特許第6702823号(P6702823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702823
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20200525BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20200525BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20200525BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   F01N3/28 301P
   F01N3/022 B
   F01N3/022 C
   F01N3/035 A
   F01N3/24 E
   F01N3/24 N
   F01N3/28 301U
   B01D46/00 302
   B01D53/94 245
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-152169(P2016-152169)
(22)【出願日】2016年8月2日
(65)【公開番号】特開2017-201163(P2017-201163A)
(43)【公開日】2017年11月9日
【審査請求日】2019年4月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-185814(P2015-185814)
(32)【優先日】2015年9月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-90014(P2016-90014)
(32)【優先日】2016年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】青木 崇志
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−167581(JP,A)
【文献】 特開平06−182204(JP,A)
【文献】 特開2004−169586(JP,A)
【文献】 特開2014−054622(JP,A)
【文献】 特開2005−226599(JP,A)
【文献】 特開2003−155909(JP,A)
【文献】 特表2010−510429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00〜 3/38
B01D 46/00
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一流入側端面から第一流出側端面まで延びる複数のセルを区画形成する格子状の隔壁を有する第一ハニカム基材、及び、前記第一ハニカム基材に担持された触媒を有し、前記セルの両端がそれぞれ開口してなるハニカム触媒体と、
第二流入側端面から第二流出側端面まで延びる複数のセルを区画形成する格子状の隔壁を有する第二ハニカム基材、及び、前記第二流入側端面及び/または前記第二流出側端面における前記セルの開口部を予め規定された配設基準に従って目封止して配設された複数の目封止部を有する目封止ハニカム構造体と、
前記ハニカム触媒体及び前記ハニカム触媒体の下流の位置に前記目封止ハニカム構造体をそれぞれ収容可能に形成され、前記ハニカム触媒体の前記第一流入側端面と相対する位置に流入口が設けられ、浄化対象の排気ガスが流入する排気ガス流入部及び前記目封止ハニカム構造体の前記第二流出側端面と相対する位置に排出口が設けられ、浄化後の浄化ガスを排出する浄化ガス排出部を有する缶体と
を備え、
前記目封止ハニカム構造体は、
前記第二流入側端面及び前記第二流出側端面の少なくともいずれか一方の端面中心領域における圧力損失が、前記端面中心領域の周囲に位置する端面外周領域の圧力損失と比べて大きくなるように、
前記端面中心領域は、前記第二流入側端面及び前記第二流出側端面において、いずれも前記目封止部が配設されているのに対し、
前記端面外周領域は、前記第二流入側端面にのみに前記目封止部が配設され、
前記圧力損失差に起因して、前記排気ガスを前記端面外周領域側に誘導する排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記端面中心領域は、
前記流入口を前記第二流入側端面に垂直に投影した領域を含み、
前記端面中心領域の中心領域面積は、
前記第二流入側端面と前記ハニカム触媒体を挟んで対向する前記排気ガス流入部の前記流入口の流入口断面積と同一または前記流入口断面積より大きく設定されている請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記端面中心領域の前記セルの開口率と前記端面外周領域の前記セルの開口率が異なる請求項1または2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記目封止ハニカム構造体は、
1または複数の角柱状の内側ハニカムセグメントと、
前記内側ハニカムセグメントを取り囲む複数の角柱状の外側ハニカムセグメントと
を備え、
前記内側ハニカムセグメントにおける前記第二流入側端面及び/または前記第二流出側端面は、前記端面中心領域に相当し、
前記外側ハニカムセグメントにおける前記第二流入側端面及び/または前記第二流出側端面は、前記端面外周領域に該当する請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記目封止部の前記配設基準は、
前記第二流入側端面及び/または前記第二流出側端面における前記セルをそれぞれ一つおきに交互に目封止し、格子状に前記目封止部を配設した構造、及び、前記第二流入側端面における前記セルの断面積と、前記第二流出側端面における前記セルの断面積とがそれぞれ異なるように前記目封止部を配設した構造の少なくともいずれか一方である請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項6】
前記第一ハニカム基材の隔壁の気孔率は、
前記第二ハニカム基材の隔壁の気孔率より小さく設定されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項7】
前記目封止ハニカム構造体の中心軸方向の長さに対する前記ハニカム触媒体の中心軸方向の長さの比の値が、0.1〜0.5である請求項1〜6のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項8】
前記ハニカム触媒体の直径に対する前記ハニカム触媒体の中心軸方向の長さの比の値が、0.1〜0.6である請求項1〜7のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項9】
前記目封止ハニカム構造体は、
前記第二ハニカム基材に担持された触媒を有し、
前記ハニカム触媒体の前記第一ハニカム基材に担持される前記触媒の単位体積当たりの担持量が、200〜400g/Lであり、
前記目封止ハニカム構造体の前記第二ハニカム基材に担持される前記触媒の単位体積当たりの担持量が、10〜120g/Lである請求項1〜8のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項10】
前記第一ハニカム基材の隔壁厚さが、50.8〜101.6μmの範囲である請求項1〜9のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項11】
前記ハニカム触媒体と前記目封止ハニカム構造体との間の距離が、1〜20mmである請求項1〜10のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項12】
前記缶体の前記排気ガス流入部及び前記ハニカム触媒体の前記第一流入側端面の間に設けられ、外周壁に複数の孔部が穿設された円筒状の整流部を更に備え、
