(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3ステップでは、前記架設径間における前記後部張出桁と前記前部張出桁とに複数の前記PCaセグメントを張り出し架設方式で順次連結し、前記桁連結部を構築することを特徴とする請求項1に記載の多径間連続橋の橋桁架設方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、架設桁を用いてPCaセグメントを架設する工法では、架設桁を橋脚上(柱頭部)で支持されるように配置した状態で架設作業を行っており、架設桁を次の径間に移動させるために架設桁に2径間分以上の長さが必要とされる。そのため、架設桁の重量が大きくなり、工費が高くなる。径間が長大な場合等には、架設桁の中央部に塔を設け、塔から斜めに張った斜ケーブルにより架設桁の支間部分を支持することで架設桁の軽量化を図ることもあるが、このような構成にすると、斜ケーブルの調節が必要になるため維持管理が煩雑になる。また、架設桁の重量が大きくなると、橋脚に要求される支持荷重が大きくなり、これによる下部構造の大型化によっても橋梁全体の工費が高くなる。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑み、従来よりも短い架設桁を用いてPCaセグメントからなる橋桁を構築できる多径間連続橋の橋桁架設方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、所定の径間(S)をもって配置された複数の橋脚(2)の各径間に複数のPCaセグメント(5)からなる橋桁(3)を架設する多径間連続橋(1)の橋桁架設方法であって、複数の支持部(33)を有し、前記径間よりも長く且つ前記径間の2倍よりも短い架設桁(30)を用意する第1ステップ(
図2(A)、
図6(A))と、前記支持部(33)を介して、前記架設桁(30)の後端が架設径間(S
0)における後方橋脚(2B)に設けられる後方柱頭部(4B)から前方に向けて張り出す後部張出桁(11)に支持され、前記架設桁(30)の中間部が前記架設径間(S
0)における前方橋脚(2F)に設けられる前方柱頭部(4F)に支持される開始位置に前記架設桁(30)を配置する第2ステップ(
図2(A)、
図6(A))と、前記架設桁(30)を利用して前記PCaセグメント(5)を配置し、前記前方柱頭部(4F)から後方に向けて張り出す前部張出桁(12)、前記前方柱頭部(4F)から前方に向けて張り出す次径間(S
1)の後部張出桁(11
1)、及び前記架設径間(S
0)における前記後部張出桁(11)と前記前部張出桁(12)とを連結する桁連結部(16)を構築し、当該架設径間(S
0)における前記後方橋脚(2B)及び前記前方橋脚(2F)に前記橋桁(3)を架け渡す第3ステップ(
図2(B)〜
図2(C)、
図3(F)〜
図4(G)、
図6(B)〜
図7(D))と、前記支持部(33)を介して、前記架設桁(30)の後端が前記前方柱頭部(4F)から前方に向けて張り出す前記次径間(S
1)の前記後部張出桁(11
1)に支持され、前記架設桁(30)の中間部が前記次径間(S
1)の前記前方橋脚(2F
1)に設けられる前記前方柱頭部(4F
1)に支持される完了位置まで前記架設桁(30)を前方へ移動する第4ステップ(
図3(D)〜
図3(E)、
図4(H)〜
図5(J)、
図7(E)〜
図8(I))とを繰り返すことにより、複数の前記径間(S)に渡って連続して前記橋桁(3)を架設する構成とする。
【0009】
この構成によれば、架設桁が径間の2倍よりも短くても、次径間の架設のために架設桁の中間部が次径間の前方柱頭部に支持されるように架設桁を移動させることができる。これにより、従来よりも短い架設桁を用いてPCaセグメントからなる橋桁を連続する径間に順次架設できる。
【0010】
また、上記の発明において、前記第4ステップの前に、前記次径間(S
1)の前記後部張出桁(11
1)に補強用の第1仮PCケーブル(21
1)を設けてプレストレスを導入するステップ(
図2(B)、
図6(B))と、先行して前記橋桁(3)が架け渡された後方側に隣接する先径間(S
−1)における前記橋桁(3
−1)の架け渡し時に前記架設径間(S
0)の前記後部張出桁(11)にプレストレスを導入するために設けられていた補強用の第1仮PCケーブル(21)を、前記第3ステップの後に取り外すステップ(
