特許第6702820号(P6702820)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産コパル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6702820-振動モータ 図000002
  • 特許6702820-振動モータ 図000003
  • 特許6702820-振動モータ 図000004
  • 特許6702820-振動モータ 図000005
  • 特許6702820-振動モータ 図000006
  • 特許6702820-振動モータ 図000007
  • 特許6702820-振動モータ 図000008
  • 特許6702820-振動モータ 図000009
  • 特許6702820-振動モータ 図000010
  • 特許6702820-振動モータ 図000011
  • 特許6702820-振動モータ 図000012
  • 特許6702820-振動モータ 図000013
  • 特許6702820-振動モータ 図000014
  • 特許6702820-振動モータ 図000015
  • 特許6702820-振動モータ 図000016
  • 特許6702820-振動モータ 図000017
  • 特許6702820-振動モータ 図000018
  • 特許6702820-振動モータ 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702820
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】振動モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/02 20060101AFI20200525BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   H02K33/02 A
   B06B1/04 S
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-145472(P2016-145472)
(22)【出願日】2016年7月25日
(65)【公開番号】特開2017-77153(P2017-77153A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2019年3月29日
(31)【優先権主張番号】特願2015-204905(P2015-204905)
(32)【優先日】2015年10月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤沼 智弘
(72)【発明者】
【氏名】大井 満
(72)【発明者】
【氏名】林 徹史
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0013077(KR,A)
【文献】 特開2011−030370(JP,A)
【文献】 中国実用新案第204334278(CN,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0313459(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/02
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体およびコイルを有する静止部と、
磁石を含み、前記静止部に対して、一方向に振動可能に支持される振動体と、
前記静止部と前記振動体との間に位置する弾性部材と、を備え、
前記磁石は、前記コイルに対して一方向に直交する上下方向における上側に配置され、
前記弾性部材は、前記振動体の側面に固定される固定部と、前記固定部と接続され、前記振動体の上面に固定される天板部と、を有し、
前記天板部は、前記磁石と上下方向に対向し、
前記固定部と接続されて一方向および上下方向に直交する方向に前記固定部と近接して対向する平板部をさらに有することを特徴とする振動モータ。
【請求項2】
筐体およびコイルを有する静止部と、
磁石を含み、前記静止部に対して、一方向に振動可能に支持される振動体と、
前記静止部と前記振動体との間に位置する弾性部材と、を備え、
前記磁石は、前記コイルに対して一方向に直交する上下方向における上側に配置され、
前記弾性部材は、前記振動体の側面に固定される固定部と、前記固定部と接続され、前記振動体の上面に固定される天板部と、を有し、
前記天板部の面積は、前記固定部の面積よりも大きく、
前記固定部と接続されて一方向および上下方向に直交する方向に前記固定部と近接して対向する平板部をさらに有することを特徴とする振動モータ。
【請求項3】
前記天板部の少なくとも一部は、強磁性材料を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振動モータ。
