(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、本発明の実施形態に係る車両搭載用電力システムの構成が示されている。車両搭載用電力システムは、制御ユニット10、電力供給回路12、U相パワーカード14u、V相パワーカード14v、およびW相パワーカード14wを備えている。各パワーカードにはモータジェネレータ等の3相の負荷回路16が接続されている。各パワーカードは電気回路が組み込まれた電気回路モジュールであり、負荷回路16との間で電力を授受する機能を有する。
【0018】
制御ユニット10は、電力供給回路12および各パワーカードを制御する。電力供給回路12は、制御ユニット10による制御に従って各パワーカードに電力を供給し、各パワーカードは、制御ユニット10による制御に従って負荷回路16に電力を供給する。また、各パワーカードは、制御ユニット10による制御に従って負荷回路16から電力を回収し、電力供給回路12は、制御ユニット10による制御に従って各パワーカードから電力を回収する。
【0019】
図2には、車両搭載用電力システムのU相に関する部分として、U相電力システムが模式的に示されている。U相電力システムは、制御ユニット10、電力供給回路12、送電コイル18、送信線状導体26a、送信線状導体26b、送電基板20およびU相パワーカード14uを備える。
図2では、構成を把握し易くするため送電基板20が一点鎖線で示され、送電基板20に固定された各構成要素が実線で示されている。
【0020】
U相パワーカード14uは、第1受電コイル24a、第2受電コイル24b、受信線状導体27a、受信線状導体27b、電力制御回路28、および受電基板30を備える。電力制御回路28は、整流回路32a、受信回路34a、駆動回路36aおよびスイッチング素子38aを備える。整流回路32a、受信回路34a、および駆動回路36aは、第1受電コイル24aから得られた電力をスイッチング素子38aに供給すると共に、スイッチング素子38aをオンオフ制御する。
【0021】
電力制御回路28は、さらに、整流回路32b、受信回路34b、駆動回路36bおよびスイッチング素子38bを備える。整流回路32b、受信回路34b、および駆動回路36bは、第2受電コイル24bから得られた電力をスイッチング素子38bに供給すると共に、スイッチング素子38bをオンオフ制御する。
【0022】
スイッチング素子38aおよび38bには、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。これらのスイッチング素子はスイッチングアームを構成してもよい。各スイッチング素子としてIGBTを用いた場合、スイッチングアームでは、上アームとしてのスイッチング素子38aのエミッタ端子と、下アームとしてのスイッチング素子38bのコレクタ端子とが接続される。上アームと下アームの接続点が負荷回路のU相端子に接続され、上アームのコレクタ端子と下アームのエミッタ端子との間に電源電圧が印加される。スイッチングアームでは、例えば上アームと下アームが交互にオンオフすることで、上アームと下アームとの接続点から負荷回路に向かう電流が流れ、または、負荷回路からその接続点に向かう電流が流れる。
【0023】
電力供給回路12には送電コイル18が接続され、電力制御回路28には第1受電コイル24aおよび第2受電コイル24bが接続されている。送電コイル18は送電基板20に固定され、第1受電コイル24aおよび第2受電コイル24bは受電基板30に固定されている。送電コイル18は第1ループ区間18aおよび第2ループ区間18bを有し、送電基板20および受電基板30が対向することで、第1ループ区間18aが第1受電コイル24aに対向し、第2ループ区間18bが第2受電コイル24bに対向する。
【0024】
送電コイル18の第1ループ区間18aと第1受電コイル24aは、一方が発生した磁束が他方に鎖交する位置関係で配置され、送電コイル18の第2ループ区間18bと第2受電コイル24bもまた、一方が発生した磁束が他方に鎖交する位置関係で配置されている。これによって、電力供給回路12と電力制御回路28との間で非接触給電が行われる。
【0025】
制御ユニット10と電力制御回路28との間には、スイッチング素子38aに対する信号伝送路29aと、スイッチング素子38bに対する信号伝送路29bが個別に設けられている。信号伝送路29aおよび29bのそれぞれは、平衡モードの信号を伝送する2本の導線によって構成されている。
【0026】
