【文献】
Wong, A. P. et al.,"Directed differentiation of human pluripotent stem cells into mature airway epithelia expressing functional CFTR protein",Nat. Biotechnol.,2012年,Vol. 30,pp. 876-882, ONLINE METHODS
【文献】
Huang, S. X. et al.,"Efficient generation of lung and airway epithelial cells from human pluripotent stem cells",Nat. Biotechnol.,2013年12月 1日,Vol. 32,pp. 84-91, ONLINE METHODS,Supplementary information
【文献】
Ghaedi, M. et al.,"Human iPS cell-derived alveolar epithelium repopulates lung extracellular matrix",J. Clin. Invest.,2013年,Vol. 123,pp. 4950-4962
【文献】
Mou, H. et al.,"Generation of multipotent lung and airway progenitors from mouse ESCs and patient-specific cystic fibrosis iPSCs",Cell Stem Cell.,2012年,Vol. 10,pp. 385-397
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
小分子阻害剤が、ドルソモルフィン、ノギン、A83-01、DMH-1、D4476、GW788388、LY364947、RepSox、SB431542、SB505124、SB525334、およびSD208からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
小分子阻害剤が、IWR-1、ノギン、CCT036477、IWP2、デメトキシクルクミン、FH535、A83-01、D4476、GW788388、LY364947、RepSox、SB431542、SB505124、SB525334、およびSD208からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
それを必要とする対象において呼吸器疾患の症状を改善、治療または軽減するのに使用するための気道上皮細胞であって、該気道上皮細胞が人工多能性幹(iPS)細胞から分化されており、該気道上皮細胞が、クララ細胞分泌タンパク質(CCSP)、サイトケラチン5(KRT5)、およびFOXJ1を含む気道細胞表面マーカーを発現し、かつ該気道細胞表面マーカーを失うことなく30日超にわたる培養下で増殖可能であり、かつ該気道細胞表面マーカーが、新たに単離したヒト気道細胞上に発現されるレベルに匹敵するレベルで発現され、かつ呼吸器疾患が嚢胞性線維症である、前記気道上皮細胞。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ヒトiPS細胞を気道上皮細胞へと分化させる工程を示した略図である。
【
図2】
図2Aは、c-kitを発現する5日目のiPS細胞由来の細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。
図2Bは、FOXA2を発現する5日目のiPS細胞由来の細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。
図2Cは、SOX17を発現する5日目のiPS細胞由来の細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。
図2Dは、クローンC1においてCXCR4を発現する5日目のiPS細胞由来の細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図3A】AFE分化期間中のアゴニストおよびアンタゴニストがFOXA2/SOX2発現に及ぼす効果を示す。
【
図3B】AFE分化期間中のアゴニストおよびアンタゴニストがNKX2.1発現に及ぼす効果を示す。
【
図4】ヒトiPS細胞を気道上皮細胞へと分化させ、かつNKX2.1
+FOXA2
+細胞を増加させるように操作されたプロトコルの工程を示した略図である。
【
図5】ノギン/SBに曝露したDE細胞と比較したときの15日目のNKX2.1
+FOXA2
+細胞の増加を示す(前方化なしでは1%未満である)。
【
図6】
図6Aは、DAPIにより染色された、エクスビボで分化したNKX2.1
+細胞を示す。
図6Bは、FOXA2により染色された、エクスビボで分化したNKX2.1
+細胞を示す。
図6Cは、NKX2.1により染色された、エクスビボで分化したNKX2.1
+細胞を示す。
図6Dは、NKX2.1/FOXA2/DAPIにより共染色された、エクスビボで分化したNKX2.1
+細胞を示し、NKX2.1
+細胞がインビトロで分化したことを示唆する。
【
図7】
図7Aは、DAPIにより染色された、エクスビボで分化したNKX2.1
+/SOX2
+細胞を示す。
図7Bは、SOX2により染色された、エクスビボで分化したNKX2.1
+/SOX2
+細胞を示す。
図7Cは、NKX2.1により染色された、エクスビボで分化したNKX2.1
+/SOX2
+細胞を示す。
図7Dは、SOX2/NKX2.1/DAPIにより染色された、エクスビボで分化したNKX2.1
+/SOX2
+細胞を示し、NKX2.1
+/SOX2
+細胞がインビトロで分化したことを示唆する。
【
図8】処理前の約1〜2%と比較して約30%にまで上昇したNKX2.1
+/SOX2
+気道前駆細胞を示す棒グラフである。
【
図9】気道分化および基本培地へのサプリメントを示す図である。
【
図10A】成熟した肺気道上皮細胞につながる20日目でのFOXJ1の定量RT-PCRを示す。
【
図10B】成熟した肺気道上皮細胞につながる20日目でのKRT5の定量RT-PCRを示す。
【
図10C】成熟した肺気道上皮細胞につながる20日目でのCFTRの定量RT-PCRを示す。
【
図10D】成熟した肺気道上皮細胞につながる20日目でのCCSPまたはSCGB1A1の定量RT-PCRを示す。
【
図10E】成熟した肺気道上皮細胞につながる20日目でのP63の定量RT-PCRを示す。
【
図10F】成熟した肺気道上皮細胞につながる20日目でのSOX2の定量RT-PCRを示す。
【
図10G】成熟した肺気道上皮細胞につながる20日目でのムチン5ACの定量RT-PCRを示す。
【
図11】気道上皮への分化を誘導するための27日目での増殖因子および阻害剤の組み合わせを示す図である。
【
図12A】FOXJ1を発現する27日目のiPS細胞由来の細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図12B】CFTRを発現する27日目のiPS細胞由来の細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図12C】β-チューブリンIVを発現する27日目のiPS細胞由来の細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図12D】SOX2を発現する27日目のiPS細胞由来の細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図12E】CCSPを発現する27日目のiPS細胞由来の細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図12F】KRT5を発現する27日目のiPS細胞由来の細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図12G】ムチン5ACを発現する27日目のiPS細胞由来の細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図12H】P63を発現する27日目のiPS細胞由来の細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図13A】成熟した肺気道上皮細胞につながる27日目でのCFTRの定量RT-PCRを示す。
【
図13B】成熟した肺気道上皮細胞につながる27日目でのFOXJ1の定量RT-PCRを示す。
【
図13C】成熟した肺気道上皮細胞につながる27日目でのSCGB1A1(CCSP)の定量RT-PCRを示す。
【
図13D】成熟した肺気道上皮細胞につながる27日目でのムチン5ACの定量RT-PCRを示す。
【
図13E】成熟した肺気道上皮細胞につながる27日目でのNKX2.1の定量RT-PCRを示す。
【
図13F】成熟した肺気道上皮細胞につながる27日目でのKRT5の定量RT-PCRを示す。
【
図14】気道上皮細胞への分化の35日目での成熟を示す図である。
【
図15】
図15Aは、近位前駆細胞として染色された気道上皮細胞を示す。
図15Bは、FOXJ1抗体により染色された気道上皮細胞を示す。
図15Cは、ムチン5AC抗体により染色された気道上皮細胞を示す。
図15Dは、CCSP抗体により染色された気道上皮細胞を示す。
図15Eは、CFTR抗体により染色された気道上皮細胞を示す。
図15Fは、PanKRT抗体により染色された気道上皮細胞を示す。
【
図16A】気道細胞マーカーのムチン5ACについての35日目でのフローサイトメトリー分析を示す。
【
図16B】気道細胞マーカーFOXJ1についての35日目でのフローサイトメトリー分析を示す。
【
図16C】気道細胞マーカーβ-チューブリンIVについての35日目でのフローサイトメトリー分析を示す。
【
図16D】気道細胞マーカーP63についての35日目でのフローサイトメトリー分析を示す。
【
図16E】気道細胞マーカーCFTRについての35日目でのフローサイトメトリー分析を示す。
【
図16F】気道細胞マーカーCCSPについての35日目でのフローサイトメトリー分析を示す。
【
図16G】気道細胞マーカーCK5またはKRT5についての35日目でのフローサイトメトリー分析を示す。
【
図16H】気道細胞マーカーSOX2についての35日目でのフローサイトメトリー分析を示す。
【
図17A】iPS由来の気道上皮細胞につながる35日目でのKRT5またはCK5の定量RT-PCRを示す。
【
図17B】iPS由来の気道上皮細胞につながる35日目でのCFTRの定量RT-PCRを示す。
【
図17C】iPS由来の気道上皮細胞につながる35日目でのNKX2.1の定量RT-PCRを示す。
【
図17D】iPS由来の気道上皮細胞につながる35日目でのP63の定量RT-PCRを示す。
【
図17E】iPS由来の気道上皮細胞につながる35日目でのSCGB1A1またはCCSPの定量RT-PCRを示す。
【
図17F】iPS由来の気道上皮細胞につながる35日目でのFOXJ1の定量RT-PCRを示す。
【
図17G】iPS由来の気道上皮細胞につながる35日目でのムチン5ACの定量RT-PCRを示す。
【
図18】CF疾患特異的ヒトiPS細胞から肺気道前駆細胞を産生するための段階的分化アプローチを示した略図である。
【
図19】
図19Aは、CFTR抗体により染色された、CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞を示す。
図19Bは、ムチン5AC抗体により染色された、CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞を示す。
図19Cは、PanKRT抗体により染色された、CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞を示す。
図19Dは、CCSP抗体により染色された、CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞を示す。
【
図20A】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるムチン5ACのフローサイトメトリー分析を示す。
【
