(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702859
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】連続的に細胞を培養する装置および方法
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20200525BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12M1/00 C
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-523289(P2016-523289)
(86)(22)【出願日】2014年10月16日
(65)【公表番号】特表2016-533177(P2016-533177A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】KR2014009714
(87)【国際公開番号】WO2015056986
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2017年10月12日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0123459
(32)【優先日】2013年10月16日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0139677
(32)【優先日】2014年10月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516109370
【氏名又は名称】メディカン インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヒー ヤング
【審査官】
伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−211485(JP,A)
【文献】
米国特許第05409841(US,A)
【文献】
特開2004−105139(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0068814(US,A1)
【文献】
特開2012−147678(JP,A)
【文献】
米国特許第05900374(US,A)
【文献】
国際公開第2011/096659(WO,A1)
【文献】
特表2014−530618(JP,A)
【文献】
特開2004−129558(JP,A)
【文献】
特開平09−065876(JP,A)
【文献】
特開2012−090612(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/020458(WO,A1)
【文献】
特開2003−235539(JP,A)
【文献】
特表2004−535826(JP,A)
【文献】
特開2005−080660(JP,A)
【文献】
特表2011−504748(JP,A)
【文献】
特表2001−504692(JP,A)
【文献】
米国特許第04810652(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞が培養される空間を持つ培養容器と、
前記空間へ細胞培養に必要な気体を循環させることができる循環フィルターと、を有し、
前記循環フィルターは、
前記培養容器の側面に設置され、前記空間と前記空間の外部とを連通させる管路、
前記管路の前記培養容器と反対側に位置する末端に設置されるバルブ、
及び前記バルブの内部に設置されるフィルターから構成され、
前記循環フィルターは、前記管路にクリップを装着して前記管路の密閉および開放を選択的に行えることができ、
前記培養容器は、前記クリップが前記管路に装着されて前記空間が密閉された状態での前記空間内への培養液の注入と細胞の接種、脱離、および取得を行うことを可能にし、前記クリップが前記管路から取り外されて前記空間が開放された状態での細胞の培養を可能にする、連続的に細胞を培養する装置であって、
前記空間が密閉された状態での前記注入または前記接種を行うために、前記培養容器の表面に1つ以上の密閉通路が設置されており、
前記密閉通路は、軟質のブロックから構成されて前記空間を密閉し、
注射器の針の刺入時に前記空間に対して流体、気体および細胞の搬出入を可能にするとともに、針が取り除かれると、前記密閉通路の弾性により前記空間が密閉されることを特徴とし、
前記空間が密閉された状態での前記脱離または前記取得を行うために、前記空間にはスクレーパーが設置され、前記スクレーパーの移動または回転によって細胞を掻き取り、
前記スクレーパーは、
外部の位置エネルギーによって移動が可能であること、あるいは、外部の機械的な力によって前記空間の内部表面に接触しながら回転または移動して細胞を掻き取ること、あるいは、磁力によって前記空間の内部表面に接触しながら回転または移動して細胞を掻き取ること、を特徴とし、
