(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態]
以下、図を参照して実施形態の端末位置判定装置10について説明する。
図1は、本実施形態の受信エリアAR1と通信端末CTとの位置関係の一例を示す図である。ここで、受信エリアAR1とは、アンテナANTの指向特性に応じた領域である。この受信エリアAR1の具体例について説明する。
【0017】
[受信エリアAR1の具体例]
端末位置判定装置10が、ある店舗における来客数や客の滞在時間の測定を行う場合を一例にして説明する。この店舗には、公衆無線LANのアクセスポイント(基地局)及び基地局のアンテナANTが設置されている。この一例では、受信エリアAR1は店舗内の領域に設定される。また、非受信エリアAR2は店舗外の領域に設定される。
同図の例において、複数の通信端末CTのうち通信端末CT1及び通信端末CT2は、受信エリアAR1の内部に位置する。複数の通信端末CTのうち通信端末CT3及び通信端末CT4は、受信エリアAR1の外部、すなわち非受信エリアAR2に位置する。
【0018】
端末位置判定装置10は、上述した基地局のアンテナANTに接続されている。客は通信端末CTを所持している。通信端末CTは、店舗に設置されたアンテナANTを介して公衆無線LANとの通信を行う。通信端末CTは、通信要求信号W(プローブ要求;Probe Request)を送信して、この通信要求信号Wを受信した基地局からの応答を受信することにより、通信可能な基地局を探索する。通信端末CTは、通信端末CTの位置が移動した場合などにおいて基地局との通信が途絶したとしても、通信要求信号Wを繰り返し送信することにより、基地局との通信を回復させることができる。
【0019】
通信端末CTは、通信要求信号Wを、複数の周波数Fによって送信する。この一例では、通信端末CTは、周波数Fが2.5[GHz]の通信要求信号W1と、周波数Fが5.0[GHz]の通信要求信号W2とをそれぞれ送信する。以下の説明において、周波数2.5[GHz]を第1周波数F1と、周波数5.0[GHz]を第2周波数F2とも記載する。つまり、通信端末CTは、電波の周波数Fが互いに異なる複数の通信要求信号Wを周波数Fごとに送信する。
【0020】
端末位置判定装置10は、通信端末CTが送信した通信要求信号WをアンテナANTが受信した際の、通信要求信号Wの受信状態に基づいて、通信端末CTの位置が店舗内であるのか、店舗外であるのかを判定する。端末位置判定装置10は、この判定結果に基づいて、店舗への来客数や客の滞在時間を測定する。以下、この端末位置判定装置10の機能構成の一例について
図2を参照して説明する。
【0021】
[端末位置判定装置10の機能構成]
図2は、本実施形態の端末位置判定装置10の機能構成の一例を示す図である。端末位置判定装置10は、受信部100と、演算部200と、記憶部300とを備える。
受信部100は、アンテナANTに接続されている。受信部100は、第1周波数受信部110と、第2周波数受信部120とを備える。アンテナANTには、第1周波数アンテナANT1と、第2周波数アンテナANT2とがある。第1周波数アンテナANT1は、第1周波数F1(この一例では2.5[GHz])の電波を受信可能である。第2周波数アンテナANT2は、第2周波数F2(この一例では5.0[GHz])の電波を受信可能である。
第1周波数受信部110は第1周波数アンテナANT1に、第2周波数受信部120は第2周波数アンテナANT2にそれぞれ接続されている。第1周波数受信部110は、第1周波数アンテナANT1を介して通信要求信号W1を受信する。第2周波数受信部120は、第2周波数アンテナANT2を介して通信要求信号W2を受信する。つまり、受信部100は、通信要求信号Wを周波数Fごとに受信する。
なお、受信部100は、通信端末CTが送信する信号のうち通信要求信号W以外の信号をも受信可能であるが、その説明を省略する。
【0022】
演算部200は、CPU(Central Processing Unit)を備えており、種々の演算を行う。この演算部200は、受信状態判定部210と、端末位置判定部220とを、その機能部として備える。
【0023】