図20B】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるP63のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図20C】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるβ-チューブリンIVのフローサイトメトリー分析を示す。
【
図20D】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるFOXJ1のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図20E】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるCFTRのフローサイトメトリー分析を示す。
【
図20F】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるSOX2のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図20G】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるCK5またはKRT5のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図20H】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるCCSPのフローサイトメトリー分析を示す。
【
図21A】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるNKX2.1の定量RT-PCRを示す。
【
図21B】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるムチン5ACの定量RT-PCRを示す。
【
図21C】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるSOX2の定量RT-PCRを示す。
【
図21D】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるP63の定量RT-PCRを示す。
【
図21E】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるSCGB1A1またはCCSPの定量RT-PCRを示す。
【
図21F】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるFOXJ1の定量RT-PCRを示す。
【
図21G】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるKRT5の定量RT-PCRを示す。
【
図21H】CF疾患特異的ヒトiPS細胞由来の気道上皮細胞におけるCFTRの定量RT-PCRを示す。
【
図22】
図22Aは、マトリゲル中で肺オルガノイド構造体へと発達したiPSC由来の気道前駆細胞の陽性P63免疫染色を示す画像のパネルである。
図22Bは、マトリゲル中で肺オルガノイド構造体へと発達したiPSC由来の気道前駆細胞の陽性NKX2.1免疫染色を示す画像のパネルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料はいずれも、本発明の試験の実施に際して使用することができるが、好ましい材料および方法が本明細書に記載される。本発明の説明および特許請求の範囲では、以下の用語が使用される。
【0021】
また、本明細書で使用する用語は、特定の態様のみを説明する目的のためのものであり、限定することを意図したものではないことを理解すべきである。
【0022】
本明細書で使用する冠詞「a」および「an」は、その冠詞の文法上の対象物の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。一例として、「an element」は1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0023】
量、持続時間などの測定可能な値に言及する場合に本明細書で使用する用語「約」は、指定された値の±20%の変動、または10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、もしくは0.01%以内の変動を含むことを意味する。その理由は、このような変動が開示された方法を実施するのに適切であるからである。特に文脈から明らかでない限り、本明細書で提供される全ての数値は、約という用語により修飾される。
【0024】
「前方前腸内胚葉」とは、肝臓を生み出す内胚葉の前方にある内胚葉のことである。したがって、当業者は、「前方前腸内胚葉」が、例えば咽頭内胚葉および他のより高度に分化した内胚葉細胞の集団を含むこと、および用語「前方前腸内胚葉」に包含されるさまざまな種類の細胞が分子マーカーの異なる発現パターンを示し得ることを容易に理解するであろう。当業者は、「前方前腸内胚葉」が、各種の組織、例えば、扁桃腺、鼓膜、甲状腺、副甲状腺、胸腺、気管、食道、胃、肺および喉頭/咽頭を生じることを理解するであろう。
【0025】
本明細書で使用する用語「分化」は、あまり特殊化していない細胞、例えば幹細胞または人工多能性幹細胞が、より特殊化した細胞型になるプロセスを指し、結果的に、それは、特定の前駆細胞ならびにより特殊化した体細胞を含むがこれらに限定されない、特定の分化系統へと確定されるようになる。幹細胞の分化のための条件は、当技術分野で周知である。
【0026】
本明細書で使用する「分化培地」は、幹細胞、人工多能性細胞または完全には分化していない他のこのような前駆細胞が、該培地中でインキュベートしたとき、分化した細胞、つまり幹細胞、人工多能性細胞もしくは他の前駆細胞よりも分化している細胞、の特徴の一部または全部を備えた細胞へと発生するような、添加剤を含むまたは添加剤を欠く細胞増殖培地を指す。
【0027】
「胚体内胚葉細胞」とは、胚体内胚葉系統の1つ以上のマーカーを発現している細胞を意味する。これらマーカーとしては、限定するものではないが、CXCR4、SOX17、GATA-4、FOXA2、AFP、CER1、C-KIT、EPCAM、SNAI1、GSC、E-Cad、またはN-Cadが挙げられる。胚体内胚葉は、内胚葉に由来する1つ以上の組織へとさらに分化することが可能な細胞によって機能的に定義される。これは、肺、甲状腺、肝臓、膵臓、または腸を含むことができる。
【0028】
「気道上皮細胞」とは、大気道(気管支)と小気道(細気管支)をおおう細胞の層を構成している上皮細胞を意味する。気道上皮細胞には、繊毛細胞、分泌細胞、基底細胞、および円柱細胞の種類が含まれる。
【0029】
「人工多能性幹細胞」または「iPS細胞」とは、特定の遺伝子の発現を引き出すことによって、非多能性細胞−典型的には成人の体細胞−から(遺伝的または化学的方法を用いて)人工的に誘導された多能性幹細胞の種類を意味する。人工多能性幹細胞は、天然の多能性幹細胞にかなりよく似ている。人工多能性幹細胞は、胚体内胚葉細胞、前方前腸内胚葉細胞、および気道上皮細胞を含むがこれらに限定されない、複数の細胞型へと分化することが可能である。
【0030】
用語「オルガノイド」は、組織または臓器の表面的な外観または実際の構造もしくは機能を模倣する1つ以上の細胞型の三次元集合体を指す。
【0031】
用語「誘導」または「誘導する」は、細胞の表現型に対して特定の作用を引き起こさせるプロセスまたは行為に関係する。このような作用は、表現型の変化を引き起こす、例えば、他の細胞表現型への分化を引き起こす形であったり、またはその細胞を特定の細胞に維持する、例えば、脱分化を防止したり細胞の生存を促進したりする形であってもよい。
【0032】
本明細書で使用する用語「多能性」は、さまざまな細胞型への分化を可能にする能力を維持している未分化の細胞を指す。
【0033】
用語「前駆細胞」(precursor cell)、「始原細胞」(progenitor cell)、および「幹細胞」は、当技術分野では交換可能に使用され、本明細書で使用する場合、多能性のまたは分化系統が不確定な(lineage-uncommitted)前駆細胞を指し、こうした細胞は、自己複製するために、または所望の細胞型へと分化する子孫細胞を生み出すために、無制限の数の有糸分裂が潜在的に可能である。多能性幹細胞とは対照的に、分化系統が確定した前駆細胞は、一般的に、表現型が互いに異なる多数の細胞型を発生させることができないと考えられる。代わりに、前駆細胞は、分化系統が確定した1つまたは場合により2つの細胞型を生じさせる。一態様では、幹細胞は人工多能性幹(iPS)細胞である。
【0034】
「呼吸器疾患」とは、気道に身体的症状が現れる疾患または病態を意味し、例えば、限定するものではないが、以下が挙げられる:嚢胞性線維症、呼吸窮迫症候群、急性呼吸窮迫症候群、肺結核、咳、気管支喘息、気道過敏性の増加に基づく咳(気管支炎、インフルエンザ症候群、喘息、閉塞性肺疾患など)、インフルエンザ症候群、抗咳性(anti-cough)、気道過敏性、結核性疾患、喘息(気道炎症性細胞浸潤、増加した気道反応性亢進、気管支収縮、粘液分泌過多など)、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、肺線維症、特発性肺線維症、咳、可逆性気道閉塞、成人呼吸器疾患症候群、ハト愛好家病、農夫肺、気管支肺異形成症、気道疾患、肺気腫、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アレルギー性気管支炎気管支拡張症、職業性喘息、反応性気道疾患症候群、間質性肺疾患、肺寄生虫症など。
【0035】
本開示では、「含む」(comprises)、「含む」(comprising)、「含有する」(containing)、「有する」(having)などは、米国特許法においてそれらに与えられた意味を有し、「包含する」(includes)、「包含する」(including)などを意味し得る;同様に、「〜から実質的になる」(consisting essentially of)、「〜から実質的になる」(consists essentially)などは、米国特許法において与えられた意味を有し、この用語はオープンエンドであり、列挙されたものの基本的な特徴または新規な特徴が、列挙されたもの以外の他のものの存在によって変化しない限り、列挙されたものだけではない他のものの存在を可能にするが、従来技術の態様を除外する。
【0036】
「有効量」とは、未処置の患者と比べて、呼吸器の障害、病態または疾患の少なくとも1つの症状または臨床マーカーの変化を低減させるまたは改善するのに必要な量を意味する。呼吸器の障害、病態または疾患の治療に使用される気道上皮細胞の有効量は、特定の呼吸器の障害、病態または疾患の様態、該障害、病態または疾患の程度、および該細胞の投与様式、ならびに対象の年齢、体重および全体的な健康状態に応じて変化する。
【0037】
「拡大性」(expandability)は、増殖する、例えば、数を増やす細胞の能力、または細胞集団の場合は、集団倍加を起こす細胞の能力を指すために本明細書で使用される。
【0038】
本明細書で使用する用語「発現」は、プロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と定義される。
【0039】
用語「単離された」、「精製された」、または「生物学的に純粋な」は、天然の状態で存在するとき、通常は付随している成分をさまざまな程度に除かれている物質を指す。「単離する」は、もとの供給源または環境からの分離の程度を表す。「精製する」は、単離よりも高い分離の程度を表す。「精製された」または「生物学的に純粋な」タンパク質は、何らかの不純物が該タンパク質の生物学的特性に物質的に影響を与えたり、他の有害な結果を引き起こしたりしないように、他の物質を十分に除かれている。すなわち、ある1個の細胞が細胞または物質を実質的に含まない場合に、該細胞は精製されている。純度および均質性は、典型的には、分析技術、例えば、フローサイトメトリーまたはフロー活性化細胞ソーティングを用いて測定される。用語「精製された」は、1個の細胞が本質的に1つの集団を生じさせることを示すことができる。
【0040】
本明細書で使用する「表現型」は、例えばいずれか1つの形質または形質群を有する、細胞の全体的な物理的、生化学的、および生理学的構成を指す。