前記流入口に対向する前記整流部の一端から取り込まれた前記排気ガスの前記ハニカム触媒体及び前記目封止ハニカム構造体の軸方向に直交する方向への流れを調整する請求項1〜11のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化装置に関する。更に詳しくは、直噴式ガソリンエンジンから排出される排気ガス中の微粒子を効率良く除去し、かつ排気ガスを効率よく浄化することが可能な排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、環境保護運動の活発化や、省資源化または省エネルギー化等の種々の要請によって、ガソリン等の燃料消費を抑え、排気ガスの発生量を少なくした状態で長距離、長時間の走行を可能とする優れた低燃費性能を有するエンジンの開発が進められている。特に、自動車の駆動源として多く使用されるガソリンエンジンにおいて、上記の低燃費化の要求を満たすため、燃料をシリンダ内に直噴化してエンジンを駆動する直噴式ガソリンエンジンに係る技術の開発が進められている。
【0003】
従来の一般的なガソリンエンジンは、上記の「直噴式」と異なり、主に「吸気ポート燃料噴射方式」が採用されている。この吸気ポート燃料噴射方式を採用したガソリンエンジンの場合、煤等の粒子状物質(PM:Particulate Matter)の発生量を抑えることが可能であり、粒子状物質による大気汚染や自然環境への影響等は特に大きなものではなかった。しかしながら、直噴式ガソリンエンジンと比べて燃費性能が劣る問題があった。
【0004】
一方、直噴式ガソリンエンジンの場合、通常のガソリンエンジンと比べて低燃費化を促進させることができる。しかしながら、粒子状物質の発生量が従来よりも過多となり、発生した粒子状物質を含む排気ガスを適切な処理を経て大気中に放出する必要があった。すなわち、粒子状物質の処理が煩雑となり、また処理に係る装置や設備が必要となった。
【0005】
一方、大型トラック等に搭載されるディーゼルエンジンの場合、ディーゼルエンジンの稼働によって発生する排気ガス中の粒子状物質を除去する目的で、ハニカム構造体の使用した捕集フィルタ(排気ガス浄化装置)が取り付けられている。排気ガス浄化装置に使用されるハニカム構造体は、両端が所定の配設基準に従って目封止された目封止部を備える目封止ハニカム構造体(特許文献1参照)が主に用いられる。これにより、ディーゼルエンジンから排出された排気ガスは、上記目封止ハニカム構造体の内部の流入し、多孔質性のセラミックス材料で形成された目封止ハニカム構造体の隔壁を通過することで、当該隔壁に粒子状物質が捕集され、堆積する。
【0006】
その結果、ディーゼルエンジンから排出された排気ガス中の粒子状物質が捕集フィルタによって除去され、捕集フィルタの通過後は清浄化された浄化ガスに転換することができる。しかしながら、ディーゼルエンジンとガソリンエンジンとでは、使用する燃料が相違するため、上記したディーゼルエンジン用の捕集フィルタをそのままガソリンエンジンに転用しても、良好な効率で粒子状物質を除去できなかった。
【0007】
そこで、本願出願人は、直噴式ガソリンエンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質の除去を効率的に行うことが可能であり、特に、排気ガスを処理する際に圧力損失が増大することなく、かつ、エンジンの始動直後であっても、高い浄化性能を発揮可能な排気ガス浄化装置の開発を既に提案している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−254034号公報
【特許文献2】特許第5584487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献2に記載の排気ガス浄化装置を用いることで、直噴式ガソリンエンジンから排出される排気ガスを、ハニカム構造体を用いた捕集フィルタを利用して効率的に浄化処理することができる。この排気ガス浄化装置は、セルの一部が目封止された目封止ハニカム構造体の上流側の位置に、三元触媒が担持されたハニカム触媒体を更に配設し、ハニカム触媒体の熱容量を減少させる目的で、目封止ハニカム構造体よりもセルの中心軸方向の長さが短い、薄板状のハニカム触媒体が使用されている。
【0010】
当該排気ガス浄化装置の場合、ハニカム触媒体及び目封止ハニカム構造体の端面中心(中央)付近の領域に相当する端面中心領域を、多くの排気ガスが流れ、端面中心領域の周囲に位置する端面外周領域は、ほとんど排気ガスが流れないことがあった。すなわち、排気ガス浄化装置の装置内部において、排気ガスの流れに偏りが生じ、排気ガスが多く流れる端面中心領域の付近で粒子状物質が多く捕集され、その他の領域(端面外周領域)では粒子状物質がほとんど捕集されないなどの、粒子状物質の捕集領域に大きな偏りが生じることがあった。
【0011】
そのため、端面中心領域のセルの隔壁に粒子状物質が堆積しやすくなり、長時間に亘る粒子状物質の浄化処理によって、端面中心領域のセルが目詰まりを起こすなどの不具合を生じることがあった。更に粒子状物質の堆積によって圧力損失が大きくなることがあった。したがって、排気ガス浄化装置における粒子状物質の浄化効率や浄化性能が著しく低下するなどの問題を生じることがあった。
【0012】
また、目封止ハニカム構造体の上流側に位置するハニカム触媒体においても、同様に端面中心領域の周囲に位置する端面外周領域は、ほとんど排気ガスが流れないことがあった。そのため、ハニカム触媒体の有効断面に対し、効率的な排気ガスの浄化が行われない問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、直噴式ガソリンエンジンから排出される排気ガスを、目封止ハニカム構造体及びハニカム触媒体の端面に対して偏りなく流入させることができ、粒子状物質の浄化効率を安定させ、かつ排気ガスを効率よく浄化する排気ガス浄化装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、上記課題を解決した排気ガス浄化装置が提供される。
【0015】
[1] 第一流入側端面から第一流出側端面まで延びる複数のセルを区画形成する格子状の隔壁を有する第一ハニカム基材、及び、前記第一ハニカム基材に担持された触媒を有し、前記セルの両端がそれぞれ開口してなるハニカム触媒体と、第二流入側端面から第二流出側端面まで延びる複数のセルを区画形成する格子状の隔壁を有する第二ハニカム基材、及び、前記第二流入側端面及び/または前記第二流出側端面における前記セルの開口部を予め規定された配設基準に従って目封止して配設された複数の目封止部を有する目封止ハニカム構造体と、前記ハニカム触媒体及び前記ハニカム触媒体の下流の位置に前記目封止ハニカム構造体をそれぞれ収容可能に形成され、前記ハニカム触媒体の前記第一流入側端面と相対する位置に流入口が設けられ、浄化対象の排気ガスが流入する排気ガス流入部及び前記目封止ハニカム構造体の前記第二流出側端面と相対する位置に排出口が設けられ、浄化後の浄化ガスを排出する浄化ガス排出部を有する缶体とを備え、前記目封止ハニカム構造体は、前記第二流入側端面及び前記第二流出側端面の少なくともいずれか一方の端面中心領域における圧力損失が、前記端面中心領域の周囲に位置する端面外周領域の圧力損失と比べて大きくなるように、前記端面中心領域は、前記第二流入側端面及び前記第二流出側端面において、いずれも前記目封止部が配設されているのに対し、前記端面外周領域は、前記第二流入側端面にのみに前記目封止部が配設され、前記圧力損失差に起因して、前記排気ガスを前記端面外周領域側に誘導する排気ガス浄化装置。
【0016】
[2] 前記端面中心領域は、前記流入口を前記第二流入側端面に垂直に投影した領域を含み、前記端面中心領域の中心領域面積は、前記第二流入側端面と前記ハニカム触媒体を挟んで対向する前記排気ガス流入部の前記流入口の流入口断面積と同一または前記流入口断面積より大きく設定されている前記[1]に記載の排気ガス浄化装置。
【0017】
[3] 前記端面中心領域の前記セルの開口率と前記端面外周領域の前記セルの開口率が異なる前記[1]または[2]に記載の排気ガス浄化装置。
【0018】