【請求項4】
前記振動体は、上下方向に貫通する空洞部を有し、
前記磁石は、前記空洞部に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項5】
前記天板部は、上下方向に貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記空洞部および前記磁石と上下方向に対向することを特徴とする請求項4に記載の振動モータ。
【請求項6】
前記振動体は、おもりを有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項7】
前記固定部は、
前記振動体の一方向に直交する第1壁部と
前記第1壁部と接続し、前記振動体の一方向に沿って延びる第2壁部と、
を有し、
前記振動体の一方向における端面と、前記第1壁部との間に緩衝部材が配置される請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項8】
前記天板部と前記筐体との間に第1の隙間と、
前記振動体と前記コイルとの間に第2の隙間と、
を備え、
前記第1の隙間または前記第2の隙間の少なくとも1つの隙間には磁性流体が配置されることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項9】
前記弾性部材は、前記振動体を介して、前記天板部と上下方向に対向する底板部をさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の振動モータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のハプティック技術(触覚を通じて情報を伝達する技術)の向上により、従来からの無音通知のためのバイブレーション機能を有するだけでなく、触覚フィードバック等の細かい振動を伝える振動モータが要求されている。
【0003】
従って、振動モータが可動する回数は増え、振動モータに備えられる振動体が振動する回数も増加している状況である。振動モータは、可動部である振動体と静止部(筐体など)とを接続する弾性部材を備えている。弾性部材と振動体を接続する接続部分は最も応力がかかる箇所である。上記のような状況では、弾性部材と振動体との固定方法は、固定強度を上げるためにも重要となる。
【0004】
ここで、例えば特許文献1には、振動体と弾性部材との接続を、弾性部材の先端部に設けられる直角に折り曲げたジョイントによって行うものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国実用新案出願公告第201839133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、振動体の側面のみをジョイントに固定するので、振動体の振動中に固定部分が外れたり、破損したりするおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、振動体の振動中に弾性部材と振動体との固定部分が外れにくく、且つ破損しにくい振動モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例示的な振動モータは、筐体およびコイルを有する静止部と、磁石を含み、前記静止部に対して、一方向に振動可能に支持される振動体と、前記静止部と前記振動体との間に位置する弾性部材と、を備え、前記磁石は、前記コイルに対して一方向に直交する上下方向における上側に配置され、前記弾性部材は、前記振動体の側面に固定される固定部と、前記固定部と接続され、前記振動体の上面に固定される天板部と、を有し、前記天板部は、前記磁石と上下方向に対向する構成としている。
【0009】
また、本発明の別の例示的な振動モータは、筐体およびコイルを有する静止部と、磁石を含み、前記静止部に対して、一方向に振動可能に支持される振動体と、前記静止部と前記振動体との間に位置する弾性部材と、を備え、前記磁石は、前記コイルに対して一方向に直交する上下方向における上側に配置され、前記弾性部材は、前記振動体の側面に固定される固定部と、前記固定部と接続され、前記振動体の上面に固定される天板部と、を有し、前記天板部の面積は、前記固定部の面積よりも大きい構成としている。
【発明の効果】
【0010】
例示的な本発明の振動モータによれば、振動体の振動中に弾性部材と振動体との固定部分が外れにくく、且つ破損しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る振動モータの分解斜視図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る振動モータの斜視図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る振動モータの上面図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係る振動モータの側面図である。