【0041】
「増殖」は、類似する形態の、特に細胞の、複製または増加を指すために本明細書で使用される。すなわち、増殖は、より多数の細胞の生産を包含し、とりわけ、単に細胞の数をカウントすること、細胞への
3H-チミジンの取り込みを測定すること、などによって測定することができる。
【0042】
本明細書で使用する「サンプル」または「生物学的サンプル」は、スクリーニング法または治療が望まれる関心対象の細胞(例えば、癌またはその腫瘍細胞)を含む可能性があるものを指す。サンプルは、生体液または生体組織などの生物学的サンプルであり得る。一態様では、生物学的サンプルは、肺動脈内皮細胞を含めた、組織サンプルである。このようなサンプルは多様な細胞、タンパク質、および遺伝物質を含みうる。生体組織の例としてはまた、器官、腫瘍、リンパ節、動脈および個々の細胞が挙げられる。生体液の例としては、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙、粘液、羊水などが挙げられる。
【0043】
本明細書で使用する「対象」または「患者」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であり得る。非ヒト哺乳動物としては、例えば、家畜およびペット、例えばヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコおよびネズミ科の哺乳動物などが挙げられる。好ましくは、対象はヒトである。
【0044】
本明細書で使用する用語「治療する」(treat)、「治療する」(treating)、「治療」などは、呼吸器の障害、病態もしくは疾患および/またはそれに関連する1つ以上の症状を軽減または改善することを指す。除外はしないが、呼吸器の障害、病態または疾患を治療することは、該障害、病態、疾患またはそれに関連する症状が完全に改善されるまたは取り除かれることを必要としないことが理解されるであろう。
【0045】
本明細書に提供される範囲は、その範囲内のすべての値の省略表現であることが理解される。例えば、1〜50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50からなる群からの任意の数字、数字の組み合わせ、または部分範囲を含むことが理解される。
【0046】
本明細書中の変数または局面のための実施態様の記述は、単一の実施態様としての、または他の実施態様もしくはその部分との組み合わせとしての、その実施態様を包含する。
【0047】
本明細書に提供される組成物または方法は、本明細書に提供される他の組成物および方法のいずれか1つ以上と組み合わせることができる。
【0048】
気道上皮細胞
ドナー肺の代替供給源の開発は、肺疾患の治療のパラダイムを変えることになるだろう。末期の肺疾患を治療するための1つの選択肢は、患者固有の細胞から作られた人工肺を用いた移植である。iPS細胞由来の気道上皮細胞の発見は、基礎的な肺病理の研究を容易にするだけでなく、CFをはじめとする肺疾患の治療のための新規治療法の開発をも容易にする。本明細書に記載するようなiPS細胞由来の気道上皮細胞は、細胞ベースの治療への応用、および罹患した肺上皮の潜在的交換のための、またとない機会を提供する。
【0049】
一局面において、本発明には、人工多能性幹(iPS)細胞由来の気道上皮細胞が包含される。気道上皮細胞は、クララ細胞分泌タンパク質(CCSP)、サイトケラチン5(KRT5)、およびFOXJ1などの気道細胞表面マーカーの発現によって特徴づけられる。気道上皮細胞はまた、気道細胞表面マーカーを失うことなく、培養下で増殖する能力がある。気道上皮細胞には、繊毛細胞、分泌細胞、基底細胞、および円柱細胞の種類が含まれる。一態様では、気道上皮細胞には繊毛がある。
【0050】
iPS細胞由来の気道上皮細胞はまた、一連の気道特異的細胞表面マーカーを発現する。気道細胞表面マーカーの例としては、限定するものではないが、ムチン1またはMUC1、ムチン5AC、FOXJ1、CCSP、KRT5、KRT14、TRP63、SOX17、SOX2、β-チューブリンIVおよびCFTRが挙げられる。
【0051】
ムチン1またはMUC1は、ムチンファミリーのメンバーであって、膜結合型のグリコシル化リンタンパク質である。このタンパク質は、膜貫通ドメインによって多くの上皮の頂端面に固定されている。代表的なムチン1配列には、GenBankアクセッション番号NM_001018016もしくはNP_001018016で見出されるヒトMUC1配列またはその断片、およびNM_013605もしくはNP_038633で見出されるマウスMuc1配列またはその断片が含まれる。
【0052】
ムチン5ACは、胃および気道の上皮に見られる糖タンパク質である。代表的なムチン5AC配列には、GenBankアクセッション番号XM_003403450もしくはP98088で見出されるヒトMUC5AC配列またはその断片が含まれる。
【0053】
フォークヘッドボックスJ1(FOXJ1)は、繊毛形成に関与する転写因子である。代表的なFOXJ1配列には、GenBankアクセッション番号NM_001454もしくはNP_001445で見出されるヒトFOXJ1配列またはその断片、およびNM_008240もしくはNP_032266で見出されるマウスFoxJ1配列またはその断片が含まれる。
【0054】
クララ細胞分泌タンパク質(CCSP)は、免疫調節性および抗炎症性の物質である。代表的なCCSP配列には、GenBankアクセッション番号NM_003357もしくはNP_003348で見出されるヒトCCSP配列またはその断片、およびNM_011681もしくはNP_035811で見出されるマウスCCSP配列またはその断片が含まれる。
【0055】
ケラチン5(KRT5)は、ケラチノサイトの構造的枠組みを形成する強靭な繊維状タンパク質のグループに属する。代表的なKRT5配列には、GenBankアクセッション番号NM_000424もしくはNP_000415で見出されるヒトKRT5配列またはその断片、およびNM_027011もしくはNP_081287で見出されるマウスKRT5配列またはその断片が含まれる。
【0056】
ケラチン14(KRT14)は、中間径フィラメントタンパク質のI型ケラチンファミリーのメンバーである。代表的なKRT14配列には、GenBankアクセッション番号NM_000526もしくはNP_000517で見出されるヒトKRT14配列またはその断片、およびNM_016958もしくはNP_058654で見出されるマウスKRT14配列またはその断片が含まれる。
【0057】
トランスフォーメーション関連タンパク質63(TRP63またはP63)は、ストレスに対する細胞応答および発生に関与する転写因子のp53ファミリーのメンバーである。代表的なTRP63配列には、GenBankアクセッション番号NM_001114978もしくはNP_001108450で見出されるヒトTRP63配列またはその断片、およびNM_001127259もしくはNP_001120731で見出されるマウスTRP63配列またはその断片が含まれる。
【0058】
性決定領域Y-ボックス17(SOX17)は、標的プロモーターDNAに結合して、胚発生の調節において重要な役割を果たす転写調節因子である。代表的なSOX17配列には、GenBankアクセッション番号NM_022454もしくはNP_071899で見出されるヒトSOX17配列またはその断片が含まれる。
【0059】
性決定領域Y-ボックス2(SOX2)は、未分化の胚性幹細胞の自己複製、つまり多能性、を維持するのに不可欠な転写因子である。代表的なCFTR配列には、GenBankアクセッション番号NM_003106もしくはNP_003097で見出されるヒトCFTR配列またはその断片、およびNM_011443もしくはNP_035573で見出されるマウスCFTR配列またはその断片が含まれる。
【0060】
β-チューブリンIVは、球状タンパク質の小さなファミリーの数種のメンバーのうちの一つである。β-チューブリンIVは、繊毛細胞型に存在し、哺乳動物における軸糸構造に必要とされ得る。
【0061】
本明細書の他の箇所で説明したように、CFTRは細胞膜を横切る塩素イオンの輸送に関与するタンパク質である。代表的なCFTR配列には、GenBankアクセッション番号NM_000492もしくはNP_000483で見出されるヒトCFTR配列またはその断片、およびNM_021050もしくはNP_066388で見出されるマウスCFTR配列またはその断片が含まれる。
【0062】
一態様では、iPS細胞由来の気道上皮細胞は、気道細胞表面マーカーCFTRの発現を含む。別の態様では、気道細胞表面マーカーとしてβ-チューブリンIV、ムチン5ACおよびP63が含まれる。該気道上皮細胞における気道細胞表面マーカーの発現は、新たに単離したヒト気道細胞上に発現されるレベルに匹敵する。
【0063】
単離した気道細胞とは異なり、iPS細胞由来の気道上皮細胞は、CCSP、P63、FOXJ1、CFTRおよびMUC5ACなどの気道上皮細胞関連マーカーを失うことなく、数継代にわたり増殖することが可能である。この細胞の増殖能を用いて、さまざまな目的のために何百万個もの細胞を作り出すことができる。前駆細胞集団を「スケールアップ」する能力は、自己iPS細胞由来の細胞を用いた組織工学的なヒト肺組織の作製における使用のために、これらの技術を変換する場合に、特に価値がある。一態様では、気道上皮細胞は培養下で少なくとも約30日間増殖が可能である。別の態様では、気道上皮細胞は培養下で約30日超の間増殖が可能である。
【0064】
気道上皮細胞への分化
本発明はさらに、一局面において、人工多能性幹(iPS)細胞を気道上皮細胞へと分化させる方法を提供する。この方法は、iPS細胞を血清の非存在下で培養して胚体内胚葉(DE)細胞への分化を誘導する工程;該DE細胞を血清の存在下で培養して前方前腸内胚葉(AFE)細胞への分化を誘導する工程;ならびに該AFE細胞をサイトカインカクテルおよび高濃度のレチノイン酸中、血清の存在下で培養して、該AFE細胞の気道上皮細胞への分化を誘導する工程を含む。
【0065】
iPS細胞
本発明で使用し得るiPS細胞は、2006年(Yamanaka et al., Cell Stem Cell 1:39-49 (2007))に初めて記載された手法と実質的に類似するアプローチを用いて、または当業者に知られている改良法を用いて、誘導することができる。例えば、iPS細胞は、宿主細胞DNAへの遺伝子の挿入方法を改変することによって作製され得る。例えば、Wernig et al., PNAS, 105:5856-5861 (2008); Jaenisch et al., Cell 132:567-582 (2008); Hanna et al., Cell 133:250-264 (2008); およびBrambrink et al., Cell Stem Cell 2:151-159 (2008)を参照されたい。これらの参考文献は、iPS細胞とそれらの作製方法を教示するために、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0066】
iPS細胞は多能性幹細胞へと再プログラム化された体細胞に由来するので、複数の細胞型を用いてiPS細胞を産生することができる。例えば、嚢胞性線維症などの呼吸器疾患を有する対象からの自己細胞による治療は、該細胞の免疫学的拒絶反応を穏やかにするか、または防止するだろう。したがって、iPS細胞由来の分化した細胞による治療を受ける予定の対象からiPS細胞を産生することが有用である。一態様では、気道上皮細胞は、嚢胞性線維症のヒトiPS細胞などの、罹患した細胞に由来する。別の態様では、気道上皮細胞は、呼吸器疾患を有する対象の自己細胞に由来する。
【0067】
iPS細胞を気道上皮細胞へと分化させる方法は、DE細胞への分化を誘導するようにiPS細胞を培養する工程を含む。一態様では、iPS細胞を血清の非存在下で培養する。別の態様では、iPS細胞を無血清サプリメントの存在下で培養する。無血清サプリメントの例としては、限定するものではないが、血清代替品(serum replacement)(Sigma社, St. Louis, MO)、B-27(Life Technologies社, Carlsbad, CA)、BIOGRO-2(BI社, イスラエル)、KnockOut(商標)(Life Technologies社, Carlsbad, CA)、PluriQ(GlobalStem社, Rockville, MD)、TCH(登録商標)(MP社, Santa Ana, CA)、および他の同様のサプリメントを挙げることができる。
