特許第6702893号(P6702893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702893
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】多重特異的抗原結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20200525BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20200525BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20200525BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200525BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20200525BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20200525BHJP
【FI】
   C07K16/46ZNA
   C07K16/28
   C12P21/08
   A61K38/16
   A61K39/395 D
   A61K39/395 N
   A61P35/00
   A61P31/00
   !C12N15/12
【請求項の数】28
【全頁数】75
(21)【出願番号】特願2016-575108(P2016-575108)
(86)(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公表番号】特表2017-532287(P2017-532287A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】EP2015064070
(87)【国際公開番号】WO2015197598
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2018年6月22日
(31)【優先権主張番号】62/017,913
(32)【優先日】2014年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506000184
【氏名又は名称】イナート・ファルマ・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】INNATE PHARMA PHARMA S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ゴーティエ
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン・ロッシ
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/100490(WO,A1)
【文献】 特表2013−512258(JP,A)
【文献】 Cancer Genomic Proteomics, 2013, vol.10, no.1, p.1-18
【文献】 J Virol, Epub 6 Nov 2013, vol.88, no.2, p.1125-1139
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の第1及び第2の抗原に一価で結合する単離されたヘテロ量体タンパク質であって、
(a)第1のCH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン、第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン、及び前記第1の可変ドメインと前記第2の可変ドメインとの間に配置されたFcドメイン含む第1のポリペプチド鎖、及び
(b)第2のポリペプチド鎖であって、前記第1のポリペプチドと前記第2のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成するように、前記第1のポリペプチド鎖の前記第1のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された第1の可変ドメイン含み、前記第1のポリペプチド鎖の前記第1の可変ドメインと前記第2のポリペプチドの前記第1の可変ドメインとが、前記目的の第1の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成する、第2のポリペプチド鎖;および
(c)第3のポリペプチド鎖であって、CH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された可変ドメインを含み、前記可変ドメイン及び前記定常領域が、前記第1のポリペプチド鎖の前記第2の可変ドメイン及び前記第2のCH1又はCK定常領域と相補的であるように選択され、それにより、前記第1のポリペプチド鎖と前記第3のポリペプチド鎖とが、前記第3のポリペプチド鎖の前記CH1又はCK定常領域と前記第1のポリペプチド鎖の前記第1のCH1又はCK定常領域との間ではなく、前記第3のポリペプチド鎖の前記CH1又はCK定常領域と前記第1のポリペプチド鎖の前記第2のCH1又はCK定常領域との間に形成されたジスルフィド結合によって結合されたCH1−CKヘテロ二量体を形成する、第3のポリペプチド鎖
を含前記第1のポリペプチド鎖と、前記第2のポリペプチド鎖と、前記第3のポリペプチド鎖とが、CH1−CKヘテロ三量体を形成し、前記第1のポリペプチド鎖の前記第1の可変ドメインと前記第2のポリペプチド鎖の前記可変ドメインとが、目的の第1の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成し、及び前記第1のポリペプチド鎖の前記第2の可変ドメインと前記第3のポリペプチド鎖の前記可変ドメインとが、目的の第2の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成する、単離されたヘテロ量体タンパク質。
【請求項2】
前記Fcドメイン、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合することができ、且つ完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcγ受容体に対して低い結合性を有する、請求項1に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項3】
前記第1のポリペプチドと前記第2のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成するように、前記第1のポリペプチド鎖が、そのC末端でCH1に融合された第1の可変ドメイン含み、及び前記第2のポリペプチド鎖が、そのC末端でCK定常領域に融合された第1の可変ドメインを含む、請求項1又は2に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項4】
前記第1のポリペプチドと前記第2のポリペプチドとがCK−CH1ヘテロ二量体を形成するように、前記第1のポリペプチド鎖が、そのC末端でCKに融合された第1の可変ドメイン含み、及び前記第2のポリペプチド鎖が、そのC末端でCH1定常領域に融合された第1の可変ドメインを含む、請求項1又は2に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項5】
前記第1のポリペプチド鎖の前記第1の可変ドメイン及び前記第2のポリペプチド鎖の前記第1の可変ドメインが、前記第1の抗原に特異的に結合する同じ第1の親抗体に由来し、及び前記第1のポリペプチドの前記第2の可変ドメインが、前記第2の抗原に特異的に結合する第2の親抗体に由来する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項6】
前記目的の第1及び第2の抗原の一方が、エフェクター細胞、任意選択によりNK細胞によって発現される活性化受容体であり、及び他方が癌抗原、ウイルス抗原、又は細菌抗原である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項7】
記癌抗原、ウイルス抗原、又は細菌抗原を発現する細胞の存在下で、前記活性化受容体を発現するNK細胞と共にインキュベートされたときに、前記NK細胞を活性化させる、請求項6記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項8】
記癌抗原、ウイルス抗原、又は細菌抗原を発現する細胞の非存在下で、前記活性化受容体を発現するNK細胞と共にインキュベートされたときに、前記NK細胞を活性化しない、請求項6または7に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項9】
記癌抗原、ウイルス抗原、又は細菌抗原を発現する細胞の存在下で、前記活性化受容体を発現しないCD16陽性NK細胞と共にインキュベートされたときに、前記NK細胞を活性化しない、請求項6〜のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項10】
a)標的細胞の存在下で、前記活性化受容体を発現するNK細胞と共にインキュベートされたときにNK細胞を活性化させ、且つ(b)標的細胞の非存在下で、前記NK細胞と共にインキュベートされたときに前記NK細胞を活性化しない、請求項6記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項11】
cγ発現細胞の存在下で、前記活性化受容体を発現するNK細胞及び標的細胞と共にインキュベートされたときに、前記NK細胞を活性化しない、請求項6〜10のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項12】
量体Fcドメインを有する三量体であり、ドメイン配置:
【化1】
を有し、ここで、前記Fcドメインが、CH3−CH3二量体化を防止するためのアミノ酸変異を有するCH3ドメインを含み、それぞれのV−V対形成が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間で起こり、及びそれぞれの定常領域の対形成がCH1とCKとの間で起こる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項13】
ドメイン配置:
【化2】
を有し、ここで、前記Fcドメインが、CH3−CH3二量体化を防止するためのアミノ酸変異を有するCH3ドメインを含み、それぞれのV−V対形成が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間で起こり、及びそれぞれの定常領域の対形成がCH1とCKとの間で起こる、請求項12に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項14】
量体Fcドメインを有する三量体であり、ドメイン配置:
【化3】
を有し、ここで、それぞれのV−V対形成が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間で起こり、及びそれぞれの定常領域の対形成がCH1とCKとの間で起こる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項15】
ドメイン配置:
【化4】
を有する、請求項14に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項16】
ドメイン配置:
【化5】
を有する、請求項14に記載のヘテロ三量体タンパク質。
【請求項17】
Fcドメインが、ヒンジ領域又はリンカーペプチドを介して抗原結合ドメイン、CH1ドメイン、及び/又はCKドメインに融合されている、請求項1〜16のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項18】
全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcγ受容体に対して低い結合性を有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項19】
トFcγ受容体に対する結合性を実質的に欠いている、請求項1〜18のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項20】
各抗原結合ドメインが、抗体の超可変領域、任意選択により重鎖及び軽鎖CDRを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項21】
前記Fcドメインが、CH3−CH3二量体化が可能であるCH2及びCH3ドメインを含む、請求項14〜19のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項22】
前記Fcドメインが、ヒトFcγ受容体に対する結合性を低下させるためのアミノ酸置換を含むヒトCH2ドメインを含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項23】
前記Fcドメインが、CH3−CH3二量体化を防止するためのアミノ酸変異を有するCH3ドメインを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項24】
前記Fcドメインが、リンカーペプチドによって分離された第1及び第2のCH3ドメインを含み、前記2つのCH3ドメインが、非共有相互作用を介して互いに結合している、請求項1〜19のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項25】
可変ドメインが、ヒトフレームワーク領域からのフレームワーク残基を含む、請求項1〜24のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか一項に記載のヘテロ三量体タンパク質及び薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項27】
前記疾患が癌又は感染疾患である、請求項26に記載の医薬組成物
【請求項28】
ヘテロ三量体タンパク質を産生する方法であって、
(a)請求項1〜25のいずれか一項に記載の第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸を用意するステップ、
(b)請求項1〜25のいずれか一項に記載の第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸を用意するステップ、
(c)請求項1〜25のいずれか一項に記載の第3のポリペプチド鎖を含む第3の核酸を用意するステップ、及び
(d)それぞれ前記第1、第2、及び第3の核酸を宿主細胞で発現させて、前記第1、第2、及び第3のポリペプチド鎖を含むタンパク質を産生し、産生された前記タンパク質を親和性精製支持体、任意選択によりプロテインA支持体にローディングし、且つヘテロ三量体タンパク質を回収するステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全ての図面を含め、参照により全内容が本明細書に組み入れられる、2014年6月27日出願の米国仮特許出願第62/017,913号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
配列表の参照
本出願は、電子形式の配列表と合わせて出願されている。この配列表は、2015年6月17日に作成された199KBサイズの「BISP2_PCT_ST25」という名称のファイルとして提供される。この配列表の電子形式の情報は、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる。
【0003】
NK細胞に結合し且つそれを特異的にリダイレクトして、目的の標的細胞を溶解する多重特異的タンパク質が提供される。このタンパク質形態は、疾患の処置に有用である。
【背景技術】
【0004】
2つの異なるエピトープに結合する二重特異的抗体は、特異性を高める機会、効力を拡張する機会、及び従来のモノクローナル抗体では達成できない作用の新規な機序を利用する機会を提供する。同時に2つの標的に結合する二重特異的抗体の様々な形態が報告されている。また、二重特異的抗体を用いて2つの異なる受容体を架橋してシグナル伝達経路を阻害することは、様々な適用例で有用性を示す(例えば、非特許文献1を参照されたい)。二重特異的抗体は、2つの異なる受容体を中和するために使用されてきた。他のアプローチでは、二重特異的抗体は、免疫エフェクター細胞を動員するために使用され、ここで、T細胞の活性化が、2つの異なる細胞型における受容体に同時に結合する二重特異的抗体によって腫瘍細胞の近傍で達成される(非特許文献2を参照されたい)。殆どのこのようなアプローチは、T細胞上のCD3複合体を腫瘍結合抗原に連結する二重特異的抗体に関係する。殆どの十分に研究された二重特異的抗体形態は、Fcドメインを含まない「BiTe」抗体及び「DART」抗体である。しかしながら、これらの抗体は、作成が困難であることが知られており、長期にわたる細胞の開発を必要とし、低い産生収率を有し、且つ/又は(既刊文献によると)均質なタンパク質組成物として産生させることができない。別の例では、1つのアームがFcyRIIIに結合し、別のアームがHER2受容体に結合する二重特異的抗体が、HER2抗原を過剰発現する卵巣癌及び乳癌の治療のために開発された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jackman,et al.,(2010)J.Biol.Chem.285:20850−20859
【非特許文献2】Baeuerle,P.A.,et al,(2009)Cancer Res 69(12):4941−4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、様々な形態の二重特異的抗体が存在するにもかかわらず、2つ以上の生物学的標的に結合することができ、且つ産業的発展にとって魅力的な特性を有する、作用機序が十分に明らかにされた新規なタンパク質が当技術分野でなお要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、広範囲の抗体可変領域を容易に使用することを可能にし、標準的な組換え産生技術に適用させることによって製造における利点を有し、且つ改善されたin vivo薬理学を有する機能的な多重特異的抗体の発見に由来する。このような抗体は、特に、除去されるべき標的細胞上の第1の抗原及び免疫エフェクター細胞(例えば、NK細胞及び/又はT細胞)上の第2の抗原に結合するように適合され、エフェクター細胞は、標的細胞、例えば、癌細胞に誘導される。エフェクター細胞上の抗原は、有利には、活性化受容体であり得る。多重特異的抗体は、FcγR結合性を欠いているように設計された場合、CD16を介してエフェクター細胞を実質的に活性化せず、多重特異的抗体は、多重特異的抗体の超可変領域に結合される抗原に応じて、目的の特定のエフェクター細胞に選択的であり、それにより、あらゆる不所望のFcγR/免疫媒介毒性(例えば、サイトカイン媒介毒性)及び/又は標的となるエフェクター細胞の抑制性FcγR媒介阻害が回避される。多重特異的ポリペプチドは、例えば、標的抗原発現エフェクター細胞に、標的抗原、例えば、癌抗原、ウイルス抗原などを発現する標的細胞を溶解させることができる。多重特異的抗体は、エフェクター細胞表面タンパク質及び第2の抗原(標的細胞によって発現される抗原)の両方に一価で結合する場合に特に有効である。
【0008】
一実施形態では、第1及び第2の抗原に一価で結合し、且つFcRnに結合するヘテロ多量体多重特異的タンパク質(例えば、ヘテロ二量体、ヘテロ三量体)が提供され、このタンパク質は、目的の第1の抗原に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン(ABD)、目的の第2の抗原に特異的に結合する第2の抗原結合ドメイン(ABD)、及びヒトFcドメイン、例えば、FcRnによって結合されるFcドメインの少なくとも一部を含み、任意選択により、多重特異的抗体は、低いFcγR結合性を有するか、又はFcγR結合性を実質的に欠いているように設計される。一実施形態では、Fcドメインは、2つのABD(一方のABDは、FcドメインのN末端に配置され、他方のABDは、C末端に配置される)間に配置される。
【0009】
一実施形態では、目的の抗原の一方は、エフェクター細胞上に存在する活性化受容体であり、他方は、標的細胞抗原(例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、微生物抗原)であり、多重特異的タンパク質は、FcRnによって結合され、且つ低いFcγR結合性を有するか、又はFcγR結合性を実質的に欠いており、多重特異的タンパク質は、標的となるエフェクター細胞及び標的細胞の存在下で、エフェクター細胞ポリペプチド(このタンパク質はアゴニストとして作用する)によってエフェクター細胞でのシグナル伝達及び/又はエフェクター細胞の活性化を誘導することができ、それにより、エフェクター細胞の活性化及び/又は標的細胞の溶解が直接的に促進される。特に、多重特異的タンパク質は、FcγR媒介毒性を活性化することも抑制性FcγR媒介阻害も起こすことなく、目的のエフェクター細胞(エフェクター細胞受容体発現細胞)に実質的に限定される標的細胞に対する免疫エフェクター応答(細胞傷害反応)を誘導することができる。一実施形態では、エフェクター(例えば、T細胞又はNK細胞)によって発現される活性化受容体及び癌抗原、ウイルス抗原、又は細菌抗原に一価で結合する単離された多量体タンパク質が提供され、任意選択により、このタンパク質は、ヘテロ二量体又はヘテロ三量体タンパク質であり、任意選択により、このタンパク質は、CH1−CK二量体化によって形成された少なくとも2つのポリペプチド鎖を含み、このタンパク質は、(a)エフェクター細胞(例えば、T細胞又はNK細胞)によって発現される活性化受容体に結合する第1の抗原結合ドメイン、(b)標的細胞上で発現される癌抗原、ウイルス抗原、又は細菌抗原に結合する第2の抗原結合ドメイン、及び(c)単量体又は二量体ヒトFcドメインを含み、このタンパク質は、そのFcドメインヒト新生児Fc受容体(FcRN)に結合することができ、且つ完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する低い結合性を有する。
【0010】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、エフェクター細胞上の活性化受容体に結合する多重特異的タンパク質は、例えば、
(a)標的細胞の存在下で、活性化受容体を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、このようなエフェクター細胞を活性化する能力、及び/又は
(b)標的細胞の非存在下で、このようなエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、このようなエフェクター細胞を活性化する能力の欠如
によって特徴付けることができる。任意選択により、エフェクター細胞は、精製されたNK細胞又はT細胞である。
【0011】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、本明細書に記載の多重特異的タンパク質は、例えば、
(a)標的細胞の存在下で、活性化受容体を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、このようなエフェクター細胞に標的細胞を溶解させる能力、及び/又は
(b)標的細胞の非存在下で、このようなエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、このようなエフェクター細胞を活性化する能力の欠如
によって特徴付けることができる。
【0012】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、本明細書に記載の多重特異的タンパク質は、例えば、
(a)標的細胞の存在下で、活性化受容体を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、このようなエフェクター細胞に標的細胞を溶解させる能力、及び/又は
(b)標的細胞の存在下で、CD16を発現するが活性化受容体を発現しないエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、このようなエフェクター細胞を活性化する能力の欠如
によって特徴付けることができる。
【0013】
多量体ポリペプチドは、2つ又は3つの異なるポリペプチド鎖から構成され、1つ又は2つの鎖が、CH1−CKヘテロ二量体化(ジスルフィド結合がCH1ドメインとCKドメインとの間に形成される)に基づいて中心鎖と二量体化している。多量体は、中心(第1)のポリペプチド鎖から構成することができ、このポリペプチド鎖は、異なる抗原特異性の別個の抗原結合ドメインの一部である2つの免疫グロブリン可変ドメイン、及びこの可変ドメインの一方又はそれぞれに隣接したこのポリペプチド鎖上に配置されたCH1又はCK定常ドメインを含み、Fcドメインが、このポリペプチド鎖上のこの2つの免疫グロブリン可変ドメイン間に配置されている。中心ポリペプチド鎖のドメイン配置の例は、以下の通りであり、各V、V、又はVは可変ドメインである:
−(CH1又はCK)−Fcドメイン−V
−Fcドメイン−V−(CH1又はCK)、
−(CH1又はCK)−Fcドメイン−V−V
−V−Fcドメイン−V−(CH1又はCK)、及び
−(CH1又はCK)−Fcドメイン−V2−(CH1又はCK)。
【0014】
Fcドメインは、所望の機能(例えば、FcRn結合性)を付与するのに十分な完全Fcドメイン又はその一部であり得る。次いで、中心ポリペプチド鎖とのCH1−CKヘテロ二量体化が可能となるように選択されたCH1又はCK定常領域及び免疫グロブリン可変ドメインを含む第2の追加のポリペプチド鎖が構成され、この免疫グロブリン可変ドメインは、CH1又はCKドメインに隣接した中心鎖の可変ドメインを補完するように選択され、それにより、相補的な可変ドメインが、目的の第1の抗原の抗原結合ドメインを形成する。
【0015】
次いで、目的の第2の抗原の抗原結合ドメインをいくつかの構成に従って形成することができる。第1の構成では、中心ポリペプチド鎖は、3つの免疫グロブリン可変ドメインを含み、第1の可変ドメインは(第2のポリペプチドのVドメインと共に)、目的の第1の抗原の抗原結合ドメインの一部であり、第2及び第3の可変ドメインは、目的の第2の抗原の抗原結合ドメインを形成する直列型可変ドメイン(例えば、scFv単位を形成する、例えば、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖(κ)可変ドメイン(VK))として構成される。
【0016】
別の構成では、第2の抗体結合ドメインの第2の可変領域を提供するために第3のポリペプチド鎖が提供される。第2鎖と同様に、第3鎖は、中心ポリペプチド鎖とのCH1−CKヘテロ二量体化が可能となるように選択されたCH1又はCK定常領域及び免疫グロブリン可変ドメインを含む。この構成では、中心鎖は、間置Fcドメインを有する2つのV−(CH1又はCK)単位を含み、第1のV−(CH1又はCK)単位は、第2鎖のV−(CH1又はCK)単位とCH1−CKヘテロ二量体を形成し、第2のV−(CH1又はCK)単位は、第3鎖のV−(CH1又はCK)単位とヘテロ二量体を形成する。第3鎖の免疫グロブリン可変ドメインは、中心鎖の不対可変ドメインを補完するように選択され、それにより、相補的な可変ドメインが、目的の第2の抗原の抗原結合ドメインを形成する。CH1及びCKドメインは、これらに隣接したVドメインが相補的である(即ち、両方がVHでも、両方がVKでもない)限り、ヘテロ二量体を形成するため、第2鎖及び第3鎖の各V−(CH1又はCK)単位が、中心鎖上の好ましい結合パートナーを見出すように第2鎖及び第3鎖の可変ドメイン及び定常ドメインを構成するように、互いに自然に結合しない可変ドメイン及び定常ドメインを選択することができる。例えば、VH−CK単位は、VK−CH1とヘテロ二量体化するが、VK−CKとはヘテロ二量体化しない。これにより、形成中の好ましい鎖の対形成が可能となる。
【0017】
多量体ポリペプチドは、単量体Fcドメイン又は二量体Fcドメインを有するように設計することができる。単量体Fcドメインの場合、Fcドメインは、CH3−CH3二量体化を防止するためにCH3二量体界面に1つ以上のアミノ酸変異(例えば、置換)を有するCH3ドメインを含み得る。
【0018】
一態様では、目的の第1及び第2の抗原に一価で結合するヘテロ三量体二重特異的抗体が提供され、この抗体は、ヒトFcRnに結合する単量体又は二量体Fcドメインを含み、さらに任意選択により、Fcドメインは、ヒトFcγ受容体に結合しない。
【0019】