[4] 前記目封止ハニカム構造体は、1または複数の角柱状の内側ハニカムセグメントと、前記内側ハニカムセグメントを取り囲む複数の角柱状の外側ハニカムセグメントとを備え、前記内側ハニカムセグメントにおける前記第二流入側端面及び/または前記第二流出側端面は、前記端面中心領域に相当し、前記外側ハニカムセグメントにおける前記第二流入側端面及び/または前記第二流出側端面は、前記端面外周領域に該当する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の排気ガス浄化装置。
【0019】
[5] 前記目封止部の前記配設基準は、前記第二流入側端面及び/または前記第二流出側端面における前記セルをそれぞれ一つおきに交互に目封止し、格子状に前記目封止部を配設した構造、及び、前記第二流入側端面における前記セルの断面積と、前記第二流出側端面における前記セルの断面積とがそれぞれ異なるように前記目封止部を配設した構造の少なくともいずれか一方である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の排気ガス浄化装置。
【0020】
[6] 前記第一ハニカム基材の隔壁の気孔率は、前記第二ハニカム基材の隔壁の気孔率より小さく設定されている前記[1]〜[5]のいずれかに記載の排気ガス浄化装置。
【0021】
[7] 前記目封止ハニカム構造体の中心軸方向の長さに対する前記ハニカム触媒体の中心軸方向の長さの比の値が、0.1〜0.5である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の排気ガス浄化装置。
【0022】
[8] 前記ハニカム触媒体の直径に対する前記ハニカム触媒体の中心軸方向の長さの比の値が、0.1〜0.6である前記[1]〜[7]のいずれかに記載の排気ガス浄化装置。
【0023】
[9] 前記目封止ハニカム構造体は、前記第二ハニカム基材に担持された触媒を有し、前記ハニカム触媒体の前記第一ハニカム基材に担持される前記触媒の単位体積当たりの担持量が、200〜400g/Lであり、前記目封止ハニカム構造体の前記第二ハニカム基材に担持される前記触媒の単位体積当たりの担持量が、10〜120g/Lである前記[1]〜[8]のいずれかに記載の排気ガス浄化装置。
【0024】
[10] 前記第一ハニカム基材の隔壁厚さが、50.8〜101.6μmの範囲である前記[1]〜[9]のいずれかに記載の排気ガス浄化装置。
【0025】
[11] 前記ハニカム触媒体と前記目封止ハニカム構造体との間の距離が、1〜20mmである前記[1]〜[10]のいずれかに記載の排気ガス浄化装置。
【0026】
[12] 前記缶体の前記排気ガス流入部及び前記ハニカム触媒体の前記第一流入側端面の間に設けられ、外周壁に複数の孔部が穿設された円筒状の整流部を更に備え、前記流入口に対向する前記整流部の一端から取り込まれた前記排気ガスの前記ハニカム触媒体及び前記目封止ハニカム構造体の軸方向に直交する方向への流れを調整する前記[1]〜[11]のいずれかに記載の排気ガス浄化装置。
【発明の効果】
【0027】
本発明の排気ガス浄化装置によれば、目封止ハニカム構造体に設けられた第二ハニカム基材の第二流入側端面及び第二流出側端面の端面中心領域及び/または端面外周領域における排気ガスによる圧力損失をそれぞれ異ならせることができる。更に具体的には、端面中心領域付近の圧力損失を、端面外周領域の圧力損失に対して大きくすることができ、排気ガスがハニカム触媒体及び目封止ハニカム構造体の端面中心領域に偏って流れることが抑制され、第一流入側端面及び/または第一流出側端面、及び、第二流入側端面及び/または第二流出側端面の全体に亘って均一に排気ガスを流すことができる。これにより、排気ガスに含まれる粒子状物質を効率的に除去し、かつ排気ガスを効率よく浄化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態の排気ガス浄化装置の中心軸に沿って一部を切欠いた一部切欠斜視図である。
図2】排気ガス浄化装置の中心軸に平行な断面を模式的に示す説明図である。
図3】ハニカム触媒体の第一流入側端面を模式的に示す説明図である。
図4】目封止ハニカム構造体の第二流入側端面を模式的に示す説明図である。
図5】目封止ハニカム構造体の第二流出側端面を模式的に示す説明図である。
図6】目封止ハニカム構造体の目封止部の配設基準の別例構成を模式的に示す説明図である。
図7】目封止ハニカム構造体の目封止部の配設基準の別例構成を模式的に示す説明図である。
図8】目封止ハニカム構造体の目封止部の配設基準の別例構成を模式的に示す説明図である。
図9】目封止ハニカム構造体の目封止部の配設基準の別例構成を模式的に示す説明図である。
図10】目封止ハニカム構造体の別例構成を模式的に示す斜視図である。
図11】缶体内部に整流部を設けた排気ガス浄化装置の別例構成を示す中心軸に沿って一部を切欠いた一部分解切欠斜視図である。
図12図11の別例構成の排気ガス浄化装置の中心軸に平行な断面を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明の排気ガス浄化装置の実施の形態について詳述する。なお、本発明の排気ガス浄化装置は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の設計の変更、修正、及び改良等を加え得るものである。
【0030】
[1]排気ガス浄化装置:
本実施形態の排気ガス浄化装置1は、図1図5に示されるように、第一流入側端面11から第一流出側端面12まで延びる複数のセル13を区画形成する格子状の隔壁14を有する第一ハニカム基材15、及び、第一ハニカム基材15に担持された触媒を有し、セル13の両端がそれぞれ開口してなるハニカム触媒体10と、第二流入側端面21から第二流出側端面22まで延びる複数のセル23を区画形成する格子状の隔壁24を有する第二ハニカム基材25、及び、第二流入側端面21及び/または第二流出側端面22におけるセル23の開口部を予め規定された配設基準に従って目封止して配設された複数の目封止部26を有する目封止ハニカム構造体20と、ハニカム触媒体10及び目封止ハニカム構造体20をそれぞれ収容可能に形成され、排気ガス流入部31及び浄化ガス排出部32を有する金属製の缶体30とを主に備えている。
【0031】
ここで、ハニカム触媒体10は、第一ハニカム基材15の第一流入側端面11を缶体30の排気ガス流入部31の流入口33と相対するようにして当該缶体30の内部に収容され、一方、目封止ハニカム構造体20は、第二流出側端面22を缶体30の浄化ガス排出部32の排出口34と相対するようにして当該缶体30の内部に収容される。すなわち、缶体30の内部の上流側にハニカム触媒体10が位置し、その下流側の位置に目封止ハニカム構造体20が位置している(図1及び図2参照)。このとき、缶体30内に収容されたハニカム触媒体10及び目封止ハニカム構造体20は、ハニカム触媒体10(第一ハニカム基材15)の第一流出側端面12と、目封止ハニカム構造体20(第二ハニカム基材25)の第二流入側端面21とが互いに相対する位置に設置され、更に第一流出側端面12及び第二流入側端面21の間に所定の空隙(距離W)が設けられている。なお、第一流出側端面12及び第二流入側端面21の間の距離Wは、本実施形態では1〜20mmの範囲となるように設定されている。
【0032】
ここで、缶体30は金属製材料から主に構成され、上記の円柱状のハニカム触媒体10及び目封止ハニカム構造体20をそれぞれ内包して収容可能な構造及び内径から構成され、ハニカム触媒体10の直径D1及び目封止ハニカム構造体20の直径D2より大きな内径D3を有する円筒状の缶体本体35と、缶体本体35の両端に取設された上述の排気ガス流入部31及び浄化ガス排出部32とをそれぞれ備えている。
【0033】
排気ガス流入部31は、直噴式ガソリンエンジンの排気ガス排出部(図示しない)と接続され、排気ガスEGを排気ガス浄化装置1まで導くための、缶体本体35より細径の円筒状部材で構成された導入管36と、導入管36の一端の流入口33から缶体本体35まで拡径した截頭円錐形状の拡径部37とを有して構成されている。一方、浄化ガス排出部32は、目封止ハニカム構造体20を通過し、清浄化された浄化ガスCGを外部に排出するものであり、缶体本体35の他端から縮径した截頭円錐形状の縮径部38と、縮径部38の一端の排出口34と接続し、浄化ガスCGを外部に排出する細径の円筒状の排出管39とを有して構成されている。