信号伝送路29aには電磁気結合器25aが設けられており、制御ユニット10と電力制御回路28とが電磁気結合器25aを介して接続されている。同様に、信号伝送路29bには電磁気結合器25bが設けられており、制御ユニット10と電力制御回路28とが電磁気結合器25bを介して接続されている。
【0027】
電磁気結合器25aは、長手方向を揃えて対向する送信線状導体26a、および、受信線状導体27aを備え、この一対の線状導体の電気的または磁気的な結合によって、一方の線状導体側の回路と、他方の線状導体側の回路との間の信号伝送路を形成する。
【0028】
電磁気結合器25bは、長手方向を揃えて対向する送信線状導体26b、および受信線状導体27bを備え、この一対の線状導体の電気的な結合または磁気的な結合によって、一方の線状導体側の回路と、他方の線状導体側の回路との間の信号伝送路を形成する。
【0029】
電磁気結合器25aおよび25bのいずれについても、送信線状導体は送電基板20に固定されており、受信線状導体は受電基板30に固定されている。送電基板20および受電基板30が対向することで、これらの線状導体(結合導体)が対向し、電磁気結合器が形成される。制御ユニット10は、電磁気結合器を介して電力制御回路28との間で非接触通信を行う。
【0030】
各電磁気結合器が備える一対の線状導体は直接接触しておらず、さらに、送電コイル18と各受電コイルは直接接触していないため、送電基板20と受電基板30とは着脱自在としてもよい。
【0031】
電力供給回路12は、制御ユニット10の制御に応じて送電コイル18に交流電圧を出力する。これによって、送電コイル18の第1ループ区間18aおよび第2ループ区間18bからは、それぞれ第1受電コイル24aおよび第2受電コイル24bに鎖交する磁束が発生し、第1受電コイル24aおよび第2受電コイル24bには誘導起電力が発生する。第1受電コイル24aおよび第2受電コイル24bは、受電回路としての電力制御回路28に誘導起電力に基づく交流電力を出力する。整流回路32aは、第1受電コイル24aから出力された交流電力を直流電力に変換し、受信回路34aおよび駆動回路36aに出力する。同様に、整流回路32bは、第2受電コイル24bから出力された交流電力を直流電力に変換し、受信回路34bおよび駆動回路36bに出力する。
【0032】
制御ユニット10は、スイッチング素子38aを制御するための制御信号を電磁気結合器25aに出力する。電磁気結合器25aは制御信号を受信回路34aに伝送する。受信回路34aは、制御信号に応じて駆動回路36aを制御し、駆動回路36aはスイッチング素子38aをオンオフ制御する。同様に、制御ユニット10は、スイッチング素子38bを制御するための制御信号を電磁気結合器25bに出力する。電磁気結合器25bは制御信号を受信回路34bに伝送する。受信回路34bは、制御信号に応じて駆動回路36bを制御し、駆動回路36bはスイッチング素子38bをオンオフ制御する。
【0033】
スイッチング素子38aおよび38bは、整流回路32aおよび32bから出力される電力を駆動回路36aおよび駆動回路36bによるオンオフ制御に応じて調整し、負荷回路に出力する。
【0034】
なお、負荷回路から電力供給回路12に電力が回収される場合には、スイッチング素子38aおよびスイッチング素子38bに対するオンオフ制御の下、負荷回路、駆動回路(36a,36b)、整流回路(32a,32b)、受電コイル(24a,24b)、送電コイル18、および電力供給回路12の順序で電力が伝送される。
【0035】
ここでは、車両搭載用電力システムのU相に関する構成について説明したが、V相およびW相に関する構成は、U相と同様の構成を有する。
図1に示されるように、V相パワーカード14vおよびW相パワーカード14wはU相パワーカード14uと共通の制御ユニット10によって制御されてもよい。また、V相パワーカード14vおよびW相パワーカード14wには、U相パワーカード14uと共通の電力供給回路12から電力が供給されてもよい。
【0036】
図3には、送電コイル18、第1受電コイル24aおよび第2受電コイル24bの構成が概念的に示されている。この図は、各コイルで生じる物理現象を説明するためのものであり、各コイルの構造を厳密に示すものではない。送電コイル18は、端子T1、導線区間c1〜c24、および端子T2を備える。導線端子T1からy軸正方向に導線区間c1が伸び、導線区間c1の終端からx軸負方向に導線区間c2が伸びている。導線区間c2の終端からx軸負方向に対して斜め手前方向に導線区間c3が伸び、導線区間c3の終端からx軸負方向に導線区間c4が伸びている。導線区間c4の終端からy軸正方向に導線区間c5が伸び、導線区間c5の終端からx軸正方向に導線区間c6が伸びている。導線区間c6の終端からx軸正方向に対して斜め手前方向に導線区間c7が伸び、導線区間c7の終端からx軸正方向に導線区間c8が伸びている。なお、導線区間c7は、x軸負方向に対して斜め手前方向に伸びる導線区間群(c3,c11,c19)の下方に位置している。