一実施形態では、ヘテロ多量体、例えば、ヘテロ二量体二重特異的ポリペプチドが提供され、このポリペプチドは、(a)CH1又はCKドメインに融合された第1の可変領域(V)を含む第1のポリペプチド鎖であって、V−(CH1/CK)単位がヒトFcドメイン(完全Fcドメイン又はその一部)の第1の末端(N末端又はC末端)に融合されている、第1のポリペプチド鎖、(b)第2のポリペプチド鎖であって、CH1−CK二量体を形成するように第1鎖のCH1又はCKに相補的であるCH1又はCKドメインに融合された第1の可変領域(V)を含み、任意選択によりV−(CH1/CK)単位が少なくともヒトFcドメイン(完全Fcドメイン又はその一部)に融合され、2つの第1の可変領域が、目的の第1の抗原に一価で結合する抗原結合ドメインを形成する、第2のポリペプチド鎖、及び(c)FcドメインがV−(CH1/CK)単位と第2の抗原に結合する抗原結合ドメインとの間に配置されるように第1のポリペプチド(又は、このようなポリペプチドがFcドメインを含む場合、第2のFc由来ポリペプチド)のFcドメインの第2の末端(N末端又はC末端)に融合された第2の抗原に(任意選択により、相補的な抗原結合ドメインと共に)結合する抗原結合ドメインを含む。任意選択により、第1及び第2のポリペプチド鎖は、例えば、それぞれのCH1とCKドメインとの間に形成される鎖間ジスルフィド結合によって結合される。任意選択により、V−(CH1/CK)単位は、ヒトFcドメインに直接融合されるか、又は介在配列、例えば、ヒンジ領域、リンカー、他のタンパク質ドメインなどを介して融合される。
【0020】
上記のヘテロ多量体ポリペプチドの一実施形態では、ポリペプチドは、ヘテロ二量体であり、第2の抗原の抗原結合ドメインが、scFv、任意選択によりエフェクター細胞上の活性化受容体に結合するscFvである。
【0021】
一態様では、目的の第1及び第2の抗原に一価で結合する単離されたヘテロ多量体ポリペプチドが提供され、このヘテロ多量体ポリペプチドは、
(a)CH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、第2の可変ドメイン、及び第1の可変ドメインと第2の可変ドメインとの間に配置されたFcドメイン又はその一部を含む第1のポリペプチド鎖、及び
(b)第2のポリペプチド鎖であって、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された第1の可変ドメイン(V)を含み、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチドの第1の可変ドメインが、目的の第1の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成する、第2のポリペプチド鎖
を含む。
【0022】
任意選択により、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖が、そのC末端でCH1に融合された第1の可変ドメイン(V)を含み、及び第2のポリペプチド鎖が、そのC末端でCK定常領域に融合された第1の可変ドメインを含む。別法では、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとがCK−CH1ヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖が、そのC末端でCKに融合された第1の可変ドメイン(V)を含み、及び第2のポリペプチド鎖が、そのC末端でCH1定常領域に融合された第1の可変ドメインを含む。任意選択により、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメイン及び第2のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインは、第1の抗原に特異的に結合する同じ第1の親抗体に由来し、及び第1のポリペプチドの第2の可変ドメインは、第2の抗原に特異的に結合する第2の親抗体に由来する。
【0023】
一実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第3の可変ドメインに融合された第2の可変ドメインをさらに含み、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成し、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインとが、目的の第1の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成し、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメインと第3の可変ドメインとが、目的の第2の抗原に特異的なscFvを形成する。任意選択により、第1のポリペプチド鎖は、ドメイン配置:V−V−Fcドメイン−V−(CH1又はCK)を有し、それにより、ドメイン配置
【化1】
を有するヘテロ多量体ポリペプチドが形成され、ここで、第1のポリペプチド鎖のV及び第2のポリペプチド鎖のVの一方が軽鎖可変ドメインであり、及び他方が重鎖可変ドメインである。
【0024】
任意選択により、第1のポリペプチド鎖は、ドメイン配置:V−(CH1又はCK)−Fcドメイン−V−Vを有し、それにより、ドメイン配置
【化2】
を有するヘテロ多量体ポリペプチドが形成され、ここで、第1のポリペプチド鎖のV及び第2のポリペプチド鎖のVの一方が軽鎖可変ドメインであり、及び他方が重鎖可変ドメインである。
【0025】
一態様では、目的の第1及び第2の抗原に一価で結合する単離されたヘテロ二量体ポリペプチドが提供され、任意選択により、これらの抗原の一方が免疫エフェクター細胞で発現され、他方が目的の抗原であり、このヘテロ二量体ポリペプチドは、
(a)N末端からC末端に、第1の可変ドメイン(V)、CH1又はCK定常領域、Fcドメイン又はその一部、第2の可変ドメイン、及び第3の可変ドメインを含む第1のポリペプチド鎖、及び
(b)第2のポリペプチド鎖であって、N末端からC末端に、第1の可変ドメイン(V)、CH1又はCK定常領域、及び任意選択によるFcドメイン又はその一部を含み、CH1又はCK定常領域が、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択され、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチドの第1の可変ドメインとが、目的の第1の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成し、第2の可変ドメインと第3の可変ドメインとが、目的の第2の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成する、第2のポリペプチド鎖
を含む。第2のポリペプチド鎖がFcドメインを欠いている場合、第1のポリペプチド鎖は、CH3−CH3二量体化を防止するための改変されたFcドメイン(例えば、置換又は直列型CH3ドメイン)を含む。
【0026】
一態様では、目的の第1及び第2の抗原に一価で結合する単離されたヘテロ二量体ポリペプチドが提供され、任意選択により、これらの抗原の一方が免疫エフェクター細胞で発現され、他方が目的の抗原であり、このヘテロ二量体ポリペプチドは、
(a)N末端からC末端に、第2の可変ドメイン及び第3の可変ドメイン、Fcドメイン又はその一部、第1の可変ドメイン(V)、及びCH1又はCK定常領域を含む第1のポリペプチド鎖、及び
(b)N末端からC末端に、第1の可変ドメイン(V)、CH1又はCK定常領域を含む第2のポリペプチド鎖であって、CH1又はCK定常領域が、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択され、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチドの第1の可変ドメインとが、目的の第1の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成し、第2の可変ドメインと第3の可変ドメインとが、目的の第2の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成する、第2のポリペプチド鎖
を含む。第1のポリペプチド鎖は、CH3−CH3二量体化を防止するための改変されたFcドメイン(例えば、置換又は直列型CH3ドメイン)を含むことができる。
【0027】
一実施形態では、三量体ポリペプチドが提供され、この三量体ポリペプチドは、
(a)第1のCH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン(V)、及び第1の可変ドメインと第2の可変ドメインとの間に配置されたFcドメイン又はその一部(即ち、Fcドメインは、第1のV−(CH1/CK)単位と第2のV−(CH1/CK)単位との間に配置される)を含む第1のポリペプチド鎖、
(b)第2のポリペプチド鎖であって、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖の第1のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された可変ドメインを含む、第2のポリペプチド鎖、及び
(c)第3のポリペプチド鎖であって、CH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された可変ドメインを含み、第1のポリペプチドと第3のポリペプチドとが、第3のポリペプチドのCH1又はCK定常領域と第1のポリペプチドの第1のCH1又はCK定常領域との間ではなく、第3のポリペプチドのCH1又はCK定常領域と第1のポリペプチドの第2のCH1又はCK定常領域との間に形成されたジスルフィド結合によって結合されたCH1−CKヘテロ二量体を形成するように、可変ドメイン及びCH1又はCK定常領域が、第2の可変ドメイン及び第1のポリペプチド鎖のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択される、第3のポリペプチド鎖
を含み、第1のポリペプチドと、第2のポリペプチドと、第3のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ三量体を形成し、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチド鎖の可変ドメインとが、目的の第1の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成し、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメインと第3のポリペプチド鎖の可変ドメインとが、目的の第2の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成する。任意選択により、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメイン及び第2のポリペプチド鎖の可変ドメインは、第1の抗原に特異的に結合する同じ第1の親抗体に由来し、及び第1のポリペプチドの第2の可変ドメイン及び第3のポリペプチド鎖の可変ドメインは、第2の抗原に特異的に結合する同じ第2の親抗体に由来する。
【0028】
一実施形態では、目的の第1及び第2の抗原に一価で結合し、任意選択によりこれらの抗原の一方が免疫エフェクター細胞で発現され、他方が目的の抗原である、三量体ポリペプチドが提供され、この三量体ポリペプチドは、
(a)N末端からC末端に、第1のCH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、Fcドメイン又はその一部、及び第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン(V)含む第1のポリペプチド鎖、
(b)N末端からC末端に、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖の(第2ではなく)第1のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域に融合された可変ドメイン、及び任意選択によるFcドメイン又はその一部を含む第2のポリペプチド鎖、及び
(c)N末端からC末端に、CH1又はCK定常領域に融合された可変ドメインを含む第3のポリペプチド鎖であって、この可変ドメイン及びCH1又はCK定常領域が、第1のポリペプチド鎖の(第1ではなく)第2の可変ドメイン及びCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択される、第3のポリペプチド鎖
を含む。従って、第1のポリペプチドと第3のポリペプチドとは、第3のポリペプチドのCH1又はCK定常領域と第1のポリペプチドの第1のCH1又はCK定常領域との間ではなく、第3のポリペプチドのCH1又はCK定常領域と第1のポリペプチドの第2のCH1又はCK定常領域との間にCH1−CKヘテロ二量体を形成する。第1のポリペプチドと、第2のポリペプチドと、第3のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ三量体を形成し、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチド鎖の可変ドメインとが、目的の第1の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成し、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメインと第3のポリペプチド鎖の可変ドメインとが、目的の第2の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成する。
【0029】
また、精製された又は均質な組成物も提供され、この組成物中のタンパク質の少なくとも90%、95%、又は99%が本開示の多量体ポリペプチドである。
【0030】
任意選択により、2つのFcドメインが多量体ポリペプチドに存在する任意の実施形態では、Fcドメインは、CH3−CH3二量体化が可能であるCH2及びCH3ドメインを含む。
【0031】
任意選択により、任意の実施形態では、可変ドメインのそれぞれは、単一免疫グロブリン重鎖又は軽鎖可変ドメインである。
【0032】
任意選択により、任意の実施形態では、Fcドメインは、ヒンジ領域又はリンカーペプチドを介して抗原結合ドメイン、CH1ドメイン、及び/又はCKドメインに融合される。
【0033】
任意選択により、任意の実施形態では、FcドメインはCH2ドメインを含む。任意選択により、CH2ドメインは、ヒンジ領域又はリンカーペプチドを介して抗原結合ドメイン、CH1ドメイン、及び/又はCKドメインに融合される。任意選択により、CH2ドメインは、ヒトFcγ受容体に対する結合性を低下させるためのアミノ酸置換を含む。一実施形態では、多重特異的ポリペプチドは、N連結グリコシル化を欠いているか、又は改変されたN連結グリコシル化を有する。一実施形態では、多重特異的ポリペプチドは、N297X変異を含み、Xは、アスパラギン以外の任意のアミノ酸である。
【0034】
任意選択により、任意の実施形態では、多量体ポリペプチド内の2つのポリペプチド鎖は、それぞれのヒンジ領域間及び/又はそれぞれのCH1/CK定常領域間に形成された鎖間ジスルフィド結合によって互いに結合される。
【0035】
任意選択により、任意の実施形態では、多重特異的ポリペプチド(又はそのFc部分)は、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合することができる。
【0036】
任意選択により、任意の実施形態では、多重特異的ポリペプチド(又はそのFc部分)は、完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcγ受容体に対して低い結合性を有する。任意選択により、多重特異的ポリペプチド(又はそのFc部分)は、ヒトFcγ受容体に対する結合性を実質的に欠いている。
【0037】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、多量体ポリペプチド(及び/又はそのFcドメイン)は、例えば、完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcγ受容体(例えば、CD16、CD32A、CD32B、及び/又はCD64)に対して低い結合性を有する。
【0038】
一実施形態では、多量体ポリペプチドは、例えば、ヒトIgG1アイソタイプの野生型Fcドメインを有する同じポリペプチドと比較して、多量体ポリペプチドの可変領域によって結合された目的の抗原を発現しない免疫細胞によって媒介される(即ち、可変領域によって結合された目的の抗原を発現する細胞の非存在下で)、低下した(例えば、部分的又は完全に消失した)抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、FcR媒介細胞活性化(例えば、FcR架橋によるサイトカインの放出)、及び/又はFcR媒介血小板活性化/減少を有する。
【0039】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、CH2ドメインは、野生型CH2ドメインと比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合性を低下させるアミノ酸改変を含む。一実施形態では、CH2改変多重特異的ポリペプチドは、例えば、野生型CH2ドメインを有する同じポリペプチドと比較して、多量体ポリペプチドのABDによって結合された目的の抗原を発現しない免疫エフェクター細胞によって媒介される、低下した(例えば、部分的又は完全に消失した)抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、FcR媒介細胞活性化(例えば、FcR架橋によるサイトカインの放出)、及び/又はFcR媒介血小板活性化/減少を有する。
【0040】
任意選択により、任意の実施形態では、各抗原結合ドメインは、超可変領域、任意選択により抗体の重鎖及び軽鎖CDRを含む。
【0041】
任意選択により、単一Fcドメインが多量体ポリペプチド中に存在する任意の実施形態では、Fcドメインは、L351位、T366位、L368位、P395位、F405位、T407位、及び/又はK409位(Kabatと同様のEU付番)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つにアミノ酸置換を含むCH3ドメイン、又は直列型CH3ドメインを含む。
【0042】
任意選択により、任意の実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgG4 Fcドメイン又はその一部であり、任意選択により1つ以上のアミノ酸改変を含む。
【0043】
任意選択により、任意の実施形態では、目的の第1又は第2の抗原の一方は、癌抗原であり、他方は、免疫エフェクター細胞の表面で発現されるポリペプチドである。
【0044】
任意選択により、任意の実施形態では、目的の第1又は第2の抗原の一方は、ウイルス抗原又は細菌抗原であり、他方は、免疫エフェクター細胞の表面で発現されるポリペプチドである。
【0045】
任意選択により、任意の実施形態では、可変ドメインは、ヒトフレームワーク領域からのフレームワーク残基を含む、例えば、可変ドメインは、ヒト又は非ヒト起源の1つ、2つ、又は3つのCDR、及びヒト起源のフレームワーク残基を含む。
【0046】
本明細書に記載の任意の実施形態の一態様では、二重特異的ポリペプチドは、免疫エフェクター細胞によって発現される抗原に対してよりも、癌抗原(又はウイルス抗原若しくは細菌抗原)に対して高い結合親和性(一価)を有する。このような抗体は、有利な薬理学的特性を提供する。本発明の任意の実施形態の一態様では、このポリペプチドは、免疫エフェクター細胞によって発現されるポリペプチドに対する結合について、10−7M未満、好ましくは10−8M未満、又は好ましくは10−9M未満の、免疫エフェクター細胞によって発現される抗原との結合(一価)のKdを有し、任意選択により、このポリペプチドは、免疫エフェクター細胞によって発現される抗原との結合(一価)のKdよりも低い、癌抗原、ウイルス抗原、又は細菌抗原との結合(一価)のKdを有する(即ち、より優れた結合親和性を有する)。
【0047】
本明細書に記載の任意のポリペプチドの一実施形態では、多重特異的ポリペプチドは、目的の第1又は第2の抗原の一方を発現するエフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)に、前記目的の第1又は第2の抗原の他方を発現する標的細胞(例えば、癌細胞)を溶解させることができる。
【0048】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、本開示の任意のタンパク質の第1のポリペプチド鎖、及び/又は第2のポリペプチド鎖、及び/又は第3のポリペプチド鎖をコードする組換え核酸が提供される。本明細書の任意の実施形態の一態様では、本開示の任意のタンパク質の第1のポリペプチド鎖、及び/又は第2のポリペプチド鎖、及び/又は第3のポリペプチド鎖をコードする核酸を含む組換え宿主細胞が提供され、任意選択により、この宿主細胞は、少なくとも1、2、3、又は4mg/Lの収量(精製後の最終生産性)で本開示のタンパク質を産生する。また、本開示の第1のポリペプチド鎖をコードする組換え核酸、本開示の第2のポリペプチド鎖をコードする組換え核酸、及び任意選択により、本開示の第3のポリペプチド鎖をコードする組換え核酸を含む核酸のキット又はセットも提供される。また、本開示の単量体、ヘテロ二量体、及びヘテロ三量体タンパク質を産生する方法も提供される。
【0049】
一実施形態では、本発明は、ヘテロ二量体タンパク質(例えば、本明細書に記載の任意のヘテロ二量体タンパク質)を産生する方法が提供され、この方法は、
a)本明細書に記載の第1のポリペプチド鎖(例えば、CH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、第2の可変ドメイン(及び任意選択による第3の可変ドメイン、第2の可変ドメインと第3の可変ドメインとが抗原結合ドメインを形成する)、及び第1の可変ドメインと第2の可変ドメインとの間に配置されたFcドメイン又はその一部を含むポリペプチド鎖)をコードする第1の核酸を用意するステップ、
b)本明細書に記載の第2のポリペプチド鎖(例えば、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成して、第1のポリペプチド鎖の第1の可変領域と第2のポリペプチドの第1の可変ドメインとが抗原結合ドメインを形成するように、第1のポリペプチド鎖のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された第1の可変ドメイン(V)を含むポリペプチド鎖)をコードする第2の核酸を用意するステップであって、第1又は第2の抗原結合ドメインの一方が、免疫エフェクター細胞の表面のポリペプチドに結合し、他方が、腫瘍抗原、ウイルス抗原、又は細菌抗原に結合する、ステップ、及び
(c)それぞれ前記第1及び第2の核酸を宿主細胞で発現させて、前記第1及び第2のポリペプチド鎖を含むタンパク質を産生し、且つヘテロ二量体タンパク質を回収するステップ
を含む。任意選択により、産生されたヘテロ二量体タンパク質は、精製前に得られた総タンパク質(例えば、二重特異的タンパク質)の少なくとも20%、25%、又は30%を占める。任意選択により、ステップ(c)は、産生されたタンパク質を親和性精製支持体、任意選択により親和性交換カラム、任意選択によりプロテインA支持体又はカラムにローディングし、且つヘテロ二量体タンパク質を収集するステップ、及び/又は産生されたタンパク質(例えば、親和性交換若しくはプロテインAカラムにローディングした後に収集されたタンパク質)をイオン交換カラムにローディングし、且つヘテロ二量体画分を収集するステップを含む。一実施形態では、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメインは、(任意選択により第3の可変ドメインと共に)免疫エフェクター細胞の表面のポリペプチドに結合する。
【0050】
本開示のタンパク質は、BITE、DART、及び他の二重特異的形態と異なり、標準的な細胞株及び高収量の標準化方法で産生することができるため、多重特異的タンパク質に組み込まれるべき最も有効な可変領域についてのスクリーニング用の従来のツールも提供する。一態様では、本開示は、ヘテロ二量体タンパク質に使用される候補可変領域を特定又は評価する方法を提供し、この方法は、
a)複数の核酸対を用意するステップであって、各対が、(例えば、同じ又は異なる目的の抗原に結合する異なる抗体から得られる)複数の重鎖及び軽鎖可変領域対のそれぞれについて、重鎖候補可変領域をコードする1つの核酸及び軽鎖候補可変領域をコードする1つの核酸を含む、ステップ、
b)複数の核酸対のそれぞれについて、ヘテロ二量体タンパク質を、
(i)CH1又はCK定常領域に融合された重鎖又は軽鎖候補可変ドメイン(V)の一方、第2の可変ドメイン(及び任意選択による第3の可変ドメイン、ここで、第2の可変ドメインと第3の可変ドメインとは第1の抗原結合ドメインを形成する)、及び候補と第2の可変ドメインとの間に配置されたFcドメイン又はその一部を含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸を作製するステップ、
(ii)第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された重鎖又は軽鎖候補可変ドメイン(V)の他方を含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸を作製するステップであって、重鎖及び軽鎖候補可変ドメインが第2の抗原結合ドメインを形成する、ステップ、及び
(iii)それぞれ第1及び第2のポリペプチド鎖をコードする前記核酸を宿主細胞で発現させて、前記第1及び第2のポリペプチド鎖を含むタンパク質を産生し、且つヘテロ二量体タンパク質を回収するステップ
によって作製するステップ、及び
c)産生された複数のヘテロ二量体タンパク質を目的の生物学的活性、例えば、本明細書に開示される活性について評価するステップ
を含む。一実施形態では、第1の抗原結合ドメインが、免疫エフェクター細胞の表面のポリペプチドに結合し、第2の抗原結合ドメインが腫瘍抗原、ウイルス抗原、又は細菌抗原に結合し、任意選択により、第1の抗原結合ドメインはscFvである。任意選択により、産生されたヘテロ二量体タンパク質は、精製前に得られた総タンパク質の少なくとも20%、25%、又は30%を占める。任意選択により、(iii)の回収するステップは、産生されたタンパク質を親和性精製支持体、任意選択により親和性交換カラム、任意選択によりプロテインA支持体又はカラムにローディングし、且つヘテロ二量体タンパク質を収集するステップ、及び/又は産生されたタンパク質(例えば、親和性交換若しくはプロテインAカラムにローディングした後に収集されたタンパク質)をイオン交換カラムにローディングし、且つヘテロ二量体画分を収集するステップを含む。
【0051】
一実施形態では、ヘテロ三量体タンパク質(例えば、本明細書に記載の任意のヘテロ三量体タンパク質)を産生する方法が提供され、この方法は、
(a)本明細書に記載の第1のポリペプチド鎖(例えば、第1のCH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン、及び第1の(V−CH1/CK)単位と第2の(V−CH1/CK)単位との間に配置されたFcドメイン若しくはその一部を含むポリペプチド鎖)をコードする第1の核酸を用意するステップ、
(b)本明細書に記載の第2のポリペプチド鎖(例えば、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成して、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチドの可変ドメインとが抗原結合ドメインを形成するように、第1のポリペプチド鎖の第1のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された可変ドメイン(V)を含むポリペプチド鎖)をコードする第2の核酸を用意するステップ、
(c)本明細書に記載の第3のポリペプチド鎖(例えば、そのC末端でCH1又はCK定常領域に融合された可変ドメインを含むポリペプチド鎖であって、このCH1又はCK定常領域が、第1のポリペプチドと第3のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成して、第1のポリペプチドの第2の可変ドメインと第3のポリペプチドの可変ドメインとが抗原結合ドメインを形成するように、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメイン及び第2のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択される、ポリペプチド鎖)を含む第3の核酸を用意するステップ、及び
(d)それぞれ前記第1、第2、及び第3の核酸を宿主細胞で発現させて、前記第1、第2、及び第3のポリペプチド鎖を含むタンパク質を産生し、且つヘテロ三量体タンパク質を回収するステップ