前記空間が開放された状態での細胞の培養のために、前記培養容器は、軟質素材からなり、
また、前記培養容器を保管する培養環境手段の内部に陰圧を発生させて前記培養容器の前記空間のサイズ変化を持つようにして、前記循環フィルターを介して培養環境手段内の前記培養容器の前記空間へ細胞の培養に必要な気体を供給することができるようにすることを特徴とし、
さらに、前記培養容器は複数備えられ、この複数の培養容器は前記循環フィルターを介して連続的に並列つなぎされ一体化して気体循環を可能にすることを特徴とする、連続的に細胞を培養する装置。
【請求項2】
前記循環フィルターを介して前記空間の内部へ循環するように出入りする気体は二酸化炭素および酸素の少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の連続的に細胞を培養する装置。
【請求項3】
前記培養容器は、培養液の温度を0℃〜42℃に維持する培養環境手段に保管され、生体細胞を培養させるようにすることを特徴とする、請求項1に記載の連続的に細胞を培養する装置。
【請求項4】
前記スクレーパーは、前記空間の前記底面に接触する下部面が複数のブレードを形成することを特徴とする、請求項1に記載の連続的に細胞を培養する装置。
【請求項5】
前記スクレーパーは、上部に培養溝を形成させることにより、培養液の充填および細胞培養を可能にすることを特徴とする、請求項1に記載の連続的に細胞を培養する装置。
【請求項6】
前記スクレーパーは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル(PET)、ポリメチルペンテン(PMP)、アイオノマー(IO)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリスチレン(PS)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、フェノール樹脂(PF)、尿素樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、エポキシ樹脂(EP)、ポリウレタン(PUR)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)および金属から選ばれた材質であることを特徴とする、請求項1に記載の連続的に細胞を培養する装置。
【請求項7】
前記スクレーパーは、前記空間の前記底面に接触する下部面が複数のブレードを形成し、
前記ブレードは、稜角を持つように形成され、前記空間の底面との摩擦によって細胞を前記底面から脱離させることを特徴とする、請求項1に記載の連続的に細胞を培養する装置。
【請求項8】
細胞が培養される空間を持つ培養容器と、前記空間へ細胞培養に必要な気体を循環させることができる循環フィルターと、を有する細胞を培養する装置を準備する段階と、
密閉された前記培養容器の前記空間に培養液を注入した後、細胞を接種して細胞を培養する段階と、
前記培養容器の前記空間で培養された細胞の密度が基準値以上になると、前記付着した細胞を脱離させる段階と、
密閉された状態を維持する前記培養容器から脱離した細胞を収得する段階と、を含んでなる、連続的に細胞を培養する方法であって、
前記循環フィルターは、前記培養容器の側面に設置され、前記空間と前記空間の外部とを連通させる管路、前記管路の前記培養容器と反対側に位置する末端に設置されるバルブ、及び前記バルブの内部に設置されるフィルターから構成され、
細胞を離脱させる段階は、前記管路にクリップを装着して前記空間を密閉した状態で実施し、
細胞を培養する段階は、前記管路からクリップを取り外して前記空間を開放した状態で実施する、連続的に細胞を培養する方法であって、
前記空間が密閉された状態での前記注入または前記接種を行うために、前記培養容器の表面に1つ以上の密閉通路が設置されており、
前記密閉通路は、軟質のブロックから構成されて前記空間を密閉し、
注射器の針の刺入時に前記空間に対して流体、気体および細胞の搬出入を可能にするとともに、針が取り除かれると、前記密閉通路の弾性により前記空間が密閉されることを特徴とし、
前記空間が密閉された状態での前記脱離を行うために、前記空間にはスクレーパーが設置され、前記空間の内部に設置されたスクレーパーが機械的エネルギーまたは位置エネルギーによって移動しながら細胞を掻き取って前記空間の底部から脱離させるか、あるいは、前記空間の内部に設置されたスクレーパーが、前記培養容器の外部に配置された磁力を持つ手段と連動して前記空間の内部で移動しながら細胞を前記空間の底部から脱離させ、
また、前記空間が開放された状態での細胞の培養のために、前記培養容器は、軟質素材からなり、
前記培養容器を保管する培養環境手段の内部に陰圧を発生させて前記培養容器の前記空間のサイズ変化を持つようにして、前記循環フィルターを介して培養環境手段内の前記培養容器の前記空間へ細胞の培養に必要な気体を供給することができるようにすることを特徴とし、