【0068】
一態様では、iPS細胞は、アクチビンA、ノーダルタンパク質、アクチビンAのアゴニスト、インヒビンのアンタゴニスト、またはこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない、胚体内胚葉細胞への分化を誘導する作用物質、分子または化合物の存在下で培養することができる。例えば、該細胞を、アクチビンAまたはアクチビンA受容体アゴニストのような、アクチビンA受容体を活性化する作用物質、分子または化合物と共に培養する。別の例では、該細胞を、アクチビンAと同様の方法で活性化シグナルを与えるか該細胞を刺激する作用物質、分子または化合物、例えばノーダルタンパク質、と一緒に培養して、iPS細胞の胚体内胚葉細胞への分化を起こさせる。さらに別の例では、該細胞を、アクチビンA阻害剤のアンタゴニスト、例えばインヒビンの阻害剤、またはアクチビンA受容体を間接的に活性化し得るか胚体内胚葉細胞への分化を誘導し得る他のアンタゴニスト分子などの作用物質、分子または化合物と一緒に培養することができる。
【0069】
iPS細胞の胚体内胚葉細胞への分化を誘導する、アクチビンAなどの1種以上の作用物質、分子または化合物の濃度は、約5ng/ml〜約500ng/mlの範囲であり得る。アクチビンAなどの1種以上の作用物質、分子または化合物の濃度は、約5ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、55ng/ml、60ng/ml、65ng/ml、70ng/ml、75ng/ml、80ng/ml、85ng/ml、90ng/ml、95ng/ml、100ng/ml、110ng/ml、120ng/ml、130ng/ml、140ng/ml、150ng/ml、175ng/ml、200ng/ml、225ng/ml、250ng/ml、275ng/ml、300ng/ml、350ng/ml、400ng/ml、450ng/ml、550ng/ml、または中間の任意の濃度であってよい。一態様では、iPS細胞は、iPS細胞の胚体内胚葉細胞への分化を誘導するために、100ng/mlの1種以上の作用物質、分子または化合物、例えばアクチビンA、の存在下で培養される。胚体内胚葉細胞への分化を誘導するための、アクチビンAなどの作用物質、分子または化合物の濃度はまた、iPS細胞培養液中のほぼ飽和濃度であり得る。アクチビンAの飽和濃度は、約5ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、55ng/ml、60ng/ml、65ng/ml、70ng/ml、75ng/ml、80ng/ml、85ng/ml、90ng/ml、95ng/ml、100ng/ml、110ng/ml、120ng/ml、130ng/ml、140ng/ml、150ng/ml、175ng/ml、200ng/ml、225ng/ml、250ng/ml、275ng/ml、300ng/ml、350ng/ml、400ng/ml、450ng/ml、550ng/ml、またはそれ以上である。別の態様では、胚体内胚葉細胞への分化を誘導するための、アクチビンAなどの作用物質、分子または化合物の濃度は、iPS細胞培養液中のほぼ飽和濃度である。
【0070】
iPS細胞は、少なくとも約12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、48時間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、またはそれ以上培養することができる。一態様では、iPS細胞を約5日間培養する。一態様では、iPS細胞を約5日間培養する。iPS細胞は、アクチビンAの存在下で少なくとも約6時間培養することができる。iPS細胞は、少なくとも約12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、48時間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、またはそれ以上培養することができる。別の態様では、iPS細胞をアクチビンAの存在下で少なくとも約5日間培養する。
【0071】
iPS細胞の分化は、胚様体法を用いて、または直接的にフィーダー層もしくはマトリゲル上で胚体内胚葉段階へと誘導することができる。
【0072】
胚体内胚葉細胞
iPS細胞から分化したDE細胞は、一連の胚体内胚葉細胞マーカーを発現する。胚体内胚葉細胞マーカーの例としては、限定するものではないが、c-kit、SOX17、FOXA2、およびCXCR4が挙げられる。
【0073】
CD117またはc-kitは、ヒトではKIT遺伝子によりコードされるタンパク質である。代表的なc-kit配列には、GenBankアクセッション番号NM_000222もしくはNP_000213で見出されるヒトc-kit配列またはその断片、およびNM_001122733もしくはNP_001116205で見出されるマウスc-kit配列またはその断片が含まれる。
【0074】
CXCR4は、間質由来因子-1に特異的なαケモカイン受容体である。代表的なCXCR4配列には、GenBankアクセッション番号NM_001008540もしくはNM_001008540で見出されるヒトCXCR4配列またはその断片、およびNM_009911もしくはNP_034041で見出されるマウスCXCR4配列またはその断片が含まれる。
【0075】
一態様では、iPS細胞から分化したDE細胞は、内胚葉細胞表面マーカーc-kit、SOX17、FOXA2、およびCXCR4の発現を含む。
【0076】
iPS細胞を気道上皮細胞へと分化させる方法はまた、DE細胞を血清の存在下で培養して前方前腸内胚葉(AFE)細胞への分化を誘導する工程を含む。一態様では、DE細胞を血清の存在下で培養する。別の態様では、DE細胞を細胞外マトリックス(ECM)分子の存在下で培養する。ECM分子の例としては、限定するものではないが、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、テネイシン、エラスチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、多糖類、セルロース、ECMに見出される他の分子、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0077】
DE細胞は、ECM分子の存在下で培養する前に解離させることができる。また、培地をDE細胞誘導培地からAFE細胞誘導培地に変えることができる。一態様では、iPS細胞を血清の存在下で培養する。
【0078】
DE細胞は、後方内胚葉の運命を抑制しかつ近位内胚葉の運命を誘導するために、小分子阻害剤に順次曝露される。DE細胞はまた、DE細胞を、BMP/TGFシグナル伝達を阻害する小分子阻害剤とTGF/WNTシグナル伝達を阻害する小分子阻害剤に順次曝露しながら、ECM分子の存在下で培養され得る。BMP/TGFシグナル伝達を阻害する小分子阻害剤としては、限定するものではないが、ドルソモルフィン、ノギン、A83-01、DMH-1、D4476、GW788388、LY364947、RepSox、SB431542、SB505124、SB525334、SD208、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。TGF/WNTシグナル伝達を阻害する小分子阻害剤としては、限定するものではないが、IWR-1、ノギン、CCT036477、IWP2、デメトキシクルクミン、FH535、A83-01、D4476、GW788388、LY364947、RepSox、SB431542、SB505124、SB525334、SD208、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。別の態様では、DE細胞は、後方内胚葉の運命を抑制しかつ近位内胚葉の運命を誘導するために小分子阻害剤に順次曝露される。特定の態様では、小分子阻害剤は、BMP/TGFシグナル伝達を阻害するものであり、例えば、ドルソモルフィン、ノギン、A83-01、DMH-1、D4476、GW788388、LY364947、RepSox、SB431542、SB505124、SB525334、SD208、およびこれらの任意の組み合わせである。別の特定の態様では、小分子阻害剤は、TGF/WNTシグナル伝達を阻害するものであり、例えば、rWR-1、ノギン、CCT036477、IWP2、デメトキシクルクミン、FH535、A83-01、D4476、GW788388、LY364947、RepSox、SB431542、SB505124、SB525334、SD208、およびこれらの任意の組み合わせである。他の態様では、DE細胞は、最初にBMP/TGFシグナル伝達を阻害する小分子阻害剤に曝露され、その後でTGF/WNTシグナル伝達を阻害する小分子阻害剤に曝露される。
【0079】
DE細胞は、BMP/TGFシグナル伝達を阻害する小分子阻害剤の存在下で少なくとも約6時間培養することができる。DE細胞は、BMP/TGFシグナル伝達を阻害する小分子阻害剤と共に、少なくとも約12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、48時間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、またはそれ以上培養することができる。一態様では、DE細胞を、BMP/TGFシグナル伝達を阻害する小分子阻害剤と共に、約2日〜約10日間の範囲で培養する。一態様では、DE細胞を、BMP/TGFシグナル伝達を阻害する小分子阻害剤と共に、約2日〜約7日間の範囲で培養する。
【0080】
DE細胞は、TGF/WNTシグナル伝達を阻害する小分子阻害剤の存在下で少なくとも約6時間培養することができる。DE細胞は、TGF/WNTシグナル伝達を阻害する小分子阻害剤と共に、少なくとも約12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、48時間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、またはそれ以上培養することができる。一態様では、DE細胞を、TGF/WNTシグナル伝達を阻害する小分子阻害剤と共に、約2日〜約10日間の範囲で培養する。一態様では、DE細胞を、TGF/WNTシグナル伝達を阻害する小分子阻害剤と共に、約2日〜約7日間の範囲で培養する。
【0081】
前方前腸内胚葉細胞
DE細胞から分化したAFE細胞は、一連の前方前腸内胚葉細胞マーカーを発現する。前方前腸内胚葉細胞マーカーの例としては、限定するものではないが、NKX2.1が挙げられる。
【0082】
NKX2.1は、ヒトではNKX2-1遺伝子によりコードされるタンパク質である。代表的なNKX2.1配列には、GenBankアクセッション番号NM_001079668もしくはNP_001073136で見出されるヒトNKX2.1配列またはその断片、およびNM_001146198もしくはNP_001139670で見出されるマウスNKX2.1配列またはその断片が含まれる。一態様では、AFE細胞はNKX2.1を発現する。
【0083】
iPS細胞を気道上皮細胞へと分化させる方法はまた、AFE細胞の気道上皮細胞への分化を誘導するようにAFE細胞を培養する工程を含む。一態様では、AFE細胞を血清の存在下で培養する。別の態様では、AFE細胞を高濃度のレチノイン酸の存在下で培養する。さらに別の態様では、AFE細胞をサイトカインカクテルの存在下で培養する。特定の態様では、サイトカインカクテルはWNT経路を阻害する。WNT経路を阻害するサイトカインの例としては、限定するものではないが、IWR-1、PD98059、BMP4、BMP7、および他のWNTアンタゴニスト、ならびにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0084】