図5A図5Aは、比較例に係るカバー側の構成を示す概略平面図である。
図5B図5Bは、第1実施形態に係るカバー側の構成を示す概略平面図である。
図6図6は、本発明の第1実施形態に係る振動モータの側面断面図である。
図7図7は、本発明の第1実施形態に係る振動モータの側面図である。
図8図8は、本発明の第1実施形態に係る柱部材の斜視図である。
図9図9は、本発明の第1実施形態に係る基台の斜視図である。
図10図10は、本発明の第1実施形態に係る基台にコイルを取り付けた状態を示す斜視図である。
図11図11は、本発明の第2実施形態に係る振動モータの側面断面図である。
図12図12は、本発明の第3実施形態に係る振動モータの側面断面図である。
図13図13は、本発明の第4実施形態に係る振動モータの側面断面図である。
図14図14は、本発明の第5実施形態に係る振動モータに備えられる弾性部材およびおもりを下面側から視た斜視図である。
図15図15は、本発明の第5実施形態に係る振動モータに備えられる弾性部材を下面側から視た斜視図である。
図16図16は、本発明の第6実施形態に係る振動モータの斜視図である。
図17図17は、本発明の第7実施形態に係る弾性部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<1.第1実施形態>
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る振動モータの分解斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る振動モータの斜視図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る振動モータの上面図である。図4は、本発明の第1実施形態に係る振動モータの側面図である。なお、図2図3図4は、振動モータのカバーを取り外した状態を示している。
【0013】
なお、図1図4において、左右方向を一方向として、X方向で表す。また、一方向に対して、直交する方向である上下方向をY方向として表す。例えば、図1において紙面上側が上下方向(Y方向)における上側となる。以下、他の図面についても同様のことが当てはまる。ただし、この方向の定義により、本発明にかかる、振動モータの向きを限定する意図はない。
【0014】
<1.1 全体構成>
本実施形態に係る振動モータ100は、基台10、コイル50、振動体20、弾性部材30、弾性部材31及びカバー40を備えている。基台10は、ベース部11と、基板12と、柱部材62とを備えている。振動モータ100は、ベース部11とカバー40とを含む筐体を備えている。基板12は、リジッド基板であっても、フレキシブル基板であってもよい。コイル50は、基台10の上面に取付けられる(取付け構成については後に詳述する)。すなわち、振動モータ100は、基台10、コイル50、およびカバー40を含んだ静止部と、振動体20と、弾性部材30とを備えている。つまり、静止部は、筐体およびコイル50を有している。
【0015】
振動体20は、おもり21と、磁石22とを有している。磁石22は、おもり21に設けられた空洞部213内部に収容される。すなわち、磁石22は、おもり21によって保持される。磁石22は、コイル50に対して上側に配置される。すなわち、振動体20は、磁石22を含む。磁石22は、コイル50に対して、上下方向(Y方向)における上側に配置される。
【0016】
後に詳述するように、弾性部材30は、一端側がおもり21に固定されると共に、他端側はカバー40の内壁面に固定される。つまり、弾性部材30は、静止部と振動体20との間に位置する。もう一つの弾性部材31についても弾性部材30と同様に固定される。これにより、振動体20は、静止部に対して、一方向(X方向)に振動可能に弾性部材30、31によって支持される。カバー40と基台10とで構成される内部空間に、コイル50、振動体20及び弾性部材30、31が収容される。
【0017】
コイル50に基板12における配線を介した通電を行うことにより、コイル50に磁界が発生する。コイル50に発生する磁界と磁石22が形成する磁界との相互作用によって、振動体20は一方向に往復振動する。
【0018】
<1.2 弾性部材と振動体の構成>
次に、弾性部材30と振動体20とについて詳述する。なお、弾性部材31については、弾性部材30と同様の構成であるので説明は省く。
【0019】
弾性部材30は、板ばね部32と、固定部33と、接続部34と、天板部35を有しており、各部がそれぞれ接続される。板ばね部32は、梁部321、322及び連結部323を有している。連結部323は、平板状の梁部321の一端部と平板状の梁部322の一端部とを連結する。すなわち、板ばね部32は、複数の梁部321、322と、連結部323とを有している。
【0020】
弾性部材30は、振動体20の一方向(X方向)の両端のうち少なくとも一方を支持する板ばね部32を有している。
