(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の電線を内部に収容可能なケース本体と、前記ケース本体とは別体であって前記ケース本体に取り付けられて固定される電線固定具と、を備えた電線の保護ケースであって、
前記電線固定具は、
前記ケース本体の第1開口部を通じて内部から外部へ延ばした前記複数の電線の末端にある複数のコネクタを保持可能な複数のコネクタ保持部、及び、前記第1開口部と前記複数のコネクタ保持部との間において前記複数の電線の一部又は全部を束ねて保持可能な電線保持部、を一体に有し、
前記ケース本体は、長手方向を有する長尺状の形状であり、且つ、前記長手方向に直交する幅方向の寸法に対して前記長手方向及び前記幅方向に直交する上下方向の寸法が小さい形状を有し、
前記電線固定具は、前記ケース本体に対して前記幅方向にスライドさせて前記ケース本体に固定され、
前記複数のコネクタ保持部は、前記長手方向に並ぶように配置されている、
電線の保護ケース。
所定のスライド方向に移動可能に構成された車両用のシートと、前記シートが有する電装品に対応した複数の電線を収容する保護ケースと、を備えたスライドシートであって、
前記保護ケースは、
前記複数の電線を内部に収容可能なケース本体と、
前記ケース本体とは別体であって前記ケース本体に取り付けられて固定される電線固定具であって、前記ケース本体の第1開口部を通じて内部から外部へ延ばした前記複数の電線の末端にある複数のコネクタを保持可能な複数のコネクタ保持部、及び、前記第1開口部と前記複数のコネクタ保持部との間において前記複数の電線の一部又は全部を束ねて保持可能な電線保持部、を一体に有する電線固定具と、
前記ケース本体に取り付けられるスライダであって、前記ケース本体に沿って前記スライド方向に移動可能であり、前記ケース本体の第2開口部を通じて内部から外部へ延ばした前記複数の電線を保持可能なスライダと、を有し、
前記ケース本体は、前記スライド方向に対応する長手方向を有する長尺状の形状であり、且つ、前記長手方向に直交する幅方向の寸法に対して前記長手方向及び前記幅方向に直交する上下方向の寸法が小さい形状を有し、
前記電線固定具は、前記ケース本体に対して前記幅方向にスライドさせて前記ケース本体に固定され、
前記複数のコネクタ保持部は、前記長手方向に並ぶように配置されている、
スライドシート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の接続構造では、電線および電線に設けられるコネクタの寸法公差などに起因し、電線固定具が中継する複数の電線の各々の弛み具合(以下、各々の電線の「余長」という。)が、電線ごとに異なる場合がある。この場合、電線と周辺の部材とが干渉することを避けるべく、余長が最も長くなると想定される電線に合わせて、電線固定具の周りに電線を受け入れる空間(電線の余長を吸収するスペース)を確保することが求められる。
【0006】
しかし、実際には、車体上で部品を搭載できる領域の広さは限られており、その限られた領域内に出来る限り多数の部品を組み付けることが求められる。一方、上述した電線の余長を吸収するスペースは、電線の本来の機能上は不要であるにもかかわらず、この領域の一部を占めることになる。よって、電線の余長を吸収するスペースは、出来る限り小さいことが好ましい。
【0007】
更に、上記説明から理解されるように、従来の接続構造に限らず、複数の電線が繋がる部材の周辺における電線の余長を吸収するスペースは、出来る限り小さいことが好ましい。特に、電線を保護ケースの内部に収容して保護ケースから電線を引き出す場合、電線の余長を確保するスペースに加え、保護ケース自体を搭載するスペースも要することになるため、電線の余長を吸収するスペースを更に小さくすることが望ましい。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電線を収容可能な保護ケースから引き出される複数の電線の余長の長短にかかわらず、それら電線の余長を吸収するスペースを小さくできる電線の保護ケース、及び、スライドシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る「電線の保護ケース」は、下記(1)及び(2)を特徴としている。