AFE細胞は、分化を誘導するために高濃度のレチノイン酸の存在下で培養される。高濃度のレチノイン酸は、約0.1μM〜約2.0μMの範囲であり得る。高濃度のレチノイン酸は、約0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、1.0μM、1.1μM、1.2μM、1.3μM、1.4μM、1.5μM、1.6μM、1.7μM、1.8μM、1.9μM、2.0μM、および中間の任意の濃度であってよい。
【0085】
AFE細胞は、高濃度のレチノイン酸の存在下で、少なくとも約6時間培養することができる。AFE細胞は、高濃度のレチノイン酸中で少なくとも約12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、48時間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、またはそれ以上培養することができる。別の態様では、AFE細胞を高濃度のレチノイン酸中で少なくとも約3日間培養する。一態様では、AFE細胞を高濃度のレチノイン酸と共に約2日〜約10日間の範囲で培養する。一態様では、AFE細胞を高濃度のレチノイン酸と共に約2日〜約7日間の範囲で培養する。
【0086】
肺組織工学
本発明はまた、人工の三次元肺組織ならびに三次元肺組織を作る方法を提供する。一局面では、人工の三次元肺組織が記載される。人工肺は気道上皮細胞を含む。気道上皮細胞は、クララ細胞分泌タンパク質(CCSP)、サイトケラチン5(KRT5)、およびFOXJ1などの気道細胞表面マーカーを発現し、かつ該気道細胞マーカーを失うことなく培養下で増殖することが可能である。かくして、本発明は、人工肺を用いて末期の疾患を治療するための、ドナー肺組織の代替源を提供する。
【0087】
別の局面においては、三次元肺組織を作製する方法が記載される。この方法は、人工多能性幹(iPS)細胞の集団を気道上皮細胞へと分化させる工程を含み、ここで、該気道上皮細胞は、気道細胞表面マーカー、すなわち、クララ細胞分泌タンパク質(CCSP)、サイトケラチン5(KRT5)、およびFOXJ1を発現し、かつ該気道細胞マーカーを失うことなく培養下で増殖可能である。この方法はまた、三次元足場上、例えばマトリゲルを含む足場上に気道上皮細胞を播種する工程を含む。三次元足場上に気道上皮細胞を播種する工程は、気道上皮細胞がオルガノイド構造体を形成することを可能にする。当技術分野で公知の足場は本発明において有用である。足場には、脱細胞化組織、合成/天然ポリマー足場、または合成ポリマー足場と天然ポリマー足場の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。一態様では、三次元足場はマトリゲルを含む。足場の製造方法は、米国特許出願第2013/0013083号および第2012/0064050号に記載の方法を含み、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0088】
治療方法
iPS細胞由来の気道上皮細胞、および該細胞を含む人工肺組織は、対象の治療のためにインビボで使用される。本発明は、対象における呼吸器疾患を治療するための方法を包含する。本明細書に記載するように、一局面では、それを必要とする対象において呼吸器疾患の症状を改善、治療または軽減する方法が含まれる。この方法はまた、人工多能性幹(iPS)細胞を気道上皮細胞へと分化させる工程であって、該気道上皮細胞は、気道細胞表面マーカー、すなわち、クララ細胞分泌タンパク質(CCSP)、サイトケラチン5(KRT5)、およびFOXJ1を発現し、かつ該気道細胞マーカーを失うことなく培養下で増殖可能である、工程;および該気道上皮細胞を、対象における呼吸器疾患を治療するのに有効な量で投与する工程を含む。
【0089】
対象を治療する方法はさらに、iPS細胞由来の気道上皮細胞を投与する工程、またはiPS細胞由来の気道上皮細胞を含む、人工組織を移植する工程をさらに含むことができ、この場合に、投与または移植する工程は、対象における呼吸器疾患の症状の改善、治療または軽減をもたらす。改善、治療または軽減は、自然な感覚または人工的な装置を用いて検出することができる呼吸器疾患またはその症状の何らかの変化であり得る。
【0090】
本発明の方法を用いて治療することができる呼吸器疾患は、気道に身体的症状が現れる疾患または病態であり、例えば、限定するものではないが、嚢胞性線維症、呼吸窮迫症候群、急性呼吸窮迫症候群、肺結核、咳、気管支喘息、気道過敏性の増加に基づく咳(気管支炎、インフルエンザ症候群、喘息、閉塞性肺疾患など)、インフルエンザ症候群、抗咳性、気道過敏性、結核性疾患、喘息(気道炎症性細胞浸潤、増加した気道反応性亢進、気管支収縮、粘液分泌過多など)、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、肺線維症、特発性肺線維症、咳、可逆性気道閉塞、成人呼吸器疾患症候群、ハト愛好家病、農夫肺、気管支肺異形成症、気道疾患、肺気腫、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アレルギー性気管支炎気管支拡張症、職業性喘息、反応性気道疾患症候群、間質性肺疾患、肺寄生虫症などが挙げられる。一態様では、呼吸器疾患は嚢胞性線維症である。
【0091】
有利なことに、本発明の組成物および方法は、先行技術の方法と比べて改善を示す。好ましくは、呼吸器疾患の治療に使用するための組成物は、本明細書の他の箇所に記載するような、iPS細胞由来の気道上皮細胞を含む。
【0092】
本発明はまた、本発明の方法を実施するための本発明の薬学的製剤の使用を包含する。こうした薬学的製剤は、対象への投与に適した形態で提供することができ、1種以上の薬学的に許容される担体、1種以上の追加の成分、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0093】
本発明の方法において有用な薬学的製剤は、吸入、経口、非経口、肺、鼻腔内、静脈内または他の投与経路のために適切に開発され得る。その他の意図される製剤には、投射型ナノ粒子、リポソーム製剤、および免疫学ベースの製剤が含まれる。投与経路は、当業者には明らかであり、治療される疾患の種類および重症度、治療される動物またはヒト患者のタイプおよび年齢などを含めて、いくつかの要因に依存する。
【0094】
本明細書に記載の薬学的製剤は、薬理学の分野で知られた方法または今後開発される方法によって調製することができる。一般的に、このような調製方法は、該細胞を担体または1種以上の他の補助成分と会合させる工程、およびその後、必要な場合または望ましい場合、その製品を所望の単回もしくは複数回投与単位に成形または包装する工程を含む。
【0095】
一態様では、本発明の細胞は、1種以上の薬学的に許容される賦形剤または担体を用いて製剤化される。一態様では、本発明の細胞の薬学的製剤は、治療に有効な量の本発明の細胞および薬学的に許容される担体を含有する。有用な薬学的に許容される担体としては、限定するものではないが、グリセロール、水、生理食塩水、エタノール、および他の薬学的に許容される塩溶液、例えばリン酸塩および有機酸の塩、が挙げられる。これらおよび他の薬学的に許容される担体の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences (1991, Mack Publication社, ニュージャージー)に記載されている。
【0096】
投与/投薬
臨床現場では、該細胞の送達システムは多くの方法のいずれかによって患者に導入することができ、こうした方法のそれぞれは当技術分野でよく知られている。例えば、該細胞の薬学的製剤は、吸入によって、または全身的に、例えば静脈内注射によって、投与することができる。
【0097】
例示的な一実施形態では、該細胞の薬学的製剤は、肺組織への注射によって直接投与することができる。米国特許出願第10/914,829号は、直接注射のためのプロトコルを記載している。
【0098】
投与レジメンは、有効量を構成しているものに影響を及ぼす可能性がある。治療用製剤は、疾患または病態に関連する症状が現れる前または現れた後に患者に投与することができる。さらに、いくつかの分割用量ならびに時差が設けられる用量(staggered dosage)を毎日または逐次的に投与したり、該用量を連続的に注入したり、ボーラス注入にしたりすることが可能である。さらに、治療または予防状況の緊急性によって示されるように、治療用製剤の投与量を比例的に増減することができる。
【0099】
対象、好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトへの、本発明の細胞の投与は、公知の手順を用いて、患者の疾患または病態を治療するのに有効な用量で、かつ有効な期間にわたり行うことができる。治療効果を達成するのに必要な該細胞の有効量は、以下のような要因に応じて変化し得る:投与される細胞の移植の程度;投与時間;投与期間;細胞と併用される他の薬物、化合物または物質;疾患または障害の状態;治療される対象の年齢、性別、体重、コンディション、全体的な健康および病歴;ならびに医療分野でよく知られている同様の要因。投与量のレジメンは、最適な治療応答を提供するように調整することができる。例えば、いくつかの分割用量を毎日投与したり、治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例的に減らしたりしてもよい。当業者は、関連する要因を検討して、過度の実験を行うことなく細胞の有効量に関する決定を下すことができる。
【0100】
本発明の薬学的製剤中の該細胞の実際の投与量レベルは、患者に毒性を示すことなく、特定の対象、組成物、および投与様式についての所望の治療応答を達成するのに有効である該細胞の量を得るように、変更することができる。
【0101】
投与経路
本発明の細胞の投与経路としては、吸入、経口、経鼻、直腸、非経口、舌下、経皮、経粘膜(例えば、舌下、舌、(経)頬、(経)尿道、膣(例えば、経膣および膣周囲)、鼻腔(内)および(経)直腸)、膀胱内、肺内、十二指腸内、胃内、髄腔内、皮下、筋肉内、皮内、動脈内、静脈内、気管支内、吸入、および局所投与が挙げられる。
【0102】
該細胞および投与量の適切な製剤としては、例えば、分散液剤、懸濁液剤、溶液剤、ビーズ、ペレット、マグマ剤、クリーム剤、ペースト剤、硬膏剤、ローション剤、ディスク、座薬、経鼻および経口投与用の液体スプレー剤、吸入用のエアロゾル製剤、膀胱内投与用の組成物および製剤などが挙げられる。
【0103】
なお、本発明において有用である製剤および組成物は、実施例に記載された特定の製剤に限定されないことを理解すべきである。以下の実施例は、本発明の細胞の作製・使用方法、分化方法、人工組織、および治療方法についての完全な開示および説明を当業者に提供するように記述されており、本発明者らが本発明とみなすものの範囲を限定することを意図したものではない。
【0104】
本発明の実施では、特段の指示がない限り、十分に当業者の専門内にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来の技術が採用される。このような技術は、次のような文献に詳しく説明されている:"Molecular Cloning: A Laboratory Manual", 第4版 (Sambrook, 2012); "Oligonucleotide Synthesis" (Gait, 1984); "Culture of Animal Cells" (Freshney, 2010); "Methods in Enzymology" "Handbook of Experimental Immunology" (Weir, 1997); "Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells" (Miller and Calos, 1987); "Short Protocols in Molecular Biology" (Ausubel, 2002); "Polymerase Chain Reaction: Principles, Applications and Troubleshooting", (Babar, 2011); "Current Protocols in Immunology" (Coligan, 2002)。これらの技術は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの生産に適用可能であり、そのようなものとして、本発明を実施する際に検討することができる。特定の態様のために特に有用な技術を以下のセクションで説明することにする。