【0037】
このように、導線区間c1〜c8は略八の字形状を描く。同様に、導線区間c9〜c16が、それぞれ導線c1〜c8に隣接して略八の字形状を描き、導線区間c17〜c24が、それぞれ導線区間c9〜c16に隣接して略八の字形状を描き、導線区間c24の終端が端子T2となっている。導線区間c3、c11およびc19と、導線区間c7、c15およびc23とが交わる各交差位置よりも左側の部分によって第1ループ区間18aが形成され、各交差位置よりも右側の部分によって第2ループ区間18bが形成されている。
【0038】
第1ループ区間18aの下方には第1受電コイル24aが位置する。第1受電コイル24aは、端子Ta1、導線区間d1〜d10、および端子Ta2を備える。端子Ta1からx軸正方向に導線区間d1が伸び、導線区間d1の終端からy軸正方向に導線区間d2が伸びている。導線区間d2の終端からx軸負方向に導線区間d3が伸び、導線区間d3の終端からy軸負方向に導線区間d4が伸び、導線区間d4の終端からx軸正方向に導線区間d5が伸びている。このように、導線区間d1〜d5は略矩形のループを描く。導線区間d5の終端からは、導線区間d6が導線区間d1の下方でx軸正方向に伸びている。導線区間d6〜d10は、それぞれ導線区間d1〜d5の下方で略矩形のループを描き、導線区間d10の終端が端子Ta2となっている。
【0039】
第2ループ区間18bの下方には、第2受電コイル24bが位置する。第2受電コイル24bは、第1受電コイル24aと同様の構造を有し、端子Tb1、2周のループを描く各導線区間、および端子Tb2を有している。
【0040】
送電コイル18の端子T1および端子T2に交流電流が流れ、送電コイル18の端子T1に電流が流入し、端子T2から電流が流出している間は、第1ループ区間18aには時計回りの電流が流れ、第2ループ区間18bには反時計回りの電流が流れる。これによって、第1ループ区間18aには下方向に第1ループ区間18aを貫通し、第1受電コイル24aに鎖交する磁束が発生し、第1受電コイル24aの端子Ta1および端子Ta2から誘導起電力が出力される。一方、第2ループ区間18bには上方向に第2ループ区間18bを貫通し、第2受電コイル24bに鎖交する磁束が発生し、第2受電コイル24bの端子Tb1および端子Tb2から誘導起電力が出力される。
【0041】
送電コイル18の端子T1および端子T2に交流電流が流れ、送電コイル18の端子T1から電流が流出し、端子T2に電流が流入している間は、各受電コイルに流れる電流の向き、各受電コイルに鎖交する磁束の向き、および各受電コイルから出力される誘導起電力の極性は上記と逆になる。
【0042】
このような構成によれば、導線区間群(c3,c11,c19)に奥側から手前に向かって電流が流れるときは、導線区間群(c7、c15、c23)にも奥側から手前に向かって電流が流れる。そして、導線区間群(c3,c11,c19)に手前側から奥に向かって電流が流れるときは、導線区間群(c7、c15、c23)にも手前側から奥に電流が流れる。したがって、導線区間群(c3,c11,c19)に流れる電流によって発生する磁束と、導線区間群(c7、c15、c23)に流れる電流によって発生する磁束が、各受電コイルに対して同一方向に鎖交する。これによって、送電コイル18を単なる矩形とした場合に比べて、送電コイル18と各受電コイルとの間の相互インダクタンスが増加する。
【0043】
なお、上記では、2つのループ区間を備える送電コイルについて説明した。送電コイルは、3つ以上のループ区間を備えるものであってもよい。
図4には、各ループ区間が1周の導線を備える送電コイル42の構成例が概念的に示されている。図中の矢印は、ある時点において送電コイル42に流れる電流の向きを示している。隣接する2つのループ区間は略八の字形状を有している。
図4には示されていないが、複数のループ区間のそれぞれには受電コイルが対向する。各ループ区間で発生した磁束は、各ループ区間に対向する受電コイルに鎖交し、各受電コイルに誘導起電力を発生させる。
【0044】
このような構成によれば、互いに交差してループ区間を仕切る2つの交差区間44および46の一方に
図4の上から下に電流が流れるときは、他方にも上から下に電流が流れる。そして、2つの交差区間44および46の一方に