受信状態判定部210は、第1周波数受信部110が受信する通信要求信号W1と、第2周波数受信部120が受信する通信要求信号W2とを比較することにより、これら通信要求信号Wの受信状態を判定する。ここで、通信要求信号W1と通信要求信号W2とは、電波の周波数Fが互いに異なる信号である。すなわち、受信状態判定部210は、受信部100が受信する周波数Fが互いに異なる少なくとも2つの通信要求信号Wどうしを比較することにより、通信要求信号Wの受信状態を判定する。
【0024】
[受信エリアAR1内に位置する通信端末CTについて]
図1に戻り、この受信状態判定部210が行う受信状態の判定の一例について説明する。通信端末CT1は、第1周波数F1の通信要求信号W11と、第2周波数F2の通信要求信号W12とを送信する。第1周波数受信部110は、第1周波数アンテナANT1を介して通信要求信号W11を受信する。また、第2周波数受信部120は、第2周波数アンテナANT2を介して通信要求信号W12を受信する。
ここで、第1周波数アンテナANT1には、通信要求信号W11が壁WL等に反射することなく、直接到来する。また、第2周波数アンテナANT2には、通信要求信号W12が壁WL等に反射することなく、直接到来する。つまり、同図に示す通信端末CT1の位置と、アンテナANTとの位置関係においては、通信端末CT1が送信した通信要求信号Wが、壁WL等に反射することなく、直接到来する。
【0025】
通信端末CT2は、第1周波数F1の通信要求信号W21と、第2周波数F2の通信要求信号W22とを送信する。第1周波数受信部110は、第1周波数アンテナANT1を介して通信要求信号W21を受信する。また、第2周波数受信部120は、第2周波数アンテナANT2を介して通信要求信号W22を受信する。
ここで、第1周波数アンテナANT1には、通信要求信号W21が壁WL等に反射することなく、直接到来する。また、第2周波数アンテナANT2には、通信要求信号W22が壁WL等に反射することなく、直接到来する。つまり、同図に示す通信端末CT2の位置と、アンテナANTとの位置関係においては、通信端末CT2が送信した通信要求信号Wが、壁WL等に反射することなく、直接到来する。
【0026】
[非受信エリアAR2に位置する通信端末CTについて]
通信端末CT3は、第1周波数F1の通信要求信号W31と、第2周波数F2の通信要求信号W32とを送信する。
ここで、アンテナANTは、受信可能な方向のうちの一部の方向が遮蔽部SHによって電磁遮蔽されている。具体的には、アンテナANTは、非受信エリアAR2の方向が遮蔽部SHによって電磁遮蔽されている。この遮蔽部SHが存在することにより、通信端末CT3の位置からは、アンテナANTが見通せない。つまり、通信端末CT3が送信する通信要求信号Wは、アンテナANTに直接到来しない。具体的には、通信端末CT3が送信する通信要求信号Wのうち、同図に示す通信要求信号W31−1及び通信要求信号W32−1の方向に進む電波は、遮蔽部SHに遮られアンテナANTに到来しない。
また、この遮蔽部SHは、受信エリアAR1に向けて開口している。このため、通信端末CT3の位置において送信された通信要求信号Wのうち、壁WL等によって反射された信号は、その反射方向によってはアンテナANTに到来する。具体的には、通信端末CT3の位置において送信された通信要求信号W31−2及び通信要求信号W32−2は、位置P1において壁WL1に反射され、位置P2において壁WL2によって反射されて、受信エリアAR1方向からアンテナANTに到来する。
【0027】
通信端末CT4は、第1周波数F1の通信要求信号W41と、第2周波数F2の通信要求信号W42とを送信する。アンテナANTは、非受信エリアAR2の受信方向が遮蔽部SHによって電磁遮蔽されている。したがって、通信要求信号W41及び通信要求信号W42は、アンテナANTに到来しない。
【0028】
[受信状態の判定]
通信端末CTが送信する電波は、アンテナANTまでの電波の経路の状況に応じて減衰する。具体的には、通信端末CTが送信する電波は、アンテナANTまでの到達距離が長いほど大きく減衰する。また、通信端末CTが送信する電波は、反射や回折されてアンテナANTに到達すると、反射や回折の回数や状況に応じて減衰する。
【0029】