【実施例】
【0105】
本発明は、以下の実験例を参照することでさらに詳細に説明される。これらの実験例は、例示のみを目的として提供され、特記しない限り、限定することを意図したものではない。したがって、本発明は、以下の実施例に限定されるとは決して解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになる、ありとあらゆる変更を包含すると解釈されるべきである。
【0106】
これ以上の説明がなくとも、当業者は、前述の説明および以下の例示的な実施例を使用して、本発明の合成物を作製して利用し、かつクレームされた方法を実施することができる、と考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の態様を具体的に指摘するものであり、いかなる形でも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0107】
ここで、本明細書に開示される実験を遂行する際に使用される材料および方法について説明する。
【0108】
ヒトiPS細胞の培養
今回の研究で利用したヒトiPS細胞株は、レンチウイルスを用いて再プログラム化したiPS細胞(クローンC2)であり、ウィスコンシン大学マディソン校(Madison, WI)、解剖学部のJames A Thomson教授により提供された。クローンC2は、単離したヒト皮膚線維芽細胞にOCT-4、SOX2、Nanogおよびlin28遺伝子をレンチウイルスで形質導入することによって産生されたものである。CF-iPS細胞は、Darrell N Kotton教授により提供されたものであり、嚢胞性線維症の患者の皮膚サンプルから単離した皮膚線維芽細胞から産生された。CF-iPS細胞は、単一のレンチウイルスベクターによって産生されたトランスジーンフリー(transgene free)のものであった。これらの人工多能性ヒト幹細胞は、ThomsonおよびKotton研究室ですでに特徴づけされていた。これらは正常な核型を有し、テロメラーゼ活性を発現し、ヒトES細胞を特徴づける細胞表面マーカーおよび遺伝子を発現し、かつ3つ全ての一次胚葉の高度な誘導体へと分化する発生能を維持する。これら2つのiPS細胞株は、H9のようなhESCとは区別できない形態を示し、マウス胚性線維芽細胞フィーダーまたはマトリゲル上で無期限に維持することができる。両方のヒトiPS細胞は、Thomson研究室により以前に記載された通りに培養して、維持した。簡単に説明すると、iPS細胞は、DMEM-F12培地および20%のノックアウト血清代替品(4ng/ml bFGF、1mMグルタミン、1% mM非必須アミノ酸、および0.1mM β-メルカプトエタノールを補充した)中の照射したマウス胚性線維芽細胞(MEF)フィーダー層上で37℃、5%CO
2、90〜95%湿度にて、培地を毎日交換して、増殖させた。未分化のiPS細胞は、幹細胞カッティングツール(VWR)を用いた機械的解離によって、新鮮なフィーダー上に4〜5日おきに継代した。
【0109】
iPS細胞の気道上皮細胞へのインビトロ分化
iPS細胞は、最初に、胚体内胚葉(DE)へと分化させた。DE細胞は、以前に記載された条件下で開始された。簡単に説明すると、iPS細胞を、100ng/mlアクチビンA、2mM L-グルタミンおよび1%抗生物質-抗真菌剤を補充したRPMI 1640培地中で48時間培養した。次に、1×B27サプリメントおよび0.5mM酪酸ナトリウムを同じ培地に添加し、この培地で3日間、培地を毎日交換しながら、iPS細胞を培養した。
【0110】
続いて、DE細胞をトリプシン処理し、ヒトECMタンパク質をコーティングしたプレートに再播種し、それらを10%FBS、2mM L-グルタミン、1mM非必須アミノ酸、1%抗生物質-抗真菌剤を含むIMDM中の小分子阻害剤の組み合わせに5日目(d5)〜7日目(d7)の間順次曝露することによって、前方前腸内胚葉(AFE)へと分化させた。
図1を参照されたい。
【0111】
その後、AFE細胞は、20%FBS、2mM L-グルタミン、1mM非必須アミノ酸、1%抗生物質-抗真菌剤、レチノイン酸(0.5μM)、bFGF(10ng/ml)、BMP4(10ng/ml)、Wnt3a(100ng/ml)、およびKGF(各10ng/ml)を含むIMDMからなる肺内胚葉分化培地中で5日間維持した。次に、この増殖因子の組み合わせを、BMP7(10ng/ml)、KGF(10ng/ml)、高濃度のレチノイン酸(1μM)、RAを補充したB27、IWR-1(100nM)(WNTアンタゴニスト)、PD98059(1μM)(MAPKアンタゴニスト)に3日間交換した。
【0112】
16日目から、IWR-1(50nM)、高RA(1μM)、BMP7(10ng/ml)、KGF(10ng/ml)、EGF(10ng/ml)、デキサメタゾン(50nM)、ブチリルcAMP(0.1mM)、およびイソブチルメチルキサンチン(0.1mM)を補充した同じ基本培地中で12日間、細胞を気道上皮細胞へとさらに分化させた。別の方法として、DE細胞を、上記と同じ培地を用いて、分割することなく、直接分化させた。28日目に、細胞をトリプシンで分割し、Lonza社からのBEGM(商標)気管支上皮細胞増殖培地中で、コラーゲンI/IIIをコーティングしたプレート上に再播種し、使用するときまで維持した。
【0113】
リアルタイム定量RT-PCR
Qiagene社のRNeasy Mini Kitをメーカーの指示に従って用いて、iPS細胞およびiPS細胞由来の気道上皮細胞から全RNAを抽出した。第一鎖の相補的DNA(cDNA)は、Superscript First-Strand Synthesis Systemをメーカーのプロトコル(Invitrogen社)に従って使用して、プライマーとしてランダムヘキサマーを用いて合成した。産物の等量混合物をPCR増幅のためのテンプレートとして使用した。反応は、iQ(商標)SYBR Green Supermix (Bio-Rad社)と、示されたフォワードおよびリバースプライマー各200nMを用いて、iCyclerおよびiQソフトウェア(Bio-Rad社)を使用して25μlの容量で行った。各サンプルを三つ組で実施した。PCR条件は、95℃で4分の初期変性段階と、これに続く95℃で15秒、60℃で30秒、および72℃で30秒からなるPCRを40サイクル含んでいた。関心対象の遺伝子(GOI)のための三つ組PCR反応からの平均閾値サイクル(Ct)値は、同じcDNAサンプルからのGAPDHの平均Ct値に対して正規化した。サンプルAとサンプルBの間のGOI転写産物レベルの変化倍率(fold change)は2
-ΔΔCtに等しく、ここで、ΔCt=Ct
(GOI)-Ct
(GAPDH)、およびΔΔCt=ΔCt
(A)-ΔCt
(B)である。
【0114】
フローサイトメトリーおよび免疫化学分析
分化の前、ならびにDEおよびAFEの誘導中と気道上皮への分化中に、細胞を免疫化学および/またはフローサイトメトリーによって異なる時点で分析した。iPS細胞および分化した細胞をPBS中4%パラホルムアルデヒドで20分間固定し、PBS中0.1%Triton X-100を用いて室温(RT)で15分間透過処理し、PBS中3%BSAを用いてRTで60分間ブロッキングし、その後一次抗体と4℃で一晩、二次抗体とRTで2時間インキュベートした。
【0115】
フローサイトメトリーのために、細胞を固定/透過処理キット(Fixation/Permeabilization kit)(BD Biosciences社)からの固定液で固定し、一次抗体と検出抗体を用いてメーカーの記載通りに染色した。簡単に述べると、細胞を0.25%トリプシンと2分間インキュベートすることで単細胞懸濁液へと解離させた。解離した細胞を250μlの固定/透過処理液中に再懸濁し(0.5×10
6細胞)、氷上に20分間保持し、Perm/Washバッファーで2回洗浄した。ブロッキング溶液を用いて氷上で30分間ブロッキングした後、細胞をブロッキング溶液中で対応する一次抗体と氷上で30分間インキュベートした。対応するコンジュゲート化二次抗体と氷上で30分間インキュベートした後、細胞を350μlのPerm/Washバッファー中に再懸濁し、2回洗浄して、フローサイトメトリーにより分析した。
【0116】
統計分析
全ての統計分析は、ソフトウェアOrigin(OriginLab社, Northampton, MA)を用いて行った。データは平均±s.e.m(測定の標準誤差)として表した。2群が互いと有意に異なるかどうかを評価するためにt検定を行った。0.05未満のp値(両側検定)を統計的に有意であるとみなした。全てのエラーバーは±SEMを表す。
【0117】
オルガノイド形成
15日目の気道前駆細胞は、マトリゲル中で気相-液相状態にて、高RA(1μM)、BMP7(10ng/ml)、KGF(10ng/ml)、EGF(10ng/ml)、デキサメタゾン(50nM)、ブチリルcAMP(0.1mM)およびイソブチルメチルキサンチン(0.1mM)を補充したIMDM培地で分化させた気道上皮細胞として30日間培養した。細胞を固定/透過処理キット(BD Biosciences社)からの固定液で固定し、気道上皮細胞のP63およびNKX2.1のための一次抗体と検出抗体を用いてメーカーの記載通りに染色した。
【0118】
本明細書に開示した実験の結果をここで説明する。
【0119】
肺は、その近位-遠位軸に沿って上皮の組成が大きく異なることを特徴とする、複雑な三次元構造をしている。内腔上皮(気管および一次気管支)は、主に繊毛細胞、神経内分泌(NE)細胞およびクララ様細胞で構成されている。後者はセクレトグロビンCCSPを産生する。より遠位の気道(小気管支および細気管支)では、繊毛細胞よりもクララ細胞が多数を占めており、また、気管内よりも多くのNE細胞が存在している。肺の最も遠位の領域は、2つの主要な上皮細胞型、すなわちI型(ATI)およびII型(ATII)上皮細胞、で構成される肺胞の複雑なシステムへと組織化されている。ATIは肺胞の大部分を覆って(肺胞表面積の最大95%をカバーして)、主にガス交換を担っており、一方ATII細胞は肺胞サーファクタントを分泌し、主に立方体の形をしている。ヒトiPS細胞から胚体内胚葉(DE)、前方前腸内胚葉(AFE)、続いてヒト肺胞II型細胞の比較的均質な集団を産生するための段階的分化方法は、以前に記載されている(Ghaedi, et al., JCI 2012)。本明細書に記載の研究では、気道上皮の発生を導くシグナル伝達経路のタイミングおよび共同作用を模倣する段階的な分化アプローチが採用される。ユニークな戦略を使用して、高い効力を有するヒト多能性幹細胞由来の機能的な気道上皮細胞が産生された。
【0120】
ヒトiPS細胞の前方前腸内胚葉および肺内胚葉細胞への誘導
気管の遠位側の胚呼吸器系は、マウスでは胎生9.5日目、ヒトでは胎生4週目に胚体内胚葉(DE)の前腹側の肺芽から生じ、こうした肺芽が多くの種類の特殊化した上皮細胞へと分化する。
【0121】
ヒトiPS細胞を、血清フリーの条件を用いてDE細胞へと分化させた(
図1)。iPS細胞をアクチビンAの飽和濃度に曝露することによって、85%を超える内胚葉細胞が生み出された。フローサイトメトリー分析は、5日目のiPS細胞由来の細胞集団がこの胚葉に関連するマーカーを高い割合で発現することを示した。該細胞の89%はc-kit陽性であり(
図2A)、91%はSOX17陽性であり(
図2C)、93%はFOXA2陽性であり(
図2B)、そして該細胞の88%はクローンC1において内胚葉表面マーカーCXCR4を発現した(
図2D)。
【0122】
このようにして誘導された胚体内胚葉細胞は広く多能性であると推定されているが、いくつかの研究は、胸腺、甲状腺および肺上皮などの最前方前腸内胚葉系統をこれらの前駆細胞から誘導することが困難であったことを示している。肺胞上皮への分化誘導は、胚体内胚葉(DE)の産生と、これに続く前方前腸内胚葉(AFE)へのパターニングによって進める必要がある。
【0123】
したがって、第2工程では、DE細胞をAFEへとさらに分化させた。DE細胞を解離させ、ヒトECMをコーティングしたプレートに再播種して、AFE分化培地で2日間培養した。ECMタンパク質の選択は以前の研究からもたらされ、その研究は、細胞外タンパク質マトリックスの混合物(コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、テネイシン、エラスチン、およびいくつかのプロテオグリカンとグリコサミノグリカン)を含有するヒトECMタンパク質表面上で培養したDE細胞が、他のECMタンパク質上で培養したDE細胞と比較して、より速く付着しかつより多くのNKX2.1