さらに、前記培養容器は複数備えられ、この複数の培養容器は前記循環フィルターを介して連続的に並列つなぎされ一体化して気体循環を可能にすることを特徴とする、連続的に細胞を培養する方法。
【請求項9】
前記細胞を培養する段階は、
前記空間に培養液を注入する段階と、
前記培養液に細胞を接種する段階と、
前記細胞を培養液で増殖させる段階とから構成されることを特徴とする、請求項8に記載の連続的に細胞を培養する方法。
【請求項10】
前記細胞を収得する段階は、脱離した細胞のうちの一部分を残し、残存した細胞を前記培養容器で繰り返し増殖することができるようにすることを特徴とする、請求項8に記載の連続的に細胞を培養する方法。
【請求項11】
前記培養容器は、軟質素材からなり、
前記細胞を培養液で反復的に増殖させる段階は、
前記培養容器の前記空間を密閉した状態から開放した状態に転換した状態で、前記培養環境手段に前記培養容器を保管し、
前記培養環境手段の内部に供給される気体と陰圧によって前記培養容器の空間のサイズ変化を持つようにして、前記培養容器の内部に対して気体が繰り返し出入りすることを特徴とする、請求項8に記載の連続的に細胞を培養する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に細胞を培養する装置および方法に係り、さらに詳しくは、密閉性を保った状態で細胞及び培養液を注入、培養、脱離および収得することができるようにする、連続的に細胞を培養する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養には、細胞が培養器に付着して増殖する単層培養(付着培養)や、細胞が浮遊状態で増殖する懸濁培養などがある。
【0003】
ほとんどの動物細胞は、表面に付着して生長し、生長速度が微生物に比べて非常に遅いため、生産性が低く、培養途中で微生物によって汚染されやすい。
【0004】
しかし、細胞平面付着培養において、既存の方法は、密閉性の維持が難しいため、一定期間の細胞収得過程後には汚染されやすいという問題を持っている。
【0005】
また、培養細胞を実験室の外部へ移動させるときは、別個の密閉手段を備えなければならないが、未だ完全密閉が成功したことがなく、ほとんど容器を移して培養細胞を移動させる方法を採用している。
【0006】
しかし、容器を移す場合は、もう1回の継代(passage)になるので、培養細胞の均一性を維持することが難しい。
【0007】
一方、容器内に付着して培養された細胞を脱離するためには、トリプシンなどのタンパク質分解酵素を使用する。
【0008】
これらの酵素は付着面との連結面を溶かして細胞の付着を瓦解させるが、酵素処理に時間がかかるうえ、酵素の毒性により細胞の特性変化や死滅などが生ずるなど様々な問題を起こしている。
【0009】
細胞の特性はトリプシン処理の回数で変化の程度を分類するが、これはトリプシンの使用が細胞特性を変化させる問題があるという証拠になる。
【0010】
また、トリプシンを使用すると、培養容器の全面から付着細胞を脱離させる結果をもたらすので、常にこの過程後には一部の細胞を再付着させるための工程を必要とし、再付着確率は10%以下と低い。
【0011】
トリプシンを使用しないための方法としては、水の強いせん断力を利用する方法、平板や緩やかな曲面に適用可能なスクレーパーで掻き出す方法、温度反応液化/硬化型固体−液体、液体−固体素材を付着素材として用いる方法、トリプシンではなくコラゲナーゼを用いる方法などが多様に活用されているが、これらは細胞の回収率が低いか不均一であることや、細胞付着面積の制限などが問題となっている。
【0012】
たとえば、細胞付着ビーズから水のせん断力のみを用いて脱離させる場合、強い渦流を利用しなければならないので、水の方向が均一でないため回収率が一定ではなく、ビーズ同士が衝突しながら、それらの間に挟まれた細胞が損傷を受けるという問題がある。
【0013】
また、コラーゲン付着素材とコラゲナーゼを用いる場合は、細胞が二重以上積層されたとき、内側では酵素の影響を受けないため全く溶解しない細胞があるか、コラーゲンが全て溶けるまでにかかる時間の間、コラゲナーゼのトリプシン類似機能により細胞を溶かすこともできる危険性があるので、活用が容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
かかる問題点を解消するための本発明の連続的に細胞を培養する装置およびこれを用いた培養方法は、培養容器の密閉性を保ちながら、細胞および培養液を選択的かつ反復的に注入、培養、脱離および収得することができるようにして、収得過程で全培養細胞のうちの一部分を除いた細胞を収得し、培養容器の内部に残存している細胞の反復培養を可能とするとともに、培養細胞の汚染防止および均一性の確保を図ることができる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、培養容器を保管しながら細胞増殖の最適の培養環境を与える培養環境手段を用いて、最適の培養温度および細胞増殖に必要な気体を培養容器に供給することができるようにして、細胞培養の増殖性を向上させるようにすることにある。