を含む。任意選択により、産生されたヘテロ三量体タンパク質は、精製前の総タンパク質の少なくとも20%、25%、又は30%を占める。任意選択により、ステップ(d)は、産生されたタンパク質を親和性精製支持体、任意選択により親和性交換カラム、任意選択によりプロテインA支持体又はカラムにローディングし、且つヘテロ三量体タンパク質を回収するステップ、及び/又は産生されたタンパク質(例えば、親和性交換又はプロテインAカラムにローディングした後に収集されたタンパク質)をイオン交換カラムにローディングし、且つヘテロ三量体画分を収集するステップを含む。任意選択により、抗原結合ドメインの一方は、免疫エフェクター細胞の表面のポリペプチドに結合し、他方は目的の抗原に結合する。一実施形態では、第2又は第3のポリペプチドは、(例えば、ヒンジドメイン又はリンカーを介して)CH1又はCKドメインのC末端に融合されたFcドメイン若しくはその断片をさらに含む。一実施形態では、第1のポリペプチドの第2の可変ドメインと第3のポリペプチドの可変ドメインとは、免疫エフェクター細胞の表面のポリペプチドに結合する抗原結合ドメインを形成する。
【0052】
一態様では、本開示は、ヘテロ三量体タンパク質に使用される候補可変領域を特定又は評価する方法を提供し、この方法は、
a)複数の核酸対を用意するステップであって、各対が、(例えば、同じ又は異なる目的の抗原に結合する異なる抗体から得られる)複数の重鎖及び軽鎖可変領域対のそれぞれについて、重鎖候補可変領域をコードする1つの核酸及び軽鎖候補可変領域をコードする1つの核酸を含む、ステップ、
b)複数の核酸対のそれぞれについて、ヘテロ三量体タンパク質を、
(i)第1のCH1又はCK定常領域に融合された重鎖又は軽鎖候補可変ドメイン(V)の一方、第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン、及び第1の(V−CH1/CK)単位と第2の(V−CH1/CK)単位との間に配置されたFcドメイン若しくはその一部を含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸を作製するステップ、
(ii)第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖の第1のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された重鎖又は軽鎖候補可変ドメイン(V)の他方を含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸を作製するステップであって、重鎖及び軽鎖候補可変ドメインが抗原結合ドメインを形成する、ステップ、
(ii)第3のポリペプチド鎖であって、そのC末端でCH1又はCK定常領域に融合された可変ドメインを含む第3のポリペプチド鎖をコードする第3の核酸を作製するステップであって、このCH1又はCK定常領域が、第1のポリペプチドと第3のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ二量体を形成して、第1のポリペプチドの第2の可変ドメインと第3のポリペプチドの可変ドメインとが抗原結合ドメインを形成するように、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメイン及び第2のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択される、ステップ、及び
(iii)それぞれ第1及び第2のポリペプチド鎖をコードする前記核酸を宿主細胞で発現させて、前記第1及び第2のポリペプチド鎖を産生し、且つヘテロ二量体タンパク質を回収するステップ
によって作製するステップ、及び
c)産生された複数のヘテロ二量体タンパク質を目的の生物学的活性、例えば、本明細書に開示される活性について評価するステップ
を含む。一実施形態では、第2又は第3のポリペプチドは、(例えば、ヒンジドメイン又はリンカーを介して)CH1又はCKドメインのC末端に融合されたFcドメイン若しくはその断片をさらに含む。任意選択により、産生されたヘテロ三量体タンパク質は、精製前に得られた総タンパク質の少なくとも20%、25%、又は30%を占める。任意選択により、(iii)の回収するステップは、産生されたタンパク質を親和性精製支持体、任意選択により親和性交換カラム、任意選択によりプロテインA支持体又はカラムにローディングし、且つヘテロ三量体タンパク質を収集するステップ、及び/又は産生されたタンパク質(例えば、親和性交換若しくはプロテインAカラムにローディングした後に収集されたタンパク質)をイオン交換カラムにローディングし、且つヘテロ三量体画分を収集するステップを含む。
【0053】
候補可変領域を特定又は評価する方法では、候補可変領域は、例えば、免疫エフェクター細胞の表面のポリペプチドに結合する抗体から、又は目的の抗原、例えば、腫瘍、細菌、又はウイルス抗原に結合する抗体からとすることができる。候補可変領域が、腫瘍、細菌、又はウイルス抗原に対する抗体からである場合、他方の可変領域は、免疫エフェクター細胞の表面のポリペプチドに結合する抗体からとすることができ、それにより、有効であると決定された抗エフェクター細胞ABDとの関連で試験されるべき腫瘍、細菌、又はウイルス抗原に対する抗体のパネルが可能となる。また、候補可変領域対及び他の可変領域対のそれぞれのABDの位置を逆にできることも理解されたい。例えば、三量体タンパク質では、この方法は、重鎖及び軽鎖候補可変ドメインが、第1のポリペプチドの第2のV領域及び第2のポリペプチドのV領域によって形成され、他方の可変領域対が、第1のポリペプチドの第1のV領域及び第3のポリペプチドのV領域によって形成されるように変更することができる。
【0054】
一態様では、本開示は、ヘテロ多量体タンパク質に使用される候補タンパク質の構造を特定又は評価する方法を提供し、この方法は、
本開示の、ドメイン配置が異なる複数の多重特異的タンパク質を別個に(例えば、別の容器で)産生するステップ、及び
産生された複数のヘテロ多量体タンパク質を目的の生物学的活性、例えば、本明細書に開示の活性について評価するステップ
を含む。一実施形態では、異なるドメイン配置を有するタンパク質は、目的の第1及び/又は第2の抗原について抗原結合ドメイン(例えば、同じCDR又は可変ドメイン)を共有する。一実施形態では、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又はそれを超える異なるタンパク質が産生され、評価される。一実施形態では、タンパク質の1つ以上(又は全て)が、本明細書に開示のドメイン配置を有するタンパク質、例えば、形態F2、F5、F6、F7、F8、F9、F10、F11、F12、F13、F14、F15、F16、及びF17のタンパク質の群から選択される。一実施形態では、タンパク質は、本明細書に開示の方法に従って産生される。
【0055】
一態様では、本開示は、少なくとも5つ、10、20、30、50の本開示のヘテロ多量体タンパク質のライブラリーを提供し、これらのタンパク質は、ドメイン配置を共有するが、それらの抗原結合ドメインの一方又は両方の可変ドメインのアミノ酸配列が異なる。
【0056】
一態様では、本開示は、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は10の本開示のヘテロ多量体タンパク質のライブラリーを提供し、これらのタンパク質は、それらの抗原結合ドメインの一方又は両方の可変ドメインのアミノ酸配列を共有するが、ドメイン配置が異なる。
【0057】
一実施形態では、第1のポリペプチドの第2の可変ドメインと第3のポリペプチドの可変ドメインとは、エフェクター細胞上の活性化受容体に結合する抗原結合ドメインを形成する。一実施形態では、ヘテロ二量体又はヘテロ三量体タンパク質を目的の特徴について評価するステップは、タンパク質を目的の抗原への結合性、FcRn受容体に対する結合性、Fcγ受容体に対する結合性、Fcドメイン媒介エフェクター機能、多量体タンパク質が結合するポリペプチドでのアゴニスト又はアンタゴニスト活性、目的の抗原を発現する細胞の活性(例えば、この細胞死を引き起こす)を調節する能力、目的の抗原を発現する細胞にリンパ球を誘導する能力、目的の抗原を発現する細胞の存在下及び/又は非存在下でリンパ球を活性化する能力、標的細胞の非存在下ではなく存在下でのリンパ球(例えば、T細胞又はNK細胞)の活性化、目的の抗原に陰性のリンパ球の活性化の欠如、in vitro又はin vivoでの安定性又は半減期、産生収率、組成物内の純度、及び溶液中での凝集のしやすさからなる群から選択される1つ以上の特性について評価する。
【0058】
一態様では、本開示は、ヘテロ多量体タンパク質を特定又は評価する方法を提供し、この方法は、
(a)本明細書に記載のヘテロ多量体タンパク質をコードする核酸を用意するステップ、
(b)それぞれ前記核酸を宿主細胞で発現させて、前記タンパク質を産生し、且つ前記タンパク質を回収するステップ、及び
(c)産生されたタンパク質を目的の生物学的活性、例えば、本明細書に開示の活性について評価するステップ
を含む。一実施形態では、複数の異なるタンパク質が産生され、評価される。
【0059】
一実施形態では、このタンパク質は、エフェクター細胞上の活性化受容体及び目的の抗原に結合し、及びステップ(c)は、
(i)(目的の抗原を発現する)標的細胞の存在下で、活性化受容体を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、タンパク質がこのようなエフェクター細胞を活性化させる能力を試験するステップ
を含む。任意選択により、ステップ(i)の後に、前記エフェクター細胞を活性化するタンパク質を(例えば、さらなる開発のため、薬剤としての使用のために)選択するステップを含む。
【0060】
一実施形態では、このタンパク質は、エフェクター細胞上の活性化受容体及び目的の抗原に結合し、及びステップ(c)は、
(i)(目的の抗原を発現する)標的細胞の非存在下で、活性化受容体を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、タンパク質がこのようなエフェクター細胞を活性化させる能力を試験するステップ
を含む。任意選択により、ステップ(i)の後に、前記エフェクター細胞を実質的に活性化しないタンパク質を(例えば、さらなる開発のため、薬剤としての使用のために)選択するステップを含む。
【0061】
一実施形態では、このタンパク質は、エフェクター細胞上の活性化受容体及び目的の抗原に結合し、及びステップ(c)は、
(i)(目的の抗原を発現する)標的細胞の存在下で、活性化受容体を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、タンパク質がこのようなエフェクター細胞を活性化させる能力を試験するステップ、及び
(ii)(目的の抗原を発現する)標的細胞の非存在下で、活性化受容体を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、タンパク質がこのようなエフェクター細胞を活性化させる能力を試験するステップ
を含む。任意選択により、この方法は、標的細胞の非存在下でインキュベートされたときに前記エフェクター細胞を実質的に活性化せず、且つ標的細胞の存在下でインキュベートされたときに前記エフェクター細胞を活性化するタンパク質を(例えば、さらなる開発のため、薬剤としての使用のために)選択するステップをさらに含む。
【0062】
一実施形態では、このタンパク質は、エフェクター細胞上の活性化受容体及び目的の抗原に結合し、及びステップ(c)は、
(i)(目的の抗原を発現する)標的細胞の存在下で、活性化受容体を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、ポリペプチドが、このようなエフェクター細胞に(目的の抗原を発現する)標的細胞を溶解させる能力を試験するステップ
を含む。任意選択により、ステップ(i)の後に、標的細胞の存在下で、活性化受容体を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、このようなエフェクター細胞に標的細胞を溶解させるタンパク質を(例えば、さらなる開発のため、薬剤としての使用のために)選択するステップを含む。
【0063】
一実施形態では、このタンパク質は、エフェクター細胞上の活性化受容体及び目的の抗原に結合し、及びステップ(c)は、
(i)標的細胞の存在下で、CD16を発現するが活性化受容体は発現しないエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、このようなエフェクター細胞を活性化させるタンパク質の能力を試験するステップ
を含む。任意選択により、ステップ(i)の後に、標的細胞の存在下で前記エフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、このようなエフェクター細胞を実質的に活性化しないタンパク質を(例えば、さらなる開発のため、薬剤としての使用のために)選択するステップを含む。
【0064】
一態様では、本明細書に記載の化合物又は組成物及び薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物が提供される。
【0065】
一態様では、疾患の処置用の薬剤としての、上記請求項のいずれか1つのポリペプチド又は組成物の使用が提供される。
【0066】
一態様では、対象の疾患を処置する方法であって、本明細書に記載の化合物又は組成物を対象に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0067】
一実施形態では、疾患は、癌又は感染疾患である。
【0068】
これらのいずれの方法も、特に「発明を実施するための形態」の任意のステップを含め、本明細書に記載の任意のステップを含むとしてさらに特徴付けることができる。本発明はさらに、任意の本方法によって得ることができるタンパク質に関する。本開示はさらに、本発明の抗体の薬剤又は診断剤に関する。本開示はさらに、処置又は診断の方法における抗体の使用方法に関する。
【0069】
本発明のこれら及びさらなる有利な態様及び特徴は、本明細書の他の部分にさらに記載され得る。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】抗原結合ドメイン(ABD又はABD)の一方がNKp46に特異的に結合し、且つABDの他方が目的の抗原に結合する多重特異的ポリペプチドの2つの例を示し、左側の図は、直列型scFvを有し、右側の図は、間にFcドメインが配置された2つのABDを有する。
図2】本明細書の実施例で使用される抗CD19−F1−抗NKp46の概略図を示す。CH2ドメインの星は任意選択のN297S変異を示す。
図3】抗CD19−抗NKp46−IgG1−Fcmonoの概略図を示す。scFv直列型構築物のために、抗NKp46 VKドメイン(C末端)が、規則的なVK−CK L型接合部(regular VK−CK elbow junction)を模倣したリンカーペプチド(RTVA)を用いてCH2ドメイン(N末端)に連結されている。
図4】抗CD19−F1−抗CD3が、分離されているときは、B221(CD19)又はJURKAT(CD3)細胞株の存在下でT/B細胞の凝集を引き起こさないが、B221及びJURKAT細胞の両方が共にインキュベートされたときに細胞の凝集を引き起こすことを示す。
図5】抗CD19−F1−抗CD3が、2:1の比率(各抗体に対して2つのFcRn)でFcRnに結合するヒトIgG1定常領域(KD=15.4nM)を有するキメラ完全長抗体と比較して、1:1の比率(各単量体Fcに対して1つのFcRn)でFcRNとの結合(KD=194nM)を維持することを示す。
図6A-6E】作製される二重特異タンパク質の異なるドメイン配置を示す。
図7A-7B】それぞれNKp46−1、NKp46−2、NKp46−3、又はNKp46−4をベースとするNKp46結合領域を有する二重特異的F1及びF2抗体を示し、これらの抗体は、静止NK細胞をそれらのCD19陽性Daudi腫瘍標的細胞に誘導することができ、アイソタイプ対照抗体は、Daudi細胞の除去をもたらさなかった。リツキシマブ(RTX)は、ADCCの陽性対照としての役割を果たし、RTX(このアッセイでは10μg/ml)で得られた最大応答は、21.6%の特異的溶解であった。
図8A-8C】図8A(上のパネルがCD107、下のパネルがCD69)は、F2形態のタンパク質におけるNKp46及びCD19結合領域を有する二重特異的抗体が標的細胞の非存在下で静止NK細胞を活性化しないが、完全長抗NKp46抗体及び陽性対照アレムツズマブがNK細胞を活性化したことを示す。図8B(上のパネルがCD107、下のパネルがCD69)は、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46−1、NKp46−2、NKp46−3、又はNKp46−4の結合ドメインのそれぞれを含む)がDaudi標的細胞の存在下で静止NK細胞を活性化したが、完全長抗CD19が最良でも非常に低いNK細胞の活性化を示したことを示す。完全長抗NKp46抗体もアレムツズマブも、NK細胞のみの存在下で観察された活性化を実質的に超える活性化を示さなかった。図8C(上のパネルがCD107、下のパネルがCD69)は、CD19陰性HUT78細胞の存在下で、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46−1、NKp46−2、NKp46−3、又はNKp46−4の可変領域のそれぞれを含む)のいずれもNK細胞を活性化しなかったことを示す。しかしながら、完全長抗NKp46抗体及びアレムツズマブは、NK細胞のみの存在下で観察された同様のレベルで、NK細胞の検出可能な活性化を引き起こした。アイソタイプ対照抗体は、活性化を誘導しなかった。
図9】1:1の低いエフェクター:標的の比率では、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体のそれぞれは、Daudi細胞の存在下でNK細胞を活性化させ、及び二重特異的抗NKp46x抗CD19が、ADCC誘導抗体としての完全長ヒトIgG1のような抗CD19抗体よりも遥かに効力があったことを示す。上のパネルはCD107であり、下のパネルはCD69を示す。
図10】各NKp46×CD19二重特異的タンパク質(一本鎖形態F3、並びに多量体形態F5及びF6)は、ヒトKHYG−1 CD16陰性hNKp46陽性NK細胞株によってDaudi細胞(図10A)又はB221細胞(図10B)の特異的溶解を誘導したが、リツキシマブ及びヒトIgG1アイソタイプ対照(IC)抗体はそうではなかったことを示す。
図11】カニクイザル(Macaca fascicularis)組換えFcgR(上のグラフ;CyCD64、CyCD32a、CYCD32b、CyCD16)及びヒト組換えFcgR(下のグラフ;HuCD64、HuCD32a、HuCD32b、HUCD16a)の固定化ヒトIgG1対照(灰色)及び単量体Fcドメインを有するCD19/NKp46−1二重特異的抗体(黒色)に対する結合性を示す重畳センサーグラムを示す。完全長野生型ヒトIgG1は、全てのカニクイザル及びヒトFcγ受容体に結合したが、CD19/NKp46−1単量体Fc二重特異的抗体は、いずれの受容体にも結合しなかった。
図12A-12B】図12Aは、DART及びBITEと比較した、タンパク質形態6(F6)のSECによる精製の結果を示す。BITE及びDARTは、F6と比較して非常に低い産生収率を示し、極めて複雑なSECプロフィールを有する。図12Bは、予想SEC画分でのクマーシー染色後のSDS−PAGEを示し(BITEの3及び4並びにDARTの4及び5)、F6形態は、主ピーク(画分3)が単量体二重特異的タンパク質を含む明確且つ単純なSEC及びSDS−PAGEプロフィールを示した。
【発明を実施するための形態】
【0071】
定義
本明細書で使用される「1つの(a)」又は「1つの(an)」は1つ以上を意味し得る。請求項において「含む(comprising)」という語と共に使用される場合、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語は1つ又は2つ以上を意味し得る。
【0072】
「含む(comprising)」が使用される場合、これは、任意選択により「本質的に〜からなる(essentially consisting of)」で置き換えることができ、さらに任意選択により「〜からなる(consisting of)」に置き換えることができる。
【0073】
本明細書で使用される「抗原結合ドメイン」という語は、エピトープに免疫特異的に結合することができる3次元構造を含むドメインを指す。従って、一実施形態では、前記ドメインは、超可変領域、任意選択により抗体鎖のVH及び/又はVLドメイン、任意選択により少なくとも1つのVHドメインを含み得る。別の実施形態では、結合ドメインは、抗体鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み得る。別の実施形態では、結合ドメインは、非免疫グロブリン足場からのポリペプチドドメインを含み得る。
【0074】
本明細書の「抗体」という語は、広い意味で使用され、特に、完全長モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、並びに抗体断片及び誘導体(但し、所望の生物学的活性を示すものに限られる)を含む。抗体の作製に適切な様々な技術が、例えば、Harlow,et al.,ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1988)に示されている。「抗体断片」は、完全長抗体、例えば、その抗原結合領域又は可変領域の一部を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’)、F(ab)、Fv(典型的には、抗体の単一アームのVL及びVHドメイン)、一本鎖Fv(scFv)、dsFv、Fd断片(典型的には、VH及びCH1ドメイン)、及びdAb(典型的には、VHドメイン)断片;VH、VL、VhH、及びV−NARドメイン;ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及びカッパボディ(例えば、Ill et al.,Protein Eng 1997;10:949−57を参照されたい);ラクダIgG;IgNAR;並びに抗体断片から形成された多重特異的抗体断片、及び1つ以上の単離されたCDR又は機能的パラトープが挙げられ、単離されたCDR又は抗原結合残基若しくはポリペプチドは、機能的抗体断片を形成するように1つに結合又は連結され得る。様々なタイプの抗体断片が、例えば、Holliger and Hudson,Nat Biotechnol 2005;23,1126−1136;国際公開第2005040219号パンフレット、及び米国特許出願公開第20050238646号明細書及び同第20020161201号明細書に記載され、再考察されている。
【0075】
本明細書で使用される「抗体誘導体」という語は、完全長抗体、又は例えばその少なくとも抗原結合領域又は可変領域を含む抗体の断片を含み、1つ以上のアミノ酸が、例えば、アルキル化、PEG化、アシル化、エステル形成、又はアミド形成などによって化学修飾されている。これは、限定されるものではないが、PEG化抗体、システイン−PEG化抗体、及びこれらの変異体を含む。
【0076】
「超可変領域」という語は、本明細書で使用される場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」又は「CDR」のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)、及び89−97(L3)並びに重鎖可変ドメインの残基31−35(H1)、50−65(H2)、及び95−102(H3);Kabat et al.1991)、及び/又は「超可変ループ」のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)、及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、53−55(H2)、及び96−101(H3);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol 1987;196:901−917)を含む。典型的には、この領域のアミノ酸残基の付番は、前出のKabatらに記載の方法によって行われる。本明細書の「Kabat位置」、「Kabatと同様の可変ドメイン残基の付番」、及び「Kabatによる」などの句は、重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインについてのこの付番方式を指す。Kabat付番方式を用いると、ペプチドの実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDRの短縮又はFR又はCDRへの挿入に一致するより少ない又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、CDR H2の残基52の後の単一アミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)及び重鎖FR残基82の後の挿入残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。残基のKabat付番は、抗体の配列の相同領域と「基準」Kabat付番配列とのアラインメントによって所与の抗体について決定することができる。
【0077】
本明細書で使用される「フレームワーク」又は「FR」残基とは、CDRとして定義される部分を除く抗体可変ドメインの領域のことである。各抗体可変ドメインフレームワークは、CDRによって分離された連続した領域にさらに細分することができる(FR1、FR2、FR3、及びFR4)。
【0078】
本明細書で定義される「定常領域」とは、軽鎖又は重鎖免疫グロブリン定常領域遺伝子の1つによってコードされる抗体由来定常領域のことである。本明細書で使用される「定常軽鎖」又は「軽鎖定常領域」とは、κ(Cκ)又はλ(Cλ)軽鎖によってコードされる抗体の領域のことである。定常軽鎖は、典型的には、単一ドメインを含み、且つ本明細書で定義されるように、Cκの108〜214位、又はCλを指し、付番は、EUインデックスによる((Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda)。本明細書で使用される「定常重鎖」又は「重鎖定常領域」とは、μ、δ、γ、α、又はε遺伝子によってそれぞれコードされてIgM、IgD、IgG、IgA、又はIgEとして抗体のアイソタイプを確定する抗体の領域のことである。完全長IgG抗体では、本明細書で定義される定常重鎖は、CH1ドメインのN末端からCH3ドメインのC末端までを指し、従って118〜447位を含み、付番は、EUインデックスによる。
【0079】
本明細書で使用される「Fab」又は「Fab領域」とは、VH、CH1、VL、及びCL免疫グロブリンドメインを含むポリペプチドのことである。Fabは、分離されたこの領域、又はポリペプチド、多重特異的ポリペプチド、若しくはABD、又は本明細書で概説されたその他の実施形態との関連でのこの領域を指し得る。
【0080】
本明細書で使用される「一本鎖Fv」又は「scFv」とは、抗体のVH及びVLドメインを含む抗体断片のことであり、これらのドメインは、単一ポリペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、scFvが、抗原結合のための所望の構造を形成できるようにする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvを作製する方法は当技術分野で周知である。scFvを作製する方法の再考察については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。
【0081】
本明細書で使用される「Fv」、又は「Fv断片」、又は「Fv領域」とは、単一抗体のVL及びVHドメインを含むポリペプチドのことである。
【0082】
本明細書で使用される「Fc」又は「Fc領域」とは、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除く、抗体の定常領域を含むポリペプチドのことである。従って、Fcは、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、並びにIgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、並びに可撓性ヒンジN末端からこれらのドメインまでを指す。IgA及びIgMでは、FcはJ鎖を含み得る。IgGでは、Fcは、免疫グロブリンドメインCγ2(CH2)及びCγ3(CH3)、並びにCγ1とCγ2との間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、残基C226、P230、又はA231からそのカルボキシ末端までを含むように定義され、この付番はEUインデックスによる。Fcは、以下に記載される、分離されたこの領域、又はFcポリペプチドとの関連でのこの領域を指し得る。本明細書で使用される「Fcポリペプチド」又は「Fc由来ポリペプチド」とは、Fc領域の全て又は一部を含むポリペプチドのことである。Fcポリペプチドは、限定されるものではないが、抗体、Fc融合体、及びFc断片を含む。
【0083】