【0021】
固定部33は、振動体20の一方向(X方向)に直交する第1壁部331と、第1壁部331と接続し、振動体20の一方向に沿って延びる第2壁部332とを含んでいる。第1壁部331の一端は梁部322の他端に接続される。第1壁部331の他端は第2壁部332の一端と接続される。第2壁部332の他端は接続部34によって天板部35に接続される。なお、第2壁部332でなく第1壁部331が接続部34によって天板部35に接続されてもよい。さらに、第1壁部331と第2壁部332のそれぞれが接続部34によって天板部35に接続されてもよい。天板部35の面積は、固定部33の面積よりも大きい。
【0022】
おもり21は、第1おもり部211と第2おもり部212a、212bを有している。第1おもり部211は、直方体形状である。第2おもり部212a、212bは、振動体20の一方向両端に配置され、第1おもり部211の下面から下側へ延びる。
【0023】
第2壁部332は、第1おもり部211と第2おもり部212aの一方向に延びる各側面からなる面に固定される。第1壁部331は、第1おもり部211と第2おもり部212aの一方向と直交する方向に延びる各側面からなる面に固定される。すなわち、第1壁部331と第2壁部332は、振動体20の側面へ固定される。当該固定は、例えば溶接または接着剤による接着によって行うことができる。なお、例えば、壁部の周囲をスポット溶接することで固定する場合、壁部と振動体の側面とは直接的に固定される。例えば、接着剤を用いて固定する場合は、壁部と振動体の側面とは接着剤を介して間接的に固定される。
【0024】
天板部35は、第1おもり部211の上面に固定される。当該固定は、例えば溶接または接着剤による接着によって行うことができる。溶接の場合は、例えば、天板部35の周囲をスポット溶接する方法を採ることができる。天板部35は、磁石22と上下方向に対向する。
【0025】
なお、弾性部材31は、弾性部材30と同様の構成を有する。接続部(弾性部材30の接続部34に相当)は、おもり21上面において、接続部34と対角の位置でおもり21に固定される。すなわち、振動モータ100には、2個の弾性部材30、31が設けられている。2個の弾性部材30、31は、振動体20の一方向(X方向)の両端のそれぞれを支持している。
【0026】
このように、固定部33が振動体20の側面に固定され、固定部33と接続される天板部35が振動体20の上面に固定されることで、振動体20の振動によって固定部33及び天板部35が振動体20から外れてしまったり、割れてしまったりすることを抑制することができる。また、固定部33と天板部35が接続部34によって接続されるので、より上記効果を高めることができる。また、固定部33は、第1おもり部211と第2おもり部212aの両方に固定されるので、弾性部材30と振動体20との固定強度を高めることができる。
【0027】
ここで、図5Aは、本実施形態との比較に用いる比較例に係る振動モータにおけるカバー側の構成を下側から視た概略的な平面図である。
【0028】
図5Aでは、カバー400内部に、弾性部材500、600と、おもり420と、天板部550が収容される。弾性部材500、600の一端は、おもり420の各側面に固定され、他端はカバー400の内壁面に固定される。天板部550は、弾性部材500、600と別部材であり、おもり420の上側に固定される。
【0029】
図5Aの上段では、カバー400の一方向における幅が所定幅であることにより、弾性部材500、600を固定した初期状態において、弾性部材500、600には弾性力がほぼかからない。カバー400は、ロット間等で、一方向の全長が寸法公差内でばらつく可能性がある。このようなバラツキによって、図5Aの下段では、上段の場合よりもカバー400の一方向の全長が若干長くなる。
【0030】
図5Aの下段の場合、上段に対応する破線で示す状態から弾性部材500、600を弾性変形させて、弾性部材500、600の一端部をカバー400の内壁面に固定する必要がある。従って、振動モータの初期状態において、弾性部材500、600に無理な力がかかり、さらに振動モータが稼働すると、弾性部材500、600に大きな力がかかることとなり、弾性部材500、600が破断する虞がある。なお、カバー400のバラツキによって一方向の全長が若干短くなる場合もあり、この場合でも振動モータの初期状態および稼働状態において弾性部材500、600に無理な力がかかってしまう。
【0031】
一方、図5Bは、本実施形態に係る振動モータ100におけるカバー側の構成を下側から視た概略的な平面図である。天板部35は、固定部33に接続され、弾性部材30と同一部材である。弾性部材31の天板部も同様である。これにより、図5Bの上段および下段に示すように、カバー40の一方向の全長が寸法公差内でばらついた場合でも、弾性部材30、31の一方向における位置調整を行うことで、弾性部材30、31の固定部をおもり21に固定すると共に、弾性部材30、31の一端部をカバー40の内壁面に固定することができる。従って、カバー40の全長に依らず、振動モータ100の初期状態において、弾性部材30、31に無理な力がかかることを抑制し、弾性部材30、31の破断を抑制することができる。