【0016】
また、本発明の目的は、密閉状態で培養容器の空間の底部に培養されている細胞を脱離させることができるようにすることにある。
【0017】
また、本発明の目的は、密閉型の培養容器を用いて移動、保管および管理を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の連続的に細胞を培養する装置は、選択的に密閉状態を決定することが可能な空間を有する培養容器を用意するが、前記空間が密閉された状態で前記空間内へ培養液の注入と細胞の接種、脱離および収得を行うことを可能にするとともに、前記空間が開放された状態で細胞の培養を可能にする。
【0019】
本発明によれば、細胞の収得過程で全培養細胞のうちの一部分を除いた細胞を収得し、培養容器の内部に残存している細胞の反復培養を可能にする。
【0020】
本発明によれば、細胞の収得過程で全体培養細胞を収得した後、培養容器への培養液の注入と細胞の接種、培養、脱離および収得を繰り返し行うことができるようにする。
【0021】
本発明によれば、前記培養容器には密閉通路を設置し、外部から流体、気体および細胞を空間の内部に対して搬入および搬出する。
【0022】
本発明によれば、前記培養容器は、空間へ細胞培養に必要な気体を循環させることができる循環フィルターを設置する。
【0023】
本発明によれば、前記空間にはスクレーパーが設置され、前記スクレーパーの移動によって細胞を掻き取って空間の底面から細胞を脱離させるように構成する。
【0024】
本発明によれば、前記空間にはスクレーパーが設置されるが、前記スクレーパーの回転によって細胞を掻き取って空間の底面から細胞を脱離させるように構成する。
【0025】
本発明によれば、前記密閉通路は培養容器の表面に1つ以上設置し、前記密閉通路は軟質のブロックから構成されて空間を密閉し、注射器の針の刺入時に空間に対して流体、気体および細胞の搬出入を可能にするとともに、針が取り除かれると、密閉通路の弾性によって空間が密閉される。
【0026】
本発明によれば、前記循環フィルターを介して空間の内部へ循環するように出入りする気体は二酸化炭素および酸素の少なくとも1種を含む。
【0027】
本発明によれば、前記循環フィルターは、培養容器の側面に設置される管路、前記管路の末端に設置されるバルブ、および前記バルブの内部に設置されるフィルターを含んでなる。
【0028】
本発明によれば、前記培養容器は、培養液の温度を0℃〜42℃に維持する培養環境手段に保管され、生体細胞を培養させる。
【0029】
本発明によれば、前記培養容器を保管する培養環境手段の内部に陰圧を発生させて前記培養容器の空気のサイズ変化を持つようにして、循環フィルターを介して培養環境手段内の空間へ細胞培養に必要な気体を供給することができるようにする。
【0030】
本発明によれば、前記培養容器は一つ以上備えられ、該複数の培養容器は前記循環フィルターを介して連続的に連結されて一体化して気体循環を可能にする。
【0031】
本発明によれば、前記スクレーパーは、外部の位置エネルギーによって移動が可能である。
【0032】
本発明によれば、前記スクレーパーは、外部の機械的な力によって空間の内部表面に接触しながら回転または移動して細胞を掻き出す。
【0033】
本発明によれば、前記スクレーパーは、磁力によって空間の内部表面に接触しながら回転または移動して細胞を掻き出す。
【0034】
本発明によれば、前記スクレーパーは、空間の底面に接触する下部面が複数のブレードを形成する。
【0035】
本発明によれば、前記スクレーパーは、上部に培養溝を形成させることにより、培養液の充填および細胞培養を可能にする。
【0036】
本発明によれば、前記スクレーパーは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル(PET)、ポリメチルペンテン(PMP)、アイオノマー(IO)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ塩化ビニル(PVA)、ポリスチレン(PS)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、フェノール樹脂(PF)、尿素樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、エポキシ樹脂(EP)、ポリウレタン(PUR)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)および金属から選ばれた材質を適用する。
【0037】
本発明によれば、前記培養容器の外部の下部面に移動部材を近接させて移動させると、スクレーパーと移動部材とが磁力によって連動する。
【0038】
本発明によれば、前記スクレーパーは、空間の底面に接触する下部面が複数のブレードを形成するが、前記ブレードは、稜角を持つように形成され、空間の底面との摩擦によって細胞を底面から脱離させる。
