(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に、
図1を参照して、本実施形態に係るPCU(パワーコントロールユニット)の回路構成を説明する。このPCUは、ハイブリッド車や電気自動車等、モータ(電動機)を動力源として走行する車両に搭載される電力装置である。
【0016】
また、このPCUは、
図1に示すように、直流入出力端子T1,T2、交流入力端子T3〜T5、交流入出力端子T6〜T8、制御端子T9、昇降圧コンバータC、発電用インバータIg、モータ駆動用インバータImを備えている。上記昇降圧コンバータC、発電用インバータIg及びモータ駆動用インバータImは、電力を処理するパワー回路(電力回路)であり、各々にパワー半導体モジュールとして構成されている。すなわち、本実施形態に係るPCUは、3つのパワー半導体モジュールを備える。
【0017】
直流入出力端子T1,T2は、外部の直流電源Eに接続された一対の電力端子である。一方の直流入出力端子T1は直流電源Eのプラス端子に接続され、他方の直流入出力端子T2は、直流電源Eのマイナス端子に接続されている。交流入力端子T3〜T5は、外部の発電機G(三相発電機)に接続された3つの電力端子である。この交流入力端子T3〜T5は、発電機Gの相数に応じて3つ設けられている。
【0018】
交流入出力端子T6〜T8は、外部のモータM(三相電動機)に接続された3つの電力端子である。この交流入出力端子T6〜T8は、モータMの相数に応じて3つ設けられている。制御端子T9は、車両における他の制御装置に接続されており、PCUが他の制御装置とシリアル通信を行うためのものである。
【0019】
上記3つのパワー回路のうち、昇降圧コンバータCは、第1コンデンサ1、インダクタ2、第1アーム3A、第2アーム3B及び第2コンデンサ4を備えている。第1コンデンサ1は、一端が直流入出力端子T1に接続され、他端が直流入出力端子T2に接続されている。インダクタ2は、一端が直流入出力端子T1に接続され、他端が第1アーム3Aのエミッタ端子及び第2アーム3Bのコレクタ端子に共通接続されている。
【0020】
この昇降圧コンバータCにおける2つのスイッチングアーム、つまり第1アーム3A及び第2アーム3Bは、図示するように同一の回路構成を有しており、各々にトランジスタの一種であるIGBT3a(Insulated Gate Bipolar Transistor)にダイオードの一種であるシリコンダイオード3bを逆並列接続したものである。すなわち、第1アーム3A及び第2アーム3Bは、各々にIGBT3aのコレクタ端子にシリコンダイオード3bのカソード端子が接続され、またIGBT3aのエミッタ端子にシリコンダイオード3bのアノード端子が接続されものである。
【0021】
このような2つのスイッチングアームは、各々を構成するIGBT3aのコレクタ端子がスイッチングアームのコレクタ端子であり、IGBT3aのエミッタ端子がスイッチングアームのエミッタ端子であり、またIGBT3aのゲート端子がスイッチングアームのゲート端子である。このような2つのスイッチングアームのうち、第1アーム3Aは、上アームに相当するスイッチングアームであり、コレクタ端子が第2コンデンサ4の一端に接続され、エミッタ端子が第2アーム3Bのコレクタ端子及びインダクタ2の他端に接続され、ゲート端子がゲートドライバ7の出力端子に接続されている。
【0022】
一方、第2アーム3Bは、下アームに相当するスイッチングアームであり、コレクタ端子が第1アーム3Aのエミッタ端子及びインダクタ2の他端に接続され、エミッタ端子が第2コンデンサ4の他端に接続され、ゲート端子がゲートドライバ7の出力端子に接続されている。第2コンデンサ4は、一端が第1アーム3Aのコレクタ端子に接続され、他端が第2アーム3Bのエミッタ端子に接続されている。
【0023】
ここで、昇降圧コンバータCを構成する第1アーム3A及び第2アーム3Bは、
図2に示すように、矩形の絶縁基板P上に矩形の半導体チップとして実装される。この半導体チップは、