(1)
複数の電線を内部に収容可能なケース本体と、前記ケース本体とは別体であって前記ケース本体に取り付けられて固定される電線固定具と、を備えた電線の保護ケースであって、
前記電線固定具は、
前記ケース本体の第1開口部を通じて内部から外部へ延ばした前記複数の電線の末端にある複数のコネクタを保持可能な複数のコネクタ保持部、及び、前記第1開口部と前記複数のコネクタ保持部との間において前記複数の電線の一部又は全部を束ねて保持可能な電線保持部、を一体に有
し、
前記ケース本体は、長手方向を有する長尺状の形状であり、且つ、前記長手方向に直交する幅方向の寸法に対して前記長手方向及び前記幅方向に直交する上下方向の寸法が小さい形状を有し、
前記電線固定具は、前記ケース本体に対して前記幅方向にスライドさせて前記ケース本体に固定され、
前記複数のコネクタ保持部は、前記長手方向に並ぶように配置されている、
電線の保護ケースであること。
(2)
上記(1)に記載の保護ケースであって、
前記ケース本体に取り付けられるスライダであって、前記ケース本体
の前記長手方向に沿って所定のスライド方向に移動可能であり、前記ケース本体の第2開口部を通じて内部から外部へ延ばした前記複数の電線を保持可能なスライダを、更に備え、
前記ケース本体は、
前記スライダの移動に伴う該ケース本体の内部における前記複数の電線の形態の変化を許容する空洞部を、該ケース本体の内部に有する、
電線の保護ケースであること。
【0010】
上記(1)の構成の電線の保護ケースによれば、保護ケースのケース本体に取り付けられる電線固定具に対し、複数の電線の末端にある複数のコネクタが保持される。このとき、ケース本体から電線が引き出される開口部(第1開口部)とコネクタ保持部との間において、各々の電線の余長が異なる場合がある。本構成の保護ケースでは、ケース本体の第1開口部とコネクタ保持部との間において、電線保持部により、複数の電線を束ねて保持するようになっている。よって、仮に各々の電線の余長が異なっていても、余長を吸収するスペースとしては電線保持部の大きさに対応したスペースだけを確保すればよい。
【0011】
したがって、本構成の保護ケースは、保護ケースから引き出される複数の電線の余長の長短にかかわらず、それら電線の余長を吸収するスペースを小さくできる。
【0012】
更に、別の効果として、ケース本体から引き出された複数の電線の複数のコネクタを電線固定具に一纏めに固定できる。よって、先ず電線固定具に複数のコネクタを固定した後に電線固定具をケース本体に取り付けるようにすれば、ケース本体に複数のコネクタを個別に取り付ける作業を省略でき、複数のコネクタを固定する作業の作業性を向上できる。
【0013】
上記(2)の構成の電線の保護ケースによれば、ケース本体の開口部(第2開口部)から引き出された電線を保持しながらスライド方向に移動可能なスライダを用いれば、本構成の保護ケースを、例えば車両のスライドシートに適用できる。具体的には、スライダが保持する電線を、車両のシートに内蔵された電装品に対して接続すればよい。
【0014】
更に、ケース本体の内側に、スライダの移動に伴う電線の形態の変化を許容する空洞部が設けられているため、スライダが移動しても、ケース本体の外部に電線が意図せず押し出されること、及び、ケース本体の内部に電線が意図せず引き込まれること、を防止できる。
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明に係る「スライドシート」は、下記(3)を特徴としている。
(3)
所定のスライド方向に移動可能に構成された車両用のシートと、前記シートが有する電装品に対応した複数の電線を収容する保護ケースと、を備えたスライドシートであって、
前記保護ケースは、
前記複数の電線を内部に収容可能なケース本体と、
前記ケース本体とは別体であって前記ケース本体に取り付けられて固定される電線固定具であって、前記ケース本体の第1開口部を通じて内部から外部へ延ばした前記複数の電線の末端にある複数のコネクタを保持可能な複数のコネクタ保持部、及び、前記第1開口部と前記複数のコネクタ保持部との間において前記複数の電線の一部又は全部を束ねて保持可能な電線保持部、を一体に有する電線固定具と、