【0039】
本発明によれば、前記スクレーパーは、空間の底面に接触する下部面が複数のブレードを形成するが、前記ブレードは、稜角が連設されるように形成され、空間の底面に対して接触または非接触するようにする。
【0040】
本発明によれば、前記循環フィルターは、管路にクリップを装着して管路の密閉および開放を選択的に行えるようにする。
【0041】
本発明の連続的に細胞を培養する方法は、密閉された培養容器の内部空間に培養液を注入した後、細胞を接種して細胞を培養する段階と;前記培養容器の空間で培養された細胞の密度が基準値以上になると、前記付着した細胞を脱離させる段階と;密閉された状態を維持する培養容器から脱離した細胞を収得する段階と;を含む。
【0042】
本発明によれば、前記細胞を培養する段階は、前記空間に培養液を注入する段階と、前記培養液に細胞を接種する段階と、前記細胞を培養液で増殖させる段階とから構成される。
【0043】
本発明によれば、前記培養液注入、細胞接種、細胞脱離および細胞収得段階は、密閉容器が常に密閉された状態で行われるようにして、収得後に細胞の安定的かつ反復的培養を可能にする。
【0044】
本発明によれば、前記細胞を脱離させる段階は、空間の内部に設置されたスクレーパーが機械的エネルギーまたは位置エネルギーによって移動しながら細胞を掻き出して空間の底部から脱離させる。
【0045】
本発明によれば、前記細胞を脱離させる段階は、空間の内部に設置されたスクレーパーが、培養容器の外部に配置された磁力を持つ手段と連動して空間の内部で移動しながら、細胞を空間の底部から脱離させる。
【0046】
本発明によれば、前記細胞を収得する段階は、脱離した細胞のうちの一部分を残し、残存した細胞を培養容器で繰り返し増殖することができるようにする。
【0047】
本発明によれば、細胞を培養液で増殖させる段階は、細胞を培養液に接種した後、培養環境手段に培養容器を保管して細胞を培養するが、前記培養環境手段は、0℃〜−42℃の培養温度を有し、細胞培養に必要な気体を培養容器へ供給することができるようにして最適の培養環境を持たせる。
【0048】
本発明によれば、前記細胞を培養液で増殖させる段階は、前記密閉容器の空間を密閉状態から開放状態に転換して前記培養環境手段に密閉容器を保管するが、培養環境手段の内部に供給される気体と陰圧によって培養容器の内部に対して気体が繰り返し出入りする。
【0049】
本発明によれば、前記密閉容器は、外部に対して選択的に開閉されるようにするが、前記培養環境手段からの培養容器の搬出の際に、密閉容器の空間が外部と密閉された後で搬出および輸送されるようにする。
【発明の効果】
【0050】
上述した問題点を解消するための本発明の連続的に細胞を培養する装置およびこれを用いた培養方法は、培養容器の密閉性を維持しながら、細胞および培養液を選択的且つ反復的に注入、培養、脱離および収得することができるようにして、収得過程で全培養細胞のうちの一部分を除いた細胞を収得し、培養容器の内部に残存している細胞の反復培養を可能にするとともに、培養細胞の汚染防止および均一性を確保することができる。
【0051】
併せて、本発明の連続的に細胞を培養する装置およびこれを用いた培養方法は、培養容器を保管しながら、細胞増殖の最適の培養環境を与える培養環境手段を通じて、最適の培養温度および細胞増殖に必要な気体を培養容器へ供給することができるようにして、細胞培養の増殖性を向上させるようにする。
【0052】
また、本発明の連続的に細胞を培養する装置およびこれを用いた培養方法は、密閉型の培養容器を介して移動、保管および管理を容易にするという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明の連続的に細胞を培養する装置を示す斜視図
【
図2】本発明の連続的に細胞を培養する装置を示す縦断面図
【
図3】本発明の連続的に細胞を培養する装置を示す横断面図
【
図4】本発明の連続的に細胞を培養する装置を用いて細胞を培養する段階を示す流れ図
【
図5】本発明の連続的に細胞を培養する装置を用いて細胞を培養する段階を示す流れ図
【
図6】本発明の連続的に細胞を培養する装置を用いて細胞を培養する段階を示す流れ図
【
図7】本発明の連続的に細胞を培養する装置を用いて細胞を培養する段階を示す流れ図
【
図8】本発明の連続的に細胞を培養する装置を用いて細胞を培養する段階を示す流れ図
【
図9】本発明の連続的に細胞を培養する装置を用いて細胞を培養する段階を示す流れ図
【
図10】本発明の連続的に細胞を培養する装置のスクレーパーの他の実施例を示す斜視図
【
図11】本発明の連続的に細胞を培養する装置のスクレーパーの様々な実施例を示す斜視図
【
図12】本発明の連続的に細胞を培養する装置を保管する培養環境手段を示す斜視図
【
図13】本発明の連続的に細胞を培養する装置の他の実施例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な一実施例を詳細に説明する。