【0032】
なお、第1壁部331と第2壁部332の両方ではなく、いずれか片方のみを振動体20に固定してもよい。
【0033】
また、弾性部材30は、例えば強磁性バネ材のSUS632J1により構成される。すなわち、天板部35の少なくとも一部は強磁性材料から構成される。これにより、天板部35は、磁石22に対するバックヨークとしての機能を発揮することができる。なお、弾性部材30は、強磁性材料に代わって、天板部35の上面に強磁性材料をコーティングした構成としてもよい。
【0034】
また、天板部35は、上下方向に貫通する貫通孔351を有する。第1おもり部211は、上下方向に貫通する空洞部213を有する。空洞部213には磁石22が収容される。つまり、貫通孔351は空洞部213及び磁石22と上下方向に対向する。これにより、磁石22を収容しない状態の空洞部213に位置決め用のピンを挿入し、貫通孔351に上記ピンを挿入して天板部351を位置決めすることができる。
【0035】
ここで、カバー40を取り付けた状態での振動モータ100の側面断面図を図6に示す。図6に示すように、天板部35とカバー40の間には第1の隙間がある。第1の隙間には、粘性を有した磁性流体S1が充填される。すなわち、振動体20の下面と反対側の面と、筐体との隙間には、磁性流体S1が配置される。
【0036】
また、振動体20である第1おもり部211の下面とコイル50の上面との間には第2の隙間がある。第2の隙間には、粘性を有した磁性流体S2が充填される。このような構成により、磁性流体S1、S2は、振動体20が振動する際にダンパーとしての機能を発揮する。また、磁性流体S1、S2は磁性を有することにより、振動体20が振動しても、それぞれ金属製である天板部35又はコイル50上にとどまることができる。なお、磁性流体S1、S2は、いずれか一方のみを設けてもよい。つまり、磁性流体は、第1の隙間のみに充填されてもよく、第2の隙間のみに充填されてもよい。
【0037】
おもり21が平板上の第1おもり部211のみであった場合、振動モータ100の内部において、おもり21と基台10との間には空間を有する。当該空間の一部にはコイル50が配置される領域と、コイル50が配置されない領域が存在する。コイル50の配置されない領域に第2おもり部212a、212bを追加することで、おもり21の重量を大きくすることができる。図6に示すように、第2おもり部212a、212bとコイル50とは、一方向に対向する。即ち、コイル50側のコイル50が配置されない領域を利用して、第2おもり部212a、212bを第1おもり部211から垂下させて設けている。これにより、振動モータ100としての厚みを増加させずに、おもり21の重量を大きくすることができる。従って、薄型で慣性力の大きい振動モータを実現できる。
【0038】
また、図6に示すように、コイル50と第1おもり部211との上下方向の距離H1は、第2おもり部212aと基板12との上下方向の距離H2よりも大きい。これにより、振動モータ100が落下した等の場合に、第1おもり部211がコイル50に衝突してコイル50が破損することを抑制できる。なお、本効果は磁性流体S2を設けない場合に特に有効である。
【0039】
<1.3 振動体の移動規制構造>
次に、振動体20の移動規制構造について詳述する。
【0040】
ベース部11は、上側に突出する第1突出部111及び上側に突出する第2突出部112を振動体20の一方向両端側にそれぞれ有している。第1突出部111および第2突出部112は、振動体20とカバー40の間に設けられている。すなわち、静止部は、上下方向に突出する突出部111、112を有している。第1突出部111は、振動体20の一方向一方側において、振動体20と筐体の間に少なくとも1個設けられている。さらに、第2突出部112は、振動体20の一方向他方側において、振動体20と筐体の間に少なくとも1個設けられている。
【0041】
第1突出部111は、梁部321と梁部322によって挟まれる位置に設けられる。第2突出部112についても同様である。第1突出部111と第2突出部112の間にコイル50が位置する。
【0042】
第1突出部111および第2突出部112は、例えばプレス成型によって形成される。これにより、突出部の強度を確保することができる。なお、突出部はベース部11とは同一部材ではなく、別部材であってもよい。
【0043】
ここで、図2の状態の振動モータ100を一方向の一方側から視た側面図を図7に示す。なお、図7は、梁部321と梁部322によって挟まれる位置から視たときの図となっている。図7に示すように、第1突出部111の一部は、第2おもり部212aの一部と対向する。すなわち、突出部111、112の一部が、振動体20の一部と一方向に対向する。