図2に示すようにRC-IGBTを備えた複合型半導体チップH1により形成されている。すなわち、第1アーム3A及び第2アーム3Bは、IGBT3aにシリコンダイオード3bが内蔵された内部構造の半導体チップから形成されている。
【0024】
なお、
図2では、第1アーム3A及び第2アーム3Bが2つの複合型半導体チップH1から形成されているが、これは第1アーム3A及び第2アーム3Bに昇降圧コンバータCの回路性能として要求される電流容量の関係で、第1アーム3A及び第2アーム3Bが各々に2つのRC-IGBTが並列接続された形態を採用しているためである。
【0025】
このような昇降圧コンバータCでは、第1コンデンサ1の両端が第1入出力端として機能し、また第2コンデンサ4の両端が第2入出力端として機能する。すなわち、この昇降圧コンバータCは、ゲートドライバ7によって第1アーム3A及び第2アーム3BのON/OFF状態が適宜設定されることにより、直流入出力端子T1,T2を介して外部の直流電源Eから第1入出力端に入力される第1電圧の直流電力を第2電圧(>第1電圧)に昇圧し、第2入出力端から発電用インバータIg及びモータ駆動用インバータImに出力する。
【0026】
また、この昇降圧コンバータCは、同じくゲートドライバ7によって第1アーム3A及び第2アーム3BのON/OFF状態が適宜設定されることにより、発電用インバータIg及び/あるいはモータ駆動用インバータImから第2入出力端に入力された第2電圧の発電電力及び/あるいは回生電力を第1電圧に降圧し、第1入出力端から直流入出力端子T1,T2を介して直流電源Eに出力する。
【0027】
一方、発電用インバータIgは、6つのスイッチングアーム、つまり第1アーム5A、第2アーム5B、第3アーム5C、第4アーム5D、第5アーム5E及び第6アーム5Fを備えている。これら6つのスイッチングアームのうち、互いに直列接続されている第1アーム5Aと第2アーム5Bとは第1のスイッチングレグを構成し、同じく直列接続されている第3アーム5Cと第4アーム5Dとは第2のスイッチングレグを構成し、同じく直列接続されている第5アーム5Eと第6アーム5Fとは第3のスイッチングレグを構成している。また、第1アーム5A、第3アーム5C及び第5アーム5Eは各スイッチングレグにおける上アームを構成し、第2アーム5B、第4アーム5D及び第6アーム5Fは、各スイッチングレグにおける下アームを構成する。
【0028】
これら6つのスイッチングアームは、各々にIGBT5a(Insulated Gate Bipolar Transistor)にシリコンダイオード5bを逆並列接続したもの、つまりIGBT5aのコレクタ端子にシリコンダイオード5bのカソード端子が接続され、またIGBT5aのエミッタ端子にシリコンダイオード5bのアノード端子が接続されものである。また、これら6つのスイッチングアームは、各々を構成するIGBT5aのコレクタ端子がスイッチングアームのコレクタ端子であり、IGBT5aのエミッタ端子がスイッチングアームのエミッタ端子であり、またIGBT5aのゲート端子がスイッチングアームのゲート端子である。
【0029】
第1アーム5Aは、コレクタ端子が上記第2入出力端の一方(第2コンデンサ4の一端)に接続され、エミッタ端子が第2アーム5Bのコレクタ端子及び交流入力端子T3に接続され、ゲート端子がゲートドライバ7の出力端子に接続されている。
【0030】
第2アーム5Bは、コレクタ端子が第1アーム5Aのエミッタ端子及び交流入力端子T3に接続され、エミッタ端子が上記第2入出力端の他方(第2コンデンサ4の他端)に接続され、ゲート端子がゲートドライバ7の出力端子に接続されている。
【0031】
第3アーム5Cは、コレクタ端子が上記第2入出力端の一方(第2コンデンサ4の一端)に接続され、エミッタ端子が第4アーム5Dのコレクタ端子及び交流入力端子T4に接続され、ゲート端子がゲートドライバ7の出力端子に接続されている。
【0032】
第4アーム5Dは、コレクタ端子が第3アーム5Cのエミッタ端子及び交流入力端子T4に接続され、エミッタ端子が上記第2入出力端の他方(第2コンデンサ4の他端)に接続され、ゲート端子がゲートドライバ7の出力端子に接続されている。
【0033】