図4(G)、
図6(C))とを更に備える構成とすることができる。
【0011】
この構成によれば、架設桁の後端が片持ち支持状態の次径間の後部張出桁に支持される前に、次径間の後部張出桁が第1仮PCケーブルにより補強される。そのため、次径間に橋桁を架設するために繰り返す第2ステップで架設桁の後端を支持させるために、後部張出桁の部材断面を大型化する必要或いは本設の完成PCケーブルによって後部張出桁に局所的にプレストレスを導入する必要がない。また、後方橋脚及び前方橋脚間に橋桁が架け渡された後に第1仮PCケーブルが取り外されるため、第1仮PCケーブルを後に架設する径間の後部張出桁の補強に転用でき、工費の上昇を抑制できる。
【0012】
また、上記の発明において、前記第3ステップでは、前記架設径間(S
0)における前記後部張出桁(11)と前記前部張出桁(12)とに複数の前記PCaセグメント(5)を張り出し架設方式で順次連結し、前記桁連結部(16)を構築する(
図2(B)〜
図2(C)、
図3(F))構成とするとよい。
【0013】
この構成によれば、前部張出桁及び次径間の後部張出桁と同じ方式で桁連結部を構築でき、架設設備の簡略化と作業内容の統一により作業を簡略化できる。
【0014】
また、上記の発明において、前記第3ステップは、前記架設径間(S
0)における前記後部張出桁(11)から更に前方に向けて張り出す後部延長桁(13)を構築するステップ(
図2(B)〜
図2(C))と、前記前部張出桁(12)から更に後方に向けて張り出して前記後部延長桁(13)に連結される前部延長桁(14)を構築するステップ(
図3(F)〜
図4(G))とを含み、前記第4ステップは、前記後部延長桁(13)を構築した後に、前記支持部(33)を介して、前記架設桁(30)の中間部が前記前部張出桁(12)及び前記次径間(S
1)の前記後部張出桁(11
1)に支持され、前記架設桁(30)の後端が前記後部延長桁(13)に支持される中間位置まで前記架設桁(30)を前方へ移動するステップ(
図3(D)〜(E))と、前記前部延長桁(14)を構築した後に、前記架設桁を前記中間位置から前記完了位置まで前方へ移動するステップ(
図4(H)〜
図5(J))とを含む構成とするとよい。
【0015】
この構成によれば、架設桁の中間部が前部張出桁及び後部張出桁に支持されるように架設桁が前方へ移動することにより、架設桁の後端を支持する支持部が後方柱頭部から遠くなる一方で、架設桁の後端の支持荷重が小さくなることにより、後部張出桁の曲げモーメントを小さくした状態で前部延長桁を構築することができる。
【0016】
また、上記の発明において、前記第3ステップは、前記架設桁(30)の後端が前記後部延長桁(13)に支持される前記中間位置まで前記架設桁(30)を移動する前に、前記後部延長桁(13)に補強用の第2仮PCケーブル(22)を設けてプレストレスを導入するステップ(
図3(D))と、前記前部延長桁(14)を構築した後に、前記後部延長桁(13)に設けられている前記第2仮PCケーブル(22)を取り外すステップ(
図4(G))とを更に含む構成とするとよい。
【0017】
この構成によれば、架設桁の後端が片持ち支持状態の後部延長桁に支持される前に、後部延長桁が第2仮PCケーブルにより補強される。そのため、中間位置にて前部延長桁を構築する架設桁の後端を後部延長桁に支持させるために、後部延長桁や後部張出桁の部材断面を大型化する必要或いは本設の完成PCケーブルによって後部延長桁や後部張出桁に局所的にプレストレスを導入する必要がない。また、後方橋脚及び前方橋脚間に橋桁が架け渡された後に第2仮PCケーブルが取り外されるため、後に架設作業を行う次径間の後部延長桁の補強に第2仮PCケーブルを転用でき、工費の上昇を抑制できる。
【0018】
また、上記の発明において、前記第3ステップでは、複数の前記PCaセグメント(5)をハンガー方式で前記架設桁(30)に吊り下げた状態で連結し、前記桁連結部(16)を構築する(
図6(C))構成とすることができる。
【0019】
この構成によれば、桁連結部における複数のPCaセグメントをまとめて接合し、接合作業の回数を少なくできるため、工期を短縮できる。
【発明の効果】
【0020】