【0044】
また、梁部322は、梁部322が伸びる方向における中間位置に、上下方向に切欠くことで幅狭部325を有する。つまり、幅狭部325は、板ばね部32を上下方向に切り欠くことで形成される。また、梁部322は、幅狭部325の両側に幅狭部325よりも上下方向に幅の広い幅広部324を有する。すなわち、板ばね部32は、幅狭部325と、幅広部324とを有している。
【0045】
一方向の一方側から視て、幅狭部325は第1突出部111と上下方向に重なる。すなわち、一方向一方側から視て、幅狭部は、突出部と上下方向に重なる。これにより、振動体20が移動するときに、弾性部材30と第1突出部111との接触が、抑制される。また、梁部321、322に幅狭部325が設けられていることで、振動体20の一方向の両端を、2個の板ばね部32でそれぞれ支持することができる。これにより、振動モータ100の部品点数の増加を抑制できる。なお、弾性部材31と第2突出部112との間にも同様の関係が成り立っている。
【0046】
また、図6に示すように、第1突出部111と振動体20との距離L2を、振動体20の有効可動域L1よりも短くしている。ここで、有効可動域とは、振動体20が静止している状態から、弾性部材30が、弾性域で最も変形したときまでの、振動体20の移動可能な範囲である。例えば、図6において、振動体20が静止している状態から、弾性部材30の板ばね部32が最も縮んだ状態までが有効可動域である。すなわち、突出部111、112と振動体20との距離が、振動体20の有効可動域よりも短い。
【0047】
これにより、振動モータ100が落下した等の場合に、振動体20が大きく移動した際でも、振動体20が有効可動域まで移動する前に第1突出部111に接触して移動が規制される。これにより、弾性部材30の破損をより抑えることができる。
【0048】
また、上記のような第1突出部111、振動体20及び弾性部材30による移動規制の構成は、第2突出部112、振動体20及び弾性部材31についても同様である。このように、第1突出部111は、振動体20の一方向一方側において、振動体20とカバー40との間に設けられる。第2突出部112は、振動体20の一方向他方側において、振動体20とカバー40との間に設けられる。なお、第1突出部111と第2突出部112は、それぞれ一方向の両側においてそれぞれ複数設けられてもよい。また、一方向の片側のみに突出部を設けてもよい。
【0049】
また、図6に示すように、第2おもり部212bとコイル50との間の一方向の距離L3は、第2おもり部212aと第1突出部111との間の距離L2よりも大きい。これにより、振動体20が大きく移動して第2おもり部212aが第1突出部111に接触した際に、第2おもり部212bはコイル50に接触しない。これにより、コイル50の破損を抑制できる。第2おもり部212aとコイル50との間の一方向の距離L3と、第2おもり部212bと第2突出部112との間の距離との関係も上記と同様である。これにより、振動体20が一方向のいずれの側に大きく移動した場合でもコイル50の破損を抑制できる。
【0050】
<1.4 コイルの位置決め構造>
次に、振動モータ100におけるコイル50の位置決め構造について詳述する。図1に示すように、ベース部11は、上側に平板状に突出する第1柱部61を有する。第1柱部61は、凹部611を有する。また、柱部材62は、図8の斜視図に示すように、平板状の第2柱部621と、第2柱部621と同一の部材で円柱状として突出する第3柱部622を有する。
【0051】
凹部611に第3柱部622を挿入して第2柱部621を第1柱部61に接触させ、第1柱部61に柱部材62を固定する。当該固定には、例えば、溶接または、接着剤による接着を用いる。これにより、柱部60は第1柱部61と柱部材62とを有する。つまり、基台10は一方向と直交する上下方向における上側に突出する柱部60を有する。また、基板12は、上下方向に貫通する基板貫通孔121を有する。基板貫通孔121に柱部60を挿入する。これにより、基板12を位置決めしてベース部11に固定する。この状態を図9の斜視図に示す。
【0052】
そして、図10の斜視図に示すように、柱部60の外側面が環状のコイル50の内側面と対向し、コイル50が基板12に固定される。その際、例えばコイル50の下面に両面テープを貼り、コイル50を基板12に押し付ける。このような構成により、治具を用いずにコイル50を容易に位置決めすることができ、コイル50の取付け作業の効率化を図ることができる。
【0053】
また、柱部60の上端面は、コイル50の上端面より下側である。これにより、例えばコイル50の下面に流動性の比較的高い接着剤を塗布し、コイル50を基板12に押し付けて固定する場合に、接着剤がコイル50の下面からコイル50の内側面と柱部60の外側面との隙間に流れ込み、更に柱部60の上端面に流れ込んだ場合でも、接着剤が柱部60の上端面とコイル50の内側面とで界面を形成する。これにより、コイル50の上端面に接着剤が付着することを抑制できる。
