体は、非常に優れた走行性、耐摩耗性、及び耐久性を得ることができる。