前記ケース本体に取り付けられるスライダであって、前記ケース本体に沿って前記スライド方向に移動可能であり、前記ケース本体の第2開口部を通じて内部から外部へ延ばした前記複数の電線を保持可能なスライダと、を有
し、
前記ケース本体は、前記スライド方向に対応する長手方向を有する長尺状の形状であり、且つ、前記長手方向に直交する幅方向の寸法に対して前記長手方向及び前記幅方向に直交する上下方向の寸法が小さい形状を有し、
前記電線固定具は、前記ケース本体に対して前記幅方向にスライドさせて前記ケース本体に固定され、
前記複数のコネクタ保持部は、前記長手方向に並ぶように配置されている、
スライドシートであること。
【0016】
上記(3)の構成のスライドシートによれば、保護ケースのケース本体に取り付けられる電線固定具に対し、複数の電線の末端にある複数のコネクタが保持される。このとき、ケース本体から電線が引き出される開口部(第1開口部)とコネクタ保持部との間において、各々の電線の余長が異なる場合がある。本構成のスライドシートでは、ケース本体の第1開口部とコネクタ保持部との間において、電線保持部により、複数の電線を束ねて保持するようになっている。よって、仮に各々の電線の余長が異なっていても、余長を吸収するスペースとしては電線保持部の大きさに対応したスペースだけを確保すればよい。
【0017】
したがって、本構成のスライドシートは、保護ケースから引き出される複数の電線の余長の長短にかかわらず、それら電線の余長を吸収するスペースを小さくできる。
【0018】
更には、本構成のスライドシートの保護ケースは、ケース本体の開口部(第2開口部)から引き出された電線を保持しながらスライド方向に移動可能なスライダを有する。よって、スライダが保持する電線を、車両のシートに内蔵された電装品に対して接続することで、この保護ケースをスライドシートに適用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電線を収容可能な保護ケースから引き出される複数の電線の余長の長短にかかわらず、それら電線の余長を吸収するスペースを小さくできる電線の保護ケース、及び、スライドシートを提供できる。
【0020】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電線の保護ケース、及び、その保護ケースを利用したスライドシート、について説明する。
【0023】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る電線の保護ケース1は、スライドシート70に対応して用いられる。スライドシート70は、シート全体の前後方向の位置を調整する電動モータ、及び、シートの背もたれ部の角度を調整する電動モータなどの複数種類の電装品(図示省略)を内蔵している。スライドシート70は、車両のフロアパネル80の上面(車室内側の面)に固定された車両前後方向に延びる一対のシートレール90に対して、車両前後方向に移動可能に組み付けられる。
【0024】
保護ケース1は、長尺状の形状を有し、一対のシートレール90それぞれに対応して、各シートレール90の近傍にて車両前後方向に沿うように、フロアパネル80に固定される。保護ケース1は、フロアパネル80に配索されたワイヤハーネスから引き出した電線(図示省略。以下、「フロア側電線」という。)と、スライドシート70に内蔵された電装品に繋がる電線(図示省略。以下、「シート側電線」という。)と、を電気的に接続する(中継する)ためのワイヤハーネス60(
図3等を参照)を保護する機能、及び、ワイヤハーネス60を固定する機能を備えている。
【0025】
ワイヤハーネス60は、
図3等に示すように、複数の電線61と、複数の電線61それぞれの一端側に取り付けられた複数のフロア側コネクタ62と、複数の電線61それぞれの他端側に取り付けられた複数のシート側コネクタ63と、を備える。フロア側コネクタ62は、フロア側電線の端部に設けられたコネクタ(図示省略)と接続される。シート側コネクタ63は、シート側電線の端部に設けられたコネクタ(図示省略)と接続される。