【0054】
流動性の比較的高い接着剤を用いたとしても、治具を使用しないので、治具に接着剤が付着し、次のコイルの取付け作業時に治具によってコイルの上面に接着剤が付着することを防げる。
【0055】
なお、上記のように、接着剤がコイル50の内側面と柱部60の外側面との隙間に介在すると、コイル50の上下方向の固定強度が向上する。また、柱部60が、第1柱部61、第2柱部621及び第3柱部622の3個の部材で構成される。これにより、柱部60を精度良く形成できるので、コイルの位置決め精度がよくなる。
【0056】
また、柱部60を構成する実施形態としては以下のような変形例も可能である。例えば、基板12に基板貫通孔121を設けず、基板12が上側に突出する柱部60を有する構成としてもよい。
【0057】
または、柱部60はベース部11と同一の部材により形成されてもよい。例えば、柱部60をプレスまたは鋳造により形成してもよい。これにより、柱部60の形成工程を簡素化できる。または、金属製であるベース部11の板部分に対して樹脂製の柱部60をインサート成型により形成してもよい。これにより、部品原価を安くできる。
【0058】
また、基板12にコンデンサまたはトランスなどの電子部品を実装し、実装された電子部品を柱部60として用いることも可能である。
【0059】
上記の第1実施形態において、おもり21は、平板状の第1おもり部211の下面から下方に延びる第2おもり部212a、212bを備えている。しかしながら、おもりはこの形状に限定されない。例えば、第1おもり部211で十分な振動が可能な場合、第2おもり部212a、212bを省略してもよい。この場合、第1突出部111及び第2突出部112の一部が、第1おもり部211と一方向に対向する。
【0060】
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について述べる。本実施形態に係る振動モータ110の側面断面図を図11に示す(本図は第1実施形態の図6に対応するものである)。上記第1実施形態では、図6に示すように、振動体20の移動規制のための第1突出部111及び第2突出部112は、一方向において、コイル50に対して第2おもり部212a、212bよりも遠い位置に設けている。これに対し、本実施形態では、図11に示すように、第1突出部113及び第2突出部114は、一方向において、コイル50と第2おもり部212a、212bの間に設けられる。
【0061】
このような実施形態であれば、第1突出部113及び第2突出部114が弾性部材30、31と干渉することがないので、弾性部材の梁部に第1実施形態のような幅狭部を設ける必要が無くなる。これにより、梁部の上下方向の厚みを確保することができ、板ばね部32の剛性を向上することができる。
【0062】
<3.第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について述べる。本実施形態に係る振動モータ120の側面断面図を図12に示す(本図は第1実施形態の図6に対応するものである)。本実施形態では、基台10において、基板12及びベース部11を上下方向に貫通する収容部115aおよび115bが設けられる。そして、第2おもり部214aの一部が収容部115aに配置され、第2おもり部214bの一部が収容部115bに配置される。
【0063】
このような実施形態であれば、振動体20が一方向に大きく移動した場合でも、第2おもり部214aと収容部115aとの接触、又は第2おもり部214bと収容部115bとの接触によって振動体20の移動規制を行うことができる。なお、収容部は、貫通孔ではなく、貫通していない凹部で構成してもよい。
【0064】
<4.第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について述べる。本実施形態に係る振動モータ130の側面断面図を図13に示す(本図は第1実施形態の図6に対応するものである)。本実施形態では、カバー40の上面部の内側面から下側へ突出する第1突出部41及び第2突出部42が設けられる。弾性部材30、31の梁部には第1突出部41及び第2突出部42と干渉しないように幅狭部が設けられる。これにより、振動体20が一方向に大きく移動した場合でも、第1おもり部211が第1突出部41または第2突出部42に接触するので、振動体20の移動規制を行うことができる。
【0065】
すなわち、筐体は、下側に配置されるベース部11と、ベース部11の一面を覆うカバー40とを有しており、突出部111、112、113、114、41、42がベース部11またはカバー40の少なくとも一方と同一の部材である。
【0066】