【0034】
ここで、導入管36及び排出管39と、拡径部37及び縮径部38とはそれぞれ同一形状で構成されている。本実施形態の排気ガス浄化装置1は、缶体30の内部にハニカム触媒体10を目封止ハニカム構造体20の上流位置に配置することで、排気ガス流入部31の流入口33とハニカム触媒体10の第一流入側端面11を相対させることができる。その結果、直噴式ガソリンエンジンから送られた高温の排気ガスEGの熱を利用してハニカム触媒体10の温度を上げることができ、担持された触媒が高い活性を示す温度まで短時間で到達させることができる。これにより、エンジンの始動開始直後から高い触媒活性による排気ガスEGの浄化処理を効率良く行うことができる。
【0035】
前述したように、缶体30の円筒状の缶体本体35の内径D3は、ハニカム触媒体10及び目封止ハニカム構造体20の直径D1,D2よりも大きくなるように設計されている。したがって、缶体30の内部にハニカム触媒体10等をそのまま収容した場合、缶体本体35の内周壁面40と、ハニカム触媒体10の外周壁面16及び目封止ハニカム構造体20の外周壁面27との間に隙間が生じ、缶体30の内部でハニカム触媒体10等が移動可能となり、収容状態が安定しない。そこで、ハニカム触媒体10等の外周壁面16等と、缶体本体35の内周壁面40との間に緩衝性素材からなるクッション材41が介設されている。これにより、上記隙間にクッション材41を充填することで、ハニカム触媒体10等の缶体本体35の内部での移動を規制し、収容状態を安定させることができる。
【0036】
更に、缶体30の内部のハニカム触媒体10及び目封止ハニカム構造体20の前後方向(図2における紙面左右方向に相当)への移動を規制するために、断面L字形状の一対のストッパ部材42が内周壁面40に沿って取設されている。ハニカム触媒体10の第一流入側端面11及び第一流出側端面12、及び、目封止ハニカム構造体20の第二流入側端面21及び第二流出側端面22とそれぞれ当接し、ハニカム触媒体10及び目封止ハニカム構造体20を挟み込むようにして固定する一対のストッパ部材42によって、缶体30の内部でのハニカム触媒体10等の前後方向への移動が規制される。
【0037】
上記クッション材41及びストッパ部材42によって、ハニカム触媒体10及び目封止ハニカム構造体20を缶体本体35の内部に安定した状態で収容することができる。更に、缶体30に衝撃が加わった場合であっても、クッション材41等によって当該衝撃を吸収し、ハニカム触媒体10等に割れや欠けなどが生じる可能性を低く抑えることができる。
【0038】
本実施形態の排気ガス浄化装置1に使用されるハニカム触媒体10は、図1〜3に示すように、円柱状の構造を呈し、第一流入側端面11から第一流出側端面12まで延びる複数のセル13を区画形成する四角形格子状の隔壁14を有している。一方、排気ガス浄化装置1に使用される目封止ハニカム構造体20は、図1,2、及び図4,5に示すように、円柱状の構造を呈し、第二流入側端面21から第二流出側端面22まで延びる複数のセル23を区画形成する四角形格子状の隔壁24を有し、第二流入側端面21及び第二流出側端面22における端面中心領域C(図4及び図5の破線円内に相当)の圧力損失が、端面中心領域Cの周囲に位置する端面外周領域O(図4及び図5の破線円外に相当)の圧力損失と比べて大きくなるように設計されている。
【0039】
端面中心領域Cにおいて、第二流入側端面21に開口した所定のセル23aの開口部と、第二流出側端面22の残余のセル23bの開口部をそれぞれ目封止する目封止部26が、予め規定された配設基準にしたがって規則正しく配設されている(図4及び図5等参照)。本実施形態では、端面中心領域Cのセル23aを一つおきに交互に目封止し、更に下段を一つずつずらして交互に目封止することによって、複数の目封止部26を格子状に配した市松模様(チェッカーボードパターン)を呈するように配設されている。
【0040】
一方、端面外周領域Oの第二流入側端面21では、第二流入側端面21の端面中心領域Cと同様に、一つおきに交互に目封止し、下段を一つずつずらして交互に目封止することによって、複数の目封止部26を格子状に配設している(図4参照)。これに対し、端面外周領域Oの第二流出側端面22では、目封止部26の配設をしていない(図5参照)。すなわち、端面外周領域Oの第二流出側端面22におけるセル23bは、全て開口されている。つまり、端面中心領域Cは、第二流入側端面21及び第二流出側端面22において、いずれも目封止部26が配設されているのに対し、端面外周領域Oは、第二流入側端面21のみに目封止部26が配設されている。
【0041】
これにより、端面中心領域Cと比べて端面外周領域Oの方が圧力損失が小さくなり、排気ガスEGが流れ込み易くなる。このように、第二流入側端面21及び第二流出側端面22の間の目封止部26の配設基準を変更することで、端面中心領域C及び端面外周領域Oにおけるセル23の開口率を異なるものとすることができ、排気ガスEGの流れを任意に制御し、端面中心領域Cのみに偏って排気ガスEGが流れることを抑制することができる。なお、上記した目封止部26の配設基準を変化させる以外に、例えば、セルの開口形状をHAC構造(詳細は後述する)にすることで、端面中心領域C及び端面外周領域Oのそれぞれのセル23の開口率を異なるものとしてもよい。これにより、端面中心領域C及び端面外周領域Oの間で圧力損失差を生じさせることができる。
【0042】
ここで、端面中心領域Cは、缶体30の流入口33を第二流入側端面21(または第二流出側端面22)にそのまま垂直に投影した領域を少なくとも含み、端面中心領域Cの中心領域面積(図4及び図5の破線円内の面積に相当)は、第二流入側端面21とハニカム触媒体10を挟んで対向する排気ガス流入部31の流入口33における流入口断面積と同一若しくはそれより大きくなるサイズに設定されている。
【0043】
排気ガス流入部31から缶体30の内部に流入した排気ガスEGは、一般に直進性を示す性質がある。そのため、従来の排気ガス浄化装置の場合、流入口33から拡径部37に至った排気ガスEGは、流入口33の口径に沿ってそのまま進み、上下方向(図2における紙面上下方向に相当)及び左右方向(図2における紙面手前から奥行方向に相当)に大きく拡がることなく、真っ直ぐにハニカム触媒体10の第一流入側端面11に到達しようとする。
【0044】
その後、ハニカム触媒体10による触媒活性反応を受けた排気ガスEGは、第一流出側端面12から前述の隙間(距離W)を経て、目封止ハニカム構造体20の第二流入側端面21に至る。このときも排気ガスEGは、直進性を示して流れるため、第二流入側端面21には目封止ハニカム構造体20の端面中心領域Cの近傍で多くの排気ガスEGが流入しようとする。
【0045】
しかしながら、本実施形態の排気ガス浄化装置1は、目封止ハニカム構造体20の端面中心領域Cの圧力損失を、端面外周領域Oよりも大きくすることで、流入口33から直進しようとする排気ガスEGの流れを規制し、排気ガスEGの一部を端面中心領域Cの周囲の端面外周領域Oに向けることができる。すなわち、缶体30の内部において、端面中心領域Cと端面外周領域Oとの間で圧力損失に違いが生じている場合、圧力損失の小さい端面外周領域O側に排気ガスEGが流れる。
【0046】
更に、係る圧力損失の違いは、目封止ハニカム構造体20の上流側に位置するハニカム触媒体10を通過する排気ガスEGの流れ方向にも影響を与える。そのため、流入口33からハニカム触媒体10の第一流入側端面11に向かう排気ガスEGにおいても、第一流入側端面11の端面中心領域(図示しない)から端面外周領域(図示しない)に向かう排気ガスEGの流れを生じさせることができる。そのため、目封止ハニカム構造体20による粒子状物質の堆積による偏りを抑制するとともに、触媒活性反応もハニカム触媒体10の全面に亘って均一に生じさせることができる。すなわち、触媒作用を有効に発揮するハニカム触媒体10の有効断面を効率的に使用することができ、ハニカム触媒体10の端面中心領域に偏って排気ガスEGが流れることがない。
【0047】