【0026】
以下、保護ケース1の詳細について、
図2〜
図8を参照しながら説明する。以下、説明の便宜上、
図2に示すように、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交する。
【0027】
保護ケース1は、複数の電線61を内部に収容可能なケース本体10と、ケース本体10に固定されたブラケット40(
図3等を参照)と、ケース本体10に前後方向に相対移動可能に支持されたスライダ50(
図2等を参照)と、を備える。後述するように、ブラケット40は、フロア側コネクタ62をケース本体10に固定する機能を有し、スライダ50は、シート側コネクタ63近傍の電線61をケース本体10に対して前後方向に相対移動可能に保持する機能を有する。
【0028】
先ず、ケース本体10について説明する。ケース本体10は、長尺状の形状を有し下側に位置する下ケース20と、長尺状の形状を有し上側に位置する上ケース30と、を有する(
図2,3,7等を参照)。下ケース20は、複数の電線61を所定の配索形状になるように収容する機能を主として有し、上ケース30は、下ケース20に収容された電線61を外部に露出しないように覆う機能を主として有する。
【0029】
下ケース20の上面外縁部の合わせ面と、上ケース30の下面外縁部の合わせ面とが当接した状態にて、下ケース20及び上ケース30の外縁部同士を所定の締結部材(ボルト等)で締結固定することで、ケース本体10が完成する。
【0030】
図3、及び、
図7(b),(c)に示すように、下ケース20には、複数の電線61を収容する(受け入れる)ための電線収容部21が設けられている。
図3から理解できるように、電線収容部21は、下方に向けて窪むと共に、前方に開放し前後方向に延びるU字状の凹部として形成されている。よって、ケース本体10の内部にて、複数の電線61は、電線収容部21に倣って、前方に開放し前後方向に延びるU字状に配索される(
図7(b)を参照)。
【0031】
ケース本体10の内部にU字状に配索された電線61の右側の前端側部分は、ケース本体10に形成された第1開口部11(
図3,
図7(c)を参照)を通ってケース本体10の内部から外部へ延出してフロア側コネクタ62と接続されている。ケース本体10の内部にU字状に配索された電線61の左側の前端側部分は、スライダ50のスライダ本体51、及び、上ケース30のスリット31(第2開口部)を通ってケース本体10の内部から外部へ延出してシート側コネクタ63と接続されている。
【0032】
第1開口部11からケース本体10の外部に延出した複数の電線61の第1開口部11の近傍部分には、その外周を覆うようにコルゲートチューブ64が設けられている。電線61におけるコルゲートチューブ64が設けられた部分は、固定具66(
図3、
図4、
図7(c)を参照)によって下ケース20に固定されている。
【0033】
ケース本体10の内部にU字状に配索された電線61における、スライダ50の前後方向の移動に伴って形態が変化する部分(U字の屈曲部分)には、コルゲートチューブ65が設けられている。電線61におけるコルゲートチューブ65が設けられた部分の右側端部は、固定具67(
図7(b)を参照)によって下ケース20に固定されている。電線61におけるコルゲートチューブ65が設けられた部分の左側端部は、固定具68(
図7(b)を参照)によってスライダ本体51に固定されている。
【0034】
電線収容部21における前後方向に延びる一対の部分(U字の直線部分)の幅(左右方向の寸法)は、複数の電線61のサイズに合わせた寸法となっている。一方、電線収容部21における後端側(U字の屈曲する側)の部分は、前後方向に延びるように前後方向に大きく拡幅されている。この拡幅された部分は、
図8に示すように、スライダ50の前後方向の移動に伴い、ケース本体10の内部における電線61(具体的には、コルゲートチューブ65が設けられた部分)の形態の変化を許容する空洞部22として機能する。
【0035】