【0055】
まず、図面中、同一の構成要素または部品は、できる限り同一の参照符号で示していることに留意しなければならない。本発明を説明するにあたり、関連した公知の機能或いは構成に対する具体的な説明は、本発明の要旨を曖昧にしないために省略する。
【0056】
図1は本発明の連続的に細胞を培養する装置を示す斜視図、
図2は本発明の連続的に細胞を培養する装置を示す縦断面図、
図3は本発明の連続的に細胞を培養する装置を示す横断面図、
図4〜
図9は本発明の連続的に細胞を培養する装置を用いて細胞を培養する段階を示す流れ図、
図10は本発明の連続的に細胞を培養する装置のスクレーパーの他の実施例を示す斜視図、
図11は本発明の連続的に細胞を培養する装置のスクレーパーの様々な実施例を示す斜視図、
図12は本発明の連続的に細胞を培養する装置を保管する培養環境手段を示す斜視図、
図13は本発明の連続的に細胞を培養する装置の他の実施例を示す斜視図である。
【0057】
まず、
図1〜
図9に示すように、本発明の連続的に細胞を培養する装置は、多角形または円形に形成された培養容器100が設けられる。
【0058】
前記培養容器100は、内部が密閉された空間101が形成される。
【0059】
前記培養容器100は、軟質のプラスチック材質からなり、外部の圧力または力によって空間101のサイズが可変となっている。
【0060】
前記培養容器100は、選択的に密閉状態を決定することが可能な空間を持つ培養容器100を用意するが、前記空間101が密閉された状態で前記空間101内への培養液の注入と細胞の接種、脱離および収得を行うことを可能にし、前記空間が開放された状態で細胞の培養を可能にする。
【0061】
また、細胞11の収得過程で全培養細胞11のうちの一部分を除いた細胞11を収得し、培養容器100の内部に残存している細胞11の反復培養を可能にする。
【0062】
また、細胞11の収得過程で全体培養細胞を収得した後、培養容器100への培養液の注入と細胞の接種、培養、脱離および収得することを繰り返し行えるようにする。
【0063】
前記培養容器100には、前述したような細胞11の連続的培養を可能とするように密閉通路110と循環フィルター120がそれぞれ装着される。
【0064】
まず、密閉通路110は、培養容器100に設置され、空間101への培養液12の注入、培養液12への細胞11の接種、細胞11の収得過程を可能にする。前述した過程の進行状況でも、密閉容器は密閉状態が維持される。
【0065】
つまり、前記密閉通路110は、前記培養容器100の側面に設置し、外部から流体、気体および細胞11を空間101の内部に対して搬入および搬出することができるようにする。
【0066】
これを可能にするために、前記密閉通路110は培養容器100の表面に設置し、前記密閉通路110は軟質のブロックから構成されて空間101に設置される。
【0067】
このとき、前記密閉通路110を介した培養液12と細胞11の注入、および外部への細胞11の収得過程は一般に注射器を用いる。
【0068】
言い換えれば、注射器の針を密閉通路110を貫通して刺入した後、注射器の内部に充填された培養液12を空間101に注入するか、或いは、前記培養容器100内での培養後に脱離した細胞11を注射器の陰圧を用いて注射器に吸い込んで外部への収得を可能にする。
【0069】
また、培養液12の注入または細胞11の収得後、密閉通路110から針を取り外すと、密閉通路110の弾性によって密閉通路110自体が密閉されて空間101の密閉性を維持させることができる。
【0070】
また、前記循環フィルター120は、培養容器100の空間101内へ細胞11の培養に必要な気体を注入するために設置される。
【0071】
すなわち、前記培養容器100は、細胞11の培養の際に培養環境手段200に保管されて適正の温度の提供を受けるとともに、細胞11の培養に必要な気体の提供を受ける。
【0072】
このとき、前記培養容器100は、循環フィルター120を介して気体が空間101の内外部に対して出入りするようにする。
【0073】
つまり、
図13に示すように、前記培養容器100の空間101に対する気体の出入りは、培養環境手段200の内部に陰圧を発生させて前記培養容器100の空間101のサイズ変化を持つようにして、循環フィルター120を介して培養環境手段200内の培養容器の空間101に対して細胞11の培養に必要な気体が出入りできるようにする。
【0074】
ここで、気体は二酸化炭素および酸素の少なくとも1種を含む。
【0075】
前記循環フィルター120の具体的な構成は次のとおりである。
【0076】
前記循環フィルター120は、培養容器100の側面に設置される管路121、前記管路121の末端に設置されるバルブ122、および前記バルブ122の内部に設置されるフィルター123から構成する。
【0077】
管路121にはクリップ124を装着することにより、管路121の密閉および開放を選択的に行えるようにする。
【0078】