このように本発明によれば、従来よりも短い架設桁を用いてPCaセグメントからなる橋桁を構築できる多径間連続橋の橋桁架設方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
≪第1実施形態≫
まず、
図1〜
図5を参照して、第1実施形態に係る多径間連続橋1の橋桁架設方法について説明する。
図1は、多径間連続橋1の橋桁架設中のある状態を示す側面図である。
図1に示されるように、多径間連続橋1は、所定の径間S(S
−1〜S
1)をもって橋軸方向に1列に配置された複数の橋脚2(2B、2F)と、橋軸方向に互いに隣接する1対の橋脚2間(径間S)に連続するように架け渡される複数の橋桁3とにより構成される。複数の橋脚2は、橋桁3の架設に先行して構築される。また、各橋脚2上には、橋桁3の架け渡しに先行して柱頭部4(4B、4F)が構築される。柱頭部4は、PCaコンクリートからなるセグメントを含んで構築されてもよく、現場打ちコンクリートにより構築されてもよい。複数の径間Sは、一定であってもよく、変化していてもよい。ここでは複数の径間Sが同一の径間長L1を有するものとして説明する。
【0024】
図1に示される3つの橋脚2のうち、最も左側の橋脚2の左側では、1対の橋脚2間に既に橋桁3が架け渡されており、
図1は、最も左側の橋脚2と中央の橋脚2との間に橋桁3を架け渡す作業を行っている状態を示している。橋桁3は、複数のPCaセグメント5を橋軸方向に張った外ケーブル方式の図示しない複数のPCケーブルによって連結することにより構築される箱桁である。橋桁3の断面形状は、特に限定されるものではなく、単一箱桁や多主桁箱桁、多重箱桁等であってよい。橋桁3の架け渡し作業は
図1の右方に向かって順次進められる。従って、
図1の右方が前方となり、左方が後方となる。
【0025】
以下、橋桁3を架け渡し作業を行っている径間Sを架設径間S
0と称し、架設径間S
0の後方側に隣接する、先行して橋桁3が架け渡された径間Sを先径間S
−1と称し、架設径間S
0の前方側に隣接する、橋桁3が未だ架け渡されていない径間Sを次径間S
1と称する。また、架設径間S
0を構成する前後1対の橋脚2のうち、後方側に位置する橋脚2を後方橋脚2Bと称し、前方側に位置する橋脚2を前方橋脚2Fと称する。更に、後方橋脚2Bの上に構築された柱頭部4を後方柱頭部4Bと称し、前方橋脚2Fの上に構築された柱頭部4を前方柱頭部4Fと称する。
【0026】
例えば、前方橋脚2Fと称する橋脚2は、架設径間S
0の橋桁3の架け渡しが完了し、次径間S
1の橋桁3の架け渡し作業を行う際には、後方橋脚2Bと称されることになる。従って、これら橋脚2や柱頭部4の両呼称は、架設径間S
0を基準とするものとし、先径間S
−1や次径間S
1に対して用いる場合には、径間Sに対応する下付き文字を付して、次径間S
1の前方柱頭部4F
1等と記す。橋桁3や後述する後部張出桁11等の部材についても同様とする。架設径間S
0に対して用いる場合やまとめて指す場合には、径間Sに対応する下付き文字を省略する。
【0027】
図1の状態では、架設径間S
0において、後方柱頭部4Bから前方に向けて径間長L1の4分の1程度の長さをもって張り出す後部張出桁11と、前方柱頭部4Fから後方に向けて径間長L1の4分の1程度の長さをもって張り出す前部張出桁12とが片持ち支持状態で架設(構築)されている。また、前方柱頭部4Fから前方に向けて径間長L1の4分の1程度の長さをもって張り出す次径間S
1の後部張出桁11
1が片持ち支持状態で架設されている。架設径間S
0の後部張出桁11は、後方柱頭部4Bの前面に順次接合された複数のPCaセグメント5により構成され、前部張出桁12は、前方柱頭部4Fの後面に順次接合された複数のPCaセグメント5により構成されている。次径間S
1の後部張出桁11
1は、前方柱頭部4Fの前面に順次接合された複数のPCaセグメント5により構成されている。
【0028】
架設径間S
0の後部張出桁11及び前部張出桁12、並びに次径間S
1の後部張出桁11
1を構成する各PCaセグメント5は、後方柱頭部4B又は前方柱頭部4Fを中心として対称に配置された1対のPCaセグメント5に両端を定着されるように設けられた複数のPCケーブルの緊張力により、柱頭部4又は柱頭部4側に隣接配置されたPCaセグメント5にそれぞれ接合されている。
【0029】
また、架設径間S