+をもたらすことを証明した。
【0124】
マウスとヒトのESおよびiPSでの実験は、iPS細胞由来の胚体内胚葉におけるアクチビンA/ノーダルおよびTGF-β/BMPシグナル伝達の二重阻害が、前方前腸内胚葉を定量的に生じさせるために必要であることを明らかに実証した。以前の試みでは、ノギン(BMPシグナル伝達の阻害剤)およびSB141524(TGF-βシグナル伝達の阻害剤)をDE細胞に2日間適用することによって、前方内胚葉の運命(SOX2
+)の方が支持されて後方内胚葉の運命(CDX2
+)が抑制され、かつAFE表現型に関連するマーカーの強発現を有する細胞の富化集団がもたらされた。
【0125】
NKX2.l
+FOXA2
+前駆細胞の数を増やすために、DE細胞からAFE細胞を作製するための従来のアプローチに変更を加えた。Sneockらは、BMP/TGFと、それに続くTGFおよびWntシグナル伝達経路阻害の連続的阻害がDE細胞からの良好なAFE分化を与えることを示している(Huang SX,et al., Nat Biotechnol., 2013 Dec 1. doi: 10.1038/nbt.2754)。AFEのアイデンティティを促すために、その後DE細胞を、表1に示すようなBMP4/TGFβおよびWntのアゴニストとアンタゴニストの異なる組み合わせに6日目〜8日目の間順次曝露した。NKX2.1
+、FOXA2
+、SOX2
+およびNKX2.1
+FOXA2
+前駆細胞の数を増加させる能力について調べた。表1に示したアゴニストとアンタゴニストがAFE分化期間中にFOXA2/SOX2およびNKX2.1発現に及ぼす効果は、それぞれ
図3Aおよび3Bに示される。
【0126】
(表1)6〜8日目の間に順次添加されたBMP4/TGFβおよびWntのアゴニストとアンタゴニストのリスト
【0127】
以前の研究は、FGF、BMP4ファミリーのメンバー、KGFおよびWNT3aが肺内胚葉へのパターニングのための胚発生時のシグナルを与えることを示した。BMP4シグナル伝達は肺への運命決定のために必要とされ、そしてbFGFおよびWNT濃度の増加はNKX2.1
+未熟肺前駆細胞を増加させる。肺細胞の運命を指定するために、7日目の後で培地を、bFGF(10ng/ml)、BMP4(10ng/ml)、Wnt3a(100ng/ml)、およびKGF(10ng/ml)を含有する肺内胚葉分化培地に5日間交換した。7日目に異なる条件間でFOXA2
+SOX2
+前方内胚葉細胞の数を比較した。FOXA2
+SOX2
+前方内胚葉細胞について二重陽性の細胞の数を、フローサイトメトリーにより、総FOXA2
+内胚葉細胞の中から定量化した。その結果は、DE細胞におけるBMP4/TGFβおよびWntシグナル伝達の遮断が、培地のみと比較して、FOXA2
+SOX2
+前方内胚葉細胞の数を増加させることを示した。この増加は、ドルソモルフィン/SB431542(BMP/TGFβの阻害剤)とIWP2/SB431542(WNT/TGFβの阻害剤)の組み合わせに細胞を順次曝露した場合に、他の阻害剤の組み合わせと比較して、より顕著であった(
図3A)。
【0128】
NKX2.1
+は、前腸内胚葉の他の誘導体から将来の肺を区別する細胞の最も初期のマーカーである。BMP/TGFβおよびWNT/TGFβへ順次曝露することがiPS細胞-DE細胞にNKX2.1
+内胚葉細胞へと分化するより高い能力を与えるかどうかを判定するために試験した。NKX2.1
+細胞の割合は、存在する総細胞に対するパーセントとして定量化した。NKX2.1
+細胞の数は、DE細胞をドルソモルフィン/SB431542(BMP/TGFβの阻害剤)とIWP2/SB431542(Wnt/TGFβの阻害剤)の組み合わせに曝露した場合に、他の阻害剤の組み合わせと比較して、より高かった(
図3B)。
【0129】
このプロトコルをさらに操作すると(
図4および以下の表2参照)、NKX2.1
+FOXA2
+細胞の増加が15日目にもたらされ、ノギン/SBに曝露したDE細胞での50%と比較して、72.1%であった;なお、前方化なしでは1%未満であった(
図5)。FOXA2で共染色されたエクスビボ分化NKX2.1
+細胞の全て(
図6A〜6D)は、インビトロで分化したNKX2.1
+細胞が肺内胚葉細胞に相当することを示唆した。連続アクチビンA処理は、結果的に、希少のFOXA2
+SOX2
+細胞と少数のNKX2.1
+細胞をもたらし(
図3Aおよび3B)、このことは、アクチビンA曝露の最適持続時間が重要であることを示唆した。PAX8
+(甲状腺マーカー)およびTUJ1(ニューロンマーカー)細胞は培養物中に検出されなかった(データは示さず)。これらの結果の全ては、DE細胞においてBMP4/TGFβおよびWNTシグナル伝達を順次遮断した後の、FGF、BMP4およびWNTシグナル伝達の組み合わせが、前方内胚葉からの肺特異的NKX2.1
+前駆細胞の系統決定を促進する、という知見と一致した。
【0130】
(表2)5〜15日目の間に順次添加されたBMP4/TGFβおよびWntのアゴニストとアンタゴニストのリスト
【0131】
ムチン1、ムチン5AC(杯細胞)、FOXJ1(繊毛細胞)、およびCCSP(クララ細胞)など、いかなる種類の成熟した肺気道上皮細胞のためのマーカーも、免疫蛍光染色またはPCRによってタンパク質レベルで検出されなかった(データは示さず)。
【0132】
肺内胚葉細胞の肺気道前駆細胞への分化
初期の肺内胚葉(NKX2.1
+/FOXA2
+)は多能性であり、その運命は、局所微小環境(主に中胚葉)からもたらされるシグナル、または領域(近位対遠位)の細胞運命を制御するシグナルに依存している。気道上皮の特殊化は胎児肺の茎(stalk)で発生する一方で、先端部の肺胞前駆細胞は遠位細胞であるATIIおよびATI細胞へと分化する。茎部におけるNKX2.1
+SOX2
+細胞は、成熟した気道上皮を生じさせる気道前駆細胞である。対照的に、遠位の胎児肺芽の先端部はSOX9とFOXP2を発現し、気道および肺胞の細胞型の全てを生み出すことが可能である。
【0133】
BMP4は遠位に発現される一方で、BMP7は気道のより近くに発現される。遠位bFGFおよびFGF10は近位KGF(FGF7)に取って代わられるが、WNTシグナル伝達は近位茎部の前駆細胞では阻害されて、遠位先端部に存在する。SOX2は気管支系統決定の重要な調節因子であり、これは古典的WNTシグナル伝達によって負に調節される。WNTおよびMAPKK/ERKシグナル伝達経路の阻害は、AFE細胞からのNKX2.1
+SOX2
+細胞の割合を増加させる。レチノイン酸(RA)は肺芽の発生にとって重要な因子であり、RA濃度は遠位先端部よりも近位茎部において比較的高い。高いRAシグナル伝達は、遠位肺発生を抑えて、近位気道発生に有利に働く。
【0134】
NKX2.1
+肺前駆細胞をNKX2.1
+SOX2
+近位前駆細胞へと変換するために、BMPおよびWNT経路を、気道樹(airway tree)の近位-遠位パターニングを制御するように調節した。近位気道運命を高めるために12日目に、増殖因子の組み合わせを、BMP7(10ng/ml)、KGF(10ng/ml)、高濃度のレチノイン酸(1μM)、IWR-1(100nM)(WNTアンタゴニスト)、PD98059(1μM)(MAPKアンタゴニスト)を含有する近位誘導培地に3日間切り替えた。3日後、IWR-1、PD98059、BMP7、および高RA濃度によるWNT経路の阻害が観察された。NKX2.1
+/SOX2
+気道前駆細胞は、処理前の約1〜2%と比較して約30%にまで上がった(
図7A〜7Dおよび8)。
【0135】
気道分化をさらに促進するために、15日目の前駆細胞を、IWR-1(100nM)、RA(1μM)、BMP4(10ng/ml)、BMP7(10ng/ml)、KGF(10ng/ml)、EGF(10ng/ml)を補充した同じ基本培地で12日間培養した。
図9を参照されたい。定量RT-PCRは、分化の20日目にiPS細胞由来の細胞において高度に発現されたSOX2発現(
図10F)と比較したとき、FOXJ1(繊毛細胞)(
図10A)、KRT5(基底細胞)(
図10B)、CFTR(
図10C)、CCSPまたはSCGB1A1(クララ細胞)(
図10D)、P63(
図10E)、ムチン5AC(杯細胞)(
図10G)などの成熟肺気道上皮細胞マーカーの比較的穏やかな増加を明らかにした。表3も参照されたい。
【0136】
(表3)気道分化を促進するために基本培地に添加されたアゴニストとアンタゴニストのリスト
【0137】
27日目に、フローサイトメトリーは、細胞の76%が気道細胞マーカーSOX2陽性になった時点で、前記の増殖因子および阻害剤の組み合わせが気道上皮の分化を誘導したことを明らかにした(
図11および12D)。SOX2陽性細胞の割合は、35日目に72%から92%に増加した。基底細胞および分泌/繊毛細胞は、大小の気道区画における2つの主要な上皮細胞系統である。基底細胞(BC)は、ヒト肺の誘導気道の内側をおおっている偽重層上皮であり、他の近位気道系統を生じさせることが以前に示されている。BCの1つの特徴は、転写因子であるトランスフォーメーション関連タンパク質63(P63)と、細胞骨格タンパク質であるサイトケラチン5および14(それぞれKRT5およびKRT14)の高い発現レベルである。これらの細胞は、気-液界面で培養したとき、またはインビトロでのtracheosphereアッセイでは、増殖して、ヒト気道内に繊毛細胞と分泌細胞(クララ細胞)を生成する。
【0138】
分化の27日目に、細胞の64%はKRT5陽性であり(
図12F)、かつ細胞の60%以上はP63
+であって(
図12H)、該細胞の大部分が潜在的に基底前駆細胞であったことを示唆している。細胞の76%はクララ細胞分泌タンパク質(CCSP)を発現する(
図12E)。クララ様細胞は、近位-遠位軸を通しての上皮分泌細胞であり、気道の前駆細胞としての役割を果たすと以前から考えられてきた。嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)は、上皮細胞膜を横切って塩素イオンとチオシアン酸イオンを輸送するABC輸送体クラスのイオンチャネルである。神経上皮細胞だけでなく、気道上皮細胞の大半もCFTRタンパク質を発現する。フローサイトメトリー分析は、27日目の細胞の36%がCFTR陽性であることを明らかにした(
図12B)。細胞の最大65%および58%は、それぞれ、繊毛細胞マーカーFOXJ1(
図12A)およびβ-チューブリンIV(
図12C)に対して陽性であり、培養物中の該細胞の少なくとも3分の1が、繊毛のあるCFTR発現性の気道表現型を有することを示唆している(
図12B)。細胞のわずか8%は、杯細胞マーカーであるムチン-5ACを発現した(
図12G)。
【0139】
27日目のqPCRは、気道分化培地への切り替えが気道遺伝子KRT5(
図13F)、P63、FOXJ1(
図13B)、SOX17、MUC5AC(
図13D)およびCFTR(
図13A)のさらなるアップレギュレーションをもたらした一方で、ムチン5AC、SCGB1A1(CCSP)(
図13C)のレベルは比較的低かった、ことを示した。他の内胚葉系統マーカー、例えば、AFP(肝臓)、PDX1、TG(甲状腺)およびPAX9(咽頭)は、この段階では検出されなかった。
【0140】
ECMタンパク質は、肺では非常に特異的な分布・組み立てパターンを有する。気道上皮分化の複雑なプロセスはまた、細胞-マトリックスおよび細胞-細胞相互作用を必要とする。ヒト気管および気道は、他のECMタンパク質と比較して、主にコラーゲンIおよびIIIから構成される。したがって、28日目から、細胞を、Lonza社からのBEGM(商標)気管支上皮細胞増殖培地中でコラーゲンI/IIIをコーティングしたプレートにさらに7日間移した。ヒト肺胞分化のために変更した条件を用いて、35日目に、AFE細胞を気道上皮前駆細胞へと効率よく変換するのに成功した。
【0141】
35日目に、分化した細胞は、気道上皮細胞マーカーCFTR(
図15E)、CCSP(
図15D)、ムチン5AC(
図15C)、FOXJ1(
図15B)およびPanKRT(
