(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記薬学的に活性な化合物を約150mg/mL含み、体積が約3mLである前記安定な水性液体組成物の1回用量を患者に投与すると、約800mOsmol/kg〜約900mOsmol/kgの生理的オスモル濃度が前記患者において得られる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の安定な水性組成物。
前記薬学的に活性な化合物を約75mg/mL含み、体積が約3mLである前記安定な水性液体組成物の1回用量を患者に投与すると、約375mOsmol/kg〜約475mOsmol/kgの生理的オスモル濃度が前記患者において得られる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の安定な水性組成物。
室温で10日後、または室温で20日後、前記組成物はシクロプロリン‐スレオニン(ジケトピペラジン)、Thr‐Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr‐NH2、Thr‐Pro、Pro‐Thr、Pro‐Thr‐NH2、プロリン及び/またはスレオニンから成る群より各々選択される最小量の1種以上の分解生成物を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の安定な水性組成物。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、GLYXペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩(例えば、GLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば以下の式:
を有するGLYXペプチド:あるいはその塩)を含む、静脈内注射に適した安定な組成物(例えば水性組成物)を特徴とする。実施形態には以下の利点のうち1つ以上が含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、IV注射によりGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば上記式を有するGLYXペプチドまたはその塩)を循環系に臨床的に送達または投与することを促進し、それにより脳に、ひいては抑鬱、神経因性疼痛または不安などのCNS障害の治療に関わる脳内の1箇所以上の活性部位にGLYXペプチドを更に効率的に送達することを可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は強化された貯蔵安定性を示し、例えばGLYXペプチドを水性媒体中で難分解性にすることが可能である。本明細書に記載の組成物には更に、1種以上の物理的及び/または化学的特性を当該組成物にもたらす1種以上の薬学的に許容可能な成分(例えば緩衝液、水混和性溶媒、賦形剤、薬学的に許容可能なアニオン(例えば塩化物イオン)及びカチオン(例えばH
+)が挙げられるがこれらに限定されるものではない)が含まれ得る。例えば、1種以上の薬学的に許容可能な成分は酸(例えば塩酸、例えば解離塩酸)、その共役塩基(本明細書では「緩衝液」と称する場合もある、例えば塩化物イオン)、またはそれらの組合せとすることが可能であり、また特定のpHを維持するのに十分な量で存在することも可能である。また、本明細書に記載の組成物は、必要に応じて追加的に2種以上の活性的な添加成分の組合せを含んでもよいことが当業者に理解される。
【0008】
1態様では、本開示は、以下の式:
に表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、静脈内注射に適した安定な水性組成物を特徴とする。このような組成物は更に、1種以上の酸、1種以上の緩衝液及び/または1種以上の賦形剤を含むことが可能である。
【0009】
1態様では、本開示は、(i)以下の式:
を有する薬学的に活性な化合物またはその薬学的に許容可能な塩60mg/mL〜約200mg/mL(例えば約125mg/mL〜約175mg/mL;例えば約150mg/mLまたは約75mg/mL);(ii)注射用水;及び(iii)酸を含む、静脈内注射に適した安定な水性組成物を特徴とし;当該安定な水性組成物のpHは25℃で約3.9〜約5.5である。
【0010】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の任意の安定な水性組成物をある量で収容する容器(例えばプレフィルドシリンジまたはバイアル)を特徴とする。ある特定の実施形態では、その量は少なくとも1回の単回用量として抽出可能な量である。ある特定の実施形態では、単回用量は体積約1mL〜約4nL(例えば3mL)とすることも可能である。
【0011】
更なる態様では、本開示は、本明細書に記載の任意の安定な水性組成物を単回用量で含むプレフィルドシリンジを特徴とする。ある特定の実施形態では、単回用量は体積約1mL〜約4mL(例えば3mL)とすることも可能である。
【0012】
1態様では、本開示は、(i)以下の:
に表される化合物約150mg/mL;(ii)注射用水;及び(iii)塩酸を含む組成物を特徴とし、当該組成物のpHは25℃で約4.1〜約4.7である。
【0013】
1態様では、本開示は、(i)以下の:
に表される化合物約450mg;(ii)水;及び当該水性組成物に塩化物イオンを提供する酸を含む注射に適した薬学的に許容可能な用量を特徴とし、当該用量でのpHは約4.5であり、体積は約3mLである。ある特定の実施形態では、当該用量はシリンジまたはバイアル内に収容可能である。
【0014】
1態様では、本開示は、(i)以下の:
に表される化合物約225mg;注射用水;及び塩酸を含む注射に適した薬学的に許容可能な用量を特徴とし、当該容量でのpHは約4.5であり、体積は約3mLである。ある特定の実施形態では、その用量はシリンジまたはバイアル内に収容可能である。
【0015】
別の態様では、本開示は、(i)以下の:
を有する化合物約100mg/mL〜約200mg/mL(例えば約125mg/mL〜約175mg/mL、約140mg/mL〜約160mg/mL、または約150mg/mL)、またはその薬学的に許容可能な塩を含む静脈内注射に適した安定な水性組成物を特徴とし;当該組成物のpHは25℃で約3.5〜約6.5(例えば約3.5〜約5.5、約3.9〜約5.5、約4.0〜約5.0、約4.2〜約5.0、約4.2〜約4.8、約4.0〜約4.5)である。いくつかの実施形態では、水性組成物は更に酸(例えば塩酸)及び/または緩衝液(例えば塩化物イオン)及び/または1種以上の賦形剤を含むことが可能である。
【0016】
実施形態には以下の特長の1つ以上が含まれ得る。安定な水性組成物は約200mg〜約500mg(例えば約450mg;約375;または約225mg)の薬学的に活性な化合物を含み得る。安定な水性組成物のpHは25℃で約4.5とすることが可能である。安定な水性組成物は:H
+、プロトン化形態の薬学的に活性な化合物、及び/またはこれらの組合せのうち少なくとも1つを含み得る。酸はフマル酸、リンゴ酸、乳酸、塩酸、臭化水素酸、酢酸、クエン酸、リン酸、硝酸、硫酸及びアスコルビン酸から成る群より選択することが可能である。ある特定の実施形態では、酸は水性組成物(例えば塩酸)中、塩化物イオンを提供する。ある特定の実施形態では、約150mg/mLの薬学的に活性な化合物を含み、体積が約3mLである安定な水性液体組成物の1回用量を患者に投与すると、約800mOsmol/kg〜約900mOsmol/kgの生理的オスモル濃度が当該患者において得られる。他の実施形態では、約75mg/mLの薬学的に活性な化合物を含み、体積が約3mLである安定な水性液体組成物の1回用量を患者に投与すると、約375mOsmol/kg〜約475mOsmol/kgの生理的オスモル濃度が当該患者において得られる。室温で10日後、または室温で20日後、当該組成物にはシクロプロリン‐スレオニン(ジケトピペラジン)、Thr‐Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr‐NH
2、Thr‐Pro、Pro‐Thr、Pro‐Thr‐NH
2、プロリン及び/またはスレオニンから成る群より各々選択される最小量の1種以上の分解生成物が生じ得る。0℃以下で1か月後、当該組成物にはジケトピペラジン、Thr‐Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr‐NH
2、Thr‐Pro、Pro‐Thr、Pro‐Thr‐NH
2、プロリン及び/またはスレオニンから成る群より各々選択される最小量の1種以上の分解生成物が生じ得る。40℃で3か月後、当該組成物では、ジケトピペラジン及び/またはPro‐Thr‐NH
2のGLYX‐13ピークの、HPLCにより得られた面積は約2%未満となり得る。40℃で3週間後、当該組成物では、ジケトピペラジン及び/またはPro‐Thr‐NH
2のHPLCによるGLYX‐13ピークの、HPLCにより得られた面積は約1%未満または約0.5%未満となり得る。当該組成物は以下を含むプロセス:(i)薬学的に活性な化合物及び水を含む第1配合物を提供すること;ならびに(ii)当該第1配合物を、pH約3.9〜約5.5にするために十分な量の塩酸またはその供給源と接触させることにより調製できる。
【0017】
実施形態には以下の特長のうち1つ以上が含まれ得る。当該組成物は塩酸、リン酸及び硫酸から成る群より選択される酸を更に含むことが可能である。組成物は更に緩衝液を含むことが可能である。ある特定の実施形態では、緩衝液は塩化物イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオンから成る群から選択される。他の実施形態では、緩衝液は酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、炭酸塩、重炭酸塩及びマレイン酸ならびにこれらの塩からなる群より選択される。組成物のpHは25℃で約3.9〜約5.5(例えば4.5)にすることが可能である。ある特定の実施形態では、組成物を投与すると、約500mOsmol/kg〜約1,000mOsmol/kg(例えば600mOsmol/kg〜約950mOsmol/kgまたは850mOsmol/kg〜約950mOsmol/kg)の生理的オスモル濃度が得られる。室温で10日後、当該組成物にはシクロ‐プロリン‐スレオニン(すなわちジケトピペラジン)、プロリン‐スレオニン‐ジケトピペラジン、Thr‐Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr‐NH
2、Thr‐Pro、Pro‐Thr、Pro‐Thr‐NH
2、プロリン及び/またはスレオニンから成る群より各々選択される最小量の1種以上の分解生成物が生じ得る。室温で20日後、当該組成物にはシクロ‐プロリン‐スレオニン、Thr‐Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr‐NH
2、Thr‐Pro、Pro‐Thr、Pro‐Thr‐NH