図7(b)に示すように、下ケース20の前後方向に延びる左側縁部の近傍には、下方に窪むと共に前後方向に延びる溝23が形成されている。この溝23は、スライダ50を前後方向に移動可能に支持する機能を果たす(詳細は後述)。
【0036】
図2、及び、
図7(a)に示すように、上ケース30の前後方向に延びる左側縁部の近傍には、前後方向の全域に亘って前後方向に延びるスリット31(貫通孔)が設けられている。このスリット31も、溝23と同様、スライダ50を前後方向に移動可能に支持する機能を果たす(詳細は後述)。
【0037】
次いで、ブラケット40について説明する。
図3、及び、
図7(c)に示すように、樹脂製のブラケット40は、下ケース20の下面の前端部近傍に設けられている。ブラケット40は、複数(本例では、3つ)のフロア側コネクタ62を固定する機能を主として有する。
【0038】
図4〜
図6に示すように、ブラケット40のブラケット本体41には、複数のフロア側コネクタ62それぞれを固定するための複数(本例では、3つ)のコネクタ保持部42が設けられている。複数のコネクタ保持部42それぞれに、複数のフロア側コネクタ62が固定される(
図6を参照)。フロア側コネクタ62を固定する具体的な構造としては、周知の構造の一つが採用され得る。
【0039】
ブラケット本体41には、複数のフロア側コネクタ62近傍の複数の電線61を束ねて保持するための電線保持部43が設けられている。
図5に示すように、電線保持部43は、本体41の左側面からL字状に延びるステー44と、ステー44の先端部に位置するヒンジ部45を支点に開閉可能にステー44に対して設けられたカバー46と、を備える。カバー46に設けられた係止孔46aを本体41側の係止突起47に係止させることで、カバー46が閉位置に保持されるようになっている。
【0040】
カバー46が開位置の状態で、ステー44の内部空間に、第1開口部11から延出し且つフロア側コネクタ62近傍の複数の電線61を束ねて挿入し、その後にカバー46を閉位置に維持することで、カバー46とステー44との間の空間内にて、複数の電線61が束ねて保持される(
図6を参照)。このように、複数の電線61は、第1開口部11とコネクタ保持部42との間において、電線保持部43により束ねて保持される。本例では、3つの電線61のうちの2つの電線61が電線保持部43によって束ねて保持されている。
【0041】
ここで、ケース本体10から電線61が引き出される第1開口部11とコネクタ保持部42との間において、各々の電線61の余長が異なる場合がある。この点、保護ケース1では、ケース本体10の第1開口部11とコネクタ保持部42との間において、電線保持部43により、複数の電線61を束ねて保持するので、仮に各々の電線61の余長が異なっていても、余長を吸収するスペースとしては電線保持部43の大きさに対応したスペースだけを確保すればよい。
【0042】
ブラケット本体41の前後方向の両端部には、左側に向けて開口する一対の固定用孔48が設けられている。これら一対の固定用孔48に、下ケース20の下面の前端部近傍に設けられた右方向に延びる一対のアーム24(
図6を参照)をそれぞれ挿入することで、ブラケット本体41(よって、ブラケット40)が下ケース20(よって、ケース本体10)に固定される。
【0043】
ここで、ブラケット40のコネクタ保持部42に複数のフロア側コネクタ62を固定した後に、ブラケット40をケース本体10に取り付けるようにすれば、ケース本体10に複数のフロア側コネクタを個別に取り付ける場合に比べ、複数のフロア側コネクタ62を固定する作業の作業性を向上できる。このように、複数のフロア側コネクタ62は、ブラケット40によってケース本体10に固定される。
【0044】
次いで、スライダ50について説明する。
図2、及び、
図7(a),(b)に示すように、スライダ50は、上方に開口する穴部52を内部に有する箱状のスライダ本体51と、スライダ本体51の上縁部の前方部分から前方に向けて延びるステー53を備える。ステー53には貫通孔54が設けられている。
【0045】