目封止ハニカム構造体20に配設される目封止部26を構成する材料は、特に限定されるものではなく、セラミック原料、アルコール、及び有機バインダ等を組み合わせた目封止材から作製することが可能であり、セラミック原料としては、後述する第一ハニカム基材15または第二ハニカム基材25と同一又は同種のセラミック原料であることが好ましい。これにより、焼成時における高温の挙動を同一にすることができ、隔壁24及び目封止部26の間で熱膨張や熱収縮による無理な負荷が加わることがなく、隔壁24及び目封止部26を強固に結合させることができる。
【0048】
[2]ハニカム触媒体:
本実施形態の排気ガス浄化装置1に使用されるハニカム触媒体10は、図1図3に示すように、円柱状の構造を呈し、第一流入側端面11から第一流出側端面12に至る複数のセル13を区画形成する多孔質素材の格子状の隔壁14を有する第一ハニカム基材15を備えており、上記の目封止ハニカム構造体20のように、複数の目封止部26によってセル13の両端が塞がれていない、いずれの端面11,12がそれぞれ開口している。ここで、ハニカム触媒体10の直径D1に対するハニカム触媒体10の中心軸方向(図1における一点鎖線A参照。)の長さL1の比(=L1/D1)の値が、0.1〜0.6の範囲となるように設定されている。この比は、0.15〜0.35の範囲であることが更に好ましく、0.2〜0.3の範囲であることが特に好ましい。
【0049】
上記長さの比の値が0.1未満の場合、排気ガスEGが第一ハニカム基材15内に滞留する時間が短くなり、排気ガスEGの熱によってハニカム触媒体10が十分な温度まで昇温せず、エンジン始動直後における浄化性能が十分な効果を発揮しないおそれがある。一方、係る比が0.6超の場合、ハニカム触媒体10の重量が嵩み、重くなる。すなわち、密度が大きくなりすぎ、排気ガスEGの熱によってハニカム触媒体10の触媒が十分に活性する温度に到達するまでに時間を要し、排気ガスEGの浄化性能が十分に発揮されない可能性がある。そのため、係る比の値が上記範囲内となるように規定されている。
【0050】
更に、ハニカム触媒体10と目封止ハニカム構造体20との関係において、ハニカム触媒体10の第一ハニカム基材15の隔壁14の気孔率は、目封止ハニカム構造体20の第二ハニカム基材25の隔壁24の気孔率に対して小さくなるように設定されている。また、目封止ハニカム構造体20の中心軸方向(一点鎖線A)の長さL2に対するハニカム触媒体10の中心軸方向の長さL1の比(=L1/L2)の値が、0.1〜0.5に設定される。
【0051】
ハニカム触媒体10のセル13は、第一流入側端面11から第一流出側端面12まで延びる排気ガスEGの流れる流路が確保されており、目封止ハニカム構造体20のように目封止部26によってセル13が塞がれていない。そのため、ハニカム触媒体10の隔壁14に比較的多量の触媒を担持した場合であっても、ハニカム触媒体10の全体として圧力損失の低下を招来することがない。
【0052】
例えば、ハニカム触媒体10の隔壁14に担持される触媒の単位体積当たりの担持量は、200〜400g/Lの範囲となるように調整することができる。なお、目封止ハニカム構造体20の隔壁24は、触媒が担持されている、或いは担持されていない、のいずれであっても構わない。このとき、目封止ハニカム構造体20の隔壁24に対する担持量は、10〜120g/Lの範囲となるように調整され、ハニカム触媒体10の隔壁14に対する単位体積当たりの触媒の担持量よりも小さくする必要がある。かかる程度に担持量を抑えることで、目封止ハニカム構造体20における触媒による圧力損失の影響を小さくすることができる。
【0053】
更に、ハニカム触媒体10に担持される触媒の単位体積当たりの担持量は、前述のように、200〜400g/Lの範囲に設定され、200〜300g/Lであることが更に好ましく、200〜250g/Lの範囲であることが特に好ましい。ここで、担持量が200g/L未満であると、隔壁14に担持された触媒の担持量が不足するため、触媒活性反応の起因する熱量の発生が抑えられ、触媒が活性を示す温度までハニカム触媒体が昇温するのに多くの時間を要する可能性がある。そのため、エンジンの始動開始直後からの効率的な排気ガスEGの浄化が困難となる。一方、400g/Lを超える量の触媒を担持した場合、セル13の流路が狭くなるおそれがあり、ハニカム触媒体10の全体において圧力損失が高くなるおそれがある。そこで、上記範囲に担持量が含まれるように調整が行われる。
【0054】
図3は、排気ガス浄化装置1に使用されるハニカム触媒体10の第一流入側端面11を示す平面図である。なお、ハニカム触媒体10の外観形状は、上記円柱状のものに限定されるものではなく、例えば,楕円柱状、四角柱状等のものであっても構わない。更に、ハニカム触媒体10の大きさは、特に限定されるものではなく、例えば、中心軸方向の長さL1が30〜200mmのものが挙げられる。
【0055】
ハニカム触媒体10の第一ハニカム基材15の隔壁14の隔壁厚さは、50.8〜101.6μmの範囲のものが好ましく、50.8〜75μmの範囲のものが更に好ましく、65〜75μmの範囲のものが特に好ましい。50.8μm未満であると、ハニカム触媒体10の強度が低下するおそれがある。一方、101.6μmを超えると、排気ガスEGがセル13内を通過するときの圧力損失が大きくなる可能性が高い。なお、隔壁厚さは、中心軸方向に平行な断面を顕微鏡観察によって測定した値である。
【0056】
ハニカム触媒体10の第一ハニカム基材15の隔壁14の気孔率は、目封止ハニカム構造体20の第二ハニカム基材25の隔壁24の気孔率よりも小さく設定されている。これにより、ハニカム触媒体10の強度を確保することができる。ハニカム触媒体10の第一流入側端面11における開口率が、目封止ハニカム構造体20の第二流入側端面21における開口率よりも大きい場合、ハニカム触媒体10の熱容量が目封止ハニカム構造体の20の熱容量に比べて小さくなるため、ハニカム触媒体10の方が目封止ハニカム構造体20に比べて昇温速度が速い。しかしながら、ハニカム触媒体10の硬度が十分でなくなるおそれがある。
【0057】
そこで、隔壁14の気孔率を、隔壁24の気孔率よりも小さくすることが好ましい。更に、ハニカム触媒体10が速やかに昇温するため、排気ガスEGの熱を利用してハニカム触媒体10を昇温させることが可能となり、これに伴って目封止ハニカム構造体20を速やかに昇温させることができる。
【0058】
隔壁14の気孔率は、特に限定されるものではないが、例えば、20〜50%の範囲であることが好ましく、25〜38%の範囲であることが更に好ましく、25〜30%の範囲であることが特に好ましい。気孔率が20%未満の場合、圧力損失が増大するおそれがあり、一方、50%超の場合、ハニカム触媒体10が脆くなり、欠落しやすくなる。なお、隔壁14の気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0059】
上記気孔率の隔壁14において、隔壁14の平均細孔径は、5〜30μmであることが好ましく、10〜25μmの範囲であることが更に好ましい。隔壁14の平均細孔径が5μm未満であると、触媒と隔壁14の表面との密着性が十分に得られず、触媒層が剥離するおそれがある。一方、30μm超であると、ハニカム触媒体10が脆くなり、欠落しやすくなる。隔壁14の平均細孔径は、気孔率と同様に、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0060】
ハニカム触媒体10を構成する第一ハニカム基材15は、セラミックを主成分とするものである。隔壁14の材質としては、例えば、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの中でも、熱膨張係数が小さく、かつ耐熱衝撃性に優れるコージェライトを使用して第一ハニカム基材15を構成することが特に好ましい。
【0061】
加えて、ハニカム触媒体は、その最外周に外周壁を有するものであっても構わない。外周壁は、成形の際に多孔質基材と一体的に形成される成形一体壁であることが特に好適であるとともに、多孔質基材の外周を研削した後、セラミックセメント等で外周壁を構築するものであってもよい。なお、成形一体壁の場合、ハニカム触媒体10と同じ材質であることが好ましく、一方、セラミックセメント等で外周壁を構築する場合、共素地にガラス等のフラックス成分等を加えた材料を使用するものであってもよい。