0の後部張出桁11及び先径間S
−1の前部張出桁12
−1の上部、並びに次径間S
1の後部張出桁11
1及び架設径間S
0の前部張出桁12の上部には、外ケーブル方式の補強用の第1仮PCケーブル21、21
1が設けられている。第1仮PCケーブル21、21
1は、後部張出桁11、11
1において最も張出側に配置されたPCaセグメント5に前端を定着され、前部張出桁12
−1、12において最も張出側に配置されたPCaセグメント5に後端を定着されている。第1仮PCケーブル21、21
1に加えられた緊張力により後部張出桁11、11
1及び前部張出桁12
−1、12の曲げ耐力が補強される。
【0030】
他の実施形態(例えば、
図6〜
図8を参照して説明する第2実施形態)では、第1仮PCケーブル21、21
1は、対応する前部張出桁12
−1、12に後端が定着されるのではなく、後部張出桁11、11
1の張出基部となる対応する後方柱頭部4B、4B
1に後端が定着されるように設けられてもよい。
【0031】
架設径間S
0の上には、架設済みの橋桁3上をトレーラ等の運搬車両6によって運搬されてくるPCaセグメント5を所定の架設位置に配置するための架設桁30が配置されている。架設桁30の本体部は、互いに間隔を空けて配置された状態で連結され、橋軸方向に延在する2本のトラス桁31により構成されている。架設桁30の上部(上弦材)には、2本のトラス桁31を跨ぐように門型クレーン等の揚重装置32が橋軸方向に移動可能に設けられている。一方、架設桁30の下部(下弦材)には、架設桁30を支持する複数(図示例では3つ)の支持部33(33R、33M、33F)が設けられている。支持部33は少なくとも3つ設けられ、全ての支持部33が橋軸方向に移動可能とされている。
【0032】
他の実施形態では、最も後方に配置された後支持部33Rが架設桁30に固定され、他の複数の(図示例では2つ)の支持部33が橋軸方向に移動可能とされてもよい。この場合、後支持部33Rは橋桁3に対して移動(走行又は自走)可能とされ、架設桁30の本体部と共に橋桁3上を移動する。
【0033】
図1の状態では、架設桁30は、後支持部33R及び前後方向の中間に配置された中支持部33Mを介して、架設径間S
0に張り出し架設済みの後部張出桁11に後端を支持され、最も前方に配置された前支持部33Fを介して、前方柱頭部4Fに中間部を支持されている。架設桁30は、径間長L1よりも長く径間長L1の2倍よりも短い橋軸方向長さを有しており、後端が後部張出桁11に重なった状態で前端が次径間S
1の後部張出桁11
1よりも前方に張り出している。以下、架設桁30のこの位置を開始位置という。
【0034】
なお、揚重装置32の移動用に設けられたレールは、図示されるように、架設桁30の全長に亘って設けられる必要はなく、
図1の配置状態において次径間S
1の後部張出桁11
1を張り出し架設できる長さを有していればよい。レールが設けられていない架設桁30の前端部分30aは、架設桁30を次径間S
1の架設用位置に移動させる際の手延べ機として機能する。架設桁30の前端には、架設桁30の移動の際に、次径間S
1の前方橋脚2F
1上に前支持部33Fを配置するまで架設桁30の前端を支持する前端支持脚34が設けられている。この他にも架設桁30には、中間支持脚35や図示しない吊り足場等が設けられている。
【0035】
次に、
図2〜
図5を参照して、1つの径間Sにおける橋桁3の架設手順について説明する。
【0036】
図2(A)は、架設径間S
0における橋桁3の架設サイクルのうちの1状態を示している。図示されるように、架設径間S
0においては、後方柱頭部4Bから前方に向けて張り出す後部張出桁11が既に架設されており、架設桁30が
図1と同じ状態に、即ち、後支持部33R及び中支持部33Mを介して後部張出桁11に後端を支持され、前支持部33Fを介して前方柱頭部4Fに中間部を支持される開始位置に配置されている。
【0037】
このように配置された架設桁30を利用して、
図2(B)に示されるように、前方柱頭部4Fから後方に向けて張り出す架設径間S
0の前部張出桁12と、前方柱頭部4Fから前方に向けて張り出す次径間S
1の後部張出桁11
1とを片持ち架設工法により架設する。具体的には、前方柱頭部4Fの後方及び前方にそれぞれ1つのPCaセグメント5を配置し、前方柱頭部4Fを挟んだ状態の1対のPCaセグメント5をPCケーブルによって連結することで片持ち支持状態で架設してゆく作業を所定回に亘って繰り返す。前部張出桁12と次径間S