2、プロリン及び/またはスレオニンから成る群より各々選択される最小量の1種以上の分解生成物が生じ得る。0℃以下で1か月後、当該組成物にはシクロ‐プロリン‐スレオニン、Thr‐Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr‐NH
2、Thr‐Pro、Pro‐Thr、Pro‐Thr‐NH
2、プロリン及び/またはスレオニンから成る群より各々選択される最小量の1種以上の分解生成物が生じ得る。当該組成物には最小量のジケトピペラジン及び/またはPro‐Thr‐NH
2が生じ得る。
【0018】
更なる態様では、本開示は以下の:
に表される化合物約350mg〜約800mg(例えば約400mg〜約750mg、約350mg〜約500mg、約350mg〜約450mg、約400mg〜約500mg、約400mg、約450mg、約600mg〜約800mg、約700mg〜約800mg、約750mg)、またはその薬学的に許容可能な塩を;約2mL〜約6mL(例えば約2.5mL〜約5mL、約2mL〜約4mL、約2.5mL〜約3.5mL、約2.7mL、約3mL、約4mL〜約6mL、約4.5mL〜約5.5mL、約5mL)の水溶液中に有する安定な水性組成物を含むプレフィルドシリンジを特徴とする。いくつかの実施形態では、水性組成物は更に酸(例えば塩酸)及び/または緩衝液(例えば塩化物イオン)及び/または1種以上の賦形剤を含むことが可能である。
【0019】
実施形態には以下の特長の1つ以上が含まれ得る。ある特定の実施形態では、当該水性組成物は約400mg〜約750mgの化合物または塩、場合により約2.5mL〜約5mLの水溶液を含むことが可能である。ある特定の実施形態では、水性組成物は約350mg〜約500mg(例えば約350mg〜約450mg、または約400mg〜約500mg)の化合物または塩、場合により約2mL〜約4mLの水溶液を含むことが可能である。例えば水性組成物は約400mgの化合物または塩を約2.7mLの水溶液に含むことが可能である。別の例として、当該水性組成物は約450mgの化合物または塩を約3mLの水溶液に含むことが可能である。他の実施形態では、当該水性組成物は約600mg〜約800mg(例えば約700mg〜約800mg)の化合物または塩、場合により約4mL〜約6mLの水溶液を含むことが可能である。例えば、当該水性組成物は約750mgの化合物または塩を約5mLの水溶液に含むことが可能である。当該水性組成物のpHは25℃で約3.9〜約5.5(例えば4.5)である。室温で10日後、当該組成物にはジケトピペラジン、プロリン‐スレオニン‐ジケトピペラジン、Thr‐Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr‐NH
2、Thr‐Pro、Pro‐Thr、Pro‐Thr‐NH
2、プロリン及び/またはスレオニンから成る群より各々選択される最小量の1種以上の分解生成物が生じ得る。室温で20日後、当該組成物にはプロリン‐スレオニン‐ジケトピペラジン、Thr‐Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr‐NH
2、Thr‐Pro、Pro‐Thr、Pro‐Thr‐NH
2、プロリン及び/またはスレオニンから成る群より各々選択される最小量の1種以上の分解生成物が生じ得る。0℃以下で1か月後、当該組成物にはジケトピペラジン、Thr‐Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr‐NH
2、Thr‐Pro、Pro‐Thr、Pro‐Thr‐NH
2、プロリン及び/またはスレオニンから成る群より各々選択される最小量の1種以上の分解生成物が生じ得る。当該組成物には最小量のプロリン‐スレオニン‐ジケトピペラジン及び/またはPro‐Thr‐NH
2が生じ得る。
【0020】
1態様では、本開示は以下の式:
に表される化合物;水(例えば注射用水);及び塩化物イオンを含む組成物を提供し、ここでは当該組成物のpHは約3.5〜約6.5(例えば室温で約3.5〜約5.5、約3.9〜約5.5、約3.5〜約4.5、約4.0〜約5.0、約4.2〜約5.0、約4.2〜約4.8、約4.0、約4.5)である。実施形態には以下の特長の1つ以上が含まれ得る。当該組成物は約100mg/mL〜約200mg/mL(例えば150mg/mL)の化合物を含み得る。ある特定の実施形態では、40℃で21日後、2%未満の化合物が分解される。ある特定の実施形態では、当該組成物は最小量のジケトピペラジンを含む。他の実施形態では、当該組成物は最小量のプロリン‐スレオニンアミドを含む。水は注射用水とすることが可能である。カチオン性対イオンはH
+、プロトン化形態の化合物またはこれらの組合せとすることが可能である。
【0021】
別の態様では、本開示は以下の式:
に表される化合物;水(例えば注射用水);及び塩化物イオンを主成分とするか、及び/またはそれらから成る組成物を提供し、ここでは当該組成物のpHは約3.5〜約6.5(例えば室温で約3.5〜約5.5、約3.9〜約5.5、約3.5〜約4.5、約4.0〜約5.0、約4.2〜約5.0、約4.2〜約4.8、約4.0、約4.5)である。実施形態には以下の特長の1つ以上が含まれ得る。当該組成物は約100mg/mL〜約200mg/mL(例えば150mg/mL)の化合物を含み得る。ある特定の実施形態では、40℃で21日後、2%未満の化合物が分解される。ある特定の実施形態では、当該組成物は最小量のジケトピペラジンを含む。他の実施形態では、当該組成物は最小量のプロリン‐スレオニンアミドを含む。水は注射用水とすることが可能である。カチオン性対イオンはH
+、プロトン化形態の化合物またはこれらの組合せとすることが可能である。
【0022】
1態様では、本開示は以下の式:
に表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩;及び約0.5〜約1.2モルパーセント(例えば約0.6〜約1.0モルパーセント)の塩化ナトリウムなどの塩の水溶液を含む静脈内注射に適した安定な水性組成物を提供する。
【0023】
別の態様では、本開示は以下の式:
に表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩;緩衝液;及び場合により水混和性の共溶媒を含む静脈内注射に適した安定な水性組成物を提供する。
【0024】
実施形態には以下の特長の1つ以上が含まれ得る。ある特定の実施形態では、緩衝液は酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、コハク酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、アルギニン及びマレイン酸ならびにこれらの塩から成る群より選択することが可能である。他の実施形態では、緩衝液は塩化物、硫酸塩及びリン酸塩から成る群より選択されるアニオンとすることが可能である。更に他の実施形態では、緩衝液はクエン酸である。共溶媒は、ポリエチレングリコール、グリセリン、エタノール、ポリプロピレングリコール及びN,N‐ジエメチルアセトアミド(例えば、分子量が約200〜約900Daのポリエチレングリコール、または分子量が約400Daのポリエチレングリコール)から成る群より選択することが可能である。当該組成物のpHは25℃で約4.5〜約6.0とすることが可能である。10日後、当該組成物には0.5重量パーセント未満のジケトピペラジンまたはPro‐Thr‐NH
2(例えば10日後、0.1重量パーセント未満のジケトピペラジンまたはPro‐Thr‐NH
2)が生じ得る。10日後、当該組成物には0.5重量パーセント未満のThr‐Pro‐Pro‐NH
2(例えば10日後、0.1重量パーセント未満のThr‐Pro‐Pro‐NH
2)が生じ得る。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は部分的に、GLYXペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩(例えば、GLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば以下の式:
を有するGLYXペプチド:あるいはその薬学的に許容可能な塩)を含む、静脈内注射に適した安定な組成物(例えば水性組成物)を目的とする。実施形態には以下の利点のうち1つ以上が含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、IV注射によりGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチド及び/またはその誘導体もしくは塩;例えば上記式を有するGLYXペプチドまたはその塩)を循環系に臨床的に送達または投与することを促進し、それにより脳に、ひいては抑鬱、神経因性疼痛または不安などのCNS障害の治療に関わる脳内の1箇所以上の活性部位にGLYXペプチドを更に効率的に送達することを可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は強化された貯蔵安定性を示し、例えばGLYXペプチドを水性媒体中で難分解性にすることが可能である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物には、1種以上の物理的及び/または化学的特性を本開示の組成物にもたらす1種以上の薬学的に許容可能な物質(例えば緩衝液、水混和性溶媒及び/または賦形剤が挙げられるがこれらに限定されるものではない)が含まれ得る。例えば、企図した組成物の一部を形成する可能性のある1種以上の薬学的に許容可能な物質は酸(例えば塩酸)、その共役塩基(本明細書では「緩衝液」と称する場合もある、例えば塩化物イオン)、またはそれらの組合せから成る群より選択可能であり、また特定のpHを維持するのに十分な量で存在することも可能である。また、本明細書に記載の組成物は、必要に応じて追加的に2種以上の活性な添加成分の組合せを含んでもよいことが当業者に理解される。
【0027】
本開示組成物の化学的及び物理的安定性及び/または薬学的許容可能性は当業者に周知の技術により判定し得る。従って、例えば当該化合物の化学的安定性はHPLCアッセイ及び/または外観の色により、例えば生成物を長期的に保存した後に判定してもよい。物理的安定性データは他の従来の分析技術から得てもよい。
【0028】
大体、およその範囲で、ほぼという意味を示すために、本明細書では「約」という用語を使用している。「約」という用語を数値範囲と共に使用する場合、記述した数値の上下に境界を拡張することによりその範囲を修正している。「〜を含むが限定するものではない」ことを示すために、本明細書では「含む」という用語を使用している。
【0029】
ペプチド
本明細書で使用しているように、「GLYXペプチド」という用語はNMDARグリシン部位の部分的アゴニスト/アンタゴニスト活性を有するペプチドを指す。GLYXペプチドは、参照により本明細書に援用される米国特許第5,763,393号及び第4,086,196号に記載された方法などの周知の組換え法または合成法により得てもよい。本開示の製剤の一部を形成することが企図されるGLYXペプチドの例としては、いくつかの実施形態では、表1に収載された1種以上のペプチドが挙げられる。