【0062】
第一ハニカム基材15に担持される触媒としては、例えば、「三元触媒」を用いることができる。三元触媒は、主に炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NO)を浄化する触媒であり、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を含むものであっても構わない。三元触媒により、炭化水素は水と二酸化炭素に、一酸化炭素は二酸化炭素に、窒素酸化物は窒素にそれぞれ酸化または還元反応によって浄化される。
【0063】
[3]目封止ハニカム構造体:
図4及び図5は、排気ガス浄化装置1に使用される目封止ハニカム構造体20の第二流入側端面21(図4)及び第二流出側端面22(図5)を示す平面図であり、本実施形態において目封止ハニカム構造体20は、円柱状の構造を呈するものである。目封止ハニカム構造体20の大きさは、例えば、中心軸方向の長さL2が50〜200mmのものが挙げられる。また、目封止ハニカム構造体20の直径D2は、80〜180mmであるものが好適である。
【0064】
目封止ハニカム構造体20の第二ハニカム基材25の隔壁24の隔壁厚さは、127〜508μmの範囲のものが好ましく、250〜400μmであることが更に好ましく、250〜350μmの範囲のものが特に好ましい。127μm未満であると、目封止ハニカム構造体20の強度が低下するおそれがある。一方、508μmを超えると、排気ガスEGがセル23内を通過するときの圧力損失が大きくなる可能性が高い。なお、隔壁厚さは、中心軸方向に平行な断面を顕微鏡観察によって測定した値である。
【0065】
第二ハニカム基材25の隔壁24の気孔率は、特に限定されるものではないが、例えば、35〜80%の範囲であることが好ましく、38〜65%の範囲であることが更に好ましく、45〜65%の範囲であることが特に好ましい。気孔率が35%未満の場合、圧力損失が増大するおそれがあり、一方、80%超の場合、目封止ハニカム構造体20が脆くなり、欠落しやすくなる。なお、隔壁24の気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。上記範囲において、前述のように隔壁24に対して隔壁14の気孔率が小さくなるように設定されている。上記気孔率の隔壁24において、隔壁24の平均細孔径は、7〜40μmであることが好ましく、8〜35μmの範囲であることが更に好ましい。隔壁24の平均細孔径が7μm未満であると、粒子状物質の堆積が少ない場合でも圧力損失が増大するおそれがある。一方、40μm超であると、目封止ハニカム構造体20が脆くなり、欠落しやすくなり、粒子状物質の捕集性能が低下する可能性が高い。隔壁24の平均細孔径は、気孔率と同様に、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0066】
第二ハニカム基材25は、第二流入側端面21の直径D2に対する中心軸方向の長さL2の比(=L2/D2)の値が、0.5〜1.5の範囲であることが好ましく、0.8〜1.5の範囲であることが更に好ましく、1.1〜1.3の範囲であることが特に好ましい。ここで、かかる比が0.5未満であると、第二ハニカム基材25の中心軸方向の長さが短くなり過ぎるため、濾過可能面積が小さくなり、排気ガスEGに含まれる粒子状物質等の捕集効率が悪化し、かつ圧力損失が上昇するおそれがある。一方、当該比の値が、1.5を超える場合、第二ハニカム基材25の中心軸方向の長さL2が長すぎるため、セル23における圧力損失が増大し、目封止ハニカム構造体20の全体の圧力損失が過大になるおそれがある。
【0067】
第二ハニカム基材25は、セラミックを主成分とするものであり、前述した第一ハニカム基材15と同様のものを使用することができる。更に、ハニカム触媒体10と同様に、目封止ハニカム構造体20もその最外周に外周壁を有するものであっても構わない。更に、第二ハニカム基材25の隔壁24に担持される触媒としては、第一ハニカム基材15と同様に「三元触媒」の使用が例示される。
【0068】
[4]目封止部の配設基準(パターン):
本実施形態の排気ガス浄化装置1における目封止ハニカム構造体20の第二流入側端面21及び/または第二流出側端面22のセル23を目封止する目封止部26の配設基準として、図4及び図5に示すように、所謂「市松模様(またはチェッカーボードパターン)」のように第二流入側端面21の全面に亘って格子状に目封止部26を配設し(第一パターンP1)、一方、第二流出側端面22の端面中心領域Cに限定して同様の配設基準で目封止部26を配設したもの(第二パターンP2)を例示した。しかしながら、本発明の排気ガス浄化装置1において、端面中心領域C及び端面外周領域Oの間で圧力損失に差を生じさせることができ、かつ排気ガスEGが流れ込み易い端面中心領域Cの圧力損失を端面外周領域Oよりも大きなものであれば、目封止部26の配設基準は特に限定されるものではない。
【0069】
例えば、第二流入側端面21及び第二流出側端面22のそれぞれの端面中心領域Cに限定して、市松模様の配設基準にしたがった格子状の目封止部を設けるものであっても、或いは、前述した本実施形態における第二流入側端面21及び第二流出側端面22の目封止部26の第一パターンP1及び第二パターンP2を逆転させたものであっても構わない。いずれの場合であっても、端面中心領域Cの圧力損失が端面外周領域Oの圧力損失より大きくすることができる。その結果、目封止ハニカム構造体20の端面中心領域Cに偏って排気ガスEGが流れることがなく、第二流入側端面21及び/また第二流出側端面22の全体に亘って均一に排気ガスEGを流すことができる。更に、目封止ハニカム構造体20の上流の位置に配設されたハニカム触媒体10における排気ガスEGの流れを併せて制御することができ、目封止ハニカム構造体20と同様に、端面中心領域Cに偏って排気ガスEGが流れることを抑制できる。
【0070】
更に、上記第一パターンP1及び第二パターンP2以外の目封止部26の配設基準の別例構成について図6〜9に示す。なお、図6〜9において、図示を簡略化するため、第二流入側端面21に配設されるセル23及びセル23を目封止した目封止部26を模式的に示す。ここで、図6〜9の紙面左方側が圧力損失の大きい端面中心領域C側を表し、紙面右方側が圧力損失の小さい端面外周領域O側を表している。更に、各領域C,Oのおおよその境界を示すため、中央付近に破線からなる領域境界線Mを示している。図6〜9において、黒色塗りつぶしのハッチングを施した箇所がセル23を目封止した目封止部26を示している。
【0071】
図6に示す第三パターンP3は、端面中心領域Cに、第二流入側端面21と第二流出側端面22との間でセル23cの断面形状を異ならせた構造(HAC構造:High Ash Capacity構造)を採用し、端面外周領域Oに前述の市松模様の格子状の目封止部26を配設したものである。ここで、HAC構造のセル23cは、四角形状のセルの四隅を切り落とし、断面八角形状にしたものである。このとき、第二流入側端面21のセル23に対して目封止部26が配設された場合、第二流出側端面22の断面八角形状の残余のセル(図示しない)に対して目封止部26が配設されている。その結果、HAC構造を採用した配設基準で目封止された端面中心領域Cは、第二流出側端面22で四角形状のセルに比べて目封止される面積が大きな断面八角形状のセルが目封止されているため、互いのセルの開口率が異なることにより、端面外周領域Oと比べて圧力損失が大きなものとなる。したがって、圧力損失差に起因する排気ガスEGの端面外周領域O側への誘導が可能となる。更に、目封止ハニカム構造体20の上流の位置に配設されたハニカム触媒体10における排気ガスEGの流れを制御し、端面外周領域側へ誘導することができる。
【0072】