第5アーム5Eは、コレクタ端子が上記第2入出力端の一方(第2コンデンサ4の一端)に接続され、エミッタ端子が第6アーム5Fのコレクタ端子及び交流入力端子T5に接続され、ゲート端子がゲートドライバ7の出力端子に接続されている。
【0034】
第6アーム5Fは、コレクタ端子が第5アーム5Eのエミッタ端子及び交流入力端子T5に接続され、エミッタ端子が上記第2入出力端の他方(第2コンデンサ4の他端)に接続され、ゲート端子がゲートドライバ7の出力端子に接続されている。
【0035】
このような発電用インバータIgでは、第1アーム5Aのコレクタ端子、第3アーム5Cのコレクタ端子及び第5アーム5Eのコレクタ端子が一方の直流出力端として機能し、第2アーム5Bのエミッタ端子、第4アーム5Dのエミッタ端子及び第6アーム5Fのエミッタ端子が他方の直流出力端として機能する。
【0036】
また、この発電用インバータIgでは、交流入力端子T3に共通接続された第1アーム5Aのエミッタ端子及び第2アーム5Bのコレクタ端子、交流入力端子T4に共通接続された第3アーム5Cのエミッタ端子及び第4アーム5Dのコレクタ端子並びに交流入力端子T5に共通接続された第5アーム5Eのエミッタ端子及び第6アーム5Fのコレクタ端子は、交流入力端として機能する。
【0037】
すなわち、この発電用インバータIgは、ゲートドライバ7によって6つのスイッチングアームのON/OFF状態が適宜設定されることにより、発電機Gから交流入力端子T3〜T5を介して交流入力端に入力される発電電力(交流電力)を直流電力に変換し、当該直流電力を直流出力端から昇降圧コンバータCの第2入出力端に出力する。
【0038】
ここで、このような発電用インバータIgを構成する6つのスイッチングアームは、
図2に示すようにRC-IGBTを備える複合型半導体チップH1によって形成されている。すなわち、発電用インバータIgの各スイッチングアームは、IGBT5aにシリコンダイオード5bが内蔵された内部構造の半導体チップから形成されている。
【0039】
一方、モータ駆動用インバータImは、6つのスイッチングアーム、つまり第1アーム6A、第2アーム6B、第3アーム6C、第4アーム6D、第5アーム6E及び第6アーム6Fを備えている。これら6つのスイッチングアームのうち、互いに直列接続されている第1アーム6Aと第2アーム6Bとは第1のスイッチングレグを構成し、同じく直列接続されている第3アーム6Cと第4アーム6Dとは第2のスイッチングレグを構成し、同じく直列接続されている第5アーム6Eと第6アーム6Fとは第3のスイッチングレグを構成している。また、第1アーム6A、第3アーム6C及び第5アーム6Eは各スイッチングレグにおける上アームを構成し、第2アーム6B、第4アーム6D及び第6アーム6Fは、各スイッチングレグにおける下アームを構成している。
【0040】
このようなモータ駆動用インバータImにおける6つのスイッチングアームは、図示するようにIGBT6a(Insulated Gate Bipolar Transistor)にシリコンダイオード6bを逆並列接続したもの、つまりIGBT6aのコレクタ端子にシリコンダイオード6bのカソード端子が接続され、またIGBT6aのエミッタ端子にシリコンダイオード6bのアノード端子が接続されものである。また、これら6つのスイッチングアームは、各々を構成するIGBT6aのコレクタ端子がスイッチングアームのコレクタ端子であり、IGBT6aのエミッタ端子がスイッチングアームのエミッタ端子であり、またIGBT6aのゲート端子がスイッチングアームのゲート端子である。
【0041】
第1アーム6Aは、コレクタ端子が昇降圧コンバータCの第2入出力端の一方(第2コンデンサ4の一端)に接続され、エミッタ端子が第2アーム6Bのコレクタ端子及び交流入出力端子T6に接続され、ゲート端子がゲートドライバ7の出力端子に接続されている。
【0042】
第2アーム6Bは、コレクタ端子が第1アーム6Aのエミッタ端子及び交流入出力端子T6に接続され、エミッタ端子が昇降圧コンバータCの第2入出力端の他方(第2コンデンサ4の他端)に接続され、ゲート端子がゲートドライバ7の出力端子に接続されている。