【0030】
「GLYX‐13」は以下の式:
ならびに上記化合物の多形体、立体異性体、水和物、溶媒和物、遊離塩基及び/または好適な塩形態に表される。
【0031】
例えば、本開示の組成物はアルツハイマー病、パーキンソン病、精神疾患及び脳内感染などの多くの神経疾患の治療に有効であると判明する可能性がある。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物のpHは25℃で約3.5〜約7である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物のpHは25℃で約4〜約7(例えば約3.5〜約6.5、約3.5〜約5.5、約4〜約6、約3.9〜約5.5、約4.0〜約5.0、約4.2〜約5.0、約4.2〜約4.8、約4.0〜約4.5)である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物のpHは4.2〜約5.0(例えば約4.2〜約4.8、約4.3〜約4.7、約4.4〜約4.6)である。例えば、本明細書に記載したようなある特定の実施形態における本開示組成物のpHは約4.5である。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は約100mg/mL未満のGLYXペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば以下の式:
を有するGLYXペプチドまたはその塩)を含むことが可能である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は約25mg/mL〜約95mg/mL(例えば、約25mg/mL〜約75mg/mL、または約25mg/mL〜約55mg/mL)のGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチド及び/またはその誘導体;例えば上記に示す式を有するGLYXペプチド)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は約30mg/mL〜約50mg/mLのGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば上記に示す式を有するGLYXペプチドまたはその塩)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は約35mg/mL〜約45mg/mLのGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば上記に示す式を有するGLYXペプチドまたはその塩)を含む。他の実施形態では、本明細書に記載の組成物は60mg/mLのGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば上記に示す式を有するGLYXペプチドまたはその塩)を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は約100mg/mL〜約500mg/mLのGLYXペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば以下の式:
を有するGLYXペプチド、またはその塩)を含む。ある特定の実施形態では、当該組成物は約100mg/mL〜約300mg/mL(例えば、約100mg/mL〜約200mg/mL、約100mg/mL〜約150mg/mLの化合物、約100mg/mL〜約125mg/mL)のGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば上記に示す式を有するGLYXペプチドまたはその塩)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は約100mg/mL〜約200mg/mL(例えば約125mg/mL〜約175mg/mL、約140mg/mL〜約160mg/mL、約145mg/mL〜約155mg/mL、または約150mg/mL)のGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば上記に示す式を有するGLYXペプチドまたはその塩)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は約150mg/mLのGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば上記に示す式を有するGLYXペプチドまたはその塩)を含み、そのpHは25℃で約4〜約5、例えば約4.5である。このような組成物は、例えばIV用途に臨床的に許容可能であり得る(例えばこのような組成物を投与すると、所望の生理的オスモル濃度が達成または維持される;例えば段落[0031]及び[0035]〜[0037]に記載のオスモル濃度パラメータを参照)。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は約350mg〜約800mg(例えば約400mg〜約750mg、約350mg〜約500mg、約350mg〜約450mg、約400mg〜約500mg、約400mg、約450mg、約600mg〜約800mg、約700mg〜約800mg、約750mg)のGLYXペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば以下の式:
を有するGLYXペプチドまたはその塩)を含むことが可能である。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は約2mL〜約6mL(例えば約2.5mL〜約5mL、約2mL〜約4mL、約2.5mL〜約3.5mL、約2.7mL、約3mL、約4mL〜約6mL、約4.5mL〜約5.5mL、約5mL)の水溶液を含むことが可能である。
【0037】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は約350mg〜約800mg(例えば約400mg〜約750mg、約350mg〜約500mg、約350mg〜約450mg、約400mg〜約500mg、約400mg、約450mg、約600mg〜約800mg、約700mg〜約800mg、約750mg)のGLYXペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば以下の式:
を有するGLYXペプチドまたはその塩)を、約2mL〜約6mL(例えば約2.5mL〜約5mL、約2mL〜約4mL、約2.5mL〜約3.5mL、約2.7mL、約3mL、約4mL〜約6mL、約4.5mL〜約5.5mL、約5mL)の水溶液に含むことが可能である。
【0038】
例えば、本明細書に記載の組成物は約350mg〜約500mg(例えば約350mg〜約450mg、約400mg〜約500mg、約400mg、または約450mg)のGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば上記に示す式を有するGLYXペプチドまたはその塩)を、約2mL〜約4mL、約2.5mL〜約3.5mL、約2.7mL、約3mLの水溶液に含むことが可能である(例えば約400mgのペプチドもしくは塩を約2.7mLの水溶液に;または約450mgのペプチドもしくは塩を約3mLの水溶液に)。いくつかの実施形態では、当該組成物のpHは25℃で約4〜約5、例えば約4.5であり、及び/または、当該組成物を投与すると、所望の生理的オスモル濃度が達成または維持される;例えば段落[0031]及び[0035]〜[0037]に記載のオスモル濃度パラメータを参照。
【0039】
別の例として、本明細書に記載の組成物は約600mg〜約800mg(例えば約700mg〜約800mg、約750mg)のGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば上記に示す式を有するGLYXペプチドまたはその塩)を、約4mL〜約6mL、約4.5mL〜約5.5mL、約5mLの水溶液に含むことが可能である(例えば約750mgのペプチドまたは塩を約5mLの水溶液に)。いくつかの実施形態では、当該組成物のpHは25℃で約4〜約5、例えば約4.5であり、及び/または、当該組成物を投与すると、所望の生理的オスモル濃度が達成または維持される;例えば段落[0031]及び[0035]〜[0037]に記載のオスモル濃度パラメータを参照。
【0040】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物はシリンジ(例えば5mLのガラスまたはプラスチック製シリンジ)に保存することが可能である。例えば、本明細書において、本開示化合物を収容するシリンジが企図される。
【0041】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物で利用されるGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば上記に示す式を有するGLYXペプチドまたはその塩)の濃度は、例えば投与して得られる生理的オスモル濃度に依存している場合がある。例えばより低濃度、例えば約100mg/mL未満、または約90mg/mLもしくは約70mg/mL未満のGLYXペプチドでは、当該組成物は低張性である場合がある(生理的オスモル濃度より低い)。組成物が低張性であると、投与に対する患者の反応が不良になる可能性があり、例えば注射可能な低張性溶液であれば、溶血としても公知である血球の膨張及び破壊が起こる可能性がある。より高濃度、例えば200mg/mLを超えるCLYXペプチドでは、当該組成物(例えば水溶液)は高張性である場合がある。組成物が高張性であると、投与に対する患者の反応が不良になる可能性があり、例えば血球が収縮し、円鋸歯状になる。
【0042】
いくつかの実施形態では、障害(例えば抑鬱)への投与法及び/または治療法を提供する。ここでは本明細書に記載の組成物を投与すると、約200mOsmol/kg〜約1000mOsmol/kg(例えば約200mOsmol/kg〜約500mOsmol/kg、約500mOsmol/kg〜約1,000mOsmol/kg、約600mOsmol/kg〜約950mOsmol/kg、約800mOsmol/kg〜約1,000mOsmol/kg、約850mOsmol/kg〜約950mOsmol/kgまたは約800mOsmol/kg〜約900mOsmol/kg)の生理的オスモル濃度が維持または達成される。これらの実施形態のうちいくつかの実施形態では、投与時間は約8時間未満である。ある特定の実施形態では、開示した方法は、組成物の1回投与当り約1分〜約5分の注射時間を企図している。更に他の実施形態では、開示した方法は、1分未満(例えば約1秒〜約55秒、約5秒〜約55秒、約5秒〜約45秒、約5秒〜約30秒、約5秒〜約15秒)の注射時間を企図している。
【0043】