ここで、第1周波数F1(例えば、2.5[GHz])の電波と、この第1周波数F1よりも高い第2周波数F2(例えば、5.0[GHz])の電波とを比較した場合、反射や回折によって生じる減衰は、到達距離に応じた減衰に比べ、周波数Fの違いによる程度の差が大きい。具体的には、第1周波数F1の電波と第2周波数F2の電波とを比較した場合、到達距離に応じた減衰は、いずれの周波数Fの電波も同程度に減衰する。一方、反射や回折によって生じる減衰は、周波数Fが低い電波よりも周波数Fが高い電波のほうが、より大きく減衰する。
つまり、第1周波数F1の電波と第2周波数F2の電波との減衰の状態を比較すれば、アンテナANTに直接到来した電波であるのか、反射や回折によってアンテナANTに到来した電波であるのかを判別することができる。以下の説明において、反射や回折によってアンテナANTに到来した電波のことを「間接波」とも記載する。また、アンテナANTに直接到来した電波のことを「直接波」とも記載する。
【0030】
受信状態判定部210は、通信要求信号Wどうしの受信強度を比較することにより、通信要求信号Wの受信状態を判定する。ここで、受信状態とは、受信した電波が直接波であるのか、間接波であるのかということである。具体的には、受信状態判定部210は、第1周波数受信部110が受信した通信要求信号Wの受信強度と、第2周波数受信部120が受信した通信要求信号Wの受信強度との差が、所定の閾値を超えているか否かを判定する。受信状態判定部210は、これら受信強度どうしの差が所定の閾値を超えている場合には、通信要求信号Wが間接波によって到来したものであると判定する。また、受信状態判定部210は、これら受信強度どうしの差が所定の閾値を超えていない場合には、通信要求信号Wが直接波によって到来したものであると判定する。
この所定の閾値は、記憶部300にあらかじめ記憶されていてもよい。
【0031】
なお、上述した電波の減衰によって、通信要求信号Wの受信品質に影響が生じることがある。受信品質とは、例えば、S/N(Signal・Noise)比である。この場合、受信状態判定部210は、受信強度に代えて、又は受信強度に加えて、通信要求信号Wどうしの受信品質を比較することにより、通信要求信号Wの受信状態を判定してもよい。
【0032】
また、受信状態判定部210は、受信強度に代えて、又は受信強度に加えて、通信要求信号Wのフェージング速度、又は通信要求信号Wの振幅減衰を比較することにより、通信要求信号Wの受信状態を判定してもよい。
【0033】
図2に戻り、端末位置判定部220は、受信状態判定部210による判定結果に基づいて、通信端末CTの位置が、通信要求信号Wを示す電波を受信するアンテナANTの指向特性に応じた受信エリアAR1内であるか否かを判定する。具体的には、端末位置判定部220は、通信端末CTから到来した通信要求信号Wが間接波によるものであると受信状態判定部210が判定した場合には、通信端末CTの位置が非受信エリアAR2(この一例の場合、店舗外)にあると判定する。また、端末位置判定部220は、通信端末CTから到来した通信要求信号Wが直接波によるものであると受信状態判定部210が判定した場合には、通信端末CTの位置が受信エリアAR1(この一例の場合、店舗内)にあると判定する。
【0034】
[端末位置判定装置10の動作]
次に、端末位置判定装置10の動作の一例について
図3を参照して説明する。
図3は、本実施形態の端末位置判定装置10の動作の一例を示す図である。
【0035】
(ステップS10)第1周波数受信部110は、第1周波数アンテナANT1を介して通信要求信号Wを受信した場合、受信した通信要求信号Wの信号レベル(受信強度)を示す受信強度情報を受信状態判定部210に出力する。
受信状態判定部210は、第1周波数受信部110から通信要求信号Wの受信強度情報を取得する。上述したように第1周波数アンテナANT1は、第1周波数F1の通信要求信号Wを受信する。したがって、第1周波数受信部110が出力する受信強度情報は、第1周波数F1の通信要求信号Wの受信強度を示す。
受信状態判定部210は、取得した通信要求信号Wの受信強度情報を、記憶部300に受信状態情報RTとして記憶させる。記憶部300に記憶される受信状態情報RTの一例について
図4を参照して説明する。
【0036】
図4は、本実施形態の受信状態情報RTの一例を示す図である。受信状態情報RTには、タイムスタンプと、通信端末IDと、周波数IDと、信号レベルとが互いに対応付けられて記憶される。タイムスタンプとは、第1周波数受信部110が通信要求信号Wを受信した時刻を示す情報である。通信端末IDとは、通信端末CTを識別する情報である。周波数IDとは、通信要求信号Wの周波数Fを識別する情報である。信号レベルとは、通信要求信号Wの受信強度を示す情報である。