図4の下から上に電流が流れるときは、他方にも下から上に電流が流れる。したがって、交差区間44に流れる電流によって発生する磁束と、交差区間46に流れる電流によって発生する磁束のが、各受電コイルに対して同一方向に鎖交する。これによって、送電コイルを単なる矩形とした場合に比べて、送電コイルと各受電コイルとの間の相互インダクタンスが増加する。
【0045】
図5には、送電コイルの具体的な構成例が示されている。
図5では、ループを描く複数種のループ導線が、線の太さによって区別して描かれている。送電コイル48は、第1ループ導線52、第2ループ導線54、ジャンパ線56、第3ループ導線58および第4ループ導線60を備え、第1ループ導線52および第3ループ導線58が第1ループ区間48aを形成し、第2ループ導線54および第4ループ導線60が第2ループ区間48bを形成する。
【0046】
第1ループ導線52の一端は端子T1となっている。第1ループ導線52は、端子T1を開始端とし第1ループ区間48aの外側を反時計回りに周回する。第1ループ導線52の終端には第2ループ導線54の開始端が接続されている。第2ループ導線54は、第1ループ導線52の終端から第2ループ区間48bの内側を時計回りに周回する。第2ループ導線54の終端には、第2ループ導線54および第4ループ導線60を跨ぐジャンパ線56を介して第3ループ導線58の開始端が接続されている。第3ループ導線58は、ジャンパ線56の終端から第1ループ区間48aの内側を反時計回りに周回する。第3ループ導線58の終端には第4ループ導線60の開始端が接続されている。第4ループ導線60は、第3ループ導線58の終端から第2ループ区間48bの外側を時計回りに周回する。第4ループ導線60の終端は端子T2となっている。
【0047】
このような構成によって、第1ループ導線52および第3ループ導線58は第1ループ区間48aを形成し、第2ループ導線54および第4ループ導線60は第2ループ区間48bを形成する。
【0048】
送電コイル48の端子T1および端子T2に交流電流が流れており、送電コイル48の端子T1に電流が流入し、端子T2から電流が流出している間は、第1ループ区間48aには反時計回りの電流が流れ、第2ループ区間48bには時計回りの電流が流れる。一方、送電コイル48の端子T1から電流が流出し、端子T2に電流が流入している間は、第1ループ区間48aには時計回りの電流が流れ、第2ループ区間48bには反時計回りの電流が流れる。
【0049】
第1ループ導線52のうち第2ループ区間48bに近接してy軸方向に伸びる近接区間A1、第3ループ導線58のうち第2ループ区間48bに近接してy軸方向に伸びる近接区間A3、第2ループ導線54のうち第1ループ区間48aに近接してy軸方向に伸びる近接区間B2、および、第4ループ導線60のうち第1ループ区間48aに近接してy軸方向に伸びる近接区間B4には、同一方向の電流が流れる。したがって、各近接区間に流れる電流によって発生する磁束が、各受電コイルに対して同一方向に鎖交する。これによって、送電コイル48を単なる矩形とした場合に比べて、送電コイル48と各受電コイルとの間の相互インダクタンスが増加する。
【0050】
図5に示される構成では、端子T1および端子T2との間で、略八の字形状が2周に亘って描かれている。
図6には、この送電コイル構造を2層に亘って積み重ねた送電コイルが模式的に示されている。第1層L1の端子T2が第2層L2の端子T1に接続されている。これによって、第1層L1の端子T1から第2層L2の端子T2に至るまでの経路において、略八の字形状が4周に亘って描かれる。したがって、1層の送電コイル構造を用いる場合に比べて、送電コイルと各受電コイルとの相互インダクタンスが増加する。このようにn層の送電コイル構造を用いることで、略八の字形状を2n周に亘って描く送電コイルが形成される。送電コイルは、複数層に亘って送電コイル構造が形成された多層基板によって形成してもよい。
【0051】
受電コイルもまた、多層基板によって形成してもよい。この場合1層当たりの巻き数は複数としてもよい。
図7には上から数えて奇数番目の層の構造が例示され、
図8には、上から数えて偶数番目の層の構造が例示されている。
図7に示される奇数番目の層では、受電コイルを構成する導線62が、導線端E1から反時計回りに1周毎に内側にシフトしながら3周の略矩形を描き導線端E2に至る。
図8に示される偶数番目の層では、受電コイルを形成する導線64が、導線端E3から反時計回りに1周毎に外側にシフトしながら3周の略矩形を描き導線端E4に至る。
【0052】