本明細書に開示された組成物は例えば、約60mg/mL〜約200mg/mLまたは約100mg/mL〜約200mg/mL(例えば約150mg/mLまたは約75mg/mL)の濃度のGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば上記に示す式を有するGLYXペプチドまたはその塩)を有する組成物である。企図した治療法にはこのような組成物の投与が含まれ、それにより、例えば約150mg/mlのGLYX‐13を投与すると、約800〜1100mOsmol/kg(または約820〜880mOsmol/kg)の生理的オスモル濃度が得られ、または例えば約75mg/mlのGLYX‐13を投与すると約375〜475mOsmol/kgが得られる。
【0044】
他の実施形態では、本開示組成物は有機酸または他の酸、例えばフマル酸、リンゴ酸、乳酸、塩酸、臭化水素酸、酢酸、クエン酸、リン酸、硝酸、硫酸、アスコルビン酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、安息香酸、炭酸、フェノール、尿酸、p‐トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはカルボン酸の1種以上を含んでもよく(例えば本開示組成物は塩酸を含む)、ここでは当該組成物のpHは25℃で約4〜約7(例えば約3.5〜約6.5、約3.5〜約5.5、約4〜約6、約3.9〜約5.5、約4.0〜約5.0、約4.2〜約5.0、約4.2〜約4.8、約4.0、約4.5)である。例えば、本開示組成物はGLYX‐13の水溶液を含んでもよく、ここでは当該組成物のpHは、5Nで調製した酸、例えば5NのHClにより約4.5(または例えば25℃で4.1〜約5.5)に調整されている。企図した治療法にはこのような組成物の投与が含まれ、それにより、投与すると約480〜約960mOsmol/kgの生理的オスモル濃度が得られる。例えば、本明細書において、GLYX‐13濃度が120〜150mg/mLで、投与時の(1回投与当り、投与時間は例えば8時間未満、4時間未満、例えば1分〜約8時間、または約1〜5分)オスモル濃度が約290〜360mOsmol/kgである組成物が企図される。
【0045】
本明細書において、例えば緩衝液(例えば酸、例えば塩酸または塩化物イオン)を含み、そのpHは25℃で約4〜約7(例えば約3.5〜約6.5、約3.5〜約5.5、約4〜約6、約3.9〜約5.5、約4.0〜約5.0、約4.2〜約5.0、約4.2〜約4.8、約4.0、約4.5)である組成物も企図される。注射/投与時間が約5秒〜約5分(例えば約5秒〜約2分、約5秒〜約1分、約5秒〜約55秒、約5秒〜約45秒、約5秒〜約30秒、約5秒〜約15秒)で、生理的オスモル濃度が約580〜約720mOsmol/kgになるように、このような組成物を注射により患者に投与することを含む治療法を提供する。
【0046】
例えば本明細書に開示された組成物は、約100mg/mL〜約200mg/mL(例えば約150mg/mL)の濃度のGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば段落[0026]で上記に示す式を有するGLYXペプチドまたはその塩)を含む組成物である。企図した治療法はこのような組成物を投与することを含み、それにより投与時、約500mOsmol/kg〜約1,000mOsmol/kg(例えば約600mOsmol/kg〜約950mOsmol/kg、約800mOsmol/kg〜約1,000mOsmol/kg、約850mOsmol/kg〜約950mOsmol/kg)の生理的オスモル濃度が得られる。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は酸、例えば塩酸を含み、そのpHは25℃で約4〜約7(例えば約3.5〜約6.5、約3.5〜約5.5、約4〜約6、約3.9〜約5.5、約4.0〜約5.0、約4.2〜約5.0、約4.2〜約4.8、約4.0、約4.5)である。企図した治療法はこのような組成物を投与することを含み、それにより投与時、約500mOsmol/kg〜約1,000mOsmol/kg(例えば約600mOsmol/kg〜約950mOsmol/kg、約800mOsmol/kg〜約1,000mOsmol/kg、約850mOsmol/kg〜約950mOsmol/kg)の生理的オスモル濃度が得られる。例えば本明細書に記載の組成物は、濃度が約125mg/mL〜約175mg/mL(例えば約150mg/mL)で、投与時のオスモル濃度が約600mOsmol/kg〜約950mOsmol/kg(例えば約800mOsmol/kg〜約1,000mOsmol/kg、約850mOsmol/kg〜約950mOsmol/kg)のGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば段落[0026]で上記に示す式を有するGLYXペプチドまたはその塩)を含むことが可能である。ある特定のこれらの実施形態では、1回投与当り、例えば8時間未満、4時間未満;例えば1分未満〜8時間、4時間、2時間、1時間または0.5時間;約1分〜約8時間、4時間、2時間、1時間または0.5時間;約1分〜約5分、1分未満、例えば約1秒〜約55秒、約5秒〜約55秒、約5秒〜約45秒、約5秒〜約30秒、約5秒〜約15秒の投与時間で当該組成物を投与する。
【0048】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は例えば緩衝液(例えば酸、例えば塩酸または塩化物イオン)を含み、そのpHは25℃で約3.5〜約6(例えば約3.9〜約5.5、約4.0〜約5.0、約4.2〜約5.0、約4.2〜約4.8、約4.0、約4.5)である。注射/投与時間が約5秒〜約5分(例えば約5秒〜約2分、約5秒〜約1分、1分未満、例えば約1秒〜約55秒、約5秒〜約55秒、約5秒〜約45秒、約5秒〜約30秒、約5秒〜約15秒)で、生理的オスモル濃度が約600mOsmol/kg〜約950mOsmol/kg(例えば約800mOsmol/kg〜約1,000mOsmol/kg、約850mOsmol/kg〜約950mOsmol/kg)になるように、このような組成物を注射により患者に投与することを含む治療法を提供する。
【0049】
溶液中、経時的に化合物が急速に分解または破壊されない点で、本開示の水性組成物は安定的である。従ってある特定の実施形態では、室温で10日以上、30日以上、40日以上、または60日もしくは90日またはそれ以上経過した後、本開示組成物はシクロ‐Pro‐Thr(プロリン‐スレオニン‐ジケトピペラジン)、Thr‐Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr‐NH
2、Thr‐Pro、Pro‐Thr、Pro‐Thr‐NH
2、プロリン及び/またはスレオニンから成る群より各々選択される最小量の1種以上の分解生成物を有する。ある特定の他の実施形態では、室温で20日後、本開示組成物はシクロ‐Pro‐Thr、Thr‐Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr‐NH
2、Thr‐Pro、Pro‐Thr、Pro‐Thr‐NH
2、プロリン及び/またはスレオニンから成る群より各々選択される最小量の1種以上の分解生成物を有する。例えば本開示組成物は最小量の以下の化合物:
を含んでもよい。
【0050】
ある特定の他の実施形態では、約0℃〜10℃(例えば約2℃〜8℃、約5℃)で3か月後、約0℃〜10℃(例えば約2℃〜8℃、約5℃)で6か月後、約0℃〜10℃(例えば約2℃〜8℃、約5℃)で9か月後、約0℃〜10℃(例えば約2℃〜8℃、約5℃)で12か月後、約0℃〜10℃(例えば約2℃〜8℃、約5℃)で5か月後、または更に約0℃〜10℃(例えば約2℃〜8℃、約5℃)で24か月以上経過した後、本開示組成物はシクロ‐Pro‐Thr、Thr‐Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr‐NH
2、Thr‐Pro、Pro‐Thr、Pro‐Thr‐NH
2、プロリン及び/またはスレオニンから成る群より各々選択される最小量の1種以上の分解生成物を有する。
【0051】
ある特定の実施形態では、緩衝液は酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸、炭酸塩、重炭酸塩及びマレイン酸ならびにこれらの塩から成る群より選択される。別の実施形態では、緩衝液は塩化物、ナトリウム、カリウム及びアンモニウムから成る群より選択される塩である。更に別の実施形態では、GLYXペプチド(例えば、GLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば以下の式:
を有するGLYXペプチドまたはその塩)は緩衝液自体(例えばpKaは約7〜約7.5)として作用し得る。これらの実施形態では、本明細書に記載の組成物はGLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば上記式を有するGLYXペプチドまたはその塩)、及び(例えば所望のpHを得るため)塩酸、リン酸または硫酸から成る群より選択される酸(例えば塩酸)を含む。
【0052】
別の実施形態では、水、GLYXペプチド(例えばGLYX‐13ペプチドならびに/またはその誘導体及び/または塩;例えば上記式を有するGLYXペプチドまたはその塩)及び酸を主成分とする水性組成物を提供する。いくつかの実施形態では、当該組成物はH
+、プロトン化形態のペプチド、1つ以上のプロトン化形態の任意の1種以上の本明細書に記載の分解生成物、またはこれらの組合せから成る群より選択されるカチオン性対イオンを含む。ある特定の実施形態では、カチオン性対イオンはH
+、プロトン化形態のペプチドまたはこれらの組合せから成る群より選択される。ある特定の実施形態では、当該組成物は上記で詳述したもの以外のカチオン供給源、例えば金属カチオン、外因性プロトン化アミノ酸またはペプチド、テトラアルキルアンモニウムイオン及び他のプロトン化酸スカベンジャーをほぼ持たない。
【0053】
ある特定の実施形態では、当該組成物は塩化物以外のアニオンをほぼ持たず、例えば酢酸塩及び他のカルボン酸塩含有部分、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩含有部分、スルホン酸塩含有部分ならびにリン酸塩含有部分をほぼ持たない。
【0054】
ある特定の実施形態では、共溶媒は本開示組成物中に存在し、ポリエチレングリコール、グリセリン、エタノール、ポリプロピレングリコール及びN,N‐ジエメチルアセトアミドから成る群から選択される。例えばある特定の実施形態では、共溶媒は分子量が約200〜約900Daのポリエチレングリコールである。ある特定の実施形態では、共溶媒は分子量が約400Da、例えば約400Da〜約700Da、例えば200、300、400、500、500、700または800Daのポリエチレングリコールである。
【0055】
ある特定の実施形態では、約2〜約8℃で1週間、10日、2週間、3週間、4週間、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、9か月、1年、2年、またはそれ以上経過した後、本開示組成物はシクロ‐Pro‐Thr、Thr‐Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr‐NH