【0043】
第3アーム6Cは、コレクタ端子が上記第2入出力端の一方(第2コンデンサ4の一端)に接続され、エミッタ端子が第4アーム6Dのコレクタ端子及び交流入出力端子T7に接続され、ゲート端子がゲートドライバ7の出力端子に接続されている。
【0044】
第4アーム6Dは、コレクタ端子が第3アーム6Cのエミッタ端子及び交流入出力端子T7に接続され、エミッタ端子が上記第2入出力端の他方(第2コンデンサ4の他端)に接続され、ゲート端子がゲートドライバ7の出力端子に接続されている。
【0045】
第5アーム6Eは、コレクタ端子が上記第2入出力端の一方(第2コンデンサ4の一端)に接続され、エミッタ端子が第6アーム6Fのコレクタ端子及び交流入出力端子T8に接続され、ゲート端子がゲートドライバ7の出力端子に接続されている。
【0046】
第6アーム6Fは、コレクタ端子が第5アーム6Eのエミッタ端子及び交流入出力端子T8に接続され、エミッタ端子が上記第2入出力端の他方(第2コンデンサ4の他端)に接続され、ゲート端子がゲートドライバ7の出力端子に接続されている。
【0047】
このようなモータ駆動用インバータImでは、第1アーム6Aのコレクタ端子、第3アーム6Cのコレクタ端子及び第5アーム6Eのコレクタ端子が一方の直流入出力端として機能し、第2アーム6Bのエミッタ端子、第4アーム6Dのエミッタ端子及び第6アーム6Fのエミッタ端子が他方の直流入出力端として機能する。
【0048】
また、このモータ駆動用インバータImでは、交流入出力端子T6に共通接続された第1アーム6Aのエミッタ端子及び第2アーム6Bのコレクタ端子、交流入出力端子T7に共通接続された第3アーム6Cのエミッタ端子及び第4アーム6Dのコレクタ端子並びに交流入出力端子T8に共通接続された第5アーム6Eのエミッタ端子及び第6アーム6Fのコレクタ端子は交流入出力端として機能する。
【0049】
すなわち、このモータ駆動用インバータImは、ゲートドライバ7によって6つのスイッチングアームのON/OFF状態が適宜設定されることにより、昇降圧コンバータCから直流入出力端に入力される第2電圧の直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力を交流入出力端から交流入出力端子T6〜T8を介してモータMに出力する。
【0050】
また、このモータ駆動用インバータImは、同じくゲートドライバ7によって6つのスイッチングアームのON/OFF状態が適宜設定されることにより、モータMから交流入出力端子T6〜T8を介して交流入出力端に入力される交流電力を直流電力に変換し、当該直流電力を直流入出力端から昇降圧コンバータCの第2入出力端に出力する。
【0051】
ここで、このような6つのスイッチングアームは、
図2に示すように、IGBT6aとシリコンダイオード6bとを個別に備える半導体チップによって形成されている。すなわち、モータ駆動用インバータImの各スイッチングアームは、上述した昇降圧コンバータC及び発電用インバータIgが採用している複合型半導体チップH1ではなく、単独のIGBT6aを備えた第1の単独型半導体チップH2と単独のシリコンダイオード6bを備えた第2の単独型半導体チップH3とを備える。
【0052】
なお、
図2では、第1アーム6A、第2アーム6B、第3アーム6C、第4アーム6D、第5アーム6E及び第6アーム6Fが各々に2つの第1の単独型半導体チップH2により形成されているが、これは第1アーム6A、第2アーム6B、第3アーム6C、第4アーム6D、第5アーム6E及び第6アーム6Fに回路性能として要求される電流容量の関係で、第1アーム6A、第2アーム6B、第3アーム6C、第4アーム6D、第5アーム6E及び第6アーム6Fが各々に2つのIGBT6aが並列接続された形態を採用しているためである。
【0053】
このように、本実施形態におけるPCUは、合計14個(複数)のスイッチングアームを備え、この14個の一部であり、昇降圧コンバータC及び発電用インバータIgを構成する合計8つのスイッチングアームが複合型半導体チップH1によって形成され、他のスイッチングアームであり、モータ駆動用インバータImを構成する6つのスイッチングアームが第1、第2の単独型半導体チップH2,H3によって形成されている。