具体的な一例として、受信部100が通信要求信号Wを2016年9月30日15時00分00秒に受信した場合には、受信状態判定部210は、タイムスタンプに「20160930150000」を記憶させる。この通信要求信号Wが通信端末CT1が送信した通信要求信号Wである場合には、受信状態判定部210は、通信端末IDに「CT1」を記憶させる。この通信要求信号Wが第1周波数受信部110によって受信された場合には、受信状態判定部210は、周波数IDに「FQ1」を記憶させる。この通信要求信号Wの受信強度が−50[dbm]である場合には、受信状態判定部210は、信号レベルに「−50」を記憶させる。
【0037】
(ステップS20)
図3に戻り、第2周波数受信部120は、第2周波数アンテナANT2を介して通信要求信号Wを受信した場合、受信した通信要求信号Wの信号レベル(受信強度)を示す受信強度情報を受信状態判定部210に出力する。
受信状態判定部210は、第2周波数受信部120から通信要求信号Wの受信強度情報を取得する。上述したように第2周波数アンテナANT2は、第2周波数F2の通信要求信号Wを受信する。したがって、第2周波数受信部120が出力する受信強度情報は、第2周波数F2の通信要求信号Wの受信強度を示す。
受信状態判定部210は、取得した通信要求信号Wの受信強度情報を、記憶部300に受信状態情報RTとして記憶させる。
具体的な一例として、受信部100が通信要求信号Wを2016年9月30日15時00分30秒に受信した場合には、受信状態判定部210は、タイムスタンプに「20160930150030」を記憶させる。この通信要求信号Wが通信端末CT1が送信した通信要求信号Wである場合には、受信状態判定部210は、通信端末IDに「CT1」を記憶させる。この通信要求信号Wが第2周波数受信部120によって受信された場合には、受信状態判定部210は、周波数IDに「FQ2」を記憶させる。この通信要求信号Wの受信強度が−50[dbm]である場合には、受信状態判定部210は、信号レベルに「−50」を記憶させる。
【0038】
(ステップS30)受信状態判定部210は、第1周波数受信部110が受信する第1周波数F1の通信要求信号Wと、第2周波数受信部120が受信する第2周波数F2の通信要求信号Wとを比較することにより、通信要求信号Wの受信状態を判定する。
具体的には、受信状態判定部210は、記憶部300から受信状態情報RTを読み出す。ここで受信状態判定部210は、1つの通信端末CTから受信された2つの周波数Fの通信要求信号Wのうち、互いのタイムスタンプが他のタイムスタンプに比べて近い2つの通信要求信号Wを、記憶部300から読み出す。より具体的には、受信状態判定部210は、通信端末CT1から受信された通信要求信号Wについて、周波数IDが「FQ1」、タイムスタンプが「20160930150000」の通信要求信号Wの信号レベルと、周波数IDが「FQ2」、タイムスタンプが「20160930150030」の通信要求信号Wの信号レベルとを読み出す。この一例では、2つの通信要求信号Wの信号レベルは、いずれも「−50」である。
受信状態判定部210は、記憶部300から読み出した2つの通信要求信号Wの信号レベルどうしの差を算出する。この一例では、受信状態判定部210は、2つの通信要求信号Wの信号レベル「−50」と「−50」との差、すなわち、「0」(ゼロ)を算出する。
端末位置判定部220は、受信状態判定部210が算出した信号レベルの差と、所定の閾値とを比較する。この一例では、所定の閾値とは「10」である。端末位置判定部220は、信号レベルの差「0」と所定の閾値「10」とを比較する。端末位置判定部220は、信号レベル差が所定の閾値を超えていない場合(ステップS30;NO)には、通信端末CTが受信エリアAR1内にあると判定する(ステップS40)。また、端末位置判定部220は、信号レベル差が所定の閾値を超えている場合(ステップS30;YES)には、通信端末CTが受信エリアAR1内にないと判定する(ステップS50)。
【0039】