2、Thr‐Pro、Pro‐Thr、Pro‐Thr‐NH
2、プロリン及び/またはスレオニンから成る群より各々選択される最小量の1種以上の分解生成物を有する。別の実施形態では、25℃で1週間、10日、2週間、3週間、4週間、2か月、3か月、4か月、5か月、または6か月、12か月またはそれ以上経過した後、本開示組成物はシクロ‐Pro‐Thr、Thr‐Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr、Pro‐Pro‐Thr‐NH
2、Thr‐Pro、Pro‐Thr、Pro‐Thr‐NH
2、プロリン及び/またはスレオニンから成る群より各々選択される最小量の1種以上の分解生成物を有する。
【0056】
更に別の実施形態では、3か月、または6か月、または12か月またはそれ以上経過した後、本開示組成物は0.5重量パーセント未満(または例えば0.7重量パーセント未満、もしくは1重量パーセント未満、2重量パーセント未満、3重量パーセント未満、4重量パーセント未満、例えば約1〜3重量パーセント)のThr‐Pro‐Pro‐Thr(GLYX‐13の脱アミド形態)を有する。別の実施形態では、約10日後、または約20日後、または約30日後、当該組成物は0.1重量パーセント未満のThr‐Pro‐Pro‐Thrを有する。
【0057】
更に別の実施形態では、8℃で3か月、または6か月、または12か月、24か月またはそれ以上経過した後、本開示組成物は約0.5または約0.6重量パーセント未満(または例えば約1.2重量パーセント未満、もしくは約0.7重量パーセント未満、1重量パーセント未満、2重量パーセント未満、3重量パーセント未満、4重量パーセント未満、5重量パーセント未満、6重量パーセント未満、7重量パーセント未満。ここでは不純物の重量パーセントは薬学的に活性な化合物、例えばGLYX‐13の百分率である)のシクロ‐Pro‐Thrを有する。別の実施形態では、40℃で約10日後、または約20日後、または約30日後、本開示組成物は約0.5重量パーセント未満のシクロ‐Pro‐Thrを有する。更に別の実施形態では、投与時、当該組成物は最大約5重量パーセント、例えば約0.01〜約5重量パーセント、例えば約4〜約5重量パーセントのジケトピペラジンを含むことが可能である。
【0058】
更に別の実施形態では、10日、または20日、または30日、またはそれ以上経過した後、本開示組成物は約0.5重量パーセント未満(または例えば約0.7重量パーセント未満、もしくは約1重量パーセント未満)のPro‐Thr‐NH
2を有する。別の実施形態では、40℃で約10日後、または約20日後、または約30日後、当該組成物は0.3重量パーセント未満のPro‐Thr‐NH
2を有する。
【0059】
ある特定の実施形態では、10日後、または20日後、または30日後、本開示組成物は約0.5重量パーセント未満(または例えば約0.1重量パーセント未満、もしくは0.4重量パーセント未満、もしくは1重量パーセント未満)のThr‐Pro‐Proを有する。別の実施形態では、40℃で約10日後、または約20日後、または約30日後、当該組成物は0.1重量パーセント未満のThr‐Pro‐Proを有する。
【0060】
溶液中、経時的に化合物が急速に分解または破壊されない点で、本開示組成物は安定的である。いくつかの実施形態では、室温で、室温未満で、または室温を超える温度で、溶液中、経時的に(例えば10日以上)、5%未満(例えば4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満)の化合物が急速に分解または破壊される。
【0061】
ある特定の実施形態では、室温を超える温度(例えば30℃、35℃、40℃、45℃;例えば40℃)で、10日以上、20日以上、30日以上、40日以上、50日以上、60日以上、または90日以上(例えば20日以上)経過した後、5%未満(例えば4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満)の化合物が急速に溶液中で分解または破壊される。1実施形態では、40℃で21日後、5%未満(例えば4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満)の化合物が急速に溶液中で分解または破壊される。
【0062】
他の実施形態では、室温で10日以上、30日以上、60日以上、90日以上、6か月以上または1年以上経過した後、5%未満(例えば4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満)の化合物が急速に溶液中で分解または破壊される。
【0063】
更に他の実施形態では、0℃以下で1か月後、0℃以下で3か月後、0℃以下で6か月後、0℃以下で9か月後、0℃以下で12か月後、0℃以下で18か月後、もしくは0℃以下で24か月後、またはそれ以上経過した後、5%未満(例えば4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満)の化合物が急速に溶液中で分解または破壊される。
【0064】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は上記で詳述した安定性特性のいずれか2つ以上を示すことが可能である。
【0065】
ある特定の実施形態では、当該組成物は分解生成物ジケトピペラジン及びプロリン‐スレオニンアミドの一方または両方を最小量で含む。他の実施形態では、当該組成物はジケトピペラジン、プロリン‐スレオニンアミド、及び本明細書に記載の他の分解生成物のいずれか1種以上から成る群より選択される1種以上の分解生成物を最小量で含む。
【0066】
ある特定の実施形態では、室温を超える温度(例えば30℃、35℃、40℃、45℃;例えば40℃)で、10日以上、20日以上、30日以上、40日以上、50日以上、60日以上、または90日以上(例えば20日以上)経過した後、当該組成物は1重量パーセント未満(例えば0.7重量パーセント未満、0.5重量パーセント未満、0.4重量パーセント未満、0.3重量パーセント未満)のジケトピペラジンを有する。1実施形態では、40℃の溶液中、21日後に、当該組成物は0.7重量パーセント未満、0.4重量パーセント未満、または0.3重量パーセント未満のジケトピペラジンを有する。更に別の実施形態では、投与時、当該組成物は最大約5重量パーセントのジケトピペラジンを含むことが可能である。上記に提供された重量パーセント値は以下の式:(不純物重量)/(残余化合物の重量)×100から求める。
【0067】
ある特定の実施形態では、室温を超える温度(例えば30℃、35℃、40℃、45℃;例えば40℃)で、10日以上、20日以上、30日以上、40日以上、50日以上、60日以上、または90日以上(例えば20日以上)経過した後、当該組成物は1重量パーセント未満(または例えば約0.7重量パーセント未満、0.5重量パーセント未満、0.4重量パーセント未満、0.3重量パーセント未満、0.2重量パーセント未満、もしくは0.1重量パーセント未満)のプロリン‐スレオニンアミドを有する。1実施形態では、40℃の溶液中、21日後、当該組成物は0.3重量パーセント未満または0.2重量パーセント未満のプロリン‐スレオニンアミドを有する。上記に提供された重量パーセント値は以下の式:(プロリン‐スレオニンアミド重量)/(残余化合物の重量)×100から求める。
【0068】
いくつかの実施形態では、(i)当該化合物及び水を含む第1配合物の提供;(ii)第1配合物と、pH約3.5〜約6.5にするために十分な量の塩酸またはその供給源との接触、を含むプロセスにより当該組成物を調製する。
【0069】
実施形態は上記特長のいずれか1つ、ならびに上記特長の2つ以上の任意の組合せを含むことが可能である。
【0070】
方法
本開示は部分的に、本開示の方法に従って治療されることが期待される多様な他の神経状態を治療するための開示されたGLYX‐13静脈内組成物の使用に関する。その状態の例としては、学習障害、自閉症性障害、注意欠陥多動性障害、不安、抑鬱、片頭痛、トゥレット症候群、恐怖症、心的外傷後ストレス障害、認知症、AIDS認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、痙縮、ミオクローヌス、筋痙攣、双極性障害、神経因性疼痛、薬物乱用障害、尿失禁、脳卒中、虚血、てんかん及び統合失調症が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0071】
企図した方法には、自閉症及び/または自閉症スペクトラム障害の治療を必要とする患者においてそれを治療する方法が含まれ、該方法には有効量の本開示組成物(例えば上記の組成物)を患者へ投与することが含まれる。1実施形態では、自閉症の症状の軽減を必要とする患者においてそれを軽減する方法が企図され、該方法には有効量の本開示組成物を患者へ投与することが含まれる。例えば、投与すると、当該組成物はアイコンタクト回避、交際障害、注意欠陥、憂鬱、多動性、異常な音知覚、不適切な発話、睡眠障害及び固執など自閉症の1種以上の症状の発症率を減少させる可能性がある。このように減少した発症率は未治療の個人(単数または複数)の発症率と比較して評価してもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、自閉症の患者は脆弱性X症候群、結節性硬化症、先天性風疹症候群及び未処理フェニルケトン尿症などの別の病状も発症する。
【0073】
別の実施形態では、障害の治療を必要とする患者においてそれを治療する方法が企図され、その障害は:てんかん、AIDS及び/またはAIDS認知症、パーキンソン病、多系統萎縮症、進行性の核上性麻痺、フリードリヒ運動失調、自閉症、脆弱性X症候群、結節性硬化症、注意欠陥障害、オリーブ‐橋小脳萎縮症、脳性麻痺、薬物誘導性視神経炎、末梢神経障害、脊髄症、虚血性網膜症、緑内障、心停止、行動障害及び衝動制御障害から成る群より選択され、当該方法には本開示化合物、例えばGLYX‐13を投与することが含まれる。咳、例えば制御不能な咳を治療する方法も本明細書において企図され、当該方法にはGLYX‐13組成物を、それを必要とする患者に投与することが含まれる。
【0074】
例えば、本明細書において、良性ローランドてんかん、前頭葉てんかん、乳児痙攣、若年性ミオクローヌスてんかん、レノックス・ガストー症候群、ランドウ‐クレフナー症候群、ドラベ症候群、進行性ミオクローヌスてんかん、反射てんかん、ラスムッセン症候群、側頭葉てんかん、辺縁系てんかん、てんかん重積状態、腹部てんかん、広範両側性ミオクローヌス、月経随伴性てんかん、ジャクソン発作性疾患、ラフォラ病及び/または光過敏性てんかんを治療する方法が提供され、当該方法には、有効量の本開示組成物を投与することが含まれる。
【0075】