本明細書で使用される「可変領域」とは、それぞれ軽鎖(κ及びλを含む)免疫グロブリン遺伝子座及び重鎖免疫グロブリン遺伝子座を構成するVL(Vκ及びVλを含む)遺伝子及び/又はVH遺伝子のいずれかによって実質的にコードされる1つ以上のIgドメインを含む抗体の領域のことである。軽鎖可変領域又は重鎖可変領域(VL及びVH)は、「相補性決定領域」又は「CDR」と呼ばれる3つの超可変領域によって中断された「フレームワーク」又は「FR」領域からなる。フレームワーク領域及びCDRとの関連では、例えば、Kabatと同様に(“Sequences of Proteins of Immunological Interest,” E.Kabat et al.,U.S.Department of Health and Human Services,(1983)を参照されたい)、及びChothiaと同様に正確に定義されている。抗体のフレームワーク領域、即ち、構成軽鎖及び構成重鎖の組み合わせフレームワーク領域は、CDRを配置して整列させる役割を果たし、CDRは抗原への結合に主に関与する。
【0084】
「特異的に結合する」という語は、抗体又はポリペプチドを、タンパク質の組換え形態、その中のエピトープ、又は単離された標的細胞の表面に存在するナイーブタンパク質のいずれかを用いて評価される、好ましくは競合的結合アッセイでの結合パートナーに結合できることを意味する。競合的結合アッセイ及び特異的結合を決定する他の方法は、以下にさらに記載され、当技術分野で周知である。
【0085】
本明細書で使用される「親和性」という語は、抗体又はポリペプチドのエピトープへの結合の強さを指す。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab−Ag]として定義される解離定数Kによって示され、[Ab−Ag]は抗体−抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は非結合抗体のモル濃度であり、及び[Ag]は非結合抗原のモル濃度である。親和定数Kは1/Kによって定義される。mAbの親和性の決定に好ましい方法は、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられるHarlow,et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988),Coligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)、及びMuller,Meth.Enzymol.92:589−601(1983)に記載されている。mAbの親和性を決定するための当技術分野で周知の1つの好ましい標準的な方法では、(例えば、BIAcore(商標)SPR分析装置での分析によって)表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニングを使用する。
【0086】
本明細書の「アミノ酸改変」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入、及び/又は欠失のことである。本明細書のアミノ酸改変の一例は置換である。本明細書の「アミノ酸改変」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入、及び/又は欠失のことである。本明細書の「アミノ酸置換」又は「置換」とは、タンパク質配列の所与の位置のアミノ酸の別のアミノ酸での置換のことである。例えば、置換Y50Wは、親ペプチドの変異体を指し、50位のチロシンがトリプトファンで置換されている。ポリペプチドの「変異体」は、基準ポリペプチド、典型的にはナイーブ又は「親」ポリペプチドと実質的に同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。ポリペプチド変異体は、ナイーブアミノ酸配列内の特定の位置に1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を有し得る。
【0087】
「保存的な」アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、同様の物理化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるアミノ酸置換である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で公知であり、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。
【0088】
2つ以上のポリペプチドの配列間の関係で使用される「同一性」又は「同一の」という語は、2つ以上のアミノ酸残基のストリング間の一致の数によって決定される、ポリペプチド間の配列関連性の程度を指す。「同一性」は、特定の計算モデル又はコンピュータープログラム(即ち、「アルゴリズム」)によって行われる、(存在する場合)ギャップアライメントを用いた同様の2つ以上の配列間の完全な一致のパーセントを示す。関連ポリペプチド間の同一性は、公知の方法によって容易に計算することができる。このような方法としては、限定されるものではないが、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M.Stockton Press,New York,1991;and Carillo et al.,SIAM J.Applied Math.48,1073(1988)に記載の方法が挙げられる。
【0089】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間の最大の一致を得るように設計されている。同一性を決定する方法は、公表されているコンピュータープログラムに記載されている。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータープログラム方法は、GAP(Devereux et al.,Nucl.Acid.Res.12,387(1984);Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.)、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215,403−410(1990))を含め、GCGプログラムパッケージを含む。BLASTXプログラムは、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)及び他の情報源(BLAST Manual,Altschul et al.NCB/NLM/NIH Bethesda,Md.20894;Altschul et al.,前出)から公表されている。周知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性の決定に使用することができる。
【0090】
「単離された」分子は、組成物中の主な種である分子であり、この組成物中では、この分子は、この分子が属する分子のクラスに対して見出される(即ち、単離された分子は、組成物中の分子のタイプの少なくとも約50%を構成し、典型的には、組成物中の分子、例えば、ペプチドの種の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%以上を構成する)。通常、ポリペプチドの組成は、組成物中に存在する全てのペプチド種との関連でのポリペプチドに対して、又は少なくとも提案される使用との関連での実質的に活性なペプチド種に対して98%、98%、又は99%の均一性を示す。
【0091】
本明細書に関連して、「処置」又は「処置する」は、反対の旨の記載がない限り、疾患又は障害の1つ以上の症状又は臨床的に関連する兆候を予防すること、緩和すること、管理すること、治癒すること、又は軽減することを指す。例えば、疾患又は障害の症状又は臨床的に関連する兆候が確認されていない患者の「処置」は、防止又は予防療法であり、疾患又は障害の症状又は臨床的に関連する兆候が確認された患者の「処置」は、一般に、防止又は予防療法とはならない。
【0092】
本明細書で使用される「NK細胞」は、従来にない免疫に関与するリンパ球の亜集団を指す。NK細胞は、特定の特徴及び生物学的特性、例えば、ヒトNK細胞のCD56及び/又はNKp46を含む特定の表面抗原の発現、細胞表面のα/β又はγ/δTCR複合体の非存在、特定の細胞溶解装置の活性化によって「自己」MHC/HLA抗原を発現することができない細胞に結合してその細胞を殺す能力、NK活性化受容体のリガンドを発現する腫瘍細胞又は他の異常細胞を殺す能力、及び免疫応答を刺激又は抑制するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力によって特定することができる。これらの特徴及び活性のいずれかを用いて、当技術分野で周知の方法でNK細胞を特定することができる。NK細胞のいかなる亜集団もNK細胞という語に包含される。本明細書に関連して、「活性な」NK細胞は、標的細胞を溶解する又は他の細胞の免疫機能を促進する能力を有するNK細胞を含む生物学的に活性なNK細胞を指す。NK細胞は、当技術分野で公知の様々な技術、例えば、血液サンプルからの単離、細胞吸着除去療法、組織又は細胞の収集などによって得ることができる。NK細胞を伴うアッセイの有用なプロトコルは、Natural Killer Cells Protocols(edited by Campbell KS and Colonna M).Human Press.pp.219−238(2000)に記載されている。
【0093】
本明細書で使用される「T細胞」とは、胸腺で成熟し、いくつかある分子のなかでもT細胞受容体をその表面に提示するリンパ球の亜集団を指す。T細胞は、特定の特徴及び生物学的特性、例えば、TCR、CD4、又はCD8を含む特定の表面抗原の発現、腫瘍又は感染細胞を殺す特定のT細胞の能力、免疫系の他の細胞を活性化させる特定のT細胞の能力、及び免疫反応を刺激若しくは抑制するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力によって特定することができる。これらの任意の特徴及び活性を使用して、当技術分野で周知の方法でT細胞を特定することができる。本明細書との関連では、「活性」又は「活性化」T細胞は、生物学的に活性なT細胞、特に、細胞溶解能力、又は、例えば分泌サイトカインにより免疫応答を刺激する能力を有するT細胞を指す。活性細胞は、機能的アッセイ、及び、例えば、TNF−αなどのサイトカインの発現を用いるアッセイを含め、多数の周知の方法のいずれかで検出することができる。
【0094】
ポリペプチドの産生
本明細書に記載の抗原結合ドメインは、様々な免疫グロブリン又は非免疫グロブリン足場、例えば、ブドウ球菌プロテインAのZドメインをベースとしたアフィボディ、エンジニアリングされたKunitzドメイン、ヒトフィブロネクチンIIIの第10細胞外ドメインをベースとしたモノボディ又はアドネクチン、リポカリンに由来するアンチカリン、DARPin(設計アンキリン反復ドメイン、多量体化LDLR−Aモジュール、アビマー、又はシステインリッチknottinペプチド)から容易に得ることができる。例えば、参照により開示内容が本明細書に組み入れられる、Gebauer and Skerra(2009)Current Opinion in Chemical Biology 13:245−255を参照されたい。
【0095】
可変ドメインは、通常、抗体(免疫グロブリン鎖)に由来し、例えば、2つのポリペプチド鎖に存在する結合したVL及びVHドメイン、又は一本鎖抗原結合ドメイン、例えば、scFv、Vドメイン、Vドメイン、dAb、V−NARドメイン、又はVHドメインの形態である。可変ドメインはまた、Fabのような抗体から容易に得ることができる。
【0096】
典型的には、抗体は、最初は、抗体(例えば、ヒトポリペプチド)を得るのに望ましいポリペプチド、又は典型的には免疫原性断片であるその断片若しくは誘導体を含む免疫原を用いて、非ヒト動物、例えば、マウスの免疫によって得られる。非ヒト哺乳動物を抗原で免疫するステップは、マウスの抗体の産生を刺激するための当技術分野で周知の任意の方式で行うことができる(例えば、参照によりその全開示内容が本明細書に組み入れられるE.Harlow and D.Lane,Antibodies:A Laboratory Manual.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1988)を参照されたい)。免疫に使用される抗原に対する抗体を発現するB細胞を産生するのであれば、他のプロトコルも使用することができる。非免疫非ヒト哺乳動物からのリンパ球を単離し、in vitroで増殖させ、これを細胞培養で免疫原に曝露することもできる。次いで、リンパ球を回収し、以下に記載される融合ステップを行う。例示的なモノクローナル抗体では、次のステップは、免疫された非ヒト哺乳動物からの脾細胞の単離であり、続いて、抗体産生ハイブリドーマを産生するためのこれらの脾細胞の不死化細胞との融合である。次いで、ハイブリドーマコロニーを、抗体が望ましいポリペプチドに特異的に結合する抗体の産生についてアッセイした。アッセイは、典型的には、比色ELISA型アッセイであるが、ハイブリドーマが増殖されるウェルに適合させることができる任意のアッセイを利用することができる。他のアッセイとしては、ラジオイムノアッセイ又は蛍光活性化細胞分類が挙げられる。所望の抗体の産生に陽性なウェルを検査して、1つ以上の異なるコロニーが存在するか否かを決定する。2つ以上のコロニーが存在する場合、細胞を再びクローニングして、単一の細胞のみが、所望の抗体を産生するコロニーに生じるようになるように成長させることができる。所望のモノクローナル抗体を産生するまで十分に成長させたところで、モノクローナル抗体を含む成長培地(又は腹水)を細胞から分離し、そこに存在するモノクローナル抗体を精製する。精製は、典型的には、ゲル電気泳動法、透析、プロテインA若しくはプロテインGセファロースを用いるクロマトグラフィー、又は固体支持体、例えば、アガロース若しくはセファロースビーズに連結された抗マウスIgによって達成される(全てが、例えば、参照によりその全開示内容が本明細書に組み入れられるAntibody Purification Handbook,Biosciences,publication No.18−1037−46,Edition ACに記載されている)。
【0097】
ヒト抗体は、ヒト抗体レパートリーを発現するようにエンジニアリングされたトランスジェニック動物(Jakobovitz et Nature 362(1993)255)を免疫に用いることによって、又はファージ提示法を用いる抗体レパートリーの選択によって産生することもできる。例えば、XenoMouse(Abgenix,Fremont,CA)を免疫に使用することができる。XenoMouseは、その免疫グロブリン遺伝子が機能的なヒト免疫グロブリン遺伝子によって置き換えられたマウス宿主である。従って、このマウスによって、又はこのマウスのB細胞から産生されたハイブリドーマで産生される抗体は既にヒト化されている。XenoMouseは、参照によりその内容が本明細書に組み入れられる米国特許第6,162,963号明細書に記載されている。
【0098】
抗体はまた、例えば、(参照によりその全開示内容が本明細書に組み入れられるWard et al.Nature,341(1989)p.544)に開示されているように、免疫グロブリンの組み合わせライブラリーの選択によって産生することもできる。ファージ提示法(McCafferty et al(1990)Nature 348:552−553)を用いて、非免疫ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから抗体を産生することができる。例えば、Griffith et al(1993)EMBO J.12:725−734;米国特許第5565332号明細書;同第5573905号明細書;同第5567610号明細書;同第5229275号明細書を参照されたい。組み合わせライブラリーが、ヒト起源の可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーを含む場合、組み合わせライブラリーからの選択により、ヒト抗体が得られる。
【0099】
加えて、広範囲の抗体が、DNA及び/又はアミノ酸配列を含む化学文献及び特許文献で、又は民間供給業者から入手可能である。抗体は、典型的には、所定の抗原に対するものである。抗体の例としては、除去されるべき標的細胞、例えば、増殖細胞又は病理の原因となる細胞によって発現される抗原を認識する抗体が挙げられる。例としては、腫瘍抗原、微生物(例えば、細菌)抗原、又はウイルス抗原を認識する抗体が挙げられる。
【0100】
可変ドメイン及び/又は抗原結合ドメインは、所望の細胞標的に基づいて選択することができ、例えば、癌抗原、細菌抗原、又はウイルス抗原などを含み得る。本明細書で使用される「細菌抗原」という語は、限定されるものではないが、無傷細菌、弱毒細菌、若しくは死菌、あらゆる構造的若しくは機能的細菌タンパク質若しくは炭水化物、又は抗原性であるべき十分な長さ(典型的には、約8アミノ酸以上)の細菌タンパク質の任意のペプチド部分を含む。例としては、グラム陽性細菌抗原及びグラム陰性細菌抗原が挙げられる。一部の実施形態では、細菌抗原は、ヘリコバクター(Helicobacter)種、特にヘリコバクターピロリス(Helicobacter pyloris);ボレリア(Borelia)種、特にボレリア・ブルグドルフェリ(Borelia burgdorferi);レジオネラ(Legionella)種、特にレジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia);マイコバクテリア属(Mycobacteria s)種、特に結核菌(M.tuberculosis)、アビウム菌(M.avium)、イントラセルラ菌(M.intracellulare)、M.カンサシイ(M.kansasii)、M.ゴルドナエ(M.gordonae);ブドウ球菌(Staphylococcus)種、特に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus);ナイセリア(Neisseria)種、特に淋菌(N.gonorrhoeae)、髄膜炎菌(N.meningitidis);リステリア(Listeria)種、特にリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes);ストレプトコッカス(Streptococcus)種、特にS.ピオゲネス(S.pyogenes)、S.アガラクティエ(S.agalactiae)、S.ファエカリス(S.faecalis);S.ボビス(S.bovis)、肺炎連鎖球菌(S.pneumonias);嫌気性連鎖球菌(anaerobic Streptococcus)種;病原性カンピロバクター(pathogenic Campylobacter)種;エンテロコッカス(Enterococcus)種;ヘモフィルス(Haemophilus)種、特にヘモフィルスインフルエンザ(Haemophilus influenzue);バチルス(Bacillus)種、特に炭疽菌(Bacillus anthracis);コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、特にコリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheriae);エリジペロスリックス(Erysipelothrix)種、特にブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae);クロストリジウム(Clostridium)種、特にウェルシュ菌(C.perfringens)、破傷風菌(C.tetani);エンテロバクター(Enterobacter)種、特にエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、クレブシエラ(Klebsiella)種、特にクレブシエラ1Sニューモニエ(Klebsiella 1S pneumoniae)、パストレラ(Pasturella)種、特にパストレラ・マルトシダ(Pasturella multocida)、パスツレラ(Pasturella)種、特にパスツレラ・ムルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイデス(Bacteroides)種;フソバクテリウム(Fusobacterium)種、特にフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum);ストレプトバチルス(Streptobacillus)種、特にストレプトバチルス・モリホルミス(Streptobacillus moniliformis);トレポネーマ(Treponema)種、特にトレポネーマ(Treponema pertenue);レプトスピラ(Leptospira);病原性エシェリキア種(pathogenic Escherichia);及びアクチノマイセス(Actinomyces)種、特にアクチノミセス・イスラエリ(Actinomyces israelli)からなる群から選択される細菌に由来する。
【0101】
本明細書で使用される「ウイルス抗原」という語は、限定されるものではないが、無傷全ウイルス、弱毒全ウイルス、若しくは死滅全ウイルス、任意の構造的若しくは機能的ウイルスタンパク質、又は抗原性であるべき十分な長さ(典型的には、約8アミノ酸以上)のウイルスタンパク質の任意のペプチド部分を含む。ウイルス抗原の供給源としては、限定されるものではないが、レトロウイルス科(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、例えば、HIV−1(HTLV−III、LAV、又はHTLV−III/LAV、又はHIV−IIIとも呼ばれる;及び他の分離株、例えば、HIV−LP;ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス;ヒトコクサッキーウイルス;ライノウイルス、エコーウイルス);カルシウイルス科(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えば、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス);ブンヤウイルス科(例えば、ハンタウイルス、ブンヤウイルス、フレボウイルス、及びナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルス、及びロタウイルス);ボルナビリダエ科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス(殆どのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1及び2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科(バリオラウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);及びイリダウイルス科(例えば、アフリカブタ熱ウイルス);及び未分類ウイルス(例えば、デルタ肝炎の作用物質(B型肝炎ウイルスの欠陥サテライト(defective satellite)と考えられる)、C型肝炎;ノーウォーク及び関連ウイルス、及びアストロウイルス)の科からのウイルスが挙げられる。別法では、ウイルス抗原は、組換えにより作製することができる。
【0102】
本明細書で使用される「癌抗原」及び「腫瘍抗原」という語は、同義的に使用され、癌細胞によって差次的に発現される抗原を指し、従って、癌細胞を標的にするために利用することができる。癌抗原は、明らかに腫瘍特異的免疫応答を潜在的に刺激し得る抗原である。これらの抗原の一部は、正常細胞によってコードされるが、必ずしも発現されるものではない。これらの抗原は、正常細胞では通常サイレントである(即ち、発現されない)抗原、分化の特定の段階のみで発現される抗原、及び胚抗原及び胎児抗原のように一時的に発現される抗原として特徴付けることができる。他の癌抗原は、変異細胞遺伝子、例えば、癌遺伝子(例えば、活性化ras癌遺伝子)、サプレッサー遺伝子(例えば、突然変異p53)、内部欠失又は染色体転座から生じる融合タンパク質によってコードされる。さらに他の癌抗原は、ウイルス遺伝子、例えば、RNA及びDNA腫瘍ウイルスに保持されたウイルス遺伝子によってコードすることができる。
【0103】
癌抗原は、通常、過剰発現される又は異常な回数で発現される正常細胞の表面抗原である。理想的には、標的抗原は、増殖細胞(例えば、腫瘍細胞)のみで発現されるが、これは、実際には稀にのみ観察される。結果として、標的抗原は、通常、増殖組織と健康組織との間の差次的な発現に基づいて選択される。受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、Cripto、CD4、CD20、CD30、CD19、CD38、CD47、糖タンパク質NMB、CanAg、Her2(ErbB2/Neu)、CD22(Siglec2)、CD33(Siglec3)、CD79、CD138、CD171、PSCA、L1−CAM、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、BCMA、CD52、CD56、CD80、CD70、E−セレクチン、EphB2、メラノトランスフェリン、Mud6、及びTMEFF2を含む特定の腫瘍関連抗原を標的とする抗体が産生された。癌抗原の例としては、網羅するものではないが、B7−H3、B7−H4、B7−H6、PD−L1、MAGE、MART−1/Melan−A、gp100、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)−C017−1A/GA733、キラーIg様受容体3DL2(KIR3DL2)、タンパク質チロシンキナーゼ7(PTK7)、受容体タンパク質チロシンキナーゼ3(TYRO−3)、ネクチン(例えば、ネクチン−4)、主要組織適合複合体クラスI関連鎖A及びBポリペプチド(MICA及びMICB)、UL16結合タンパク質(ULBP)ファミリーのタンパク質、レチノイン酸初期transcript−1(RATE1)ファミリーのタンパク質、癌胎児抗原(CEA)及びその免疫原性エピトープCAP−1及びCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)、T細胞受容体/CD3ζ鎖、腫瘍抗原のMAGEファミリー、腫瘍抗原のGAGEファミリー、抗ミュラー管ホルモンII型受容体、δ様リガンド4(DLL4)、DR5、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、MUCファミリー、VEGF、VEGF受容体、アンジオポイエチン−2、PDGF、TGF−α、EGF、EGF受容体、ヒトEGF様受容体ファミリーのメンバー、例えば、HER−2/neu、HER−3、HER−4、又は少なくとも1つのHERサブユニットからなるヘテロ二量体受容体、ガストリン放出ペプチド受容体抗原、Muc−1、CA125、αvβ3インテグリン、α5β1インテグリン、αIIbβ3インテグリン、PDGFβ受容体、SVE−カドヘリン、IL−8、hCG、IL−6、IL−6受容体、IL−15、α−フェトプロテイン、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニン及びγ−カテニン、p120ctn、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、大腸線種様ポリープタンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig−イディオタイプ、p15、gp75、GM2及びGD2ガングリオシド、ウイルス産物、例えば、ヒトパピローマウイルスタンパク質、imp−1、P1A、EBVコード核抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SSX−5、SCP−1及びCT−7、及びc−erbB−2が挙げられる。
【0104】
一実施形態では、ABD、可変ドメイン、又は相補的な可変ドメインの対は、癌抗原、ウイルス抗原、微生物抗原、又は(例えば、ウイルス感染した)感染細胞若しくは炎症性免疫細胞上に存在する抗原に結合する。一実施形態では、前記抗原は、腫瘍細胞及び感染細胞若しくは炎症性細胞で選択的に発現される又は過剰発現されるポリペプチドである。一実施形態では、前記抗原は、阻害されると、腫瘍細胞、感染細胞、若しくは炎症性細胞の増殖及び/又は生存率を低下させるポリペプチドである。例えば、第1及び/又は第2の抗体若しくは断片は、それぞれ抗Her1及び抗Her2に結合することができる。抗Her2は、例えば、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)又は2C4(ペルツズマブ)に由来するCDRを含む抗体であり得る。抗Her2及び抗Her−1(抗体D1−5及びC3−101)アミノ酸配列は、国際公開第2011/069104号パンフレットに示されている。
【0105】