図7に示す第四パターンP4は、端面中心領域Cにおいて図6と同様のHAC構造を採用し、更に、端面外周領域OにはHAC構造を逆転させ、断面八角形状のセル23dを目封止した逆HAC構造を採用したものである。図8に示す第五パターンP5は、図6及び図7と異なり、端面中心領域Cにおいて、目封止部26を配設したセル23aの下段に位置するセル23dに対して目封止部26を設けず、更に下段に位置するセル23eに一つずつずらして交互に目封止部26を配設したものである。一方、端面外周領域Oは、前述した市松模様の格子状の目封止部26を配設したものである。図9に示す第六パターンP6は、図8の端面中心領域Cと同様の第五パターンP5を端面中心領域Cに採用し、更に端面外周領域Oに図8の端面中心領域Cの逆構造のパターンを採用したものである。
【0073】
これらの構成は、第二流入側端面21及び第二流出側端面22のそれぞれにおいて、任意に設定することが可能である。
【0074】
更に、本発明の排気ガス浄化装置に使用される目封止ハニカム構造体50の別例構成として、図10に示すような複数の角柱状のハニカムセグメント51,52を採用するものであっても構わない。具体的に説明すると、目封止ハニカム構造体50は、縦2列及び横2列に組み合わせた合計4個の内側ハニカムセグメント51と、断面正方形状に組み合わせた四つの内側ハニカムセグメント51の周囲を取り囲むように配された合計12個の外側ハニカムセグメント52とを備え、最終的に16個のハニカムセグメント51,52を用いて構築するものであっても構わない。
【0075】
ここで、内側ハニカムセグメント51の第二流入側端面53及び第二流出側端面54の各セル55には、それぞれ目封止部56が市松模様となるように格子状に交互に一つおきに配設されている。一方、外側ハニカムセグメント52には、第二流入側端面53及び第二流出側端面54の各セル55にはいずれも目封止部56が配設されておらず、外部に対して開口されている。ここで、4個の内側ハニカムセグメント51の第二流入側端面53及び第二流出側端面54のいずれもが本発明における端面中心領域Cに相当し、一方、12個の外側ハニカムセグメント52の第二流入側端面53及び第二流出側端面54のいずれもが本発明における端面外周領域Oに相当する。上記構成とすることにより、内側ハニカムセグメント51及び外側ハニカムセグメント52の組み合わせにより、圧力損失差を容易に発生させることができる。
【0076】
加えて、本発明の別例構成として、図11及び図12に示すような排気ガス浄化装置60を構成するものであってもよい。なお、図11及び図12において、既に説明した排気ガス浄化装置1と同一の構成については、同一番号を付し詳細な説明を省略するものとする。
【0077】
別例構成の排気ガス浄化装置60は、図1等で示した排気ガス浄化装置1の構成に加え、缶体30の排気ガス流入部31及びハニカム触媒体10の第一流入側端面11の間に、外周壁をなす円筒状部材62に円形の孔部63が複数穿設された円筒形状の整流部61が取設されたものである。ここで、円筒形状の整流部61の外径は、排気ガス流入部31の流入口33の内径と一致し、缶体30の内部に導入された排気ガスEGは、整流部61の内部を必ず通過するように制御される。更に、整流部61は、高温の排気ガスEGに晒されても耐え得るようにステンレス等の金属製材料を用いて構成されている。
【0078】
上記した整流部61を缶体30の内部に備えることにより、流入口33からハニカム触媒体10の第一流入側端面11の間の排気ガスEGの流れを制御することができる。更に具体的に説明すると、排気ガス浄化装置60に導入された排気ガスEGの流量(或いは、流速)の違いによって、缶体30の内部における当該排気ガスEGの挙動は変化する。すなわち、導入開始から所定の流量まで(=低流量状態)の排気ガスEGは、缶体30の内部をゆっくり進むため、流入口33から拡径部37の拡がりに沿ってハニカム触媒体10の軸方向に直交する方向、換言すれば流入口33から円錐形状に拡がる方向に沿って流れ易くなる。
【0079】
ここで、一般的な直噴式ガソリンエンジンの場合、エンジン始動時や始動直後の当該エンジンが十分に暖められていない状態のときに、スス等の粒子状物質の大部分が発生することが知られている。一方、エンジンの始動直後は、アクセルの開度を抑え、燃料供給量を低くしたアイドリング状態或いは低回転状態での駆動が行われる。そのため、排気ガス浄化装置60に導入される排気ガスEGは低流量状態となる。したがって、係る低流量状態で発生した多量の粒子状物質を確実に捕集するため、目封止ハニカム構造体20の目封止部26が特に設けられた端面中心領域Cに向けて排気ガスEGを送る必要がある。
【0080】
先に説明したように、端面中心領域Cに複数の目封止部26が設けられ、一方、端面外周領域Oに目封止部26が設けられていない配設基準に従った目封止ハニカム構造体20(例えば、図5参照)は、それぞれの領域C,Oにおける圧力損失差が大きくなるため、排気ガスEGは端面外周領域Oに向かって流れ易くなる。その結果、低流量状態の際の目封止ハニカム構造体20の捕集効率が著しく低下し、粒子状物質は十分に捕集されることなく、そのまま外部に放出される可能性が高くなる。この問題を本発明の別例構成の排気ガス浄化装置60は解消することができる。
【0081】
すなわち、流入口33及びハニカム触媒体10の間に円筒形状の整流部61を設けることによって、低流量状態のときの排気ガスEGの軸方向に直交する方向への拡がりを抑制し、ハニカム触媒体10及び目封止ハニカム構造体20の中央付近(端面中心領域C)に向けて排気ガスEGを導くことができる。一方、十分にエンジンが暖められ、高流量状態になった際には、整流部61に設けられた複数の孔部63から排気ガスEGの一部が軸方向に直交する方向に向かって分散して流れるように、排気ガスEGの流れを整えることができる。
【0082】
本発明の別例構成の排気ガス浄化装置60に用いられる整流部61は、図11及び図12に示したものに限定されるものではない。例えば、図11等において、円筒状部材62に複数の真円状の孔部63を設けるものを示したが、これに限定されるものではなく、例えば、楕円孔、角孔、或いは線状孔など種々の形状のものを用いることが可能であり、低流量状態及び高流量状態のそれぞれにおいて、排気ガスEGの流れを整えることができるものであれば構わない。更に、円筒状部材62に穿設する孔部63の数、孔径等のサイズ、及び各孔部63の配置(レイアウト)等に関しても任意に決定することができる。
【0083】
以下、本発明の排気ガス浄化装置の実施例について説明するが、本発明の排気ガス浄化装置は、これらの実施の形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0084】
本発明の排気ガス浄化装置の実施例1〜18及び比較例1として、ハニカム触媒体の直径、長さ、L1/D1、セル密度、隔壁厚さ、気孔率、細孔径、及び触媒担持率と、目封止ハニカム構造体の直径、長さ、L1/L2、セル密度、隔壁厚さ、気孔率、細孔径、配設基準、及び触媒担持率と、ハニカム触媒体及び目封止ハニカム構造体の間の距離(担体間の距離)をまとめたものを下記の表1に示す。
【0085】
比較例1は、目封止部を一つ置きに交互に配設した従来の配設基準のパターンで構成された目封止ハニカム構造体を用いた排気ガス浄化装置を示す。更に、実施例1及び実施例7〜17は上記第三パターンP3の配設基準に従って目封止部が配設されたものを示し、実施例2は上記第四パターンP4、実施例3は上記第五パターンP5、及び実施例4は上記第六パターンP6の配設基準に従ってそれぞれ目封止部が配設されたものである。一方、実施例5は、第二流入側端面の全面に対して第一パターンP1で目封止部を配設し、第二流出側端面の中心付近にのみ第二パターンP2で目封止部を配設したものである。更に、実施例6は、第二流入側端面の中心付近にのみ第二パターンP2で目封止部を配設し、第二流出側端面の中心付近にのみ第二パターンP2で目封止部を配設したものである。
【0086】
【表1】
【0087】
上記実施例1〜18の排気ガス浄化装置に対し、以下に示す測定方法に従って、(1)浄化率、(2)PM排出個数、及び(3)圧力損失をそれぞれ計測し、(1)〜(3)の項目についてそれぞれ評価した。また、(1)〜(3)の評価を踏まえ、排気ガス浄化装置についての(4)総合評価を行った。
【0088】
(1)浄化率の測定方法