1実施形態では、本明細書において、注意欠陥障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)、統合失調症(例えば、統合失調感情性障害、妄想性障害、例えば、妄想型、破瓜型及び/または緊張型統合失調症)、双極性障害(双極I型障害、双極II型障害、気分循環性障害など)、境界性人格障害、不安(社会不安障害、回避性人格障害など)、強迫性障害、アヘン、ニコチン及び/またはエタノール嗜癖の改善(例えば、このような嗜癖を治療する方法、またはこのような嗜癖からの離脱の副作用を改善する方法)、脊髄損傷性糖尿病性網膜症、外傷性脳損傷、前頭側頭型認知症、心的外傷後ストレス症候群ならびに/またはハンチントン舞踏病の治療を必要とする患者において、それを治療する方法が企図され、当該方法には本開示組成物を投与することが含まれる。例えば、統合失調症、嗜癖(例えば、エタノールまたはアヘン)、自閉症(及び自閉症スペクトラム障害)、ハンチントン舞踏病、外傷性脳損傷、脊髄損傷、心的外傷後ストレス症候群ならびに糖尿病性網膜症に罹患した患者は全てNMDA受容体発現または機能が改変されている可能性がある。
【0076】
例えば、本明細書において、統合失調症、例えば統合失調症の陰性症状及び認知症状を、それに罹患した患者において治療する方法が提供され、当該方法には治療有効量の本開示組成物を投与することが含まれる。
【0077】
本明細書において、脳卒中及び/または虚血、例えば虚血性脳卒中、脳虚血、一過性虚血発作、心臓虚血及び/または心筋梗塞の治療を必要とする患者において、それを治療する方法が企図され、当該方法には薬学的に有効量の本開示組成物を投与することが含まれる。
【0078】
本明細書において、細胞内の自閉症標的遺伝子発現を調節する方法も提供され、当該方法には、細胞と有効量の本開示組成物とを接触させることが含まれる。自閉症遺伝子発現は例えば、ABAT、APOE、CHRNA4、GABRA5、GFAP、GRIN2A、PDYN及びPENKから選択してもよい。別の実施形態では、シナプス可塑性に関連する障害に罹患している患者においてシナプス可塑性を調節する方法が提供され、当該方法には有効量の本開示組成物を患者に投与することが含まれる。
【0079】
別の実施形態では、アルツハイマー病、または例えば初期段階のアルツハイマー病に伴う記憶喪失の治療を必要とする患者において、それを治療する方法が提供され、当該方法には本開示組成物を投与することが含まれる。本明細書において、インビトロまたはインビボで(例えば、細胞内で)、アルツハイマーアミロイドタンパク質(例えばベータアミロイドペプチド、例えばイソ型A1‐42)を調節する方法も提供され、当該方法には、タンパク質と有効量の本開示組成物とを接触させることが含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、本開示組成物は、海馬スライスにおける長期増強ならびにアポトーシス性神経細胞死を阻害するこのようなアミロイドタンパク質の能力を遮断する可能性がある。いくつかの実施形態では、本開示組成物は、神経保護特性を必要とするアルツハイマー患者にそれを提供し、例えば後期アルツハイマー関連神経細胞死に治療効果を提供する可能性がある。
【0080】
本明細書において、臨床的に関連のある抗鬱薬及び抗不安薬での治療、ならびに一般的に抑鬱及び不安の治療のための本開示GLYX‐13組成物の使用も企図される。
【0081】
ある特定の実施形態では、本発明は少なくとも部分的に、本開示GLYX‐13組成物単独の使用、または、抑鬱や不安を緩和し、抑鬱や不安の再発を防止することが含まれる抑鬱や不安及び/または他の関連する疾患を治療する薬剤を製造するための三環系抗鬱薬、MAO‐I、SSRI、二重及び三重取込み阻害剤及び/または抗不安薬などの1種以上の他の抗鬱治療と組み合わせた使用に関連している。GLYXペプチドと組み合わせて使用できる薬物の例としてはアナフラニール、アダピン、アベンチル、エラビル、デシプラミン、パメロール、ペルトフラン、サイネクアン、スルモンチル、トフラニール、ビバクチル、パルネート、ナルジル、マープラン、セレクサ、レクサプロ、ルボックス、パキシル、プロザック、ゾロフト、ウェルブトリン、エフェクサー、レメロン、サインバルタ、デジレル(トラゾドン)及びルジオミールが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示GLYX‐13組成物の投与は、併用した抗鬱薬治療の場合より速く作用し、よって、このような併用(例えば、基本的に緊急または即時に行うGLYX‐13を投与しながら、ほぼ同時に別のより遅効性の抗鬱薬と併用する投与計画を開始する)は、第2の抗鬱薬がより遅効性である一般的な状況で特に有利である。
【0082】
本明細書において、心理療法、電気痙攣療法、迷走神経刺激及び/または経頭蓋磁気刺激などの他の非薬理学的治療と併用した(例えば同時に、または連続的に)本開示組成物を投与することを含む抑鬱治療法も企図される。
【0083】
挙動または運動協調性に影響を与えることなく、また発作活性を誘導または促進することなく本開示のこの態様に従えば、多様な抑鬱状態を治療することが期待される。本開示のこの態様に従って治療されることが期待される抑鬱状態の例としては、大抑鬱性障害、気分変調性障害、精神病性抑鬱、産後抑鬱、月経前症候群、月経前不快気分障害、季節性情動障害(SAD)、不安、気分障害、癌または慢性疼痛、化学療法、慢性ストレス、心的外傷後ストレス障害、自殺の危険性及び双極性障害(または躁鬱障害)などの慢性的病状に起因する抑鬱が挙げられるが、これらに限定されるものではない。双極性障害に起因する抑鬱は双極性抑鬱とも呼ばれ得ることも理解されるべきである。また、いずれかの形態の抑鬱に罹患している患者が不安を経験することは頻繁にある。不安に関連する様々な症状には、特に恐怖、パニック、動悸、息切れ、疲労感、吐き気及び頭痛が挙げられる。現状の方法を利用して不安またはそのいずれかの症状が治療可能になることが期待される。
【0084】
本明細書において、治療耐性患者の抑鬱を治療する方法、または難治性抑鬱、例えば少なくとも1種もしくは少なくとも2種の他の抗鬱化合物もしくは治療薬の適切な方針に応答しない、及び/または応答していない抑鬱障害患者を治療する方法も提供される。例えば、本明細書において、治療耐性患者の抑鬱を治療する方法が提供され、当該方法には、a)場合により患者を治療耐性であると特定すること、及びb)該患者に有効量の本開示GLYX‐13化合物を投与することが含まれる。
【0085】
1実施形態では、本明細書において、該当する患者において抑鬱症状を緊急に治療する方法が提供され、当該方法には、例えば単一の単位用量で有効量のGLYX‐13を、例えば静脈内または皮下に投与することが含まれる。このような方法は、上記投与後に約2週間以下、1週間以下、1日以下または1時間以下(例えば15分以下、半時間以下)の間、抑鬱の少なくとも1つの症状を持つ患者を寛解させる可能性がある。いくつかの実施形態では、このような方法は、上記投与後に約1日以上、1週間以上、または2週間以上の間、抑鬱の少なくとも1つの症状を持つ患者を寛解させる可能性がある。例えば、本明細書において、有効量のGLYX‐13を抑鬱患者に投与することを含む方法が提供され、当該方法では、上記患者は、非GLYX‐13抗鬱化合物を投与した同患者と比較して、GLYX‐13の第1回目投与後にほぼ初期段階で抑鬱の少なくとも1つの症状がほぼ寛解している。緊急投与のこのような方法は入院患者または外来患者において有利となる可能性もあることは当業者に理解されているものとする。
【0086】
抑鬱症状、及びその緩和は、医師または心理学者によって、例えば精神状態の検査により確認してもよい。症状には絶望、自傷もしくは自殺の思考、及び/または肯定的な思考または計画の欠如が挙げられる。
【0087】
いくつかの実施形態では、患者はヒト、例えばヒト小児患者である。
【0088】
いくつかの実施形態では、抑鬱または別の企図された適応症を治療する薬剤を製造するため、企図された方法は本開示組成物の単独、または1種以上の他の薬剤との組み合わせた組成物の使用に関する。
【0089】
GLYX‐13は高治療指数を提供し得る。例えば、GLYX‐13は約1〜約10mg/kgの範囲のi.v.用量で治療効果を示す可能性がある。いくつかの実施形態では、例えば用量500mg/kgのi.v.では運動失調は起こらない。
【0090】
1実施形態では、開示した方法には、本開示組成物の1回用量、または1回以上の用量を投与することが含まれる。いくつかの実施形態では、1回(単回)用量投与から12時間後、1日後、1週間後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、または更に8日後、患者はほぼ改善する。
【0091】
治療に使用するために必要な本開示組成物の治療有効量は、治療する状態の性質、所望の治療時間の長さ、患者の年齢及び状態に伴って変化し、最終的に主治医によって決定する。しかし、一般に、ヒト成人の治療に用いられる剤形は通常、約10mg/ml〜約70mg/ml、または70〜200mg/mlの範囲である。いくつかの実施形態では、開示された剤形は1日約0.5〜2グラムのGLYX‐13を患者に投与することを可能にする。多数の要因により本開示組成物が広範な投与量で投与される可能性がある。他の治療剤と組み合わせて投与する場合、本開示組成物の投与量は、相対的に低い投与量で投与してもよい。結果として、本開示組成物の剤形は約10mg/ml〜約70mg/ml、または例えば約70mg/ml〜約200mg/mlであってもよい。本開示組成物の剤形は約10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/ml、50mg/ml、55mg/ml、60mg/ml、65mg/mlまたは70mg/mlなどの任意の投与量でよいが、これらに限定されるものではない。80mg/ml、100mg/ml、125mg/ml、150mg/mlまたは200mg/mlなどの更に濃縮した溶液も利便性のある剤形として開示する。所望の用量は便宜的に、単回用量で、または適当な間隔で複数回用量として、例えば1日に2回の、3回の、4回もしくはそれ以上の細分用量で投与してもよい。非経口投与に適した本開示の医薬組成物は、1種以上の薬学的に許容可能な滅菌等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液または乳濁液、あるいは使用直前に滅菌注射用溶液または分散液になるよう再構成可能な滅菌粉末と組み合わせて対象組成物を含み、当該医薬組成物は抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、製剤を対象の受容者の血液と等張にする溶質、または懸濁化剤もしくは増粘剤を含んでもよい。
【0092】
本開示の医薬組成物に使用し得る好適な水性及び非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)及びこれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチル及びシクロデキストリンなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用、分散液の場合は所望の粒径の維持、及び界面活性剤の使用により維持し得る。
【0093】
ここまで全般的に述べた発明は、本発明のある特定の態様及び実施形態を単に説明する目的として包含されている以下の実施例を参照して更に容易に理解され、また、これらは本発明を限定することを何ら意図するものではない。
【実施例】
【0094】
実施例1.生理食塩水pH6.5〜7.0中の60mg/mLのGLYX‐13