一実施形態では、ABD、可変ドメイン、又は相補的な可変ドメインの対は、特異的に結合するポリペプチドの機能を阻害(中和)する。一実施形態では、第1及び/又は第2のABDは、それぞれ特異的に結合するポリペプチドの機能を阻害する。一実施形態では、このポリペプチドは、腫瘍細胞で選択的に発現される又は過剰発現されるポリペプチドである。一実施形態では、このポリペプチドは、感染(例えば、ウイルス又は細菌感染)細胞又は炎症性細胞で選択的に発現される又は過剰発現されるポリペプチドである。一実施形態では、このポリペプチドは、阻害されると、腫瘍細胞、感染細胞、若しくは炎症性細胞の増殖及び/又は生存率を低下させるポリペプチドである。例えば、ErbB2及びErbB3に結合して、リガンド誘導受容体活性化をブロックする二重特異的抗体が、ErbB2増幅腫瘍に有効であることが報告された(MacDonagh et al.(2012)Mol.Cancer Ther.11:582)。
【0106】
例示的な実施形態では、一方のABD、可変ドメイン、又は相補的な可変ドメインの対は、除去されるべき標的細胞によって発現される抗原(例えば、腫瘍抗原、微生物(例えば、細菌)抗原、ウイルス抗原、又は亜炎症性疾患若しくは自己免疫疾患の一因である免疫細胞で発現される抗原)に結合し、及び他方のABD、可変ドメイン、又は相補的な可変ドメインの対は、免疫細胞、例えば、免疫エフェクター細胞で発現される抗原、例えば、エフェクター細胞、例えば、T細胞又はNK細胞の細胞表面受容体に結合する。免疫細胞、任意選択により免疫エフェクター細胞で発現される抗原の例として、ヒトリンパ細胞系統のメンバー、例えば、ヒトT細胞、ヒトB細胞、若しくはヒトナチュラルキラー(NK)細胞、ヒト単球、ヒト好中性顆粒球、又はヒト樹状細胞で発現される抗原が挙げられる。有利なことに、このような細胞は、(例えば、腫瘍抗原、微生物抗原、ウイルス抗原、又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患の一因である免疫細胞で発現される抗原を発現する)除去されるべき標的細胞に対して細胞毒又はアポトーシス効果を有する。特に有利なことに、ヒトリンパ球様細胞は、活性化されると標的細胞に細胞傷害性効果を与える細胞傷害性T細胞又はNK細胞である。従って、この実施形態によると、ヒトエフェクター細胞の細胞傷害活性は漸増される。別の実施形態によると、ヒトエフェクター細胞は、ヒト骨髄細胞系列のメンバーである。
【0107】
多重特異的抗体を構成する抗体の断片が結合し得る免疫細胞で発現される抗原は、NK及び/又はT細胞受容体、例えば、それぞれNK細胞又はT細胞を除去されるべき目的の標的細胞に誘導する役割を果たし得る、NK細胞又はT細胞の表面の任意の分子も含み得る。例としては、例えば、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)ファミリーのメンバー、白血球免疫グロブリン様受容体(LILR)ファミリー、又はレクチンファミリー、又はNK細胞レクチン様受容体ファミリーが挙げられる。活性は、例えば、多重特異的ポリペプチドの存在下で標的細胞とエフェクター細胞を接触させることによって測定することができる。任意選択により、免疫細胞受容体は、活性化受容体、例えば、活性化NK細胞又はT細胞受容体である。本明細書で使用される「活性化NK細胞受容体」及び「活性化T細胞受容体」という語は、それぞれ刺激されるとNK細胞又はT細胞の活性に関連した当技術分野で公知の任意の特性又は活性の測定可能な上昇を引き超す、NK細胞又はT細胞の表面の任意の分子を指し、このような特性又は活性は、それぞれ、例えばサイトカイン(例えば、IFN−γ又はTNF−α)の産生、細胞内遊離カルシウムレベルの上昇、上記の、例えば、本明細書の他の部分に記載されるリダイレクト殺傷アッセイ(redirected killing assay)において標的細胞を溶解する能力、又はNK細胞若しくはT細胞の増殖をそれぞれ刺激する能力である。「活性化NK受容体」という語は、限定されるものではないが、DNAXアクセサリー分子−1(DNAM−1)、2B4、活性化型のKIRタンパク質(例えば、KIR2DS受容体、KIR2DS2、KIR2DS4)、NKG2D、NKp30、CD69、NKp80、NKp44、NKp46、IL−2R、IL−12R、IL−15R、IL−18R、及びIL−21Rを含む。一実施形態では、活性化NK細胞受容体は、Fcγ受容体以外の受容体である。一実施形態では、活性化NK細胞受容体は、NKp46以外の受容体である。
【0108】
細胞傷害性T細胞の活性化は、この実施形態の多重特異的(例えば、二重特異的)ポリペプチドによる細胞傷害性T細胞の表面のエフェクター抗原としてのCD3抗原の結合により起こり得る。ヒトCD3抗原は、ヘルパーT細胞及び細胞傷害性T細胞の両方に存在する。ヒトCD3は、多分子T細胞複合体の一部としてT細胞上で発現され、且つ3つの異なる鎖:CD3−ε、CD3−δ、及びCD3−γを含む抗原を指す。
【0109】
多重特異的ポリペプチドによって結合された他のエフェクター細胞抗原は、ヒトCD16抗原、ヒトCD64、ヒトCD2抗原、ヒトCD28抗原、又はヒトCD25抗原である。一実施形態では、エフェクター細胞抗原はCD16であり、このようなポリペプチドは、抑制性FcγRに実質的に結合しないFcドメインを有する場合、抑制性FcγRから阻害されることなく、CD16アゴニスト活性を有する。他の実施形態では、エフェクター細胞活性化受容体は、CD16以外の受容体である。
【0110】
このポリペプチド内に含まれるABD又は可変ドメインは、ポリペプチドに含められる前に任意の所望の活性について試験することができる。所望の特異性及び/又は活性を有する適切な抗原結合ドメインが特定されると、それぞれの可変ドメインをコードするDNAを任意の要素、例えば、酵素認識標識をコードするDNA、又は適切な宿主へのトランスフェクションのためのCH2及びCH3ドメイン並びにその他の任意選択の要素(例えば、リンカー若しくはヒンジ領域をコードするDNA)と共に、適切な発現ベクターに適切な配置で導入することができる。次いで、宿主が、多重特異的ポリペプチドを構成するポリペプチド鎖の組換え産生に使用される。
【0111】
抗体に由来するABD又は可変領域は、一般に、多量体ポリペプチド中に存在するときに結合活性を付与するのに十分な最小の超可変領域を含む。ABD又は可変領域は、限定されるものではないが、リンカー要素(それぞれ可変ドメインとCH1、CL、CH2、又はCH3ドメインとの間、又は必要に応じて他のドメイン間に配置することができる、例えば、リンカーペプチド、定常ドメイン由来配列、ヒンジ、又はこれらの断片)を含め、場合により、必要に応じて他のアミノ酸又は機能的ドメインを含み得ることを理解されたい。
【0112】
任意の実施形態では、ABD又は可変領域は、ヒト化抗体から得ることができ、このヒト化抗体では、ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)からの残基が、元の抗体の所望の特性、親和性、及び能力を維持したまま、元の抗体(親抗体又はドナー抗体、例えば、マウス又はラット抗体)のCDRからの残基によって置換されている。親抗体のCDRは、その一部又は全てが非ヒト生物を起源とする核酸によってコードされ、ヒト抗体可変領域のβシートフレームワークに全て又は一部が移植されて、移植されたCDRによって特性が決定される抗体を形成する。このような抗体の形成は、例えば、国際公開第92/11018号パンフレット、Jones,1986,Nature 321:522−525,Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534−1536に記載されている。従って、抗原結合ドメインは、非ヒト超可変領域又はCDR及びヒトフレームワーク領域配列(任意選択により復帰変異を含む)を有し得る。
【0113】
ポリペプチド鎖は、互いに機能的に連結された所望のドメインを有するポリペプチドを作製するために1つ以上の発現ベクターに配置される。多重特異的ポリペプチドの発現のために選択された宿主細胞は、限定されるものではないが、免疫グロブリンCH2ドメインのタンパク質を装飾するオリゴ糖部分の組成の変化を含め、最終組成の重要な寄与因子である。従って、本発明の一態様は、多重特異的ポリペプチドが少なくとも部分的なFcRn結合性を維持するが、例えば野生型完全長ヒトIgG1抗体と比較してFcγ受容体に対する結合性が低下するように、所望の治療用タンパク質を発現する産生細胞に使用するのに適した宿主細の選択及び/又はこのような産生細胞の開発に関する。宿主細胞は、哺乳動物起源であってもよく、又はCOS−1細胞、COS−7細胞、HEK293細胞、BHK21細胞、CHO細胞、BSC−1細胞、Hep G2細胞、653細胞、SP2/0細胞、293細胞、HeLa細胞、骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は植物細胞から選択してもよく、又はこれらの任意の由来細胞、不死化細胞、若しくは形質転換細胞であってもよい。別法では、宿主細胞は、ポリペプチドをグリコシル化できない種又は生物、例えば、原核細胞又は生物、例えば、天然又はエンジニアリングされた大腸菌属菌(E.coli spp.)、クレブシエラ属菌(Klebsiella spp.)、又はシュードモナス属菌(Pseudomonas spp.)から選択することができる。
【0114】
次いで、このポリペプチドを適切な宿主細胞で産生するか、又は任意の適切な合成プロセスによって生産して、多量体(例えば、二量体又は三量体)ポリペプチドを形成するのに適した条件下で接触させることができる。
【0115】
ポリペプチドの立体配置
目的の第1及び第2の抗原に一価で結合する単離されたヘテロ多量体ポリペプチドを異なる立体配置に従って調製することができ、いずれの場合も、少なくとも中心(第1)のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖、及び任意選択により第3のポリペプチド鎖を含む。
【0116】
第1(中心)のポリペプチド鎖は、第2のポリペプチド鎖上の相補的な可変ドメインと共に、目的の1つの(例えば、第1の)抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成する1つの可変ドメインを提供する。第1(中心)のポリペプチド鎖はまた、相補的な可変ドメインと対を形成して目的の別の(例えば、第2の)抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成する第2の可変ドメインも提供し、第2の可変ドメインに相補的な可変ドメインを(例えば、直列型可変ドメイン構築物、例えば、scFvの第2の可変ドメインに隣接して)中心ポリペプチドに配置することができるか、又は第2のポリペプチド鎖上に配置することができるか、又は第3のポリペプチド鎖上に配置することができる。第2の(及び第3の(存在する場合))ポリペプチド鎖が、CH1−CKヘテロ二量体化によって中心ポリペプチド鎖に結合して、それぞれのヒンジドメイン間及び相補的なCH1とCKドメインとの間に鎖間ジスルフィド結合を形成し、CH/CK及びVH/VKドメインが、1つのみの二量体化立体配置が生じるように選択される限り、単一多量体ポリペプチドが形成される。三量体において、又はポリペプチドが三量体の形成のために作製される場合、一般に、天然に存在しないVH−CK又はVL−CH1ドメイン配置を含む1つのポリペプチド鎖が存在することになる。
【0117】
CH1又はCL定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)(例えば、Vドメインが、そのC末端でCH1又はCK定常領域のN末端に融合されている)、第2の可変ドメイン、及び第1の可変ドメインと第2の可変ドメインとの間に配置されたFcドメイン(例えば、完全Fcドメイン又はその一部)を含む第1(中心)のポリペプチド鎖は、限定されるものではないが、以下を含む第1のポリペプチドのドメイン配置の例を有し得る。
【0118】
【表1】
【0119】
第2のポリペプチド鎖は、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとがCH1−CL(例えば、CH1−CK)ヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖のCH1又はCL定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCL(例えば、CK)定常領域に(例えば、そのC末端で)融合された第1の可変ドメイン(V)を含む。第2のポリペプチド鎖は、例えば、CH1又はCLドメインのC末端に融合された、又は可変ドメインのN末端に融合されたFcドメイン(例えば、完全Fcドメイン又はその一部)をさらに含み得る。第2のポリペプチドのドメイン配置の例としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる。
【0120】
【表2】
【0121】
第3のポリペプチド鎖は、存在する場合、ドメイン配置:(VH又はVK)−(CH1又は(CK))を有し得る。
【0122】
ヘテロ二量体
このようなヘテロ二量体タンパク質に使用される中心ポリペプチド鎖の(N末端からC末端への)ドメイン配置の例としては、
a1−(CH1又はCK)−Fcドメイン−Va2−Vb2
a2−Vb2−Fcドメイン−Va1−(CH1又はCK)
が挙げられ、ここで、Va1は軽鎖又は重鎖可変ドメインであり、Va2及びVb2の一方は軽鎖可変ドメインであり、及び他方は重鎖可変ドメインである。
【0123】
さらなる例として、
a1−(CH1又はCK)−Fcドメイン−V
−Fcドメイン−Va2−(CH1又はCK)
も挙げられ、ここで、Vは単一可変ドメイン(例えば、dAb、VhH)として抗原に結合する。
【0124】
中心鎖のFcドメインは、所望の機能(例えば、FcRn結合性)を付与するのに十分な完全なFcドメイン(CH2−CH3)又はその一部であり得る。次いで、第2のポリペプチド鎖が作製され、この第2のポリペプチド鎖は、免疫グロブリン可変ドメイン、及びCH1−CKの中心ポリペプチド鎖とのヘテロ二量体化を可能にするように選択されたCH1又はCK定常領域、例えば、(CH1又はCK)単位を含み、この免疫グロブリン可変ドメインは、CH1又はCKドメインに隣接した中心鎖の可変ドメインを補完し、それにより、相補的な可変ドメインが、目的の第1の抗原の抗原結合ドメインを形成するように選択される。
【0125】
例えば、第2のポリペプチド鎖は、ドメイン配置:
b1−(CH1又はCK)、又は
b1−(CH1又はCK)−Fcドメイン
を含むことができ、それにより、(CH1又はCK)が中心鎖の(CH1又はCK)と二量体化し、Vb1が中心鎖のVa1と共に抗原結合ドメインを形成する。中心鎖のVa1が軽鎖可変ドメインである場合、Vb1は重鎖可変ドメインであり、中心鎖のVa1が重鎖可変ドメインである場合、Vb1は軽鎖可変ドメインである。
【0126】
次いで、目的の第2の抗原の抗原結合ドメインを、目的の第2の抗原の抗原結合ドメインを形成する中心鎖の直列型可変ドメイン(例えば、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖(κ)可変ドメイン(VK)であり、例えば、scFv単位を形成する)として構成されたVa2及びVb2から形成することができる。目的の第2の抗原の抗原結合ドメインは、別法では、中心鎖に存在する単一可変ドメインVから形成することもできる。
【0127】
得られるヘテロ二量体は、例えば、以下の構成を有することができる(図6A及び図6Cに形態2、11、及び12として示されているようなタンパク質の例も参照されたい)。
【化3】
ここで、第1のポリペプチド鎖のVa1及び第2のポリペプチド鎖のVb1の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインであり、Va2及びVb2の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインである。
【0128】
得られるヘテロ二量体は、別の例では、以下の構成を有することができる(図6Bに形態10として示されているこのようなタンパク質の例も参照されたい)。
【化4】
ここで、第1のポリペプチド鎖のVa1及び第2のポリペプチド鎖のVb1の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインであり、Va2及びVb2の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインである。
【0129】
得られるヘテロ二量体は、別の例では、以下の構成を有することができる(図6D及び図6Eに形態13及び14として示されているようなタンパク質の例も参照されたい)。
【化5】
ここで、第1のポリペプチド鎖のVa1及び第2のポリペプチド鎖のVb1の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインであり、Va2及びVb2の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインである。
【0130】
一実施形態では、ヘテロ二量体二重特異的Fc由来ポリペプチドは、以下の1つのドメイン配置を含み、任意選択により一方又は両方のヒンジドメインがペプチドリンカーによって置換され、任意選択によりFcドメインが、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞など)によって発現されるポリペプチドに結合するscFvにペプチドリンカーを介して融合される。
【化6】
【0131】
形成される二量体ポリペプチドのドメイン配置の例としては、限定されるものではないが、以下の表のドメイン配置が挙げられる。
【0132】
【表3】
【0133】
ヘテロ三量体
ヘテロ三量体タンパク質は、例えば、第1のCH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン(V)、及び第1の可変ドメインと第2の可変ドメインとの間に配置されたFcドメイン又はその一部(即ち、Fcドメインは、第1及び第2のV−(CH1/CK)単位間に配置されている)を含む中心(第1)のポリペプチド鎖を使用することによって形成することができる。例えば、ヘテロ三量体タンパク質に使用される中心のポリペプチド鎖は、(N末端からC末端に)以下のドメイン配置を有することができる:
a1−(CH1又はCK)−Fcドメイン−Va2−(CH1又はCK)
【0134】
次いで、第2のポリペプチド鎖は、(N末端からC末端に)ドメイン配置:
b1−(CH1又はCK)、又は
b1−(CH1又はCK)−Fcドメイン
を含むことができ、それにより、(CH1又はCK)が中心鎖の(CH1又はCK)と二量体化し、Va1とVb1とが抗原結合ドメインを形成する。
【0135】
次いで、第3のポリペプチド鎖は、(N末端からC末端に)ドメイン配置:
b2−(CH1又はCK)
を含むことができ、それにより、(CH1又はCK)が中心鎖の(CH1又はCK)単位と二量体化し、Va2とVb2とが抗原結合ドメインを形成する。
【0136】
二量体Fcドメイン(図6D及び図6Eにも形態5、6、7、及び16として示されている)を有する、得られるヘテロ三量体の構成の一例は、ドメイン配置:
【化7】
を有する。
【0137】
単量体Fcドメイン(図6B及び図6Cにも形態8、9、及び17として示されている)を有する、得られるヘテロ三量体の構成の一例は、ドメイン配置:
【化8】
を有する。
【0138】
従って、三量体ポリペプチドの構成では、第1のポリペプチドは、別個のポリペプチド鎖の可変ドメイン(即ち、第2鎖及び第3鎖の可変ドメイン)を有する抗原結合ドメインをそれぞれ形成する2つの可変ドメインを有することができ、第2のポリペプチド鎖は、1つの可変ドメインを有し、第3のポリペプチドは、1つの可変ドメインを有する。
【0139】
三量体ポリペプチドは、
(a)第1のCH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン(V)、及び第1の可変ドメインと第2の可変ドメインとの間に配置されたFcドメイン又はその一部を含む、第1のポリペプチド鎖、
(b)第1及び第2のポリペプチドがCH1−CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖の第1のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された可変ドメイン、及び任意選択によりFcドメインを含む、第2のポリペプチド鎖、及び
(c)CH1又はCK定常領域に(例えば、そのC末端で)融合された可変ドメインを含む、第3のポリペプチド鎖であって、この可変ドメイン及び定常領域が、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメイン及び第2のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択され、それにより、第1及び第3のポリペプチドが、第3のポリペプチドのCH1又はCK定常領域と第1のポリペプチドの第1のCH1又はCK定常領域との間ではなく、第3のポリペプチドのCH1又はCK定常領域と第1のポリペプチドの第2のCH1又はCK定常領域との間に形成されたジスルフィド結合によって結合されたCH1−CKヘテロ二量体を形成する、第3のポリペプチド鎖
を含み、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドと第3のポリペプチドとがCH1−CKヘテロ三量体を形成し、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチド鎖の可変ドメインとが、目的の第1の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成し、且つ第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメインと第3のポリペプチド鎖の可変ドメインとが、目的の第2の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成する。
【0140】
形成される三量体二重特異的ポリペプチドのドメイン配置の例としては、限定されるものではないが、以下の表のドメイン配置が挙げられる。
【0141】
【表4】
【0142】
ヒンジ領域は、典型的には、CH1ドメインとCH2ドメインとの間のポリペプチド鎖に存在し、且つ/又はCKドメインとCH2ドメインとの間に存在し得る。ヒンジ領域は、任意選択により、例えば、適切なリンカーペプチドによって置き換えることができる。
【0143】
本開示で記載されるタンパク質ドメインは、任意選択により、N末端からC末端であると指定することができる。例示のための開示のタンパク質の配置は、N末端(左側)からC末端へと示されている。ドメインは、互いに融合されていると言える(例えば、ドメインは、その左側のドメインのC末端に融合されていると言え、且つ/又はドメインは、その右側のドメインのN末端に融合されていると言える)。
【0144】
本開示に記載されるタンパク質ドメインは、直接又は介在アミノ酸配列を介して互いに融合することができる。例えば、CH1又はCKドメインは、リンカーペプチド、任意選択によりヒンジ領域又はその断片を介してFcドメイン(又はそのCH2若しくはCH3ドメイン)に融合される。別の例では、VH又はVKドメインは、リンカーペプチドを介してCH3ドメインに融合される。直列型に互いに連結されたVH及びVLドメインは、(例えば、scFvのように)リンカーペプチドを介して融合される。Fcドメインに連結されたVH及びVLドメインは、リンカーペプチドを介して融合される。2つのポリペプチド鎖は、好ましくは相補的なCH1及びCKドメイン内のシステイン残基間に形成される鎖間ジスルフィド結合によって、互いに結合される(「|」によって示される)。
【0145】
本明細書の任意の実施形態では、VKドメインをVλ可変ドメインによって置換し得ることを理解されたい。
【0146】
任意のドメイン配置では、Fcドメインは、CH2−CH3単位(完全長CH2及びCH3ドメイン又はこれらの断片)を含み得る。Fcドメイン(二量体Fcドメイン)を有する2つの鎖を含むヘテロ二量体又はヘテロ三量体では、CH3ドメインは、CH3−CH3二量体化が可能である(例えば、野生型CH3ドメイン)。Fcドメイン(単量体Fcドメイン)を有する1つの鎖のみを含むヘテロ二量体又はヘテロ三量体では、Fcドメインは、CH3−CH3二量体化が不可能であり、例えば、CH3ドメインが、CH3二量体界面にアミノ酸改変を有するか、又はFcドメインが、CH3−CH3二量体化が不可能な直列型CH3ドメインを含む。本明細書の任意の態様の一実施形態では、第1のCH3ドメインは、リンカーによって第2のCH3ドメインに接続されている。直列型CH3ドメインは、以下のように、N末端からC末端にドメイン配置を有することができる:
−CH3−リンカー−CH3−。
【0147】
直列型CH3ドメインのリンカーは、可撓性リンカー(例えば、ペプチドリンカー)であり得る。一実施形態では、リンカーは、非共有相互作用によるCH3ドメインの互いの結合を可能にする。一実施形態では、リンカーは、10〜50のアミノ酸残基を有するペプチドリンカーである。一実施形態では、リンカーは、式(GS)を有する。任意選択により、xは、2、3、4、5、又は6である。任意の実施形態では、各CH3ドメインは、独立に、完全長及び/若しくはナイーブCH3ドメイン、又は機能的なCH3二量体化界面を維持する断片又は改変CH3ドメインである。
【0148】
可撓性ペプチドリンカー(下線が引かれている)を有する例示的な直立型CH3が以下に示されている。従って、例示的な直列型CH3ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列、又は配列番号2と少なくとも70%、80%、90%、95%、若しくは98%同一の配列を含み得る。
【化9】
【0149】
本明細書に開示される直列型CH3ドメイン、及びCH3−CH3二量体化を防止するためのアミノ酸改変を有するCH3ドメインは、(例えば、野生型完全長ヒトIgG1抗体と比較して)部分的なFcRn結合性を維持する。本明細書で提供される単量体CH2−CH3ドメインの例は、部分的なFcRn結合性を維持するが、低いヒトFcγ受容体結合性を有する。任意選択により、多量体ポリペプチドは、中程度の親和性でヒトFcRnに結合することができ、例えば、FcRnに対する結合は維持するが、完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較してヒトFcRn受容体に対して低い結合性を有する。Fc部分は、例えば、CH2ドメインに、1つ以上のFcγ受容体への結合性をさらに低下させる(例えば、消失させる)1つ以上のアミノ酸改変をさらに含み得る。
【0150】
単量体Fcドメインを有する多量体ポリペプチドは、有利には、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むことができ、前記CH3ドメインは、別のFc由来ポリペプチドとの二量体化を防止するための改変されたCH3二量体界面(例えば、CH3二量体界面の変異)を含む。一実施形態では、ホモ二量体の形成を防止するための改変されたCH3ドメインを含むCH2−CH3部分は、配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1:
【化10】
と少なくとも90%、95%、又は98%同一の配列を含み、任意選択により、配列番号1の残基121、136、165、175、177、又は179の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つに置換を含む。
【0151】
本明細書の任意のポリペプチド又は方法の一実施形態では、CH3ドメインは、L351位、T366位、L368位、P395位、F405位、T407位(又はY407位)、及び/又はK409位(Kabatと同様のEU付番)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つにアミノ酸置換を含む。
【0152】
一実施形態では、可変ドメインをCH2又はCH3に連結するために使用されるペプチドリンカーは、CH1ドメイン及び/又はヒンジ領域の断片を含む。例えば、CH1のN末端アミノ酸配列は、抗体の天然の構造を可能な限り模倣するために、可変ドメインに融合することができる。一実施形態では、リンカーは、2〜4の残基、2〜4の残基、2〜6の残基、2〜8の残基、2〜10の残基、2〜12の残基、2〜14の残基、2〜16の残基、2〜18の残基、2〜20の残基、2〜22の残基、2〜24の残基、2〜26の残基、2〜28の残基、又は2〜30の残基のN末端CH1アミノ酸配列を含み得る。一実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列RTVAを含む、又はアミノ酸配列RTVAからなる。
【0153】
2つの可変領域がscFvを形成する場合、これらの可変領域は、ABDが結合する予定の抗原への結合を可能にするようにABDを折り畳むことができる十分な長さのリンカーによって互いに連結される。リンカーの例としては、例えば、グリシン及びセリン残基、例えば、アミノ酸配列GEGTSTGS(GS)GGADを含むリンカーが挙げられる。別の特定の実施形態では、svFvのVHドメイン及びVLドメインは、アミノ酸配列(GS)によって互いに連結される。
【0154】