スライダ本体51の底壁(下壁)には、下ケース20の溝23に嵌合可能な第1嵌合部(図示省略)が設けられ、スライダ本体51の上下方向中央位置には、上ケース30に設けられたスリット31に嵌合する第2嵌合部(図示省略)が設けられている。第1、第2嵌合部が溝23及びスリット31に嵌合することで、スライダ本体51(よって、スライダ50)が、ケース本体10に対して前後方向にのみ移動可能に支持されている。
【0046】
ケース本体10の内部にU字状に配索された複数の電線61における固定具68(
図7(b)を参照)によってスライダ本体51に固定された部分は、スライダ本体51の右側側壁における上ケース30(スリット31)より下側に位置する部分に設けられた貫通孔(図示省略)を通って穴部52に進入し、穴部52(よって、スリット31)を通って、穴部52の上方開口から外部へ延出している。
【0047】
外部に延出した複数の電線61は、貫通孔54を上側から下側に向けて通過して複数のシート側コネクタ63まで延びている。このように、複数のシート側コネクタ63近傍の複数の電線61は、スライダ50によってケース本体10に対して前後方向に相対移動可能に保持されている。
【0048】
以上のようにワイヤハーネス60が配索された保護ケース1は、下ケース20の下面の複数個所(本例では、3か所)に設けられたステー25(
図3、及び、
図7(c)を参照)を利用して、シートレール90の近傍にて車両前後方向に沿うようにフロアパネル80に固定される(
図1を参照)。そして、複数のフロア側コネクタ62に、フロア側電線の端部に設けられたコネクタ(図示省略)と接続し、複数のシート側コネクタ63に、シート側電線の端部に設けられたコネクタ(図示省略)と接続することで、フロア側電線とシート側電線とが電気的に接続されて、スライドシート70に内蔵された電装品が機能を果たし得る状態となる。
【0049】
また、スライドシート70がフロアパネル80に対して前後方向に移動する際には、スライドシート70の移動(よって、シート側コネクタ63の移動)に合わせてスライダ50が自由に(受動的に)移動することで、シート側コネクタ63とシート側電線の端部に設けられたコネクタとの接続部分に無理な負荷がかかることがない。
【0050】
以上、説明したように、本実施形態に係るワイヤハーネス60の保護ケース1、及び、スライドシート70によれば、保護ケース1のケース本体10に取り付けられるブラケット40に対し、複数の電線61の末端にある複数のフロア側コネクタ62が保持される。このとき、ケース本体10から電線61が引き出される第1開口部11とコネクタ保持部42との間において、各々の電線61の余長が異なる場合がある。この点、保護ケース1では、ケース本体10の第1開口部11とコネクタ保持部42との間において、電線保持部43により、複数の電線61を束ねて保持するようになっている。
【0051】
よって、仮に各々の電線61の余長が異なっていても、余長を吸収するスペースとしては電線保持部43の大きさに対応したスペースだけを確保すればよい。即ち、各々の電線61の余長の長短を考慮することなく、保護ケース1を利用できるので、保護ケース1から引き出される複数の電線61の余長の長短にかかわらず、それら電線61の余長を吸収するスペースを小さくできる。
【0052】
更に、別の効果として、ケース本体10から引き出された複数の電線61の末端に位置する複数のフロア側コネクタ62をブラケット40に一纏めに固定できる。よって、ブラケット40に複数のフロア側コネクタ62を固定した後、ブラケット40をケース本体10に取り付けるようにすれば、ケース本体10に複数のフロア側コネクタ62を個別に取り付ける場合に比べ、複数のフロア側コネクタ62を固定する作業の作業性を向上できる。
【0053】
更に、ケース本体10のスリット31(第2開口部)から引き出された電線61を保持しながら前後方向に移動可能なスライダ50を用いることで、保護ケース1を車両のスライドシート70に適用できる。具体的には、スライダ50が保持する電線61を、シート側電線の端部に設けられたコネクタ(図示省略)に対して接続すればよい。
【0054】
更に、ケース本体10の内側に、スライダ50の移動に伴う電線61の形態の変化を許容する空洞部22(