USP注射用水(WFI)中の90g/Lの塩化ナトリウムの溶液を調製する。
【0095】
180mg/mlのGLYX‐13溶液の調製
USP注射用水(WFI)を配合容器に添加して最終適量重量の20%と同等の量にし、正確な添加重量を記録する。溶液の混合を開始し、計算量のUSP酢酸を配合容器に添加する。酢酸の量は、調合バッチ中のGLYX‐13目標量の0.9〜1.0モル当量である。
【0096】
計算量のGLYX‐13遊離塩基を配合容器に添加し、正確な添加重量を記録する。混合を15〜30分間継続する。
【0097】
混合を停止し、計算量の90g/Lの生理食塩水を配合容器に添加する。NaClの量は、最終製剤中9g/Lを達成するために必要な量と同等にしなければならない。
【0098】
60mg/mlのGLYX‐13溶液の調製
配合容器の全内容物をポリマー混合バッグまたは大型ステンレス鋼製混合容器に移す。15〜30分間混合する。十分量のWFIを溶液に添加して最終目標の最終体積にする。HPLCによりGLYX‐13の内容物を試験し、pHを試験する。pHが6.6〜6.9の範囲外であれば、酢酸またはNaOHでpHを調整する。最終バッチは、溶液1リットル当り、0.9%の塩化ナトリウム中に60グラムのGLYX‐13及び6〜6.4グラムの酢酸を収容し;pHは6.5〜7.0でなければならない。
【0099】
滅菌及びバイアル充填
以下の連続的な3枚の濾紙:0.45μm濾紙での事前濾過、その後の2枚の0.22μm濾紙で無菌濾過により溶液を滅菌する。各バイアルに20ml(20〜20.5mL)のバルク滅菌溶液を充填し、バイアルに栓をし、蓋をする。各バイアルは溶液20mL中1.2グラムのGLYX‐13を収容している。
【0100】
実施例2.緩衝液中のGLYX‐13
A.HClを使用して0.1Mトリス緩衝水溶液(「トリスHCl‐7.0」)pH7.0を調製し、pHを調整する。
【0101】
60mg/mlのGLYX‐13溶液の調製
目標体積の約75%のトリスHCl‐7.0緩衝液を配合容器に添加する。目標バッチ体積1リットル当り、GLYX‐13遊離塩基を60g秤量し、配合容器に添加する。15分間混合する。pHを測定する。pHが範囲(7.0±0.05)外であれば、それに応じてHClまたはNaOHで調整する。最終バッチ体積にするために十分なトリスHCl‐7.0を添加する。最終バルク溶液は、溶液1リットル当り、60グラムのGLYX‐13遊離塩基を0.1Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/HCl緩衝液pH7.0中に含む。
【0102】
滅菌及びバイアル充填
上記と同様に、バイアルを濾過滅菌し、充填する。各バイアルは溶液20mL中1.2グラムのGLYX‐13を収容している(60mg/mLのGLYX‐13、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/HCl緩衝液、pH7.0)。
【0103】
B.クエン酸塩緩衝液pH5.6中に60mg/mL:0.1Mクエン酸三ナトリウム水溶液を調製し、必要に応じてHCl及びNaOHでpHを5.6に調整する。
【0104】
60mg/mlのGLYX‐13溶液の調製
約75%の目標バッチ体積のクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液、pH5.6を配合容器に添加する。目標バッチ体積1リットル当り、GLYX‐13遊離塩基を60g秤量し、配合容器に添加する。15分間混合する。pHを測定する。pHが範囲(5.6±0.05)外であれば、それに応じてHClまたはNaOHで調整する。最終バッチ体積にするために十分なクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.6)を添加する。最終バルク溶液は、溶液1リットル当り、60グラムのGLYX‐13遊離塩基を、0.1Mクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液pH5.6中に含む。
【0105】
C.滅菌及びバイアル充填
上記と同様に、バイアルを濾過滅菌し、充填する。各バイアルは溶液20mL中1.2グラムのGLYX‐13を収容している(GLYX‐13を含むクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液、pH5.6)。
【0106】
C.200mg/mLのGLYX‐13を含むトリス緩衝液pH7.5
A.HClを使用して0.1Mトリス緩衝水溶液(「トリスHCl‐7.5」)pH7.5を調製し、pHを調整する。
【0107】
B.200mg/mlのGLYX‐13溶液の調製
【0108】
目標体積の約50%のトリスHCl‐7.5緩衝液を配合容器に添加する。目標バッチ体積1リットル当り、GLYX‐13遊離塩基を200g秤量し、配合容器に添加する。15分間混合する。pHを測定する。pHが範囲(7.5±0.05)外であれば、それに応じてHClまたはNaOHで調整する。最終バッチ体積にするために十分なトリスHCl‐7.5を添加する。最終バルク溶液は、溶液1リットル当り、200グラムのGLYX‐13遊離塩基を、0.1Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/HCl緩衝液pH7.5中に含む。
【0109】
滅菌及びバイアル充填
上記と同様に、バイアルを濾過滅菌し、充填する。各バイアルに5ml(4.85〜5.15mL)のバルク滅菌溶液を充填し、バイアルに栓をし、蓋をする。各バイアルは溶液10mL中1グラムのGLYX‐13を収容している。(200mg/mLのGLYX‐13、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/HCl緩衝液、pH7.5)
【0110】
D.トリス緩衝液及び40%PEG400溶液pH7.5中の200mg/mLのGLYX‐13
HClを使用して0.1Mトリス緩衝水溶液(「トリスHCl‐7.5」)pH7.5を調製し、pHを調整する。
【0111】
200mg/mlのGLYX‐13溶液の調製
約20Lの0.2MトリスHCl‐7.5緩衝液を配合容器に添加する。40LのPEG400を容器に添加し、30分間撹拌する。GLYX‐13遊離塩基を20kg秤量し、配合容器に添加する。0.5〜2時間混合する。試料を取り出し、pHを測定する。pHが範囲(7.5±0.05)外であれば、それに応じてHClまたはNaOHで調整する。100Lの最終バッチ体積にするために十分なトリスHCl‐7.5(約30L)を添加する。最終バルク溶液は、溶液1リットル当り、200グラムのGLYX‐13遊離塩基及び40%のPEG400を0.1Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/HCl緩衝液pH7.5中に含む。
【0112】
滅菌及びバイアル充填
上記と同様に、バイアルを濾過滅菌し、充填する。各バイアルに10ml(10〜10.5mL)のバルク滅菌溶液を充填し、バイアルに栓をし、蓋をする。各バイアルは溶液10mL中2グラムのGLYX‐13を収容している。(40%のポリエチレングリコール400(PEG400)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/HCl緩衝液pH7.5中の、200mg/mLのGLYX‐13)
【0113】
実施例3.GLYX‐13のI.V.溶液の安定性
以下の条件を利用し、GLYX‐13の安定性をHPLCにより試験する。
【0114】
HPLC分析法
カラム:RP‐C18ODS2(5μm、80A、4.6×250mm)
【0115】
溶離液A:13.4gのリン酸二水素カリウム及び4.4gの1‐ヘプタンスルホン酸ナトリウム塩を含む1600mLの水。o‐リン酸でpHを2.5に調整する。水で2Lに希釈する。
【0116】
溶離液B:1400mLのメタノール及び600mLの水。
【0117】
勾配:25分間で20%のB〜70%のB;3分間で70%のB〜20%のB;8分間で0%のB。
【0118】
流速:1mL/分
【0119】
検出:UV(220nm)
【0120】
注射:20μLの1mg/mL溶液
【0121】
温度:周囲温度
【0122】
GLYX‐13の保持時間は12.0〜12.8分である。Thr‐Pro‐Pro‐Thr(TPPT=脱アミノ化GLYX‐13)の保持時間は14.9〜15.1分である。Thr‐Pro‐Pro(TPP)の保持時間は4.8〜5.2分である。本方法を利用して不純物ピークをGLYX‐13ピークに対して、重量/重量パーセントで表さずにパーセント(%)面積で分析する。
【0123】
実施例4.低pH製剤
GLYX‐13を150mg/mLで調合し、酢酸または塩酸のいずれかで特定のpHに調製した。次いで、安定性が向上された条件に当該製剤を供した(40℃で2か月)。pH及び対イオン(酢酸及びHCl)に対する安定性を限定する主要な特性を表1にまとめた。
表1.40℃で2か月置いたGLYX‐13溶液の安定性
1.試験開始時、%指定量は93%であり、総不純物レベルは1.6%であった。不純物は試料からのGLYX‐13ピークの%として報告する。総不純物は0.05%を超えるレベルの全ての個々の不純物の総量を含む。不純物1及び2は経時的に増加する2種の主要不純物を表す。不純物形成の速度は対イオン、pH及び温度に依存する。
【0124】
表1は、酢酸と比較してHClが対イオンとして製剤を安定化させることを示している。pH5.0では、不純物のレベルは10倍低く、GLYX‐13の%表示指定量(150mg)は、酢酸溶液に対してHCl溶液でほぼ50%高い(製剤AA‐5対HCl‐5を参照)。更に、pHのより低い溶液はpHのより高い溶液より安定しており:なお、HCl溶液では、不純物レベルは有意に低く、GLYX‐13の%表示指定量(150mg)は、pHのより高い(8)溶液に対して低いpH(4及び5)では有意に高い(製剤HCl‐4及びHCl‐5対製剤HCl‐8を参照)。
【0125】
実施例5.シリンジ/容器安定性試験
本試験の目的はシリンジ及びバイアルに充填したGLYX‐13の150mg/mL製剤の安定性を試験することであった。4種の異なるシリンジと栓の組合せを、1種のバイアルと栓の構成と共に試験した。
【0126】
表2
【0127】
Flexiconチューブを備えたFlexicon蠕動ポンプに目盛りを付け、薬液の密度に基づいて特定の充填量を送達した。25℃での薬液の密度は1.044g/mLであった。溶液5.1mLまたは5.32gをガラスシリンジに充填し、溶液5.14mLまたは5.37gをポリマーシリンジに充填した。シリンジ/栓部品に残留して送達に利用できない量を考慮して、各シリンジには必要以上の溶液を収容した。バイアルに残留した量を考慮して、各バイアルには5.32gの溶液を充填した。
【0128】
薬液の安定性を、同じ容器/封止具の組合せに充填したプラセボ溶液と比較した。試料を−20℃、2〜8℃、25℃及び40℃で表3〜6に収載した期間保存した。
【0129】
表の試験凡例:
【0130】
150mg/mLで活性物質を含む試料:
【0131】
A=pH、外観、アッセイ/関連物質、色、送達可能量(時点毎、全試験例に1シリンジ必要)
【0132】