任意のペプチドリンカーは、少なくとも5残基、少なくとも10残基、少なくとも15残基、少なくとも20基、少なくとも25残基、少なくとも30残基以上の長さを含み得る。他の実施形態では、リンカーは、2〜4の残基、2〜4の残基、2〜6の残基、2〜8の残基、2〜10の残基、2〜12の残基、2〜14の残基、2〜16の残基、2〜18の残基、2〜20の残基、2〜22の残基、2〜24の残基、2〜26の残基、2〜28の残基、又は2〜30の残基の長さを含む。
【0155】
定常領域ドメインは、任意の適切な抗体から得ることができる。特に興味深いのは、定常重(CH)ドメイン及びヒンジドメインを含む重鎖ドメインである。IgG抗体との関連では、IgGアイソタイプは、それぞれ3つのCH領域を有する。従って、IgGとの関連での「CH」ドメインは、次の通りである:「CH1」は、Kabatと同様のEUインデックスによると118〜220位を指す。「CH2」は、Kabatと同様のEUインデックスによると237〜340位を指す。「CH3」は、Kabatと同様のEUインデックスによると341〜447位を指す。「ヒンジ」、「ヒンジ領域」、又は「抗体ヒンジ領域」とは、抗体における第1及び第2の定常ドメイン間のアミノ酸を含む可撓性ポリペプチドのことである。構造的に、IgG Ch1ドメインは、EU220位で終端し、IgG CH2ドメインは、EU237位の残基で始まる。従って、IgGでは、ヒンジは、本明細書では、221位(IgG1のD221)〜236位(IgG1のG236)を含むように定義され、付番は、Kabatと同様のEUインデックスに従った。ポリペプチド内に見られる定常領域ドメイン内のアミノ酸残基について言及する場合、特段の記載がない限り、又は文脈から他の旨である場合を除き、IgG抗体との関連で、Kabatに準拠するものとする。
本抗体に役立ち得るCH3ドメインは、任意の適切な抗体から得ることができる。このようなCH3ドメインは、改変CH3ドメインの基準として役立ち得る。任意選択により、CH3ドメインはヒト起源である。
【0156】
多量体ポリペプチドが単量体Fcドメインを含む本明細書の特定の実施形態では、CH3ドメインは、CH3二量体化界面を妨害するために1つ以上のアミノ酸改変(例えば、アミノ酸置換)を含む。任意選択により、CH3ドメインの改変は、CH2−CH3ドメインが単量体型である場合に疎水性残基の露出によって引き起こされるタンパク質の凝集を防止する。任意選択により、CH3ドメインの改変は、Fc由来ポリペプチドの新生児Fc受容体(FcRn)、例えば、ヒトFcRnに結合する能力をさらに消失させるものではない。
【0157】
CH3−CH3二量体の形成を防止するために使用することができるCH3ドメインは、様々な刊行物に記載されている。例えば、参照によりそれぞれの開示内容が本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2006/0074225号明細書、国際公開第2006/031994号パンフレット、同第2011/063348号パンフレット、及びYing et al.(2012)J.Biol.Chem.287(23):19399−19407を参照されたい。ホモ二量体の形成を抑制するために、CH3−CH3界面を構成する1つ以上の残基が、相互作用が静電気的に不利になるように荷電アミノ酸で置換される。例えば、国際公開第2011/063348号パンフレットには、界面における正に荷電したアミノ酸、例えば、リジン、アルギニン、又はヒスチジンが、異なるアミノ酸(例えば、負に荷電したアミノ酸、例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸)で置換され、且つ/又は界面における負に荷電したアミノ酸が、異なる(例えば、正に荷電した)アミノ酸で置換されることが記載されている。一例としてヒトIgGを使用すると、反対の電荷に荷電することができる界面内の荷電残基は、R355、D356、E357、K370、K392、D399、K409、及びK439を含む。特定の実施形態では、界面内の2つ以上の荷電残基が反対の電荷に荷電される。例示的な分子としては、K392D及びK409D変異を含む分子、並びにD399K及びD356K変異を含む分子が挙げられる。単量体型のFcドメインの安定性を維持するために、CH3−CH3界面を構成する1つ以上の大きい疎水性残基が小さい極性アミノ酸で置換される。一例としてヒトIgGを使用すると、CH3−CH3界面の大きい疎水生残基は、Y349、L351、L368、L398、V397、F405、及びY407を含む。小さい極性アミノ酸残基は、アスパラギン、システイン、グルタミン、セリン、及びトレオニンを含む。従って、一実施形態では、CH3ドメインは、R355位、D356位、E357位、K370位、K392位、D399位、K409位、及びK439位の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つでアミノ酸改変(例えば、置換)を含む。国際公開第2011/063348号パンフレットでは、CH3ドメイン界面に密接して位置する2つの正に荷電したLys残基がAspに変異された。次いで、トレオニンスキャニング突然変異誘発が、これらの2つのLysからAspへの変異の背景において構造的に保存された大きい疎水性残基に対して行われた。トレオニンでの様々な置換と共にK392D及びK409D変異を含むFc分子が、単量体形成について分析された。例示的な単量体Fcドメインは、K392D、K409D、及びY349T置換を有する単量体Fc分子、並びにK392D、K409D、及びF405T置換を有する単量体Fc分子を含む。
【0158】
Ying et al.(2012)J.Biol.Chem.287(23):19399−19407では、CH3ドメイン内の残基L351、T366、L368、P395、F405、T407、及びK409でアミノ酸が置換された。異なる変異の組み合わせにより、タンパク質の凝集が起きることなく、CH3二量体化界面の破壊が起きた。従って、一実施形態では、CH3ドメインは、L351位、T366位、L368位、P395位、F405位、T407位、及び/又はK409位の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つでのアミノ酸改変(例えば、置換)を含む。一実施形態では、CH3ドメインは、アミノ酸改変L351Y、T366Y、L368A、P395R、F405R、T407M、及びK409Aを含む。一実施形態では、CH3ドメインは、アミノ酸改変L351S、T366R、L368H、P395K、F405E、T407K、及びK409Aを含む。一実施形態では、CH3ドメインは、アミノ酸改変L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Yを含む。
【0159】
CH2ドメインは、任意の適切な抗体から容易に得ることができる。任意選択により、CH2ドメインはヒト起源である。CH2は、ヒンジ又はリンカーアミノ酸配列に(例えば、そのN末端で)連結されてもよく、連結されなくてもよい。一実施形態では、CH2ドメインは、天然に存在するIgG1、2、4、又は4サブタイプのヒトCH2ドメインである。一実施形態では、CH2ドメインは、CH2ドメインの断片(例えば、少なくとも10、20、30、40、又は50のアミノ酸)である。
【0160】
一実施形態では、CH2ドメインは、本明細書に記載のポリペプチドに存在する場合、新生児Fc受容体(FcRn)、特にヒトFcRnに対する結合性を維持する。
【0161】
一実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドに存在する場合のCH2ドメイン、及び本明細書に記載のポリペプチドは、Fcγ受容体、特にFcγRIIIA(CD16)に対して結合しにくくするか、又は全く結合しないようにする。CD16によって結合されていないCH2ドメインを含むポリペプチドは、目的のエフェクター細胞抗原(例えば、NKp46、CD3など)を発現しない細胞(例えば、NK細胞、T細胞)によるADCCを活性化又は媒介することができない。
【0162】
一実施形態では、本明細書に記載のポリペプチド並びにそのFcドメイン及び/又はそのCH2ドメインは、低下した抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、FcR媒介細胞活性化(例えば、FcR架橋によるサイトカインの放出)、及び/又は目的の抗原を発現しない免疫細胞(例えば、エフェクター細胞)によって媒介されるFcR媒介血小板活性化/減少を有するか、又はこれらを実質的に欠いている。
【0163】
一実施形態では、ポリペプチド内のCH2ドメインは、活性化Fcγ受容体、例えば、FcγRIIIA(CD16)、FcγRIIA(CD32A)、若しくはCD64に対する結合性、又は抑制性Fc受容体、例えば、FcγRIIB(CD32B)に対する結合性が実質的に消失する。一実施形態では、ポリペプチドのCH2ドメインはさらに、補体(C1q)の第1の成分に対する結合性が実質的に消失する。
【0164】
例えば、233〜236位でのヒトIgG1又はIgG2残基の置換、並びに327位、330位、及び331位でのIgG4残基の置換は、Fcγ受容体に対する結合性、従ってADCC及びCDCを大幅に低下させることを示した。さらに、Idusogie et al.(2000)J Immunol.164(8):4178−84は、K322を含む異なる位置でのアラニン置換が補体の活性化を著しく低下させることを実証した。
【0165】
一実施形態では、Fcγ受容体に対する結合性は維持するが、Fcγ受容体に対する結合性の減少を有するCH2ドメインは、例えば残基N297(Kabat EU)でのN連結グリコシル化を欠いているか、又は改変されたN連結グリコシル化を有する。例えば、ポリペプチドは、ポリペプチドのFc領域に結合するNアセチルグルコサミンへのフコシルの付加について高い酵素活性を自然に有するか、又はN297でグリコシル化が起きない細胞株(例えば、細菌宿主細胞)で発現される。別の実施形態では、ポリペプチドは、残基297〜299での正準Asn−X−Ser/Thr N連結グリコシル化モチーフの欠如を引き起こし、従ってFcγ受容体に対する結合性も低下させ得る1つ以上の置換を有し得る。従って、CH2ドメインは、N297及び/又は隣接残基(例えば、298、299)に置換を有し得る。
【0166】
一実施形態では、Fcドメイン又はそのCH2ドメインは、FcyR結合能の低下を示すが、FcRn結合性を維持したIgG2 Fc変異に由来する。一態様では、IgG2 Fc変異若しくは誘導多重特異的ポリペプチド、Fcドメイン、又はCH2ドメインは、EU付番方式による変異V234A、G237A、P238Sを含む。別の態様では、IgG2 Fc変異若しくは誘導多重特異的ポリペプチド又はFcドメインは、EU付番方式による変異V234A、G237A、H268Q、又はH268A、V309L、A330S、P331Sを含む。特定の態様では、IgG2 Fc変異若しくは誘導多重特異的ポリペプチド又はFcドメインは、EU付番方式による変異V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S、P331S、及び任意選択によりP233Sを含む。任意選択により、Fcγ受容体に対する結合性が消失したCH2ドメインは、PAAAP、PAAAS、及びSAAASから選択されるn個の配列を含む残基233、234、235、237、及び238(EU付番方式)を含み得、任意選択により、このような変異を有するFcドメインは、変異H268A又はH268Q、V309L、A330S、及びP331Sをさらに含み得る(参照によりその開示内容が本明細書に組み入れられる国際公開第2011/066501号パンフレットを参照されたい)。
【0167】
一実施形態では、Fcγ受容体に対する結合性を消失したCH2ドメインは、任意選択によりさらに他のドメイン(例えば、ヒンジドメイン又はCH3ドメイン)の1つ以上のアミノ酸改変と組み合わせて、Fc領域のCH2ドメインに少なくとも1つのアミノ酸改変を含む(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上のアミノ酸改変を有する)。Fc改変の任意の組み合わせは、例えば、Armour KL.et al.,(1999)Eur J Immunol.29(8):2613−24;Presta,L.G.et al.(2002)Biochem.Soc.Trans.30(4):487−490;Shields,R.L.et al.(2002)J.Biol.Chem.26;277(30):26733−26740 and Shields,R.L.et al.(2001)J.Biol.Chem.276(9):6591−6604)に開示されている異なる改変の任意の組み合わせで行うことができる。一実施形態では、ヒトFcγ受容体に対する低い結合性を有する本発明のポリペプチドは、アミノ酸残基237〜340(EU付番)内の野生型CH2ドメインに対して少なくとも1つのアミノ酸改変を含み(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上のアミノ酸改変を有し)、このようなCH2ドメインを含むポリペプチドは、野生型CH2ドメインを含む同等のポリペプチドと比較して、目的のヒトFcγ受容体に対して低い親和性を有し、任意選択により、変異型CH2ドメインは、233位、234位、235位、236位、237位、238位、268位、297位、238位、299位、309位、327位、330位、331位(EU付番)のいずれか1つ以上に置換を含む。
【0168】
一態様では、単離された多重特異的F2〜F17ヘテロ二量体タンパク質が提供され、この多重特異的ヘテロ二量体タンパク質は、本明細書に開示されるF2〜F17ポリペプチドの第1のポリペプチド鎖の配列に少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は98%同一である第1のアミノ酸配列;及び本明細書に開示されるそれぞれのF2〜F17ポリペプチドの第2のポリペプチド鎖の配列に少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は98%同一である第2のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖を含む。任意選択により、第1鎖及び第2鎖の可変領域又はCDRのいずれか又は全ては、異なる可変領域で置換され、任意選択により、可変領域は、同一性の計算に考慮される配列から除外される。
【0169】
一態様では、単離された多重特異的ヘテロ三量体タンパク質が提供され、この多重特異的ヘテロ三量体タンパク質は、本明細書に開示されるF1〜F17ポリペプチドの第1のポリペプチド鎖の配列に少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は98%同一である第1のアミノ酸配列;本明細書に開示されるそれぞれのF2〜F17ポリペプチドの第2のポリペプチド鎖の配列に少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は98%同一である第2のアミノ酸配列;及び本明細書に開示されるそれぞれのF2〜F17ポリペプチドの第3のポリペプチド鎖の配列に少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は98%同一である第3のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖を含む。任意選択により、第1及び第2鎖の可変領域又はCDRのいずれか又は全ては、異なる可変領域で置換され、任意選択により、可変領域は、同一性の計算に考慮される配列から除外される。
【0170】
化合物の使用
一態様では、医薬製剤であって、それを必要としている哺乳動物の処置又は診断用の医薬製剤の製造における本明細書で定義される任意の化合物の使用が提供される。また、薬剤として、又は薬剤中の活性成分若しくは活性物質として上記定義された任意の化合物の使用も提供される。さらなる態様では、経口投与、局所投与、又は注射用の固体又は液体製剤を提供するために、上記定義された化合物を含む医薬組成物を調製する方法が提供される。このような方法又はプロセスは、少なくとも化合物を薬学的に許容され得る担体と混合するステップを含む。
【0171】
一態様では、特定の効果を与えることによって所定の状態を処置する、予防する、若しくはより一般的には所定の状態に影響を及ぼす、又は本明細書の化合物若しくは本明細書に開示される化合物を含む(医薬)組成物を用いて特定の状態を検出する方法が提供される。
【0172】
本明細書に記載のポリペプチドを使用して、抗体で処置することができる障害、例えば、癌、固形及び非固形腫瘍、血液悪性腫瘍、感染、例えば、ウイルス感染、及び免疫又は自己免疫疾患を予防又は処置することができる。
【0173】
一実施形態では、目的の抗原は、以下からなる群から選択されるタイプの癌の悪性細胞の表面で発現される抗原である:膀胱癌、頭頸部癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、頸癌、甲状腺癌、及び扁平上皮癌を含む皮膚癌を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、及びバーケッツリンパ腫を含むリンパ系統の造血腫瘍;急性及び慢性の骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病を含む骨髄系統の造血腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉系起源の腫瘍;神経芽腫及び神経膠腫を含む他の腫瘍;星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、及び神経鞘腫を含む中枢及び末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉腫を含む横紋筋起源の腫瘍;並びに黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、濾胞性甲状腺癌、及び奇形癌を含む他の腫瘍、リンパ系統の造血腫瘍、例えば、限定されるものではないが、小細胞及び大脳細胞型を含むT細胞障害、例えば、T前リンパ球性白血病(T−PLL)を含むT細胞及びB細胞腫瘍;好ましくはT細胞型の大顆粒性リンパ球性白血病(LGL);セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/d T−NHL肝脾臓リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性及び免疫芽球性亜型);血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心(鼻)T細胞リンパ腫;未分化(Ki 1+)大細胞リンパ腫;腸管T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球;並びにリンパ腫/白血病(T−Lbly/T−ALL)。
【0174】
一実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドを使用して、以下からなる群から選択される癌を予防又は処置することができる:膀胱癌、頭頸部癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、頸癌、甲状腺癌、及び扁平上皮癌を含む皮膚癌を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、及びバーケッツリンパ腫を含むリンパ系統の造血腫瘍;急性及び慢性の骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病を含む骨髄系統の造血腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉系起源の腫瘍;神経芽腫及び神経膠腫を含む他の腫瘍;星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、及び神経鞘腫を含む中枢及び末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉腫を含む横紋筋起源の腫瘍;並びに黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、濾胞性甲状腺癌、及び奇形癌を含む他の腫瘍。本発明によって処置することができる他の例示的な障害としては、リンパ系統の造血腫瘍、例えば、限定されるものではないが、小細胞及び大脳細胞型を含むT細胞障害、例えば、T前リンパ球性白血病(T−PLL)を含むT細胞及びB細胞腫瘍;好ましくはT細胞型の大顆粒性リンパ球性白血病(LGL);セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/d T−NHL肝脾臓リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性及び免疫芽球性亜型);血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心(鼻)T細胞リンパ腫;未分化(Ki 1+)大細胞リンパ腫;腸管T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球;並びにリンパ腫/白血病(T−Lbly/T−ALL)が挙げられる。
【0175】
一態様では、処置の方法は、治療有効量の本明細書に記載の多重特異的タンパク質を個人に投与するステップを含む。治療有効量は、疾患又は障害を有する患者に治療効果を有する(又は疾患若しくは障害を有する患者及び患者と実質的に同様の特徴を有する患者の少なくとも相当数でこのような効果を促進する、高める、及び/又は誘導する)任意の量であり得る。
【0176】
多重特異的ポリペプチドは、キットに含めることができる。このキットは、任意選択により、任意の数のポリペプチド及び/又は他の化合物、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、又はその他の数の多重特異的ポリペプチド及び/又は他の化合物をさらに含み得る。キットの内容についてのこの記載は、全く限定ではないことを理解されたい。例えば、キットは、他のタイプの治療化合物を含み得る。任意選択により、キットは、ポリペプチドの使用についての取扱説明書、例えば、本明細書に記載の方法の詳細も含む。
【0177】
また、上記定義された化合物を含む医薬組成物も提供される。化合物は、医薬組成物として医薬担体と共に精製された形態で投与することができる。形態は、意図する投与方式及び治療又は診断用途によって決まる。医薬担体は、化合物を患者に送達するのに適した任意の適合性の非毒性物質とすることができる。薬学的に許容され得る担体は、当技術分野で公知であり、例えば、水溶液、例えば、(滅菌)水若しくは生理緩衝食塩水、又は他の溶媒若しくはビヒクル、例えば、グリコール、グリセロール、油、例えば、オリーブ油、又は注射可能な有機エステル、アルコール、脂肪、ワックス、及び不活性固体を含む。薬学的に許容され得る担体は、例えば化合物の吸収を安定させる又は高めるように作用する、生理的に許容され得る化合物をさらに含み得る。このような生理的に許容され得る化合物は、例えば、炭水化物、例えば、グルコース、スクロース、又はデキストラン、抗酸化物、例えば、アスコルビン酸又はグルタチオン、キレート剤、低分子量タンパク質、又は他の安定剤若しくは賦形剤を含む。当業者であれば、生理的に許容され得る化合物を含む薬学的に許容され得る担体の選択が、例えば、組成物の投与経路によって決まることを理解されよう。薬学的に許容され得るアジュバント、緩衝剤、及び分散剤なども医薬組成物に含まれ得る。
【0178】
化合物は、非経口投与することができる。非経口投与用の化合物の調製は、滅菌でなければならない。滅菌は、任意選択により凍結乾燥及び再生の前又は後での、滅菌濾過膜に通す濾過によって容易に達成される。化合物の投与の非経口経路は、公知の方法、例えば、静脈内経路、腹腔内経路、筋肉内経路、動脈内経路、若しくは病巣内経路による注射又は注入に従う。化合物は、注入又はボーラス注射によって連続的に投与することができる。静脈注射用の典型的な組成物は、特定のタイプの化合物及びその必要な投与計画に合わせて、任意選択により20%アルブミン溶液が添加された100〜500mlの滅菌0.9%NaCl又は5%グルコース及び1mg〜10gの化合物を含むように構成することができる。非経口投与可能な組成物を調製する方法は、当技術分野で公知である。
【実施例】
【0179】
実施例1
抗huNKp46抗体の作製
Balb/cマウスを、組換えヒトNKp46細胞外ドメイン組換えFcタンパク質で免疫した。マウスは、50μgのNKp46タンパク質と完全フロイントアジュバントのエマルションの腹腔内投与により最初の免疫を行い、50μgのNKp46タンパク質と不完全フロイントアジュバントのエマルションの腹腔内投与により2回目の免疫を行い、最後に、10μgのNKp46タンパク質の静脈投与により追加免疫した。免疫脾細胞を、追加免疫の3日後にX63.Ag8.653不死化B細胞に融合し、これを、放射線照射脾細胞の存在下で培養した。
【0180】
一次スクリーニング:増殖しているクローンの上清(S/N)を、細胞表面でヒトNKp46構築物を発現する細胞株を用いるフローサイトメトリーによって一次スクリーニングで試験した。簡単に述べると、FACSスクリーニングでは、上清中の反応抗体の存在を、PEで標識されたヤギ抗マウスポリクローナル抗体(pAb)によって明らかにした。
【0181】
NKp46に結合する抗体のセレクションを選択し、産生し、及びそれらの可変領域を二重特異的分子との関連でのそれらの活性についてさらに評価した。
【0182】
実施例2:
エフェクター細胞受容体を標的とする、FcRnに結合するがFcγRに結合しない二重特異的抗体形態の同定
この実験の目的は、免疫エフェクター細胞上の受容体及び目的の第2の抗原を標的にするのに有用な新規な二重特異的タンパク質を開発することにあり、この二重特異的タンパク質では、単量体Fcドメインが、2つの抗原結合ドメイン間のポリペプチド上に配置されている。このタンパク質は、2つの抗原に一価で結合し、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に対する少なくとも部分的な結合を維持するが、ヒトCD16及び/又は他のヒトFcγ受容体には実質的に結合しない。
【0183】
第1のステップでは、単量体Fcドメインがヒト新生児Fc受容体(FcRn)及びヒトFcγ受容体に結合し得るか否かを調べるために、単量体Fcドメインを有する一本鎖タンパク質を一本鎖タンパク質として作製した。
【0184】
実施例2−1 抗CD19−IgG1−Fcmono−CD3の作製及び結合アッセイ
腫瘍抗原CD19に特異的なscFv(抗CD19 scFv)及びT細胞の活性化受容体CD3に特異的なscFv(抗CD3 scFv)をベースとした二重特異的Fcを使用して、新規な単量体二重特異的ポリペプチド形態のFcRn結合及びCD19結合機能を評価した。最終ポリペプチドのドメイン配置が図2に示されており、このドメイン配置は、図6Aにおいて「F1」形態とも呼ばれる(CH2ドメインの星は、本明細書で試験されたポリペプチドには含まれていない任意選択のN297S変異を示す)。
【0185】
二重特異的単量体Fc含有ポリペプチドを、腫瘍抗原CD19に特異的なscFv(抗CD19 scFv)及びT細胞の活性化受容体CD3に特異的なscFv(抗CD3 scFv)をベースに構築した。CH3ドメインは、変異(EU付番)L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Yを含んでいた。このポリペプチドは、次のように配置されたドメインを有する:抗CD19−CH2−CH3−抗CD3。アミノ酸配列STGSを有するCH3/VHリンカーペプチドをコードするDNA配列を、CH3−VH接合部に特定のSall制限部位を挿入するために設計した。
【0186】
CH3ドメインは、変異(EU付番)L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Yを含んでいた。CH2ドメインは、野生型CH2であった。単量体CH2−CH3Fc部分及び抗CD19のDNA及びアミノ酸配列は以下に示されている。
【0187】
抗CD19 scFvの軽鎖及び重鎖DNA及びアミノ酸配列は以下の通りであった。
抗CD19−VK
【化11】
抗CD19−VK
【化12】
抗CD19−VH
【化13】
抗CD19−VH
【化14】
【0188】
単量体CH2−CH3Fc部分及び最終的な二重特異的ポリペプチドのDNA及びアミノ酸配列は以下の通りであった。
IgG1−Fcmono(この構築物中では最後のKが除去されている)
【化15】
IgG1−Fcmonoこの構築物中では最後のKが除去されている)
【化16】
抗CD19−F1−抗CD3完全配列(成熟タンパク質)
【化17】
【0189】
組換えタンパク質のクローニング及び産生
コード配列を、直接合成及び/又はPCRによって構築した。PCRは、PrimeSTAR MAX DNAポリメラーゼ(Takara,#R045A)を用いて行い、PCR産物を、NucleoSpinゲル及びPCR clean−upキット(Macherey−Nagel,#740609.250)を用いて1%アガロースゲルから精製した。精製した後、PCR産物を定量してから、製造者のプロトコル(ClonTech,#ST0345)に記載されているようにIn−Fusion連結反応を行った。プラスミドは、Nucleospin 96プラスミドキット(Macherey−Nagel,#740625.4)を用いてEVO200(Tecan)で行われたミニプレップ調製後に得た。次いで、CHO細胞株のトランスフェクションの前に、プラスミドを配列の確認のために配列決定した。