<5.第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について述べる。本実施形態に係る振動モータに備えられる弾性部材30、31およびおもり21を下面側から視た斜視図を図14および図15に示す(図15はおもり21を外した状態)。本実施形態では、弾性部材30は、振動体20を介して、天板部35と上下方向に対向する底板部37をさらに有する。底板部37は振動体20に接触していてもよく、振動体20と僅かな隙間を介して対向してもよい。また、底板部37は振動体20に固定されてもよい。底板部37は、第2壁部332の下端と接続部36によって接続される。なお、底板部37は、第2壁部332でなく第1壁部331の下端と接続部36によって接続されてもよい。さらに、底板部37は、第1壁部331と第2壁部332のそれぞれの下端と接続部36によって接続されてもよい。
【0067】
振動体20を介して、天板部35と上下方向に対向する底板部37を有することにより、弾性部材30と振動体20との固定強度を高めることができる。特に、底板部37が振動体20に接触している場合においては、振動モータが落下する等、強い衝撃を受けた時に弾性部材30が上下から振動体20を挟み込んでいることにより、弾性部材30が振動体20から外れることを抑制できる。また、底板部37が振動体20に接触している場合は、天板部35を固定する際の位置決めとして使えることにより、天板部35の取付け作業の効率化を図ることができる。
【0068】
<6.第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態について述べる。本実施形態に係る振動モータ140の斜視図を図16に示す。本実施形態では、振動体20の一方向における端面と第1壁部331との間に緩衝部材23が配置される。緩衝部材23は弾性を有する部材により形成される。例えば、緩衝部材23は、シリコーン、ウレタン、フッ素樹脂、アクリル等の樹脂材料または、αゲル等の防振材等の振動を減衰させる部材が望ましい。
【0069】
振動体20の一方向における端面と第1壁部331との間に緩衝部材23が配置されることにより、振動体20の往復振動を減衰させることができる。より詳細には、緩衝部材23が無い場合、駆動信号を停止すると重量の大きい振動体20は慣性を有して自由に振動するが、緩衝部材を設けた場合には、振動体20と弾性部材30との間に干渉効果が生じて減衰作用が働く。したがって、コイル50への通電が停止されて振動体20の振動が停止されるときには、振動体20の振動を速やかに静止させることができる。なお、第1壁部331の緩衝部材23が配置される領域は凹部であってもよい。
【0070】
<7.第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態について述べる。図17は、本実施形態に係る弾性部材の斜視図である。図17に示す弾性部材30の第1実施形態との構成上の相違点は、接続部38と平板部39を有することである。
【0071】
平板部39は、第2固定部332における板ばね部32側ではない端部と接続部38によって接続される。接続部38は、折り曲げによって、第2固定部332から一方向に離れる方向に向かってから第2固定部332に近づく形状に構成される。これにより、接続部38に接続される平板部39は、第2固定部332と一方向および上下方向に直交する方向に対向する。
【0072】
これにより、弾性部材30と別体の板材等を用いずとも、平板部39によって第2固定部332のおもり21への溶接による固定箇所の厚みを増やすことができ、溶接を効率的に行うことが可能となる。また、平板部39は、折り曲げ加工によって容易に形成できる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、例えばスマートフォンまたはゲームパッドなどに備えられる振動モータに利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
100、110、120、130、140・・・振動モータ、10・・・基台、11・・・ベース部、111、113・・・第1突出部、112、114・・・第2突出部、115a、115b・・・収容部、12・・・基板、121・・・基板貫通孔、20・・・振動体、21・・・おもり、211・・・第1おもり部、212a、212b・・・第2おもり部、213・・・空洞部、214a、214b・・・第2おもり部、22・・・磁石、23・・・緩衝部材、30、31・・・弾性部材、32・・・板ばね部、321、322・・・梁部、323・・・連結部、324・・・幅広部、325・・・幅狭部、33・・・固定部、331・・・第1壁部、332・・・第2壁部、34、36・・・接続部、35・・・天板部、351・・・貫通孔、37・・・底板部、38・・・接続部、39・・・平板部、40・・・カバー、50・・・コイル、60・・・柱部、61・・・第1柱部、611・・・凹部、62・・・柱部材、621・・・第2柱部、622・・・第3柱部、S1、S2・・・磁性流体
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17