なお、端末位置判定部220は、受信状態判定部210の複数回の判定結果に基づいて、通信端末CTの位置が受信エリアAR1内であるか否かを判定してもよい。この場合には、端末位置判定部220は、ステップS60及びステップS70の処理を行う。
【0040】
(ステップS60)端末位置判定部220は、ステップS40又はステップS50における判定結果を記憶部300に記憶させる。
(ステップS70)端末位置判定部220は、ステップS30からステップS60までの判定回数が所定の閾値以上であるか否かを判定する。ここで、端末位置判定部220は、ステップS30からステップS60までの一連の処理を1回の判定回数として判定する。端末位置判定部220は、判定回数が所定の閾値以上でない場合(ステップS70;NO)には、処理をステップS10に戻す。また、端末位置判定部220は、判定回数が所定の閾値以上である場合(ステップS70;YES)には、各回の判定結果が一致している場合に判定結果を確定して、確定した判定結果を記憶部300に出力し(ステップS80)、処理を終了する。
【0041】
[受信状態判定部210による複数回の判定の例]
この一例では、判定回数の所定の閾値とは「2」である。つまり、この一例の場合、端末位置判定部220は、判定回数が2回以上であり、かつ各回の判定結果が一致している場合に判定結果を確定する。
図4に示す一例では、通信端末CT1は、1分間隔で通信要求信号Wを送信している。より具体的には、通信端末CT1が送信する通信要求信号Wを2016年9月30日15時00分30秒に受信部100が受信し、再び通信端末CT1が送信する通信要求信号Wを、その1分後、すなわち2016年9月30日15時00分30秒に受信部100が受信している。
【0042】
この一例の場合、1回目の判定において、受信状態判定部210は、通信端末CT1から受信された通信要求信号Wについて、周波数IDが「FQ1」、タイムスタンプが「20160930150000」の通信要求信号Wの信号レベル「−50」と、周波数IDが「FQ2」、タイムスタンプが「20160930150030」の通信要求信号Wの信号レベル「−50」とを読み出す。
受信状態判定部210は、記憶部300から読み出した2つの通信要求信号Wの信号レベル「−50」と「−50」との差としての「0」(ゼロ)を算出する。
【0043】
また、2回目の判定において、受信状態判定部210は、通信端末CT1から受信された通信要求信号Wについて、周波数IDが「FQ1」、タイムスタンプが「20160930150100」の通信要求信号Wの信号レベル「−80」と、周波数IDが「FQ2」、タイムスタンプが「20160930150130」の通信要求信号Wの信号レベル「−85」とを読み出す。
受信状態判定部210は、記憶部300から読み出した2つの通信要求信号Wの信号レベル「−80」と「−85」との差としての「5」を算出する。
なお、受信状態判定部210は、2つの通信要求信号Wの信号レベルの差が負の値になる場合には、信号レベルの差の大きさ(絶対値)を算出してもよい。
【0044】
上述したように、信号レベルの差の所定の閾値は「10」であるから、端末位置判定部220は、1回目の判定及び2回目の判定ともに、通信端末CTが受信エリアAR1内にあると判定する。この場合、2回の判定結果が一致しているため、端末位置判定部220は、通信端末CT1が受信エリアAR1内にあるという判定結果を確定する。
【0045】
[通信端末CTが受信エリアAR1にないと判定される場合の例]
図4に示す一例では、通信端末CT3についての受信状態情報RTは、タイムスタンプが「20160930150200」、周波数IDが「FQ1」、信号レベル「−80」と、タイムスタンプが「20160930150230」、周波数IDが「FQ2」、信号レベル「−100」とである。この一例の場合、受信状態判定部210は、記憶部300から読み出した2つの通信要求信号Wの信号レベル「−80」と「−100」との差としての「20」を算出する。
上述したように、信号レベルの差の所定の閾値は「10」であるから、端末位置判定部220は、通信端末CT3が受信エリアAR1内にないと判定する(ステップS50)。
【0046】
[滞在時間tmの計測]
端末位置判定装置10は、滞在時間計測部230を演算部200の機能部として備えていてもよい。滞在時間計測部230は、端末位置判定部220による判定結果に基づいて、通信端末CTの受信エリアAR1内の滞在時間tmを計測する。