【0190】
CHO細胞を、フェノールレッド及び6mM GlutaMaxが添加されたCD−CHO培地(Invitrogen)で増殖した。トランスフェクションの前日に、細胞をカウントし、175,000細胞/mlで播種した。トランスフェクションのために、細胞(200,000細胞/トランスフェクション)を、AMAXA SF細胞株キット(AMAXA,#V4XC−2032)に記載されているように調製し、Nucleofector 4D装置でDS137プロトコルを用いてヌクレオフェクトした。全てのトランスフェクションは、300ngの検証済みプラスミドを用いて行った。トランスフェクション後、細胞を、24ウェルプレートの予熱された培養培地に播種する。24時間後、ハイグロマイシンBを、培養培地に添加した(200μg/ml)。タンパク質の発現を、1週間後に培地で監視する。次いで、タンパク質を発現している細胞をサブクローニングして最高の産生株を得る。96平底ウェルプレートを用いて、200μg/mlのハイグロマイシンBが添加された200μlの培養培地に1細胞/ウェルで細胞を播種して、サブクローニングを行った。クローンの生産性を試験する前に、細胞を3週間放置した。
【0191】
IgG1−Fc断片を含む組換えタンパク質を、プロテインAビーズ(−rProteinA Sepharose fast flow,GE Healthcare,ref.:17−1279−03)を用いて精製する。簡単に述べると、細胞培養上清を濃縮し、遠心分離によって清澄化し、プロテインAカラムに注入し、組換えFc含有タンパク質を捕捉した。タンパク質を酸性pH(クエン酸0.1M pH3)で溶出し、TRIS−HCL pH8.5を用いて即座に中和し、1×PBSで透析した。「six his」タグを含む組換えscFvを、コバルト樹脂を用いてアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。他の組換えscFvを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製した。
【0192】
実施例2−2:抗CD19−IgG1−Fcmono−抗CD3〜B221、JURKAT、HUT78、及びCHO細胞株の結合分析
細胞を回収して、抗CD19−F1−抗CD3産生細胞の細胞上清で、4℃で1時間染色した。染色緩衝液(PBS 1X/BSA 0.2%/EDTA 2mM)で2回洗浄した後、細胞を、ヤギ抗ヒト(Fc)−PE抗体(IM0550 Beckman Coulter−1/200)で、4℃で30分間染色した。2回の洗浄後、染色物をBD FACS Canto IIで得て、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。
【0193】
CD3及びCD19の発現もフローサイトメトリーによって制御した。細胞を回収して、5μlの抗CD3−APC及び5μlの抗CD19−FITC抗体を用いて、PBS 1X/BSA 0.2%/EDTA 2mM緩衝液で、4℃で30分間染色した。2回の洗浄後、染色物をBD FACS Canto IIで得て、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。
【0194】
抗CD19−F1−抗CD3タンパク質は、CD3細胞株(HUT78及びJURKAT細胞株)及びCD19細胞株(B221細胞株)に結合するが、陰性対照として使用されるCHO細胞株には結合しない。
【0195】
実施例2−3:
精製抗CD19−F1−抗CD3によるT細胞及びB細胞の凝集
精製抗CD19−F1−抗CD3をT/B細胞凝集アッセイで試験して、抗体が、CD19及びCD3発現細胞の凝集において機能するか否かを評価した。
【0196】
結果が図4に示されている。上のパネルは、抗CD19−F1−抗CD3は、B221(CD19)又はJURKAT(CD3)細胞株の存在下で凝集を引き起こさないが、B221及びJURKAT細胞の両方が同時にインキュベートされるときに細胞を凝集させることを示し、二重特異的抗体が機能的であることを例示する。下のパネルは、抗体を含まない対照を示す。
【0197】
実施例2−4:
二重特異的単量体FcポリペプチドのFcRnに対する結合性
表面プラズモン共鳴(SPR)による親和性試験
Biacore T100の一般的な手順及び試薬
SPR測定を、Biacore T100装置(Biacore GE Healthcare)で、25℃で行った。全てのBiacore実験では、酢酸緩衝液(50mM酢酸 pH5.6、150mM NaCl、0.1%界面活性剤p20)及びHBS−EP+(Biacore GE Healthcare)がそれぞれ泳動用緩衝液及び再生緩衝液としての役割を果たした。センサーグラムを、Biacore T100 Evaluationソフトウェアで分析した。組換えマウスFcRnをR&D Systemsから購入した。
【0198】
FcRnの固定化
組換えFcRnタンパク質を、Sensor Chip CM5上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合により固定した。チップ表面を、EDC/NHS(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN−ヒドロキシスクシンイミド(Biacore GE Healthcare))で活性化した。FcRnタンパク質を、結合緩衝液(10mM酢酸、pH5.6)で10μg/mlに希釈し、適切な固定化レベル(即ち、2500RU)に達するまで注入した。残りの活性化基の不活性化を、100mMエタノールアミン pH8(Biacore GE Healthcare)を用いて行った。
【0199】
親和性試験
一価親和性試験を、Single Cycle Kinetic(SCK)プロトコルに従って行った。5段階希釈の41.5〜660nMの可溶性分析物(抗体及び二重特異的分子)を(再生なしで)FcRnに添加し、再生の10分前に解離させた。各分析物について、全てのセンサーグラムを、1:1SCK結合モデルを用いてフィッティングした。
【0200】
結果
そのCH2−CH3ドメインが2つの抗原結合ドメイン(ここでは2つのscFv)間に配置された抗CD19−F1−抗CD3を評価して、このような二重特異的単量体Fcタンパク質が、FcRnに対する結合性を維持することができ、それにより、従来の二重特異的抗体と比較して改善されたin vivo半減期を有するか否かを決定した。結果は、FcRN結合性が維持されたことを示し、このモデルは、正常なIgGに対して、2:1の比率(各抗体に対して2つのFcRn)ではなく1:1の比率(各単量体Fcに対して1つのFcRn)を示唆している。結果は図5に示されている。
【0201】
親和性を、ヒトIgG1定常領域を有するキメラ完全長抗体に対してSPRを用いて評価した。結果が表5に示されている。単量体Fcは、FcRnに対して著しい単量体結合性を維持した(単量体Fc:KD=194nMの親和性;二価結合性を有する完全長抗体:KD=15.4nMの親和性)。
【0202】
実施例3:
多量体二重特異的単量体ポリペプチドの作製
この実験の目的は、開発中の現在利用可能な二重特異的抗体、例えば、DART及びBITE抗体よりも生産上の利点を有する新規な二重特異的形態を開発することにあった。
【0203】
最初の二重特異的タンパク質を、NK細胞上の活性化受容体NKp46に結合する抗NKp46であるように選択された、免疫エフェクター細胞の表面に存在する受容体に結合する結合ドメイン、及びリンパ腫腫瘍抗原に結合する抗CD19であるように選択された抗標的抗原結合ドメインと共に、Fcドメインをポリペプチドに配置するように設計した。この二重特異的タンパク質は、NKp46に一価で結合し、単量体Fcドメインは、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に対する少なくとも部分的な結合を維持するが、ヒトCD16及び/又は他のヒトFcγ受容体には実質的に結合しない。結果として、この二重特異的タンパク質は、Fcγ媒介(例えば、CD16媒介)標的細胞溶解を誘導しない。
【0204】
NK細上の活性化受容体が標的細胞の溶解に寄与し得るかは不明であり、抗NKp46抗体がNKp46をブロックし得るため、細胞毒性がNKp46のトリガーによって媒介することができたか否かは不明であった。本発明者らは、二重特異的タンパク質形態が、NKp46のトリガーを引き起こすことができたか否か、さらに標的細胞の非存在下でNKp46アゴニズムを誘導することなく、標的から離れた不適切なNK活性化及び/又は標的細胞に対する全活性の低下をもたらすことができたか否かを調べた。
【0205】
2つ又は3つのポリペプチド鎖を含み、Fcドメインが単量体を維持している多量体タンパク質を開発し、この多量体タンパク質は、scFv形態に変換されたときにそれらの標的に対する結合を維持しない抗体可変領域と共に使用するのに適合している。この形態は、抗体のスクリーニングに便利に使用することができ、少なくとも1つの結合領域をF(ab)構造として含めることにより、任意の抗標的(例えば、抗腫瘍)抗体可変領域を、抗体がscFvとして結合性を維持するか否かにかかわらず、二重特異的タンパク質内のF(ab)形態として二重特異的構築物で直接発現させて試験することができ、それにより、利用可能な抗体を単純にスクリーニングしてその数を増加させることができる。Fcドメインが単量体を維持するこれらの形態は、標的抗原、例えば、エフェクター細胞受容体及び/又は標的抗原の両方に対する最適な結合を可能にし得る最大の配座柔軟性を維持するという利点を有する。
【0206】
異なる構築物を、実施例2−1に記載の腫瘍抗原CD19に特異的なscFvからの可変ドメインDNA及びアミノ酸配列、及び実施例1に示されたNKp46受容体に特異的な抗体からの異なる可変領域を用いて、二重特異的抗体の調製に使用するために作製した。
【0207】
Fcドメインが、一本鎖ポリペプチドで、又は1つの鎖のみがFcドメインを有する多量体で単量体を維持するために、CH3−CH3二量体化が、2つの異なる戦略:(1)変異(EU付番)L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Yを含むCH3ドメインの使用によって、又は(2)直列型CH3ドメインが互いに結合された可撓性リンカーによって分離され、それにより、鎖間CH3−CH3二量体化を防止する直列型CH3ドメインの使用によって防止された。点変異を有する単量体CH2−CH3Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、実施例2−1と同様であった。直列型CH3ドメインを有する単量体CH2−CH3−リンカーCH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、図6A図6Dに示されている。
【0208】
抗CD19 scFvの軽鎖及び重鎖DNA及びアミノ酸配列は、実施例2−1と同様であった。タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。以下に、抗NKp46 scFv NKp4646−3の例示的な軽鎖及び重鎖DNA及びアミノ酸配列が示される。
【0209】
【表5】
【0210】
形態1(F1)(抗CD19−IgG1−Fcmono−抗NKp46(scFv))
形態1(F1)のドメイン構造が図6Aに示されている。二重特異的Fc含有ポリペプチドを、腫瘍抗原CD19(抗CD19 scFv)に特異的なscFv及びNKp46受容体に特異的なscFvをベースに構築した。このポリペプチドは、以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する一本鎖ポリペプチドである。
(VK−VH)抗CD19−CH2−CH3−(VH−VK)抗NKp46
【0211】
アミノ酸配列STGSを有するCH3/VHリンカーペプチドをコードするDNA配列を、CH3−VH接合部に特定のSall制限部位を挿入するために設計した。図2には、最終ポリペプチドのドメイン配置が示されている(CH2ドメインの星は、任意選択のN297S変異を示す)。(VK−VH)単位は、VHドメインとVKドメインとの間にリンカーを含む。タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。
【0212】
形態2(F2):CD19−F2−NKp46−3
F2ポリペプチドのドメイン構造が図6Aに示されている。単量体CH2−CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、実施例2−1と同様であり、CH3ドメイン変異(変異(EU付番)L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Y)を含む。ヘテロ二量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
(VK−VH)抗CD19−CH2−CH3−VH抗NKp46−CH1、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗NKp46−CK
【0213】
(VK−VH)単位は、VHドメイン、リンカー、及びVK単位(即ち、scFv)から構成されていた。二重特異的ポリペプチドの他の形態と同様に、アミノ酸配列STGSを有するCH3/VHリンカーペプチドをコードするDNA配列を、CH3−VH接合部に特定のSall制限部位を挿入するために設計した。タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。CD19−F2−NKp46−3のポリペプチド鎖1のアミノ酸配列は、配列番号11に示され、CD19−F2−NKp46−3のポリペプチド鎖2のアミノ酸配列は、配列番号12に示されている。
【0214】
形態8(F8)
F8ポリペプチドのドメイン構造が図6Bに示されている。単量体CH2−CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、CH3ドメイン変異(変異(EU付番)L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Y、並びにN連結グリコシル化を防止してFcγR結合性を消失させるためのN297S変異)を含む形態F2と同様であった。F8タンパク質の3つの変異体を作製した:(a)ヒンジ領域のシステイン残基が完全なままである(野生型、F8Aと呼ばれる)、(b)ヒンジ領域のシステイン残基がセリン残基によって置換されている(F8B)、及び(c)リンカー配列GGGSSがヒンジの残基DKTHTCPPCPを置換している(F8C)。変異型F8B及びF8Cは、中心鎖のホモ二量体の形成を防止することによって作製に利点を提供した。ヘテロ三量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
VH抗CD19−CH1−CH2−CH3−VH抗NKp46−CK、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗NKp46−CH1、及び
(3)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第3のポリペプチド鎖:
VK抗CD19−CK
【0215】
タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot−Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、3.7mg/L(F8C)の高い産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。F8「C」変異体の3つのF8タンパク質鎖のアミノ酸配列は、配列番号13、14、及び15に示されている。
【0216】
形態9(F9):CD19−F9−NKp46−3
F9ポリペプチドは、中心ポリペプチド鎖、及びそれぞれCH1−CKの二量体化によって中心鎖に結合された2つのポリペプチド鎖を有する三量体ポリペプチドである。三量体F9タンパク質のドメイン構造が図6Bに示されており、CH1とCKドメインとの間の結合は、鎖間ジスルフィド結合である。2つの抗原結合ドメインは、抗体がscFv形態で機能を支持するか否かにかかわらず、この抗体の使用を可能にするF(ab)構造を有する。CH2−CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、同じポリペプチド鎖状の2つのCH3ドメインが互いに結合した直列型CH3ドメインを含み、それにより、異なる二重特異的タンパク質間の二量体化が防止された。CH2ドメインは、N297S置換を含んでいた。F9タンパク質の3つの変異体を作製した:(a)ヒンジ領域のシステイン残基が完全なままである(野生型、F9Aと呼ばれる)、(b)ヒンジ領域のシステイン残基がセリン残基によって置換されている(F9B)、及び(c)リンカー配列GGGSSがヒンジの残基DKTHTCPPCPを置換している(F9C)。変異型F9B及びF9Cは、中心鎖のホモ二量体の形成を防止することによって作製に利点を提供した。このヘテロ三量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
VH抗CD19−CH1−CH2−CH3−CH3−VH抗NKp46−CK、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗NKp46−CH1、及び
(3)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第3のポリペプチド鎖:
VK抗CD19−CK
【0217】
タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot−Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、8.7mg/L(F9A)及び3.0mg/L(F9B)の高い産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。変異体F9A、F9B、及びF9Cそれぞれの3つのF9タンパク質鎖のアミノ酸配列は、以下の表に列記された配列番号に示されている。
【0218】
【表6】
【0219】
形態10(F10):CD19−F9−NKp46−3
F10ポリペプチドは、中心ポリペプチド鎖、及びCH1−CKの二量体化によって中心鎖に結合された第2のポリペプチド鎖を有する二量体タンパク質である。二量体F10タンパク質のドメイン構造が図6Bに示され、CH1とCKドメインとの間の結合は、鎖間ジスルフィド結合である。2つの抗原結合ドメインの一方はFab構造を有し、且つ他方はscFvである。CH2−CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、形態F9と同様の直列型CH3ドメイン及びN297S置換を有するCH2ドメインを含んでいた。加えて、F10タンパク質の3つの変異体を作製した:(a)ヒンジ領域のシステイン残基が完全なままである(野生型、F10Aと呼ばれる)、(b)ヒンジ領域のシステイン残基がセリン残基によって置換されている(F10B)、及び(c)リンカー配列GGGSSがヒンジの残基DKTHTCPPCPを置換している(F10C)。変異型F10B及びF10Cは、中心鎖のホモ二量体の形成を防止することによって作製に利点を提供した。(VK−VH)単位は、VHドメイン、リンカー、及びVK単位(scFv)から構成されていた。ヘテロ二量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
VH抗CD19−CH1−CH2−CH3−CH3−(VH−VK)抗NKp46、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗CD19−CK。
【0220】
タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot−Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、2mg/L(F10A)の良好な産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。変異体F10A、F10B、及びF10Cそれぞれの3つのF9タンパク質鎖のアミノ酸配列は、以下の表に列記された配列番号に示されている。
【0221】
【表7】
【0222】
形態11(F11):CD19−F11−NKp46−3
F11ポリペプチドのドメイン構造が図6Cに示されている。このヘテロ二量体タンパク質は、F10に類似しているが、抗原結合ドメインの構造が逆である。2つの抗原結合ドメインの一方は、Fab様構造を有し、他方はscFvである。このヘテロ二量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
(VK−VH)抗CD19−CH2−CH3−CH3−VH抗NKp46−CK、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗NKp46−CH1
【0223】
タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot−Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、2mg/Lの良好な産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。F11タンパク質の2つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号31及び32に示されている。
【0224】
形態12(F12):CD19−F12−NKp46−3
二量体F12ポリペプチドのドメイン構造が図6Cに示されており、CH1とCKドメインとの間の結合は、ジスルフィド結合である。このヘテロ二量体タンパク質は、F11に類似しているが、F(ab)構造内のCH1とCKドメインが逆である。このヘテロ二量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
(VK−VH)抗CD19−CH2−CH3−CH3−VH抗NKp46−CH1、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗NKp46−CK
【0225】
タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot−Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、2.8mg/Lの良好な産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。F12タンパク質の2つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号33及び34に示されている。
【0226】
形態17(F17):CD19−F17−NKp46−3
三量体F17ポリペプチドのドメイン構造が図6Cに示されており、CHとCKドメインとの間の結合はジスルフィド結合である。ヘテロ二量体タンパク質は、F9と同様であるが、VH及びVKドメイン、並びにC末端F(ab)構造内のCH1及びCKドメインは、それぞれ、それらのパートナーと逆である。このヘテロ二量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
VH抗CD19−CH1−CH2−CH3−CH3−VK抗NKp46−CH1、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VH抗NKp46−CK、及び
(3)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第3のポリペプチド鎖:
VK抗CD19−CK
【0227】
加えて、F17タンパク質の3つの変異体を作製した:(a)ヒンジ領域のシステイン残基が完全なままである(野生型、F17Aと呼ばれる)、(b)ヒンジ領域のシステイン残基がセリン残基によって置換されえいる(F10B)、及び(c)リンカー配列GGGSSがヒンジの残基DKTHTCPPCPを置換している(F17C)。タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。F17Bタンパク質鎖の3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号35、36、及び37に示されている。
【0228】
実施例4:
二量体Fcドメインを有する二重特異的NKp46抗体形態
二量体Fcドメインを有する新規なタンパク質構築物を開発し、このタンパク質構築物は、実施例3の単量体Fcドメインタンパク質の利点を共有するが、高い親和性でFcRnに結合し、さらにFcγRに対して低い結合性を有するか、又は結合性が消失している。このポリペプチド形態を、VH−(CH1又はCK)−CH2−CH3−を含む鎖及びVK−(CH1又はCK)−CH2−CH3−を含む鎖を含むヘテロ二量体タンパク質の機能を調べるために試験した。次いで、CH3ドメインの一方又は両方は、任意選択により介在アミノ酸配列若しくはドメインを介して、可変ドメイン(分離されたポリペプチド鎖上の可変ドメインに結合する単一可変ドメイン)、直列型可変ドメイン(例えば、scFv)、又は単一可変ドメインとして抗原に結合することができる単一可変ドメインに融合される。次いで、2つの鎖が、CH1−CK二量体化によって結合してジスルフィド結合二量体を形成するか、又は第3鎖と結合して三量体を形成する。
【0229】
様々な構築物を、二重特異的抗体の調製に使用するために、実施例2−1に記載の腫瘍抗原CD19に特異的なscFvに由来する可変ドメインDNA及びアミノ酸配列及び実施例1で明らかにされたNKp46に特異的な抗体からの異なる可変領域を用いて作製した。タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。ドメイン構造は、図6A図6Dに示されている。
【0230】
形態5(F5):CD19−F5−NKp46−3
三量体F5ポリペプチドのドメイン構造が図6Dに示されており、ヒンジドメイン間の鎖間結合及びCH1とCKドメインとの間の鎖間結合は鎖間ジスルフィド結合である。ヘテロ三量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
VH抗CD19−CH1−CH2−CH3−VH抗NKp46−CK、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗CD19−CK−CH2−CH3、及び
(3)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第3のポリペプチド鎖:
VK抗NKp46−CH1
【0231】
タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot−Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、37mg/Lの高い産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号38、39、及び40に示されている。
【0232】
形態6(F6):CD19−F6−NKp46−3
ヘテロ三量体F6ポリペプチドのドメイン構造が図6Dに示されている。F6タンパク質は、F5と同じであるが、N連結グリコシル化を防止するためのN297S置換を有する。タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot−Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、12mg/Lの高い産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。F6タンパク質の3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号41、42、及び43に示されている。
【0233】
形態7(F7):CD19−F7−NKp46−3
ヘテロ三量体F7ポリペプチドのドメイン構造が図6Dに示されている。F7タンパク質は、F6と同じであるが、中心鎖とVK抗NKp46−CH1鎖との二量体種の少数集団の形成を防止するために、それらのC末端でFcドメインに連結されたCH1及びCKドメインにシステインのセリンでの置換を有する。タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot−Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、11mg/Lの高い産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。76タンパク質の3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号44、45、及び46に示されている。
【0234】