上記の実施例及び比較例に係る排気ガス浄化装置を、排気量2.0リットルの直噴式ガソリンエンジンを搭載した乗用車の排気系にそれぞれ装着する。その後、シャシダイナモによる車両試験として、国際調和排ガス試験モード(WLTC)の運転条件に従って運転した際の排気ガス中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NO)のエミッションを測定し、エミッション値を得た。得られたエミッション値を、基準となる比較例1の値と対比し、一酸化炭素、炭化水素、及び窒素酸化物の全ての成分の値が20%以下であるものを“A”とし、5〜20%の範囲のものを“B”とした。なお、表2において、浄化率の測定に係る評価項目を“浄化率(CO,HC,NO)”を表している。
【0089】
(2)PM排出個数の測定方法
実施例及び比較例に係る排気ガス浄化装置を、排気量2.0リットルの直噴式ガソリンエンジンを搭載した乗用車の排気系に装着する。その後、シャシダイナモによる車両試験として、国際調和排ガス試験モード(WLTC)の運転条件に従って運転した際の排気ガス中のPM排出個数を欧州EURO6規制案に沿った方法に基づいて測定する。ここで、PM排出個数が3×1011個/km以下のものを“A”とし、3×1011〜6×1011個/kmの範囲のものを“B”とした。
【0090】
(3)圧力損失の測定方法
排気量2.0リットルの直噴式ガソリンエンジンの台上試験において、始めに、排気系にセル密度:93セル/cm、隔壁厚さ:0.076mm、ハニカム径:105.7mm、ハニカム長さ:114mmのフロースル型のハニカム構造体を装着する。このときのエンジンフルロード運転時の圧力損失を測定し、これを圧力損失の基準値とする。実施例及び比較例に係る排気ガス浄化装置を同様に排気量2.0リットルの直噴式ガソリンエンジンを搭載した乗用車の排気径に装着し、上記と同条件のエンジンフルロード運転時の圧力損失を測定した。その後、予め測定された圧力損失の基準値に対して、圧力損失の増加量が5kPa未満の場合を“A”、圧力損失の増加量が10kPa未満の場合を“B”とした。
【0091】
(4)総合評価
上記の(1)浄化率(CO,HC,NO)、(2)PM排出個数、及び(3)圧力損失における各評価において、全ての評価がAである場合は、総合評価“A”とし、一つでもBがある場合は、総合評価“B”とした。上記(1)〜(4)に係る評価結果をまとめたものを下記表2に示す。なお、比較例1については評価を省略している。また、上記(1)〜(4)の評価において、“A”は「優良」、“B”は「可」を示し、Bの評価であっても実用上の十分な性能を有することを示す。
【0092】
【表2】
【0093】
(目封止部の配設基準:実施例1〜6)
表2に示すように、ハニカム触媒体及び目封止ハニカム構造体を同一とし、目封止部を第三パターンP3〜第六パターンP6とそれぞれ異なる配設基準で配した実施例1〜4の排気ガス浄化装置は、浄化率、PM排出個数、及び圧力損失がいずれも“A”の評価であり、総合評価もAであった。すなわち、本発明の排気ガス浄化装置において、先に提案した第三パターンP3〜第六パターンP6に係る目封止部の配設基準は、いずれも良好な浄化効率、低いPM排出個数、及び低圧力損失の効果を有することが示された。一方、第一パターンP1及び第二パターンP2の組み合わせ(実施例5)、及び第二流入側端面及び第二流出側端面の中心をいずれも第二パターンP2の組合わせ(実施例6)の場合、Bの評価が得られた。
【0094】
(L1/D1、L1/L2の値:実施例7〜10)
ハニカム触媒体の直径D1に対する中心軸方向の長さL1の比(=L1/D1)が0.1〜0.6の範囲から外れる場合、及び目封止ハニカム構造体の中心軸方向の長さL2に対するハニカム触媒体の中心軸方向の長さL1の比(=L1/L2)が0.1〜0.5の範囲から外れた排気ガス浄化装置(実施例7,8)の場合、浄化率(CO,HC,NO)の評価が“B”となった。本発明に規定されたL1/D1が0.1〜0.6、及び、L1/L2が0.1〜0.5の範囲の排気ガス浄化装置(実施例9,10)の場合、浄化率(CO,HC,NO)の評価が“A”となった。排気ガス浄化装置に使用されるハニカム触媒体の長さ及び直径の関係、ハニカム触媒体及び目封止ハニカム構造体の長さの関係が浄化率(CO,HC,NO)に影響を及ぼすことが確認された。
【0095】
(ハニカム触媒体の隔壁厚さ:実施例11,12)
ハニカム触媒体の隔壁厚さが127μmの排気ガス浄化装置(実施例11)の場合、浄化率(CO,HC,NO)の評価が“B”となった。一方、隔壁厚さが101μmの排気ガス浄化装置(実施例12)の場合、浄化率(CO,HC,NO)の評価が“A”となった。ハニカム触媒体の隔壁厚さが浄化率(CO,HC,NO)の値に影響を及ぼすことが確認された。
【0096】
(目封止ハニカム構造体の気孔率:実施例13)
ハニカム触媒体の隔壁の気孔率が、目封止ハニカム構造体の隔壁の気孔率より大きい排気ガス浄化装置(実施例13)の場合、圧力損失が大きくなることが確認された。上流側のハニカム触媒体に対して、下流側の目封止ハニカム構造体の方が気孔率が小さいと、排気ガスの通気性が損なわれ、圧力損失が大きくなると考えられる。
【0097】
(ハニカム触媒体と目封止ハニカム構造体との間の距離(担体間の距離):実施例14,15)
担体間の距離が本発明で規定した30mmの排気ガス浄化装置(実施例14)の場合、浄化効率が低下することが確認され、一方、担体間の距離が上記範囲内の排気ガス浄化装置(実施例15)の場合、良好な浄化効率を示すことが確認された。すなわち、ハニカム触媒体と目封止ハニカム構造体との間の担体間の距離を上記範囲内とすることが好適である。
【0098】
(触媒担持量:実施例16,17)
目封止ハニカム構造体の触媒担持量が120g/Lを超える排気ガス浄化装置(実施例16)の場合、圧力損失が大きくなることが確認され、一方、目封止ハニカム構造体の触媒担持量が120g/L以下の排気ガス浄化装置(実施例17)の場合、良好な圧力損失を示すことが確認された。
【0099】
(整流部による効果:実施例18)
実施例6の排気ガス浄化装置の缶体の内部に、円筒状の整流部を取設した別例構成の排気ガス浄化装置(実施例18)の場合、実施例6と比較して、PM排出個数の評価がBからAにアップした。すなわち、整流部の追加によってPM排出個数の改善が認められるとともに、浄化率及び圧力損失に影響を及ぼすことがなく、それぞれAの評価を維持することが認められた。そのため、総合評価として、実施例18の排気ガス浄化装置はAとなった。
【0100】
上記の実施例1〜18に示すように、浄化効率、PM排出個数、及び圧力損失の各評価項目がAまたはBの良好、若しくは実用上の問題のない排気ガス浄化装置を構築することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の排気ガス浄化装置は、排気ガスに含まれる粒子状物質の除去を効率的に除去することが可能であり、圧力損失を増加させることなく、エンジンの始動直後であっても高い浄化性能を発揮できるものであり、特に、直噴式ガソリンエンジンの排気ガスの浄化を行うために有益なものである。
【符号の説明】
【0102】
1,60:排気ガス浄化装置、10:ハニカム触媒体、11:第一流入側端面、12:第一流出側端面、13,23,23a,23b,23c,23d,23e,55:セル、14,24:隔壁、15:第一ハニカム基材、16,27:外周壁面、20,50:目封止ハニカム構造体、21,53:第二流入側端面、22,54:第二流出側端面、25:第二ハニカム基材、26,56:目封止部、30:缶体、31:排気ガス流入部、32:浄化ガス排出部、33:流入口、34:排出口、35:缶体本体、36:導入管、37:拡径部、38:縮径部、39:排出管、40:内周壁面、41:クッション材、42:ストッパ部材、51:内側ハニカムセグメント、52:外側ハニカムセグメント、61:整流部、62:円筒状部材、63:孔部、C:端面中心領域、CG:浄化ガス、EG:排気ガス、O:端面外周領域、D1,D2:直径、D3:内径、L1,L2:長さ、M:領域境界線、P1:第一パターン、P2:第二パターン、P3:第三パターン、P4:第四パターン、P5:第五パターン、P6:第六パターン、W:距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12