図5は、本実施形態の滞在時間計測部230が計測する滞在時間tmの一例を示す図である。端末位置判定部220は、上述したステップS80において判定結果を記憶部300に記憶させる。
同図に示す一例においては、通信端末CTを所持する客が時刻t1において店舗外から店舗内に移動した。つまり、時刻t1において店舗に客が来店した。この場合、端末位置判定部220は、通信端末CTが時刻t1において非受信エリアAR2から受信エリアAR1に移動したと判定する。
また、同図に示す一例においては、通信端末CTを所持する客が時刻t2において店舗内から店舗外に移動した。つまり、時刻t2において店舗に客が退店した。この場合、端末位置判定部220は、通信端末CTが時刻t2において受信エリアAR1から非受信エリアAR2に移動したと判定する。
滞在時間計測部230は、この端末位置判定部220の判定結果に基づいて、客の来店時刻(時刻t1)から客の退店時刻(時刻t2)までの経過時間、すなわち滞在時間tm1を計測する。
【0047】
なお、滞在時間計測部230は、同一の通信端末CT(例えば、通信端末CT1)について、来店と退店とが複数回ある場合には、これら複数回の滞在時間tmを積算してもよい。同図に示す一例では、滞在時間計測部230は、滞在時間tm1と、滞在時間tm2と、滞在時間tm3とを積算してもよい。
また、滞在時間計測部230は、滞在時間tmを積算する場合に、所定の期間が経過した後、積算した滞在時間tmを初期化(例えば、ゼロクリア)してもよい。ここで、所定の期間は、店舗の立地条件、店舗で販売している商品の種類、店舗で提供しているサービスの種類、店舗に訪れる客層などに応じて定められる。例えば、店舗で販売している商品が比較的高額である場合など、客が数週間にわたって複数の店舗を順次訪問してから、商品を購入する店舗を決める場合がある。この場合には、所定の期間は、数週間に設定されていてもよい。
【0048】
[入場回数atの計測]
端末位置判定装置10は、入場回数計測部240を演算部200の機能部として備えていてもよい。入場回数計測部240は、端末位置判定部220による判定結果に基づいて、通信端末CTの受信エリアAR1への入場回数atを計測する。ここで、受信エリアAR1が店舗内に設定されている場合には、受信エリアAR1への入場とは、客の来店である。上述した
図5に示す一例においては、入場回数計測部240は、滞在時間tm1、滞在時間tm2、滞在時間tm3をそれぞれ1回と計測する。この一例の場合、入場回数計測部240は、入場回数atを3回と計測する。
また、入場回数計測部240は、入場回数atを計測する場合に、所定の期間が経過した後、計測した入場回数atを初期化(例えば、ゼロクリア)してもよい。所定の期間は、滞在時間計測部230の場合と同様に定めることができるため、説明を省略する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の端末位置判定装置10は、1つの通信端末CTが送信する複数の信号のうち、周波数Fが互いに異なる少なくとも2つの信号(例えば、通信要求信号W)どうしを比較することにより、通信端末CTの位置を判定する。
【0050】
従来、通信端末CTの位置を判定する場合、判定エリア(例えば、店舗)の中央に設置されたアンテナによる電波の受信強度(つまり、通信端末CTとアンテナとの距離)に基づいて判定することがあった。この従来の技術の場合、判定対象のエリア内とエリア外とを区分する境界線が円周状になるため、境界線の形状と店舗の輪郭形状とが必ずしも一致しないという問題があった。このため、この従来の技術の場合、客が店舗内にいるにもかかわらず店舗外にいると判定されることや、客が店舗外にいるにもかかわらず店舗内にいると判定されることがあり、判定精度を向上させることが困難であった。
また、この従来の技術において判定精度を向上させるために多数のアンテナを店舗内に分散配置することがあったが、この場合には多数のアンテナを設置するため費用が嵩むという問題や、多数のアンテナの設置場所の確保が困難であるという問題があった。
【0051】
また、例えば、多数の店舗がテナントとして入居するショッピングセンターやデパート、量販店などにおいては、自店舗に隣接する店舗が競業他社の店舗であるという場合がある。このような場合において、通信端末CTの位置に基づく来店状況の判定を行う場合に、従来の技術のように通信端末CTの位置の判定精度が低いと、競業他社の店舗への来店を自店舗への来店であると誤判定することがあるという問題も生じていた。