B=送達可能量、HIAC、オスモル濃度、及び旋光度(時点毎に5シリンジ必要)
【0133】
プラセボを含む試料:
【0134】
A=pH、外観、アッセイ/関連物質、色(時点毎に1シリンジ必要)
【0135】
B=送達可能量、HIAC(時点毎に5シリンジ必要)
表3:−20℃で保存した試料の時点及び試験例
表4:2〜8℃で保存した試料の時点及び試験例
表5:25℃で保存した試料の時点及び試験例
表6:40℃で保存した試料の時点及び試験例
【0136】
シリンジ及び試料の試験例及び仕様を以下の選択した時点で試験する。
各時点で全ての試験を行うわけではない:pH、外観、アッセイ/関連物質、色、送達可能量、粒度分布(HIAC)、オスモル濃度及び旋光度。
表3:−20℃で保存した試料の時点及び試験例
表4:2〜8℃で保存した試料の時点及び試験例
表5:25℃で保存した試料の時点及び試験例
表6:40℃で保存した試料の時点及び試験例
【0137】
安定性試験におけるシリンジ及びバイアルの試験例及び仕様を表7に収載する。初期、ならびに4、8、12及び24週間後に試験を行った。2週間時点の試料は凍結しておき、4週間の試料と同時に試験した。6週間時点の試料は凍結しておき、8週間の試料と同時に試験した。
【0138】
保存中、水平状態で維持されるようにシリンジはバッグ内で保存した。約65個のバイアルを直立状態で保存し、55個のバイアルを倒置状態で保存した。各条件下、保存から4、8、12及び24週間後に倒置試料を取り出した。時点毎に必要以上のシリンジが含まれた。
表7:薬液の試験例及び仕様
【0139】
シリンジ容器/封止具構成に有意差は無かった。全ての容器/封止具構成は、外観、識別性、アッセイ、同定した関連物質、総関連物質、pH(活性状態)、粒子状物質(活性状態)及び1容器当りの体積の合格基準を満たしていた。全ての容器/封止具構成に関する4及び8週間後の個々の非同定関連物質及び総非同定関連物質は、いくつかの例で合格基準を満たしていなかった。
【0140】
実施例6.安定性試験
試験及び対照物質
GLYX‐13原薬;及び5M塩酸溶液;メタノール;20mmの開口を有する10mLバイアル;20mmのDaikyo製溶液栓;シリンジフィルター、0.2μmのMillex‐GV
HPLC法
カラム:Waters社製Spherisorb ODS2、3μm、4.6×250mm、品番PSS832115
移動相A:2.2g/Lのへプタンスルホン酸、6.7g/Lのリン酸二水素カリウム、pH2.5
移動相B:70/30メタノール/水
ニードル洗浄:水
カラム温度:40±1℃
試料温度:4±1℃
波長:210nm
稼働時間:50分
流速:1.0mL/分
勾配:
【0141】
試験
薬剤ベースの溶解を試験するため、4種の製剤を調製した(表2)。各製剤は35mLに調製され、5.25gのGLYX‐13を含有した。
表8.pH試験用の製剤
【0142】
薬剤をビーカーに添加し、精製水を使用して体積を約26mLに調整して各製剤を調製した。5MのHClを使用し、少量ずつ添加してpHを調整した。各調整から10分間、溶液を混合し、所望のpHにした後に30分間混合した。30分後に溶液のpHを確認し、必要に応じて調整した。pHのドリフトが確認されなくなったら精製水を使用して溶液を35mLに調製した。各製剤をバイアル(2.5mL/バイアル)に充填し、栓で封止し、蓋をした。製剤を40℃で3週間保存し、試料を週毎に取り出した。外観について週毎の試料全てを調べ、HPLCアッセイを利用してpH、アッセイ及び関連物質について試験した。
表9.40℃で3週間置いたGLYX‐13溶液の安定性
1.試験開始時、%表示指定量は104%であり、総不純物レベルは1.2%であった。不純物は試料からのGLYX‐13ピークの%面積として報告する。総不純物は0.05%を超えるレベルの全ての個々の不純物の総量を含む。不純物1及び2は経時的に増加する2種の主要不純物を表す。
【0143】
アッセイ及び不純物HPLC法のために設計された適当なソフトウエアを使用してデータを分析した。表3は3週目の試験時点での安定性データの概要を提供している。不純物1(RRT0.43)はシクロ‐プロリン‐スレオニン(「ジケトピペラジン」)である。不純物2(RRT0.57)はプロリン‐スレオニンアミドである。
図1はpHに対する経時的な不純物1(RRT0.43)の形成を示す。
図2はpHに対する経時的な不純物2(RRT0.57)の形成を示す。全データは、重量/重量%で表さずにGLYX‐13ピークの%面積として報告している。
【0144】
上記の例では、低pH及び中性pHで維持された溶液はより高いpHで維持された溶液より安定していることが示されている。例えば、GLYX‐13の%(150mg)は、より高いpH(7)溶液に対して低いpH(4及び5)で有意に高い(製剤HCl‐4及びHCl‐5対製剤HCl‐7を参照);40℃で3週間保存した低pHのGLYX‐13溶液のpH及び総不純物のレベルの増加に伴い有意に増加した2種の同定した不純物のレベルは、pH7溶液と比較してpH4で3倍低い。
【0145】
結果から、GLYX‐13溶液の安定性はpHに反比例していることが分かる。pH7での不純物形成の速度は、pH4の速度より約6倍高い。一部ではペプチドは通常、HCl中の低pHで加水分解されることから、中性pH(6〜8、例えば7)に対して低pH、例えば約4〜約5のHCl中の、ペプチドのこのように改善された安定性は驚くべきものである。また、安定性試験中に観察されたGLYX‐13濃度の減少/GLYX‐13分解生成物の増加は、酢酸で調製した製剤よりHCLで調製した製剤で低かった。
【0146】
実施例6.酸試験
【0147】
本試験の目的は、ラパスチネル(GLYX‐13)150mg/mlの安定性に対する、pH調整に使用する酸の種類の影響を試験することである。
【0148】
ラパスチネル150mg/ml溶液を、水中に溶解したラパスチネル粉末で調製し、5NのHClを使用してpHを4.5に調整する。本プロトコルには、5N―下記の記述を除いて―で全て調製した10種の異なる種類の酸を使用して4.5に調整したpHを有するラパスチネル150mg/ml溶液の調製が記述されている。
表10.材料、試験用製剤のサプライヤー
表11.器具リスト
【0149】
I.酸調製
【0150】
A.5NのHCl溶液
本研究は事前に調製した5NのHCl溶液を使用する。
【0151】
B.フマル酸溶液
フマル酸の分子量=116.07×5N=580.35mg/mL×250mL=145087.5mg
フマル酸は低水溶性であることから、溶液はその最大溶解度に近づけて調製し、ラパスチネルの濃縮溶液(450mg/mL)を使用してpH調整を容易にする。
【0152】
C.リンゴ酸溶液
リンゴ酸の分子量=134.09×5N=670.45mg/mL×250mL=167612.5mg
リンゴ酸の分子量=116.07×5N=580.35mg/mL×250mL=145087.5mg
リンゴ酸は低水溶性であることから、溶液はその最大溶解度に近づけて調製し、ラパスチネルの濃縮溶液(450mg/mL)を使用してpH調整を容易にする。
【0153】
D.乳酸溶液
溶液はその最大溶解度に近づけて調製し、ラパスチネルの濃縮溶液(450mg/mL)を使用してpH調整を容易にする。
【0154】
E.5Nの酢酸溶液(250mL)
酢酸の分子量=60.05×5N=300.25×250mL=75062.5mg
1.75.06gの酢酸を250mlのメスフラスコに添加する。
2.精製水を使用して250mLへと適量にし、完全に混合する。
【0155】
F.5Nのクエン酸溶液(250mL)
クエン酸の分子量=192.12×5N=960.6×250mL=240150mg
1.240.15gの酢酸を250mlのメスフラスコに添加する。
2.精製水を使用して250mLへと適量にし、完全に混合する。
【0156】
G.5Nのリン酸溶液(250mL)
リン酸の分子量=98×5N=490×250ml=122500mg
1.122.5gのリン酸を250mlのメスフラスコに添加する。
2.精製水を使用して250mLへと適量にし、完全に混合する。
【0157】
H.5Nの硝酸溶液(250mL)
硝酸の分子量=63.01×5N=315.05×250mL=78762.5mg
1.78.76gの硝酸を250mlのメスフラスコに添加する。
2.精製水を使用して250mLへと適量にし、完全に混合する。
【0158】
I.5Nの硫酸溶液(250mL)
硫酸の分子量=98.08×5N=490.4×250ml=122600mg
1.122.6gの硫酸を250mlのメスフラスコに添加する。
2.精製水を使用して250mLへと適量にし、完全に混合する。
【0159】
J.5Nのアスコルビン酸溶液(250mL)
アスコルビン酸の分子量=176.12×5N=880.6×250mL=220150mg
1.220.15gのアスコルビン酸を250mlのメスフラスコに添加する。
2.精製水を使用して250mLへと適量にし、完全に混合する。
【0160】
II.ラパスチネル150mg/mlの調製
ラパスチネル150mg/ml溶液を各250mlで調製する。必要なラパスチネルの理論量は溶液250ml当り37.5gである。ラパスチネルの実際の重量は力価、残留水分、総不純物、残留溶媒及び強熱残留物(表12)に基づいて調整する。
表12.ラパスチネルの総量調整データ
100+1.52+3.3+0.3632=105.18, 37.5g×1.0518=39.44g;力価の調整:100−99.1=0.9;39.44×1.009=39.79g、250mlバッチ当りに必要なラパスチネル
1.約180mlの精製水中に39.79gのラパスチネルを溶解して10種の異なるラパスチネル150mg/ml溶液を調製する。
2.薬液のpHを試験し、記録する。
3.各バッチにおいて、異なる酸を使用して各溶液のpHを4.5に調整する。
a.酸を徐々に添加し、増量毎に添加した酸の体積を記録する。
b.酸の各添加後、溶液のpHを記録する。
4.pH4.5に達した後、溶液を1時間混合する。
5.1時間後にpHを試験し、記録する。
6.必要に応じて、溶液用の個々の酸を使用してpHを4.5に調整する。添加した酸の体積及び最終pHを記録する。
7.精製水を使用して溶液を250mlへと適量にし、よく混合し、pHを記録する。
8.0.2μmフィルターを備えた真空濾過システムで各溶液を濾過する。
9.各溶液の1試料をHPLCアッセイ用T=0試料として供する。
10.各溶液を40℃で保存し、2週間〜4週間保存した後、各バッチから1試料を取り出す。同時に試験できるようになるまで、2週目及び4週目の試料を凍結させる。
11.pH、外観、アッセイ/関連物質、色、送達可能量、粒度分布(HIAC)、オスモル濃度及び旋光度について試料を試験する。
【0161】
等価物
当業者は、単に通常の実験を利用し、本明細書に記載された本発明の特定の実施形態の等価物が多数あることを認識するか、または確認することができるであろう。このような等価物は以下の特許請求の範囲に包含されるように意図されている。本明細書で参照された交付済み特許、出願及び参考文献は、各々が具体的かつ個別に参照により援用されているように同様の範囲まで参照により本明細書に援用される。矛盾する場合、定義を含む本開示が基準となる。また、材料、方法及び実施例は単に例示であり、限定することを意図するものではない。