形態13(F13):CD19−F13−NKp46−3
二量体F13ポリペプチドのドメイン構造が図6Dに示されており、ヒンジドメイン間の鎖間結合(鎖上のCH1/CKとCH2ドメイン間に示されている)及びCH1とCKドメインとの間の鎖間結合は、鎖間ジスルフィド結合である。このヘテロ二量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
VH抗CD19−CH1−CH2−CH3−(VH−VK)抗NKp46、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗CD19−CK−CH2−CH3
【0235】
(VH−VK)単位は、VHドメイン、リンカー、及びVK単位(scFv)から構成されていた。
【0236】
タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot−Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、6.4mg/Lの高い産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。F13タンパク質の2つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号47及び48に示されている。
【0237】
形態14(F14):CD19−F14−NKp46−3
二量体F14ポリペプチドのドメイン構造が図6Eに示されている。F14ポリペプチドは、F13形態の構造を共有する二量体ポリペプチドであるが、野生型Fcドメイン(CH2−CH3)の代わりに、F14は、N連結グリコシル化をなくすためにCH2ドメイン変異N297Sを有する。タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot−Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、2.4mg/Lの高い産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。F14タンパク質の2つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号49及び50に示されている。
【0238】
形態15(F15):CD19−F15−NKp46−3
三量体F15ポリペプチドのドメイン構造が図6Eに示されている。F15ポリペプチドは、F6形態の構造を共有するが、中心鎖と第2鎖との間のN末端VH−CH1単位とVK−CK単位とが逆であるため、異なっている三量体ポリペプチドである。タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot−Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、0.9mg/Lの良好な産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。F15タンパク質の3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号51、52、及び53に示されている。
【0239】
形態16(F16):CD19−F16−NKp46−3)
三量体F16ポリペプチドのドメイン構造が図6Eに示されている。F16ポリペプチドは、F6形態の構造を共有するが、中心鎖と第2鎖との間のC末端VH−CK単位とVK−CH1単位とが逆であるため、異なっている三量体ポリペプチドである。タンパク質を、実施例2−1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。F16タンパク質の3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号54、55、及び56に示されている。
【0240】
実施例5:
表面プラズモン共鳴(SPR)による、二重特異的タンパク質によるNKp46結合親和性
Bacore T100の一般的な手順及び試薬
SPR測定を、Biacore T100装置(Biacore GE Healthcare)で、25℃で行った。全てのBiacore実験では、HBS−EP+(Biacore GE Healthcare)及びNaOH 10mMは、それぞれ泳動用緩衝液及び再生緩衝液としての役割を果たした。センサーグラムを、Biacore T100 Evaluationソフトウェアで分析した。プロテインAを(GE Healthcare)から購入した。ヒトNKp46組換えタンパク質を、クローニングし、産生し、且つInnate Pharmaで精製した。
【0241】
プロテインAの固定化
プロテインAタンパク質を、Sensor Chip CM5上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合により固定した。チップ表面を、EDC/NHS(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN−ヒドロキシスクシンイミド(Biacore GE Healthcare))で活性化した。プロテインAを、結合緩衝液(10mM酢酸、pH5.6)で10μg/mlに希釈し、適切な固定化レベル(即ち、2500RU)に達するまで注入した。残りの活性化基の不活性化を、100mMエタノールアミン pH8(Biacore GE Healthcare)を用いて行った。
【0242】
結合試験
抗体を、異なる形態F5、F6、F9、F10、F11、F13、F14として試験し、一本鎖形態(F1)、及び完全長ヒトIgG1のような抗NKp46抗体と比較した。
【0243】
二重特異的タンパク質を1μg/mLで、プロテインAチップ上で捕捉し、組換えヒトNKp46タンパク質を、5μg/mLで、捕捉した二重特異的抗体に注入した。ブランク差し引きのために、サイクルを再び行って、NKp46タンパク質を泳動用緩衝液に替えた。
【0244】
親和性試験
一価親和性試験を、製造者(Biacore GE Healthcare kinetic wizard)が推奨する正規のCapture−Kineticプロトコルに従って行った。6.25〜400nMの範囲のヒトNKp46組換えタンパク質の7段階希釈物を、捕捉した二重特異的抗体に連続的に注入し、再生の10分前に解離させた。全てのセンサーグラムのセットを、1:1動態結合モデルを用いてフィッティングした。
【0245】
結果
SPRは、形態F1、F5、F6、F9、F10、F11、F13、F14の二重特異的ポリペプチドがNKp46に対する結合性を維持したことを示した。
【0246】
一価親和性並びに動力学的結合及び解離速度定数が、以下の表3に示されている。
【0247】
【表8】
【0248】
実施例6:
Daudi腫瘍標的に対するNK細胞とFc含有NKp46xCD19二重特異的タンパク質との結合
単量体Fcドメイン及び実施例3に記載の一本鎖F1又は二量体F2形態に従って配置されたドメイン、及び様々な抗NKp46可変ドメイン(NKp46−1、NKp46−2、NKp46−3、又はNKp46−4)をベースとするNKp46結合領域を有する二重特異的抗体を、NK細胞にCD19陽性腫瘍標的細胞(Bリンパ芽球細胞株によって十分に特徴付けられるDaudi)を溶解させる機能的能力について試験した。F2タンパク質は、scFv形態ではNKp46に対する結合性を失うが、F2のF(ab)様形態では結合性を維持するNKp46−9の可変領域をさらに含んでいた。
【0249】
簡単に述べると、(a)静止ヒトNK細胞、及び(b)ヒトNKp46でトランスフェクトされたヒトNK細胞株KHYG−1のそれぞれの細胞溶解活性を、U底96ウェルプレートで、典型的な4時間の51Cr放出アッセイで評価した。Daudi細胞を51Cr(50μCi(1.85MBq)/1×10細胞)で標識し、次いで、異なる濃度の単量体二重特異的抗体の存在下で、KHYG−1では50、静止NK細胞では(F1タンパク質に対して)10又は(F2タンパク質に対して)8.8に等しいエフェクター/標的比で、hNK46でトランスフェクトされたKHYG−1と混合した。短時間の遠心分離及び37℃で4時間のインキュベーション後、上清のサンプルを取り出して、LumaPlate(Perkin Elmer Life Sciences,Boston,MA)に移し、51Crの放出をTopCount NXT ベータ検出器(PerkinElmer Life Sciences,Boston,MA)で測定した。全ての実験条件を3連で分析し、特異的溶解のパーセンテージを以下のように決定した:100×(平均cpm実験放出−平均cpm自然放出)/(平均cpm総放出−平均cpm自然放出)。総放出のパーセンテージは、2% Triton X100(Sigma)での標的細胞の溶解によって得られ、自然放出は、培地(エフェクターもAbsも含まない)中の標的細胞に一致する。
【0250】
結果
KHYG−1 hNKp46 NK実験モデルでは、各二重特異的抗体NKp46−1、NKp46−2、NKp46−3、NKp46−4、又はNKp46−9が、陰性対照(ヒトIgG1アイソタイプ対照(IC)及びCD19/CD3二重特異的抗体)と比較して、ヒトKHYG−1 hNKp46 NK細胞株によるDaudi細胞の特異的溶解を誘導し、それにより、これらの抗体が、CD19/NKp46架橋によってKHYG−1 hNKp46によるDaudi標的細胞の溶解を誘導することが示された。
【0251】
静止NK細胞をエフェクターとして使用したときに、各二重特異的抗体NKp46−1、NKp46−2、NKp46−3、NKp46−4、又はNKp46−9が同様に、陰性対照(ヒトIgG1アイソタイプ対照(IC)抗体)と比較して、ヒトNK細胞によるDaudi細胞の特異的溶解を誘導し、それにより、これらの抗体が、CD19/NKp46架橋によってヒトNK細胞によるDaudi標的細胞の溶解を誘導することが示された。リツキシマブ(RTX、キメラIgG1)を、静止ヒトNK細胞によるADCC(抗体依存性細胞傷害)の陽性対照として使用した。RTX(このアッセイでは10μg/mlで)で得られた最大応答は、21.6%の特異的溶解であり、二重特異的抗体が高い標的細胞溶解活性を有することを例証した。静止NK細胞での実験の結果は、一本鎖F1タンパク質については図7Aに示され、二量体Fcタンパク質については図7Bに示されている。
【0252】
実施例7:
完全長抗NKp46 mAbと枯渇抗腫瘍mAbとの比較:NKp46xCD19二重特異的タンパク質が非特異的NK活性化を防止する
これらの試験は、二重特異的抗体が、非特異的NK細胞の活性化を引き起こすことなく、癌標的細胞に対するNKp46媒介NK活性化を媒介できるか否かを調べることを目的とした。
【0253】
NKp46−1、NKp46−2、NKp46−3、NKp46−4、又はNKp46−9からの抗NKp46可変ドメインを有する実施例3に記載のF2形態に従った配置を有するNKp46xCD19二重特異的タンパク質を、以下と比較した:
(a)完全長単一特異的抗NKp46抗体(ヒトIgG1のようなNKp46−3)、及び
(b)ADCC誘導抗体対照比較(ADCC inducing antibody control comparator)としての完全長ヒトIgG1のような抗CD19抗体。
【0254】
実験は、対照として以下をさらに含んでいた:リツキシマブ、高い発現レベルを有する標的抗原の抗CD20 ADCC誘導抗体対照;抗CD52抗体アレムツヅマブ、標的細胞及びNK細胞の両方に存在するCD52標的に結合するヒトIgG1;並びに陰性対照アイソタイプ対照治療抗体(標的細胞(HUG1−IC)に存在する標的に結合しないヒトIgG1)。
【0255】
様々なタンパク質を、CD19陽性腫瘍標的細胞(Daudi細胞)の存在下、CD19陰性CD16陽性標的細胞(HUT78 Tリンパ腫細胞)の存在下、且つ標的細胞の非存在下でのNK細胞の活性化に対する機能的な影響について試験した。
【0256】
簡単に述べると、NK活性化を、フローサイトメトリーによって、NK細胞でのCD69及びCD107の発現を評価することによって試験した。アッセイは、完全RPMI、150μL最終/ウェルで、96Uウェルプレートで行った。エフェクター細胞は、ドナーから精製した新鮮なNK細胞とした。標的細胞は、Daudi(CD19−陽性)、HUT78(CD19−陰性)、又はK562(NK活性化対照細胞株)とした。K562陽性対照に加えて、以下の3つの条件を試験した。
>NK細胞のみ
>NK細胞対Daudi(C19+)
>NK細胞対HUT78(CD19−)
【0257】
エフェクター:標的(E:T)比は、2.5:1(50,000E:20,000T)とし、抗体の希釈範囲は、1/4希釈で10μg/mLから始めた(n=8の濃度)。抗体、標的細胞、及びエフェクター細胞を混合し、300gで1分間回転させ、37℃で4時間インキュベートし、500gで3分間回転させ、染色緩衝液(SB)で2回洗浄し、50μLの染色Abミックスを加え、300gで30分間インキュベートし、CellFixを含むSB再懸濁ペレットで2回洗浄し、4℃で一晩保存し、Canto II(HTS)で蛍光を明らかにした。
【0258】
結果
1.NK細胞のみ
結果は図8Aに示されている。標的抗原発現細胞の非存在下で、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46−1、NKp46−2、NKp46−3、NKp46−4、及びNKp46−9の可変領域のそれぞれを含む)はいずれも、CD69又はCD107の発現による評価によるとNK細胞を活性化しなかった。完全長抗CD19もNK細胞を活性化しなかった。しかしながら、完全長抗NKp46抗体は、NK細胞の検出可能な活性化を引き起こした。アレムツヅマブも非常に高いレベルでNK細胞の活性化を誘導した。アイソタイプ対照抗体は、活性化を誘導しなかった。
【0259】
2.NK細胞対Daudi(CD19+)
結果は図8Bに示されている。標的抗原発現細胞の存在下で、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46−1、NKp46−2、NKp46−3、NKp46−4、及びNKp46−9の結合ドメインのそれぞれを含む)は全て、NK細胞を活性化した。完全長抗CD19は、最良でも非常に低いNK細胞の活性化のみを示した。完全長抗NKp46抗体もアレムツヅマブも、NK細胞のみの存在下で観察された活性化を超えた活性化の実質的な増加を示さなかった。図8Bは、完全長抗NKp46抗体が、NK細胞のみの存在下で観察されたベースライン活性化と同様のレベルを示すことを示す。アレムツヅマブも、NK細胞のみの存在下で観察された活性と同様のレベルのNK細胞の活性化を誘導し、この設定のより高い抗体濃度(ET 2.5:1)では、活性化は、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体を用いたときよりも高かった。アイソタイプ対照抗体は、活性化を誘導しなかった。
【0260】
3.NK細胞対HUT78(CD19−)
結果は図8Cに示されている。標的抗原陰性HUT78細胞の存在下で、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46−1、NKp46−2、NKp46−3、NKp46−4、及びNKp46−9の可変領域のそれぞれを含む)は全て、NK細胞を活性化した。しかしながら、完全長抗NKp46抗体及びアレムツヅマブは、NK細胞のみの存在下で観察された同様のレベルでNK細胞の検出可能な活性化を引き起こした。アイソタイプ対照抗体は、活性化を誘導しなかった。
【0261】
結論として、二重特異的抗NKp46タンパク質は、完全長単一特異的抗NKp46抗体、及び標的細胞の非存在下で同様にNK細胞を活性化する枯渇IgGアイソタイプの完全長抗体とは異なり、標的細胞特異的にNK細胞を活性化することができる。抗NKp46二重特異的タンパク質で達成されるNK細胞の活性化は、完全長抗CD19 IgG1抗体で観察される活性化よりも高かった。
【0262】
実施例8:
低いET比での枯渇抗腫瘍mAb:NKp46xCD19二重特異的タンパク質の効果の比較
これらの試験は、二重特異的抗体が、低いエフェクター:標的比で、癌標的細胞に対するNKp46媒介NK細胞活性化を媒介できるか否かを調べることを目的とした。この実施例に使用されるET比は、実施例7で使用された2.5:1のET比又は実施例6の10:1のET比よりもin vivoで遭遇するであろう設定に近いと考えられる1:1とした。
【0263】
NKp46−1、NKp46−2、NKp46−3、NKp46−4、又はNKp46−9からの抗NKp46可変ドメインを有する実施例3に記載のF2形態に従った配置を有するNKp46xCD19二重特異的タンパク質を、以下と比較した:
(a)完全長単一特異的抗NKp46抗体(ヒトIgG1のようなNKp46−3)、及び
(b)ADCC誘導抗体対照比較としての完全長ヒトIgG1のような抗CD19抗体。
【0264】
実験は、対象として以下をさらに含んでいた:リツキシマブ(高い発現レベルを有する標的抗原の抗CD20 ADCC誘導抗体対照);抗CD52抗体アレムツヅマブ(標的細胞及びNK細胞の両方に存在するCD52標的に結合するヒトIgG1)、並びに陰性対照アイソタイプ対照治療抗体(標的細胞(HUG1−IC)に存在する標的に結合しないヒトIgG1)。様々なタンパク質を、CD19陽性腫瘍標的細胞(Daudi細胞)の存在下、CD19陰性CD16陽性標的細胞(HUT78 Tリンパ腫細胞)の存在下、且つ標的細胞の非存在下でのCD69又はCD107の発現により評価される、NK細胞活性化に対する機能的な影響について試験した。これらの実験は、ET比を1:1としたことを除いて実施例7と同様に行った。
【0265】
結果
結果は図9に示されている(上のパネル:CD107及び下のパネル:CD69)。標的抗原発現細胞の存在下では、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46−1、NKp46−2、NKp46−3、NKp46−4、及びNKp46−9の可変領域のそれぞれを含む)は全て、Daudi細胞の存在下でNK細胞を活性化した。
【0266】
Daudi細胞の存在下で二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体によって誘導される活性化は、この設定で低い活性を有するADCC誘導抗体のような完全長ヒトIgG1抗CD19抗体よりも遥かに強力であった。さらに、この低いE:T比の設定では、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体によって誘導される活性化は、抗CD20抗体リツキシマブと同程度に強力であり、差異は、差異が2.5:1のET比で観察された濃度よりも10倍高い最高濃度でのみ観察された。
【0267】
標的細胞の非存在下又は標的抗原陰性HUT78細胞の存在下では、完全長抗NKp46抗体及びアレムツヅマブは、Daudi細胞の存在下で観察されたベースライン活性化と同様のレベルを示した。抗NKp46x抗CD19抗体は、HUT78細胞の存在下でNK細胞を活性化しなかった。
【0268】
結論として、二重特異的タンパク質は、標的細胞特異的にNK細胞を活性化することができ、より低いエフェクター:標的比は、NK細胞の活性化の媒介において従来のヒトIgG1抗体よりも有効である。
【0269】
実施例9:
動作機序の試験
NKp46−3からの抗NKp46可変ドメインを有する実施例3又は4に記載のF2、F3(一本鎖形態)、F5、又はF6形態に従った配置を有するNKp46x抗CD19二重特異的抗体を、CD16−/NKp46+NK細胞株にCD19陽性腫瘍標的細胞を溶解させる機能的能力について、リツキシマブ(抗CD20 ADCC誘導抗体)、及びヒトIgG1アイソタイプ対照抗体と比較した。
【0270】
簡単に述べると、CD16−/NKp46+ヒトNK細胞株KHYG−1の細胞溶解活性を、U底96ウェルプレートで、典型的な4時間の51Cr放出アッセイで評価した。Daudi細胞又はB221細胞を51Cr(50μCi(1.85MBq)/1×10細胞)で標識し、次いで、1/5希釈(n=8の濃度)で10−7mol/mLから始まる希釈範囲の試験抗体の存在下、50:1に等しいエフェクター/標的比でKHYG−1と混合した。
【0271】
短時間の遠心分離及び37℃で4時間のインキュベーション後、50μLの上清を取り出して、LumaPlate(Perkin Elmer Life Sciences,Boston,MA)に移し、51Crの放出をTopCount NXTベータ検出器(PerkinElmer Life Sciences,Boston,MA)で測定した。全ての実験条件を3連で分析し、特異的溶解のパーセンテージを以下のように決定した:100×(平均cpm実験放出−平均cpm自然放出)/(平均cpm総放出−平均cpm自然放出)。総放出のパーセンテージは、2% Triton X100(Sigma)での標的細胞の溶解によって得られ、自然放出は、培地(エフェクターもAbsも含まない)中の標的細胞に一致する。
【0272】
結果
結果は、図10A(KHYG−1対Daudi)及び図10B(KHYG−1対B221)に示されている。KHYG−1 hNKp46 NK実験モデルでは、各NKp46xCD19二重特異的タンパク質(形態F2、F3、F5、及びF6)は、ヒトKHYG−1 hNKp46 NK細胞株によるDaudi細胞又はB221細胞の特異的溶解を誘導したが、リツキシマブ及びヒトIgG1アイソタイプ対照(IC)抗体は誘導しなかった。
【0273】
実施例10:
様々な二重特異的形態のFcRnに対する結合性
様々な抗体形態のヒトFcRNに対する親和性を、実施例2〜5に記載されているように、組換えFcRnタンパク質をSensor Chip CM5上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合により固定化することによって、表面プラズモン共鳴(SPR)によって試験した。
【0274】
ヒトIgG1定常領域を有するキメラ完全長抗CD19抗体、及びNKp46−3(F2ではNKp46−2)からの抗NKp46可変ドメインを有する実施例3又は4に記載のF5、F6、F9、F10、F11、F13、又はF14形態に従った配置を有するNKp46xCD19二重特異的タンパク質をそれぞれの分析物について試験し、全てのセンサーグラムを、定常状態又は1:1のSCK結合モデルを用いてフィッティングした。
【0275】
結果は以下の表に示されている。二量体Fcドメイン(形態F5、F6、F13、F14)を有する二重特異的タンパク質は、完全長IgG1抗体の親和性と同様の親和性でFcRnに結合した。単量体Fcドメイン(F9、F10、F11)を有する二重特異的タンパク質もFcRnに対する結合性を示したが、二量体Fcドメインを有する二重特異的タンパク質よりも低い結合性であった。
【0276】
【表9】
【0277】
実施例11:
抗CD19x抗NKp46のFcγRに対する結合性
ここでは2つのscFvである2つの抗原結合ドメイン間に配置されたそのCH2−CH3ドメインを有する抗CD19−F1−抗NKp46を、このような二重特異的単量体Fcタンパク質が、Fcγ受容体に対する結合性を維持できるか否かを決定するために評価した。
【0278】
ヒトIgG1抗体及びCD19/NKp46−1二重特異的抗体をCM5チップに固定した。組換えFcγR(カニクイザル及びヒトCD64、CD32a、CD32b、及びCD16)をクローニングし、産生し、且つInnate Pharmaで精製した。図11は、固定化ヒトIgG1対照(灰色)及びCD19/NKp46−1二重特異的抗体(黒色)に対するカニクイザル(Macaca fascicularis)組換えFcgR(上のパネル;CyCD64、CyCD32a、CYCD32b、CyCD16)及びヒト組換えFcgR(下のパネル;HuCD64、HuCD32a、HuCD32b、HuCD16a)の結合性を示す重畳センサーグラムを示す。センサーグラムは、サンプルの注入開始時にy軸及びx軸で0に合わせた。
【0279】
図11は、完全長野生型ヒトIgG1が全てのカニクイザル及びヒトFcγ受容体に結合したが、CD19/NKp46−1二重特異的抗体がいずれの受容体にも結合しなかったことを示す。
【0280】
実施例12:
既存の形態と比較して改善された様々な二重特異的形態の産生プロフィール及び産生収率
ブリナツモマブ、並びにF1〜F7形態及びNKp46−3をベースとするNKp46及びCD19結合領域を有する2つの二重特異的抗体、並びにブリナツモマブをそれぞれ同じプロトコルに従って、同じ発現系を用いて形態6(F6)、DART形態、及びBITE形態の下でクローニングし、産生した。F6、DART、及びBITE二重特異的タンパク質を、F6にはprot−Aビーズを用い、DART及びBITEにはNI−NTAビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製した。精製されたタンパク質をさらに分析し、且つSECによって精製した(図12A)。BITE及びDARTは、F6と比較して非常に低い産生収率を示し、非常に複雑なSECプロフィールを有していた。図12B(矢印)に示されているように、DART及びBITEは、予想SEC画分(BITEでは3及び4、DARTでは4及び5)でのクマーシー染色後のSDS−PAGEによってわずかに検出可能であり、F6形態は、単量体二重特異的タンパク質を含む主ピーク(画分3)を有する、明確で単純なSEC及びSDS−PAGEプロフィールを示した。F6形態の主ピークは、全タンパク質の約30%に一致する。これらの観察は、F1〜F17タンパク質にも当てはまり(データは不図示)、これらの形態中に存在するFcドメイン(又はFc由来ドメイン)が産生を促進し、二重特異的タンパク質の質及び溶解性を改善することを示唆している。
【0281】
さらに、タンパク質F1〜F17中に存在するFcドメインは、例えば、プロテインAによって精製することができないBiTe及びDART抗体の場合、治療製品の不所望の部分として後に残存するペプチドタグの組み込みを必要とすることなく、アフィニティークロマトグラフィーに適応しているという利点を有する。F1〜F17抗体は全て、プロテインAに結合される。以下の表は、様々な形態の産生性を示す。
【0282】
【表10】
【0283】
表題及び副題は、本明細書では便宜のためにのみ使用され、本発明を限定すると決して一切解釈するべきではない。上述の要素の全ての可能なバリエーションでのあらゆる組み合わせが、本明細書に特段の記載がない限り、又は文脈から他の旨である場合を除き、本発明に包含される。本明細書で述べられた値の範囲は、本明細書に特段の記載がない限り、範囲内に含まれるそれぞれの別個の値について個々に述べられる省略方法の役割を単に果たすものであり、それぞれの別個の値は、本明細書で個々に述べられたかのように本明細書に包含される。特段の記載がない限り、本明細書に記載される全ての正確な値は、対応するおおよその値を代表する(例えば、特定の因子又は測定値に関して記載される全ての正確な例示的な値は、適切な場合は「約」によって変更される、対応するおおよその測定値を示すものと見なすことができる)。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に特段の記載がない限り、又は文脈から他の旨である場合を除き、任意の適切な順序で行うことができる。
【0284】
本明細書に記載されるあらゆる例又は例示的な語(例えば、「〜など」)の使用は、単に本発明をより明確にするためのものであり、特段の記載がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明確な記載がない限り、いずれの要素も本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈される語は本明細書には存在しない。
【0285】
語、例えば、1つ又は複数の要素を指す語を用いた、本発明の任意の態様又は実施形態の本明細書の説明は、特段の記載がない限り、又は文脈から明確に他の旨である場合を除き、その1つ又は複数の特定の要素「からなる」、「から実質的になる」、又は「を実質的に含む」本発明の同様の態様又は実施形態を支援するためである(例えば、特定の要素を含むとして本明細書に記載される組成物は、特段の記載がない限り、又は文脈から明確に他の旨である場合を除き、その要素からなる組成物の記載でもあることを理解されたい)。
【0286】
本発明は、適用される法律によって許容される最大程度まで、本明細書に記載される態様又は請求項で述べられる主題の全ての変更形態及び均等物を含む。
【0287】
本明細書で述べられる全ての刊行物及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物又は特許出願が、参照により含められると具体的且つ個別に示されたかのように、参照によりそれらの全内容が本明細書に組み入れられる。
【0288】
前述の発明は、理解を明確にするために例示及び例によってある程度詳細に説明されたが、当業者であれば、添付の特許請求の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の変形形態及び変更形態をなし得ることが本発明の教示から明白であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図6-5】
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]