1の後部張出桁11
1とを架設した後、次径間S
1の後部張出桁11
1から架設径間S
0の前部張出桁12に亘る第1仮PCケーブル21
1を設けてプレストレスを導入する。
【0038】
その後、
図2(C)に示されるように、後部張出桁11から前方に向けて張り出す後部延長桁13を片持ち架設工法により架設する。具体的には、後部延長桁13を構成するPCaセグメント5を所定の位置に配置し、後方柱頭部4Bに後端が定着されるように張った図示しないPCケーブルに緊張力を加え、このPCケーブルの前端をPCaセグメント5に定着することより、PCaセグメント5を後方に隣接配置されたPCaセグメント5に接合する作業を繰り返す。
【0039】
次に、
図3(D)に示されるように、後部延長桁13に、補強用の第2仮PCケーブル22を設けてプレストレスを導入する。具体的には、後方柱頭部4Bに後端が定着されるように後方柱頭部4Bから前方に向けて第2仮PCケーブル22を張り、第2仮PCケーブル22を緊張した状態で後部延長桁13の最も張出側に配置されたPCaセグメント5にその前端を定着する。その後、中支持部33Mを前部張出桁12の上に、後支持部33Rを後部延長桁13の前端に、前支持部33Fを次径間S
1の後部張出桁11
1の上に順次移動する。
【0040】
支持部33の配置が完了した後、
図3(E)に示されるように、架設桁30(2本のトラス桁31や揚重装置32)を前方に移動し、架設桁30の後端が後支持部33Rを介して後部延長桁13の前端に支持され、架設桁30の中間部が中支持部33M及び前支持部33Fを介して前部張出桁12及び次径間S
1の後部張出桁11
1に支持される中間位置に架設桁30を配置する。
【0041】
続いて、
図3(F)に示されるように、前部張出桁12から後方に向けて張り出す前部延長桁14を片持ち架設工法により架設する。具体的には、前部延長桁14を構成するPCaセグメント5を所定の位置に配置し、前方柱頭部4Fに前端が定着されるように張った図示しないPCケーブルに緊張力を加え、このPCケーブルの後端をPCaセグメント5に定着することより、PCaセグメント5を前方に隣接配置されたPCaセグメント5に接合する作業を繰り返す。後部延長桁13と前部延長桁14との間には、後方柱頭部4Bからの張出桁と前方柱頭部4Fからの張出桁とを連結する閉合部15が設けられる。閉合部15は、現場打ちコンクリートにより構築される場合や、閉合部セグメントを設け、その両端に場所打ち目地を打設して構築される場合がある。
【0042】
閉合部15のコンクリートの硬化後、
図4(G)に示されるように、後方柱頭部4Bから前方柱頭部4Fに至るように本設の完成PCケーブル23を設ける。完成PCケーブル23は、後方柱頭部4B及び前方柱頭部4Fにおいて橋桁3の上部に位置し、閉合部15等の径間中央部において橋桁3の下部に位置するように設ける。そして完成PCケーブル23に緊張力を加え、完成PCケーブル23の後端を後方柱頭部4Bに定着し、前端を前方柱頭部4Fに定着することで、橋桁3にプレストレスを導入する。これにより、後部張出桁11と前部張出桁12とを連結する桁連結部16が構築される。
【0043】
その後、第1仮PCケーブル21及び第2仮PCケーブル22(
図3(F)参照)を取り外す。取り外した第1仮PCケーブル21は、次径間S
1の次の径間S
2に張り出し架設される後部張出桁11
2の補強に転用し、取り外した第2仮PCケーブル22は、次径間S
1の後部延長桁13
1の補強に転用する。
【0044】
続いて、
図4(H)に示されるように、架設桁30の移動準備として、中支持部33Mを次径間S
1の後部張出桁11
1の前端近傍に、後支持部33Rを前部張出桁12の後端近傍に、前支持部33Fを次径間S
1の後方橋脚2B
1に張り出し架設された後部張出桁11
1よりも前方に順次移動する。
【0045】
支持部33の配置が完了した後、
図4(I)に示されるように、架設桁30(2本のトラス桁31や揚重装置32)を前方に移動し、架設桁30の前端を、前端支持脚34を介して次径間S
1の前方柱頭部4F
1に支持させる。
【0046】
その後、
図5(J)に示されるように、前支持部33Fを次径間S