前記クリップ124は、培養容器100を培養環境手段200に保管するときには、管路121を開放させて空間101に対する気体の出入りを可能にし、前記培養環境手段200から培養容器100を搬出しようとするときには、クリップ124を用いて管路121を取り締まって密閉容器の空間101を密閉させる。
【0079】
前記培養容器100の空間101の底面に培養されている細胞11は、付着力により脱離し難いので、細胞11の脱離のための別途のツールであるスクレーパー130を空間101の内部に設置する。
【0080】
すなわち、前記スクレーパー130は、機械的な外力または磁気または位置エネルギーなどを介して空間101の内部で回転または移動しながら、細胞11を掻き取って空間101の底面から細胞11を脱離させる。
【0081】
特に、
図11に示すように、前記スクレーパー130は方形の培養容器に取り付けるように構成したが、細胞が付着可能な面を有する限り、円形、三角形などの多角形など培養容器の形状には制限がない。
【0082】
まず、前記スクレーパー130及び機械的な外力を用いた細胞11の脱離方法は、次のとおりである。
【0083】
図10に示すように、前記空間101の底面に中心軸133が回転可能に設置され、前記中心軸133は、培養容器100の外部に露出する。該中心軸133の回転によってスクレーパー130を連動させることにより、空間101の底面で回転するスクレーパー130が摩擦しながら細胞11を掻き取って脱離させる。
【0084】
ここで、前記スクレーパー130の回転により細胞11を脱離させようとする場合、前記培養容器100は、円筒状に形成され、空間101の内周縁に沿ってスクレーパー130を中心軸133を基準に回転させて細胞11を脱離させる。
【0085】
また、磁力を用いた細胞11の脱離方法は、次のとおりである。
【0086】
別途に設けられた移動部材140を前記培養容器100の下部外面に近接させるが、前記スクレーパー130に磁力で連結されるようにして、移動部材140の移動によってスクレーパー130を空間101の内部で連動させ、スクレーパー130が摩擦しながら細胞11を掻き取って脱離させる。
【0087】
つまり、スクレーパー130と移動部材140は、それぞれ金属体134または磁性体141を設置することにより、磁力によって相互一体に連動することができる。
【0088】
位置エネルギーを用いた細胞11の脱離方法は、培養容器100を傾くように位置させ、自重を有するスクレーパー130が空間101の底面で滑りながら細胞11を掻き取って脱離させる。
【0089】
このように構成されたスクレーパー130は、上部に培養溝132を形成することにより、培養液12の充填および細胞11の培養を可能にする。
【0090】
つまり、本発明の連続的に細胞11を培養する装置は、培養液12を空間101に注入し或いは空間101およびスクレーパー130の培養溝132に注入して、培養液12への細胞11の接種を行う。
【0091】
前記スクレーパー130は、空間101の底面に接触する下部面が複数のブレード131を形成する。
【0092】
ここで、前記スクレーパー130は、空間101の底面に接触する下部面が複数のブレード131を形成するが、前記ブレード131は、稜角を持つように形成され、空間101の底面との摩擦によって細胞11を底面から脱離させる。
【0093】
或いは、前記スクレーパー130は、空間101の底面に接触する下部面が複数のブレード131を形成するが、前記ブレード131は、稜角が連設されるように形成され、空間101の底面に対して接触または非接触するようにする。
【0094】
また、前記スクレーパーは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル(PET)、ポリメチルペンテン(PMP)、アイオノマー(IO)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリスチレン(PS)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、フェノール樹脂(PF)、尿素樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、エポキシ樹脂(EP)、ポリウレタン(PUR)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)および金属から選ばれた材質を適用する。
【0095】
前述したように構成される培養容器100は、一つ以上備えられ、前記循環フィルター120を介して連続的に並列つなぎする。
【0096】
すなわち、
図13に示すように、複数の培養容器100は順次並べる。一側に位置した培養容器100を基準に隣接して並べられた培養容器100に循環フィルター120を順次連結することにより、複数の培養容器100は一側に位置した培養容器100の循環フィルター120を介して一体化して気体の出入りを可能にする。
【0097】
前述したように構成された培養装置を介して連続的に細胞を培養する方法は、次のとおりである。