奇数番目の層の導線端E2と偶数番目の層の導線端E3はスルーホールで接続される。その偶数番目の層の下に次の奇数番目の層がある場合には、偶数番目の層の導線端E4と次の奇数番目の層の導線端E1がスルーホールで接続される。第1層目の導線端E1は受電コイルの一方の端子となる。最下層が偶数番目である場合には、導線端E4が受電コイルの他方の端子となり、最下層が奇数番目である場合には、導線端E2が受電コイルの他方の端子となる。
【0053】
図9には、複数のパワーカード14が冷却器65に装着された状態が示されている。冷却器65は、流入管66、流出管68、および複数の冷却フィン70を備えている。冷却フィン70は板状に形成されており、冷媒が流通する空洞が内部に形成されている。複数の冷却フィン70は、板面方向を揃えて所定間隔を隔てて連ねられている。隣接する2つの冷却フィン70の間にはパワーカード14が配置されている。
図9には、8枚のパワーカード14が冷却フィン70の間に配置された例が示されている。各パワーカード14は、1つのスイッチングアームを構成する2つのスイッチング素子を含む。各パワーカード14の上部には送電基板20が重ねられている。各送電基板20の上端部には、各送電基板20と垂直に配線基板76が接合されており、配線基板76に設けられた各配線が各送電基板20に接続されている。
【0054】
各冷却フィン70では、
図9の奥側の端付近に流入管66が設けられ、手前側の端付近に流出管68が設けられている。流入管66は各冷却フィン70の内部の空洞に連通し、各冷却フィン70の空洞は流出管68に連通している。流入管66は、その入口72から流入した冷媒を各冷却フィン70の空洞へと導く。各冷却フィン70の空洞を通る冷媒は近接するパワーカード14から熱を奪ってパワーカード14を冷却する。各冷却フィン70の空洞からは流出管68に冷媒が放出される。流出管68は、各冷却フィン70から放出された冷媒をその出口74へと導く。
【0055】
図10には、パワーカード14および送電基板20が示されている。ただし、パワーカード14については、モールド材料で覆われる前の状態が示されている。また、送電基板20は、説明の便宜上、誘電体板を透かして送電コイル18、送信線状導体26a、および送信線状導体26bが示されている。
【0056】
パワーカード14は、スイッチング素子38aの他、スイッチング素子38aを動作させる構成要素として、第1受電コイル24a、受信線状導体27a、および駆動回路モジュール78aを備える。さらに、パワーカード14は、スイッチング素子38bの他、スイッチング素子38bを動作させる構成要素として、第2受電コイル24b、受信線状導体27b、および駆動回路モジュール78bを備える。また、パワーカード14は、第1受電コイル24a、受信線状導体27a、第2受電コイル24b、および受信線状導体27bが固定される受電基板30を備える。駆動回路モジュール78aは、
図2に示された整流回路32a、受信回路34aおよび駆動回路36aを備え、駆動回路モジュール78bは、
図2に示された整流回路32b、受信回路34bおよび駆動回路36bを備える。
【0057】
受信線状導体27aは、第1受電コイル24aが形成するループ形状の内側に配置され、受信線状導体27bは、第2受電コイル24bが形成するループ形状の内側に配置されている。
【0058】
送電基板20には、送電コイル18、送信線状導体26a、および送信線状導体26bが固定されている。送信線状導体26aは、送電コイル18の第1ループ区間18aの内側に配置され、送信線状導体26bは、送電コイル18の第2ループ区間18bの内側に配置されている。送電基板20は、第1ループ区間18aが第1受電コイル24aに対向し、送信線状導体26aが受信線状導体27aに対向し、第2ループ区間18bが第2受電コイル24bに対向し、さらに、送信線状導体26bが受信線状導体27bに対向するように受電基板30に重ねられる。送電基板20が受電基板30に重ねられることで、送信線状導体26aおよび受信線状導体27aが対向して電磁気結合器が形成され、送信線状導体26bおよび受信線状導体27bが対向して電磁気結合器が形成される。
【0059】
図10に示されているスイッチング素子38aおよびスイッチング素子38bは、スイッチングアームを構成し、スイッチングアームから3つの電極80が引き出されている。また、
図10に示されているパワーカード14は、絶縁体材料によってモールドされ、冷却フィンの間に挟まれるような板形状に形成される。
【0060】
図11には、パワーカード14および送電基板20の断面が模式的に示されている。送電基板20を構成する誘電体板には送電コイル18が設けられ、送電コイル18が形成する第1ループ区間18aの内側に送信線状導体26aが形成されている。ここでは、第1ループ区間18aおよび送信線状導体26aが現れる断面が示されているが、