1の前方柱頭部4F
1上に配置して前支持部33Fに架設桁30の前端を支持させ、後支持部33Rを次径間S
1の後部張出桁11
1の前端近傍に配置した後、更に架設桁30を前方に移動する。そして、架設桁30を、後端が後支持部33R及び中支持部33Mを介して次径間S
1の後部張出桁11
1に支持され、中間部が前支持部33Fを介して次径間S
1の前方柱頭部4F
1に支持される完了位置に配置する。これにより、
図2(A)と同じ状態となり、1つの径間Sにおける橋桁3の架設サイクルが完了する。
【0047】
以上の手順を繰り返すことにより、多径間連続橋1の橋桁3が複数の橋脚2に渡って架設される。
【0048】
このような手順を採用した本発明では、
図2(A)に示されるように、架設桁30の後端が後部張出桁11に支持され、架設桁30の中間部が前方柱頭部4Fに支持されるように架設桁30を配置した後、
図2(B)〜
図2(C)、
図3(F)〜
図4(G)に示されるように、架設桁30を利用して前部張出桁12及び桁連結部16を構築して橋桁3を架け渡すことに加え、次径間S
1の後部張出桁11
1を構築し、
図3(D)〜
図3(E)、
図4(H)〜
図5(J)に示されるように架設桁30を次径間S
1の架設位置に移動する。そのため、架設桁30が径間S(径間長L1)の2倍よりも短くても、次径間S
1の架設のために架設桁30の中間部が次径間S
1の前方柱頭部4F
1に支持されるように架設桁30を移動させることができる。これにより、従来よりも短い架設桁30を用いてPCaセグメント5からなる橋桁3を連続する径間Sに順次架設できる。
【0049】
また、本実施形態では、
図3(D)〜
図3(E)において架設桁30を次径間S
1に移動する前に、
図2(C)に示されるように、次径間S
1の後部張出桁11
1に補強用の第1仮PCケーブル21を設けてプレストレスを導入する。これにより、
図5(J)に示されるように次径間S
1の橋桁3
1を架設するために架設桁30の後端を片持ち支持状態の後部張出桁11
1に支持させる前に、更に、
図3(D)に示されるように架設径間Sの桁連結部16を構築するために架設桁30の中間部を片持ち支持状態の後部張出桁11
1に支持させる前に、後部張出桁11
1が第1仮PCケーブル21により補強される。そのため、架設桁30の後端や中間部を支持させるために、次径間S
1の後部張出桁11
1の部材断面を大型化する必要或いは本設の完成PCケーブル23によって次径間S
1の後部張出桁11
1に局所的にプレストレスを導入する必要がない。また、
図2(A)に示される、先径間S
−1における橋桁3
−1の架け渡し時に架設径間S
0の後部張出桁11に予めプレストレスを導入するために設けられていた補強用の第1仮PCケーブル21を、
図4(G)で橋桁3を架け渡した後に取り外している。そのため、取り外した第1仮PCケーブル21を後に架設する径間Sの後部張出桁11の補強に転用可能である。これらにより、工費の上昇を抑制することができる。
【0050】
本実施形態では、架設桁30を利用して架設径間S
0に橋桁3を架け渡す際に、
図2(B)〜
図2(C)、
図3(F)に示されるように、架設径間S
0における後部張出桁11と前部張出桁12とに複数のPCaセグメント5を張り出し架設方式で順次連結し、桁連結部16を構築している。そのため、前部張出桁12及び次径間S
1の後部張出桁11
1と同じ方式で桁連結部16を構築でき、架設設備の簡略化と作業内容の統一により作業を簡略化できる。
【0051】
また、
図2(C)に示されるように、後部張出桁11から更に前方に向けて張り出す後部延長桁13を構築し、
図3(D)及び(E)に示されるように、支持部33を介して、架設桁30の中間部が前部張出桁12及び次径間S
1の後部張出桁11
1に支持され、架設桁30の後端が後部延長桁13に支持されるように架設桁30を前方へ移動し、
図3(F)及び
図4(G)に示されるように、前部張出桁12から更に後方に向けて張り出して後部延長桁13に連結される前部延長桁14を構築している。つまり、
図3(E)に示される、架設桁30の中間部が前部張出桁12及び次径間S
1の後部張出桁11
1に支持されるように架設桁30が前方へ移動した状態では、
図2(C)の状態に比べ、架設桁30の後端を支持する後支持部33Rが後方柱頭部4Bから遠くなる一方で、架設桁30の後端の支持荷重が小さくなる。これにより、