【0052】
一方、本実施形態の端末位置判定装置10は、通信端末CTからアンテナANTに到来する電波が直接波であるのか間接波であるのかによって、通信端末CTの位置を判定する。このため、判定エリアの形状に応じてアンテナANTの指向特性を設定しやすい。例えば、アンテナANTの指向特性を店舗の輪郭形状に合わせて直線的に設定することができる。したがって、本実施形態の端末位置判定装置10によれば、客が店舗内にいるにもかかわらず店舗外にいると判定されることや、客が店舗外にいるにもかかわらず店舗内にいると判定されることを低減することができる。つまり、本実施形態の端末位置判定装置10によれば、通信端末CTの位置の判定精度を向上させることができる。
【0053】
[変形例]
上述した受信エリアAR1は、
図6に示すようにも設定可能である。
図6は、本実施形態の受信エリアの変形例を示す図である。この変形例における受信エリアAR11は、アンテナANT−Aの指向特性に応じた受信エリアAR11Aと、アンテナANT−Bの指向特性に応じた受信エリアAR11Bとが合成された領域である。このアンテナANT−Aには、第1周波数アンテナANT−A1と、第2周波数アンテナANT−A2とがある。アンテナANT−Bには、第1周波数アンテナANT−B1と、第2周波数アンテナANT−B2とがある。
【0054】
この変形例において、受信部100は、互いに指向特性が異なる複数のアンテナANT、すなわちアンテナANT−A及びアンテナANT−Bを介して通信要求信号Wを周波数Fごとに受信する。
受信状態判定部210は、複数のアンテナANTのそれぞれについて、通信端末CTが送信する通信要求信号Wの受信強度の周波数Fによる差を算出する。
具体的には、受信状態判定部210は、アンテナANT−Aについて、第1周波数アンテナANT−A1を介して受信された通信要求信号Wの信号レベルと、第2周波数アンテナANT−A2を介して受信された通信要求信号Wの信号レベルとの差を算出する。端末位置判定部220は、アンテナANT−Aについての信号レベル差に基づいて、通信端末CTが受信エリアAR11A内にあるか否かを判定する。
また、受信状態判定部210は、アンテナANT−Bについて、第1周波数アンテナANT−B1を介して受信された通信要求信号Wの信号レベルと、第2周波数アンテナANT−B2を介して受信された通信要求信号Wの信号レベルとの差を算出する。端末位置判定部220は、アンテナANT−Bについての信号レベル差に基づいて、通信端末CTが受信エリアAR11B内にあるか否かを判定する。
さらに、端末位置判定部220は、複数のアンテナANTのそれぞれについての受信状態判定部210による判定結果に基づいて、通信端末CTの位置が受信エリアAR11内であるか否かを判定する。具体的には、端末位置判定部220は、通信端末CTが受信エリアAR11A内にあると判定し、かつ、通信端末CTが受信エリアAR11B内にあると判定した場合、通信端末CTが受信エリアAR11内にあると判定する。
【0055】
通信端末CTの位置を判定する対象の領域(例えば、店舗)の輪郭形状が複雑である場合がある。この変形例のように受信エリアAR11を設定することにより、端末位置判定装置10は、通信端末CTの位置を判定する対象の領域の輪郭形状が複雑であっても、通信端末CTの位置を精度よく判定することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態及びその変形を説明したが、これらの実施形態及びその変形は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態及びその変形は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0057】
なお、上述の各装置は内部にコンピュータを有している。そして、上述した各装置の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0058】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。