図10に示された第2ループ区間18bおよび送信線状導体26bもまた同様の構造を有している。送電コイル18からは配線基板76に導線が引き出されている。
【0061】
受電基板30を構成する誘電体板には第1受電コイル24aが設けられ、第1受電コイル24aが形成するループ形状の内側に受信線状導体27aが設けられている。ここでは、第1受電コイル24aおよび受信線状導体27aが現れる断面が示されているが、
図10に示された第2受電コイル24bおよび受信線状導体27bもまた同様の構造を有している。
【0062】
このように、送電コイルと受電コイルとが対向し、上述の電力供給回路から電力制御回路に非接触給電が行われる。また、送信線状導体および受信線状導体が対向することで電磁気結合器が形成され、上述の制御ユニットから電力制御回路に制御信号が伝送される。
【0063】
図12には、パワーカード14の両面側に送電基板が設けられた変形例が示されている。第1送電基板20−1を構成する誘電体板には第1送電コイル18−1が設けられ、第2送電基板20−2を構成する誘電体板には第2送電コイル18−2が設けられている。第2送電基板20−2には受信線状導体が設けられておらず、第2送電基板20−2は第2送電コイル18−2を備える。第1送電コイル18−1および第2送電コイル18−2からは、配線基板76に導線が引き出され、これらの送電コイルは直列に接続されている。このように、第1送電コイル18−1および第2送電コイル18−2を直列接続して構成される送電コイルは、各受信コイルが形成するループに両面から対向するループの対を形成している。第1送電コイル18−1に含まれる第1ループ区間および第2ループ区間の巻き方向と、第2送電コイル18−2に含まれる第1ループ区間および第2ループ区間の巻き方向は、各ループ区間から発せられ各受電コイルに鎖交する磁束の方向が同一となる方向とされる。
【0064】
図13(a)には、U相パワーカード14u、V相パワーカード14vおよびW相パワーカード14wが連ねられた場合の構成が示されている。U相パワーカード14u、V相パワーカード14vおよびW相パワーカード14w、および、それぞれに対応する送電基板20U、送電基板20Vおよび送電基板20Wは、
図11に示された送電基板20およびパワーカード14と同様の構成を有する。送電基板およびパワーカードは、各相について同様の構成を有するが、符号の末尾に「U」、「V」および「W」を付して、その構成要素が属する相を区別する。
【0065】
送電基板20Uの送電コイル18U、送電基板20Vの送電コイル18V、および送電基板20Wの送電コイル18Wのそれぞれからは、配線基板76に導線が引き出され、これらの送電コイルが直列接続されている。
【0066】
図13(b)には等価回路が示されている。送電コイル18U、送電コイル18Vおよび送電コイル18Wは直列接続され、1つの一次巻線Pが構成される。U相パワーカード14uの2つの受電コイルは、二次巻線UaおよびUbを構成する。V相パワーカード14vの2つの受電コイルは、二次巻線VaおよびVbを構成する。W相パワーカード14wの2つの受電コイルは、二次巻線WaおよびWbを構成する。
【0067】
このような構成によれば、送電コイルが1つでよいため構造が単純化される。また、送電コイルの導線が形成する略八の字形状によって、送電コイルを矩形とした場合に比べて、一次巻線と各二次巻線との間の相互インダクタンスが大きくなり、一次巻線と二次巻線との間の結合係数が大きくなる。これによって、電流供給回路から電力制御回路に供給される電力が大きくなり得る。
【0068】
なお、上記では、送信コイルの各ループ区間の内側に送信線状導体が配置され、受電コイルが形成するループ形状の内側に受信線状導体が配置された構成について説明した。送信線状導体はループ区間の外側に並設されてもよく、受信線状導体は受電コイルが形成するループ形状の外側に並んで併設されてもよい。この場合であっても、送電基板と受電基板を対向させたときには、送信線状導体と受信線状導体が対向し、電磁気結合器が形成されるように各線状導体の位置が定められる。
【0069】
また、上記では、送電基板および受電基板が平板形状を有し、送電コイル、送信線状導体、受電コイルおよび受信線状導体が平面状に形成される実施形態について説明した。送電基板および受電基板は、パワーカードの形状に応じて曲板形状を有していてもよい。この場合、送電コイルおよび送信線状導体は、送電基板の形状に合わせた形状とし、受電コイルおよび受信線状導体は、受電基板の形状に合わせた形状とする。