図2(C)の状態に比べて後部張出桁11の曲げモーメントを小さくした状態で前部延長桁14を構築することができる。
【0052】
更に、
図3(E)において架設桁30の後端が後部延長桁13に支持される中間位置に架設桁30を移動する前に、
図3(D)に示されるように、後部延長桁13に補強用の第2仮PCケーブル22を設けてプレストレスを導入する。そのため、中間位置にて前部延長桁14を構築する架設桁30の後端を後部延長桁13に支持させるために、後部延長桁13や後部張出桁11の部材断面を大型化する必要或いは本設の完成PCケーブル23によって後部延長桁13や後部張出桁11に局所的にプレストレスを導入する必要がない。また、
図3(F)及び
図4(G)において前部延長桁14を構築した後に、
図4(G)に示されるように後部延長桁13に設けられている第2仮PCケーブル22を取り外している。そのため、後に架設作業を行う次径間S
1の後部延長桁13
1の補強に第2仮PCケーブル22を転用可能である。これらにより、工費の上昇を抑制することができる。
【0053】
≪第2実施形態≫
次に、
図6〜
図8を参照して、第2実施形態に係る橋桁3の架設手順について説明する。なお、多径間連続橋1の構造及びその構築に用いる架設桁30は第1実施形態と同様である。本実施形態では、主に桁連結部16の架設方法が第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と形態又は機能が同一又は同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0054】
図6(A)は、架設径間S
0における橋桁3の架設サイクルのうちの1状態を示している。この状態は、
図2(A)と同じ状態、即ち、架設径間S
0において後部張出桁11が既に架設されており、架設桁30が後支持部33R及び中支持部33Mを介して後部張出桁11に後端を支持され、前支持部33Fを介して前方柱頭部4Fに中間部を支持されるように配置された状態である。また、本実施形態においても、このように配置された架設桁30を利用して、
図6(B)に示されるように、前方柱頭部4Fから後方に向けて張り出す架設径間S
0の前部張出桁12と、前方柱頭部4Fから前方に向けて張り出す次径間S
1の後部張出桁11
1とを片持ち架設工法により架設する。前部張出桁12と次径間S
1の後部張出桁11
1とを架設した後、次径間S
1の後部張出桁11
1に、第1仮PCケーブル21を設けてプレストレスを導入する。
【0055】
一方、本実施形態では、その後、
図6(C)に示されるように、後部張出桁11と前部張出桁12とを連結する桁連結部16をハンガー方式で構築する。具体的には、次のようにして作業を行う。
【0056】
まず、後部張出桁11から前方に向けて張り出す後部延長桁13を構成する複数のPCaセグメント5を、吊り部材36を介して架設桁30により吊り下げた状態で所定の位置に配置する。また、前部張出桁12から後方に向けて張り出す前部延長桁14を構成する複数のPCaセグメント5を、吊り部材36を介して架設桁30により吊り下げた状態で所定の位置に配置する。そして、後方柱頭部4Bに後端が定着されるように張った図示しないPCケーブルに緊張力を加え、このPCケーブルの前端を、後部延長桁13を構成する複数のPCaセグメント5のうち前端に配置されたものに定着することにより、これら複数のPCaセグメント5を一括して後部張出桁11に接合する。また、前方柱頭部4Fに前端が定着されるように張った図示しないPCケーブルに緊張力を加え、このPCケーブルの後端を、前部延長桁14を構成する複数のPCaセグメント5のうち後端に配置されたものに定着することより、これら複数のPCaセグメント5を一括して前部張出桁12に接合する。後部延長桁13と前部延長桁14との間に設けられる閉合部15は、現場打ちコンクリートにより構築される場合や、閉合部セグメントを設け、その両端に場所打ち目地を打設して構築される場合がある。
【0057】
閉合部15のコンクリートの硬化後、後方柱頭部4Bから前方柱頭部4Fに至るように本設の完成PCケーブル23を設け、完成PCケーブル23に緊張力を加え、完成PCケーブル23の後端を後方柱頭部4Bに定着し、前端を前方柱頭部4Fに定着することで、橋桁3にプレストレスを導入する。これにより、後部張出桁11と前部張出桁12とを連結する桁連結部16が構築される。その後、架設径間S