【0098】
密閉された培養容器100の内部空間101に培養液12を注入した後、細胞11を接種して細胞11を培養する段階と、前記培養容器100の空間101で培養された細胞11の密度が基準値以上になると、前記付着した細胞11を脱離させる段階と、密閉された状態を維持する培養容器100から脱離した細胞11を収得する段階とを含んでなる。
【0099】
まず、
図4に示すように、細胞11を培養する段階は、具体的に、前記空間101に培養液12を注入する段階と、前記培養液12に細胞11を接種する段階と、前記細胞11を培養液12で増殖させる段階とから構成される。
【0100】
細胞11を培養液12で増殖させる段階は、細胞11を培養液12に接種した後、培養環境手段200に培養容器を保管して細胞を培養させる。
【0101】
このとき、前記培養環境手段200は、0℃〜−42℃の培養温度を有し、細胞11の培養に必要な気体を培養容器へ供給することができるようにする。
【0102】
同時に、前記循環フィルターからクリップの圧迫を解除して管路を開放させる。
【0103】
前記培養環境手段200は、内部へ細胞11の培養に必要な気体を供給すると同時に、反復的に陰圧を発生させて培養容器100の内部に対して気体が繰り返し出入りするようにする。
【0104】
すなわち、
図6に示すように、前記培養容器100は、軟質素材からなり、陰圧などの外部圧力により圧着されながら空間101のサイズが変化する。
【0105】
その後、空間101のサイズが弾力的に元の状態に戻りながら、培養環境手段200の内部に存在する気体を空間101の内部に吸い込んで気体を出入りさせる。
【0106】
ここで、気体の出入りは、培養容器100に設置された循環フィルター120を経て空間101に対して気体を出入りさせることにより行われる。
【0107】
特に、前記循環フィルター120はクリップ124を装着するが、前記クリップ124は、循環フィルター120を選択的に圧迫するか或いは圧迫解除させることにより、循環フィルター120の開閉状態を決定することができる。
【0108】
その後、前記培養環境手段200内の培養容器100で細胞11の増殖が行われた後、前記細胞11を収得するためにクリップ124を介して循環フィルター120を密閉させることにより、前記培養容器100が密閉状態に転換されるようにする。
【0109】
次に、
図8に示すように、前記培養環境手段200から培養容器100を搬出した後、スクレーパー130と磁力作用を有する移動部材140を培養容器100の下部面に密着させた後、移動させると、空間101の内部に位置したスクレーパー130が連動し、空間101の底面に付着した細胞11を掻き取って脱離させる。
【0110】
或いは、前記細胞11を脱離させる段階は、空間101の内部に設置されたスクレーパー130が機械的エネルギーを介して回転および移動しながら、細胞11を掻き取って空間101の底面から脱離させる。
【0111】
つまり、前記空間101の内部にスクレーパー130が中心軸133を介して回転可能に結合され、前記中心軸133は空間101の外部に露出する。前記中心軸133を回転させてスクレーパー130を連動させることにより、細胞11を掻き取って空間101の底面から脱離させる。
【0112】
或いは、前記スクレーパー130が、位置エネルギーを介して移動しながら、細胞11を掻き取って空間101の底部から脱離させる。
【0113】
すなわち、培養容器100を傾くように位置させ、自重を持つスクレーパー130が空間101の底面で滑りながら細胞11を掻き取って脱離させる。
【0114】
その後、培養液12を注入した密閉通路110を除いた他の箇所の密閉通路110に注射器の針を刺入し、注射器の陰圧を用いて針を経て、培養された細胞11を注射器に吸い込んで得る。
ここで、
図9に示すように、前記細胞11を収得する段階は、脱離した細胞11のうちの一部分を残し、残存した細胞11が反復増殖することができるようにする。
【0115】
前述したように、本発明の連続的に細胞11を培養する方法では、前記培養液12の注入、細胞11の接種、細胞11の培養、細胞11の脱離および細胞11の収得段階は密閉容器が常に密閉された状態で行われるようにして、収得後に細胞11の安定的且つ反復的な培養を可能にする。
【0116】
以上で説明した本発明は、前述した実施例及び添付図面によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想を外れない範囲内において、様々な置換、変形及び変更を加え得るのは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0117】
10 培養装置
11 細胞
12 培養液
100 培養容器
101 空間
110 密閉通路
120 循環フィルター
121 管路
122 バルブ
123 フィルター
124 クリップ
130 スクレーパー
131 ブレード
132 培養溝
133 中心軸
134 金属体
140 移動部材
141 磁性体
200 培養環境手段