図8を参照)が設けられているため、スライダ50が移動しても、ケース本体10の外部に電線61が意図せず押し出されること、及び、ケース本体10の内部に電線61が意図せず引き込まれること、を防止できる。
【0055】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0056】
例えば、上記実施形態では、スライドシート70に対応して用いるために、保護ケース1にスライダ50が設けられているが、スライドシート70のような移動体ではなく固定された構造物に対応して保護ケース1が用いられる場合、保護ケース1にスライダ50が設けられていなくてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、複数(3本)の電線61の一部(2本)が電線保持部43によって保持されているが(
図6を参照)、複数(3本)の電線61の全部(3本)が電線保持部43によって保持されていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、ケース本体10が、下ケース20及び上ケース30から構成されているが、ケース本体10の全体が一体で成形されていてもよい。また、上記実施形態では、ブラケット40のコネクタ保持部42及び電線保持部43の双方がブラケット本体41に対して一体で成形されているが、コネクタ保持部42及び電線保持部43が、互いに別体の異なるブラケット本体に対してそれぞれ設けられていてもよい。
【0059】
ここで、上述した本発明に係る電線の保護ケース、及び、スライドシートの実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(3)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
複数の電線(61)を内部に収容可能なケース本体(10)と、前記ケース本体(10)に取り付けられる電線固定具(40)と、を備えた電線の保護ケース(1)であって、
前記電線固定具(40)は、
前記ケース本体(10)の第1開口部(11)を通じて内部から外部へ延ばした前記複数の電線(61)の末端にある複数のコネクタ(62)を保持可能な複数のコネクタ保持部(42)、及び、前記第1開口部(11)と前記複数のコネクタ保持部(42)との間において前記複数の電線(61)の一部又は全部を束ねて保持可能な電線保持部(43)、を有する、
電線の保護ケース。
(2)
上記(1)に記載の保護ケースであって、
前記ケース本体(10)に取り付けられるスライダ(50)であって、前記ケース本体(10)に沿って所定のスライド方向に移動可能であり、前記ケース本体(10)の第2開口部(31)を通じて内部から外部へ延ばした前記複数の電線(61)を保持可能なスライダ(50)を、更に備え、
前記ケース本体(10)は、
前記スライダ(50)の移動に伴う該ケース本体(10)の内部における前記複数の電線(61)の形態の変化を許容する空洞部(22)を、該ケース本体(10)の内部に有する、
電線の保護ケース。
(3)
所定のスライド方向に移動可能に構成された車両用のシート(70)と、前記シート(70)が有する電装品に対応した複数の電線(61)を収容する保護ケース(1)と、を備えたスライドシートであって、
前記保護ケース(1)は、
前記複数の電線(61)を内部に収容可能なケース本体(10)と、
前記ケース本体(10)に取り付けられる電線固定具(40)であって、前記ケース本体(10)の第1開口部(11)を通じて内部から外部へ延ばした前記複数の電線(61)の末端にある複数のコネクタ(62)を保持可能な複数のコネクタ保持部(42)、及び、前記第1開口部(11)と前記複数のコネクタ保持部(42)との間において前記複数の電線(61)の一部又は全部を束ねて保持可能な電線保持部(43)、を有する電線固定具(40)と、
前記ケース本体(10)に取り付けられるスライダ(50)であって、前記ケース本体(10)に沿って前記スライド方向に移動可能であり、前記ケース本体(10)の第2開口部(31)を通じて内部から外部へ延ばした前記複数の電線(61)を保持可能なスライダ(50)と、を有する、
スライドシート。