0の後部張出桁11に設けられていた第1仮PCケーブル21を取り外す。取り外した第1仮PCケーブル21は、次径間S
1の次の径間S
2に架設される後部張出桁11
2の補強に転用する。
【0058】
その後、
図7(D)に示されるように、PCaセグメント5を吊っていた吊り部材36を取り外す。続いて、
図7(E)に示されるように、架設桁30の移動の準備として、中支持部33Mを前部張出桁12の上に、後支持部33Rを後部延長桁13の前端に、前支持部33Fを次径間S
1の後部張出桁11
1の上に順次移動する。
【0059】
支持部33の配置が完了した後、
図7(F)に示されるように、架設桁30(2本のトラス桁31や揚重装置32)を前方に移動し、架設桁30の後端が後支持部33Rを介して後部延長桁13の前端に支持され、架設桁30の中間部が中支持部33M及び前支持部33Fを介して前部張出桁12及び次径間S
1の後部張出桁11
1に支持されるように架設桁30を配置する。
【0060】
その後、
図8に示されるように、架設桁30の更なる移動を行う。
図8に示される作業は、
図4で説明した作業と同じである。つまり、最初に
図8(G)に示されるように、中支持部33Mを次径間S
1の後部張出桁11
1の前端近傍に、後支持部33Rを前部張出桁12の後端近傍に、前支持部33Fを次径間S
1の後部張出桁11
1よりも前方に順次移動する。その後、
図8(H)に示されるように、架設桁30を前方に移動し、架設桁30の前端を、前端支持脚34を介して次径間S
1の前方柱頭部4F
1に支持させる。続いて、
図8(I)に示されるように、前支持部33Fを次径間S
1の前方柱頭部4F上に配置して前支持部33Fに架設桁30の前端を支持させ、後支持部33Rを次径間S
1の後部張出桁11
1の前端近傍に配置した後、更に架設桁30を前方に移動する。これにより、
図6(A)と同じ状態となり、1つの径間Sにおける橋桁3の架設サイクルが完了する。
【0061】
以上の手順を繰り返すことにより、多径間連続橋1の橋桁3が複数の橋脚2に渡って架設される。
【0062】
本実施形態においても、
図6(A)に示されるように、架設桁30の後端が後部張出桁11に支持され、架設桁30の中間部が前方柱頭部4Fに支持されるように架設桁30を配置した後、
図6(B)〜
図7(D)に示されるように、架設桁30を利用して前部張出桁12及び桁連結部16を構築して橋桁3を架け渡すことに加え、次径間S
1の後部張出桁11
1を構築し、
図7(E)〜
図8(I)に示されるように架設桁30を次径間S
1の架設位置に移動する点は第1実施形態と同様である。
【0063】
また、
図7(E)〜
図8(I)において架設桁30を次径間S
1に移動する前に、
図6(B)に示されるように、次径間S
1の後部張出桁11
1に補強用の第1仮PCケーブル21を設けてプレストレスを導入し、
図6(A)に示される、先径間S
−1における橋桁3
−1の架け渡し時に架設径間S
0の後部張出桁11にプレストレスを導入するために設けられていた補強用の第1仮PCケーブル21を、
図6(C)で橋桁3を架け渡した後に取り外す点も、第1実施形態と同様である。
【0064】
一方、本実施形態では、架設桁30を利用して架設径間S
0に橋桁3を架け渡す際に、
図6(C)に示されるように、複数のPCaセグメント5をハンガー方式で架設桁30に吊り下げた状態で連結し、桁連結部16を構築している。そのため、桁連結部16における複数のPCaセグメント5をまとめて接合し、接合作業の回数を少なくできるため、工期を短縮できる。
【0065】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、3つの支持部33が架設桁30に設けられているが、4つ以上設けられてもよい。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度、手順など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素や手順は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。