図15F)について陽性に染色された。35日目にフローサイトメトリーで確認されるように、細胞の100%が気道細胞マーカーSOX2について陽性であり(
図16H)、細胞の最大97.5%はP63について陽性であった(
図16D)。細胞の最大100%はCCSP(クララ細胞)(
図16F)、β-チューブリンIV(
図16C)、およびFOXJ1(繊毛細胞)(
図16B)を発現した。細胞の62%および24%は、それぞれ、CFTR(
図16E)およびムチン5AC(
図16A)について陽性であった。
【0142】
35日目の終りに、該細胞の大部分である92.2%はKRT5またはCK5について陽性であった一方で、それらは繊毛および分泌の表現型を示すFOXJ1およびCCSPを発現した。このことは、iPS細胞由来の気道細胞が、まだこの段階では多能性の潜在力を備えていることを実証している。気道前駆細胞または基底細胞は、それらがクララ細胞および繊毛細胞などの他の近位細胞への分化を受けているときに、基底細胞マーカーKRT5およびP63の発現を維持していた可能性がある。Gompertsらは、オルガノイドアッセイにおいて、クララ細胞がFOXJ1を発現して繊毛表現型を有し、同様にMuc5AC、CCSPおよびケラチン5を発現する細胞を含んでいた、ことを実証した。
【0143】
35日目での定量RT-PCRは、CK5またはKRT5(
図17A)、SCGB1A1(CCSP)(
図17E)、CFTR(
図17B)、P63(
図17D)、FOXJ1(
図17F)およびムチン5AC(
図17G)がiPS由来気道上皮細胞において高度に発現され、その発現レベルは新たに単離したヒト気道細胞に匹敵することを明らかにした。これらの遺伝子は未分化のiPS、DE、AFE細胞には検出されなかった。
【0144】
次に、同様の段階的分化アプローチが、CF疾患特異的ヒトiPS細胞から肺気道前駆細胞を産生するために検討された(
図18)。興味深いことに、CF-iPS細胞クローンは、同様の結果をもたらし、DE、AFE、気道上皮細胞へと分化する同様の効率性を有していた;このことは、このプロトコルが他の供給源からの他のiPS細胞株に一般化され得ることを示唆している(
図19A〜19Dは細胞染色を示し、
図20A〜20Hはフローサイトメトリー分析を示し、
図21A〜21Hは定量RT-PCRの結果を示す)。
【0145】
免疫染色の分析はまた、iPS細胞に由来する気道前駆細胞集団がマトリゲルにおいて肺オルガノイド構造体へと発達することができることを示した。該構造体は気道マーカーP63(
図22A)およびNKX2.1(
図22B)について陽性であった。
【0146】
人体への移植用の機能的な肺胞組織をエクスビボで組み立てるための先進的な技術の開発は、組織工学者が直面する困難な課題の一つである。ESCおよびiPS細胞を肺上皮細胞または前駆細胞へと分化させることの最近の進歩は、肺の作製のために幹細胞由来の上皮細胞を使用する有望な治療戦略を示唆している。
【0147】
本研究では、iPS細胞を機能的な誘導気道上皮細胞へと分化誘導するための非常に効率のよい方法が開発され、該方法は脱細胞化肺足場の再細胞化に使用することができ、最終的には肺移植用の自己移植片を提供し得る。特に、この分化誘導方法は、いくつかの多能性細胞株(胎児肺線維芽細胞から再プログラム化されたヒトiPS細胞クローンC1、および真皮線維芽細胞から再プログラム化されたCF-iPS細胞)に広く適用可能であった。両方のiPS細胞クローンは同様の結果をもたらし、かつDE、AFEおよびさまざまな種類の気道細胞へと分化させるのに同様の効率性を有し、このプロトコルが他の供給源からの他のiPS細胞株に一般化され得ることを示唆している。iPS細胞を肺胞上皮へと分化させるための努力の大半は、II型上皮細胞の生成に集中しており、気道上皮の分化を目標としている研究はほとんどない。公開された全ての報告では、その有効性は低く、気道マーカーの発現は確率的であるようである。有効性の低いESCおよびiPS細胞を分化させる異種培養では、集団内の未分化の多能性幹細胞が残存する危険性があり、こうした細胞は移植後に奇形種形成の重大なリスクを抱えている可能性がある。どのような種類の幹細胞を分化のために使用するかに関係なく、肺の作製には、特に大量の高分化した細胞の産生には、いまだ課題が残存する。以前の報告では、iPS細胞から分化した気道細胞を増やすことは難しかった。しかしながら、単離された気道細胞と違って、本研究でのiPS細胞由来の気道細胞は、CCSP、P63、FOXJ1、CFTRおよびムチン-5ACなどの気道上皮細胞関連マーカーを失うことなく、数継代にわたり増殖することが可能であり、無細胞マトリックス足場に播種するための何千万もの細胞を生み出すために使用することができる。前駆細胞集団を「スケールアップ」する能力は、自己iPS細胞由来の細胞を用いた組織工学的なヒト肺組織の作製における使用のために、これらの技術を変換する場合に、特に価値があるだろう。
【0148】
また、遺伝性疾患および変性疾患に罹患した患者の治療を可能にする、特化された移植可能な細胞を供給することは、ヒト細胞療法の主な目標である。嚢胞性線維症などの特定の肺疾患では、成人の肺幹/前駆細胞またはヒト肺から単離した肺胞細胞の移植が、患者の正常な肺機能を回復するための新しい治療アプローチとして頭角を現しつつある。しかしながら、このアプローチは、ヒト肺胞細胞の不足によって、より重要なことには、損傷した肺におけるインビボでのこのような細胞の生着の欠如によって、制限されている。
【0149】
iPS細胞に由来する気道上皮細胞または肺上皮前駆細胞は、患者における生来の肺上皮細胞に取って代わって健康な肺上皮を再構成するための、幹細胞ベースの吸入療法を用いた有望な治療戦略を提供する。
【0150】
さらに、新薬の開発はコストがかかり、資源集約的である。iPS由来の気道上皮細胞は、医薬品開発のために潜在的に非常に価値があり、早期のターゲット研究および安全性評価におけるツールとしての使用から、新規化学物質を見つけるためのスクリーニングモデルとしての使用にまで及んでいる。iPS由来の気道上皮細胞は、肺組織の病理上の薬物を試験するのに有用であり得る。また、iPS由来の気道上皮細胞は、肺組織の病理上の治療薬のための特定の送達ビヒクルの効果を調べるために使用することができ、例えば、異なる送達システムを介して投与された同じ薬剤の効果を比較するために、または単に送達ビヒクル自体(例えば、非ウイルス対ウイルスベクター)が肺の病理に作用することが可能かどうかを評価するために使用される。
【0151】
フィーダー層またはマトリゲル上のiPS細胞の胚体内胚葉段階への直接分化は、胚様体法の代わりに使用された。DEへの直接分化は、EB法と比較した場合、高純度の集団をもたらした。これは、胚様体では、アクチビンAの存在下でさえ、他の2つの胚葉、つまり中胚葉と外胚葉、からの細胞が残存したことが主な理由であった。
【0152】
胚体内胚葉を誘導するために、iPS細胞を、100ng/mlのアクチビンAを補充した血清不含のRPMI 1640培地で48時間培養した。次に、1×B27サプリメント、0.5mM酪酸ナトリウムを同じ培地に添加し、この培地でiPS細胞をさらに3日間培養した。以前に確立された公開プロトコルでは、アクチビンAを含有する培地で5日間の代わりに4日間細胞を培養した。1×B27サプリメントは低血清状態をもたらした。これらの細胞はまた、酪酸ナトリウムの存在下で均一な形態を示した。
【0153】
他のプロトコルでは、研究者らは、無血清培地または規定培地を主に使用している。対照的に、本明細書に記載の改変プロトコルは、この胚葉に関連するマーカーを高割合で発現するiPS由来の細胞集団を5日目にもたらした。該細胞の集団は、該細胞の89%がc-kit陽性、91%がSOX17陽性、93%がFOXA2陽性であり、そして該細胞の88%がクローンC1において内胚葉表面マーカーCXCR4を発現した。
【0154】
胚体内胚葉を前方前腸内胚葉へと分化させるために、DE細胞を、5%FBSおよびドルソモルフィン/SB141524を含有するIMDM中で培養した。他のプロトコルはIMDMの代わりに他の基本培地を使用し、その他は無血清培地または規定培地のいずれかを使用した。
【0155】
前方前腸内胚葉から誘導気道細胞への分化を制御するために、増殖因子と細胞外タンパク質マトリックスに焦点を合わせた。本明細書に記載の分化方法では、10%のFBSを含むIMDM中のEGF、KGF、BMP7、BMP4、IWR-1(WNT3a阻害剤)、および高レチノイン酸が選択された。この分化カクテルは、これまでの報告書中で使用されたことがない。
【0156】
本明細書に記載の方法は、肺に存在する細胞外マトリックスタンパク質(これらには、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、テネイシン、エラスチン、および多数のプロテオグリカンおよびグリコサミノグリカンが含まれる)および肺の発生と再生において中心的な役割を果たす増殖因子の組み合わせを使用して、胚形成時の肺発生を模倣するものである。iPS細胞は、最初に胚体内胚葉(DE)へと分化させ、次にECMをコーティングした表面上で培養した。本明細書に記載の分化方法の発見は、組織特異的分化のためのヒトiPS細胞における増殖因子と共に、気道上皮細胞分化のためのECMコーティング処理表面を使用する最初のものである。
【0157】
気道上皮分化の複雑なプロセスは、細胞-マトリックスおよび細胞-細胞の相互作用を必要とする。ヒト気管および気道は、主にコラーゲンIおよびIIIから構成されている。したがって、28日目に開始して、細胞を、Lonza社からのBEGM(商標)気管支上皮細胞増殖培地中でコラーゲンI/IIIをコーティングしたプレートにさらに5日間移した。この研究は、iPS細胞から気道上皮へと分化させるために、コラーゲンI/IIIミックスをコーティングした表面を最初に使用した研究の一つである。
【0158】
ヒト多能性幹細胞が誘導気道上皮へとインビトロで効率よく分化するように誘導され得ること、を発見することは予想外であった。ヒト気道分化のための本明細書に記載の方法を用いて、35日目に、AFE細胞は気道上皮前駆細胞へと効率よく成功裏に変換された。35日目にフローサイトメトリーで確認されるように、細胞の約100%は気道細胞マーカーSOX2について陽性であり、細胞の最大約97.5%はP63について陽性であった。さらに、該細胞の最大で約100%はCCSP(クララ細胞)ならびにβ-チューブリンIVおよびFOXJ1(繊毛細胞)を発現した。細胞の約62%および24%は、それぞれ、CFTRおよびムチン5ACについて陽性であった。
【0159】
35日目の終りに、該細胞の大部分である約92.2%はKRT5について陽性であったが、一方でそれらは繊毛および分泌の表現型を示すFOXJ1およびCCSPを発現した。定量RT-PCRはまた、CK5、SCGB1a1(CCSP)、CFTR、P63、FOXJ1およびムチン-5ACが、iPS由来の気道上皮細胞において高度に発現されることを明らかにし、その相対レベルは新たに単離したヒト気道細胞に匹敵した。
【0160】
単離された気道細胞と違って、本明細書に記載のiPS細胞由来の気道細胞は、CCSP、P63、FOXJ1、CFTRおよびムチン5ACなどの気道上皮細胞関連マーカーを失うことなく、数継代にわたり増殖することが可能である。これは、人工肺組織を作るために無細胞マトリックス足場に播種するなどの、さらなる目的のために何千万もの細胞を生み出すことを可能にする。
【0161】
他の態様
本明細書中の可変要素の定義における要素のリストの記載には、任意の単一の要素またはリストに記載された要素の組み合わせ(部分的組み合わせ)としてのその可変要素の定義が含まれる。本明細書中の実施態様の記載には、任意の単一の実施態様としての、またはその他の実施態様もしくはその部分との組み合わせとしての、その実施態様が含まれる。
【0162】
本明細書に引用されたありとあらゆる特許、特許出願、および刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本発明は特定の態様に関連して開示されているが、当業者であれば、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様および変形を考え出すことができることは、明らかである。添付の特許請求の範囲は、全てのそのような態様および等価的変形物を包含すると解釈されるものとする。