【0054】
さらに、本実施形態におけるPCUは、上記3つのパワー回路を駆動する駆動回路としてゲートドライバ7を備え、また当該ゲートドライバ7を制御する制御回路としてECU8(Electronic Control Unit)を備えている。ゲートドライバ7は、昇降圧コンバータCにおける2つのスイッチングアーム、発電用インバータIgにおける6つのスイッチングアーム及びモータ駆動用インバータImにおける6つのスイッチングアームのON/OFF状態を適宜設定するパルス信号を生成する。すなわち、このゲートドライバ7は、合計で14個の出力端子を備えており、個別に生成したパルス信号を各出力端子から昇降圧コンバータC子、発電用インバータIg及びモータ駆動用インバータImに出力する。
【0055】
ECU8は、上記ゲートドライバ7に各パルス信号を生成するために必要な制御指令を出力する制御装置である。すなわち、このECU8は、制御端子T9を介して他の制御装置から受信した車両情報に基づいてゲートドライバ7を制御することにより、3つのパワー回路を統括的に制御する。このようなECU8は、3つのパワー回路をゲートドライバ7を介して適宜作動させることによって、モータMを回転駆動したり、あるいは発電機Gの発電電力あるいは/及びモータMの回生電力を直流電源Eに供給する。
【0056】
このように構成された本実施形態のPCUでは、車両情報に応じてECU8がゲートドライバ7に出力する制御指令を切替えることにより、パワー半導体モジュールの1つである昇降圧コンバータCが昇圧動作あるいは降圧動作を行い、また他のパワー半導体モジュールである発電用インバータIgが整流動作を行う。
【0057】
これに対して、パワー半導体モジュールの1つであるモータ駆動用インバータImは、車両情報に応じて力行動作あるいは回生動作を行う。そして、モータ駆動用インバータImの力行動作と回生動作では、6つのスイッチングアームにおける電流経路が異なる。すなわち、モータ駆動用インバータImの力行動作では、6つのスイッチングアームを各々構成するIGBT及びダイオードのうちIGBTに主電流が流れ、一方、回生動作ではダイオードに主電流が流れる。
【0058】
したがって、モータ駆動用インバータImを構成する第1アーム6A、第2アーム6B、第3アーム6C、第4アーム6D、第5アーム6E及び第6アーム6Fについては、
図2に示すように、ダイオードの半導体チップとして電流容量が比較的大きなもの、つまりチップサイズが比較的大きなものを採用する必要がある。しかしながら、このような大電流容量のダイオードがIGBTに内蔵されたRC-IGBTは、チップコストが高い。
【0059】
そして、本実施形態に係るPCUでは、力行動作と回生動作とで主電流の電流経路が異なるモータ駆動用インバータImの各スイッチングアームが第1、第2の単独型半導体チップH2,H3により形成され、これに対して昇降圧コンバータC及び発電用インバータIgのスイッチングアームが複合型半導体チップH1により形成されている。
【0060】
このような本実施形態によれば、3つのパワー半導体モジュールを備えたPCUにおいて、
図3に示すようにチップコスト、損失(回路損失)及び容積・重量を最適化することが可能である。すなわち、本実施形態によれば、複合型半導体チップH1と第1、第2の単独型半導体チップH2,H3との混成を採用するので、全てのスイッチングアームを第1、第2の単独型半導体チップH2、H3で形成した場合(別体)、全てのスイッチングアームを複合型半導体チップH1で形成した場合(複合)との比較において、チップコスト、損失(回路損失)及び容積・重量の総合評価を最小化することが可能である。したがって、本実施形態によれば、低コスト、低損失かつ小型軽量なPCUを実現することが可能である。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、昇降圧コンバータCを構成する第1アーム3A及び第2アーム3Bを複合型半導体チップH1で形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば第1アーム3A及び第2アーム3Bのうち、第2アーム3Bを第1、第2の単独型半導体チップH2,H3で形成しても良い。
【0062】
モータ駆動用インバータImが回生動作をする場合、第1アーム3AのIGBTと第2アーム3Bのダイオードとに主に電流が流れるので、第2アーム3Bのダイオードはチップサイズとして比較的大きなものが好ましい。このような事情から、ダイオードに主電流が流れるモータ駆動用インバータImと同様に昇降圧コンバータCの第2アーム3Bについても第1、第2の単独型半導体チップH2,H3を採用することが考えられる。
【0063】
(2)上記実施形態では、各スイッチングアームを構成するトランジスタとしてIGBTを採用し、またダイオードとしてシリコンダイオードを採用したが、本発明はこれに限定されない。トランジスタ及びダイオードとして、シリコンカーバイド(SiC)やガリウムナイトライド(GaN)等の化合物半導体から形成されたトランジスタ及びダイオードを採用しても良い。
【0064】
例えばシリコンカーバイド(SiC)やガリウムナイトライド(GaN)から形成されたSiC MOSEFTやGaN FETをトランジスタとして採用した場合、IGBTよりも低損失化、高速化、小型化が実現できる。また、シリコンカーバイド(SiC)やガリウムナイトライド(GaN)から形成されたSiCショットキーダイオードやGaNダイオードを採用することによっても低損失化、高速化、小型化が実現できる。
【0065】
(3)上記実施形態では、全てのスイッチングアームをシリコン系のトランジスタ(IGBT、RC-IGBT)及びシリコンダイオードで構成したが、本発明はこれに限定されない。必要に応じて一部のトランジスタを化合物半導体系のトランジスタに置き換えても良く、また一部のダイオードを化合物半導体系のダイオードに置き換えても良い。
【0066】
(4)上記実施形態では、PCUを3つのパワー半導体モジュールを用いて構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、昇降圧コンバータCと発電用インバータIgとを1つのパワー半導体モジュールとして構成しても良く、あるいは昇降圧コンバータCとモータ駆動用インバータImとを1つのパワー半導体モジュールとして構成しても良い。また、発電用インバータIgとモータ駆動用インバータImとを1つのパワー半導体モジュールとして構成しても良く、さらには昇降圧コンバータC、発電用インバータIg及びモータ駆動用インバータImを1つのパワー半導体モジュールとして構成しても良い。
【0067】
(5)上記実施形態では、
図2に示すように発電用インバータIgを挟んで昇降圧コンバータCとモータ駆動用インバータImとを左右に配置する回路レイアウトを採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、昇降圧コンバータCを挟んで発電用インバータIgとモータ駆動用インバータImとを左右に配置しても良い。
【0068】
(6)上記実施形態では、モータMを動力源として走行する車両用PMUとして、昇降圧コンバータC、発電用インバータIg及びモータ駆動用インバータImという3つの電力回路を備えるMPUについて説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、電力回路の構成を限定するものではない。
【0069】
(7)上記実施形態では、昇降圧コンバータCを構成する第1アーム3A及び第2アーム3Bが各々に2つの複合型半導体チップH1を備えているが、本発明はこれに限定されない。複合型半導体チップH1の個数は、1つあるいは3つ以上であっても良い。また、モータ駆動用インバータImを構成する6つのスイッチングアームは、各々に2つの単独型半導体チップH2を備えているが、当該単独型半導体チップH2の個数は1つあるいは3つ以上であっても良い。さらには、発電用インバータIgを構成する6つのスイッチングアームは、各々に1つの複合型半導体チップH1を備えているが、当該複合型半導体チップH1の個数は2以上であっても良い。